【実施例】
【0031】
(実施例1)
チタンアルコキシド1モルに対して、酢酸1.8モル、酢酸リチウム1モルとなる量の酢酸と酢酸リチウムをイソプロパノールと水の混合物に溶解して混合溶媒を作製した。この混合溶媒とチタンアルコキシド、カーボンナノファイバー(CNF)を旋回反応器内に投入し、66,000N(kgms
-2)の遠心力で5分間、内筒を旋回して外筒の内壁に反応物の薄膜を形成すると共に、反応物にずり応力と遠心力を加えて化学反応を促進させ、チタン酸リチウムナノ粒子の前駆体を高分散担持したCNFを得た。この場合、混合溶媒に溶解するチタンアルコキシドとCNFの量は、得られる複合体の組成が、チタン酸リチウム/CNFが、70/30の質量比(w/w)となるように設定した。
【0032】
得られたチタン酸リチウムナノ粒子の前駆体を高分散担持させたCNFを、真空中において80℃で17時間乾燥することにより、チタン酸リチウムナノ粒子の前駆体がCNFに高分散担持された複合体粉末を得た。
【0033】
得られたチタン酸リチウムナノ粒子の前駆体がCNFに高分散担持された複合体粉末を、窒素雰囲気中で900℃で加熱することによってリチウムを含有するチタン酸化物の結晶化を進行させ、チタン酸リチウムのナノ粒子がカーボンナノファイバーに高分散担持された複合体粉末を得た。
【0034】
(実施例2)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、800℃で加熱した。
(実施例3)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、700℃で加熱した。
【0035】
(比較例1)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、真空中で900℃で加熱した。
(比較例2)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、、真空中で800℃で加熱した。
(比較例3)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、真空中で700℃で加熱した。
(比較例4)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、空気(酸化雰囲気)中で900℃で加熱した。
(比較例5)
前記実施例1において窒素雰囲気中で900℃で加熱する代わりに、アルゴン/水素中(還元雰囲気)で900℃で加熱した。
【0036】
このようにして得られた実施例1〜3のチタン酸リチウムナノ粒子を担持したカーボンの各TEM像を
図1に示した。
図1においては5nm〜20nmのチタン酸リチウムのナノ粒子がカーボンナノファイバーに高分散担持していることが分かる。
【0037】
特に、
図1の各TEM像にみられるように、本発明の「チタン酸リチウムナノ粒子とカーボンの複合体」は、CNFがつながった「グラファイトフラグメントのビルディングブロック」をとっており、この構造体にチタン酸リチウムナノ粒子が高分散担持されている。
【0038】
図7にこの構造のモデル図を示す。
図7の左図の従来の電極では、チタン酸リチウムの粒子の表面にカーボンが担持し、このカーボンによってチタン酸リチウム粒子が接合された構造となっている。したがって、粒子内のリチウムイオンの遅い応答性のため低出力である。これに対して、
図7の右図の本発明の構造では、チタン酸リチウムがナノ粒子となっているため、表面での速い応答性が支配的であるため、高出力であり、さらにカーボンがグラファイトフラグメントのビルディングブロックをとっているため、電気伝導度が向上して、さらに出力特性が向上する。
【0039】
前記のように構成した実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた複合体粉末をバインダーとしてのポリフッ化ビニリデンPVDFと共に(Li
4Ti
5O
12/CNF/PVDF 56:24:20)、SUS板上に溶接されたSUSメッシュ中に投入し、作用電極W.E.とした。前記電極上にセパレータと対極C.E.及び参照極としてLiフォイルを乗せ、電解液として、1.0M 四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)/炭酸エチレンEC:炭酸ジメチルDEC(1:1 w/w)を浸透させて、セルとした。
【0040】
前記のようにして得られた実施例1〜3と比較例1〜3の複合体粉末を用いた電極を有するセルについて、その充放電挙動とそれに基づいて算出した容量を
図2に、出力特性を
図3に示す。
図2及び
図3において、左側のグラフが実施例1〜3、右側のグラフが比較例1〜3を示している。この場合、作用電圧は1.0−3.0Vであり、スキャンレートは10Cである。また、加熱時間は、各3分間である。
【0041】
図2から分かるように、窒素雰囲気中で加熱した実施例1〜3の複合体粉末を使用したセルは、真空中で加熱した比較例1〜3の複合体粉末を使用したセルに比較して、容量が増加していることが分かる。特に、比較例1の真空中で900℃まで加熱した複合体粉末を使用したセルが、従来技術では最も容量が大きかったが、実施例1〜3のセルはいずれも、比較例1の容量を大きく上回っている。特に、
図2の右側のグラフから分かるように、700℃及び800℃で加熱した実施例2,3が、900℃まで加熱した実施例1に比較して、大きな容量が得られている。
【0042】
図3は、横軸にC-rateを、縦軸に放電容量維持率(%)を取った各セルの出力特性を示すグラフである。この
図3から分かるように、C-rateが200Cの時点における放電容量維持率は、実施例1〜3のセルが比較例1〜3のセルを大きく上回っている。ここでも、注目すべき点は、真空中で加熱した比較例1〜3のセルでは、高温の900℃の場合が最も優れた出力特性を示すのに対して、実施例1〜3のセルの場合は、900℃よりも700℃及び800℃の方が優れた出力特性を示す点である。容量や充放電特性について差がなかった実施例2と3ではあるが、出力特性については700℃の方が優れている。
【0043】
本発明の複合体において、酸素欠陥を確認するために、
図4に実施例1と比較例1,4のXPS_O 1sの分析結果を示す。
このXPS_O 1sの分析結果によれば、実施例1では酸素欠陥に由来するスペクトルを示すO 1s結合エネルギーのピーク533〜534eVが確認され、比較例1,4においては、通常の酸化物に由来するスペクトルを示す結合エネルギーのピーク530eVが確認される。
【0044】
本発明の複合体において、窒素ドープによりTi−N結合が存在していることを確認するために、
図5に実施例1と比較例1,4のXPS_N 1sの分析結果を示す。
このXPS_N 1sの分析結果によれば、実施例1では、Ti−N結合を示すN 1s結合エネルギーのピーク396eVが検知されており、窒素がドープしていることが確認される。一方、比較例1,4では、396eVではN1s結合エネルギーのピークは確認されず、Ti−N結合が存在しない、すなわち窒素ドープが行われていないことが確認される。このように窒素ドープが確認された実施例1の複合体においては、チタン酸リチウムの電気伝導性が向上し、その結果、この複合体を用いた電極や電気化学素子において出力特性が向上する。
【0045】
本発明の複合体において、Tiの価数変化が生じていることを確認するために、
図6に実施例1と比較例1,4のXPS_Ti 2Pの分析結果を示す。
このXPS_Ti 2P分析結果によれば、実施例1では、Ti
3を示すTi 2P結合エネルギーのピーク458〜457eVが検知されており、3価のチタンが存在していることが確認される。一方、比較例1,4では、Ti
4を示すTi 2P結合エネルギーのピーク460〜459eVが検知されており、4価のチタンが存在していることが確認される。なお、実施例1及び比較例1,4では、Ti
2を示すTi 2P結合エネルギーのピーク455〜454eVは検知されず、2価のチタンが存在しないことが確認される。
【0046】
このように、
図6の分析結果によれば、本発明の窒素雰囲気中加熱では真空中での加熱よりチタンの価数が4価から3価に減少していることが分かる。このことから、酸素欠陥によってチタンの価数が減少し、このサイトにリチウムが吸蔵、脱離するので、本発明の複合体を用いた電極や電気化学素子において容量、出力特性が向上する。
【0047】
前記
図2及び
図3に示した実施例1〜3と比較例1〜3との比較から明らかなように、窒素雰囲気中で加熱する本発明においては、実施例1,2の700〜800℃の方が実施例3の900℃よりも電気的特性が向上する。これに対して、真空中で加熱する比較例では、900℃の比較例1が最も特性が良い。このことは、真空中より窒素雰囲気中での加熱の方が低温の加熱でより優れた特性を引き出せることを示している。
【0048】
(実施例4)
チタンアルコキシド1モルに対して、酢酸1.8モル、酢酸リチウム1モルとなる量の酢酸と酢酸リチウムをイソプロパノールと水の混合物に溶解して混合溶媒を作製した。この混合溶媒とチタンアルコキシド、イソプロピルアルコール、カーボンナノファイバーを旋回反応器内に投入し、66,000N(kgms
-2)の遠心力で5分間、内筒を旋回して外筒の内壁に反応物の薄膜を形成すると共に、反応物にずり応力と遠心力を加えて化学反応を促進させ、チタン酸リチウムの前駆体を高分散担持したケッチェンブラックを得た。
【0049】
得られたチタン酸リチウムの前駆体を高分散担持させたカーボンナノファイバーを、真空中において80℃で17時間乾燥することにより、チタン酸リチウムの前駆体がカーボンナノファイバーに高分散担持された複合体粉末を得た。
【0050】
得られたチタン酸リチウムの前駆体がカーボンナノファイバーに高分散担持された複合体粉末を、窒素雰囲気中で800℃まで急速加熱することによってリチウムを含有するチタン酸化物の結晶化を進行させ、チタン酸リチウムのナノ粒子がカーボンナノファイバーに高分散担持された複合体粉末を得た。
【0051】
上記のようにして得られた複合体粉末9重量部と、1重量部のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)バインダーを混練し、圧延してシートを形成した。このシートを真空乾燥後、銅箔に接合し、負極とした。
【0052】
また、活性炭(クラレケミカル社製、YP−17)8重量部と、1重量部のPTFEバインダー(ポリテトラフルオロエチレン)、導電性材料としてカーボンナノファイバー1重量部とを混練し、圧延してシートを形成した。このシートを真空乾燥後、アルミニウム箔に接合し、正極とした。
【0053】
これらの電極を、LiBF
4、プロピレンカーボネート溶液を注入したビーカーに、セルロース系のセパレータを介して、対向させてハイブリッドキャパシタセルを作製した。
【0054】
(比較例6)
加熱を真空中で行った以外は実施例4と同様にしてハイブリッドキャパシタセルを作製した。
これらのセルについて、定電流で充放電試験を行い、エネルギー密度とパワー密度を測定したところ、
図9に示すような結果が得られた。
図9からわかるように、実施例4のハイブリッドキャパシタのレート特性は比較例6のハイブリッドキャパシタより良好であり、400Cでの容量保持率は1.25倍になっている。