【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。評価用のシリコンウェーハとして、種々の製造条件により育成された直径が300mm、導電型がP型、抵抗率が約10Ω・cmのシリコン単結晶インゴットからスライスした後、化学鏡面研磨(ミラーエッチング)液により鏡面状態となったウェーハ(ミラーエッチドウェーハ)を準備した。これらのサンプルウェーハを扇形状に4分割した。そのウェーハに対して下記実施例及び比較例の各々の条件に従ってLEPを評価した。
【0032】
(実施例)
先ず、従来のクロムレスエッチング液、具体的には50重量%フッ酸、61重量%硝酸、99.7重量%酢酸及び水の容量比が400:3:33:80のエッチング液(以下、従来クロムレス液という)を12リットル準備した。この従来クロムレス液に、61重量%硝酸132ml及び水480mlを調合した。さらに、0.1モル/リットルのヨウ化カリウム水溶液63.6mlを追加して、本発明のエッチング液を作成した。作成したエッチング液の容量比は、フッ酸400、硝酸5.3、酢酸33、水90となる。またヨウ化カリウムの含有量はエッチング液の総液量1リットル当たり約0.08gである。
【0033】
このエッチング液の組成及び温度を安定させる為、エッチング液を1日放置した後、浸漬開始温度24℃にて、上記サンプル30枚を垂直に立てた状態でエッチング液に浸漬し、攪拌しないで6分間放置した。この時のエッチオフ量は両面で約28μmであった。
【0034】
その後、各サンプルウェーハ表面に現れた各楕円形状のパターンのサイズを測定した。具体的には、楕円形状のパターンのサイズとして、
図1に示すように、楕円形状のパターンの長い方の幅X(楕円の長軸の長さに相当)(以下、長幅という)、短い方の幅Y(楕円の短軸の長さに相当)(以下、短幅という)及び面積を測定した。なお、長幅X、短幅Yは、画像解析ソフト(画素間の距離を計算できるソフト)を用いて、楕円形状のパターンの拡大画像から測定した。それら長幅X、短幅Yを乗算して得られる値をパターン(LEP)の面積(X×Y)とした。
【0035】
(比較例1)
上記従来クロムレス液を12リットル準備し、その従来クロムレス液を用いてサンプルのエッチングを行った。このときのエッチング条件は実施例と同じ条件、つまり、従来クロムレス液を1日放置した後、浸漬開始温度24℃にて、上記サンプル30枚を垂直に立てた状態で従来クロムレス液に浸漬し、攪拌しないで6分間放置した。その後、各サンプルウェーハ表面に現れた各楕円形状のパターンのサイズとして、各パターンの長幅X、短幅Y及び面積(X×Y)を測定した。
【0036】
(比較例2)
セコ液(HF100cm
3+K
2Cr
2O
7(0.15M)50cm
3の混合比で調製)を12リットル準備し、そのセコ液を用いてサンプルのエッチングを行った。このときのエッチング条件は実施例と同じ条件(ただしサンプル数は異なる)、つまり、セコ液を1日放置した後、浸漬開始温度24℃にて、上記サンプル37枚を垂直に立てた状態でセコ液に浸漬し、攪拌しないで6分間放置した。その後、各サンプルウェーハ表面に現れた各楕円形状のパターンのサイズとして、各パターンの長幅X、短幅Y及び面積(X×Y)を測定した。
【0037】
図2〜
図4は、LEP(楕円形状のパターン)のサイズ(長幅X、短幅Y、面積)の測定結果として、LEPサイズのヒストグラム(度数分布)を示している。
図2は、実施例、比較例1、2におけるLEPの長幅Xのヒストグラムを示しており、詳細には、横軸は長幅Xを示し、縦軸は、実験を行った複数のサンプル(実施例1、比較例1では30枚のサンプル、比較例2では37枚のサンプル)から得られた長幅Xのうちの何%がどの長幅区間に属するか、つまり度数を示している。
図3は、実施例、比較例1、2におけるLEPの短幅Yのヒストグラムを示しており、詳細には、横軸は短幅Yを示し、縦軸は各サンプルから得られた短幅Yの何%がどの短幅区間に属するかの度数を示している。
図4は、実施例、比較例1、2におけるLEPの面積のヒストグラムを示しており、詳細には、横軸は面積を示し、縦軸は各サンプルから得られる面積の何%がどの面積区間に属するかの度数を示している。
【0038】
なお、1つのサンプルで複数のLEPが観察されるので、それら複数のLEPのサイズ(長幅X、短幅Y、面積)の平均値を算出し、1つのサンプル当たり1つの長幅X、短幅Y、面積を得た。そして、サンプル数の分(実施例、比較例1の場合は30枚分、比較例2の場合は37枚分)だけ長幅X、短幅Y、面積が得られるので、
図2〜
図4は、それら30枚分、37枚分の長幅X、短幅Y、面積のヒストグラムを示している。
【0039】
また、下記表1は、実施例、比較例1、2におけるLEPサイズの測定結果の表である。なお、表1における1番目の縦欄はサンプル数Nを示している。2番目の縦欄は、各サンプルから得られた長幅Xの平均値を示している。3番目の縦欄は、各サンプルから得られた短幅Yの平均値を示している。4番目の縦欄は、各サンプルから得られた面積の平均値を示している。
【0040】
【表1】
【0041】
図2に示すように、比較例1の従来クロムレス液を用いた場合(■のプロット点)には、長幅Xが10μm付近の区間で度数が高くなっており、長幅Xが14μm以上の区間では度数が極端に低くなっている。これに対し、実施例のエッチング液を用いた場合(●のプロット点)には、比較例2のセコ液を用いた場合(◆のプロット点)と類似の傾向を示しており、長幅X=14μm以上の区間でも度数が高くなっている。よって、
図2、表1の2番目の縦欄に示すように、本発明のエッチング液では、従来のエッチング液(特に従来クロムレス液)に比べて、大きな長幅XのLEPが観察されやすくなる。
【0042】
図3に示すように、比較例1の従来クロムレス液を用いた場合(■のプロット点)には、短幅Y=6μm付近の区間で度数が最も高くなっており、短幅Y=10μm以上の区間では度数が極端に低くなっている。これに対して、実施例のエッチング液を用いた場合(●のプロット点)には、短幅Y=12μm付近の区間で度数が最も高くなっている。また、比較例2のセコ液を用いた場合(◆のプロット点)には、実施例、比較例1に比べて広い区間に渡って度数が分布しているが、短幅Y=12μm付近の区間では実施例より度数が低くなっている。よって、
図3、表1の3番目の縦欄に示すように、本発明のエッチング液では、従来クロムレス液(比較例1)に比べて大きな短幅YのLEPが観察されやすくなり、セコ液(比較例2)と同等又はそれ以上の短幅YのLEPが観察されやすくなる。
【0043】
図4に示すように、比較例1の従来クロムレス液を用いた場合(■のプロット点)には、面積=80μm
2付近の区間で度数が最も高くなっており、面積=120μm
2以上の区間では度数が極端に低くなっている。また、比較例2のセコ液を用いた場合(◆のプロット点)には、面積=80〜160μm
2付近の区間である程度高い度数を示しているものの、面積=200μm
2以上の区間では度数が低くなっている。これに対し、実施例のエッチング液を用いた場合(●のプロット点)には、面積=160μm
2以上の区間では、比較例1、2に比べて高い度数を示す。よって、
図4、表1の4番目の縦欄に示すように、本発明のエッチング液では、従来のエッチング液(特に従来クロムレス液)に比べて大きなサイズ(面積)のLEPが観察されやすくなる。表1に示すように、実施例の長幅Xの平均値が14.9μm、短幅Yの平均値が10.4μmであり、微小転位欠陥であるLEPが直径10μm以上の大きなサイズで観察される。
【0044】
また、実施例、比較例1、2の各サンプルに対して、フローパターンのLEPが観察されるか否かを確認した。
図5は、実施例の30枚のサンプルの中から適当に1つを選択し、その選択したサンプルの表面の一部を撮像した画像を示している。
図5(A)は撮像倍率が等倍の画像を示し、
図5(B)は
図5(A)のA部の拡大画像を示し、
図5(C)は
図5(B)のB部の拡大画像を示している。なお、
図5(C)の拡大画像は、単位長10μmの画像である。
【0045】
図5(A)の○で囲った部分に白い点を観察でき、その拡大図である
図5(B)を見ると、
図5(A)の白い点はフローパターン2であることが分かる。さらに、
図5(C)に示すように、フローパターン2の先端には楕円形状のパターン3、つまりLEPが現れている。なお、
図6には、
図5のサンプルとは別の実施例1のサンプルの等倍画像であり、
図5のサンプルよりもLEP密度が高いサンプルの画像を示している。
図6の例では、目視でも容易にLEPのフローパターン(白い部分)を観察することができる。このように、本発明のエッチング液を用いると、LEPのフローパターンが観察されるようになるので、容易にLEPを発見し、観察することができる。
【0046】
これに対して、
図7は、比較例1(従来クロムレス液)の30枚のサンプルの中から適当に1つを選択し、その選択したサンプルの表面の一部を撮像した画像であり、
図7(A)は等倍画像を示し、
図7(B)は
図7(A)のC部の拡大画像(楕円形状のパターン4(LEP)の拡大画像)である。なお、
図7(B)の拡大画像は、
図5(C)と同じ拡大率、つまり単位長10μmの画像である。
図7(A)、(B)に示すように、比較例1のエッチング液を用いた場合には、LEPのフローパターンは観察されなかった。また、
図5(C)のパターン3のほうが
図7(B)のパターン4よりも大きいことが分かる。
【0047】
さらに、実施例と比較例1のサンプルに対してフローパターンを持つLEPの発生率を測定した。具体的には、実施例の30枚のサンプルの中から適当に3枚のサンプルA、B、Cを選択し、それらサンプルA、B、Cそれぞれに対して、全LEPの個数N1、フローパターンを持つLEPの個数N2及びフローパターンを持つLEPの発生率(N2/N1×100)を測定した。また、比較例1の30枚のサンプルの中から適当に1枚のサンプルDを選択し、そのサンプルDに対して、全LEPの個数N1、フローパターンを持つLEPの個数N2及びフローパターンを持つLEPの発生率(N2/N1×100)を測定した。下記表2はその測定結果である。表2に示すように、実施例のサンプルA、B、Cのいずれも高い割合でフローパターンを持つLEPが発生しており、特にサンプルBでは全LEP中の80%のLEPがフローパターンを持っている。なお、サンプルA、B、Cのフローパターンの発生率を平均すると、65.4%になる。これに対して、比較例1のサンプルDではフローパターンを持つLEPは1つも無く、フローパターンの発生率は0%となった。このことから、従来クロムレス液は、LEPの観察には不向きであるといえる。
【0048】
【表2】
【0049】
以上説明したように、本発明のシリコンウェーハの評価方法、エッチング液によれば、地球環境や人体に有害な物質である重クロム酸カリウムを使用せずに、シリコンウェーハの電気的特性を劣化させるLEPを容易に観察できる。