【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの具現例による態様は、基材と;前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含む多層フィルムであって、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムに関する。
【0013】
本発明の他の具現例による態様は、基材上にフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法に関する。
【0014】
本発明のさらに他の具現例による態様は、前記多層フィルムを含む光電池用裏面シート(back sheet)及び前記光電池用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の具現例をさらに具体的に説明する。また、本発明を説明するにあたって、関連された公知の汎用的な機能または構成に関する詳細な説明は省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をさらに明確に説明するために、説明と関系ない部分は省略し、図面において様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が限定されない。
【0016】
図1は、本発明の一具現例による多層フィルムの断面概略図である。
図1を参照すれば、本発明の一具現例による多層フィルム10は、基材12と、前記基材12上に形成されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層11とを含む。
【0017】
本発明の多層フィルム10に含まれる基材12の具体的な種類は、特に限定されず、この分野において公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途によって適切に選択して使用することができる。
【0018】
本発明の1つの例示において、前記基材は、各種金属または重合体シートであることができる。前記金属の例として、アルミニウム、鉄などを挙げることができ、重合体シートの例として、ポリエステル系シート、ポリアミド系シートまたはポリイミド系シートなどを挙げることができ、これらのうちポリエステル系シートを使用することが一般的であるが、これに限定されるものではない。前記ポリエステル系シートの例として、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephtalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphtalate)またはポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybuthylene Terephtalate)などの単一シート、積層シートまたは共押出物などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、前記ポリエステル系シートとしては、耐加水分解特性に優れているものを使用することもできる。前記耐加水分解性に優れたポリエステル系シートは、縮合重合時に発生するオリゴマーの含量が少ないものを使用することが好ましい。また、前記ポリエステル系シートに公知の耐加水分解特性を向上させる熱処理をさらに加え、ポリエステルの水分含量を低減し、収縮率を低減することによって、耐加水分解特性をさらに優秀にすることができる。また、耐加水分解特性に優れたシートとして市販される製品を使用することもできる。
【0020】
前記基材の厚さは、特に限定されるものではないが、約50〜500μmの範囲であることができ、好ましくは、100〜300μmの範囲であることができる。前記基材の厚さを上記のように調節し、多層フィルムの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、本発明において基材の厚さが前述の範囲に限定されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0021】
本発明の具現例において、基材には、フッ素系重合体含有樹脂層と接着力をさらに向上させるために、コロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;カップリング剤処理;プライマー処理または気相ルイス酸(例えば、BF
3)、硫酸または高温の水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などの表面処理を行うことができる。
【0022】
また、基材には、水分遮断特性などの追加的な向上の観点から、ケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物のような無機酸化物を蒸着することができる。この場合には、蒸着処理層上に前述のコロナ、プラズマのようなスパーク放電処理、火炎処理、アンカー剤、カップリング剤処理、プライマー処理または化学的活性化処理などのような表面処理を行うことができる。
【0023】
本発明による多層フィルム10は、前記基材12上に形成されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層11を含む。前記樹脂層11は、フッ素系重合体単独よりなるものではなく、反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含み、フッ素系重合体の基材12に対する接着力を向上させることができる。すなわち、フッ素系重合体と相溶性に優れたアクリル系重合体を選択し、樹脂層内にフッ素系重合体とブレンドを形成するのに容易にし、アクリル系重合体に反応性官能基を付与し、共重合体のガラス転移温度と分子量分布などを調節するか、または溶解度を増加させることができる。
【0024】
本発明による多層フィルムの樹脂層のアクリル系重合体に含まれる反応性官能基の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、高い双極子モーメント(dipole moment)を有し、フッ素系重合体のC−F
2結合の双極子との相互作用を通じて接着力及び機械的特性を向上させることができるものを使用することができる。
【0025】
前記反応性官能基は、例えば、カルボキシ基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、スルホン酸基、アジリジン基、アミン基、ユリア基、リン酸基、シアノ基、シアネート基、イミダゾール基、オキサゾリン基及びイミン基よりなる群から選択された1つ以上であることができ、好ましくは、カルボキシ基、エポキシ基、オキサゾリン基よりなる群から選択された1つ以上であることかできるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の具現例において前記反応性官能基をアクリル系重合体に導入するか、提供することができる物質の種類は、特に限定されず、反応性官能基を導入することができるものであって、当業界に広く公知されている化合物を使用することができる。一例として、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上のアクリル系化合物と反応性官能基を含有する1種以上の単量体を共重合し、前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体を提供することができ、前記以外にも、スチレンなどの芳香族ビニル単量体をさらに含んで共重合体を製造することができる。
【0027】
前記アクリル系重合体は、フッ素系重合体との相溶性の均衡及び優れた粘着特性を付与するために、炭素数1〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を主成分とする(メタ)アクリル系重合体であることができ、前記アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を主成分とする(メタ)アクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を単量体成分として50〜99.9重量%含有する(メタ)アクリル系重合体を好ましいものとして例示することができる。
【0028】
本発明の具現例において前記アルキル(メタ)アクリレートの具体的な例として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0029】
前記反応性官能基を付与するための重合性単量体は、例えば、カルボキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、酸無水物基含有単量体、イソシアネート基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、アジリジン基含有単量体、アミン基含有単量体、ユリア基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、シアネート基含有単量体、イミダゾール基含有単量体、オキサゾリン基含有単量体及びイミン基含有単量体などの接着力向上に寄与する官能基を有する成分を適切に使用することができ、これら単量体化合物を単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
前記カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などを挙げることができる。それらのうち、特にアクリル酸及びメタクリル酸が好ましく利用される。
【0031】
前記アミド基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロ−ルリドン、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N’−メチレンビスアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0032】
前記アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0033】
前記エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0034】
前記ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0035】
前記酸無水物基含有単量体としては、例えば、マレイン酸無水物、無水イタコン酸、及び前記カルボキシル基含有単量体の無水物体などを挙げることができる。
【0036】
前記イソシアネート基含有単量体としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートエチルのフェノールまたはメチルエチルケトオキシム付加物などを挙げることができる。
【0037】
前記スルホン酸基含有単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0038】
前記アジリジン基含有単量体としては、例えば、ビニルアジリジン、ジビニルアジリジンなどを挙げることができる。
【0039】
前記アミン基含有単量体としては、例えば、アリルアミンなどを挙げることができる。
【0040】
前記ユリア基含有単量体としては、例えば、メタクリルオキシエチルエチレンユリア、2−ヒドロキシエチルエチレンユリアの(メタ)アクリレート誘導体、2−アミノエチルエチレンユリアの(メタ)アクリルアミド誘導体などを挙げることができる。
【0041】
前記リン酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートを挙げることができる。
【0042】
前記シアノ基含有単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを挙げることができる。
【0043】
前記シアネート基含有単量体としては、例えば、1、1−ビス−(4−シアネートフェニル)エタン、2、2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(3、5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、4、4’−(1、3−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、シアン酸化されたノボラックオリゴマーなどを挙げることができる。
【0044】
前記イミダゾール基含有単量体としては、例えば、ビニルイミダゾール、アリルイミダゾールなどを挙げることができる。
【0045】
前記オキサゾリン基含有単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロフェニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0046】
前記イミン基含有単量体としては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミンなどを挙げることができる。
【0047】
上記のような反応性官能基を付与することができる重合性単量体を適切に選択して使用することができ、一例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、p−トルエンスルホン酸、リン酸、(メタ)アクリルアミド、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルイミダゾールまたは2−イソプロフェニル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0048】
本発明において上述した反応性官能基を含有する単量体は、単独で使用することもでき、また、2種以上を混合して使用することもできる。
【0049】
その他、芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどをさらに使用して、反応性官能基を含有するアクリル系重合体を製造することができる。
【0050】
本発明の具現例において使用されることができる反応性官能基を含有するアクリル系重合体の反応性官能基の含量は、1つの反応性官能基に該当する分子量、すなわち反応性官能基の当量(equivalent weight)が30,000以下であることが好ましく、より好ましくは、800〜30,000以下、さらに好ましくは、2,000〜20,000の範囲のものを使用することが好ましい。前記反応性官能基の当量が30,000を超過する場合には、樹脂層の接着力改善に寄与しないおそれがある。
【0051】
前記「反応性官能基の当量」は、全体重合体に含まれる反応性官能基の全体分子量を対応する反応性官能基の個数で分けた数値を意味し、これは、この分野において公知されている一般的な化学的滴定法で測定することができる。
【0052】
本発明において使用される反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、重量平均分子量が10万〜500万であることが好ましい。本発明において重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定される標準ポリスチレンの換算数値である。重量平均分子量が10万より小さい場合には、凝集力が小さくなり、フッ素系重合体と適切な接着力を付与せず、重量平均分子量が500万を超過する場合には、重合体の流動性が低下し、剥離の原因となる傾向にある。
【0053】
本発明において使用される反応性官能基を含有するアクリル系重合体の重合方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知された方法によって重合することができる。また、得られる重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれのものを使用することができる。当業界では、重合体に目的する官能基を導入することができる多様な方法が公知されていて、本発明においては、このような方式がすべて適用されることができる。
【0054】
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体と混合され、本発明の多層フィルム10の樹脂層11を形成するフッ素系重合体の具体的な種類は、特に限定されず、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物であることができる。
【0055】
本発明においては、好ましくは、フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;ビニルフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;または前記のうち2種以上を含む混合物であることができ、さらに好ましくは、ビニリデンフルオライドを重合された形態で含む共重合体であることができる。
【0056】
また、前記フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライド(VDF)またはビニルフルオライド(VF)と共単量体を含む共重合体であることができ、前記共重合体に重合された形態で含まれることができる共単量体の種類は、特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)などの1種または2種以上を挙げることができ、好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンなどの1種または2種以上であることかできるが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、前記共重合体内の共単量体の含量は、例えば、全体共重合体の重量を基準にして約0.5重量%〜50重量%、好ましくは、1重量%〜40重量%、さらに好ましくは、7重量%〜40重量%、より好ましくは、10重量%〜30重量%、さらに好ましくは、10重量%〜20重量%であることがある。このような共単量体の範囲内で多層フィルムの耐久性及び耐候性などを確保しながら、効果的な相互拡散作用及び低温乾燥を誘導することができる。
【0058】
本発明の具現例において前記フッ素系重合体は、50,000〜1,000,000の重量平均分子量を有することができる。本発明においては、樹脂の重量平均分子量を上記のように調節し、優れた溶解度及びその他の物性を確保することができる。
【0059】
本発明の具現例において前記フッ素系重合体は、また、融点が80℃〜175℃、好ましくは、120℃〜165℃であることができる。本発明において樹脂の融点を80℃以上に調節し、多層フィルムの使用過程での変形を防止することができ、また、融点を175℃以下に調節し、溶媒に対する溶解度を調節し、コーティング面の光沢を向上させることができる。
【0060】
本発明の具現例において前記樹脂層に含まれる前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体の混合物のうち前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体の含量は、50重量%以下であることが好ましく、2〜30重量%であることがさらに好ましい。前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体の含量が50重量%を超過すれば、前記樹脂層の機械的物性及び耐候性が劣化することができる。
【0061】
本発明の樹脂層は、前述の成分にさらに、樹脂層の色相や不透明度の調節またはその他の目的のために、顔料または充填剤をさらに含むことができる。この際、使用されることができる顔料または充填剤の例として、二酸化チタン(TiO
2)、シリカまたはアルミナなどのような金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはカーボンブラックなどのようなブラックピグメントまたは他の色相を示すピグメント成分などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記のような顔料または充填剤は、樹脂層の色相や不透明度を制御する固有の効果とともに、各成分が含む固有の作用基によって樹脂層の接着力をさらに改善する作用をすることもできる。
【0062】
前記顔料または充填剤のようなその他の添加剤の含量は、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体混合物の固形分を基準にして60重量%以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の樹脂層は、また、UV安定化剤、熱安定化剤または障壁粒子のような通常的な成分をさらに含むこともできる。
【0064】
本発明において上記のような成分を含む樹脂層は、厚さが約3μm〜50μm、好ましくは、10μm〜30μmであることが好ましい。前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層の厚さが3μm未満の場合には、樹脂層が非常に薄くて、充填剤の充填が不十分であり、光遮断性が劣化することができ、50μmを超過する場合には、製造コスト上昇の原因となることができる。
【0065】
本発明の一具現例による多層フィルムとして、基材と;前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含み、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムは、好ましくは、光電池用裏面シートとして使用されることができる。
【0066】
本発明において前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層は、コーティング層であることができる。本発明において使用する用語「コーティング層」は、コーティング方式によって形成された樹脂層を意味する。より具体的に、コーティング層は、前述のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層が、鋳造法(casting method)または押出方式で製造されたシートを基材に接着剤などを使用してラミネートされる方式ではなく、溶媒、好ましくは、低い沸点を有する溶媒に樹脂層を構成する成分を溶解して製造されたコーティング液を基材にコーティングする方式で形成された場合を意味する。
【0067】
図1は、本発明の具現例による多層フィルム10が基材12の一面にのみ樹脂層11が形成された場合を示しているが、本発明の他の具現例による多層フィルム(図示せず)は、基材の他の一面にも樹脂層が形成され、基材の両面に形成された樹脂層を含むことができる。
【0068】
また、本発明の具現例による多層フィルムは、必要に応じて当業界で公知されている多様な機能性層をさらに含むことができる。機能性層の例として、接着層または絶縁層などを挙げることができる。例えば、本発明の多層フィルムには、基材の一面には、前述の樹脂層が形成されていて、他の一面には、接着層及び絶縁層が順次に形成されていてもよい。接着層または絶縁層は、この分野において公知されている多様な方式で形成することができる。例えば、絶縁層は、エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層であることができる。前記エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層は、絶縁層としての機能はもちろん、封止材(encapsulant)との接着力を高め、製造コストの節減が可能であり、再作業性(re−workability)を優秀に維持する機能を同時に行うことができる。
【0069】
本発明の他の具現例は、基材上にフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を形成する段階を含み、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムの製造方法に関する。
【0070】
本発明の具現例において基材上に前記樹脂層を形成する方式は、特に限定されない。例えば、当業界において多様に公知されている方式に準じて、前述のフッ素系重合体、反応性官能基を含有するアクリル系重合体などを適切な有機溶媒または水性溶媒に溶解または分散させて製造されたコーティング液を基材上に塗布した後、所定条件で乾燥させるなどの方式で樹脂層の形成が可能である。この際、コーティング方式は、特に限定されず、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコートまたはナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を含み、均一なコーティング層を形成することができるものならどんな方式も適用可能である。本発明においては、前記方式以外にも、この分野において公知されている多様な方式が適用されることができ、前記コーティング液にも必要に応じてその他の多様な添加剤がさらに含まれていることもできる。
【0071】
本発明の製造方法で使用されることができる基材の具体的な種類は、前述した通りであり、前記基材には、適切な蒸着処理、熱処理、プラズマ処理またはコロナ処理などをあらかじめ行ってもよく、そのような処理があらかじめ行われていてもよい。
【0072】
本発明の具現例において樹脂層を形成するコーティング液、すなわち樹脂組成物は、前述の樹脂層を形成する各成分を相対的に低い沸点を有する溶媒、具体的には、沸点が200℃以下の溶媒に溶解または分散させて製造されることができる。すなわち、本発明においては、フッ素系重合体が反応性官能基を含有するアクリル系重合体と混合することによって、沸点が相対的に低い溶媒に効果的に溶解されることができる。これにより、本発明においては、製造過程で高温の乾燥工程が要求されず、製造コストを節減すると同時に、高温乾燥時に誘発されることができる基材の熱変形や熱衝撃などを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0073】
本発明において使用することができる上記のような溶媒の例として、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(BMAC)などの1種または2種以上の混合を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
前記メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドのような溶媒は、200℃以下の温度で蒸発される溶媒であって、前述のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層コーティング用材料をよく溶解させることができると共に、前記コーティング層材料とともに基材上に塗布された後、比較的低い温度で乾燥することができる。また、特に前記コーティング過程でコーティング液の溶媒は、前記基材の表面または基材の表面処理層をスウェリング(swelling)させることによって、前記基材上に塗布されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と前記基材との接触面である界面で樹脂層のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体成分と基材の相互拡散(interdiffusion)作用が生じ、これにより、前記樹脂層と基材との物理的、化学的結合力が向上し、基材と樹脂層との接着力をさらに向上させることができる。
【0075】
すなわち、このような反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、フッ素系重合体の結晶化度を低下させて、上記のような相互拡散が可能な非結晶質領域を増加させて、樹脂層と基材との界面結合力の向上を高めることができる。
【0076】
本発明において樹脂層の形成に適用されるコーティング液には、前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体以外にも、顔料、充填剤、UV安定剤または熱安定剤のような多様な添加剤がさらに含まれてもよい。前記各添加剤は、フッ素系重合体などとともに溶媒に溶解されるか、または前記成分とは別にミルベース形態で製造された後、さらに前記フッ素系重合体または及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む溶媒と混合することもできる。上記のような樹脂層に含まれることができる充填剤、分散剤などの添加剤に含まれた作用基によってもバンデルバルス結合、水素結合、イオン結合、共有結合のような化学的相互作用が発生することができ、これにより、樹脂層と基材との接着力がさらに向上することができる。
【0077】
本発明においてコーティング液の製造方法や、コーティング液に含まれる各成分の比率などは、特に限定されず、この分野に公知されている多様な方式を適切に採用すればよい。
【0078】
本発明においては、前記コーティング段階に引き続いて、コーティングされたコーティング液を乾燥させる段階をさらに行うことができる。乾燥時の条件は、特に限定されず、例えば、200℃以下、好ましくは、約100℃〜180℃の温度で約30秒〜30分、好ましくは、約1分〜10分間行われることができる。乾燥条件を上記のように制御し、製造コストの上昇を防止し、熱変形または熱衝撃などによる製品品質低下を防止することができる。
【0079】
本発明のさらに他の具現例は、前記多層フィルムを含む光電池用裏面シートに関する。
【0080】
前記光電池用裏面シートは、前述したように、フッ素系重合体とアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層を含み、前記アクリル系重合体が反応性官能基を含むことによって、前記樹脂層と基材の作用基との化学的共有結合が形成可能にして、優れた接着力を提供することができる。具体的に前記光電池用裏面シートの製造工程中に前記樹脂層と前記基材または基材の表面処理層の界面で、前記樹脂層に含まれるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体が前記基材または基材の表面処理層に相互拡散されることができ、これにより、前記基材と前記樹脂層との化学的共有結合形成のみならず、分子鎖間の絡み合い(chain entanglement)とファンデルワールス力などによって接着力を向上させることができる。
【0081】
また、本発明のさらに他の具現例は、前記光電池用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0082】
本発明による光電池モジュールの構造は、前記多層フィルムを光電池用裏面シートとして含んでいる限り、特に限定されず、この分野において公知されている多様な構造を有することができる。
【0083】
通常、光電池モジュールは、透明前面基板、裏面シート及び前記前面基板と前記裏面シートとの間で封止材により封止されている光電池または光電池アレイを含むことができる。
【0084】
前記光電池または光電池アレイを構成する活性層の例として、代表的に結晶質または非結晶質シリコーンウェーハや、CIGSまたはCTSなどのような化合物半導体などを挙げることができる。
【0085】
本発明の多層フィルムは、上記のような活性層を有するモジュールを含み、この分野に知られている多様な光電池モジュールに制限なく適用されることができ、この場合、前記モジュールを構成する方式や、その他の素材の種類は、特に限定されない。