特許第6011903号(P6011903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6011903-液晶表示素子及びその製造方法 図000120
  • 特許6011903-液晶表示素子及びその製造方法 図000121
  • 特許6011903-液晶表示素子及びその製造方法 図000122
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6011903
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】液晶表示素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20161011BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 283/04 20060101ALI20161011BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20161011BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20161011BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G02F1/1337
   G02F1/13
   C08F2/44
   C08F20/20
   C08F283/04
   C09K19/38
   C09K19/42
   C09K19/54
【請求項の数】12
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2016-545381(P2016-545381)
(86)(22)【出願日】2015年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2015083978
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-251924(P2014-251924)
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】平田 真一
(72)【発明者】
【氏名】小川 真治
(72)【発明者】
【氏名】岩下 芳典
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/055643(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/002513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08F 2/44
C08F 20/20
C08F 283/04
C09K 19/38
C09K 19/42
C09K 19/54
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と第二基板を有する一組の基板と、前記基板の間に挟持された液晶組成物層とを有し、前記第一の基板と前記第二の基板の少なくとも一方に電極を有しており、前記第一の基板と前記第二の基板の少なくとも一方に、重合性基を有する化合物の重合性基を重合することにより前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体を含有する配向膜を有し、前記液晶組成物層を構成する液晶組成物が、下記一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)
【化1】
(式中、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
i1、Ai2、Aii1、Aii2、Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
i1、Zi2、Zii1、Zii2、Ziii1及びZiii2はそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、Zi1の少なくとも1つは−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表わし、Ziii3は−CH−又は酸素原子を表し、Xii1は水素原子又はフッ素原子を表し、mi1は1〜3の整数を表し、mi2、mii1、mii2、miii1及びmiii2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、mi1+mi2は1、2又は3であり、mii1+mii2及びmiii1+miii2はそれぞれ、1、2又は3であり、Ai1〜Aiii2、Zi1〜Ziii2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物と、一般式(IV)
【化2】
(式中、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該基中の1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、A41〜A43はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、Z41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m41は0〜2の整数を表し、A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物とを含有し、
一般式(IV)で表わされる化合物として、一般式(IV−5)
【化3】
(式中、R415及びR416はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する液晶表示素子。
【請求項2】
複数の画素を有し、該画素中にプレチルト角が異なる2以上の領域を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記第一の基板が共通電極を有し、第二の基板が画素電極を有する請求項1又は請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記共通電極と前記画素電極間に、前記第一の基板と前記第二の基板に略垂直に電荷を印加し、前記液晶組成物層中の液晶分子を制御する前記配向膜を有する請求項3に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記配向膜が前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体を含むか、又は、重合性液晶化合物の硬化物から形成される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体として、反応性基を有する化合物の重合体を含むか、又は、主鎖としてポリイミド骨格を有し側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を含む請求項5に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記配向膜表面に液晶分子の配向を制御し安定化する1種又は2種以上の重合性化合物の重合体を更に有する請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
第一の基板と第二の基板の少なくとも一方に、配向材料を塗布し、加熱することにより配向膜材料を形成した後、少なくとも一方に電極を有する前記第一の基板と前記第二の基板により液晶組成物を挟持し、前記電極に、電圧を印加した状態で活性エネルギー線を照射することにより、前記配向膜材料中に含まれる重合性基を有する化合物の重合性基を重合して前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する配向膜を有し、前記液晶組成物が、下記一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)
【化4】
(式中、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
i1、Ai2、Aii1、Aii2、Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
i1、Zi2、Zii1、Zii2、Ziii1及びZiii2はそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、Zi1の少なくとも1つは−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表わし、Ziii3は−CH−又は酸素原子を表し、Xii1は水素原子又はフッ素原子を表し、mi1は1〜3の整数を表し、mi2、mii1、mii2、miii1及びmiii2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、mi1+mi2は、1、2又は3であり、mii1+mii2及びmiii1+miii2は、それぞれ1、2又は3であり、Ai1〜Aiii2、Zi1〜Ziii2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物と、一般式(IV)
【化5】
(式中、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該基中の1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、A41〜A43はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) (c)ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、Z41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m41は0〜2の整数を表し、A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有し、
一般式(IV)で表わされる化合物として、一般式(IV−5)
【化6】
(式中、R415及びR416はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物とを含有する液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記配向膜材料が、前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体を含むか、又は、重合性液晶化合物の硬化物から形成される請求項8に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体として、反応性基を有する化合物の重合体を含むか、又は、主鎖としてポリイミド骨格を有し側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を含む請求項9に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項11】
前記配向膜表面に液晶分子の配向を制御し安定化する1種又は2種以上の重合性化合物の重合体を更に有する請求項9又は請求項10に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項12】
前記活性エネルギー線が紫外線であり、その強度が2mW/cm−2〜100mW/cm−2であり、照射総エネルギー量が10J〜300Jである請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶TV等の構成部材として有用な液晶表示素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものとして、TN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いた垂直配向型(バーチカル・アライメント;VA)やIPS(イン・プレーン・スイッチング)型等が挙げられる。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は、水分、空気、熱、光などの外的要因に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であり、かつ駆動電圧が低いことが求められる。さらに、液晶組成物は、個々の液晶表示素子に対して、誘電率異方性(Δε)や屈折率異方性(Δn)等を最適な値とするために、数種類から数十種類の化合物から構成されている。
【0003】
VA型ディスプレイでは、Δεが負の液晶組成物が用いられており、液晶TV等に広く用いられている。一方、全ての駆動方式において、低電圧駆動、高速応答、広い動作温度範囲が求められている。すなわち、Δεの絶対値が大きく、粘度(η)が小さく、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が要求されている。また、Δnとセルギャップ(d)との積であるΔn×dの設定から、液晶組成物のΔnをセルギャップに合わせて適当な範囲に調節する必要がある。加えて、液晶表示素子をテレビ等へ応用する場合、高速応答性が重視されるため、回転粘度(γ)の小さい液晶組成物が要求される。
【0004】
一方、VA型ディスプレイの視野角特性を改善するために、基板上に突起構造物を設けることにより、画素中の液晶分子の配向方向を複数に分割するMVA(マルチドメイン・バーチカル・アライメント)型の液晶表示素子が広く用いられるに至った。MVA型液晶表示素子は、視野角特性の点では優れるものの、基板上の突起構造物の近傍と離れた部位とでは、液晶分子の応答速度が異なり、突起構造物から離れた応答速度の遅い液晶分子の影響から、全体としての応答速度が不十分である問題があり、突起構造物に起因する透過率の低下の問題があった。この問題を解決するために、通常のMVA型液晶表示素子とは異なり、セル中に非透過性の突起構造物を設けることなく、分割した画素内で均一なプレチルト角を付与する方法として、PSA液晶表示素子(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向、PS液晶表示素子(polymer stabilised:ポリマー安定化)を含む。)が開発されている。PSA液晶表示素子は、少量の反応性モノマーを液晶組成物に添加し、その液晶組成物を液晶セルに導入後、電極間に電圧を印加しながら、活性エネルギー線の照射により、液晶組成物中の反応性モノマーを重合させることにより製造されるものである。そのため、分割画素中において適切なプレチルト角を付与することができ、結果として、透過率向上によるコントラストの向上及び均一なプレチルト角の付与による高速応答性を達成できる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、PSA液晶表示素子においては、液晶組成物中に反応性モノマーを添加する必要があり、高い電圧保持率が要求されるアクティブマトリクス液晶表示素子においては、問題が多く、焼き付き等の表示不良が発生する問題もあった。
【0005】
PSA液晶表示素子の欠点を改良し、液晶組成物中に液晶材料以外の異物を混入することなく、液晶分子に均一なプレチルト角を付与する方法として、反応性モノマーを配向膜材料中に混入し、液晶組成物を液晶セルに導入後、電極間に電圧を印加しながら、活性エネルギー線の照射により、配向膜中の反応性モノマーを重合させる方式が開発されている(例えば、特許文献2、3及び4参照)。
【0006】
一方、液晶表示素子の大画面化に伴って、液晶表示素子の製造方法も大きな変化を遂げている。すなわち、従来の真空注入法は、大型のパネルを製造する場合、製造プロセスに多大な時間を要することから、大型パネルの製造においては、ODF(one−drop−fill)方式による製造方法が主流となってきている(例えば、特許文献5参照)。この方式は、真空注入法と比較して、注入時間を短縮できることから、液晶表示素子の製造方法の主流となっている。しかし、液晶組成物を滴下した滴下痕が、液晶表示素子作製後にも、滴下した形状に液晶表示素子に残る現象が新たな問題となってきている。なお、滴下痕とは、黒表示した場合に液晶組成物を滴下した痕が白く浮かび上がる現象と定義する。特に、前述した配向膜材料中に反応性モノマーを添加して液晶分子にプレチルト角を付与する方式においては、液晶組成物の基板への滴下時には異物である反応性モノマーが配向膜中に存在していることから、滴下痕の問題が発生し易い。また、一般的に滴下痕の発生は液晶材料の選択により発生することも多く、その原因は明らかではない。
【0007】
滴下痕の抑制方法としては、液晶組成物中に混合した重合性化合物が重合して、液晶組成物層中にポリマー層を形成することにより、配向制御膜との関係で発生する滴下痕を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この方法のみでは、PSA方式等と同様に、液晶組成物中に添加した反応性モノマーに起因する表示の焼き付きの問題があり、滴下痕の抑制についてもその効果は不十分であり、液晶表示素子としての基本的な特性を維持しつつ、焼き付きや滴下痕の発生し難い液晶表示素子の開発が求められていた。さらに、液晶表示素子はその製造時及び使用時においてUV光に曝されるため、これらUV照射によって、劣化等が生じないまたは生じたとしても表示に影響を与えないことが重要である。
【0008】
そこで、我々は特許第05299595号公報(特許文献12)等にて、垂直配向膜中に反応性モノマーを含有させ、液晶組成物を液晶セルに導入後、電極間に電圧を印加しながら、活性エネルギー線の照射により、配向膜中の反応性モノマーを重合させる方式において、特定の液晶組成物を組み合わせる液晶表示素子を提案した。この液晶表示素子により、誘電率異方性、粘度、ネマチック相上限温度、回転粘度(γ)等の液晶表示素子としての諸特性及び液晶表示素子の焼き付き特性を悪化させることなく、製造時の滴下痕が発生し難い液晶表示素子及びその製造方法を提供することが可能になった。しかしながら液晶表示素子に対する要求の高度化により、液晶表示素子としての諸特性の更なる向上、特には、形成したプレチルトの安定性が高い液晶組成物および液晶表示素子の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−357830号公報
【特許文献2】特開2010−107536号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/261295号明細書
【特許文献4】特開2011−227284号公報
【特許文献5】特開平6−235925号公報
【特許文献6】特開2006−58755号公報
【特許文献7】特開2011−95696号公報
【特許文献8】特開2011−95697号公報
【特許文献9】特開2009−139455号公報
【特許文献10】特開2010−32860号公報
【特許文献11】特開2010−107537号公報
【特許文献12】特許05299595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、誘電率異方性、粘度、ネマチック相上限温度、回転粘度(γ)等の液晶表示素子としての諸特性及び液晶表示素子の焼き付き特性を悪化させることなく、製造時の滴下痕が発生し難く、液晶表示素子としての諸特性が高く、形成したプレチルトの安定性が高い液晶表示素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために、種々の液晶組成物を検討した結果、特定の液晶化合物を含むことにより、前記課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、第一基板と第二基板を有する一組の基板と、前記基板の間に挟持された液晶組成物層とを有し、前記第一の基板と前記第二の基板の少なくとも一方に電極を有しており、前記第一の基板と前記第二の基板の少なくとも一方に、重合性基を有する化合物の重合性基を重合することにより前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体を含有する配向膜を有し、前記液晶組成物層を構成する液晶組成物が、下記一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
i1、Ai2、Aii1、Aii2、Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
i1、Zi2、Zii1、Zii2、Ziii1及びZiii2はそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、Zi1の少なくとも1つは−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表わし、Ziii3は−CH−又は酸素原子を表し、Xii1は水素原子又はフッ素原子を表し、mi1、mi2、mii1、mii2、miii1及びmiii2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、mi1+mi2は0、1、2又は3であり、mii1+mii2及びmiii1+miii2はそれぞれ、1、2又は3であり、Ai1〜Aiii2、Zi1〜Ziii2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物と、一般式(IV)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該基中の1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、A41〜A43はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、Z41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m41は0〜2の整数を表し、A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する液晶表示素子である。
【0017】
また、第一の基板と第二の基板の少なくとも一方に、配向材料を塗布し、加熱することにより配向膜材料を形成した後、少なくとも一方に電極を有する前記第一の基板と前記第二の基板により液晶組成物を挟持し、前記電極に、電圧を印加した状態で活性エネルギー線を照射することにより、前記配向膜材料中に含まれる重合性基を有する化合物の重合性基を重合して前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する配向膜を有し、前記液晶組成物が、下記一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
i1、Ai2、Aii1、Aii2、Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
i1、Zi2、Zii1、Zii2、Ziii1及びZiii2はそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、Zi1の少なくとも1つは−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表わし、Ziii3は−CH−又は酸素原子を表し、Xii1は水素原子又はフッ素原子を表し、mi1、mi2、mii1、mii2、miii1及びmiii2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、mi1+mi2は0、1、2又は3であり、mii1+mii2及びmiii1+miii2は、それぞれ1、2又は3であり、Ai1〜Aiii2、Zi1〜Ziii2が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物と、一般式(IV)
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該基中の1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、A41〜A43はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) (c)ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、Z41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m41は0〜2の整数を表し、A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する液晶表示素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液晶表示素子としての高速応答性優れ、焼き付きの発生が少なく、その製造時における滴下痕の発生が少なく、液晶表示素子としての諸特性に優れ、また、形成したプレチルトの安定性が高いため、液晶TV、モニター等の表示素子として有効に用いることができる。
【0023】
また、本発明によれば、滴下痕の発生し難い効率的な液晶表示素子の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の液晶表示素子の一実施形態を示す概略斜視図である。
図2】本発明の液晶表示素子に用いられるスリット電極(櫛形電極)の一例を示す概略平面図である。
図3】本発明の液晶表示素子におけるプレチルト角の定義を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の液晶表示素子及びその製造方法の実施の形態について説明する。
【0026】
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、一対の基板の間に挟持された液晶組成物層を有する液晶表示素子であって、液晶組成物層に電圧を印加し、液晶組成物層中の液晶分子をフレデリクス転移させることにより、光学的なスイッチとして働かせる原理に基づくものであり、この点では周知慣用技術を用いることができる。
【0027】
二つの基板は、液晶分子をフレデリクス転移するための電極を有する、通常の垂直配向液晶表示素子では、一般的に、二つの基板間に垂直に電荷を印加する方式が採用される。この場合、一方の電極は共通電極となり、もう一方の電極は画素電極となる。以下に、この方式の最も典型的な実施形態を示す。
【0028】
図1は、本発明の液晶表示素子の一実施形態を示す概略斜視図である。
【0029】
本実施形態の液晶表示素子10は、第一の基板11と、第二の基板12と、第一の基板11と第二の基板12の間に挟持された液晶組成物層13と、第一の基板11における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた共通電極14と、第二の基板12における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた画素電極15と、共通電極14における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた垂直配向膜16と、画素電極15における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた垂直配向膜17と、必要に応じて、垂直配向膜16上に形成された重合体層20と、垂直配向膜17上に形成された重合体層21と、第一の基板11と共通電極14の間に設けられたカラーフィルター18とから概略構成されている。
【0030】
第一の基板11と、第二の基板12としては、ガラス基板又はプラスチック基板が用いられる。
【0031】
プラスチック基板としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状オレフィン樹脂等の樹脂からなる基板が用いられる。
【0032】
共通電極14は、通常、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。
【0033】
画素電極15は、通常、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。
【0034】
画素電極15は、第二の基板12にマトリクス状に配設されている。画素電極15は、TFTスイッチング素子に代表されるアクティブ素子のドレイン電極により制御され、そのTFTスイッチング素子は、アドレス信号線であるゲート線及びデータ線であるソース線をマトリクス状に有している。なお、ここでは、TFTスイッチング素子の構成を図示していない。
【0035】
視野角特性を向上させるために画素内の液晶分子の倒れる方向をいくつかの領域に分割する画素分割を行う場合、各画素内において、ストライプ状やV字状のパターンを有するスリット(電極の形成されない部分)を有する画素電極を設けていてもよい。
【0036】
図2は、画素内を4つの領域に分割する場合のスリット電極(櫛形電極)の典型的な形態を示す概略平面図である。このスリット電極は、画素の中央から4方向に櫛歯状にスリットを有することにより、電圧無印加時に基板に対して略垂直配向している各画素内の液晶分子は、電圧の印加に伴って4つの異なった方向に液晶分子のダイレクターを向けて、水平配向に近づいていく。その結果、画素内の液晶の配向方位を複数に分割できるので極めて広い視野角特性を有する。
【0037】
画素分割するための方法としては、前記画素電極にスリットを設ける方法の他に、画素内に線状突起等の構造物を設ける方法、画素電極や共通電極以外の電極を設ける方法等が用いられる。これらの方法により、液晶分子の配向方向を分割することもできるが、透過率、製造の容易さから、スリット電極を用いる構成が好ましい。スリットを設けた画素電極は、電圧無印加時には液晶分子に対して駆動力を有さないことから、液晶分子にプレチルト角を付与することはできない。しかし、本発明において用いられる配向膜材料を併用することにより、プレチルト角を付与することができるとともに、画素分割したスリット電極と組み合わせることにより、画素分割による広視野角を達成することができる。
【0038】
本発明において、プレチルト角を有するとは、電圧無印加状態において、基板面(第一の基板11および第二の基板12における液晶組成物層13と隣接する面)に対して垂直方向と液晶分子のダイレクターが僅かに異なっている状態を言う。
(配向膜)
本発明の液晶表示素子は、垂直配向(VA)型液晶表示素子であるので、電圧無印加時に液晶分子のダイレクターは基板面に対して略垂直配向しているものである。液晶分子を垂直配向させるためには、一般的に(垂直)配向膜が用いられる。
【0039】
本発明には、重合性基を有する化合物の重合性基を重合することにより前記液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する重合体を含有する配向膜を用いる。すなわち、本発明では、重合性基を有する化合物の重合性基を重合した重合体を含有する配向膜を用い、前記重合体は組成物中の液晶分子の配向方向の制御能を有する。
【0040】
垂直配向膜を形成する材料(垂直配向膜材料)としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、重合性液晶化合物の硬化物等が用いられる。
【0041】
垂直配向膜を形成する配向膜材料としてポリイミドを用いる場合には、テトラカルボン酸二無水物およびジイソシアネートの混合物、ポリアミック酸、ポリイミドを溶剤に溶解又は分散させたポリイミド溶液を用いることが好ましく、この場合、ポリイミド溶液中におけるポリイミドの含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
また、垂直配向膜を形成する配向膜材料としてポリシロキサン系材料を用いる場合には、アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコール誘導体及びシュウ酸誘導体を所定の配合量比で混合して加熱することにより製造したポリシロキサンを溶解させた、ポリシロキサン溶液を用いることができる。
【0043】
本発明の液晶表示素子において、ポリイミド等により形成される前記垂直配向膜16、17は、反応性基を有する重合性化合物の重合により形成される重合体を含むものである。この重合性化合物は、液晶分子のプレチルト角を固定する機能を付与するものである。すなわち、スリット電極等を用いて、画素内の液晶分子のダイレクターを電圧印加時に異なった方向にチルトさせることが可能となる。しかし、スリット電極を用いた構成においても、電圧無印加時に、液晶分子は基板面に対してほとんど垂直配向しており、プレチルト角は発生しないが、電極間に電圧を印加し、液晶分子を僅かにチルトさせた状態で、紫外線等を照射し、液晶組成物中の反応性モノマーを重合させることにより、適切なプレチルト角を付与している。
【0044】
また、必要に応じて、前記重合体層20、21は液晶組成物中に含有させた重合性化合物を基板間に挟持した後、電圧を印加しながら重合性化合物を硬化させることにより、重合性化合物が相分離しながら前記垂直配向膜16、17の表面に重合体として形成させることができる。
【0045】
前記垂直配向膜16、17中に含まれる重合体と、必要に応じて形成される前記垂直配向膜16、17の表面に形成された前記重合体層20、21により、液晶分子の配向性が高く、焼き付きの発生が少なく、その製造時における滴下痕の発生が少ないものとなる。
【0046】
本発明において、略垂直とは、垂直配向している液晶分子のダイレクターが垂直方向からやや倒れてプレチルト角を付与した状態を意味する。プレチルト角が完全な垂直配向の場合を90°、ホモジニアス配向(基板面に水平に配向)の場合を0°とすると、略垂直とは、89.5〜85°であることが好ましく、89.5〜87°であることがより好ましい。
【0047】
反応性基を有する重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜16、17は、垂直配向膜材料に混合した重合性化合物の効果により形成されるものである。従って、垂直配向膜と重合性化合物は複雑に絡み合って、一種のポリマーアロイを形成しているものと推定されるが、その正確な構造を示すことはできない。
【0048】
また、必要に応じて形成される前記重合体層20、21は、液晶組成物中に含有させた重合性化合物が重合する際に液晶組成物から相分離しながら前記垂直配向膜16、17の表面に形成されるが、垂直配向膜の全面に均一に形成されるか、不均一な海島構造で形成されるかは、製造される条件により異なるものと考えられ、その正確な構造は示すことはできない。図1では均一に形成された場合について示した。
【0049】
本発明において用いる配向膜には、液晶組成物層中の液晶分子を基板面に対して垂直方向に配向させる垂直配向能と共に、さらに液晶分子の配向方向を制御する配向制御能を有する必要がある。前記垂直配向能及び配向制御能の2つの機能を有する配向膜を得る方法としては、通常用いられる配向膜材料中に反応性基を有する重合性化合物を配合する方法、配向膜材料として、側鎖部分に架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を用いる方法、重合性液晶化合物の硬化物を用いる方法がある。以下、各方法について説明する。
(配向膜材料中に反応性基を有する重合性化合物を配合する方法)
配向膜材料中に反応性基を有する重合性化合物を配合する方法としては、前述の配向膜材料に反応性基を有する重合性化合物を配合する方法が挙げられる。
【0050】
配向膜材料に含有する反応性基を有する重合性化合物はメソゲン性部位を含んでいても、含んでいなくてもよい。また、反応性基を有する重合性化合物の重合体は耐久性の観点から、架橋構造を有していることが好ましく、耐久性の観点から、反応性基を有する重合性化合物はニ官能又は三官能等の二つ以上の反応性基を有する重合性化合物が好ましい。
【0051】
反応性基を有する重合性化合物において、反応性基は光による重合性を有する置換基が好ましい。特に、垂直配向膜が熱重合により生成するときに、垂直配向膜材料の熱重合の際に、反応性基を有する重合性化合物の反応を抑制できるので、反応性基は光による重合性を有する置換基が特に好ましい。
【0052】
反応性基を有する重合性化合物として具体的には、下記一般式(V)
【0053】
【化5】
【0054】
(式中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−X−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、XはO、OCOO、OCO、又はCOOを表し、XはU中に存在する芳香環に結合するものとする。)を表し、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基、炭素原子数3〜20の直鎖もしくは分岐多価アルケニレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基又は多価アルケニレン基中のアルケニレン基は酸素原子が隣接しない範囲で−O−、−CO−、−CF−により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)、又は環状置換基により置換されていてもよく、kは0〜5の整数を表す。)で表される重合性化合物が好ましい。
【0055】
上記一般式(V)において、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、反応速度を重視する場合には水素原子が好ましく、反応残留量を低減することを重視する場合にはメチル基が好ましい。
【0056】
上記一般式(V)において、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−X−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、XはO、OCOO、又はCOOを表し、XはU中に存在する芳香環に結合するものとする。)を表すが、炭素鎖があまり長くないことが好ましく、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。また、Sp及びSpが−X−(CH−を表す場合も、sは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、Sp及びSpの少なくとも一方が、単結合であることがより好ましく、いずれも単結合であることが特に好ましい。
【0057】
上記一般式(V)において、kは0〜5の整数を表すが、液晶組成物層中の液晶分子の配向方向の制御性を重視する場合には、kは1〜5の整数を表すことが好ましく、kは1〜3の整数を表すことがより好ましく、kは1を表すことがさらに好ましい。
【0058】
上記一般式(V)において、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基炭素原子数3〜20の直鎖もしくは分岐多価アルケニレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で−O−、−CO−、−CF−により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)、又は環状置換基により置換されていてもよく、2つ以上の環状置換基により置換されていることが好ましい。
【0059】
上記一般式(V)において、Uは具体的には、以下の式(Va−1)から式(Va−5)を表すことが好ましく、式(Va−1)、式(Va−2)、式(Va−5)を表すことがより好ましく、式(Va−1)を表すことが特に好ましい。
【0060】
【化6】
【0061】
(式中、両端はSp又はSpに結合するものとし(上記はk=1の場合)、kが2〜5の整数である場合、連結基数は対応して増加する。Z、Z及びZはそれぞれ独立して、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−又は単結合を表し、式中の全ての芳香環は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
上記Uにおいて、Z、Z及びZはそれぞれ独立して、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0062】
Uが上記環構造を有する場合、前記Sp及びSpは少なくとも一方が単結合を表すことが好ましく、両方共に単結合であることも好ましい。
【0063】
上記一般式(V)において、kは0〜5の整数を表すが、kが1の2官能化合物、又はkが2の3官能化合物であることが好ましく、2官能化合物であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(V)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(Va−1−1)〜(Va−5−3)で表される化合物が好ましい。
【0065】
【化7】
【0066】
【化8】
【0067】
【化9】
【0068】
【化10】
【0069】
【化11】
【0070】
【化12】
【0071】
【化13】
【0072】
【化14】
【0073】
【化15】
【0074】
【化16】
【0075】
【化17】
【0076】
また、上記式(Va−1−1)〜式(Va−5−3)で表される化合物の中でも、式(Va−1−1)〜式(Va−2−11)で表される化合物が好ましく、式(Va−1−1)〜式(Va−1−13)で表される化合物がより好ましい。
【0077】
上記反応性基を有する重合性化合物、特に上記一般式(V)で表される化合物の、配向膜を形成する配向膜材料中における含有量は、0.1〜6質量%であることが好ましく、0.5〜4質量%であることがより好ましく、1〜2質量%であることがさらに好ましい。
(配向膜材料として、側鎖部分に架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を用いる方法)
側鎖部分に架橋性官能基を有する重合性化合物としては、側鎖部分に架橋性官能基(重合性基)を有していれば、主鎖部分は特に限定されないが、主鎖部分として前述のイミド骨格やシロキサン骨格を有する化合物を用いることが好ましく、主鎖部分にポリイミド骨格を有する化合物を用いることがより好ましい。
【0078】
主鎖部分にポリイミド骨格を有し側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物としては、ポリイミド構造を構成する繰り返し単位(主鎖部分)に、側鎖として架橋性官能基を含む化合物が挙げられる。そして、当該架橋性官能基が重合反応開始点となり、配向膜材料中に配合する重合性基を有する重合性化合物がラジカル反応し、側鎖を形成することにより、液晶組成物層中の液晶分子の配向方向を制御する配向制御能を有することとなる。前記架橋性官能基としては、ラジカル反応可能なものであれば、如何なる構造を有していても良いが、以下に示す(V2−1)〜(V2−7)で表される基が好ましく、(V2−1)〜(V2−3)で表される基がより好ましく、(V2−1)又は(V2−2)で表される基がさらに好ましい。
【0079】
【化18】
【0080】
(Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。) 上記架橋性官能基は、主鎖部分と共有結合を介して結合していればよく、主鎖部分に直接結合していても、主鎖部分に連結基を介して結合していても良いが、連結基としては、−O−C−又は−O−C−(RO)r−を用いることが好ましい(Rは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、rは1以上の整数を表す。)。
【0081】
主鎖としてポリイミド骨格を有し側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物として、例えば、以下に示す一般式(V2)で表される化合物を例示することができる。
【0082】
【化19】
【0083】
(一般式(V2)中、Rは下記(V2−A)〜(V2−F)で表される基のうちのいずれか1種を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立して上記(V2−1)〜(V2−7)で表される基のうちのいずれか1種を表し、nは1以上の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ0又は1を表し、m3及びm4はそれぞれ0又は1以上の整数を表し、m5及びm6はそれぞれ0又は1を表すが、m5及びm6の少なくとも1つは1を表す。)
【0084】
【化20】
【0085】
主鎖部分にポリイミド骨格を有し側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物と共に、配向膜材料中に配合する重合性基を有する重合性化合物としては、上記一般式(V)で表される化合物と同一ものが挙げられる。
【0086】
なお、当該配向膜材料として、側鎖部分に架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を用いる場合、前述の公知のポリイミド系材料を併用して用いても良い。
(配向膜として重合性液晶化合物の硬化物を用いる方法)
配向膜として重合性液晶化合物の硬化物を用いる場合、前述のポリイミド系材料やポリシロキサン系材料からなる配向膜を下塗り配向膜として用いても良い。
配向膜を形成する重合性液晶化合物として具体的には、下記一般式(V3)
【0087】
【化21】
【0088】
(式中、Xは、水素原子又はメチル基を表し、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Zは−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−(YおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子を表す。)、−C≡C−又は単結合を表し、Yは、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、水素原子、フッ素原子もしくはシアノ基、又は以下の構造
【0089】
【化22】
【0090】
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表す。)を表し、C環は1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表し、C環において1,4−フェニレン基の任意の水素原子はフッ素原子により置換されていてもよい。)で表される重合性液晶化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0091】
上記一般式(V3)において、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、反応速度を重視する場合には水素原子が好ましく、反応残留量を低減することを重視する場合にはメチル基が好ましい。
【0092】
上記一般式(V3)において、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表すが、炭素鎖があまり長くないことが好ましく、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。また、Sp及びSpが−O−(CH−を表す場合も、sは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、Sp及びSpの少なくとも一方が、単結合であることがより好ましく、いずれも単結合であることが特に好ましい。
【0093】
上記一般式(V3)において、Zは−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−、−C≡C−又は単結合を表すが、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0094】
上記一般式(V3)において、Cは任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表すが、1,4−フェニレン基又は単結合が好ましい。
【0095】
Cが単結合以外の環構造を表す場合、Zは単結合以外の連結基も好ましく、Cが単結合の場合、Zは単結合が好ましい。
【0096】
Yは、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、水素原子、フッ素原子又はシアノ基を表す化合物は、単官能の重合性液晶化合物であり、Yが重合性骨格を有さないものである。一方、Yが前述の重合性骨格を表す化合物はニ官能重合性液晶化合物である。本発明においては、単官能の重合性液晶化合物又はニ官能重合性液晶化合物の何れも使用することが可能であるが、耐熱性の観点からニ官能重合性液晶化合物が好ましく、これらを両方同時に用いることもできる。
【0097】
以上のことから、環構造を有する重合性液晶化合物としては、以下の一般式(V3−1)から(V3−6)で表される化合物が好ましく、一般式(V3−1)から(V3−4)で表される化合物が特に好ましく、一般式(V3−2)で表される化合物が最も好ましい。
【0098】
【化23】
【0099】
重合性液晶化合物の硬化物を配向膜として用いる場合、配向膜形成材料中の重合性液晶化合物を加熱し等方性液体とした後に、温度を下げ、重合性液晶化合物の配向を垂直配向とする必要がある。その後、基板面から特定角度傾斜した磁場を印加した状態でプレチルト角を付与し、この状態のまま、紫外線を照射し、重合性液晶化合物を硬化させ、配向膜とする。
【0100】
また、当該配向膜には、配向膜の下地層として、水平配向膜を有していても良い。具体的には、ポリイミド系水平配向配向膜材料等を用い、基板上に水平配向膜材料をスピンコート法によって塗布し、加熱等により溶媒を除去した後、焼成し、下地層を作成し、ラビング処理を行い水平配向性を付与した水平配向膜を有していても良い。(配向膜表面に重合体層を形成させるために液晶組成物に含有させる重合性化合物)
本発明の液晶表示素子において、垂直配向膜は、反応性基を有する重合性化合物の重合により形成される重合体を含み、当該重合体により、適切なプレチルト角を付与することができるが、更に、必要に応じて、液晶組成物中に重合性化合物を含有させ、当該液晶組成物を基板間に挟持した後、電圧を印加しながら該重合性化合物を硬化させることにより、重合性化合物が相分離しながら、前記垂直配向膜の表面に重合体層として形成され、更に液晶分子の配向性やプレチルト角の安定性が高く、焼き付きの発生が少なく、その製造時における滴下痕の発生が少ない液晶表示素子を得ることができる。
【0101】
前記重合層を形成させる重合性化合物は、ひとつの反応性基を有する単官能性の重合性化合物、二官能あるいは三官能等の二つ以上の反応性基を有する多官能性の重合性化合物等が挙げられるが、二官能あるいは三官能等の二つ以上の反応性基を有する多官能性の重合性化合物が好ましい。用いられる重合性化合物は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。反応性基を有する重合性化合物はメソゲン性部位を含んでいることが好ましい。
【0102】
重合体層を形成させる重合性化合物としては、前述の一般式(V)と同様に一般式(V1)
【0103】
【化24】
【0104】
(式中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−X−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、XはO、OCOO、OCO、又はCOOを表し、XはU中に存在する芳香環に結合するものとする。)を表し、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基、炭素原子数3〜20の直鎖もしくは分岐多価アルケニレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基又は多価アルケニレン基中のアルケニレン基は酸素原子が隣接しない範囲で−O−、−CO−、−CF−により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)、又は環状置換基により置換されていてもよく、kは1〜5の整数を表す。)で表される重合性化合物が好ましい。
【0105】
上記一般式(V1)において、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、反応速度を重視する場合には水素原子が好ましく、反応残留量を低減することを重視する場合にはメチル基が好ましい。
【0106】
上記一般式(V1)において、Sp及びSpはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−X−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、XはO、OCOO、又はCOOを表し、XはU中に存在する芳香環に結合するものとする。)を表すが、炭素鎖があまり長くないことが好ましく、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。また、Sp及びSpが−X−(CH−を表す場合も、sは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、Sp及びSpの少なくとも一方が、単結合であることがより好ましく、いずれも単結合であることが特に好ましい。
【0107】
上記一般式(V1)において、kは0〜5の整数を表すが、液晶組成物層中の液晶分子の配向方向の制御性を重視する場合には、kは1〜5の整数を表すことが好ましく、kは1〜3の整数を表すことがより好ましく、kは1を表すことがさらに好ましい。
【0108】
上記一般式(V1)において、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基炭素原子数3〜20の直鎖もしくは分岐多価アルケニレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で−O−、−CO−、−CF−により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)、又は環状置換基により置換されていてもよく、2つ以上の環状置換基により置換されていることが好ましい。Uは具体的には、以下の式(V1a−1)から式(V1a−5)を表すことが好ましく、式(V1a−1)、式(V1a−2)、式(V1a−5)を表すことがより好ましく、式(V1a−1)を表すことが特に好ましい。
【0109】
【化25】
【0110】
(式中、両端はSp又はSpに結合するものとし(上記はk=1の場合)、kが2〜5の整数である場合、連結基数は対応して増加する。Z、Z及びZはそれぞれ独立して、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−又は単結合を表し、式中の全ての芳香環は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
上記Uにおいて、Z、Z及びZはそれぞれ独立して、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0111】
Uが上記環構造を有する場合、前記Sp及びSpは少なくとも一方が単結合を表すことが好ましく、両方共に単結合であることも好ましい。
【0112】
上記一般式(V1)で表される化合物は、以下の一般式(V1b)で表される化合物が好ましい。
【0113】
【化26】
【0114】
(式中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp1b及びSp2bはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Zは−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−、−C≡C−又は単結合を表し、C環は1,4−フェニレン基、又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
上記一般式(V1b)において、X及びXは、はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、いずれも水素原子を表すジアクリレート誘導体、又はいずれもメチル基を有するジメタクリレート誘導体が好ましく、一方が水素原子を表し、もう一方がメチル基を表す化合物も好ましい。これらの化合物の重合速度は、ジアクリレート誘導体が最も早く、ジメタクリレート誘導体が遅く、非対称化合物がその中間であり、その用途により好ましい態様を用いることができる。
【0115】
上記一般式(V1b)において、Sp1b及びSp2bはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH)s−を表すが、少なくとも一方が単結合であることが好ましく、共に単結合を表す化合物又は一方が単結合でもう一方が炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH)s−を表す態様が好ましい。この場合、炭素原子数1〜4のアルキレン基が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0116】
上記一般式(V1b)において、Zは、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−、−C≡C−又は単結合を表すが、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
Cが単結合以外の環構造を表す場合、Zは単結合以外の連結基も好ましく、Cが単結合の場合、Zは単結合が好ましい。
【0117】
以上より、上記一般式(V1b)において、Cが単結合を表し、環構造が二つの環で形成される場合が好ましく、環構造を有する重合性化合物としては、具体的には以下の一般式(V1b−1)から(V1b−6)で表される化合物が好ましく、一般式(V1b−1)から(V1b−4)で表される化合物が特に好ましく、一般式(V1b−2)で表される化合物が最も好ましい。
【0118】
【化27】
【0119】
(Sp1b及びSp2bは、それぞれ、一般式(V1b)に記載されたSp及びSpと同じ意味を表す。)
上記一般式(V1)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(V1c)で表される化合物も好ましい。
【0120】
【化28】
【0121】
(式中、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp1c、Sp2c及びSp3cはそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH−(式中、sは2〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Z11は、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−、−C≡C−又は単結合を表し、Jは1,4−フェニレン基、又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
垂直配向膜表面に重合体層を形成させるために用いる重合性化合物の液晶組成物中における含有量の合計は、0〜1質量%であることが好ましく、0.03〜0.8質量%であることが好ましく、0.05〜0.6質量%であることがより好ましい。
(液晶組成物)
本発明における液晶組成物には、一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)で表される化合物を1種または2種以上含有する。
【0122】
【化29】
【0123】
一般式(i)、一般式(ii)及び一般式(iii)で表される化合物は、誘電率異方性(Δε)が負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが好ましい。
【0124】
一般式(i)、一般式(ii)及び一般式(iii)中、Ri1、Rii1及びRiii1はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜3のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数3のアルケニル基(プロペニル基)が特に好ましい。Ri2、Rii2及びRiii2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が更に好ましい。表示素子の応答速度の改善を重視する場合はアルケニル基が好ましく、電圧保持率等の信頼性を重視する場合にはアルキル基が好ましい。
【0125】
また、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2が結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、Ri1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2が結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0126】
i1、Ri2、Rii1、Rii2、Riii1及びRiii2がアルケニル基の場合、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の*は環構造への結合部位を示す。)
【0127】
【化30】
【0128】
一般式(i)、一般式(ii)及び一般式(iii)中、Ai1、Ai2、Aii1、Aii2、Aiii1及びAiii2はそれぞれ独立してΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、A21はトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましく、
【0129】
【化31】
【0130】
トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すことがさらに好ましい。
【0131】
i1、Zi2、Zii1、Zii2、Ziii1及びZiii2はそれぞれ独立して、単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、−CHO−、−CFO−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合を表すことが好ましく、−CHO−、−CHCH−又は単結合が更に好ましく、−CHO−又は単結合が特に好ましい。
【0132】
また、Zi1の少なくとも1つは−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表すが、−CHO−、−CFO−、−CHCH−、又は−CFCFが好ましく、−CHO−、又は−CHCH−が更に好ましく、−CHO−が特に好ましい。
【0133】
iii3は−CH−又は酸素原子を表すが、酸素原子が好ましい。
【0134】
i1、mi2、mii1、mii2、miii1及びmiii2はそれぞれ独立して0〜3の整数を表し、mi1+mi2は0、1、2又は3であり、mii1+mii2及びmiii1+miii2は、それぞれ1、2又は3であるが、mi1+mi2、mii1+mii2及びmiii1+miii2は、それぞれ1又は2であることが好ましい。
【0135】
一般式(i)で表される化合物として、一般式(i−1)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0136】
【化32】
【0137】
(式中、Ai11、Ai12及びAi13はそれぞれ独立して1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すが、1,4−シクロへキシレン基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良く、1,4−フェニレン基中に存在する1個の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、mi11及びmi12はそれぞれ独立して0又は1を表し、Ri1、Ri2、Zi1及びZi2は、それぞれ独立して一般式(i)におけるRi1、Ri2、Zi1及びZi2と同じ意味を表す。)
一般式(i−1)で表される化合物は、一般式(i−1A)、一般式(i−1B)又は一般式(i−1C)で表される化合物であることが好ましい。
【0138】
【化33】
【0139】
(式中、Ri1、Ri2、Ai11及びZi1は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1、Ri2、Ai11及びZi1と同じ意味を表す。)
【0140】
【化34】
【0141】
(式中、Ri1、Ri2、Ai11、Ai12及びZi1は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1、Ri2、Ai11、Ai12及びZi1と同じ意味を表す。)
【0142】
【化35】
【0143】
(式中、mi13は1又は2を表し、Ri1、Ri2、Ai11、Ai12、Ai13、Zi1、Zi2及びmi11は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1、Ri2、Ai11、Ai12、Ai13、Zi1、Zi2及びmi11と同じ意味を表す。)
一般式(i−1A)で表される化合物としては、下記一般式(i−1A−1)〜一般式(i−1A−4)で表される化合物が好ましく、一般式(i−1A−1)で表される化合物、及び一般式(i−1A−4)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(i−1A−1)で表される化合物が更に好ましい。
【0144】
【化36】
【0145】
(式中、Ri1及びRi2は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1及びRi2と同じ意味を表す。)
一般式(i−1B)で表される化合物としては、下記一般式(i−1B−1)〜一般式(i−1B−6)で表される化合物であることが好ましく、一般式(i−1B−1)、一般式(i−1B−3)で表される化合物、及び一般式(i−1B−6)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(i−1B−1)で表される化合物、及び一般式(i−1B−3)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0146】
【化37】
【0147】
(式中、Ri1及びRi2は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1及びRi2と同じ意味を表す。)
一般式(i−1C)で表される化合物としては、下記一般式(i−1C−1)〜一般式(i−1C−4)で表される化合物であることが好ましく、一般式(i−1C−1)、及び一般式(i−1C−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0148】
【化38】
【0149】
(式中、Ri1及びRi2は、それぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1及びRi2と同じ意味を表す。)
また、一般式(i−1)で表される化合物は、一般式(i−1D)で表される化合物であることが好ましい。
【0150】
【化39】
【0151】
(式中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して一般式(i−1)におけるRi1、Ri2、Ai11及びZi1と同じ意味を表す。)
一般式(i−1D)で表される化合物としては、下記一般式(i−1D−1)〜一般式(i−1D−14)で表される化合物であることが好ましい。
【0152】
【化40】
【0153】
一般式(ii)で表される化合物は、一般式(ii−1A)、一般式(ii−1B)又は一般式(ii−1C)で表される化合物であることが好ましい。
【0154】
【化41】
【0155】
(式中、Rii1、Rii2、Zii1及びXii1は、それぞれ独立して一般式(ii)におけるRii1、Rii2、Zii1及びXii1と同じ意味を表し、Aii1c及びAii1dはそれぞれ独立して1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すが、1,4−シクロへキシレン基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良く、1,4−フェニレン基中に存在する1個の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、Zii1c及びZii1dはそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表す。)
一般式(ii−1A)又は一般式(ii−1B)で表される化合物において、Zii1は単結合、−OCH−、−CHO−又は−CHCHを表すことが好ましい。
【0156】
一般式(ii−1C)で表される化合物は、下記一般式(ii−1C−1)〜一般式(ii−1C−6)で表される化合物が好ましい。
【0157】
【化42】
【0158】
【化43】
【0159】
(式中、Rii1及びRii2は、それぞれ独立して一般式(ii)におけるRii1及びRii2と同じ意味を表す。)
一般式(iii)で表される化合物は、一般式(iii−1A)、一般式(iii−1B)又は一般式(iii−1C)で表される化合物であることが好ましい。
【0160】
【化44】
【0161】
(式中、Riii1、Riii2及びZiii1は、それぞれ独立して一般式(iii)におけるRiii1、Riii2及びZiii1と同じ意味を表し、Aiii1c及びAiii1dはそれぞれ独立して1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すが、1,4−シクロへキシレン基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良く、1,4−フェニレン基中に存在する1個の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、Ziii1c及びZiii1dはそれぞれ独立して単結合、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CHCH−又は−CFCF−を表す。)
一般式(iii−1A)又は一般式(iii−1B)で表される化合物において、Ziii1は単結合、−OCH−、−CHO−又は−CHCHを表すことが好ましい。
【0162】
一般式(iii−1C)で表される化合物は、下記一般式(iii−1C−1)〜一般式(ii−1C−4)で表される化合物が好ましい。
【0163】
【化45】
【0164】
(式中、Riii1及びRiii2は、それぞれ独立して一般式(iii)におけるRiii1及びRiii2と同じ意味を表す。)
本発明の液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表される化合物を2種以上含有する場合は、一般式(i)〜(iii)で表される化合物のうちいずれかの式のみから選ばれる化合物を2種以上含有してもよいし、一般式(i)〜(iii)で表される化合物から選ばれる2つ以上の式から選ばれる化合物を2種以上含有してもよい。
【0165】
本発明の液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、一般式(i−1A)、一般式(i−1B)又は一般式(i−1C)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、2種から10種含有することがより好ましい。
【0166】
更に詳述すると、一般式(i−1A)、一般式(i−1B)及び一般式(i−1C)は、それぞれ、一般式(i−1A−1)、一般式(i−1B−1)及び一般式(i−1C−1)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、一般式(i−1A−1)で表される化合物及び一般式(i−1B−1)で表される化合物の組み合わせであることがより好ましい。
【0167】
一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)で表される化合物の含有量の総量は、本発明に係る液晶組成物において、10から90質量%であることが好ましく、15から90質量%が更に好ましく、20から90質量%が更に好ましく、20から80質量%が更に好ましく、30から80質量%が更に好ましく、45から80質量%が更に好ましく、45から75質量%が特に好ましい。
【0168】
より具体的には、一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)で表される化合物の含有量の総量は、組成物中に下限値として、1質量%(以下組成物中の%は質量%を表す。)以上含有することが好ましく、5%以上含有することが好ましく、10%以上含有することが好ましく、13%以上含有することが好ましく、15%以上含有することが好ましく、18%以上含有することが好ましく、20%以上含有することが好ましく、23%以上含有することが好ましく、25%以上含有することが好ましく、28%以上含有することが好ましく、30%以上含有することが好ましく、33%以上含有することが好ましく、35%以上含有することが好ましく、38%以上含有することが好ましく、40%以上含有することが好ましい。また、上限値として、95%以下含有することが好ましく、90%以下含有することが好ましく、88%以下含有することが好ましく、85%以下含有することが好ましく、83%以下含有することが好ましく、80%以下含有することが好ましく、78%以下含有することが好ましく、75%以下含有することが好ましく、73%以下含有することが好ましく、70%以下含有することが好ましく、68%以下含有することが好ましく、65%以下含有することが好ましく、63%以下含有することが好ましく、60%以下含有することが好ましく、55%以下含有することが好ましく、50%以下含有することが好ましく、40%以下含有することが好ましい。
【0169】
本発明における液晶組成物には、一般式(i)、一般式(ii)、及び一般式(iii)で表される化合物以外に、誘電率異方性(Δε)が負でその絶対値が3よりも大きな一般式(iv)で表される化合物を1種又は2種以上用いてもよい。
【0170】
【化46】
【0171】
(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表し、Bは1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、mは0、1又は2を表すが、mが2の場合二つのBは同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(iv)で表される化合物は、具体的には、以下の、以下の一般式(iv−1)〜一般式(iv−6)で表される化合物が好ましい。
【0172】
【化47】
【0173】
(式中、R3aは炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R4aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
本発明の液晶組成物は、一般式(iv)で表される化合物を1種又は2種以上含有してもよいが、一般式(iv)で表される化合物の含有量の総量は、本発明に係る液晶組成物において、上限値として、55%以下含有することが好ましく、50%以下含有することが好ましく、45%以下含有することが好ましく、40%以下含有することが好ましく、35%以下含有することが好ましく、30%以下含有することが好ましく、25%以下含有することが好ましく、20%以下含有することが好ましく、15%以下含有することが好ましく、10%以下含有することが好ましい。
【0174】
本発明における液晶組成物は、一般式(IV)で表される化合物を1種又は2種以上含有する。
【0175】
【化48】
【0176】
(式中、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該基中の1つ又は2つ以上の−CH−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−又は−OCF−で置換されてよく、該基中の1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、A41〜A43はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、Z41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、m41は0〜2の整数を表し、A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。)
一般式(IV)において、R44及びR45はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基であることが好ましく、直鎖であることが好ましい。表示素子の応答速度の改善を重視する場合はアルケニル基が好ましく、電圧保持率等の信頼性を重視する場合にはアルキル基が好ましい。R44及びR45がアルケニル基の場合、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。
【0177】
【化49】
【0178】
(各式中の黒点は環との連結点を表す。)
44及びR45の組み合わせは特に限定されないが、両方がアルキル基を表すもの、いずれか一方がアルキル基を表し、他方がアルケニル基を表すもの、又は、いずれか一方がアルキル基をあらわし、他方がアルコキシを表すもの、又はいずれか一方がアルキル基をあらわし、他方がアルケニルオキシ基を表すものであることが好ましい。信頼性を重視する場合にはR44及びR45はともにアルキル基であることが好ましく、化合物の揮発性を低減させることを重視する場合にはアルコキシ基であることが好ましく、粘性の低下を重視する場合には少なくとも一方はアルケニル基であることが好ましい。
【0179】
41〜A43はΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の何れかの構造
【0180】
【化50】
【0181】
が好ましく、
【0182】
【化51】
【0183】
がより好ましい。
【0184】
41及びZ42はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、単結合、−CHCH−、−OCF−又は−CFO−が更に好ましく、応答速度を重視する場合には単結合が特に好ましい。
【0185】
41は1又は2の整数を表すことが好ましい。A41及びZ41が複数存在する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0186】
一般式(IV)で表される化合物は単独で用いてもよいが、組み合わせて使用することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率などの所望の性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種類である。あるいは本発明の別の実施形態では2種類であり、3種類であり、4種類であり、5種類であり、6種類であり、7種類であり、8種類であり、9種類であり、10種類以上である。
【0187】
本発明の組成物において、一般式(IV)で表される化合物の含有量は、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率、プロセス適合性、滴下痕、焼き付き、誘電率異方性などの求められる性能に応じて適宜調整する必要がある。
【0188】
一般式(IV)で表される化合物の含有量は、1質量%から80質量%であることが好ましく、1質量%から70質量%であることが好ましく、1質量%から60質量%であることが好ましく、10質量%から50質量%であることが好ましく、10質量%から40質量%であることが好ましく、15質量%から40質量%であることが好ましい。
【0189】
より具体的には、一般式(IV)で表される化合物の含有量は、組成物中に下限値として、0.5質量%(以下組成物中の%は質量%を表す。)以上含有することが好ましく、1%以上含有することが好ましく、3%以上含有することが好ましく、5%以上含有することが好ましく、8%以上含有することが好ましく、10%以上含有することが好ましく、13%以上含有することが好ましく、15%以上含有することが好ましく、18%以上含有することが好ましく、20%以上含有することが好ましい。また、上限値として、80%以下含有することが好ましく、70%以下含有することが好ましく、65%以下含有することが好ましく、60%以下含有することが好ましく、55%以下含有することが好ましく、50%以下含有することが好ましく、45%以下含有することが好ましく、40%以下含有することが好ましく、38%以下含有することが好ましく、35%以下含有することが好ましく、33%以下含有することが好ましく、30%以下含有することが好ましく、28%以下含有することが好ましく、25%以下含有することが好ましい。
【0190】
一般式(IV)で表される化合物として、一般式(IV−1)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0191】
【化52】
【0192】
(式中、R411及びR412はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、A411は1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、kは1又は2を表すが、kが2の場合2つのAは同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(IV−1)で表される化合物の合計含有量は、1質量%から80質量%であることが好ましく、1質量%から70質量%であることが好ましく、1質量%から60質量%であることが好ましく、10質量%から50質量%であることが好ましく、10質量%から40質量%であることが好ましく、15質量%から40質量%であることが好ましい。
【0193】
より具体的には、一般式(IV−1)で表される化合物の含有量は、組成物中に下限値として、0.5質量%(以下組成物中の%は質量%を表す。)以上含有することが好ましく、1%以上含有することが好ましく、3%以上含有することが好ましく、5%以上含有することが好ましく、8%以上含有することが好ましく、10%以上含有することが好ましく、13%以上含有することが好ましく、15%以上含有することが好ましく、18%以上含有することが好ましく、20%以上含有することが好ましい。また、上限値として、80%以下含有することが好ましく、70%以下含有することが好ましく、65%以下含有することが好ましく、60%以下含有することが好ましく、55%以下含有することが好ましく、50%以下含有することが好ましく、45%以下含有することが好ましく、40%以下含有することが好ましく、38%以下含有することが好ましく、35%以下含有することが好ましく、33%以下含有することが好ましく、30%以下含有することが好ましく、28%以下含有することが好ましく、25%以下含有することが好ましい。
【0194】
一般式(IV−1)で表される化合物としては、具体的には、例えば下記一般式(IV−1a)から一般式(IV−1f)で表される化合物群で表される化合物が挙げられる。
【0195】
【化53】
【0196】
(式中、R411及びR412は、それぞれ独立して一般式(IV−1)におけるR411及びR412と同じ意味を表す。)
411及びR412は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルコキシ基を表すことがより好ましい。又、R411及びR412は同一でも異なっていても良いが、異なった置換基を表すことが好ましい。
【0197】
一般式(IV−1a)〜一般式(IV−1f)で表される化合物群から選ばれる化合物は、1種〜10種含有することが好ましく、1種〜8種含有することが特に好ましく、1種〜5種含有することが特に好ましく、2種以上の化合物を含有することも好ましい。一般式(IV−1a)で表される化合物を含有することが好ましい。一般式(IV−1a)で表される化合物において、R411がアルケニル基を表す場合は、例えば、一般式(IV−1a1)
【0198】
【化54】
【0199】
(式中、R413は水素原子又はメチル基を表し、R414は炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)で表される化合物群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することが好ましい。
【0200】
一般式(IV−1a1)で表される化合物は、より具体的には次に記載する化合物が好ましい。
【0201】
【化55】
【0202】
【化56】
【0203】
一般式(IV−1a1)で表される化合物を含有する場合は、一般式(IV−1a1)で表される化合物の液晶組成物中の含有率として、下限値としては1質量%が好ましく、5質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましく、23質量%が特に好ましく、25質量%が最も好ましく、上限値としては70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、55質量%が更に好ましく、52質量%が特に好ましく、50質量%が最も好ましい。より具体的には、応答速度を重視する場合には下限値としては20質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、35質量%が更に好ましく、38質量%が特に好ましく、35質量%が最も好ましく、上限値としては70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、55質量%が更に好ましく、52質量%が特に好ましく、50質量%が最も好ましく、より駆動電圧を重視する場合には下限値としては5質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましく、23質量%が特に好ましく、25質量%が最も好ましく、上限値としては60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、45質量%が更に好ましく、42質量%が特に好ましく、40質量%が最も好ましい。一般式(IV−1a1)で表される化合物の割合は、液晶組成物における一般式(IV)で表される化合物の合計含有量の内、一般式(IV−1a1)で表される化合物の含有量が下限値としては60質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、75質量%が更に好ましく、78質量%が特に好ましく、80質量%が最も好ましく、上限値としては90質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、97質量%が更に好ましく、99質量%が特に好ましく、100質量%が好ましい。
【0204】
また、一般式(IV−1a1)で表される化合物以外の一般式(IV−1a)から一般式(IV−1e)で表される化合物としては、より具体的には次に記載する化合物が好ましい。
【0205】
【化57】
【0206】
【化58】
【0207】
【化59】
【0208】
【化60】
【0209】
【化61】
【0210】
【化62】
【0211】
【化63】
【0212】
【化64】
【0213】
これらの中でも、式(IV−1a1−2)、式(IV−1a1−4)、式(IV−1a1−6)、式(IV−1a2)〜式(IV−1a7)、式(IV−1b2)、式(IV−1b6)、式(IV−1d1)、式(IV−1d2)、式(IV−1d3)、式(IV−1e2)、式(IV−1e3)及び式(IV−1e4)で表される化合物が好ましい。
【0214】
また、一般式(IV)で表される化合物は、下記一般式(IV−2)から一般式(IV−7)で表される化合物であることが好ましい。
【0215】
【化65】
【0216】
(式中、R415及びR416はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表す。)
また、一般式(IV)で表される化合物として、一般式(IV−8)、一般式(IV−9)又は一般式(VI−10)で表される化合物を1種又は2種以上含有することも好ましい。
【0217】
【化66】
【0218】
(式中、R415及びR416はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、X41およびX42はそれぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表し、X41およびX42のいずれか一つはフッ素原子であり、他の一つは水素原子である。)
また、一般式(IV)で表される化合物として、一般式(IV−11−1)から一般式(IV−11−3)で表される化合物を1種又は2種以上含有しても良い。
【0219】
【化67】
【0220】
本発明に係る液晶組成物における添加剤(酸化防止剤、UV吸収剤など)は100ppm〜1質量%であることが好ましい。
【0221】
本発明における液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)を幅広い範囲で使用することができるものであるが、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)は60〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましく、70〜85℃であることが特に好ましい。
【0222】
本発明における液晶組成物の誘電率異方性Δεは、25℃において、−2.0〜−6.0であることが好ましく、−2.5〜−5.0であることがより好ましく、−2.5〜−3.5であることが特に好ましい。
【0223】
本発明における液晶組成物の屈折率異方性Δnは、25℃において、0.08〜0.13であることが好ましいが、0.09〜0.12であることがより好ましい。さらに詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合、本発明における液晶組成物の屈折率異方性は、25℃において、0.10〜0.12であることが好ましく、更に詳述すると、薄いセルギャップ(セルギャップ3.4μm以下)に対応する場合は約0.9から約0.12程度であることが好ましく、厚いセルギャップ(セルギャップ3.5μm以上)に対応する場合は約0.08から約0.1程度であることが好ましい。
【0224】
本発明に係る液晶組成物の回転粘度(γ)の上限値は、150(mPa・s)以下が好ましく、130(mPa・s)以下がより好ましく、120(mPa・s)以下が特に好ましい。一方、当該回転粘度(γ)の下限値は、20(mPa・s)以上が好ましく、30(mPa・s)以上がより好ましく、40(mPa・s)以上が更に好ましく、50(mPa・s)以上がより更に好ましく、60(mPa・s)以上がさらにより好ましく、70(mPa・s)以上が特に好ましい。
【0225】
本発明に係る液晶組成物では、回転粘度と屈折率異方性の関数であるZが特定の値を示すことが好ましい。
【0226】
【数1】
【0227】
(上記数式中、γは回転粘度を表し、Δnは屈折率異方性を表す。)
Zは、13000以下が好ましく、12000以下がより好ましく、11000以下が特に好ましい。
【0228】
本発明に係る液晶組成物は、アクティブマトリクス表示素子に使用する場合においては、1011(Ω・m)以上の比抵抗を有することが必要であり、1012(Ω・m)が好ましく、1013(Ω・m)以上がより好ましい。
【0229】
本発明に係る液晶組成物はネマチック相−等方性液体相転移温度(TNI)を幅広い範囲で使用することができるものであるが、当該相転移温度(TNI)は、60〜120℃であることが好ましく、70〜110℃がより好ましく、75〜100℃が特に好ましい。
[液晶表示素子の製造方法]
次に、図1を参照して、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明する。
【0230】
第一の基板11の共通電極14が形成された面及び第二の基板12の画素電極15が形成された面に、反応性基を有する重合性化合物を含有する配向膜材料又は、重合性液晶化合物を塗布し、加熱することにより垂直配向膜16,17を形成する。なお、重合性液晶化合物を配向膜として用いる場合、下地配向膜として通常の配向膜を有していても良い。
【0231】
ここでは、まず、第1の高分子化合物となる高分子化合物前駆体及び/又は上記一般式(V2)で表される化合物と、上記一般式(V)で表される化合物等の重合性化合物、あるいは、光重合性および光架橋性を有する化合物とを含む配向膜材料、あるいは重合性液晶化合物からなる配向膜材料を調製する。
【0232】
第1の高分子化合物がポリイミドの場合には、高分子化合物前駆体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物およびジイソシアネートの混合物や、ポリアミック酸や、ポリイミドを溶剤に溶解あるいは分散させたポリイミド溶液等が挙げられる。このポリイミド溶液中におけるポリイミドの含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0233】
また、第1の高分子化合物がポリシロキサンの場合には、高分子化合物前駆体としては、例えば、アルコキシ基を有するケイ素化合物、ハロゲン化アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコールおよびシュウ酸を所定の配合量比で混合して加熱することによりポリシロキサンを合成し、それを溶剤に溶解させたポリシロキサン溶液などが挙げられる。
【0234】
なお、配向膜材料には、必要に応じて、光架橋性を有する化合物、光重合開始剤、溶剤などを添加してもよい。
【0235】
配向膜材料の調整後、この配向膜材料を、第一の基板11および第二の基板12のそれぞれに、共通電極14、並びに、画素電極15およびそのスリット部(図示略)を覆うように塗布あるいは印刷した後、加熱などの処理をする。これにより、塗布あるいは印刷された配向膜材料に含まれる高分子化合物前駆体及び/又は上記一般式(V2)で表される化合物、あるいは重合性液晶化合物が、重合および硬化して高分子化合物となり、高分子化合物と重合性化合物とが混在するか、重合性液晶化合物が半硬化した垂直配向膜16,17が形成される。
【0236】
ここで、加熱処理する場合、その温度は、80℃以上が好ましく、150〜200℃がより好ましい。
【0237】
なお、この段階において液晶組成物層中の液晶分子を基板面に対して垂直方向に配向させる垂直配向能は形成される。この後、必要に応じて、ラビングなどの処理を施してもよい。
【0238】
次に、第一の基板11と第二の基板12とを重ね合わせ、それらの間に、液晶分子を含む液晶組成物層13を封止する。
【0239】
具体的には、第一の基板11と第二の基板12のいずれか一方における、垂直配向膜16,17が形成されている面に対して、セルギャップを確保するためのスペーサ突起物、例えば、プラスチックビーズ等を散布すると共に、例えば、スクリーン印刷法によりエポキシ接着剤等を用いて、シール部を印刷する。
【0240】
この後、第一の基板11と第二の基板12とを、垂直配向膜16,17を対向させるように、スペーサ突起物およびシール部を介して貼り合わせ、液晶分子および必要に応じて重合性化合物を含む液晶組成物を注入する。
【0241】
その後、加熱するなどして、シール部を硬化することにより、液晶組成物を、第一の基板11と第二の基板12との間に封止する。
【0242】
次に、共通電極14と画素電極15との間に、電圧印加手段を用いて、電圧を印加する。電圧は、例えば、5〜30(V)の大きさで印加する。前記印加は、第一の基板と第二の基板に略垂直に電荷を印加する場合もある。これにより、第一の基板11における液晶組成物層13と隣接する面(液晶組成物層13と対向する面)、および、第二の基板12におけるにおける液晶組成物層13と隣接する面(液晶組成物層13と対向する面)に対して所定の角度をなす方向の電場が生じ、液晶分子19が、第一の基板11と第二の基板12の法線方向から所定方向に傾いて配向することとなる。このとき、液晶分子19の傾斜角は、後述の工程で液晶分子19に付与されるプレチルトθと概ね等しくなる。従って、電圧の大きさを適宜調節することにより、液晶分子19のプレチルトθの大きさを制御することが可能である(図3参照)。
【0243】
さらに、電圧を印加した状態のまま、紫外光UVを、例えば、第一の基板11の外側から液晶組成物層13に照射することにより、垂直配向膜16,17中の重合性化合物又は重合性液晶化合物、および液晶組成物中の重合性化合物を重合させ、高分子重合体を生成する。
【0244】
この場合、照射する紫外光UVの強度は一定であっても、一定でなくてもよく、照射強度を変化させる際の各々の強度における照射時間も任意であるが、2段階以上の照射工程を採用する場合には、2段階目以降の照射工程の照射強度は1段階目の照射強度よりも弱い強度を選択することが好ましく、2段階目以降の総照射時間は1段階目の照射時間よりも長くかつ照射総エネルギー量が大きことが好ましい。また、照射強度を不連続に変化させる場合には、全照射工程時間の前半部分の平均照射光強度が後半部分の平均照射強度よりも強いことが望ましく、照射開始直後の強度が最も強いことがより望ましく、照射時間の経過と共にある一定値まで常に照射強度が減少し続けることがさらに好ましい。その場合の紫外線UV強度は2mW/cm−2〜100mW/cm−2であることが好ましいが、多段階照射の場合の1段階目、または不連続に照射強度変化させる場合の全照射工程中の最高照射強度は10mW/cm−2〜100mW/cm−2であること、かつ多段階照射の場合の2段階目以降、または不連続に照射強度を変化させる場合の最低照射強度は2mW/cm−2〜50mW/cm−2であることがより好ましい。また、照射総エネルギー量は10J〜300Jであることが好ましいが、50J〜250Jであることがより好ましく、100J〜250Jであることがさらに好ましい。
【0245】
この場合、印加電圧は交流であっても直流であってもよい。
【0246】
その結果、垂直配向膜16,17の配向制御部と固着した、垂直配向膜材料を含む配向制御能(図示略)を有するようになり、更に、必要に応じて、その表面に重合体層20,21が形成される。この配向制御部は、非駆動状態において、液晶組成物層13における重合体層20,21(垂直配向膜16,17)との界面近傍に位置する液晶分子19にプレチルトθを付与する機能(配向制御能)を有する。なお、ここでは、紫外光UVを、第一の基板11の外側から照射したが、第二の基板12の外側から照射してもよく、第一の基板11および第二の基板12の双方の基板の外側から照射してもよい。
【0247】
このように、本発明の液晶表示素子では、液晶組成物層13において、液晶分子19が、所定のプレチルトθを有している。これにより、プレチルト処理が全く施されていない液晶表示素子およびそれを備えた液晶表示装置と比較して、駆動電圧に対する応答速度を大幅に向上させることができる。
【0248】
本発明の液晶表示素子において、垂直配向膜16,17を構成する高分子化合物前駆体としては、感光性でないポリイミド前駆体が好ましい。
【実施例】
【0249】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0250】
以下の実施例及び比較例において、Tni、Δn、Δε、η、γをそれぞれ下記の通り定義する。
ni :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
cn :固相−ネマチック相転移温度(℃)
Δn :20℃における屈折率異方性
Δε :20℃における誘電率異方性
γ :20℃における回転粘度(mPa・s)
33 :20℃における曲がりの弾性定数(pN)
以下の実施例及び比較例において、下記の方法により、液晶表示素子の焼き付き、滴下痕およびプレチルト角を評価した。
(焼き付き)
液晶表示素子の焼き付き評価は、表示エリア内に所定の固定パターンを1000時間表示させた後に、全画面均一な表示を行ったときの固定パターンの残像のレベルを目視にて以下の4段階評価で行った。
◎:残像無し
○:残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△:残像有り許容できないレベル
×:残像有りかなり劣悪
(滴下痕)
液晶表示装置の滴下痕の評価は、全面黒表示した場合における白く浮かび上がる滴下痕を目視にて以下の4段階評価で行った。
◎:残像無し
○:残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△:残像有り許容できないレベル
×:残像有りかなり劣悪
(プレチルト角)
液晶表示素子の面内をランダムに5箇所計測し、平均値をプレチルト角とした。また、プレチルト角の安定性を評価する場合は、ストレス前後のプレチルト角の変化を比較した。ストレスは、液晶表示装置を70℃に保持されたオーブンに投入し、1kHz、30Vの矩形波を168時間印加することで与えた。
プレチルト変化角(°):ストレス後のプレチルト角−ストレス前のプレチルト角
なお、実施例において化合物の記載について以下の略号を用いた。なお、nは自然数を表す。
(側鎖)
−n −C2n+1 炭素原子数nの直鎖状のアルキル基
n− C2n+1− 炭素原子数nの直鎖状のアルキル基
−On −OC2n+1 炭素原子数nの直鎖状のアルコキシル基
nO− C2n+1O− 炭素原子数nの直鎖状のアルコキシル基
−V −CH=CH
V− CH=CH−
−V1 −CH=CH−CH
1V− CH−CH=CH−
−2V −CH−CH−CH=CH
V2− CH=CH−CH−CH
−2V1 −CH−CH−CH=CH−CH
1V2− CH−CH=CH−CH−CH
(連結基)
−n− −C2n
−nO− −C2n−O−
−On− −O−C2n
−COO− −C(=O)−O−
−OCO− −O−C(=O)−
−CF2O− −CF−O−
−OCF2− −O−CF
D −C=C−
T −C≡C−
(環構造)
【0251】
【化68】
【0252】
(実施例1)
透明な共通電極からなる透明電極層及びカラーフィルター層を具備した第一の基板(共通電極基板)と、アクティブ素子により駆動される透明画素電極を有する画素電極層を具備した第二の基板(画素電極基板)とを作製した。
【0253】
画素電極基板において、各画素電極としては、液晶分子の配向を分割するため、画素電極に電極を有さないスリットが存在するように、ITOをエッチングしたものを用いた。
【0254】
共通電極基板及び画素電極基板のそれぞれに、ポリイミド前駆体及び重合性基を有する重合性化合物を含む垂直配向膜材料をスピンコート法により塗布し、その塗布膜を200℃で加熱することにより、垂直配向膜材料中のポリイミド前駆体を硬化させ、各基板の表面に100nm±20nmの垂直配向膜を形成した。この段階において、その垂直配向膜における重合性基を有する重合性化合物は硬化していない。
【0255】
垂直配向膜形成材料としては、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製)に、以下の式(Va−1−1)で表される反応性基を有する重合性化合物を3%含有する溶液を用いた。
【0256】
【化69】
【0257】
垂直配向膜を形成した共通電極基板及び画素電極基板に、以下に示す化学式で表される化合物を含有する液晶組成物(LC−A)を挟持した後、シール材を硬化させて、液晶組成物層を形成した。この際、厚さ3.0μmのスペーサを用いて、液晶組成物層の厚さを3.0μmとした。
【0258】
【表1】
【0259】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例1の液晶表示素子を得た。この工程により、反応性基を有する重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0260】
ここで、プレチルト角は、図3に示すように定義される。完全な垂直配向をしている場合、プレチルト角(θ)は90°となり、プレチルト角が付与された場合、プレチルト角(θ)は90°より小さくなる。
【0261】
実施例1の液晶表示素子は、図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.1°であった。
【0262】
表2に実施例1の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例1の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0263】
【表2】
【0264】
(比較例1)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−B)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例1と同一条件にして、比較例1の液晶表示素子を得た。
【0265】
【表3】
【0266】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記配向膜中の反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、比較例1の液晶表示素子を得た。比較例1の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.8°であった。
【0267】
表4に比較例1の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、比較例1の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、やや滴下痕が発生し、焼きつきが起こっていた。更に、形成されていたプレチルト角は安定しておらず、ストレス印加後にはストレス印加前の値から負の方向に大きく変化していた。この結果、比較例1の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を含有しておらず、配向膜との相互作用が小さいため、形成されたプレチルト角がストレスにより維持できず、結果として焼き付きの原因となったものと推論できる。
【0268】
【表4】
【0269】
(実施例2)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A2)を調製し、その液晶組成物を用いた。また、垂直配向膜形成材料としては、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製)に、以下の式(Va−1−3)で表される反応性基を有する重合性化合物を3%含有する溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同一にして、実施例2の液晶表示素子を得た。
【0270】
【表5】
【0271】
【化70】
【0272】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例2の液晶表示素子を得た。実施例2の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は86.5°であった。
【0273】
表6に実施例2の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例2の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0274】
【表6】
【0275】
(比較例2)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−B2)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例2と同一条件にして、比較例2の液晶表示素子を得た。
【0276】
【表7】
【0277】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記配向膜中の反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、比較例2の液晶表示素子を得た。比較例2の液晶表示素子は、実施例1、実施例2と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は86.9°であった。
【0278】
表8に比較例2の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、比較例2の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、やや滴下痕が発生し、焼きつきが起こっていた。更に、形成されていたプレチルト角は安定しておらず、ストレス印加後にはストレス印加前の値から負の方向に大きく変化していた。この結果、比較例2の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を含有しておらず、配向膜との相互作用が小さいため、形成されたプレチルト角がストレスにより維持できず、結果として焼き付きの原因となったものと推論できる。
【0279】
【表8】
【0280】
(実施例3)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A3)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同一にして、実施例3の液晶表示素子を得た。
【0281】
【表9】
【0282】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例3の液晶表示素子を得た。実施例3の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は86.6°であった。
【0283】
表10に実施例3の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例3の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0284】
【表10】
【0285】
(実施例4)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A4)を調製し、その液晶組成物を用いた。また、垂直配向膜形成材料としては、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製)に、以下の式(Va−1−14)で表される反応性基を有する重合性化合物を3%含有する溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同一にして、実施例4の液晶表示素子を得た。
【0286】
【表11】
【0287】
【化71】
【0288】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例4の液晶表示素子を得た。実施例4の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.5°であった。
【0289】
表12に実施例4の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例4の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0290】
【表12】
【0291】
(実施例5)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A5)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同一にして、実施例5の液晶表示素子を得た。
【0292】
【表13】
【0293】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例5の液晶表示素子を得た。実施例5の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.0°であった。
【0294】
表14に実施例5の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例5の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0295】
【表14】
【0296】
(実施例6)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A6)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同一にして、実施例6の液晶表示素子を得た。
【0297】
【表15】
【0298】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例6の液晶表示素子を得た。実施例6の液晶表示素子は、実施例1と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.3°であった。
【0299】
表16に実施例6の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例6の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0300】
【表16】
【0301】
(実施例7)
透明な共通電極からなる透明電極層及びカラーフィルター層を具備した第一の基板(共通電極基板)と、アクティブ素子により駆動される透明画素電極を有する画素電極層を具備した第二の基板(画素電極基板)とを作製した。
【0302】
画素電極基板において、各画素電極としては、液晶分子の配向を分割するため、画素電極に電極を有さないスリットが存在するように、ITOをエッチングしたものを用いた。
【0303】
共通電極基板及び画素電極基板のそれぞれに、ポリイミド前駆体及び反応性基を有する重合性化合物を含む垂直配向膜材料をスピンコート法により塗布し、その塗布膜を200℃で加熱することにより、垂直配向膜材料中のポリイミド前駆体を硬化させ、各基板の表面に100nmの垂直配向膜を形成した。この段階において、その垂直配向膜において、反応性基を有する重合性化合物は硬化していない。
【0304】
垂直配向膜形成材料としては、以下の式で表されるポリイミド誘導体3%及び以下の式(Va−1−1)で表される反応性基を有する重合性化合物3%を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた。
【0305】
【化72】
【0306】
【化73】
【0307】
垂直配向膜を形成した共通電極基板及び画素電極基板に、以下に示す化学式で表される化合物を含有する液晶組成物(LC−A)を挟持した後、シール材を硬化させて、液晶組成物層を形成した。この際、厚さ3.0μmのスペーサを用いて、液晶組成物層の厚さを3.0μmとした。
【0308】
【表17】
【0309】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例7の液晶表示素子を得た。この工程により、主鎖としてポリイミド骨格を有し、側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0310】
実施例7の液晶表示素子は、図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.0°であった。
【0311】
表18に実施例7の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例7の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0312】
【表18】
【0313】
(比較例3)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−B)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例7と同一条件にして、比較例3の液晶表示素子を得た。
【0314】
【表19】
【0315】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、比較例3の液晶表示素子を得た。この工程により、主鎖としてポリイミド骨格を有し、側鎖として架橋性官能基を有する重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0316】
比較例3の液晶表示素子は、図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は88.0°であった。
【0317】
表20に比較例3の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、比較例3の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、やや滴下痕が発生し、焼きつきが起こっていた。更に、形成されていたプレチルト角は安定しておらず、ストレス印加後にはストレス印加前の値から負の方向に大きく変化していた。この結果、比較例3の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、一般式(i)で表される化合物を含有しておらず、配向膜との相互作用が小さいため、形成されたプレチルト角がストレスにより維持できず、結果として焼き付きの原因となったものと推論できる。
【0318】
【表20】
【0319】
(実施例8)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A3)を調製し、その液晶組成物を用いた。また、垂直配向膜形成材料としては、以下の式で表されるポリイミド誘導体3%及び以下の式(Va−1−3)で表される反応性基を有する重合性化合物3%を含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例7と同一にして、実施例8の液晶表示素子を得た。
【0320】
【表21】
【0321】
【化74】
【0322】
【化75】
【0323】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例8の液晶表示素子を得た。実施例8の液晶表示素子は、実施例7と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は86.7°であった。
【0324】
表22に実施例8の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例8の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0325】
【表22】
【0326】
(実施例9)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A6)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例7と同一にして、実施例9の液晶表示素子を得た。
【0327】
【表23】
【0328】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例9の液晶表示素子を得た。実施例9の液晶表示素子は、実施例7と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は86.9°であった。
【0329】
表24に実施例9の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例9の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0330】
【表24】
【0331】
(実施例10)
透明な共通電極からなる透明電極層及びカラーフィルター層を具備した第一の基板(共通電極基板)と、アクティブ素子により駆動される透明画素電極を有する画素電極層を具備した第二の基板(画素電極基板)とを作製した。
【0332】
共通電極基板及び画素電極基板のそれぞれに、重合性液晶化合物及び重合開始剤を含む垂直配向膜材料をスピンコート法により塗布し、厚さ200nmの垂直配向膜の前駆体層を形成した。垂直配向膜形成材料としては、UCL−011−K1(DIC株式会社製)を用いた。
【0333】
垂直配向膜形成材料を塗布した基板のそれぞれを、70℃の恒温槽で15分間加熱することにより、塗布した垂直配向膜形成材料中の重合性液晶化合物を等方性液体とした。
【0334】
その後、10℃/分の速度で温度を室温まで下げ、重合性液晶化合物の配向を垂直配向とした。
【0335】
画素電極基板及び共通電極基板のそれぞれに、基板面から70°傾斜した磁場を印加し、重合性液晶化合物にプレチルト角を付与した。この状態で、紫外線を照射し、重合性液晶化合物を硬化させ、垂直配向膜を形成した。
【0336】
垂直配向膜を形成した共通電極基板及び画素電極基板に、以下に示す化学式で表される化合物を含有する液晶組成物(LC−A)を挟持した後、シール材を硬化させて、液晶組成物層を形成した。この際、厚さ3.0μmのスペーサを用いて、液晶組成物層の厚さを3.0μmとした。
【0337】
【表25】
【0338】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記重合性液晶化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例10の液晶表示素子を得た。この工程により、重合性液晶化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0339】
実施例10の液晶表示素子は、図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.4°であった。
【0340】
表26に実施例10の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例10の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0341】
【表26】
【0342】
(比較例4)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−B)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例10と同一条件にして、比較例4の液晶表示素子を得た。
【0343】
【表27】
【0344】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記重合性液晶化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、比較例4の液晶表示素子を得た。この工程により、重合性液晶化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0345】
比較例4の液晶表示素子は、図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.8°であった。
【0346】
表28に比較例4の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、比較例4の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0347】
【表28】
【0348】
(実施例11)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A3)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例10と同一条件にして、実施例11の液晶表示素子を得た。
【0349】
【表29】
【0350】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記重合性液晶化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例11の液晶表示素子を得た。実施例11の液晶表示素子は、実施例10と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.0°であった。
【0351】
表30に実施例11の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例11の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0352】
【表30】
【0353】
(実施例12)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A6)を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例10と同一条件にして、実施例12の液晶表示素子を得た。
【0354】
【表31】
【0355】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記重合性液晶化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例12の液晶表示素子を得た。実施例12の液晶表示素子は、実施例10と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.6°であった。
【0356】
表32に実施例12の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例12の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0357】
【表32】
【0358】
(実施例13)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A7)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例2と同一にして、実施例13の液晶表示素子を得た。
【0359】
【表33】
【0360】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例13の液晶表示素子を得た。実施例13の液晶表示素子は、実施例2と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.5°であった。
【0361】
表34に実施例13の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例13の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0362】
【表34】
【0363】
(実施例14)
以下の表に示す化合物を含有する液晶組成物(LC−A8)を調製し、その液晶組成物を用いた。それ以外の条件は、実施例2と同一にして、実施例14の液晶表示素子を得た。
【0364】
【表35】
【0365】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで600秒、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例14の液晶表示素子を得た。実施例14の液晶表示素子は、実施例2と同様プレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87.0°であった。
【0366】
表36に実施例13の液晶表示素子の滴下痕評価、焼き付き評価及びプレチルト角評価結果を示す。この結果、実施例13の液晶表示素子に用いられた液晶組成物は、滴下痕が発生せず、焼きつきが起こらないことがわかる。更に、適切なプレチルト角が形成され、ストレス印加後もそのプレチルト角は維持された。
【0367】
【表36】
【符号の説明】
【0368】
10・・・液晶表示素子、11・・・第一の基板、12・・・第二の基板、13・・・液晶組成物層、14・・・共通電極、15・・・画素電極、16・・・垂直配向膜、17・・・垂直配向膜、18・・・カラーフィルター、19・・・液晶分子、20・・・重合体層、21・・・重合体層
【要約】
本発明は、誘電率異方性、粘度、ネマチック相上限温度、回転粘度(γ)等の液晶表示素子としての諸特性及び液晶表示素子の焼き付き特性を悪化させることなく、製造時の滴下痕が発生し難い液晶表示素子及びその製造方法を提供する。また、本発明によれば、液晶表示素子としての高速応答性優れ、液晶分子の配向性やプレチルト角が安定しており、焼き付きの発生が少なく、その製造時における滴下痕の発生が少ない液晶表示素子の製造が可能となる。本発明で作製された液晶表示素子は、液晶TV、モニター等の表示素子として有効に用いることができる。
図1
図2
図3