特許第6011745号(P6011745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6011745-エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011745
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/10 20060101AFI20161006BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20161006BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20161006BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20161006BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08G14/10
   C08G59/62
   C08J5/24CFC
   H05K1/03 610K
   H05K1/03 610L
   H05K1/03 610R
   H05K3/46 T
   H05K3/46 B
   H05K1/03 610T
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-520088(P2016-520088)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2015076889
(87)【国際公開番号】WO2016052290
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2016年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-203032(P2014-203032)
(32)【優先日】2014年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】矢本 和久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−236833(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1418899(CN,A)
【文献】 特開2009−073889(JP,A)
【文献】 特開昭58−219253(JP,A)
【文献】 F.J. Ludwig, A.G. Baillie, Jr,Reversed-Phase Liquid Chromatographic Separation of p-tert-Butylphenol-Formaldehyde Linear and Cyclic Oligomers,Analytical Chemistry,米国,American Chemical Society,1986年,Vol.58, No.9,pp.2069-2072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00− 16/06
C08G 59/00− 59/72
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I):
【化1】
で表される構造部位αと、下記構造式(II):
【化2】
で表される構造部位βとを繰り返し構造単位として有し、下記構造式(III):
【化3】
で表される2官能性化合物の含有量が、GPCチャート図の面積比から算出される値で1〜12%の範囲であることを特徴とするトリアジン環含有フェノール樹脂。
【請求項2】
GPC測定から算出されるMw/Mnが1.35〜1.85の範囲である請求項1記載のトリアジン環含有フェノール樹脂。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂(B)とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記フェノール樹脂(B)として、請求項1又は2に記載のトリアジン環含有フェノール樹脂を用いるエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
更に、硬化促進剤を含有する請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなるプリプレグ。
【請求項7】
請求項記載のプリプレグを用いてなる回路基板。
【請求項8】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルム。
【請求項9】
請求項記載のビルドアップフィルムを用いてなるビルドアップ基板。
【請求項10】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物と、無機充填材とを含有する半導体封止材料。
【請求項11】
請求項10記載の半導体封止材料を用いてなる半導体装置。
【請求項12】
請求項記載のエポキシ樹脂組成物と、強化繊維とを含有する繊維強化複合材料。
【請求項13】
請求項12記載の繊維強化複合材料の硬化物である成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物において優れた難燃性、耐熱性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった優れた誘電特性、さらには優れた熱伝導率を与えるエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の回路基板材料として、ガラスクロスに、エポキシ樹脂系、ベンゾオキサジン樹脂系、BT(ビスマレイミド−トリアジン)樹脂系などの熱硬化性樹脂を含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ、該プリプレグを加熱硬化した積層板、該積層板と該プリプレグとを組み合わせ、加熱硬化した多層板が広く使用されている。
【0003】
近年、これら各種用途、とりわけ先端材料用途において、耐熱性、誘電特性、耐湿信頼性に代表される性能の一層の向上が求められている。更に、環境調和の観点からハロゲン系難燃剤排除の動きがより一層高まり、特にハロゲンフリーで高度な難燃性を持つ材料の開発が強く要求されている。
【0004】
そこで、例えば、ハロゲンフリーで優れた難燃性を発現する熱硬化システムとして、エポキシ樹脂の硬化剤にアミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂を用いる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、これらのトリアジン環含有フェノール樹脂は、リン系難燃剤などを併用すれば良好な難燃性を発現するものの、添加系難燃剤や難燃助剤の併用なしには十分な難燃性を発現するには至らないものであった。加えて、近年の電子部品における高周波化の傾向は著しく、半導体封止材や銅張積層板、ビルドアップフィルムなどの絶縁材料には、より誘電率や誘電正接の低い樹脂材料が求められているところ、前記トリアジン環含有フェノール樹脂では、十分に要求レベルを満足するものではなかった。
【0006】
また、前記トリアジン環含有フェノール樹脂の合成において、フェノール類としてオルソクレゾールを用いる方法も開示されているが、この方法は、誘電率の低下に寄与するものの、溶剤溶解性に課題がありワニス用途の制限を受けるという問題があった。
【0007】
このように、先端材料への使用に耐え得るほどの高い難燃性、高い耐熱性、低誘電率や低誘電正接を有するものではなく先端材料に使用できるものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−21419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、硬化物において、優れた難燃性、耐熱性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった優れた誘電特性、さらには優れた熱伝導率を与えるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂用の硬化剤として、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンとを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂を用いることにより、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性を発現するとともに、低誘電正接、低誘電率といった優れた誘電特性、さらには優れた熱伝導率を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記構造式(I):
【0012】
【化1】
で表される構造部位αと、下記構造式(II):
【0013】
【化2】
(式中Rは炭素原子数1〜6のアルキル基)
で表される構造部位βとを繰り返し構造単位として有することを特徴とするトリアジン環含有フェノール樹脂に関する。
【0014】
また、本発明は、エポキシ樹脂と前記トリアジン環含有フェノール樹脂とを必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、前記エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることにより得られるプリプレグ、前記プリプレグを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して得られる回路基板、前記エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることにより得られるビルドアップフィルム、前記ビルドアップフィルムを回路が形成された回路基板に塗布し、加熱硬化させて得られる回路基板に凹凸を形成し、次いで前記回路基板にめっき処理を行うことにより得られるビルドアップ基板、前記エポキシ樹脂組成物と、無機充填材とを含有する半導体封止材料、前記半導体封止材料を加熱硬化させて得られる半導体装置、前記エポキシ樹脂組成物と、強化繊維とを含有する繊維強化複合材料、及び前記繊維強化複合材料を硬化させてなる成形品に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化物において、優れた難燃性及び耐熱性に加え、低誘電正接、低誘電率といった優れた誘電特性、さらには優れた熱伝導率を与えるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供できる。
【0017】
このため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、プリント基板用樹脂組成物、電子部品用封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト等の電子材料分野に用いた場合は、高密度実装化や、高周波対応化、高速演算化などに対応する樹脂組成物としてきわめて有用である。また、得られる該成形硬化物は優れた難燃性、耐熱性、熱伝導率、低誘電正接及び低誘電率を兼備し、上記用途や、更に接着剤、複合材料等における高度の要求を満たすものであり、高信頼性が必要な分野に適用可能である。
【0018】
また、本発明のトリアジン環含有フェノール樹脂は、溶剤溶解性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
<エポキシ樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(A)」とする。)について説明する。上記エポキシ樹脂(A)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル変性フェノール型エポキシ樹脂(フェノール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された他価フェノール型エポキシ樹脂)、ビフェニル変性ナフトール型エポキシ樹脂(ナフトール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された他価ナフトール型エポキシ樹脂)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られるという点において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が好ましい。
【0021】
また、誘電特性に優れる硬化物が得られるという点において、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル変性フェノール型エポキシ樹脂(フェノール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された他価フェノール型エポキシ樹脂)、ビフェニル変性ナフトール型エポキシ樹脂(ナフトール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された他価ナフトール型エポキシ樹脂)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が好ましい。
【0022】
本発明で用いるフェノール樹脂(以下、「フェノール樹脂(B)」とする。)は、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンとを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂である。詳細には、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンとの縮合物、メラミンとホルマリンとの縮合物、パラ−アルキルフェノールとホルマリンとの縮合物、パラ−アルキルフェノール、及びメラミンの混合物である。
【0023】
該混合物中、下記構造式(III):
【0024】
【化3】
(式中Rは炭素原子数1〜6のアルキル基)
で表される2官能性化合物の含有量が1〜12%の範囲であることが難燃性に優れる点から好ましい。
【0025】
また、誘電率、誘電正接に優れる点からGPC測定から算出される分子量分布(Mw/Mn)が1.35〜1.85の範囲であることが好ましい。
【0026】
なお、本発明において前記2官能化合物の含有量は、下記条件で測定されるGPCチャート図の面積比から算出されるものである。また、分子量分布(Mw/Mn)は、下記のGPC測定条件で測定した値である。
<GPC測定>
以下の条件により測定した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折)検出器
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC−WS バージョン1.12」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「EcoSEC−WS バージョン1.12」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−20」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0027】
ここで、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンとの縮合物は、
下記構造式(I):
【0028】
【化4】
で表される構造部位αと、下記構造式(II):
【0029】
【化5】
(式中Rは炭素原子数1〜6のアルキル基)
で表される構造部位βとを繰り返し構造単位として有するもの(Y)である。
したがって本発明は、エポキシ樹脂(A)及び前記(Y)を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物でもある。
【0030】
前記構造式(II)及び(III)中のRは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。中でも、耐熱性や誘電特性、難燃性等の諸性能に優れることから、ターシャリーブチル基であることが好ましい。即ち、前記パラ−アルキルフェノールとして、パラ−ターシャリーブチルフェノールを用いることが好ましい。
【0031】
前記したトリアジン環含有フェノール樹脂は、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンの各成分を反応させて得られるものであるが、具体的にはパラ−アルキルフェノール、メラミン、及びホルマリンをを無触媒あるいは触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。また、各原料の反応順序も特に制限はなく、パラ−アルキルフェノールとホルマリンをまず反応させてからメラミンを加えてもよいし、逆にホルマリンとメラミンを反応させてからパラ−アルキルフェノールを加えて反応させてもよい。或いは、同時に全ての原料を加えて反応させてもよい。
【0032】
この時、パラ−アルキルフェノールに対するホルマリンのモル比は特に限定されるものではないが、好ましくは、ホルマリン/パラ−アルキルフェノール=0.1〜1.1(モル比)であり、より好ましくは、前記比として0.2〜0.8である。
【0033】
パラ−アルキルフェノールに対するメラミンとのモル比は、反応系が均一であって、かつ、反応物も均一になる点、及び得られる硬化物の架橋密度が適当であり、硬化物の物性に優れる点から、メラミン/パラ−アルキルフェノール=0.03〜1.50(モル比)となる範囲であることが好ましく、特にメラミン/パラ−アルキルフェノール=0.03〜0.50(モル比)であることが好ましい。
【0034】
また、触媒を使用する場合、塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、及びこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等が挙げられ、酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸、燐酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、あるいは酢酸亜鉛などの2価金属塩等が挙げられる。ここで、本発明のエポキシ樹脂組成物を電気電子材料用の樹脂として使用する場合には、金属などの無機物が触媒残として残らないようにすることが好ましいことから、塩基性の触媒としてはトリエチルアミンなどのアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用することが好ましい。
【0035】
また、上記反応は反応制御の面から反応を各種溶媒の存在下で行ってもよい。必要に応じて中和、水洗して塩類などの不純物の除去を行ってもよいが、無触媒あるいは触媒にアミン類を使用した場合は不純物の除去は行わなくてもよい。
【0036】
反応終了後、縮合水、未反応のホルマリン、パラ−アルキルフェノール、溶媒等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、メチロール基を実質的に含まないトリアジン環含有フェノール樹脂とすることが好ましく、そのため120℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。また120℃以上の温度であれば充分時間をかけることによりメチロール基を消滅させることができるが、効率的に消滅させるにはより高い温度、好ましくは150℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。この時高温においてはノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい、加熱とともに蒸留することが好ましい。
【0037】
このようにして得られるトリアジン環含有フェノール樹脂は、該樹脂中、残留する未反応のパラ−アルキルフェノールの含有率は何ら限定されるべきものではないが、5質量%以下であることが好ましく、硬化物の耐熱性や耐湿性が良好なものとなることから3質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
また、上記したトリアジン環含有フェノール樹脂は、特に、軟化点75〜200℃の範囲であることが好ましく、難燃性と耐熱性とのバランスに優れる点から75〜180℃の範囲であることがより好ましい。ここで軟化点は、環球法(「JIS K7234−86」に準拠、昇温速度が5℃/分)にて測定した値である。
【0039】
前記エポキシ樹脂(A)と、前記フェノール樹脂(B)との配合割合は、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、フェノール樹脂(B)中のフェノール性水酸基とのモル比(エポキシ基/フェノール性水酸基)が5〜0.5となる割合であることが硬化性及び硬化物の耐熱性の点から好ましい。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記で詳述したエポキシ樹脂(A)、及び、パラ−アルキルフェノールとメラミンとホルマリンとを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂(B)に加え、他の熱硬化性樹脂を併用しても良い。
上記した他の熱硬化性樹脂は、例えば、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、マレイミド化合物、活性エステル樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、熱硬化性樹脂組成物100質量部中1〜50重量部の範囲であることが好ましい。
前記シアネートエステル樹脂は、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールP型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールZ型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールAP型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
前記ベンゾオキサジン樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F−a型ベンゾオキサジン樹脂)やジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P−d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記マレイミド化合物は、例えば、下記構造式(i)〜(iii)の何れかで表される各種の化合物等が挙げられる。
【0041】
【化6】
【0042】
(式中Rはm価の有機基であり、x及びyはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかであり、nは1以上の整数である。)
【0043】
【化7】
【0044】
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、nは1〜3の整数、mは繰り返し単位の平均で0〜10である。)
【0045】
【化8】
【0046】
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、nは1〜3の整数、mは繰り返し単位の平均で0〜10である。)これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0047】
前記活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。前記活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂等が挙げられる。
活性エステル樹脂として、具体的にはジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂として、より具体的には下記一般式(iv):
【0048】
【化9】
【0049】
〔式中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。〕で表される化合物が挙げられる。樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、kは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤として前記フェノール樹脂(B)の他、本発明の効果を損なわない範囲でアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物など、その他のエポキシ樹脂用硬化剤(Z)を併用してもよい。この場合、該硬化剤(Z)は、前記フェノール樹脂(B)の一部を硬化剤(Z)に置き換えて使用することができる。即ち、硬化剤(Z)を併用する場合、該硬化剤(Z)中の活性水素と、フェノール樹脂(B)中の活性水素との合計が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1モルに対して、0.2〜2となる割合であることが好ましい。また、硬化剤(Z)は、フェノール樹脂(B)との合計質量に対して、50質量%以下となる割合で使用することができる。
【0050】
ここで使用し得る、アミン系化合物は、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。アミド系化合物は、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系化合物は、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0051】
また、前記硬化剤(Z)として用いられるフェノール系化合物は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。また、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂は、本発明のフェノール樹脂(B)以外のものであり、具体的には、メラミンやベンゾグアナミン等のアミノ基含有トリアジン化合物と、フェノールと、ホルムアルデヒドとの共重合体が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、特に、硬化物の線膨張係数がより低くなり、熱的衝撃及び物理的衝撃に強く靱性に優れる点から多価フェノール系化合物が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が好ましい。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)と、前記フェノール樹脂(B)との硬化反応を速やかに進行させるために、硬化促進剤(以下、「硬化促進剤(C)」とする。)を適宜使用することができる。ここで使用し得る硬化促進剤(C)は、例えば、イミダゾール類、三級アミン類、三級ホスフィン類等が挙げられる。
【0054】
ここでイミダゾール類としては、具体的には2−エチル−4−メチルイミダゾール、2
−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−
ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、
2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−
フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−
ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−
2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノメチル−2−メチ
ル−イミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シア
ノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール
等の他、マスク化イミダゾール類が挙げられる。
【0055】
三級アミン類としては、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピ
ルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、テトラメチルペンタンジア
ミン、テトラメチルヘキサジアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジル
アミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジメチルア
ニシジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N′−ジメチルアミノピリジン、N−メ
チルピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,
0]−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0056】
三級ホスフィン類として具体的には、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、
トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0057】
また、硬化促進剤(C)の添加量は、目標とする硬化時間等によって適宜調整することができるが、前記したエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)及び前記硬化促進剤(C)の総質量に対して0.01〜2質量%となる範囲であることが好ましい。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、使用用途に応じて、上記した各成分に加え、更に有機溶剤(以下、「有機溶剤(D)」とする。)を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を銅張積層板用ワニスとして用いる場合には基材への含浸性が改善される他、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、特にビルドアップフィルムとして用いる場合には、基材シートへの塗工性が良好になる。ここで使用し得る有機溶剤(D)は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトンが好ましい。
有機溶剤(D)の使用量は、銅張積層板用ワニスとして用いる場合、組成物中の不揮発分が50〜70質量%となる範囲であることが好ましい。一方、ビルドアップフィルム用ワニスとして用いる場合、組成物中の不揮発分が30〜60質量%となる範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、使用用途に応じ、上記した各成分の他、適宜、無機質充填材、改質剤、難燃付与剤等を配合してもよい。
【0060】
ここで用いる前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。ここで、溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0061】
無機充填材の配合割合は用途や所望特性によって、望ましい範囲が異なるが、例えば半導体封止材用途に使用する場合は、線膨張係数や難燃性を鑑みれば高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物全体量に対して65〜95質量%の範囲、特に85〜95質量%の範囲であることが好ましい。また導電ペーストや導電フィルムなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0062】
前記改質剤として使用される熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂としては種々のものが全て使用できるが、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが例示できる。
【0063】
前記難燃付与剤は、例えば、ハロゲン化合物、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物などが挙げられる。具体的には、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂やブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのハロゲン化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6ジメチルフェニル)ホスフェート、レゾルシンジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、赤リン、リン酸グアニジン、ジアルキルヒドロキシメチルホスホネートなどの縮合リン酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミンなどの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が挙げられる。しかしながら、本発明のエポキシ樹脂組成物は、環境負荷の高いハロゲン系の難燃剤を使用しなくとも優れた難燃効果を発現することを特徴とする為、上記した難燃付与剤を用いる場合には、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物を用いることが好ましい。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物の熱硬化の条件は特に制限されるものではなく、通常のフェノール樹脂を硬化させる条件で硬化せしめることが可能であり、樹脂成分が軟化する温度以上であれば問題なく、通常、120℃以上250℃以下の温度で行うことができる。特に成形性が良好となる点から150〜220℃の温度範囲であることが好ましい。
【0065】
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した通り、銅張積層板用樹脂組成物、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、ビルドアップフィルム等として有用であるが、これらの他、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ用樹脂組成物、摩擦材用結合剤、導電ペースト、樹脂注型材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料等に用いることもできる。
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物から銅張積層板用樹脂組成物を製造する方法は、具体的には、前記エポキシ樹脂(A)及び前記フェノール樹脂(B)を必須成分とし、更に、必要により、硬化促進剤(C)、有機溶剤(D)を配合してワニス化する方法が挙げられる。ここで該ワニスは不揮発分が50〜70質量%となる範囲であることが繊維基材への含浸性とプリプレグの生産性の点から好ましい。
【0067】
次に、上記銅張積層板用樹脂組成物から銅張積層板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0068】
上記方法により得られたワニスを紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの繊維基材に含浸させ、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。この際、用いるエポキシ樹脂組成物と補強基材の配合割合は、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調整することが好ましい。
【0069】
得られたプリプレグを積層し、更に銅箔を重ねて、加熱圧着させることにより、目的とする銅張積層板を得ることができる。ここで加熱圧着させる方法は、具体的には、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃なる温度条件で行う方法が挙げられる。また、加熱圧着は、10分〜3時間行うことが好ましい。
【0070】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料としても極めて有用である。かかるビルドアッププリント基板の層間絶縁材料は、前記したワニス化の方法のなかでも、特に、前記エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)を必須成分とし、更に、必要により、前記有機溶剤(D)、硬化促進剤(C)を配合する方法により調整することができる。ここで該ワニスは不揮発分が30〜60質量%となる範囲であることが、特に塗工性やフィルム成形性の点から好ましい。このようにして得られたビルドアップ基板用層間絶縁材料からビルドアップ基板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0071】
すなわち、該ビルドアップ基板用層間絶縁材料を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させ、次いで、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法は、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基板を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましく、また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0072】
また、前記ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料は、前記した塗料状の材料のみならずビルドアップフィルムとして用いることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂成分自体が優れた耐熱性を発現することから、ビルドアップフィルムとして特に有用である。
【0073】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用のフィルムとする方法が挙げられる。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0075】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0076】
上記したフィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層を形成させることにより製造することができる。
【0077】
形成される層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0078】
なお、本発明における層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0079】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0080】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmの範囲であり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmの範囲であることが好ましい。
【0081】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0082】
次に、上記のようして得られたフィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前にフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0083】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0084】
また、前記ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料や、ビルドアップフィルム用途においては、本発明における優れた耐熱性を発現するという特質から、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵基板における絶縁材料としてとりわけ有用である。
【0085】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した通り、硬化物において優れた難燃性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった誘電特性に優れる点から銅張積層板用樹脂組成物、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、ビルドアップフィルム等として有用である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、その他電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ用樹脂組成物、摩擦材用結合剤、導電ペースト、接着剤、絶縁塗料、樹脂注型材料等に用いることもできる。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂組成物を電子部品の封止材用樹脂組成物として用いる場合の具体的用途は、半導体封止材料、半導体のテープ状封止剤、ポッティング型液状封止剤、アンダーフィル用樹脂、半導体の層間絶縁膜等が挙げられる。
【0087】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材料用に調整するためには、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)、必要に応じて配合されるその他のカップリング剤、離型剤などの添加剤や無機充填材などを予備混合した後、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合する手法が挙げられる。半導体のテープ状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を加熱して半硬化シートを作製し、封止剤テープとした後、この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物をレジストインキ用樹脂組成物として用いる方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂(A)と、前記フェノール樹脂(B)に、更に、有機溶剤(D)、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。ここで用いる有機溶剤(D)としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート等が挙げられる。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物を摩擦材用結着剤に用いる場合、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)に加え、更に、ヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド等の加熱によりホルムアルデヒドを発生する物質を用い、その他、前記硬化促進剤(C)を配合することによって摩擦材用結着剤を製造することができる。かかる摩擦材用結着剤を用いて摩擦材を調整するには、上記各成分に充填剤、添加剤等を添加、熱硬化させる方法、繊維基材に上記各成分を含浸させ熱硬化させる方法が挙げられる。ここで用いる充填剤、添加剤は、例えばシリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、カシュー油重合物、二硫化モリブデン、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、黒鉛、グラファイト、ゴム粒、アルミニウム粉、銅粉、真ちゅう粉等が挙げられる。
【0090】
更にポッティング型液状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を必要に応じて溶剤に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル用樹脂として使用する方法は、例えば、予め基板ないし半導体素子上にワニス状のエポキシ樹脂組成物を塗布、次いで半硬化させてから、加熱して半導体素子と基板を密着させ、完全硬化させるコンプレッションフロー法等が挙げられる。
【0092】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体の層間絶縁材料として使用する方法は、例えば、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)に加え、硬化促進剤(C)、シランカップリング剤を配合して組成物を調整し、これをシリコン基板上にスピンコーティング等により塗布する方法が挙げられる。この場合、硬化塗膜は半導体に直接接することになるため、高温環境下において線膨張率の差によるクラックが生じないよう、絶縁材の線膨張率を半導体の線膨張率に近づけることが好ましい。
【0093】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物から導電ペーストを調整する方法は、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0094】
本発明のエポキシ樹脂組成物を接着剤用樹脂組成物に調整する方法は、例えば、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)、必要に応じて樹脂類、硬化促進剤(C)、溶剤、添加剤等を室温または加熱下で混合ミキサー等を用いて均一に混合する方法が挙げられ、各種の基材に塗布した後、加熱下に放置することによって基材の接着を行うことができる。
【0095】
本発明の硬化物は、以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物を成形硬化させて得られるものであり、用途に応じて積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルム等として使用できる。前記した通り、プリント基板用の銅張積層板、及びビルドアップフィルムとして特に有用である。
【実施例】
【0096】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」「%」は質量基準である。
<GPC測定>
以下の条件により測定した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折)検出器
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC−WS バージョン1.12」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「EcoSEC−WS バージョン1.12」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−20」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0097】
合成例1
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、p−ターシャリーブチルフェノール883部、メラミン88部、41.5%ホルマリン253部、およびトリエチルアミン1.8部を加え、発熱に注意しながら徐々に100℃まで昇温した。還流下100℃にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら130℃まで3時間かけて昇温した。次に還流下にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら150℃まで1時間かけて昇温した。さらに還流下で2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次に減圧下にて未反応のp−ターシャリーブチルフェノールを除去し、フェノール樹脂(B−1)を得た。得られたフェノール樹脂(B−1)のGPCチャートを図1に示す。GPCチャートより、構造式(III)で表される2官能性化合物の含有量は7.7%であり、Mw/Mnは1.56であった。
【0098】
合成例2
合成例1においてp−ターシャリーブチルフェノール438部、メラミン63部、41.5%ホルマリン106部、およびトリエチルアミン1.8部に変更した以外は合成例1と同様の操作で、フェノール樹脂(B−2)を得た。得られたフェノール樹脂(B−2)のGPCチャートを図2に示す。GPCチャートより、構造式(III)で表される2官能性化合物の含有量は8.4%であり、Mw/Mnは1.42であった。
【0099】
比較合成例1
合成例1のp−ターシャリーブチルフェノール630部、トリエチルアミン1.3部を、フェノール395部、トリエチルアミン0.8部に変更する以外は、合成例1と同様の操作でフェノール樹脂(X−1)を得た。得られたフェノール樹脂(X−1)のGPCチャートを図3に示す。GPCチャートより、2官能性化合物の含有量は13.7%であり、Mw/Mnは2.02であった。
【0100】
比較合成例2
合成例1のp−ターシャリーブチルフェノール630部、トリエチルアミン1.3部を、o−クレゾール454部、トリエチルアミン0.9部に変更する以外は、合成例1と同様の操作でフェノール樹脂(X−2)を得た。
【0101】
実施例1〜2及び比較例1〜2
下記要領で前記合成例及び比較合成例で得た各フェノール樹脂の溶剤溶解性を評価した。結果を表1に示す。
<溶剤溶解性試験>
不揮発分40、60質量%となるメチルエチルケトン(MEK)溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)溶液を調製し、前記合成例及び比較合成例で得た各フェノール樹脂を入れたバイアルを室温で180日間放置し、不溶物が析出するまでの日数を比較した(値が大きい方が、溶剤溶解性が良好であることを示す。)表中の×は、加熱しても溶解しなかったことを表す。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例3〜4及び比較例3
下記要領でエポキシ樹脂組成物を調製し、積層板およびフィルムを作製して各種の評価試験を行った。結果を表2に示す。
<エポキシ樹脂組成物の調製>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「N−680」、エポキシ基当量212g/当量)に対し、合成例で得た各フェノール樹脂の水酸基数がエポキシ基のモル数の2分の1になるように両者を合計100gになるように配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「2E4MZ」)をエポキシ樹脂とフェノール樹脂との合計質量に対し0.1質量%、球状アルミナ(平均粒径12.2μm)をエポキシ樹脂とフェノール樹脂との合計質量に対し20質量%加え、メチルエチルケトンで不揮発分を58質量%に調整して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0104】
<積層板の作製>
下記条件で積層板を作製した。
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0105】
<フィルムの作製>
下記条件でフィルムを作製した。
【0106】
基材:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)
膜厚:40μm 乾燥条件:100℃
硬化条件:180℃で5時間
【0107】
<ガラス転移温度>
積層板から厚さ0.8mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片を粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0108】
<誘電率、誘電正接の測定>
積層板を用いてJIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
【0109】
<難燃性>
積層板から厚さ0.8mmの硬化物を幅12.7mm、長さ127mmに切り出し、試験片とした。この試験片を用いてUL−94試験法に準拠し、試験片5本を用いて、燃焼試験を行った。
*1:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
*2:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
【0110】
<熱伝導性>
フィルムを用いて京都電子株式会社製の熱導率計「QTM−500」を用い、非定常熱線法により測定した。
【0111】
【表2】
【0112】
表中の略語は下記の通りである。
【0113】
PTBP:p−ターシャリーブチルフェノール
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】合成例1で得られたフェノール樹脂(B−1)のGPCチャート図である。
図2】合成例2で得られたフェノール樹脂(B−2)のGPCチャート図である。
図3】比較合成例1で得られたフェノール樹脂(X−1)のGPCチャート図である。
図1
図2
図3