特許第6011817号(P6011817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6011817多層フィルム及びこれを含む光電池モジュール
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  • 特許6011817-多層フィルム及びこれを含む光電池モジュール 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011817
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】多層フィルム及びこれを含む光電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20161006BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20161006BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   B32B27/30 A
   H01L31/04 500
【請求項の数】30
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-538635(P2013-538635)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-500813(P2014-500813A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2011008462
(87)【国際公開番号】WO2012064082
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0115306
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0111751
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キュン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ソン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ド・ウォン・アン
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−530140(JP,A)
【文献】 特表2009−522414(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107282(WO,A1)
【文献】 特開平07−022637(JP,A)
【文献】 特表2012−521088(JP,A)
【文献】 特開平07−001683(JP,A)
【文献】 PARALOID AU-1033,TECHNICAL DATA SHEET [online],DOW,<URL:http://www.dow.com/assets/attachments/business/pcm/paraloid_au/paraloid_au-1033/tds/paraloid_au-1033.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01L 31/02
C08J 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と;
前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含む多層フィルムであって、
前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下であり、
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上と反応性官能基を含有する1種以上の単量体との共重合体である、多層フィルム。
【請求項2】
前記反応性官能基は、カルボキシ基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、スルホン酸基、アジリジン基、アミン基、ユリア基、リン酸基、シアノ基、シアネート基、イミダゾール基、オキサゾリン基及びイミン基よりなる群から選択された1つ以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリルレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート及びn−テトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1種以上である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記反応性官能基を含有する単量体は、カルボキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、酸無水物基含有単量体、イソシアネート基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、アジリジン基含有単量体、アミン基含有単量体、ユリア基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、シアネート基含有単量体、イミダゾール基含有単量体、オキサゾリン基含有単量体及びイミン基含有単量体よりなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記反応性官能基を含有する単量体は、カルボキシ基含有単量体、エポキシ基含有単量体またはオキサゾリン基含有単量体である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記反応性官能基を含有する単量体は、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、シクロヘキシルマルレイミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、p−トルエンスルホン酸、リン酸、(メタ)アクリルアミド、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルイミダゾール、及び2−イソプロフェニル−2−オキサゾリンよりなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、重合性単量体をさらに含む共重合体である、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記重合性単量体は、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレンまたはメチルスチレンである、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記フッ素系重合体は、ビニルフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;またはビニリデンフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;またはこれらの混合物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライド(VDF)またはビニルフルオライド(VF)と、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の共単量体を含む共重合体またはこれらの混合物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記共単量体の含量は、0.5〜50重量%である、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記フッ素系重合体の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記フッ素系重合体の融点が80℃〜175℃である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層の反応性官能基を含有するアクリル系重合体の含量が50重量%以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項16】
前記基材は、アルミニウム、鉄;またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)の単一シート、積層シートまたは共押出物である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項17】
前記基材の少なくとも一面にプラズマ、コロナ、プライマー、カップリング剤処理及び熱処理のうちから選択された1つ以上の処理が形成される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項18】
前記基材の厚さは、50〜500μmである、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項19】
前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層の厚さは、3〜50μmである、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項20】
前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層は、顔料、充填剤、UV安定剤、熱安定剤または障壁粒子をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項21】
前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層は、樹脂組成物を塗布して形成されるコーティング層である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項22】
基材と;前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含み、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下であり、
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上と反応性官能基を含有する1種以上の単量体との共重合体である、光電池用裏面シート。
【請求項23】
基材上にフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を形成する段階を含み、
前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下であり、
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上と反応性官能基を含有する1種以上の単量体との共重合体であることを特徴とする多層フィルムの製造方法。
【請求項24】
前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層の形成段階は、フッ素系重合体、反応性官能基を含有するアクリル系重合体及び沸点が200℃以下の溶媒を含む樹脂組成物を基材上にコーティングする段階を含む、請求項23に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項25】
前記沸点が200℃以下の溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドよりなる群から選択される1種以上を含む、請求項24に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記樹脂層を形成する前に、前記基材の少なくとも一面にプラズマ、コロナ、プライマー、カップリング剤処理及び熱処理のうちから選択された1つ以上の処理を行う段階をさらに含む、請求項23に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項27】
前記コーティング段階に引き続いて、乾燥する段階をさらに行う、請求項24に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項28】
乾燥は、200℃以下の温度で30秒〜30分間行う、請求項27に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項29】
請求項1〜21の何れか1項に記載の多層フィルムを含む光電池用裏面シート。
【請求項30】
請求項22または29に記載の光電池用裏面シートを含む光電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の具現例は、多層フィルム、光電池用裏面シート、その製造方法及びこれを含む光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球環境問題と化石燃料の枯渇などによる新再生エネルギー及び清浄エネルギーに対する関心が高まっていて、そのうち、太陽光エネルギーは、環境汚染問題及び化石燃料枯渇問題を解決することができる代表的な無公害エネルギー源として注目されている。
【0003】
太陽光発電原理が適用される光電池は、太陽光を電気エネルギーに転換する素子であって、太陽光を容易に吸収することができるように外部環境に長期間露出しなければならないので、セルを保護するためのさまざまなパッケージングが行われ、ユニット(unit)形態で製造され、このようなユニットを光電池モジュール(Photovoltaic Modules)という。
【0004】
一般的に、光電池モジュールは、長期間外部環境に露出した状態でも光電池を安定的に保護することができるように、耐候性及び耐久性に優れた裏面シートを使用する。このような裏面シートは、基材にPVF(polyvinyl fluoride)などのフッ素系重合体を含む樹脂層が積層されている裏面シートを含むことが一般的である。
【0005】
しかし、前記PVF樹脂は、裏面シートの基材として代表的に使用されるPET(Polyethylene Terephtalate)フィルムに対する接着力が良くないため、押出またはキャスティングで得られたフッ素系重合体フィルムをウレタン系接着剤などを使用して基材にラミネートして使用されている。しかし、これは、高価のフィルム製造設備が必要であり、接着剤の使用が必要であり、接着剤コーティング工程とラミネーション工程がさらに必要であるという問題がある。また、フィルム製造工程でのフィルム取り扱い性のために要求されるフィルム厚さよりさらに厚いフィルムを使用しなければならないし、多様な添加剤、フィラーなどの使用が制限され、高い工程温度が必要であるという問題点があった。
【0006】
これとは異なって、フッ素系重合体フィルムを樹脂懸濁液や溶液で製造し、基材にコーティングして乾燥する場合にも、通常的に沸点(boiling point)が高い溶媒を使用して200℃以上の高い乾燥温度を必要とする短所がある。
【0007】
高い乾燥温度を要求するPVF樹脂溶液は、高い乾燥温度を提供するために、多いエネルギーを使用するようになり、光電池モジュールの裏面シートの製造費用を増加させ、また、熱衝撃を加えるか、熱変形を誘発し、製品の機械的特性などの品質を悪化させ、屋外で長期間使用時に機械的物性の速い低下を起こす。
【0008】
したがって、優れた耐久性及び耐候性を有しながらも、低い乾燥温度で乾燥することができるので、光電池裏面シートの製造費用を節減することができ、光電池モジュールの生産性及び品質を向上させることができる光電池用裏面シート材料に対する要求が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の具現例の技術的課題は、多層フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明の具現例の他の技術的課題は、前記多層フィルムの製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の具現例のさらに他の技術的課題は、前記多層フィルムを備えた光電池用裏面シート及び光電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの具現例による態様は、基材と;前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含む多層フィルムであって、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムに関する。
【0013】
本発明の他の具現例による態様は、基材上にフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を形成する段階を含む多層フィルムの製造方法に関する。
【0014】
本発明のさらに他の具現例による態様は、前記多層フィルムを含む光電池用裏面シート(back sheet)及び前記光電池用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の具現例をさらに具体的に説明する。また、本発明を説明するにあたって、関連された公知の汎用的な機能または構成に関する詳細な説明は省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をさらに明確に説明するために、説明と関系ない部分は省略し、図面において様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が限定されない。
【0016】
図1は、本発明の一具現例による多層フィルムの断面概略図である。図1を参照すれば、本発明の一具現例による多層フィルム10は、基材12と、前記基材12上に形成されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層11とを含む。
【0017】
本発明の多層フィルム10に含まれる基材12の具体的な種類は、特に限定されず、この分野において公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途によって適切に選択して使用することができる。
【0018】
本発明の1つの例示において、前記基材は、各種金属または重合体シートであることができる。前記金属の例として、アルミニウム、鉄などを挙げることができ、重合体シートの例として、ポリエステル系シート、ポリアミド系シートまたはポリイミド系シートなどを挙げることができ、これらのうちポリエステル系シートを使用することが一般的であるが、これに限定されるものではない。前記ポリエステル系シートの例として、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephtalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphtalate)またはポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybuthylene Terephtalate)などの単一シート、積層シートまたは共押出物などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、前記ポリエステル系シートとしては、耐加水分解特性に優れているものを使用することもできる。前記耐加水分解性に優れたポリエステル系シートは、縮合重合時に発生するオリゴマーの含量が少ないものを使用することが好ましい。また、前記ポリエステル系シートに公知の耐加水分解特性を向上させる熱処理をさらに加え、ポリエステルの水分含量を低減し、収縮率を低減することによって、耐加水分解特性をさらに優秀にすることができる。また、耐加水分解特性に優れたシートとして市販される製品を使用することもできる。
【0020】
前記基材の厚さは、特に限定されるものではないが、約50〜500μmの範囲であることができ、好ましくは、100〜300μmの範囲であることができる。前記基材の厚さを上記のように調節し、多層フィルムの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、本発明において基材の厚さが前述の範囲に限定されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0021】
本発明の具現例において、基材には、フッ素系重合体含有樹脂層と接着力をさらに向上させるために、コロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;カップリング剤処理;プライマー処理または気相ルイス酸(例えば、BF)、硫酸または高温の水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などの表面処理を行うことができる。
【0022】
また、基材には、水分遮断特性などの追加的な向上の観点から、ケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物のような無機酸化物を蒸着することができる。この場合には、蒸着処理層上に前述のコロナ、プラズマのようなスパーク放電処理、火炎処理、アンカー剤、カップリング剤処理、プライマー処理または化学的活性化処理などのような表面処理を行うことができる。
【0023】
本発明による多層フィルム10は、前記基材12上に形成されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層11を含む。前記樹脂層11は、フッ素系重合体単独よりなるものではなく、反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含み、フッ素系重合体の基材12に対する接着力を向上させることができる。すなわち、フッ素系重合体と相溶性に優れたアクリル系重合体を選択し、樹脂層内にフッ素系重合体とブレンドを形成するのに容易にし、アクリル系重合体に反応性官能基を付与し、共重合体のガラス転移温度と分子量分布などを調節するか、または溶解度を増加させることができる。
【0024】
本発明による多層フィルムの樹脂層のアクリル系重合体に含まれる反応性官能基の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、高い双極子モーメント(dipole moment)を有し、フッ素系重合体のC−F結合の双極子との相互作用を通じて接着力及び機械的特性を向上させることができるものを使用することができる。
【0025】
前記反応性官能基は、例えば、カルボキシ基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、スルホン酸基、アジリジン基、アミン基、ユリア基、リン酸基、シアノ基、シアネート基、イミダゾール基、オキサゾリン基及びイミン基よりなる群から選択された1つ以上であることができ、好ましくは、カルボキシ基、エポキシ基、オキサゾリン基よりなる群から選択された1つ以上であることかできるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の具現例において前記反応性官能基をアクリル系重合体に導入するか、提供することができる物質の種類は、特に限定されず、反応性官能基を導入することができるものであって、当業界に広く公知されている化合物を使用することができる。一例として、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上のアクリル系化合物と反応性官能基を含有する1種以上の単量体を共重合し、前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体を提供することができ、前記以外にも、スチレンなどの芳香族ビニル単量体をさらに含んで共重合体を製造することができる。
【0027】
前記アクリル系重合体は、フッ素系重合体との相溶性の均衡及び優れた粘着特性を付与するために、炭素数1〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を主成分とする(メタ)アクリル系重合体であることができ、前記アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を主成分とする(メタ)アクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を単量体成分として50〜99.9重量%含有する(メタ)アクリル系重合体を好ましいものとして例示することができる。
【0028】
本発明の具現例において前記アルキル(メタ)アクリレートの具体的な例として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0029】
前記反応性官能基を付与するための重合性単量体は、例えば、カルボキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、酸無水物基含有単量体、イソシアネート基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、アジリジン基含有単量体、アミン基含有単量体、ユリア基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、シアネート基含有単量体、イミダゾール基含有単量体、オキサゾリン基含有単量体及びイミン基含有単量体などの接着力向上に寄与する官能基を有する成分を適切に使用することができ、これら単量体化合物を単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
前記カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などを挙げることができる。それらのうち、特にアクリル酸及びメタクリル酸が好ましく利用される。
【0031】
前記アミド基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロ−ルリドン、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N’−メチレンビスアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0032】
前記アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0033】
前記エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0034】
前記ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0035】
前記酸無水物基含有単量体としては、例えば、マレイン酸無水物、無水イタコン酸、及び前記カルボキシル基含有単量体の無水物体などを挙げることができる。
【0036】
前記イソシアネート基含有単量体としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートエチルのフェノールまたはメチルエチルケトオキシム付加物などを挙げることができる。
【0037】
前記スルホン酸基含有単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0038】
前記アジリジン基含有単量体としては、例えば、ビニルアジリジン、ジビニルアジリジンなどを挙げることができる。
【0039】
前記アミン基含有単量体としては、例えば、アリルアミンなどを挙げることができる。
【0040】
前記ユリア基含有単量体としては、例えば、メタクリルオキシエチルエチレンユリア、2−ヒドロキシエチルエチレンユリアの(メタ)アクリレート誘導体、2−アミノエチルエチレンユリアの(メタ)アクリルアミド誘導体などを挙げることができる。
【0041】
前記リン酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートを挙げることができる。
【0042】
前記シアノ基含有単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを挙げることができる。
【0043】
前記シアネート基含有単量体としては、例えば、1、1−ビス−(4−シアネートフェニル)エタン、2、2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(3、5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、4、4’−(1、3−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、シアン酸化されたノボラックオリゴマーなどを挙げることができる。
【0044】
前記イミダゾール基含有単量体としては、例えば、ビニルイミダゾール、アリルイミダゾールなどを挙げることができる。
【0045】
前記オキサゾリン基含有単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−2−オキサゾリン、2−イソプロフェニル−4−メチル−2−オキサゾリン及び2−イソプロフェニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0046】
前記イミン基含有単量体としては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミンなどを挙げることができる。
【0047】
上記のような反応性官能基を付与することができる重合性単量体を適切に選択して使用することができ、一例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、p−トルエンスルホン酸、リン酸、(メタ)アクリルアミド、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルイミダゾールまたは2−イソプロフェニル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0048】
本発明において上述した反応性官能基を含有する単量体は、単独で使用することもでき、また、2種以上を混合して使用することもできる。
【0049】
その他、芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどをさらに使用して、反応性官能基を含有するアクリル系重合体を製造することができる。
【0050】
本発明の具現例において使用されることができる反応性官能基を含有するアクリル系重合体の反応性官能基の含量は、1つの反応性官能基に該当する分子量、すなわち反応性官能基の当量(equivalent weight)が30,000以下であることが好ましく、より好ましくは、800〜30,000以下、さらに好ましくは、2,000〜20,000の範囲のものを使用することが好ましい。前記反応性官能基の当量が30,000を超過する場合には、樹脂層の接着力改善に寄与しないおそれがある。
【0051】
前記「反応性官能基の当量」は、全体重合体に含まれる反応性官能基の全体分子量を対応する反応性官能基の個数で分けた数値を意味し、これは、この分野において公知されている一般的な化学的滴定法で測定することができる。
【0052】
本発明において使用される反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、重量平均分子量が10万〜500万であることが好ましい。本発明において重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定される標準ポリスチレンの換算数値である。重量平均分子量が10万より小さい場合には、凝集力が小さくなり、フッ素系重合体と適切な接着力を付与せず、重量平均分子量が500万を超過する場合には、重合体の流動性が低下し、剥離の原因となる傾向にある。
【0053】
本発明において使用される反応性官能基を含有するアクリル系重合体の重合方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知された方法によって重合することができる。また、得られる重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれのものを使用することができる。当業界では、重合体に目的する官能基を導入することができる多様な方法が公知されていて、本発明においては、このような方式がすべて適用されることができる。
【0054】
前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体と混合され、本発明の多層フィルム10の樹脂層11を形成するフッ素系重合体の具体的な種類は、特に限定されず、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物であることができる。
【0055】
本発明においては、好ましくは、フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;ビニルフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;または前記のうち2種以上を含む混合物であることができ、さらに好ましくは、ビニリデンフルオライドを重合された形態で含む共重合体であることができる。
【0056】
また、前記フッ素系重合体は、ビニリデンフルオライド(VDF)またはビニルフルオライド(VF)と共単量体を含む共重合体であることができ、前記共重合体に重合された形態で含まれることができる共単量体の種類は、特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール(PDD)及びペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン(PMD)などの1種または2種以上を挙げることができ、好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンなどの1種または2種以上であることかできるが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、前記共重合体内の共単量体の含量は、例えば、全体共重合体の重量を基準にして約0.5重量%〜50重量%、好ましくは、1重量%〜40重量%、さらに好ましくは、7重量%〜40重量%、より好ましくは、10重量%〜30重量%、さらに好ましくは、10重量%〜20重量%であることがある。このような共単量体の範囲内で多層フィルムの耐久性及び耐候性などを確保しながら、効果的な相互拡散作用及び低温乾燥を誘導することができる。
【0058】
本発明の具現例において前記フッ素系重合体は、50,000〜1,000,000の重量平均分子量を有することができる。本発明においては、樹脂の重量平均分子量を上記のように調節し、優れた溶解度及びその他の物性を確保することができる。
【0059】
本発明の具現例において前記フッ素系重合体は、また、融点が80℃〜175℃、好ましくは、120℃〜165℃であることができる。本発明において樹脂の融点を80℃以上に調節し、多層フィルムの使用過程での変形を防止することができ、また、融点を175℃以下に調節し、溶媒に対する溶解度を調節し、コーティング面の光沢を向上させることができる。
【0060】
本発明の具現例において前記樹脂層に含まれる前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体の混合物のうち前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体の含量は、50重量%以下であることが好ましく、2〜30重量%であることがさらに好ましい。前記反応性官能基を含有するアクリル系重合体の含量が50重量%を超過すれば、前記樹脂層の機械的物性及び耐候性が劣化することができる。
【0061】
本発明の樹脂層は、前述の成分にさらに、樹脂層の色相や不透明度の調節またはその他の目的のために、顔料または充填剤をさらに含むことができる。この際、使用されることができる顔料または充填剤の例として、二酸化チタン(TiO)、シリカまたはアルミナなどのような金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはカーボンブラックなどのようなブラックピグメントまたは他の色相を示すピグメント成分などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記のような顔料または充填剤は、樹脂層の色相や不透明度を制御する固有の効果とともに、各成分が含む固有の作用基によって樹脂層の接着力をさらに改善する作用をすることもできる。
【0062】
前記顔料または充填剤のようなその他の添加剤の含量は、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体混合物の固形分を基準にして60重量%以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の樹脂層は、また、UV安定化剤、熱安定化剤または障壁粒子のような通常的な成分をさらに含むこともできる。
【0064】
本発明において上記のような成分を含む樹脂層は、厚さが約3μm〜50μm、好ましくは、10μm〜30μmであることが好ましい。前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層の厚さが3μm未満の場合には、樹脂層が非常に薄くて、充填剤の充填が不十分であり、光遮断性が劣化することができ、50μmを超過する場合には、製造コスト上昇の原因となることができる。
【0065】
本発明の一具現例による多層フィルムとして、基材と;前記基材上に形成され、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と;を含み、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムは、好ましくは、光電池用裏面シートとして使用されることができる。
【0066】
本発明において前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層は、コーティング層であることができる。本発明において使用する用語「コーティング層」は、コーティング方式によって形成された樹脂層を意味する。より具体的に、コーティング層は、前述のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層が、鋳造法(casting method)または押出方式で製造されたシートを基材に接着剤などを使用してラミネートされる方式ではなく、溶媒、好ましくは、低い沸点を有する溶媒に樹脂層を構成する成分を溶解して製造されたコーティング液を基材にコーティングする方式で形成された場合を意味する。
【0067】
図1は、本発明の具現例による多層フィルム10が基材12の一面にのみ樹脂層11が形成された場合を示しているが、本発明の他の具現例による多層フィルム(図示せず)は、基材の他の一面にも樹脂層が形成され、基材の両面に形成された樹脂層を含むことができる。
【0068】
また、本発明の具現例による多層フィルムは、必要に応じて当業界で公知されている多様な機能性層をさらに含むことができる。機能性層の例として、接着層または絶縁層などを挙げることができる。例えば、本発明の多層フィルムには、基材の一面には、前述の樹脂層が形成されていて、他の一面には、接着層及び絶縁層が順次に形成されていてもよい。接着層または絶縁層は、この分野において公知されている多様な方式で形成することができる。例えば、絶縁層は、エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層であることができる。前記エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層は、絶縁層としての機能はもちろん、封止材(encapsulant)との接着力を高め、製造コストの節減が可能であり、再作業性(re−workability)を優秀に維持する機能を同時に行うことができる。
【0069】
本発明の他の具現例は、基材上にフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を形成する段階を含み、前記樹脂層の全体重合体に対する反応性官能基の当量が30,000以下である多層フィルムの製造方法に関する。
【0070】
本発明の具現例において基材上に前記樹脂層を形成する方式は、特に限定されない。例えば、当業界において多様に公知されている方式に準じて、前述のフッ素系重合体、反応性官能基を含有するアクリル系重合体などを適切な有機溶媒または水性溶媒に溶解または分散させて製造されたコーティング液を基材上に塗布した後、所定条件で乾燥させるなどの方式で樹脂層の形成が可能である。この際、コーティング方式は、特に限定されず、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコートまたはナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を含み、均一なコーティング層を形成することができるものならどんな方式も適用可能である。本発明においては、前記方式以外にも、この分野において公知されている多様な方式が適用されることができ、前記コーティング液にも必要に応じてその他の多様な添加剤がさらに含まれていることもできる。
【0071】
本発明の製造方法で使用されることができる基材の具体的な種類は、前述した通りであり、前記基材には、適切な蒸着処理、熱処理、プラズマ処理またはコロナ処理などをあらかじめ行ってもよく、そのような処理があらかじめ行われていてもよい。
【0072】
本発明の具現例において樹脂層を形成するコーティング液、すなわち樹脂組成物は、前述の樹脂層を形成する各成分を相対的に低い沸点を有する溶媒、具体的には、沸点が200℃以下の溶媒に溶解または分散させて製造されることができる。すなわち、本発明においては、フッ素系重合体が反応性官能基を含有するアクリル系重合体と混合することによって、沸点が相対的に低い溶媒に効果的に溶解されることができる。これにより、本発明においては、製造過程で高温の乾燥工程が要求されず、製造コストを節減すると同時に、高温乾燥時に誘発されることができる基材の熱変形や熱衝撃などを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0073】
本発明において使用することができる上記のような溶媒の例として、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(BMAC)などの1種または2種以上の混合を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
前記メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドのような溶媒は、200℃以下の温度で蒸発される溶媒であって、前述のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層コーティング用材料をよく溶解させることができると共に、前記コーティング層材料とともに基材上に塗布された後、比較的低い温度で乾燥することができる。また、特に前記コーティング過程でコーティング液の溶媒は、前記基材の表面または基材の表面処理層をスウェリング(swelling)させることによって、前記基材上に塗布されるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層と前記基材との接触面である界面で樹脂層のフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体成分と基材の相互拡散(interdiffusion)作用が生じ、これにより、前記樹脂層と基材との物理的、化学的結合力が向上し、基材と樹脂層との接着力をさらに向上させることができる。
【0075】
すなわち、このような反応性官能基を含有するアクリル系重合体は、フッ素系重合体の結晶化度を低下させて、上記のような相互拡散が可能な非結晶質領域を増加させて、樹脂層と基材との界面結合力の向上を高めることができる。
【0076】
本発明において樹脂層の形成に適用されるコーティング液には、前記フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体以外にも、顔料、充填剤、UV安定剤または熱安定剤のような多様な添加剤がさらに含まれてもよい。前記各添加剤は、フッ素系重合体などとともに溶媒に溶解されるか、または前記成分とは別にミルベース形態で製造された後、さらに前記フッ素系重合体または及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む溶媒と混合することもできる。上記のような樹脂層に含まれることができる充填剤、分散剤などの添加剤に含まれた作用基によってもバンデルバルス結合、水素結合、イオン結合、共有結合のような化学的相互作用が発生することができ、これにより、樹脂層と基材との接着力がさらに向上することができる。
【0077】
本発明においてコーティング液の製造方法や、コーティング液に含まれる各成分の比率などは、特に限定されず、この分野に公知されている多様な方式を適切に採用すればよい。
【0078】
本発明においては、前記コーティング段階に引き続いて、コーティングされたコーティング液を乾燥させる段階をさらに行うことができる。乾燥時の条件は、特に限定されず、例えば、200℃以下、好ましくは、約100℃〜180℃の温度で約30秒〜30分、好ましくは、約1分〜10分間行われることができる。乾燥条件を上記のように制御し、製造コストの上昇を防止し、熱変形または熱衝撃などによる製品品質低下を防止することができる。
【0079】
本発明のさらに他の具現例は、前記多層フィルムを含む光電池用裏面シートに関する。
【0080】
前記光電池用裏面シートは、前述したように、フッ素系重合体とアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層を含み、前記アクリル系重合体が反応性官能基を含むことによって、前記樹脂層と基材の作用基との化学的共有結合が形成可能にして、優れた接着力を提供することができる。具体的に前記光電池用裏面シートの製造工程中に前記樹脂層と前記基材または基材の表面処理層の界面で、前記樹脂層に含まれるフッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体が前記基材または基材の表面処理層に相互拡散されることができ、これにより、前記基材と前記樹脂層との化学的共有結合形成のみならず、分子鎖間の絡み合い(chain entanglement)とファンデルワールス力などによって接着力を向上させることができる。
【0081】
また、本発明のさらに他の具現例は、前記光電池用裏面シートを含む光電池モジュールに関する。
【0082】
本発明による光電池モジュールの構造は、前記多層フィルムを光電池用裏面シートとして含んでいる限り、特に限定されず、この分野において公知されている多様な構造を有することができる。
【0083】
通常、光電池モジュールは、透明前面基板、裏面シート及び前記前面基板と前記裏面シートとの間で封止材により封止されている光電池または光電池アレイを含むことができる。
【0084】
前記光電池または光電池アレイを構成する活性層の例として、代表的に結晶質または非結晶質シリコーンウェーハや、CIGSまたはCTSなどのような化合物半導体などを挙げることができる。
【0085】
本発明の多層フィルムは、上記のような活性層を有するモジュールを含み、この分野に知られている多様な光電池モジュールに制限なく適用されることができ、この場合、前記モジュールを構成する方式や、その他の素材の種類は、特に限定されない。
【発明の効果】
【0086】
本発明の具現例による多層フィルムは、フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層を含むことによって、耐熱耐湿条件での信頼性及び接着力に優れているだけでなく、耐候性、耐久性に優れている。また、前記樹脂層は、低沸点溶媒を使用して低い乾燥温度で低費用で製造することができ、製造コストを節減することができ、このような多層フィルムは、光電池用裏面シートなどに有用に使用され、長期間外部環境に露出しても、優れた耐久性を有する光電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】本発明の一具現例による多層フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、実施例により本発明の好ましい具現例をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は、ただ説明の目的のためのものであって、本発明の保護範囲を限定しようとするものではない。
【0089】
実施例及び比較例で製造されたフィルムの各物性は、次の方式で測定した。
【0090】
1.180度剥離強度
剥離強度は、ASTM D1897に準拠して、試験片を10mmの幅で切断した後、4.2mm/secの速度及び180度の剥離角度で剥離しながら測定した。
【0091】
2.クロス−ハッチ接着力
クロスカット試験基準であるASTM D3002/D3359の規格に準拠して、クロスカットテストを行った。具体的に、試験片を1mmの間隔で横及び縦方向にそれぞれ11列ずつカッターを利用して切断し、横及び縦がそれぞれ1mmの100個の正方形格子を形成した。その後、Nichiban社のCT−24接着テープを前記切断面に付着した後、取り外すとき、一緒に剥がれた面の状態を測定し、下記基準にして評価した。
〈クロス−ハッチ接着力評価基準〉
5B:剥がれた面がない場合
4B:剥がれた面が全体面積に対して5%以内の場合
3B:剥がれた面が全体面積に対して5〜15%の場合
2B:剥がれた面が全体面積に対して15〜35%の場合
1B:剥がれた面が全体面積に対して35〜65%の場合
0B:ほぼ大部分が剥がれた場合
【0092】
3.湿熱(damp heat)テスト
実施例及び比較例で製造された多層フィルム(基材の両面をフッ素系重合体/反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層でコーティング)を85℃及び85%R.H.の条件が維持されるオーブンに1,000時間、2,000時間または3,000時間放置した後、接着力の変化を観察した。本明細書で単位「R.H.」は、相対湿度を意味する。
【0093】
4.PCT(pressure cooker test)
実施例及び比較例で製造された多層フィルム(基材の両面をフッ素系重合体/反応性官能基を含有するアクリル系重合体を含む樹脂層でコーティング)を2気圧、121℃及び100%R.H.の条件が維持されるオーブンに50時間、75時間または100時間放置した後、接着力の変化を観察した。
【0094】
〈製造例1〉
基材層の準備
両面にアクリルプライマー処理が施されたPET(poly(ethylene terephthalate)、厚さ:250μm)フィルム(コーロング社製)の表面をコロナ処理を行った。
【0095】
フッ素系重合体の準備
フッ素系重合体及び反応性官能基を含有するアクリル系重合体の混合物を製造するために、下記表1のように多様なフッ素系重合体を準備した。下記表1には、実施例と比較例に使用するフッ素系重合体の分子量及び融点を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
〈実施例1〉
樹脂層用コーティング液の製造
ジメチルホルムアミド(DMF:N、N−dimethyl formamide)600gとメチルエチルケトン(MEK:Methylethyl ketone)200gに前記製造例1で準備した重合体5(ビニリデンフルオライド(VDF;Vinylidene fluoride)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE;Chlorotrifluoro ethylene)を85:15(VDF:CTFE)の重量比率で重合された形態で含む共重合体)120g、前記製造例1で準備した重合体2(VDF及びヘキサフルオロプロピレン(HFP;Hexafluoropropylene)を88:12(VDF:HFP)の重量比率で重合された形態で含む共重合体60g、メチルメタクリレート(MMA):グリシジルメタクリレート(GMA):ブチルメタクリレート(BMA):スチレン(ST)の重量比が49.5:35.5:10:5であるエポキシ基を含むアクリル系重合体(エポキシ当量400g)20gをあらかじめ溶解させて第1コーティング液を準備した。
【0098】
また、上記とは別にジメチルホルムアミド100gに顔料分散剤であるBYK W9010(BYK社製)4.8g及び二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社製)160gを溶解させ、さらに直径が0.3mmであるジルコニアビーズ(Zirconia bead)100gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベースを製造した。製造されたミルベースをあらかじめ準備した第1コーティング液に投入し、さらに撹拌し、樹脂層用コーティング液を準備した。前記ミルベースは、ビーズの除去過程で損失される量を勘案して、実際樹脂層に投入される量の1.5倍の量で準備した。
【0099】
コーティング及び乾燥
前記あらかじめ準備した基材上に前記樹脂層用コーティング液をコンマリバース(comma reverse)方式で塗布した。具体的に、乾燥後の厚さが約20〜30μmとなるように間隔を調節してコーティングした後、コーティングされた基材をそれぞれの長さが2mであり、温度が80℃、170℃及び170℃に調節された3個のオーブンに1m/minの速度で順次に通過させて樹脂層を形成した。その後、樹脂層の反対面に同様にコーティングを行い、PETフィルムの両面にフッ素系重合体及びエポキシ基を含有するアクリル系重合体がコーティングされた多層フィルムを製造した。
【0100】
〈実施例2〉
二酸化チタンを使用しないことを除いて実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0101】
〈実施例3〜10〉
樹脂層用コーティング液の製造時に含まれるフッ素系重合体の種類及び配合比と二酸化チタンの含量を下記表2に示された方式に変更したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0102】
〈比較例1〉
商業的に販売されているイソボルタ(Isovolta)社のIcosolar 2442製品を多層フィルムとして使用した。前記Icosolar 2442製品は、押出工程で製造されたPVF(poly(vinylfluoride))フィルム(厚さ38μm)を接着剤を利用してPETフィルムの両面にラミネートした製品である。
【0103】
〈比較例2〉
商業的に販売されているイソボルタ(Isovolta)社のIcosolar 3469製品を多層フィルムとして使用した。前記Icosolar 3469製品は、キャスティング工程で製造されたPVFフィルム(厚さ25μm)を接着剤を利用してPETフィルムの両面にラミネートした製品である。
【0104】
【表2】
【0105】
前記実施例1〜10及び比較例1及び2の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.義条件でそれぞれ50時間、75時間または100時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、接着力の変化を評価した。評価結果は、下記表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
前記表3に示されたように、本発明の実施例の多層フィルムの場合、フッ素系重合体及び反応性官能基のエポキシを含有するアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層は、基材(PET)と高い初期接着力を示し、また、PCTを100時間進行した後にもやはり優れた接着力を示した。また、PCTを100時間進行した後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような外観の変化は観察されなかった。一方、商業的に販売されている多層フィルムであるIcosolar 2442及び3469の場合、PCTが進行されるにつれて、基材との接着力が大きく低下する点を確認した。
【0108】
〈実験例2〉
前記実施例1〜10及び比較例1及び2の多層フィルムに対して、湿熱(damp heat)試験を行った後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを85℃及び85%R.H.の条件のオーブンでそれぞれ1000時間、2000時間または3000時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、剥離力の変化を評価した。前記評価結果を下記表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
前記表4に示されたように、本発明の実施例の多層フィルムの場合、フッ素系重合体及び反応性官能基のエポキシを含有するアクリル系重合体の混合物を含む樹脂層が基材(PET)と高い初期接着力を示し、また、湿熱テストを3,000時間まで行った後にもやはり優れた接着力を示した。また、湿熱テストを3,000時間進行した後にも、樹脂層などに界面剥離及びピンホール生成などのような外観の変化は観察されなかった。一方、商業的に販売されている多層フィルムであるIcosolar 2442及び3469の場合、湿熱テストが進行されるにつれて、基材との接着力が大きく低下する点を確認した。
【0111】
〈実施例11〜21及び比較例3〜5〉
コーティング液の製造過程でフッ素系重合体をビニリデンフルオライド(VDF)の単一共重合体であるポリビニリデンフルオライド(PVDF:Polyvinylidene fluoride、重合体7)を使用し、フッ素系重合体及びアクリル系重合体の相対的な量を調節し、下記表5のようにエポキシ当量を変更したこととミルベースに含まれる二酸化チタンの含量を80gに変更したことを除いて、実施例1と同一の方式で多層フィルムを製造した。
【0112】
〈比較例6〜8〉
コーティング液の製造過程でアクリル系重合体として非反応性アクリル重合体であるポリメチルメタクリレート(PMMA:Polymethylmethacrylate)を使用したことを除いて、それぞれ実施例13、15及び17と同一の方式で多層フィルムを製造した。
【0113】
【表5】
【0114】
〈実験例3〉
前記実施例11〜21及び比較例3〜8の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間、50時間または75時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、その結果を下記表6に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
前記表6に示されたように、多層フィルムの樹脂層と基材(PET)との高温高湿条件での接着力は、コーティング層内のエポキシ基の含量に依存することを確認することができる。PDVF単独だけで樹脂層を形成した場合である比較例5は、接着力が非常に低いことを確認することができ、反応性官能基がないアクリル重合体であるPMMAを使用した場合である比較例6〜8に比べて反応性官能基が含まれたアクリル重合体を使用した場合である実施例11〜21が高温高湿条件での接着力に優れていることを確認することができる。
【0117】
〈実施例22〜32及び比較例9〜11〉
コーティング液の製造過程でフッ素系重合体を分岐ビニリデンフルオライド(VDF)の単一共重合体である重合体6を使用し、フッ素系重合体及びアクリル系重合体の相対的な量を調節し、下記表7のようにエポキシ当量を変更したことを除いて、実施例11と同一の方式で多層フィルムを製造した。
【0118】
【表7】
【0119】
〈実験例4〉
前記実施例22〜32及び比較例9〜11の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間、50時間または75時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、その結果を下記表8に示した。
【0120】
【表8】
【0121】
前記表8に示されたように、多層フィルムの樹脂層と基材(PET)との高温高湿条件での接着力は、コーティング層内のエポキシ基の含量に依存することを確認することができる。重合体6単独だけで樹脂層を形成した場合である比較例19は、接着力が非常に低いことを確認することができ、反応性官能基が含まれたアクリル重合体を使用した場合である実施例19〜26が高温高湿条件での接着力に優れていることを確認することができる。
【0122】
〈実施例33〜43及び比較例12及び13〉
コーティング液の製造過程でフッ素系重合体を分岐ビニリデンフルオライド(VDF)の単一共重合体である重合体6を使用し、アクリル系重合体をメチルメタクリレート(MMA):グリシジルメタクリレート(GMA):ブチルメタクリレート(BMA):スチレン(ST)の重量比が56.3:23.7:13.3:6.7であるエポキシ基を含むアクリル系重合体(エポキシ当量600g)を使用し、フッ素系重合体及びアクリル系重合体の相対的な量を調節し、下記表9のようにエポキシ当量を変更したことを除いて、実施例11と同一の方式で多層フィルムを製造した。
【0123】
【表9】
【0124】
〈実験例5〉
前記実施例33〜43及び比較例12及び13の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行った後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間、50時間または75時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、その結果を下記表10に示した。
【0125】
【表10】
【0126】
前記表10に示されたように、多層フィルムの樹脂層と基材(PET)との高温高湿条件での接着力は、コーティング層内のエポキシ基の含量に依存することを確認することができる。反応性官能基が含まれたアクリル重合体を使用した場合である実施例33〜43は、高温高湿条件での接着力に優れていることを確認することができる。
【0127】
比較例12及び13の場合には、アクリル系重合体の含量が低く、エポキシ基当量が一定水準以上に大きくなるにつれて、接着力を確保しないことを確認することができる。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施例を参照として本発明について詳細に説明したが、これらは、ただ例示的なものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者ならこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるこという点を理解することができる。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0129】
10 多層フィルム
11 樹脂層
12 基材
図1