(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金をテトラクロロ金酸イオンとして浸出した浸出液に、有機溶媒のジエチレングリコールジブチルエーテルを接触させて、前記テトラクロロ金酸イオンを前記有機溶媒に抽出し、抽出された前記テトラクロロ金酸イオンを含む有機溶媒を塩酸で洗浄した後、前記洗浄後有機溶媒と蓚酸を含む水溶液とを混合して両者を接触させ、テトラクロロ金酸イオンを還元して金粉を製造する方法において、
前記テトラクロロ金酸イオンを含む有機溶媒と、前記蓚酸を含む水溶液とを混合して接触させる際に、前記水溶液中の塩化物イオン濃度を60g/L以上、90g/L以下に調整して、前記有機溶媒中のテトラクロロ金酸イオンを前記水溶液中に逆抽出した後、前記水溶液中で還元処理して金粉を生成することを特徴とする嵩密度の高い金粉の製造方法。
【背景技術】
【0002】
金の回収方法として、例えば、銅の製錬工程において、微量の金を含有した銅精鉱や、金鉱石を自溶炉(Flash Smelting Furnace)に装入して、金、銀、白金族を銅マットに分配させ、その銅マットおよび金含有スクラップ原料を、転炉、精製炉にて溶解、精製する、いわゆる乾式製錬を行って、銅純度99.2%の銅アノードを製造した後、その銅アノードを電解精製する過程において不溶解残分として分離された銅電解スライム中に、金、銀、白金族を濃縮させて回収する方法が広く実施されている。
【0003】
その銅電解スライムを原料とした金の製造方法としては、硫酸抽出等の湿式法により銅電解スライム中の銅を除去した後、焙焼用キルン、還元用電気炉、酸化用転炉、精製炉等を用いた乾式法により、セレン、アンチモン、鉛、錫、ビスマス、テルルなどを分離し、金と銀と白金族を主成分とする合金を得て、この合金を、電解を主体とした湿式法で処理することによって金を製造する方法が、一般的であった。
【0004】
しかし、上記回収方法および製造方法では、銅の乾式製錬工程をスタートとして、全体工程の最後に金が製品化されるため、金の製造プロセスという見方をすれば、製品として回収されるまでに多大なエネルギーを要して経済的、効率的で無い他、高価な金が製品として回収されるまでに長期間を要するため、原料を製品化して販売するまでの金利負担が大きいという問題があった。
【0005】
そこで、近年では、金の製造方法として、銅電解スライムのスラリーを塩素ガスで浸出し、金、白金族元素、セレン、テルルをイオンの形態で塩素浸出液中に溶解した後、得られた塩素浸出液にDBC等の有機溶媒を接触させてテトラクロロ金酸イオンを有機溶媒に抽出し、この金を含む有機溶媒を塩酸で洗浄した後、還元剤として蓚酸を含む水溶液と接触させて、有機溶媒中の金を還元して金粉を製造する方法が工業化されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
この方法では、テトラクロロ金酸イオンを、DBCを用いた溶媒抽出によって有機溶媒に抽出した後の抽出残液から、塩化トリオクチルアンモニウムと燐酸トリブチルの混合物を用いた第2の溶媒抽出によって、白金族元素のクロロ錯イオンを有機溶媒に抽出した後、その抽出残液に二酸化硫黄ガスを吹込んで還元することにより、セレン、テルルを回収している。
【0007】
上記方法によって、電解スライムからの金の製造時間を大幅に短縮させることができ、さらに、塩素浸出時の浸出液中の塩化物濃度を適正に維持することにより、銅電解スライム中の銅、セレンの品位が変動しても、銅電解スライムからのアンチモンの溶出率を増大させず、第2の溶媒抽出で白金族元素を回収することにより、金の溶媒抽出を完全に行わなくてもセレンメタルへの金の混入が防止される等、従来の、銅電解スライムからの有価物の湿式回収方法の課題も解決することができ、工業的に極めて有用な金の製造方法となっている。
なお、上記方法で製造された金粉は、ルツボ等の小型溶解炉でバッチ溶解され、インゴットの形状に鋳造されて製品となる。
【0008】
しかし、テトラクロロ金酸イオンとして金が浸出された浸出液にDBCを接触させてテトラクロロ金酸イオンを有機溶媒に抽出し、この金を含む有機溶媒を塩酸で洗浄した後、蓚酸を含む水溶液と接触させて、有機溶媒中の金を還元して金粉を製造する方法においては、以下の課題が残されていた。
第一に、得られた金粉の嵩密度が低いために起こるもので、金粉の輸送回数が増えるといったハンドリング効率の問題や、金粉をバッチ式の溶解炉に投入して溶解する場合に、一回当たりの溶解重量が少なくなるために、単位金粉重量当たりのエネルギー使用量が増加すると共に溶解工程の設備能力が制限されるといった設備効率の問題である。
【0009】
第二に、有機溶媒中の金を還元して金粉を製造するに当たって、嵩密度の低い金粉が製造される条件では、その結晶核の生成速度が遅いため、還元反応槽の内壁や攪拌機に、金が箔状に析出しやすくなるという問題が発生している。この還元反応槽の内壁や攪拌機への金の付着は、作業効率や設備効率の低下や、製品化期間の増加にもつながっている。
【0010】
第三に、従来の有機溶媒中の金を還元して金粉を製造する方法では、金粉への不純物の混入を防止する還元反応条件における最適な酸化還元電位やpHの範囲は定められているが、嵩密度や還元反応槽の内壁や攪拌機への金の付着制御をも踏まえた還元反応条件は見出されておらず嵩密度の大きな金粉を得ることは難しかった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の、テトラクロロ金酸イオンとして金を浸出した浸出液に、DBCを接触させてテトラクロロ金酸イオンを有機溶媒に抽出し、このテトラクロロ金酸イオンを含む有機溶媒を塩酸で洗浄した後、有機溶媒中のテトラクロロ金酸イオンを還元して嵩密度の高い金粉を製造する方法について、詳細に説明する。
【0019】
本発明では、
図1のフロー図に示すような工程順によりテトラクロロ金酸イオンとして金を浸出した浸出液から嵩密度の高い金粉を生成するものである。
図1のフロー図における各工程を簡単に説明する。
【0020】
[金酸イオン抽出工程]
金をテトラクロロ金酸イオンの形に浸出した浸出液と有機溶媒のジエチレングリコールジブチルエーテルを接触させて、前記テトラクロロ金酸イオンを前記有機溶媒に抽出する工程である。
[洗浄工程]
抽出されたテトラクロロ金酸イオンを含む有機溶媒中に共抽出された不純物を塩酸で洗浄して洗浄後有機溶媒を形成する工程である。
[調整工程]
有機相の洗浄後有機溶媒と、水相の水を混合して混合液を形成した後、その水相の塩化物イオン濃度が60g/L以上、90g/L以下に調整されるように塩化物を溶解した塩化物水溶液と洗浄後有機溶媒との調整混合液を形成する工程である。
[還元工程]
前工程で作製した調整混合液の塩化物水溶液に蓚酸を添加した後、その蓚酸を含む塩化物水溶液と洗浄後有機溶媒とを接触、混合し、洗浄後有機溶媒中のテトラクロロ金酸イオンを蓚酸を含む塩化物水溶液に逆抽出後、水溶液中で還元して金粉を生成する工程である。
以上の工程を順に経て、嵩密度の高い金粉を生成する。
【0021】
その特徴とする所は、テトラクロロ金酸イオンを含む有機溶媒(有機相)を、蓚酸を含む水溶液(水相)と接触させ、還元反応を行う際に、その水溶液(水相)の塩化物イオン濃度を60g/L以上、90g/L以下に調整して、有機溶媒(有機相)中のテトラクロロ金酸イオンを還元して金粉を生成することにある。
各工程の構成要素について順に説明する。
【0022】
1.還元剤、pH調整剤
本発明のような有機溶媒中のテトラクロロ金酸イオンを還元して金粉を製造する方法では、例えば特許文献2にも記載されているように、還元剤としては蓚酸が最適である。
【0023】
蓚酸水溶液の標準電極電位は、−291mV(Ag/AgCl電極基準)であり、例えば亜硫酸水溶液の標準電極電位の−731mV(Ag/AgCl電極基準)と比較して高く、弱い還元剤として作用する。そのため、蓚酸水溶液には、金以外の金属イオンの還元反応を抑制する作用がある。なお、以降、酸化還元電位は、全てAg/AgCl電極基準で表記する。
【0024】
また、この時に混合液のpHを調整する場合には、pH調整剤として尿素を用いると良い。尿素は水溶液中で加熱を行うことにより加水分解を起こして、アルカリであるアンモニアを生成する作用を有している。そのため、均一かつ緩やかにpHを上昇させることができ、局部的なpHの上昇による金以外の金属イオンの水酸化物の沈殿発生を防ぎ、金粉への不純物の混入を防止するために好適である。
また、尿素には、テトラクロロ金酸イオンの還元を促進する作用もある。
【0025】
2.塩化物イオン濃度
還元剤の蓚酸を含む(場合によっては尿素も含む)水溶液(水相)の塩化物イオン濃度は、50〜75g/Lの間では、この塩化物イオン濃度と得られる金粉の嵩密度は
図2に示すように線形関係を有しているが、4.0g/mL以上の嵩密度を得るには、塩化物イオン濃度を60g/L以上、90g/L以下に調整するのが望ましい。
なお、
図2は水相の塩化物イオン濃度と得られた金粉の嵩密度との関係を示す図で、横軸は水相の塩化物イオン濃度、縦軸は金粉の嵩密度である。
【0026】
この塩化物イオン濃度が、60g/L未満では、テトラクロロ金酸イオンの還元反応において、結晶核の生成速度が遅くなり、結晶粒子が大きなもののみとなって小さな粒子が存在しなくなるため、得られる嵩密度の大きさが4.0g/mLより小さくなってしまう。また、結晶核が少なくなるため、還元金が、還元反応槽の内壁や攪拌機に箔状に析出しやすくなる。
【0027】
一方、塩化物イオン濃度が90g/Lを越えると、結晶核の数は十分多くなるが、結晶粒子径が小さくなると共に、結晶粒子径のバラツキも小さくなるため、嵩密度の向上は頭打ちとなってしまう。また、塩化物イオン濃度調整用に添加する塩化ナトリウム等の添加量が増加するため、薬剤コストのアップにつながる。
塩化物イオン濃度を調整する塩化物には、例えば、塩化ナトリウムを用いても良いし、還元した金粉回収後のろ液を、繰り返し使用し、純水で濃度を調整しても良い。
【0028】
3.温度
還元処理時の水溶液温度は、85℃以上、95℃以下に保持することが望ましい。
この還元処理時の水溶液温度が85℃未満の場合、金の還元反応速度が遅くなる。一方で、水溶液温度が95℃を越えた場合、有機溶媒の揮発が促進されてしまうため、有機溶媒ロスが増加すると共に、作業環境、防火管理等の観点から、好ましくはない。
【0029】
4.pH
還元処理後の水溶液のpHは、−0.2以上、1.0以下とすることが望ましい。
この還元処理後の水溶液のpHが、−0.2未満だと、金の還元反応速度が遅くなる。対して、還元処理後の水溶液のpHが、1.0を超えると、錫等の不純物が水酸化物の沈殿を生成し、金粉に混入する可能性が高くなる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明するが、これらの実施例によって本発明の範囲がなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
テトラクロロ金酸イオンを含んだ浸出液からテトラクロロ金酸イオンをDBCに抽出し、有機溶媒中の金濃度を36.7g/Lとした。このテトラクロロ金酸イオンの形で金を含む有機溶媒を1.5モル/Lの塩酸で洗浄した後、その有機溶媒1000Lを、3.0m
3の内面にグラスライニングが施された還元反応槽(以下、グラスライニング槽と称する。)に入れ、1000Lの純水を添加し、有機相(有機溶媒)と水相(純水)の混合液を作製した。
【0032】
次に、作製した混合液を攪拌機により撹拌しながら、108kgの塩化ナトリウムを投入して、塩化物イオン濃度が60g/Lになるように調整した塩化ナトリウム水溶液(水相)を形成した。
【0033】
その後、水相の塩化物イオン濃度を調整した混合液に対して撹拌機による撹拌を継続し、有機相(有機溶媒)と水相(塩化ナトリウム水溶液)を十分に接触させながら、その攪拌中の混合液に、30.5kgの尿素と、36.1kgの蓚酸を添加した。添加後、グラスライニング槽の内壁に設置されたジャケットに蒸気を通して混合液を90℃に加温した。
【0034】
加温後、その温度を維持して撹拌を継続することで還元反応を行い、還元反応中の混合液の酸化還元電位とpHを、酸化還元電位(ORP)計とpH計で計測し、酸化還元電位が低下して、5分間に10mV以上の低下が無くなった時点で還元反応が終了したとして、還元後スラリーを得た。反応終了時の酸化還元電位は748mV、pHは0.2であった。
【0035】
その還元後スラリーをろ過後、塩酸によって3回洗浄、乾燥して、23.2kgの金粉を回収した。その回収した金粉の嵩密度は4.25g/mLであった。なお、嵩密度は、タップしない状態で、メスシリンダーと秤量器により測定した。
【0036】
反応終了後のグラスライニング槽の内面には金の付着は無く、撹拌機にも金の付着は見られなかった。
回収した金粉の分析を行ったが、純分は99.999%であった。金の純分は、ICP発光分光分析法およびガス分析によって不純物含有量を求めた後、差引法によって算出した。
【実施例2】
【0037】
実施例1と同様に、テトラクロロ金酸イオンを含んだ浸出液からテトラクロロ金酸イオンをDBCに抽出し、有機溶媒中の金濃度を34.7g/Lとした。このテトラクロロ金酸イオンの形で金を含む有機溶媒を1.5モル/Lの塩酸で洗浄した後、その有機溶媒1000Lを、3.0m
3のグラスライニング槽に入れ、1000Lの純水を添加し、有機相(有機溶媒)と水相(純水)の混合液を作製した。
【0038】
次に、作製した混合液を攪拌機により撹拌しながら、115kgの塩化ナトリウムを投入して、塩化物イオン濃度が75g/Lになるように調整した塩化ナトリウム水溶液(水相)を形成した。
【0039】
その後、その水相の塩化物イオン濃度を調整した混合液に対して撹拌機による撹拌を継続して有機相(有機溶媒)と水相(塩化ナトリウム水溶液)を十分に接触させながら、その攪拌中の混合液に、28.9kgの尿素と、34.1kgの蓚酸を添加した。添加後、グラスライニング槽の内壁に設置されたジャケットに蒸気を通して混合液を90℃に加温した。
【0040】
加温後、その温度を維持して撹拌を継続することで還元反応を行い、還元反応中の混合液の酸化還元電位とpHを、酸化還元電位(ORP)計とpH計で計測し、酸化還元電位が低下して、5分間に10mV以上の低下が無くなった時点で還元反応が終了したと見なし、還元後スラリーを得た。
反応終了時の酸化還元電位は761mV、pHは−0.2であった。
【0041】
その還元後スラリーをろ過後、塩酸によって3回洗浄、乾燥して、21.2kgの金粉を回収した。その回収した金粉の嵩密度は5.10g/mLであった。なお、嵩密度は、タップしない状態で、メスシリンダーと秤量器により測定した。
【0042】
反応終了後、グラスライニング槽の内面には金の付着は無く、撹拌機にも金の付着は見られなかった。
回収した金粉の分析を行ったが、純分は99.999%であった。金の純分は、ICP発光分光分析法およびガス分析によって不純物含有量を求めた後、差引法によって算出した。
【実施例3】
【0043】
実施例1と同様に、テトラクロロ金酸イオンを含んだ浸出液からテトラクロロ金酸イオンをDBCに抽出し、有機溶媒中の金濃度を35.9g/Lとした。この金を含む有機溶媒を1.5モル/Lの塩酸で洗浄した後、その有機溶媒1000Lを、3.0m
3のグラスライニング槽に入れ、1000Lの純水を添加し、有機相(有機溶媒)と水相(純水)の混合液を作製した。
【0044】
次に、作製した混合液を攪拌機により撹拌しながら、145kgの塩化ナトリウムを投入して、塩化物イオン濃度が87g/Lになるように調整した塩化ナトリウム水溶液(水相)を形成した。
【0045】
その後、その混合液に対して撹拌機による撹拌を継続して有機溶媒と水溶液を十分に接触させながら、その攪拌中の混合液に、30.1kgの尿素と、35.7kgの蓚酸を添加した。添加後、グラスライニング槽の内壁に設置されたジャケットに蒸気を通して混合液を90℃に加温した。
【0046】
加温後、その温度を維持して撹拌を継続することで還元反応を行い、還元反応中の混合液の酸化還元電位とpHを、酸化還元電位(ORP)計とpH計で計測し、酸化還元電位が低下して、5分間に10mV以上の低下が無くなった時点で還元反応が終了したと見なし、還元後スラリーを得た。
反応終了時の酸化還元電位は757mV、pHは−0.1であった。
【0047】
その還元後スラリーをろ過後、塩酸によって3回洗浄、乾燥して、24.1kgの金粉を回収した。その回収した金粉の嵩密度は5.22g/mLであった。なお、嵩密度は、タップしない状態で、メスシリンダーと秤量器により測定した。
【0048】
反応終了後、グラスライニング槽の内面には金の付着は無く、撹拌機にも金の付着は見られなかった。
回収した金粉の分析を行ったが、純分は99.999%であった。
金の純分は、ICP発光分光分析法およびガス分析によって不純物含有量を求めた後、差引法によって算出した。
【0049】
(比較例1)
実施例1と同様に、テトラクロロ金酸イオンを含んだ浸出液からテトラクロロ金酸イオンをDBCに抽出し、有機溶媒中の金濃度を35.4g/Lとした。この金を含む有機溶媒を1.5モル/Lの塩酸で洗浄した後、その有機溶媒1000Lを、3.0m
3のグラスライニング槽に入れ、1000Lの純水を添加し、有機相(有機溶媒)と水相(純水)の混合液を作製した。
【0050】
次に、作製した混合液を攪拌機により撹拌しながら、75kgの塩化ナトリウムを投入して、塩化物イオン濃度が45g/Lになるように調整した塩化ナトリウム水溶液(水相)を形成した。
【0051】
その後、その混合液に撹拌機による撹拌を継続して有機溶媒と水溶液を十分に接触させながら、その攪拌中の混合液に、29.5kgの尿素と、34.8kgの蓚酸を添加した。添加後、グラスライニング槽の内壁に設置されたジャケットに蒸気を通して混合液を90℃に加温した。
加温後、その温度を維持して撹拌を継続することで還元反応を行い、還元反応中の混合液の酸化還元電位とpHを、酸化還元電位(ORP)計とpH計で計測し、酸化還元電位が低下して、5分間に10mV以上の低下が無くなった時点で還元反応が終了したと見なし、還元後スラリーを得た。
反応終了時の酸化還元電位は750mV、pHは−0.2となった。
【0052】
還元後スラリーをろ過後、塩酸によって3回洗浄、乾燥して、27.2kgの金粉を回収した。
その回収した金粉の嵩密度は、3.20g/mLであった。なお、嵩密度は、タップしない状態で、メスシリンダーと秤量器により測定した。
【0053】
反応終了後、グラスライニング槽の内面には金が箔状に付着し、撹拌機にも金が箔状に付着していた。
取り出した金粉には、0.5〜3mm程度の長径を持つ鱗片状の金が、多量に存在していた。
さらに回収した金粉の分析を行ったが、純分は99.999%であった。金の純分は、ICP発光分光分析法およびガス分析によって不純物含有量を求めた後、差引法によって算出した。