(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のエポキシ系樹脂、チオール化合物及び塩基発生剤を組み合わせた感光性樹脂組成物は、光照射により塩基が効率よく発生せず、室温で確実に硬化させることは困難であったため、最終的には光照射後に加熱が必要なものも多く、改善が求められていた。
【0010】
また、従来のオキセタン系樹脂、チオール化合物及び塩基発生剤を組み合わせた感光性樹脂組成物は、光照射により塩基が効率よく発生せず、確実に硬化させることが困難なものが多く、改善が求められていた。
【0011】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、光の照射により塩基を発生する塩基発生剤を含有させることで、エポキシ系樹脂とチオール化合物との硬化反応を行うことが可能な感光性樹脂組成物について、室温で効率よく簡便に硬化可能な感光性樹脂組成物を提供することにある。また、光の照射により塩基を発生する塩基発生剤を含有させることで、オキセタン系樹脂とチオール化合物との硬化反応を行うことが可能な感光性樹脂組成物について、効率よく簡便に硬化可能な感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明の第1発明に係る感光性樹脂組成物は、複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、複数のチオール基を有するチオール化合物、下記式(X)で表されるカルボン酸塩からなる塩基発生剤、を含有
し、室温で液状であることを特徴とする。
【0013】
【化1】
(式(X)中、A
−は下記式(IV)、(V)、(VI)及び(VII)のいずれかで表されるカルボン酸であり、B
+は下記式(I)、
式(I−c)、式(I−d)、式(I−e)、式(I−f)、式(I−g)、式(I−h)で表されるグアニジン類、式(II)
、式(II−c)、式(II−d)で表されるホスファゼン誘導体、式(III)で表されるアミジン類、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【化2】
【化3】
【化4】
(式(V)及び式(VI)中、R
1、R
2、R
3はCH
2COO
−、CH(CH
3)COO
−またはHを示し、かかるCH
2COO
−またはCH(CH
3)COO
−はR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。)
【化5】
(式(VII)中、R
1、R
2、R
3はCH
2COO
−またはHを示し、かかるCH
2COO
−はR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。)
【0014】
【化6】
(式(I)中、R
1〜R
5はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【化7】
【0015】
【化8】
(式(II)中、R
1〜R
7はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【化9】
【0016】
【化4】
(式(III)中、nは1〜3の整数を示す。)
【0017】
本発明の第2発明に係る感光性樹脂組成物は、
複数のオキセタニル基を有するオキセタ
ン樹脂、
複数のチオール基を有するチオール化合物、下記式(X)で表されるカルボン酸塩からなる塩基発生剤、を含有することを特徴とする。
【0018】
【化10】
(式(X)中、A
−は下記式(IV)、(V)、(VI)及び(VII)のいずれかで表されるカルボン酸であり、B
+は下記式(I)
、式(I−c)、式(I−d)、式(I−e)、式(I−f)、式(I−g)、式(I−h)で表されるグアニジン類、式(II)
、式(II−c)、式(II−d)で表されるホスファゼン誘導体、式(III)で表されるアミジン類、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【化11】
【化12】
【化13】
(式(V)及び式(VI)中、R
1、R
2、R
3はCH
2COO
−、CH(CH
3)COO
−またはHを示し、かかるCH
2COO
−またはCH(CH
3)COO
−はR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。)
【化14】
(式(VII)中、R
1、R
2、R
3はCH
2COO
−またはHを示し、かかるCH
2COO
−はR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。)
【0019】
【化15】
(式(I)中、R
1〜R
5はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【化16】
【0020】
【化17】
(式(II)中、R
1〜R
7はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【化18】
【0021】
【化8】
(式(III)中、nは1〜3の整数を示す。)
【0022】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記した構成において、前記塩基類が前記式(I)
、式(I−c)、式(I−d)、式(I−e)、式(I−f)、式(I−g)、式(I−h)で表されるグアニジン類
、または前記式(II)
、式(II−c)、式(II−d)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1発明に係る感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂に対して、硬化促進剤となるチオール化合物に加えて、光照射により脱炭酸するカルボン酸と塩基強度が高いグアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を組み合わせたカルボン酸塩を塩基発生剤として含有しているので、光照射により脱炭酸するカルボン酸が高効率で遊離の塩基を発生させるとともに、グアニジン類等の塩基強度の高い塩基がチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を効率よく発生させることができる。そして、発生したRS
−によりエポキシ樹脂との反応が連鎖的に進行するため、室温レベルでの硬化が効率よく確実に行われる
室温で液状の感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。
【0029】
本発明の第2発明に係る感光性樹脂組成物は、オキセタ
ン樹脂に対して、硬化促進剤となるチオール化合物に加えて、光照射により脱炭酸するカルボン酸と塩基強度が高いグアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を組み合わせたカルボン酸塩を塩基発生剤として含有しているので、光照射により脱炭酸するカルボン酸が高効率で遊離の塩基を発生させるとともに、グアニジン類等の塩基強度の高い塩基がチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を効率よく発生させることができる。そして、発生したRS
−によりオキセタ
ン樹脂との反応が連鎖的に進行するため、硬化が効率よく確実に行われる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1発明に係る感光性樹脂組成物は、(イ)エポキ
シ樹脂、(ロ)チオール化合物、(ハ)式(X)で表されるカルボン酸塩からなる塩基発生剤、を基本構成として含むものである。また、本発明の第2発明に係る感光性樹脂組成物は、(ニ)オキセタ
ン樹脂、(ロ)チオール化合物、(ハ)式(X)で表されるカルボン酸塩からなる塩基発生剤、を基本構成として含むものである。
なお、本願の内容について、「エポキシ系樹脂」は「エポキシ樹脂」を、「オキセタン系樹脂」は「オキセタン樹脂」を、それぞれ示すものとする。
【0032】
(イ)エポキシ系樹脂:
本発明の感光性樹脂組成物を構成するエポキシ系樹脂は、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系樹脂を使用することができる。また、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系樹脂を使用すれば、当該樹脂に(ロ)チオール化合物及び(ハ)塩基発生剤を作用させることによって、エポキシ系樹脂をエポキシ基の開環重合により効率よくポリマーとして硬化させることができる。
【0033】
使用可能なエポキシ系樹脂としては、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フエニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族ジグリシジルエーテル、多官能グリシジルエーテル、3級脂肪酸モノグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、グリシジルプロポキシトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂はハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよく、また、これらのエポキシ系樹脂は誘導体も含む。そして、これらのエポキシ系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明に係る感光性樹脂組成物を構成する(イ)エポキシ系樹脂としては、エポキシ当
量を43〜10000とすることが好ましい。エポキシ当量がこの範囲内であれば、架橋
密度の低下及び反応速度の低下を抑制ないし防止することができる。
【0035】
(ニ)オキセタン系樹脂:
オキセタン系樹脂としては、単量体のオキセタン系樹脂、2量体のオキセタン系樹脂等を使用することができる。使用可能なオキセタン系樹脂としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等のキシリレンジオキセタン、3−エチル−3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)オキセタン(あるいは3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタンとも呼ばれる。)、3−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、またはオキセタン化フェノールノボラック等が挙げられる。これらのオキセタン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
(ロ)チオール化合物:
本発明の感光性樹脂組成物を構成する(ロ)チオール化合物は、(イ)エポキシ系樹脂
や(ニ)オキセタン系樹脂と併用することにより、エポキシやオキセタンの硬化官能基として作用する。チオール化合物としては、チオール基を2個以上有するポリチオール化合物を使用することが好ましく、例えば、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール基を2〜5個有するポリチオール化合物を挙げることができる。これらのうち反応性等や扱いやすさを考慮して、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を使用することが好ましい。これらのチオール化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(ロ)チオール化合物の使用量は、(イ)エポキシ系樹脂あるいは(ニ)オキセタン系樹脂に対して、チオール当量(SH当量)/エポキシ当量(あるいはオキセタン当量)=0.3/1.7〜1.7/0.3となるようにすることが好ましく、0.8/1.2〜1.2/0.8の比率となるようにすることがより好ましい。この比率が、0.3/1.7〜1.7/0.3の範囲内であれば、未反応のチオール基やエポキシ基(あるいはオキセタン基)が硬化物中に多量に残存することを防止でき、硬化物の機械特性の低下傾向を抑制できる。
【0038】
(ハ)式(X)で表される塩基発生剤:
本発明に係る感光性樹脂組成物に適用される(ハ)塩基発生剤は、光照射により脱炭酸するカルボン酸と、下記式(I)で表されるグアニジン類、式(II)で表されるホスファゼン誘導体、式(III)で表されるアミジン類、のいずれかからなる塩基類から構成される、カルボン酸塩からなる化合物である。
【0039】
【化13】
(式(X)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Bは下記式(I)で表されるグアニジン類、式(II)で表されるホスファゼン誘導体、式(III)で表されるアミジン類、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【0040】
【化14】
(式(I)中、R
1〜R
5はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0041】
【化15】
(式(II)中、R
1〜R
7はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0042】
【化16】
(式(III)中、nは1〜3の整数を示す。)
【0043】
式(X)で表される塩基発生剤は、塩基類Bとして式(I)で表されるグアニジン類、式(II)で表されるホスファゼン誘導体、式(III)で表されるアミジン類から構成されるカルボン酸塩であり、光の照射によって脱炭酸し、その結果、遊離のグアニジン類、ホスファゼン誘導体、アミジン類といった塩基を生成する。スキームで示すと以下のスキーム1(グアニジン類)、スキーム2(ホスファゼン誘導体)及びスキーム3(アミジン類)のとおりである。
【0047】
式(X)で表される塩基発生剤において、光照射により脱炭酸するカルボン酸を構成するArは芳香環であり、アリール基、ナフチル基であることが好ましい。また、これらの芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含むことができる。アルコキシ基及びアルキル基の炭素数は、1〜4とすることが好ましい。なお、かかる芳香環の置換基は環構造をとることができる。
【0048】
また、カルボン酸を構成するR’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、アリール基等の置換基である。アルコキシ基及びアルキル基の炭素数は、1〜4とすることが好ましい。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物に適用される塩基発生剤において、対象となるカルボン酸の例としては、例えば、下記式(IV)で表されるケトプロフェン(2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノンともよばれる。)を使用することができる。光脱炭酸を引き起こすカルボン酸の中でケトプロフェンの量子収率(光脱炭酸効率)が最も高く(φ=0.75程度)、カルボン酸としてケトプロフェンを使用することにより、極めて高効率な塩基発生剤として機能する。
【0051】
また、カルボン酸としては、下記式(V)で表されるキサントン酢酸類、下記式(VI)で表されるチオキサントン酢酸類、式(VII)で表されるニトロフェニル酢酸を使用するようにしてもよい。これらのカルボン酸も、量子収率(光脱炭酸効率)φ=0.64程度(キサントン酢酸類。チオキサントン酢酸類もほぼ同程度)、φ=0.6程度(ニトロフェニル酢酸)と高く、極めて高効率で光化学的に遊離の塩基を発生させることができる。
【0055】
なお、式(V)及び式(VI)中、R
1、R
2、R
3はCH
2COOH、CH(CH
3)COOHまたはHを示し、かかるCH
2COOHまたはCH(CH
3)COOHはR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。また、式(VII)において、R
1、R
2、R
3はCH
2COOHまたはHを示し、かかるCH
2COOHはR
1、R
2、R
3のいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。
【0056】
式(X)で表される塩基発生剤を構成する塩基類Bとしては、下記式(I)で表されるグアニジン類、下記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が挙げられる。なお、式(I)におけるR
1〜R
5、式(II)におけるR
1〜R
7はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示すが、アルキル基の炭素数は1〜4とすることが好ましい。
【0057】
【化24】
(式(I)中、R
1〜R
5はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0058】
【化25】
(式(II)中、R
1〜R
7はそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基
(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0059】
塩基類として使用することができる式(I)で表されるグアニジン類としては、例えば、グアニジン構造を有する下記式(I−a)に示すグアニジンや、下記式(I−b)に示す1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、下記式(I−c)に示す1,5,7−トリアザ−ビシクロ[4.4.0]デシ−5−エン(1,5,7−triaza−bicyclo[4.4.0]dec−5−ene:TBD)、式(I−d)に示すMTBD、式(I−e)に示すETBD、式(I−f)に示すITBD、式(I−g)または式(I−h)等に示す化合物が挙げられる(式(I−a)〜式(I−h)については、プロトン付加体を示す。)。
【0061】
また、塩基類として使用することができる式(II)で表されるホスファゼン誘導体としては、下記式(II−a)、式(II−b)、式(II−c)、(II−d)または式(II−e)等に示す化合物が挙げられる(式(II−a)〜式(II−e)については、プロトン付加体を示す。)。
【0063】
さらに、式(X)で表される塩基発生剤を構成する塩基類Bとしては、下記式(III)で表されるアミジン類が挙げられる。
【0064】
【化28】
(式(III)中、nは1〜3の整数を示す。)
【0065】
塩基類として使用することができる式(III)で表されるアミジン類としては、例えば、アミジン構造を有する下記式(III−a)に示すジアザビシクロノネン(DBN)や、下記式(III−b)に示すジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0068】
式(X)で表される塩基発生剤を製造するには、所望のカルボン酸と、塩基類となる、発生させたいグアニジン類、ホスファゼン誘導体、アミジン類を混合することにより簡便に製造することができる。
【0069】
かかる塩基発生剤は、前記した式(X)で表される化合物(カルボン酸塩)であるが、当該化合物を構成するカルボン酸の結合対象として、所定のグアニジン類、ホスファゼン誘導体、アミジン類を用いているので、酸解離定数(pKa)が式(I)及び式(II)の塩基発生剤であれば概ね13.5を超えて、式(III)の塩基発生剤であれば12〜13程度(いずれも水溶媒中)(従来は3級アミンでも10程度)と、非常に塩基性が高く、重合時の反応効率が高い、優れた光塩基発生剤として作用する。
【0070】
かかる塩基発生剤をエポキシ系樹脂(あるいはオキセタン系樹脂)とチオール化合物との組み合わせに適用した場合には、まず、塩基がチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を発生させる(スキーム4)。
【0072】
そして、発生されたRS
−がエポキシ系樹脂の連鎖的な重合反応を開始することになる(スキーム5)。なお、スキーム4及びスキーム5では、塩基をTBDとして説明している。
【0074】
エポキシ系樹脂とチオールの組み合わせでアニオン硬化反応によりエポキシ系樹脂を硬化させるためには、前記したスキーム4にも示すように、まず塩基(スキームではTBD)によってチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を発生させる必要があるが、H
+の引き抜き効率も塩基強度に依存するため、塩基強度が高いほど脱離反応は起こりやすく、グアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を用いることにより高効率で硬化が進むことになる。
【0075】
そして、これらの塩を光照射により脱炭酸するカルボン酸と組み合わせて塩基発生剤としてエポキシ系樹脂及びチオール化合物に適用することにより、光照射により高効率で塩基強度が高い塩基が発生し、チオール化合物に作用させることができ、エポキシ系樹脂が連鎖的に重合するため、光照射により室温でも効率よく硬化する感光性樹脂組成物となる。
【0076】
また、オキセタン系樹脂の場合のスキームを以下に示す。前記したエポキシ系樹脂の場合と同様に、発生されたRS
−がオキセタン系樹脂の連鎖的な重合反応を開始することになる。なお、ここでは、塩基をBとして説明している。
【0077】
(オキセタン系樹脂に対応するスキーム)
【化33】
【0078】
なお、本発明に係る感光性樹脂組成物における照射光の波長及び露光量の範囲としては、塩基発生剤の種類や量、及び感光性樹脂組成物を構成するエポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂やチオール化合物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、波長として190〜400nm、露光量として100〜10000mJ/cm
2の範囲内から選択して適用すればよく、後記する増感剤を用いることによりさらに高波長域を使用することも可能である。また、例えば、カルボン酸としてケトプロフェン、キサントン酢酸類、ニトロフェニル酢酸を使用した場合にあっては、ケトプロフェン、ニトロフェニル酢酸では254nm付近、キサントン酢酸類、チオキサントン酢酸類では254nm付近または365nm付近とすればよい。照射光の照射時間は、数秒でも可能な場合もあるが、概ね10秒以上とすればよく、1.5〜20分とすることが好ましい。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物における塩基発生剤の含有量は、エポキシ系樹脂あるいはオキセタン系樹脂100質量部に対して0.1〜60質量部とすることが好ましい。塩基発生剤の含有量が0.1質量部より少ないと、エポキシ系樹脂あるいはオキセタン系樹脂を迅速に反応させることができなくなる場合がある一方、塩基発生剤の含有量が60質量部を超えると、塩基発生剤の存在がエポキシ系樹脂あるいはオキセタン系樹脂の溶媒に対する溶解性に悪影響を与える場合があり、また、過剰量の塩基発生剤の存在はコスト高に繋がることになる。塩基発生剤の含有量は、エポキシ系樹脂あるいはオキセタン系樹脂100質量部に対して1〜60質量部とすることがなお好ましく、2〜30質量部とすることがさらに好ましく、2〜20質量部とすることがより好ましく、2〜15質量部とすることが特に好ましい。
【0080】
このような感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成するには、例えば、当該樹脂組成物を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、調製された塗布液を基板等の適当な固体表面に塗布し、乾燥して塗膜を形成するようにする。そして、形成された塗膜に対して、パターン露光を行って塩基を発生させた後、所定の条件で加熱処理を行って、感光性樹脂組成物に含有される塩基反応性化合物の重合反応を促すようにする。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要により、塩基の作用で増殖的に塩基を発生する塩基増殖剤を含有させることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物に塩基増殖剤を含有させることにより、当該樹脂組成物の感度をさらに向上させることができる。特に、光が樹脂膜深部に到達しない場合(感光層が厚い場合や多量の染料や顔料を含む場合等。)には、表面層で光化学的に発生した塩基の作用、及び塩基増殖剤による塩基増殖反応が開始されることにより、熱化学的に、かつ連鎖的に塩基が生成するので、膜深部の塩基触媒反応を起こすことが期待できる。使用できる塩基増殖剤としては、特に制限はないが、例えば、特開2000−330270号公報、特開2002−128750号公報や、K.Arimitsu、M.Miyamoto and K.Ichimura,Angew.Chem.Int.Ed.,39,3425(2000)、等に開示される塩基増殖剤が挙げられる。塩基増殖剤の添加量は、使用する塩基発生剤や塩基反応性化合物等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光波長領域を拡大し、感度を高めるべく、増感剤を添加することができる。使用できる増感剤としては、特に限定はないが、例えば、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)またはコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するよう
にしてもよい。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物において、増感剤の添加量は、使用する塩基発生剤やエポキシ系樹脂あるいはオキセタン系樹脂、チオール化合物、及び必要とされる感度等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましい。増感剤が1質量%より少ないと、感度が十分に高められないことがある一方、増感剤が30質量%を超えると、感度を高めるのに過剰となることがある。増感剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体に対して5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物を所定の基材に塗布等する場合にあっては、必要により、溶媒を適宜含有するようにしてもよい。感光性樹脂組成物に溶媒を含有させることにより、塗布能力を高めることができ、作業性が良好となる。溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワラン等の飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物において、溶媒の含有量は、例えば、所定の基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物による層を形成する際に、均一に塗工されるように適宜選択すればよい。
【0086】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、添加剤を適宜添加するようにしてもよい。使用することができる添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤等が挙げられ、これらの1種類を単独で用いるようにしてもよく、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0087】
以上説明した本発明の第1発明に係る感光性樹脂組成物は、エポキシ系樹脂に対して、硬化促進剤となるチオール化合物に加えて、光照射により脱炭酸するカルボン酸と、塩基強度が高いグアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を組み合わせたカルボン酸塩を塩基発生剤として含有しているので、光照射により脱炭酸するカルボン酸が高効率で遊離の塩基を発生させるとともに、グアニジン類等の塩基強度の高い塩基がチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を効率よく発生させることができる。そして、発生したRS
−によりエポキシ系樹脂との反応が連鎖的に進行するため、室温レベルでの硬化が効率よく確実に行われる感光性樹脂組成物となる。
【0088】
本発明の第2発明に係る感光性樹脂組成物は、オキセタン系樹脂に対して、硬化促進剤となるチオール化合物に加えて、光照射により脱炭酸するカルボン酸と、塩基強度が高いグアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を組み合わせたカルボン酸塩を塩基発生剤として含有しているので、光照射により脱炭酸するカルボン酸が高効率で遊離の塩基を発生させるとともに、グアニジン類等の塩基強度の高い塩基がチオール(RSH)からH
+を引き抜きRS
−を効率よく発生させることができる。そして、発生したRS
−によりオキセタン系樹脂との反応が連鎖的に進行するため、硬化が効率よく確実に行われる感光性樹脂組成物となる。
【0089】
そして、かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。
【0090】
光硬化材料として適用された成形体は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる分野の部材等として、例えば、塗料または印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の構成部材として広く用いられ、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築部材等が提供される。また、形成されたパターン等は、耐熱性や絶縁性を備え、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材として有利に使用することができる。
【0091】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0092】
例えば、前記した実施形態では、本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基発生剤として、式(X)で表される、カルボン酸に1つのグアニジン類、ホスファゼン誘導体あるいはアミジン類を付加した化合物を例として挙げたが、これには限定されず、塩基発生剤は、アミジン類等に2つのカルボン酸が付加したものも含まれる。一例として、1,5,7−トリアザ−ビシクロ[4.4.0]デシ−5−エン(TBD)に式(X)のカルボン酸を2つ付加した化合物を下記式(X’)として示した。
【0094】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
感光性樹脂組成物の製造(1):
下記(1)及び(2)の方法を用いて、本発明に係る感光性樹脂組成物を製造した。
【0097】
(1)塩基発生剤の製造(製造例1):
下記式(V−a)に示した2−キサントン酢酸0.50g(2.0×10
−3mol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(I−c)に示したTBD0.27g(2.0×10
−3mol)を滴下後、室温で1時間混合することで得られた白色固体を吸引ろ過し、テトラヒドロフラン(THF)で洗浄、減圧乾燥することで、塩基発生剤の白色固体を0.33g(収率43%)得た。分解点は232.9℃(DSC)であった。
【0098】
【化35】
【0099】
1H−NMR(300MHz,CD
3OD):d(ppm)1.93−1.98(4H,m,CH)、3.32−3.33(8H,m,CH)、3.64(2H,s,CH
2)、7.41−8.25(7H,m,Ar−H)
【0100】
光分解挙動の確認:
(1)で得られた塩基発生剤について、溶媒としてメタノールを用いて、下記の測定法
を用いて光分解挙動の確認を行った。その結果、(1)で得られた塩基発生剤は、光照射
の露光量に伴って237nm付近の吸収強度が増大していく様子が見られ、光分解挙動を
確認することができた。
【0101】
(測定方法)
(1)で得られた塩基発生剤のメタノール溶液(3×10
−5mol/L)に波長が2
54nmまたは365nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1
500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。
【0102】
光照射による塩基発生能の確認:
(1)で得られた塩基発生剤を9.0×10
−3mol/Lに調製したメタノール溶液
を石英セルに入れ、波長365nm光を所定量照射して光分解させた後、この溶液にあら
かじめ5.0×10
−5mol/Lに調整しておいたフェノールレッド溶液を1mL加え
た場合におけるUVスペクトルを測定した。結果を
図1に示す。
【0103】
図1はUVスペクトル変化を示した図である。
図1に示すように、(1)で得られた塩
基発生剤は、露光するにつれ、562nm付近の吸収が増大していることより、塩基発生
剤に光照射することにより遊離の塩基が発生していることが確認できた。
【0104】
(2)感光性樹脂組成物の製造:
エポキシ系樹脂であるソルビトールポリグリシジルエーテル(EX−614B/ナガセケムテックス(株)製)(M
W=406)0.50g(1.2×10
−3mol)、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT(登録商標)PE−1/昭和電工(株)製)0.67g(1.2×10
−3mol)に対して、(1)で得られた塩基発生剤を0.05g(エポキシ系樹脂100質量部に対して10質量部)(エポキシ系樹脂及びチオール化合物のモノマーユニットに対して10mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0105】
[比較例1]
実施例1(1)におけるTBDの代わりに、等モル量のシクロヘキシルアミンを使用した塩基発生剤とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、感光性樹脂組成物を製造した。
【0106】
[参考例1]
塩基発生剤を含有しない以外は、実施例1と同様の方法を用いて、感光性樹脂組成物を製造した。
【0107】
[試験例1]
室温での硬化確認(1)(アミンとの比較):
実施例1、比較例1及び参考例1で得られた感光性樹脂組成物をメタノールに溶解させて試料溶液とした。この試料溶液をガラス基板上にバーコートして製膜し、60℃で30秒間加熱してプリベイクし、厚さ14.0μmの塗膜を調製した。この塗膜に365nmの単色光を、加熱を施さず室温(25℃)の状態で、露光量を0(ブランク)、1000及び10000mJ/cm
2として100秒間照射して、30分間経過後の塗膜の硬度をJIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度測定を行い、比較・評価した。結果を
図2に示す。
【0108】
図2は、試験例1における露光量と鉛筆硬度との関係を示した図である。
図2に示すように、実施例1については、光照射により、室温でも硬化することが確認できた。一方、塩基発生剤としてシクロヘキシルアミンを含有する比較例1については、塩基発生剤を含有しない参考例1と同様に、露光量を10000mJ/cm
2としても、室温で硬化しなかった。
【0109】
[試験例2]
室温での硬化確認(2)(時間依存性):
実施例1で得られた感光性樹脂組成物について、試験例1に示した方法と同様な方法でガラス基板上に厚さ14.0μmの塗膜を調製した。この塗膜に365nmの単色光を、加熱を施さず室温(25℃)の状態で、露光量を0、1000及び10000mJ/cm
2として100秒間照射し、光照射直後、15分経過後、30分経過後の塗膜の硬度をJIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度測定を行い、比較・評価した。結果を
図3に示す。
【0110】
図3は、試験例2における露光量と鉛筆硬度との関係を示した図である。
図3に示すように、実施例1の感光性樹脂組成物は、室温の状態で、光照射直後でも硬化が始まり、その後時間が経過するにつれて硬化が進行すること及び露光量を大きくすることにより硬化が促進されることが確認できた。
【0111】
[製造例2]
塩基発生剤の製造(2):
下記式(V−b)に示したメチルキサントン酢酸0.25g(0.93×10
−3mol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(III−a)に示したジアザビシクロノネン(DBN)0.11g(0.93×10
−3mol)を滴下し、室温で1時間混合した後、溶媒を減圧留去した。その後貧溶媒にエーテル、良溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いて不純物を抽出除去して塩基発生剤の黄色粘性液体を0.24g(収率65%)得た。
【0112】
【化36】
【0113】
[製造例3]
塩基発生剤の製造(3):
前記した式(V−b)に示したメチルキサントン酢酸0.25g(0.93×10
−3mol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(III−b)に示したジアザビシクロウンデセン(DBU)0.14g(0.93×10
−3mol)を滴下し、室温で1時間混合した後、溶媒を減圧留去した。その後貧溶媒にエーテル、良溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いて不純物を抽出除去して塩基発生剤の黄色粘性液体を0.26g(収率66%)得た。
【0114】
[製造例4]
塩基発生剤の製造(4):
前記した式(V−b)に示したメチルキサントン酢酸0.30g(1.1×10
−3mol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(I−c)に示した1,5,7−トリアザ−ビシクロ[4.4.0]デシ−5−エン(TBD)0.16g(1.1×10
−3mol)を滴下後、室温で1時間混合した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をテトラヒドロフラン(THF)で洗浄、減圧乾燥することで、塩基発生剤の白色固体を0.26g(収率58%)得た。
【0115】
[製造例5]
塩基発生剤の製造(5):
前記した式(V−b)に示したメチルキサントン酢酸0.10g(0.37×10
−3mol)のエタノール溶液に、式(II−e)に示したイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン0.16g(0.37×10
−3mol)を滴下後、室温で1時間混合することで得られた黄色粘性液体をエーテルで洗浄することで、塩基発生剤の黄色粘性液体を0.10g(収率60%)得た。
【0116】
光分解挙動の確認:
製造例5で得られた塩基発生剤について、溶媒としてメタノールを用いて、下記の測定法を用いて光分解挙動の確認を行った。その結果、製造例5で得られた塩基発生剤は、光照射の露光量に伴って240nm付近の吸収強度が増大していく様子が見られ、光分解挙動を確認することができた。
【0117】
(測定方法)
製造例5で得られた塩基発生剤のメタノール溶液(1.0×10
−5mol/L)に波長が254nmまたは365nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。
【0118】
光照射による塩基発生能の確認:
製造例5で得られた塩基発生剤を2ml(8.9×10
−3mol/L)に調製したメタノール溶液を石英セルに入れ、波長254nm光及び波長365nm光を所定量照射して光分解させた後、この溶液にあらかじめ5.0×10
−5mol/Lに調整しておいたフェノールレッド溶液を2mL加えた場合におけるUVスペクトルを測定した。結果を
図4(254nm)及び
図5(365nm)に示す。
【0119】
図4及び
図5はUVスペクトル変化を示した図である。
図4及び
図5に示すように、製造例5で得られた塩基発生剤は、露光するにつれ、424nm付近の吸収が減少し、562nm付近の吸収が増大していることより、塩基発生剤に光照射することにより遊離の塩基が発生していることが確認できた。
【0120】
[実施例2]
感光性樹脂組成物の製造(2):
オキセタン系樹脂である3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタン(OXT−221、東亞合成(株)製)(M
W=214)0.20g(9.33×10
−4mol)、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT(登録商標)PE−1/昭和電工(株)製)0.19g(3.50×10
−4mol)に対して、製造例2で得られた塩基発生剤を0.039g(オキセタン系樹脂100質量部に対して20質量部)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0121】
[実施例3]
感光性樹脂製造物の製造(3)
オキセタン系樹脂である3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタン(OXT−221、東亞合成(株)製)(M
W=214)0.20g(9.33×10
−4mol)、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT(登録商標)PE−1/昭和電工(株)製)0.19g(3.50×10
−4mol)に対して、製造例3で得られた塩基発生剤を0.037g(オキセタン系樹脂100質量部に対して18.5質量部)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0122】
[実施例4]
感光性樹脂製造物の製造(4)
オキセタン系樹脂である3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタン(OXT−221、東亞合成(株)製)(M
W=214)0.20g(9.33×10
−4mol)、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT(登録商標)PE−1/昭和電工(株)製)0.19g(3.50×10
−4mol)に対して、製造例4で得られた塩基発生剤を0.038g(オキセタン系樹脂100質量部に対して19質量部)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0123】
[実施例5]
感光性樹脂製造物の製造(5)
オキセタン系樹脂である3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタン(OXT−221、東亞合成(株)製)(M
W=214)0.20g(9.33×10
−4mol)、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT(登録商標)PE−1/昭和電工(株)製)0.19g(3.50×10
−4mol)に対して、製造例5で得られた塩基発生剤を0.042g(オキセタン系樹脂100質量部に対して21質量部)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0124】
[試験例3]
硬化確認試験:
実施例2ないし実施例5で得られた感光性樹脂組成物をメタノール0.1gに溶解させて試料溶液とした。この試料溶液をガラス基板上にバーコートして製膜し、60℃で60秒間加熱してプリベイクし、厚さ50μmの塗膜を調製した。この塗膜に365nmの単色光を、室温(25℃)の状態で、露光量を0(ブランク)、100、1000、5000及び10000mJ/cm
2として照射して、加熱をしないものと、60℃、80℃、100℃で5分間加熱したものの塗膜の硬度をJIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度測定を行い、比較・評価した。結果を
図6(実施例2)、
図7(実施例3)、
図8(実施例4)及び
図9(実施例5)にそれぞれ示す。
【0125】
図6ないし
図9は、試験例3における露光量と鉛筆硬度との関係を示した図である。
図6ないし
図9に示すように、実施例2ないし実施例5については、光照射により硬化することが確認できた。