(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属ドープ液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、乳酸エチル及び乳酸ブチルからなる群より選択された1種以上の溶媒をさらに含むものである、
請求項12に記載の積層体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、薄膜型太陽電池の製造時に550℃以上の高温工程が可能で、耐久性及びバリア特性に優れ、可撓性とともに改善されたエネルギー変換効率を有する薄膜型太陽電池の製造が可能な積層体及びその製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、前記積層体を含み、優れた可撓性とともに改善されたエネルギー変換効率を示す薄膜型太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面による積層体は、ポリイミド層と、前記ポリイミド層の一面に位置するアルカリ金属ドープ層(alkali metal−doped layer)とを含む構造体を有する。
【0011】
上記積層体は、金属基材層をさらに含み、前記ポリイミド層は、前記金属基材層の一面に位置するものであり得る。
【0012】
前記金属基材層は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、またはサス(SUS)を含むものであり得る。
前記金属基材層は、100nm〜100μmの厚みを有するものであり得る。
【0013】
前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムから選択されるものであり得る。
【0014】
前記アルカリ金属は、ポリイミドフィルム層の総重量に対して0.01〜5重量%でドープされるものであり得る。
【0015】
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重合により生成されたポリアミック酸をイミド化して製造されたものであり得る。
【0016】
前記ポリイミドフィルム層は、1〜60μmの厚みを有するものであり得る。
【0017】
前記積層体は、100〜500℃の温度範囲で15ppm/℃以下の熱膨張係数を有し得る。
【0018】
また、前記積層体は、550℃以上のガラス転移温度を有し得る。
【0019】
また、前記積層体は、ポリイミドフィルム層上に位置する金属電極層をさらに含むものであり得る。
【0020】
前記金属電極層を含む積層体は、600℃以上のガラス転移温度を有し得る。
【0021】
本発明の他の側面によれば、ポリイミド層を形成する段階と、
前記ポリイミド層の一面にアルカリ金属供給源を含むコーティング層を形成した後、熱処理してアルカリ金属ドープ層を形成する段階と、を含む積層体の製造方法が提供される。
【0022】
前記ポリイミド層は、金属基材層の一面に形成されるものであり得る。
【0023】
前記ポリイミド層形成段階は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合反応させて製造したポリアミック酸を含むポリイミドワニスを金属基材層の一面にキャスティングした後、イミド化処理するか、または前記ポリイミドワニスをイミド化処理して製造したポリイミドフィルムを金属基材層にラミネートして実施されるものであり得る。
【0024】
前記アルカリ金属供給源は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムから選択されるアルカリ金属またはそれを含む化合物であり得る。
【0025】
前記熱処理は、80〜150℃で行われるソフトベーク工程と、150〜500℃で行われるハードベーク工程により実施され得る。
【0026】
また、前記アルカリ金属供給源を含むコーティング層は、アルカリ金属供給源とグリコール系有機溶媒を含むアルカリ金属ドープ液でコーティングして形成されるものであり得る。
【0027】
前記アルカリ金属ドープ液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、酢酸エチル及び乳酸エチルからなる群から選択された1種以上の溶媒をさらに含み得る。
【0028】
前記方法は、前記アルカリ金属ドープ層上に金属電極層を形成する段階をさらに含み得る。
【0029】
本発明のまた別の一側面によれば、前述した積層体を含む薄膜型太陽電池が提供される。
【0030】
前記薄膜型太陽電池は、金属基材層と、前記金属基材層の一面に位置するポリイミド層と、
【0031】
前記ポリイミド層上に位置するアルカリ金属ドープ層と、前記アルカリ金属ドープ層上に位置する金属電極層と、前記金属電極層上に位置し、化合物半導体を含む光吸収層と、前記光吸収層上に位置する透明電極層と、を含むものであり得る。
【0032】
前記金属電極層は、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、または銅(Cu)を含むものであり得る。
【0033】
前記金属電極層は、100nm〜1μmの厚みを有するものであり得る。
【0034】
前記化合物半導体は、(200)の優先方向に配列された結晶構造を有するものであり得る。
【0035】
その他本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0036】
本発明による積層体は、550℃以上の高温工程が可能で、耐久性とバリア特性に優れ、優れた可撓性とともに改善されたエネルギー変換効率を有する薄膜型太陽電池の製造が可能である。
【0037】
また、前記積層体を用いて薄膜型太陽電池を製造する場合、550℃以上での高温工程が可能で、バリアフィルムの形成工程が不要であり、モノリシック製造工程により薄膜型太陽電池を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有し得るが、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物ないし代替物を含むことが理解されるべきである。本発明を説明するにあたり、関連の公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0040】
本明細書において、層、膜、フィルム、基板等の部分が他の部分の「上に」あったとすると、これは他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にまたは他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、フィルム、基板等の部分が他の部分の「下に」あったとすると、これは他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にまたは他の部分がある場合も含む。
【0041】
本発明は、アルカリ金属ドープ層を有するポリイミド層を含む積層体を提供する。
【0042】
本発明はまた、ポリイミド層を形成する段階と、前記ポリイミド層上にアルカリ金属供給源を含むコーティング層を形成した後、熱処理してアルカリ金属ドープ層を形成する段階と、を含む積層体の製造方法を提供する。
【0043】
本発明はまた、前記積層体を含む薄膜型太陽電池を提供する。
【0044】
以下、本発明の具現例による積層体とその製造方法、及び前記積層体を含む薄膜型太陽電池についてより詳しく説明する。
【0045】
本発明の一具現例によれば、ポリイミド層とポリイミド層の一面に形成されたアルカリ金属ドープ層とを有する積層体が提供される。
【0046】
従来の薄膜型太陽電池において、エネルギー変換効率を増加させるための方法として、光吸収層内に含まれる化合物半導体の結晶成長を促進させ得るアルカリ金属の供給源としてアルカリ金属成分を含むソーダライム基板を用いるか、または基板として可撓性のポリマー材料や金属材料を用いる薄膜型太陽電池の場合は、金属電極にアルカリ成分を含ませるか、または金属電極層と光吸収層との間に別途のアルカリ金属供給層を形成していた。これに対して、本発明では、ポリイミドにアルカリ金属をドープすることで、別途のアルカリ金属供給層の形成が不要で、また、その後の光吸収層形成のための高温熱処理時にポリイミドにドープされたアルカリ金属成分が光吸収層に容易に拡散できる。その結果、拡散されたアルカリ金属は、光吸収層内の化合物半導体の結晶粒子成長及び結晶配向性の配列を促進し、光吸収層の構造を緻密化させ、結晶粒界周辺のキャリア空乏を減少させ、光吸収層における抵抗値の減少とともに電圧を増加させて、太陽電池のエネルギー変換効率を改善させることができる。また、ポリイミドフィルム層内のドープによるアルカリ金属の導入方法は、ドープされたアルカリ金属の量を調節することにより、光吸収層内に拡散されるアルカリ金属の量を容易に制御することができる。
【0047】
前記ポリイミドにドープされるアルカリ金属は、具体的に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムなどであり得、この中でも、光吸収層の結晶性及び不純物としての活性化を考慮すると、ナトリウムまたはカリウムがより好ましいこともある。
【0048】
また、前記ポリイミドにドープされるアルカリ金属は、ドープ量が過度に少ないと、光吸収層に拡散されるアルカリ金属量が少なく、エネルギー変換効率の改善効果が微々たるものである一方、アルカリ金属のドープ量が多すぎると、不純物として作用し、かえって電池性能を低下させ得る。これにより、ポリイミドにドープされるアルカリ金属は、ポリイミドフィルムの総重量に対して0.01〜5重量%の量で含まれることが好ましいこともある。
【0049】
さらに、前記ポリイミドフィルム層において、アルカリ金属がドープされるポリイミドは、通常、薄膜型太陽電池で可撓性基板として用いられるものであれば特に制限なく使用可能である。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重合反応の後、イミド化によって製造されたものであり得る。
【0050】
上記のようなアルカリ金属がドープされたポリイミドフィルム層は、1〜60μm、或いは10〜30μmの厚みを有することが好ましいこともある。
【0051】
アルカリ金属ドープ層は、10〜500nm、または50〜300nm、もしくは100〜200nmの厚みを有することが好ましいこともある。
【0052】
本発明の他の具現例によると、金属基材層、前記金属基材層の一面に位置するポリイミド層、その上に形成されたアルカリ金属ドープ層を含むポリイミド金属積層体が提供される。
【0053】
前記ポリイミド金属積層体において、金属基材層は、可撓性フィルムであるポリイミドフィルム層の裏面に位置し、ポリイミドフィルム層に対してバリアの役割をする。前記金属基材層は、具体的には、金属箔(foil)基板であり得る。金属箔基板は銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、またはサス基板を使用することができる。
【0054】
また、前記金属基材層は、ポリイミドフィルム層に対するバリア効果を示すためには、100nm〜100μmの厚みを有することが好ましいこともある。
【0055】
上記したように、金属基材層−ポリイミド層−アルカリ金属ドープ層が順次積層された多層構造を有するポリイミド金属積層体は、450℃以上での高温工程が難しいポリイミドフィルム層の裏面に金属基材層を形成することにより、具体的に、前記基板は、100〜550℃の温度範囲で15ppm/℃以下の熱膨張係数を有し、550℃以上、好ましくは600℃以上のガラス転移温度を有するものであり得る。これにより、薄膜型太陽電池の製造時に550℃以上の高温工程が可能であり、その結果として、薄膜型太陽電池に適用する際、透明電極層及び光吸収層における欠陥発生を抑制することができる。また、前記積層体は、ポリイミドフィルム層にアルカリ金属をドープすることにより、光吸収層へのアルカリ金属の拡散が容易で、また、その拡散量を容易に制御することができ、太陽電池のエネルギー変換効率を高める効果を最大化することができる。
【0056】
本発明はまた、前記積層体の製造方法を提供する。
【0057】
詳細には、ポリイミド金属積層体は、ポリイミド層を形成する段階(段階1)、そして、前記ポリイミド層上にアルカリ金属供給源を含むコーティング層を形成した後、熱処理してアルカリ金属ドープ層を有するポリイミドフィルム層を形成する段階(段階2)を含み得る。
【0059】
段階1は、基材層、好ましくは金属基材層の一面にポリイミド層を形成する段階である。
【0060】
前記ポリイミド層は、金属基材層にポリイミド前駆体及び有機溶媒を含むポリイミドワニスをキャスティングした後、イミド化処理してポリイミド層を直接形成する方法、または別途ポリイミドフィルムを製造した後、金属基材層にラミネートすることで形成できる。
【0061】
まず、金属基材層にポリイミドワニスをキャスティングしてポリイミド層を形成する方法において、前記ポリイミドワニスは、ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含み、必要に応じてイミド化触媒をさらに含むこともできる。
【0062】
前記ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸として、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶液重合など通常のポリアミド酸の重合方法によって重合反応させることで製造できる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドン(NMP)などのような有機溶媒中で重合反応させることで製造できる。
【0063】
前記ポリイミド前駆体の製造時に使用可能なテトラカルボン酸二無水物は、芳香族、脂肪族または脂環族の4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物として、具体的には、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロプロパンタテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[(2,3または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[(4−(2,3または3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[(4−(2,3または4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0064】
また、前記ポリイミド前駆体の製造時に使用可能なジアミンは、芳香族、脂肪族または脂環族の2価の有機基と共に、前記有機基に結合される2つのアミノ基を含む化合物であって、具体的には、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチルベンジジン、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルメタン、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−(または3,4'−、3,3'−、2,4'−または2,2'−)ジアミノジフェニルスルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4'−ベンゾフェノンジアミン、4,4'−ジ−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジ−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、4,4'−ジアミノターフェニル、2,5−ジアミノピリジン、4,4'−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、及びヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミンからなる群より選択された1つ以上であり得る。この中でも、分子内の1つ以上の水素原子が炭素数1〜10のフッ化アルキル基で置換されたジアミンがポリイミドフィルムの光透過度改善の効果の面でより好ましいこともある。
【0065】
本発明における好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられ、ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチルベンジジンが例として挙げられる。
【0066】
前記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重合反応は、無水条件で実施でき、25〜50℃の温度範囲で実施できる。また、製造されるポリイミド前駆体の分子量は、重合反応時に用いられるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応比の調節を通じて制御できる。これにより、本発明では、薄膜型太陽電池の可撓性基板に求められる光透過性、熱膨張係数及びガラス転移温度などの物性的要件を満たすポリイミドの製造の側面において、テトラカルボン酸二無水物1モルに対してジアミンを0.8〜1.2または0.9〜1.1のモル比で用いることが好ましいこともある。
【0067】
また、前記ポリイミドワニスに含まれる有機溶媒は、先にポリイミド前駆体の製造時の重合反応用溶媒と同一であり得る。
【0068】
さらに、前記ポリイミドワニスに選択的に含まれるイミド化触媒は、具体的に、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、または5−メチルベンズイミダゾールなどのイミダゾール系;イソキノリンなどのキノリン系;或いは3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、または4−n−プロピルピリジンなどのピリジン系化合物等であり得る。前記イミド化触媒は、ポリイミドワニス中に触媒量として含まれ得る。
【0069】
また、前記キャスティング法によるポリイミドフィルムの製造時に、前記構成を有するポリイミドワニスを金属基材層にキャスティングした後、ポリイミドワニス内の有機溶媒を除去するための乾燥工程が実施され得る。その際、乾燥工程は、好ましくは140℃以下の温度で実施できる。
【0070】
前記キャスティング工程の完了後、金属基材層上にフィルム状で存在するポリイミドワニスに対してイミド化処理をすることにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0071】
前記イミド化処理は、化学的イミド化または熱イミド化など通常のポリイミド製造のためのイミド化方法によって実施できる。一例として、熱イミド化処理は、フィルム状のポリイミドワニスを80〜350℃の温度で加熱処理することにより実施できる。
【0072】
また、他の方法でポリイミドフィルムをラミネートする方法は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶媒中で反応させて、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸と溶媒を含むポリイミドワニスを製造し、これを離型フィルムに塗布した後、イミド化処理してポリイミドフィルムを製造し、そして前記製造されたポリイミドフィルムを離型フィルムから分離して金属基材層にラミネートする段階を含む製造方法により実施できる。
【0073】
前記ラミネート方法によるポリイミドフィルム層の形成時に使用可能なテトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び溶媒は、先に説明したとおりであり、また、前記ポリイミドフィルムの形成に使用可能な離型フィルムとしては、ポリイミドフィルムに対して優れた剥離性を有し、通常、ポリイミドフィルムの形成時に離型フィルムとして用いられるものであれば、特に限定することなく用いることができる。
【0074】
前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施でき、具体的には、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、キャスティング法、浸漬法またはブラシ法等が利用できる。
【0075】
前記イミド化処理工程は、先に説明したとおりである。
【0076】
また、前記離型フィルム上に形成されたポリイミドフィルムの分離及び金属基材層へのラミネート工程は、前記で製造されたポリイミドフィルムにおいて、離型フィルムが形成されない面側に金属基材層を位置させた後、熱転写等の転写工程を介して金属基材層にラミネートさせることもできる。
【0077】
段階2は、前記段階1で製造されたポリイミドフィルム層上にアルカリ金属供給源を含むコーティング層を形成した後、熱処理してアルカリ金属ドープ層を形成する段階である。
【0078】
詳細には、アルカリ金属供給源及び溶媒を含むアルカリ金属ドープ用組成物をポリイミドフィルム上に塗布した後、熱処理することで形成することができる。
【0079】
前記アルカリ金属ドープ用組成物において、アルカリ金属の原料物質は、アルカリ金属を提供することができる物質であって、具体的には、アルカリ金属またはこれを含む酸化物、塩化物、水酸化物、炭酸化物、水素化物、ケイ酸化物またはその他塩等であり得る。前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウム等であり得、光吸収層の結晶性及び不純物としての活性化等を考慮してナトリウムがより好ましいこともある。一例として、アルカリ金属としてナトリウムを含む原料物質としては、ナトリウム(Na)、ケイ酸ナトリウム(Na
2SiO
3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(NaCO
3)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、亜硝酸ナトリウム(NaNO
2)、硝酸ナトリウム(NaNO
3)からなる群より選択された1種以上のナトリウム含有化合物が挙げられ、その他にも多様なナトリウム含有化合物を用いることができるのはもちろんである。
【0080】
この中でも、ケイ酸ナトリウムを用いる場合、上述のアルカリ金属供給源含有層を基板上に形成させると共に、シリケートに由来するSiOx膜を基板上に形成させることができる。言い換えると、かかるケイ酸ナトリウムを含有したアルカリ金属ドープ用組成物としてアルカリ金属供給源含有層を基板上に形成した後、後続のCIS系太陽電池の製造工程を行う場合、アルカリ金属の拡散による効率向上をもたらすことができるだけでなく、例えば、前記アルカリ金属供給源含有層内に前記シリケートに対する熱処理により基板上にSiOx膜を形成させることができる。
【0081】
通常、CIS系太陽電池の製造工程には、フォトリソグラフィ工程ではなく、レーザ照射を通じたパターン工程が含まれるが、前記SiOx膜が形成されることによって、レーザ照射時に基板が損傷を受けることを減らすことができ、その他前記CIS系太陽電池に含まれるMo含有裏面電極層またはCIS含有層等の各層が損傷することもまた減らすことができる。さらに、前記SiOx膜の形成により、絶縁特性、または化学的、物理的耐性がより向上し得る。特に、かかる特性の向上及び基板の保護効果は、フレキシブル基板を有する太陽電池の製造時にさらに大きく示され得る。
【0082】
また、前記アルカリ金属ドープ用組成物において、溶媒としては、アルカリ金属供給源を溶解できるものであれば制限なく使用でき、具体的に、エタノール等のアルコール、水(H
2O)、アミン、プロピレングリコールのようなグリコール系溶媒、またはその他極性溶媒が使用できる。
【0083】
一具現例のアルカリ金属ドープ用組成物は、上述のアルカリ金属供給源と共にグリコール系有機溶媒を含む。前記ドープ液組成物は、水等の水系溶媒ではなく有機溶媒を含むことによって、ガラス基板またはポリイミド基板等の有機系樹脂基板等に対する優れた濡れ性を示し、基板上に均一にコーティングできる。従って、スピンコート等のように、液状の組成物を塗布する一般的な方法として、前記アルカリ金属ドープ用組成物を基板上に塗布してアルカリ金属供給源含有層を均一に塗布及び形成することができ、これを用いてアルカリ金属を均一に基板にドープ及びCIS含有層等に拡散させ、より均一でありながらも優れた効率を有する太陽電池の製造が可能となる。
【0084】
また、かかる有機溶媒の中でもグリコール系有機溶媒を用いることにより、アルカリ金属供給源を適切に溶解させ、均一でありながらも良好なアルカリ金属供給源含有層を形成することができる。これに比べて、他の種類の有機溶媒を用いる場合、アルカリ金属供給源をよく溶解させることができない。
【0085】
前記グリコール系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、2,3−ジブチレングリコール及びグリセロールからなる群より選択された1種以上を用いることができ、これらのうちから選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできるのはもちろんである。但し、前記アルカリ金属供給源に対する優れた溶解度等を考慮して、前記のプロピレングリコールをより適切に用いることができる。
【0086】
一方、上述したアルカリ金属ドープ用組成物は、上述のグリコール系溶媒に加えて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、乳酸エチル及び乳酸ブチルからなる群より選択された1種以上の追加溶媒をさらに含み得る。かかる付加的な溶媒の使用によって、前記アルカリ金属ドープ用組成物のコーティング性をさらに向上させることができる。
【0087】
前記アルカリ金属供給源は、ポリイミドフィルム層にドープされるアルカリ金属のドープ量を考慮した含有量でアルカリ金属ドープ用組成物中に含まれ得る。
【0088】
前記アルカリ金属ドープ用組成物は、適切なアルカリ金属の拡散及び均一でありながらも良好なアルカリ金属供給源含有層の形成等の観点から、上述のアルカリ金属供給源約0.1〜10重量%、或いは約0.1〜5重量%、或いは約0.1〜3重量%と、グリコール系有機溶媒約90〜99.9重量%、或いは約95〜99.9重量%、或いは約97〜99.9重量%を含み得る。そして、前記グリコール系有機溶媒に加えて、前記追加溶媒をさらに含む場合、前記アルカリ金属ドープ用組成物は、上述のアルカリ金属供給源約0.1〜10重量%、或いは約0.1〜5重量%、或いは約0.1〜3重量%と、グリコール系有機溶媒約35〜65重量%、或いは約45〜60重量%、或いは約47〜55重量%と、前記追加溶媒30〜60重量%、或いは約37〜54重量%、或いは約40〜52重量%を含み得る。但し、かかる各成分の含有量範囲は、上述した範囲に限らず、太陽電池の種類等に応じて適切なアルカリ金属の拡散程度などを考慮して、適切な範囲に調節できる。
【0089】
上述した一具現例のアルカリ金属ドープ用組成物を用いて、スピンコートのように液状組成物を塗布する非真空工程等を介してより容易に基板上にアルカリ金属供給源含有層を良好に形成することができる。前記アルカリ金属ドープ用組成物の塗布工程は、先に説明したとおりの方法を用いて実施できる。
【0090】
この形成後、通常の工程でCIS系太陽電池を製造することにより、より優れた効率を有する太陽電池を容易に提供することができる。また、アルカリ金属の拡散の程度もまた容易に調節できることになり、最近求められるフレキシブル基板を有するCIS系太陽電池の製造においても好ましく適用できる。
【0091】
上述のアルカリ金属ドープ用組成物を工程に適用することができるCIS系太陽電池としては、CIS太陽電池、CGS太陽電池やCIGS太陽電池などのように、一般にCIS系薄膜太陽電池の範疇に属するものと知られている任意の太陽電池が挙げられる。
【0092】
前記アルカリ金属ドープ用組成物の塗布後の熱処理工程は、アルカリ金属ドープ用組成物内に含まれた溶媒を除去すると共に、アルカリ金属成分だけが残るようにする温度で実施できる。
【0093】
熱処理工程は、例えば、約80〜150℃で行うソフトベーク工程、及び約150〜500℃で行うハードベーク工程により実施できる。かかる熱処理により、アルカリ金属供給源含有層からアルカリ金属が基板に拡散され、アルカリ金属ドープ層が形成できる。
【0094】
このような熱処理工程の結果として、アルカリ金属成分だけがポリイミドフィルムにドープされた形態で残ることになる。
【0095】
本発明はまた、前記製造方法によって製造された積層体を含む薄膜型太陽電池を提供する。
【0096】
図1は、本発明の一具現例による薄膜型太陽電池の構造を概略的に示した構造図である。前記
図1は、本発明を説明するための一例であるだけで、本発明がこれに限定されるのではない。
【0097】
図1を参照してより詳しく説明すると、前記薄膜型太陽電池100は、ポリイミドフィルム層12とアルカリ金属ドープ層13とを有する積層体10aを含む構造を有する。また、前記薄膜型太陽電池100は、金属基材層11と、前記金属基材層11の一面に位置するポリイミドフィルム層12と、アルカリ金属ドープ層13と、を含む積層体10bを含む構造を有し得る。さらに、積層体10cは、金属電極層20がさらに形成された構成を有することもできる。
【0098】
具体的に、本発明の一具現例による薄膜型太陽電池100は、金属基材層11と、前記金属基材層11の一面に位置するポリイミドフィルム層12と、アルカリ金属ドープ層13と、前記アルカリ金属ドープ層13上に位置する金属電極層20と、前記金属電極層20上に位置し、化合物半導体を含む光吸収層30と、前記光吸収層30上に位置する透明電極層40と、を含み得る。
【0099】
前記金属電極層20は、通常、薄膜型太陽電池において金属電極(または裏面電極)の役割をするものであって、通常、薄膜型太陽電池で金属電極として用いられる金属であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、前記金属電極層20は、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、または銅(Cu)等を含むことができ、この中でも、高い電気伝導度を有し、光吸収層とのオーミック接触(ohmic contact)及びSe雰囲気下で優れた高温安定性を有するモリブデンが好ましいこともある。
【0100】
また、前記金属電極層20は、電池特性の面における改善効果を考慮すると、100nm〜1μmの厚みを有することが好ましいこともある。
【0101】
前記光吸収層30は、化合物半導体を含み、透明電極層40を透過した太陽光を吸収して電子−正孔対を形成し、電子と正孔をそれぞれ別の電極に伝達して電流を発生させる役割をする。
【0102】
具体的に、前記化合物半導体は、IB族(11族)元素−IIIA族(13族)元素−VIA族(16族)元素の化合物半導体、IIB族(12族)元素−VIA族(16族)元素の化合物半導体、及びIIB族(12族)元素−VA族(15族)元素の化合物半導体からなる群より選択されるものであり得、このとき、前記IB族元素は銅(Cu)であり得、前記IIB族元素はカドミウム(Cd)であり得、前記IIIA族元素はアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)であり得、前記VIA族元素は硫黄(S)、セレン(Se)またはテルル(Te)であり得、前記VA族元素はリン(P)であり得る。
【0103】
より具体的に、前記化合物半導体は、CuInS
2、CuInSe
2、CuIn(Se
1−xS
x)
2(0<x<1)、Cu(In
1−yGa
y)S
2(0<y<1)、Cu(In
1−yGa
y)Se
2(0<y<1)、Cu(In
1−yGa
y)S
2(Se
1−xS
x)
2(0<x<1,0<y<1)、CuGaS
2、CuGaSe
2、CuGa(Se
1−xS
x)
2(0<x<1)、CdTe及びZn
3P
2からなる群より選択されるものであり得、この中でも、CuInSe
2、Cu(In
1−yGa
y)Se
2(0<y<1)、CuGaSe
2、及びCu(In
1−yGa
y)Se
2(0<y<1)からなる群より選択されるものがより好ましいこともある。
【0104】
また、前記光吸収層30は、前記半導体化合物のうち、単一の半導体化合物を含む単一膜構造を含むこともでき、または異種の半導体化合物を含む2層以上の多層膜構造を含むこともできる。
【0105】
前記光吸収層30は、0.1〜900μmの厚みを有することができ、前記範囲の厚みを有する場合、光吸収層30における光損失を最小化し、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0106】
前記透明電極層40は、太陽光が入射して透過される電極であって、光透過度の低下を防止し、比抵抗が低く、表面粗さが良好な物質であれば、特に制限なく使用できる。具体的には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化フッ素スズ(FTO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ZnO−(Ga
2O
3またはAl
2O
3)、スズ系酸化物(TO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、亜鉛酸化物、アルミドープ亜鉛酸化物、CdO、CdSnO
4、及びこれらの混合物からなる群より選択される透明伝導性金属酸化物が使用できる。また、前記透明電極層40は、前記伝導性金属酸化物の単一膜または多層膜からなることもある。
【0107】
前記透明電極層40は、光吸収層30と接する透明電極層40の面の反対側に透明電極に対する支持体として透明基板(未図示)をさらに含むこともできる。前記透明基板としては、外部光の入射が可能なように透明性を有する物質であれば、特に制限なく使用できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース、またはこれらの共重合体等のプラスチック、或いはガラス等が使用できる。また、前記透明基板は、チタン(Ti)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択された物質でドープできる。
【0108】
また、前記光吸収層と透明電極層との間の仕事関数の差と格子定数の差を緩和し、正孔及び電子の移動を円滑にするために、前記透明電極層40と光吸収層30との間にバッファ層(未図示)が位置することもできる。前記バッファ層にはnタイプの半導体が使用可能で、具体的には、CdS、ZnS、ZnSe、In
2O
3、及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物が使用できる。
【0109】
本発明はまた、前記のような構造を有する薄膜型太陽電池の製造方法を提供する。
【0110】
詳細には、前記薄膜型太陽電池の製造方法は、基板を製造する段階と、前記基板上に金属電極層、光吸収層及び透明電極層を順次形成する段階とを含む。
【0111】
前記基板の製造段階は、先に説明したポリイミド金属積層体の製造方法によって実施できる。
【0112】
前記金属電極層の形成工程は、スパッタリング法、真空蒸着法、またはスラリーコート法等、通常の金属電極層の形成方法によって実施できる。一例として、スパッタリング法により金属電極層を形成する場合、金属電極層の形成材料としてモリブデンを、スパッタリングシステムを用いてアルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、またはキセノン(Xe)等のプラズマガス中で蒸着させることができる。その際、スパッタリングシステム内の温度及び圧力は、25〜120℃、そして3〜10mtorrに維持することが好ましく、また、直流電源(DC power)は、150〜200Wであることが好ましい。
【0113】
また、前記光吸収層の形成工程は、前記で説明したような化合物半導体を用いて、スパッタリング、真空蒸着等の物理気相蒸着法、化学気相蒸着法、または前記の化合物半導体を含む組成物の噴射、印刷、または電着等の非真空コーティング法等の通常の方法で実施できる。一例として、スパッタリング法を用いてCIG系光吸収層を形成する場合には、ターゲットとしてCuInまたはCuGaのような合金、またはCu、In、Ga等の金属組織を用いて室温で成長させることができる。その際、成長圧力及び温度を適切に変化させることで、光吸収層を形成する半導体化合物の組成と結晶成長方向を変化させることができるが、(200)の優先方向に結晶が成長できるように成長圧力は3〜10mtorrであることが好ましく、成長温度は25〜600℃であることが好ましいこともある。また、直流電源は、120〜200Wであることが好ましいこともある。万が一セレン化工程がさらに必要な場合、前記化合物半導体層の形成後、窒素、酸素またはアルゴンガスの雰囲気下で、10〜50℃/秒の昇温速度にて、450〜600℃の温度にまで加熱する熱処理を実施する。
【0114】
前記のような条件で光吸収層を形成する場合、ポリイミドフィルム層から拡散されたアルカリ金属成分による作用及びガリウム拡散等の作用により化合物半導体の結晶成長が促進され、成長した結晶は、(200)の優先方向に配列された結晶構造を有し得る。
【0115】
次に、前記製造された光吸収層に対する透明電極層の形成工程は、通常の方法によって実施できるため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0116】
本発明による薄膜型太陽電池の製造方法は、金属基板及び前記金属基板の一面に位置し、アルカリ金属でドープされたポリイミドを含むポリイミドフィルム層を含む積層体を用いることで、550℃以上の高温工程が可能であり、バリアフィルムの形成工程が不要で、モノリシック製造工程が可能である。
【0117】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態で具現でき、ここで説明する実施例に限らない。
【0118】
実施例1及び2:アルカリ金属ドープ液の製造
下記表1の組成により、アルカリ金属供給源をグリコール系溶媒に0.1〜5重量%の濃度になるように常温で撹拌機を用いて溶解させた後、追加溶媒に10〜80重量%に希釈してろ過することで、製造例1及び2のアルカリ金属ドープ液を製造した。
【0120】
実施例1:ポリイミド金属積層体の製造
パラジアミン(PDA,0.148mol)を無水DMAc16gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA,0.146mol)を添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間攪拌した。前記反応は無水条件下で行った。
【0121】
結果として得られた反応物が10,000cPの粘度を有するように固形分重量%を調節して、ポリイミドワニスを製造した。
【0122】
金属基材層として厚み10μm銅基板を用意し、前記で製造したポリイミドワニスを金属基材層に20μmの厚みでキャスティングした後、乾燥した。フィルム状のポリイミドワニスが形成された金属基材層をオーブンに入れ、2℃/minの速度で加熱し、80℃で15分、150℃で30分、220℃で30分、350℃で1時間保持してイミド化工程を行った。
【0123】
イミド化工程完了の後、前記ポリイミドフィルム上に、製造例1の組成物をスピンコートし、90℃で1分間ホットプレートにてソフトベークし、450℃のオーブンでハードベークを行い、金属基材層上にポリイミド層とナトリウムドープ層が順次形成された積層体を製造した。ポリイミド層は、約12.5μmの厚みを有することが確認され、ナトリウムドープ層は、約150nmの厚みを有することが確認された。
【0124】
実施例2:薄膜型太陽電池の製造
段階1:電極層の形成
前記実施例1で製造した、銅基板上にポリイミドフィルム層、ナトリウムドープ層が順次形成された積層体を15rpmで回転させながら、前記ナトリウムドープ層上にモリブデン(Mo)ターゲット(サイズ:2inch、厚み0.25mm、純度99.99%)を5分間スパッタリングして厚み1μmのMo金属電極層を形成した。前記スパッタリング工程時のプラズマガスとしては、純度99.999%のArを使用し、反応器内部の圧力を10
−6torrに保持した。また、成長温度及び成長圧力を各々25℃及び4〜10mtorrとし、DC電源は2000〜4000Wとした。
【0125】
前記製造工程により、実施例1の積層体上にモリブデン金属電極層が形成された積層体を製造した。
【0126】
段階2:薄膜型太陽電池の製造
前記段階1で製造した積層体上にガリウム、銅、インジウム、セリウムを500℃で同時蒸発法によって蒸着することで光吸収層を形成した。その際、成長圧力及びDC電源は、各々5mtorr及び120Wとした。
【0127】
次いで、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛からなる透明電極層を10cm×10cmの大きさに形成した後、前記光吸収層が形成された積層体に透明電極層が光吸収層と接するように積層して薄膜型太陽電池を製造した。
【0128】
実施例3
製造例2のアルカリドープ組成物を用いたことを除いては、実施例1及び2と同じ工程を経て薄膜型太陽電池を製造した。
【0129】
比較例1:ポリイミドフィルムの製造
パラジアミン(PDA,0.148mol)を無水DMAc16gに溶かし、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA,0.146mol)を添加して45℃で2時間撹拌した後、40℃で24時間攪拌した。前記反応は無水条件下で行った。
【0130】
結果として得られた反応物が10,000cPの粘度を有するように固形分重量%を調節して、ポリイミドワニスを製造した。
【0131】
前記で製造したポリイミドワニスを金属基材の離型フィルム上に20μmの厚みでキャスティングした後、乾燥した。フィルム状のポリイミドワニスが形成された離型フィルムをオーブンに入れ、2℃/minの速度で加熱し、80℃で15分、150℃で30分、220℃で30分、350℃で1時間、500℃で1時間保持してイミド化工程を行った。
【0132】
イミド化工程の完了後に、ポリイミドフィルムが形成された離型フィルムを冷却させ、離型フィルムからポリイミドフィルムを分離した。
【0133】
比較例2:ポリイミドフィルム−モリブデン金属電極層の積層体の製造
前記比較例1で製造したポリイミドフィルム上に前記実施例1と同じ条件及び方法で実施して、DCスパッタにより厚み400〜800nmのMo層を形成してポリイミドフィルム−モリブデン金属電極層の積層体を製造した。
【0134】
比較例3:薄膜型太陽電池の製造
実施例2の段階1で製造した積層体の代わりに、比較例2のポリイミドフィルム−モリブデン金属電極層の積層体を用いることを除いては、前記実施例2と同じ方法でモリブデン金属電極層上に光吸収層及び透明電極層を順次形成して薄膜型太陽電池を製造した。
【0135】
試験例1
前記実施例1で製造した積層体と、前記比較例1で製造したポリイミドフィルムに対して熱機械分析(Thermal Mechanical Analyzer,TMA)を実施した。
【0136】
その結果を
図2に示した。
図2に示すように、実施例1の積層体(ガラス転移温度585℃)は、比較例1のポリイミドフィルム(546℃)に比べて増加したガラス転移温度を有し、より改善された熱安定性を示した。
【0137】
試験例2
前記実施例2の段階1で製造した積層体、比較例1のポリイミドフィルム、及び比較例2のポリイミドフィルム−モリブデン金属電極層の積層体に対して、前記試験例1と同じ方法で熱機械分析を実施した。
【0138】
その結果を
図3に示した。
図3に示すように、実施例2の段階1で製造した積層体(ガラス転移温度>600℃)は、比較例1のポリイミドフィルム(ガラス転移温度546℃)、及び比較例2のポリイミドフィルム−モリブデン金属電極層の積層体(ガラス転移温度575℃)に比べて著しく増加したガラス転移温度を有し、より改善された熱安定性を示した。
【0139】
試験例3
前記実施例2で製造した薄膜型太陽電池を手で曲げて可撓性か否かを評価し、その結果を
図4に示した。
図4に示すように、実施例2の薄膜型太陽電池は、可撓性を示すことが確認できる。
【0140】
試験例4
前記実施例2で製造した薄膜型太陽電池の電界放射形走査型電子顕微鏡(field emission scanning electronic microscope,FE−SEM)を用いて薄膜型太陽電池の断面及び最上層の表面をそれぞれ観察した。その結果を
図5a及び
図5bに示した。
【0141】
前記と同じ方法にて、比較例3で製造した薄膜型太陽電池に対してもFE−SEMを用いて薄膜型太陽電池の断面及び最上層の表面を各々観察し、その結果を
図6a及び6bに示した。但し、
図5a、
図5b及び
図6a、
図6bの薄膜型太陽電池の観察写真において、PI filmはポリイミドフィルム層を、Mo layerはモリブデン金属電極層を、CIGSはCIGS化合物半導体を含む光吸収層を、TCOは透明電極層を各々意味し、各々の薄膜型太陽電池の断面写真において、ポリイミドフィルム層(PI film)の裏面に形成された銅基板は、観察写真から除かれた。
【0142】
図5a、
図5b及び
図6a、
図6bに示すように、実施例2の薄膜型太陽電池における光吸収層は、比較例3の光吸収層と比較して、化合物半導体の結晶粒の成長サイズが大きく、緻密な構造を有していることが確認できる。
【0143】
試験例5
前記実施例2及び比較例3で製造した薄膜型太陽電池に対して太陽模写装置を用いて電流−電圧特性を測定し、その結果を下記
図7及び8にそれぞれ示した。また、測定された電流−電圧曲線から開回路電圧(Voc)、充填係数(fill factor:FF)、エネルギー変化効率(Eff)及び短絡電流(J
sc)を計算した。その結果を表1に示した。その際、前記太陽模写装置は100W、光の強さは100W/cm
2に設定したキセノンランプを使用し、前記キセノンランプの太陽条件(AM 1.5)は、標準太陽電池を用いて補正した。
【0144】
図7は、実施例2の薄膜型太陽電池の電流−電圧特性の評価結果を示したグラフであり、
図8は、比較例3の薄膜型太陽電池の電流−電圧特性の評価結果を示したグラフである。
【0146】
図7〜8及び表1に示すように、ナトリウムでドープされたポリイミドのポリイミドフィルム層を含む実施例2の薄膜型太陽電池(6.94%、0.003886W)は、未ドープポリイミドのポリイミドフィルム層を含む比較例3の薄膜型太陽電池(2.564%、0.001436W)に比べて大幅に改善された性能特性を示した。
【0147】
試験例6
実施例1の製造過程中にナトリウムドープ層が形成された部分をSEM/EDXを用いて分析し、その分析結果を
図9に示した。かかる分析結果を通じて、前記ナトリウムシリケートをアルカリ金属供給源として含むアルカリ金属ドープ液を用いて前記ナトリウムドープ層を形成する場合、そこに由来するSiOx薄膜が形成されることを確認した。
【0148】
試験例7
また、実施例2、3及び比較例2の製造過程中に形成されたMo/ポリイミド層(実施例2ではNaドープ、比較例2ではNaドープなし)を太陽電池製造のための1064nmのレーザーパターンニング後、OM(光学顕微鏡;Optical Microscope)で観察及び分析し、その結果を
図10〜12に順次図示した。
【0149】
図10〜12を参考にすると、実施例2では、太陽電池の製造のための1064nmのレーザーパターニング後もNaドープ層の形成によってMo/ポリイミド層等の損傷が略発生しないことが確認された。また、実施例3では、Mo/ポリイミド層等の損傷が比較例2に比べて小さく発生することが確認され、これに比べ、比較例2ではレーザーパターニングによる損傷がかなり発生することが確認された。
【0150】
以上で本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、かかる具体的技術は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるのはない点は明らかであるはずである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されるといえる。