【文献】
KAPS L. et al.,Journal of Inorganic Biochemistry,2012年,106,52-58
【文献】
OZDEMIR I. et al.,MOLECULES,2010年,15,2203-2210
【文献】
FUJIHARA T. et al.,CHEM. COMMUN.,2005年,4526-4528
【文献】
ROBLES-MACHIN R. et al.,J. ORG. CHEM.,2006年,71(13),5023-5026
【文献】
LI C. et al.,ORGANIC LETTERS,2011年,13(7),1738-1741
【文献】
OHTA H. et al.,Dalton Transactions,2008年,3,379-385
【文献】
BUZAS A. et al.,Synlett,2006年,17,2727-2730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、多重結合への付加反応等に高い触媒活性を有するデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体、及びその製造方法を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、2−オキサゾリジノン製造反応等の多重結合付加反応用の触媒を提供することを第2の目的とする。
また、本発明は、前記触媒を用いた2−オキサゾリジノンの製造方法を提供することを第3の目的とする。
【0010】
本発明者らは、前記非特許文献8,9と同様の製造方法で、錯体の金属として、ロジウムやパラジウムの替わりに金を用いたデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体を得ようとした。しかしながら、前記非特許文献8,9に記載されたと同様の製造方法では、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は得られなかった。
本発明者等は、前記製造方法における各工程について分析し、鋭意研究を重ねた結果、前記製造方法は、錯体の金属が金である場合には有効でないこと、ハロゲン系反応溶媒を用いたデンドリマー固定化含窒素複素環カルベンと金(I)化合物との反応により、目的化合物であるデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は生成するが、カラムクロマトグラフィーによる精製の際に、前記非特許文献8,9に記載され、かつ、前記反応工程でも使用されているハロゲン系溶媒をカラムクロマトグラフィーの溶離液として用いると、目的化合物が分解し収率が大きく低下するとともに、目的化合物純品の単離が不可能であること、目的化合物のデンドリマーは、球状でかつ分子量が大きく結晶化しないため、前記非特許文献10に記載のような再結晶による精製は不可能であること、カラムクロマトグラフィーによる精製の際、各種の溶媒のうち、主にエステル系溶媒を溶離液として用いることにより、目的化合物の単離が可能であること等を知見し、最終的に、該目的化合物は溶媒中において、デンドリマー固定化イミダゾリウム塩より調製されるデンドリマー固定化含窒素複素環カルベンと金(I)化合物を反応させ、カラムクロマトグラフィーによる精製の際、主にエステル系溶媒を溶離液として用いることにより容易に得られることを見出した。
また、得られたデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体についてのさらなる研究過程において、このデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は、プロパルギルアミンと二酸化炭素との反応を効率的に促進させること、新規多重結合付加反応用触媒、2−オキサゾリジノン製造用触媒、及び水溶媒中で使用する2−オキサゾリジノン製造用触媒として有用であることを見出した。
本発明は、上記のような研究過程で得られた様々な知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
(1) 一般式(I)
【化1】
[式中、Lはハロゲン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、有機カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、テトラブロモ鉄(III)酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、シアン化物イオン、アジ化物イオン、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートイオンである。Gは一般式(II)
【化2】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である。nは1以上4以下の整数を示す。d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。但し、nが1で、かつ、R
1がアルキル基であるものは除外する)
で表される基である]
で表されるデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(2)前記(1)記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る多重結合付加反応用触媒。
(3)前記(1)記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る2−オキサゾリジノン製造用触媒。
(4)前記(1)記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る水溶媒中で使用する2−オキサゾリジノン製造用触媒。
(5) 一般式(III)
【化3】
[式中、Xはハロゲン原子、Gは一般式(II)
【化2】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である。nは1以上4以下の整数を示す。d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。但し、nが1で、かつ、R
1がアルキル基であるものは除外する)
で表される基である]
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩と酸化銀(I)とを溶媒中で反応させて、溶液中に含窒素複素環カルベンを生成する含窒素複素環カルベン生成工程、
デンドリマー固定化含窒素複素環カルベンが生成した溶液と、
AuL[S(CH
3)
2] (IV)
(式中、Lはハロゲン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、有機カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、テトラブロモ鉄(III)酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、シアン化物イオン、アジ化物イオン、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートイオンを示す)
の組成で表される金(I)化合物とを混合し溶媒中で反応させる反応工程、及び、
前記反応工程で得られた生成物をエステル系溶媒を主要成分とする溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーにより分離精製することを含む精製工程、
を備えることを特徴とする、一般式(I)
【化1】
(式中、G及びLは、前記と同じ意味を示す)
で表されるデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体の製造方法。
(6)前記(2)〜(4)のいずれか1項に記載の触媒と二酸化炭素の存在下、一般式(VIII)
【化8】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、水素原子又は炭化水素基であって、これらのうち2つ以上が炭化水素基の場合、いずれか2つは互いに結合して環を形成してもよい)
で表されるプロパルギルアミンを溶媒中で反応させ、一般式(IX)
【化9】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、前記と同じ意味を示す)
で表される2−オキサゾリジノンを製造することを特徴とする、2−オキサゾリジノン製造方法。
【0012】
更に、本発明は、次のような態様を含むことができる。
(7)R
1が(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である前記(1)に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(8)mの平均=3〜12である前記(1)又は(7)に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(9)nが2以上4以下の整数であり、R
1が炭素数1〜3のアルキル基である前記(1)に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(10)d,e及びfが1である前記(1)、(7)〜(9)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(11)d,e及びfのうち、2つが1であり、1つが0である前記(1)、(7)〜(9)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(12)Lがハロゲン化物イオンである前記(1)、(7)〜(11)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(13)一般式(I)における2つのGは同じものである前記(1)、(7)〜(12)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(14)一般式(II)における複数のR
1が全て同じものである前記(1)、(7)〜(13)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体。
(15)前記(7)〜(14)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る多重結合付加反応用触媒。
(16)前記(7)〜(14)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る2−オキサゾリジノン製造用触媒。
(17)前記(7)〜(14)のいずれか1項に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る水溶媒中で使用する2−オキサゾリジノン製造用触媒。
(18)精製工程が、エステル系溶媒を主要成分とする溶媒を用いて濾過することを含む(5)に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体の製造方法。
(19)エステル系溶媒が酢酸エチルである(5)又は(18)に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体の製造方法。
(20)前記(14)〜(17)のいずれか1項に記載の触媒と二酸化炭素の存在下、一般式
【化8】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、水素原子又は炭化水素基であって、これらのうち2つ以上が炭化水素基の場合、いずれか2つは互いに結合して環を形成してもよい)
で表されるプロパルギルアミンを溶媒中で反応させ、一般式(IX)
【化9】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、前記と同じ意味を示す)
で表される2−オキサゾリジノンを製造することを特徴とする、2−オキサゾリジノン製造方法。
(21)溶媒が水であることを特徴とする、前記(6)又は(20)に記載の2−オキサゾリジノン製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る前記一般式(I)で表されるデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は、多重結合付加反応用触媒として有用であり、例えばこのものを用いた場合、非水溶媒中においてだけでなく、水中においてもプロパルギルアミンと二酸化炭素との反応が室温等の比較的低い温度でも進行し、収率よく2−オキサゾリジノンを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の新規なデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は、下記一般式(I)
【化1】
[式中、Lはハロゲン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、有機カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、テトラブロモ鉄(III)酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、シアン化物イオン、アジ化物イオン、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートイオンである。Gは一般式(II)
【化2】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である。nは1以上4以下の整数を示す。d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。但し、nが1で、かつ、R
1がアルキル基であるものは除外する)
で表される基である]
で表される。
【0015】
これらのデンドリマーについて、前記式中の置換基における各符号で示される内容を具体的に説明することにより、それらの構造をさらに明らかにする。まず一般式(I)について示す。
【0016】
(1)R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基を表す。炭素数1〜3のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルの中から選ばれる基である。
炭素数7のアラルキル基はベンジル基を表す。
(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基は、mの平均が1〜20であることを表しており、1分子内及び/又は複数の分子間で単一でもよいが、必ずしも単一である必要はない。従って一般式(II)で示される3つのR
1それぞれのmの値も同じとは限らない。
(2)繰り返し構造の世代数nは1以上4以下の整数を示す。
(3)d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。
符号Gで表わされる基の一例として、d,e及びfのうち、何れか2つが1であり、n=3の場合について示すと次のとおりである。
−CH
2−C
6H
3−[O−CH
2−C
6H
3−[O−CH
2−C
6H
3−(O−R
1)
2]
2]
2
(4)比較的分子量が小さく再結晶による精製が可能と想定される、R
1がアルキル基、かつnが1であるものは除外する。
【0017】
前記一般式(I)のデンドリマーにおいて、繰り返し構造は一般式(V)で表される。
【化5】
(式中、d,e及びfは、前記と同じ意味を示す)
【0018】
本発明のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体(I)の製造について述べる。
一般式(III)
【化3】
[式中、Xはハロゲン原子、Gは一般式(II)
【化2】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である。nは1以上4以下の整数を示す。
d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。但し、nが1で、かつ、R
1がアルキル基であるものは除外する)
で表される基である]
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩と酸化銀(I)とを溶媒中で反応させることにより得られる含窒素複素環カルベンの溶液と、
AuL[S(CH
3)
2] (IV)
(式中、Lはハロゲン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、有機カルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、テトラブロモ鉄(III)酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、シアン化物イオン、アジ化物イオン、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートイオンを示す)
の組成で表される金(I)化合物とを混合し溶媒中で反応させ、反応生成物を所定の手段により精製することにより製造することができる。
【0019】
まず、酸化銀(I)との反応により、対応する含窒素複素環カルベンが得られる。
反応溶媒としてはデンドリマー固定化イミダゾリウム塩を程よく溶解できるものであり、かつ反応に関与しないものが用いられる。具体的には1,2−ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が好ましく、これらの溶媒は単独又は混合溶媒の形で使用される。その中でも好ましい反応溶媒としては、1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
【0020】
また、用いる酸化銀(I)の使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、デンドリマー固定化イミダゾリウム塩1モルあたり0.5〜4モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲の酸化銀(I)が用いられる。
この溶媒を用いてデンドリマー固定化イミダゾリウム塩と酸化銀(I)との反応を行うに際しては、好ましくは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、デンドリマー固定化イミダゾリウム塩を溶媒に添加して得られる溶液に必要量の酸化銀(I)を加えた後、十分に攪拌しながら反応させる。
【0021】
反応条件については、反応温度は好ましくは室温ないし160℃の範囲であるが、それぞれの溶媒の沸点により上限が異なる。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等のその他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは2〜50時間程度である。
反応溶液を一部取り出し、この
1H−NMR測定より、デンドリマー固定化イミダゾリウム塩がなくなりデンドリマー固定化カルベンが生成したことが確認される。
【0022】
デンドリマー固定化カルベンの生成を確認後、この溶液に金(I)化合物を加えることにより、ジメチルスルフィドが解離するとともに、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体が生成される。
【0023】
用いる金(I)化合物の使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン1モルあたり1〜4モル、好ましくは1〜1.5モルの範囲の金(I)化合物が用いられる。
このデンドリマー固定化含窒素複素環カルベンと金(I)化合物との反応を行うに際しては、好ましくは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン溶液に必要量の金(I)化合物を加えた後、十分に攪拌しながら反応させる。
【0024】
反応条件については、反応温度は好ましくは室温ないし80℃の範囲であるが、室温程度で十分進行する。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等のその他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは1〜20時間程度である。
反応溶液を一部取り出し、この
1H−NMR測定より、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体が生成したことが確認される。
【0025】
反応終了後、減圧留去、濾過により、溶媒、銀化合物、過剰の金(I)化合物などが分離除去され、カラムクロマトグラフィーにより目的物が得られ、
1H−NMR測定より確認される。
カラムクロマトグラフィーの溶離液としては、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒を主要成分とするものが用いられる。また、エステル系溶媒とヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、またはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒との混合溶媒が使用されることもある。
カラムクロマトグラフィーの溶離液として、ハロゲン系溶媒を用いた場合、目的物が分解するので、収率は大きく低下する。また本来白色である生成物は灰色となり、純品を得ることができない。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどが挙げられる。非特許文献9に記載のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−ロジウム錯体の製造においては、濾過やカラムクロマトグラフィーによる精製工程の際にジクロロメタンが用いられているが、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体の製造では、ジクロロメタンをはじめとするハロゲン系溶媒を精製工程において用いない方が最も好ましいが、仮に用いたとしても、使用量を精製用溶媒の10vol.%以下、好ましくは5vol.%以下、より好ましくは2vol.%以下に制限する必要がある。
濾過やカラムクロマトグラフィーの際に使用する溶離液等の精製用溶媒におけるエステル系溶媒の割合は、通常、50〜100vol.%、好ましくは60〜100vol.%、より好ましくは80〜100vol.%、最も好ましくは90〜100vol.%である。
市販のchloro[1,3-bis(2,6-diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene]gold(I)をはじめ一般に含窒素複素環カルベン金−錯体は、再結晶により精製されるが、デンドリマーは、球状かつ分子量が大きく結晶化しないため、再結晶により精製することができず、前述したようにカラムクロマトグラフィーで精製される。
【0026】
これらの反応により、一ポットで目的とするデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体を製造することができる。
【0027】
原料物質として用いられるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩は、式(VI)
【化6】
で表されるイミダゾールと、一般式(VII)
【化7】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7のアラルキル基、又は(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるmの平均=1〜20のアルコキシ基である。nは1以上4以下の整数を示す。d,e及びfのうち、少なくとも
2つが1で、他は0である。Xはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)を示す。nは1以上4以下の整数を示す。但し、nが1で、かつ、R
1がアルキル基であるものは除外する)
で表されるハロ置換デンドロンを、必要に応じ塩基を存在させ溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0028】
これらの製法ではイミダゾールの窒素原子が、ハロゲン原子に隣接する炭素原子上に求核攻撃するため、N−ベンジル化(デンドロン導入)が逐次進行し、最終的にデンドリマー固定化イミダゾリウム塩が製造される。
【0029】
用いる塩基としては、フッ化セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、その中でもフッ化セシウムが好ましい。これらの塩基はセライト等の無機担体に固定化されていてもよい。
また、用いる塩基の使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、生成するハロゲン化水素1モルあたり1〜3モル、好ましくは1〜1.5モルの範囲の塩基が用いられる。
【0030】
反応溶媒としてはイミダゾールとハロ置換デンドロンを程よく溶解できるものであり、かつ反応に関与しないものが用いられる。具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等が好ましく、これらの溶媒は単独又は混合溶媒の形で使用される。その中でも好ましい反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドやアセトニトリルやこれらの混合溶媒が挙げられる。
この溶媒を用いてイミダゾールとハロ置換デンドロンとの反応を行うに際しては、好ましくは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、イミダゾールとハロ置換デンドロンとを溶媒に添加して得られる溶液に必要量の塩基を加えた後、十分に攪拌しながら反応させる。
【0031】
反応条件については、反応温度は好ましくは室温ないし160℃の範囲であるが、それぞれの溶媒の沸点により上限が異なる。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等のその他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは2〜50時間程度である。
また、ハロ置換デンドロンの使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、導入されるデンドロン1モルあたり1〜3モル、好ましくは1〜1.3モルの範囲のハロ置換デンドロンが用いられる。
【0032】
反応終了後、溶媒及び未反応物質を分離除去することにより反応生成物が得られ、
1H−NMR測定より目的物の生成が確認される。
本反応により、一段階で目的とするデンドリマー固定化イミダゾリウム塩を製造することができる。
【0033】
デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体を用いることにより、プロパルギルアミンと二酸化炭素との反応やアセチレン化合物の水和反応などが進行するから、本デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は、多重結合付加反応用触媒として有用である。
【0034】
本発明のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体をこのような多重結合付加反応用触媒として用いた反応の一例について、以下に説明する。
前記触媒としてのデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体と二酸化炭素の存在下に、一般式(VIII)
【化8】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、水素原子又は炭化水素基であって、これらのうち2つ以上が炭化水素基の場合、いずれか2つは互いに結合して環を形成してもよい)
で表されるプロパルギルアミンを溶媒中で反応させ、一般式(IX)
【化9】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、前記と同じ意味を示す)
で表される2−オキサゾリジノンを製造することができる。
【0035】
上記炭化水素基は特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
またこの反応は、通常、二酸化炭素含有雰囲気下(好ましくは二酸化炭素雰囲気下)溶媒に触媒及び原料物質を溶解させて行われる。溶媒には通常有機溶媒又は水が用いられる。有機溶媒として好ましくはメタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のプロトン性溶媒が用いられるが、アセトニトリル、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒も使用することができ、これらを単独もしくは組み合わせて用いられる。二酸化炭素の圧力(または分圧)は0.1MPa(1気圧)でよいが、10MPaまで上げてもよい。通常0.1MPaから2MPaの範囲で行われる。
また反応は、格別加熱することなく、室温程度で進行させることができるが、加熱により促進させるようにしてもよい。反応中、反応液は攪拌するのがよい。
【0036】
反応終了後、反応液を減圧留去し、このもののトルエン等の濃厚溶液をメタノール等のアルコール、またはジエチルエーテルに滴下し、再沈殿させることにより、デンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金触媒は回収され、リサイクルも可能である。また上澄み液であるアルコール液またはジエチルエーテル液を濃縮しカラムクロマトグラフィーによる分離精製により目的物質を得ることができる。
【0037】
特にデンドリマーの最外層R
1が、(CH
2CH
2O)
mCH
3で表されるアルコキシ基の場合、室温下水中で収率良く目的物質である2−オキサゾリジノンを得ることができる。また最外層がこのように親水性基の場合、反応液のジエチルエーテルへの滴下による再沈殿により、触媒は回収され、リサイクルが可能となる。
【0038】
本触媒では、最外層R
1と反応溶媒の組み合わせを選択することにより、室温下収率良く目的物質である2−オキサゾリジノンを得ることができる点、及び再沈殿により、触媒は回収され、リサイクルが可能な点が本触媒の利点といえる。
【0039】
このように、本発明のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体は、新規多重結合付加反応用触媒、2−オキサゾリジノン製造用触媒、及び水溶媒中で使用する2−オキサゾリジノン製造用触媒として有用であり、例えばこれを用いることにより溶媒中において効率的にプロパルギルアミンと二酸化炭素との反応を促進させることができる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
【化10】
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩354.2mgの1,2−ジクロロエタン溶液(5ml)に酸化銀(I)43.0mgを加え、60℃にて18時間攪拌した。
この1,2−ジクロロエタン溶液に、クロロ(ジメチルスルフィド)金(I)AuCl[S(CH
3)
2]106.8mgを加え、室温で3時間撹拌し反応させた。
このようにして得られた反応液を減圧下で溶媒を留去し酢酸エチルでセライト濾過し、濾液を減圧下で溶媒留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で精製した(無色油状、収量289.2mg、収率70.7%)。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析と元素分析の結果は次の通りである。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ/ppm 6.86(s,2H),6.49(d,4H,J=2.2Hz),6.45(t,2H,J=2.1Hz),5.26(s,4H),4.09(t,8H,J=4.7Hz),3.83(t,8H,J=4.7Hz),3.75−3.63(m,24H),3.57−3.53(m,8H),3.38(s,12H)
元素分析:C 47.65%、H 6.43%、N 2.31%、Cl 2.81%(測定値)。C 47.85%、H 6.43%、N 2.48%、Cl 3.14%(計算値)。
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化11】
【0042】
(実施例2)
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
【化12】
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩671.8mgの1,2−ジクロロエタン溶液(5ml)に酸化銀(I)151.8mgを加え、70℃にて27時間攪拌した。
この1,2−ジクロロエタン溶液に、クロロ(ジメチルスルフィド)金(I)AuCl[S(CH
3)
2]149.0mgを加え、室温で3時間撹拌し反応させた。
このようにして得られた反応液を減圧下で溶媒を留去し酢酸エチルでセライト濾過し、濾液を減圧下で溶媒留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製した(無色油状、収量669.3mg、収率89.5%)。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析と元素分析の結果は次の通りである。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ/ppm 6.87(s,2H),6.49(d,4H,J=2.1Hz),6.45(t,2H,J=2.1Hz),5.26(s,4H),4.09(t,8H,J=4.7Hz),3.83(t,8H,J=4.7Hz),3.73−3.62(m,56H),3.56−3.52(m,8H),3.37(s,12H)
元素分析:C 49.54%、H 7.09%、N 1.77%、Cl 2.21%(測定値)。C 49.44%、H 7.07%、N 1.89%、Cl 2.39%(計算値)。
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化13】
【0043】
(実施例3)
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
【化14】
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩126.5mgの1,2−ジクロロエタン溶液(1ml)に酸化銀(I)16.5mgを加え、75℃にて48時間攪拌した。
この1,2−ジクロロエタン溶液に、クロロ(ジメチルスルフィド)金(I)AuCl[S(CH
3)
2]10.0mgを加え、室温で3時間撹拌し反応させた。
このようにして得られた反応液を減圧下で溶媒を留去し酢酸エチルでセライト濾過し、濾液を減圧下で溶媒留去し、得られた粗生成物をアルミナカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で精製した(無色油状、収量76.5mg、収率57.4%)。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析と元素分析の結果は次の通りである。
1H−NMR(400MHz,CD
3CN)δ/ppm 7.24(s,2H),6.75(s,4H),5.21(s,4H),4.13−4.02(m,12H),3.80−3.32(m,276H),3.29(s,18H)
元素分析:C 52.66%、H 8.47%、N 0.67%、Cl 0.92%(測定値)。C 52.33%、H 8.31%、N 0.73%、Cl 0.93%(計算値)。
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化15】
【0044】
(実施例4)
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
【化16】
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩448.7mgの1,2−ジクロロエタン溶液(3ml)に酸化銀(I)24.5mgを加え、75℃にて48時間攪拌した。
この1,2−ジクロロエタン溶液に、クロロ(ジメチルスルフィド)金(I)AuCl[S(CH
3)
2]65.3mgを加え、室温で3時間撹拌し反応させた。
このようにして得られた反応液を減圧下で溶媒を留去し酢酸エチルでセライト濾過し、濾液を減圧下で溶媒留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:2)で精製した(白色固体、収量336.6mg、収率69.9%)。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析と元素分析の結果は次の通りである。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ/ppm 6.75(s,2H),6.63(d,8H,J=2.0Hz),6.56(d,16H,J=2.4Hz),6.54(t,4H,J=2.2Hz),6.51(t,2H,J=2.0Hz),6.45(t,4H,J=2.0Hz),6.39(t,8H,J=2.2Hz),5.20(s,4H),4.96(s,16H),4.92(s,8H),3.76(s,48H)
元素分析:C 62.87%、H 5.40%、N 1.08%、Cl 1.47%(測定値)。C 62.89%、H 5.41%、N 1.25%、Cl 1.59%(計算値)。
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化17】
【0045】
(比較例)
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
【化16】
で表されるデンドリマー固定化イミダゾリウム塩450.0mgの1,2−ジクロロエタン溶液(4.5ml)に酸化銀(I)25.3mgを加え、75℃にて48時間攪拌した。
この1,2−ジクロロエタン溶液に、クロロ(ジメチルスルフィド)金(I)AuCl[S(CH
3)
2]63.5mgを加え、室温で3時間撹拌し反応させた。
このようにして得られた反応液を減圧下で溶媒を留去しジクロロメタンでセライト濾過し、濾液を減圧下で溶媒留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=40:1)で精製した(灰色固体、収量92.0mg、目的物質である場合の収率19.1%)。
このものの元素分析の結果は次の通りである。
元素分析:C 63.45%、H 5.45%、N 1.18%、Cl 1.79%(測定値)。C 62.89%、H 5.41%、N 1.25%、Cl 1.59%(計算値)。
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物を含むかもしれないが、化合物の色、及び元素分析の結果より、含んだとしても純品ではない。
【化17】
【0046】
(実施例5)
アルゴン雰囲気下、水0.8mL、実施例2で得られたデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体11.8mg(アミンに対し1mol%)、及び以下の構造式
【化18】
で表されるプロパルギルアミン114.4mgを順次加えた後、1気圧の二酸化炭素雰囲気下にて、室温で24時間撹拌した。反応後、メタノール、ジクロロメタンと内部標準として3−ヒドロキシベンジルアルコールを加え均一とした後、一部取り出し減圧下で溶媒留去し、
1H−NMRより以下の化学式
【化19】
で表される2−オキサゾリジノンの生成を確認した(収率80%)
【0047】
(実施例6)
実施例1−4と同様に製造した下記表1,表2におけるGn[R](式中、nは一般式(II)におけるnと同じ意味を示す。一般式(II)におけるd及びfは1,eは0である。[TEG]は、R
1がm=3のアルコキシ基であることを意味し、[PEG]は、R
1がm=5のアルコキシ基であることを意味する)のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体を触媒として用い、実施例5に倣い2−オキサゾリジノンを合成した(表1における反応溶媒はメタノールであり、触媒量は、アミンに対し2mol%である。表2における反応溶媒は水であり、触媒量は、アミンに対し1又は2mol%である)。
表1,表2の結果から、本発明のデンドリマー固定化含窒素複素環カルベン−金錯体から成る触媒を用いることにより、反応溶媒として非水溶媒を用いた場合だけでなく、水を用いた場合でも、反応を室温で進行させることができ、収率よく2−オキサゾリジノンを得られることが分かった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】