特許第6012077号(P6012077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許6012077マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法
<>
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000002
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000003
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000004
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000005
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000006
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000007
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000008
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000009
  • 特許6012077-マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012077
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】マルチキャスト選択受信装置およびマルチキャスト選択受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/761 20130101AFI20161011BHJP
【FI】
   H04L12/761
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-116852(P2013-116852)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-236372(P2014-236372A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊達 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹也
(72)【発明者】
【氏名】小杉 友哉
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−236700(JP,A)
【文献】 特開2012−023629(JP,A)
【文献】 特開2002−152266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/761
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャストフローを構成するパケットをイーサネットフレームに収めて転送することによりIPマルチキャスト配信を行うマルチキャスト配信システムにおいて、経路を多重化することにより同一内容のマルチキャストフローが複数の異なる経路を介して同時に配信される常時多重配信状態の複数のマルチキャストフローのうちの一つを選択的に受信して下部マルチキャストメンバに転送する装置であって、
受信対象マルチキャストフローを特定する対象フロー情報、当該対象フロー情報で特定される受信対象マルチキャストフローを構成するパケットを収めたイーサネットフレームの送信元MACアドレス、並びに当該送信元MACアドレスのうち転送すべき受信対象マルチキャストフローに対応するものをACT、そうでないものをSTBで表した判定情報を保持する判定テーブルと、
所定の一定時間を計測するタイマと、
受信した受信対象マルチキャストフローのフレーム数を送信元MACアドレスごとに計数するカウンタと、
判定テーブル中の対象フロー情報に対応するマルチキャストフローのフレームを受信すると、カウンタにより送信元MACアドレスごとに計数させ、当該送信元MACアドレスに対応する判定テーブル中の判定情報がACTであれば当該フローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送し、STBであれば廃棄し、タイマにより計測される一定時間ごとにカウンタ値を比較して判定情報がACTの送信元MACアドレスの計数値より大きな値があれば判定テーブル中のACTをSTBに書き換えるとともに、当該計数値に対応する送信元MACアドレスの判定情報をACTに書き換える選択処理部とを備えた
ことを特徴とするマルチキャスト選択受信装置。
【請求項2】
マルチキャストフローを構成するパケットをイーサネットフレームに収めて転送することによりIPマルチキャスト配信を行うマルチキャスト配信システムにおいて、経路を多重化することにより同一内容のマルチキャストフローが複数の異なる経路を介して同時に配信される常時多重配信状態の複数のマルチキャストフローのうちの一つを選択的に受信して下部マルチキャストメンバに転送する方法であって、
受信対象マルチキャストフローを特定する対象フロー情報、当該対象フロー情報で特定される受信対象マルチキャストフローを構成するパケットを収めたイーサネットフレームの送信元MACアドレス、並びに当該送信元MACアドレスのうち転送すべき受信対象マルチキャストフローに対応するものをACT、そうでないものをSTBで表した判定情報を保持する判定テーブルを用い、
判定テーブル中の対象フロー情報に対応するマルチキャストフローのフレームを受信したときに送信元MACアドレスごとに計数する工程と、
当該送信元MACアドレスに対応する判定テーブル中の判定情報がACTであれば当該マルチキャストフローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送し、STBであれば廃棄する工程と、
一定時間ごとに計数値を比較して判定情報がACTの送信元MACアドレスの計数値より大きな値があれば判定テーブル中のACTをSTBに書き換えるとともに、当該計数値に対応する送信元MACアドレスの判定情報をACTに書き換える工程とを含む
ことを特徴とするマルチキャスト選択受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信技術に属し、特にイーサネット(登録商標)を用いてIPマルチキャスト配信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GE−PON(Gigabit-Ethernet Passive Optical Network)システムなど、FTTH(Fiber To The Home)をはじめとした高速通信サービスが普及してきている。高速なネットワークサービスにおいては、IPTV(Internet Protocol Television)などの広帯域放送型サービスが広く提供され、それらを効率的に提供するためにIPマルチキャストが利用されている。また、FTTHをはじめとする通信サービスは、社会インフラとしての側面を備えており、高い信頼性が求められている。
【0003】
ネットワーク事業者がこのようなIPマルチキャスト通信サービスを提供するにあたり、情報ソースからの経路を多重化し、冗長配信を行うケースが考えられる。冗長配信を行うことで、中継ネットワークのノードやリンクの一つが故障した場合でも情報を途絶えさせることなく配信することができるため、高い信頼性(可用性)の確保につながる。
【0004】
従来方式としてIGMPv3/MLDv2のIPマルチキャストプロトコル(非特許文献1,2参照)では、クエリアの選択動作によって上部配信側のマルチキャストルータを多重化し、Act-Standby配信を行うことができることが知られている。
【0005】
従来技術によるマルチキャスト配信システムの一例の構成をその正常状態での動作とともに図1に示す。本システムは通常のマルチキャスト機能とともにIGMPv3/MLDv2のクエリア機能部1を有するルータA,Bと、IGMPv3/MLDv2のホスト機能部2を有するL2SWとが同一のLAN上で接続されて構成されている。
【0006】
ルータA,Bはそれぞれ、IPアドレスIP1,IP2を保持しており、IP1はIP2よりも大きい値(IP1>IP2)となっている。なお、ルータA,Bは共に上部より同一のマルチキャストフローF1を受信している状態である。以下、説明において図1の形態での動作を説明するが、3つ以上のルータ、複数のL2SWで構成された場合も同様の動作を行う。
【0007】
ルータA,Bはマルチキャストグループのメンバ(ホスト)を確認するため、そのクエリア機能部1から全マルチキャストグループ宛てにクエリを送信する。メンバであるL2SWは前記クエリに対し、そのホスト機能部2によりメンバーシップレポートを送り返す。この時、ルータA,Bはクエリア機能部1により互いが送信したクエリを受信し、送信元のIPアドレスと自分のIPアドレスを比較した上で自分のIPアドレスが送信元IPアドレスよりも大きな値だった場合、自身はクエリアとして動作をしないようになる。つまり、小さなIPアドレスを有するルータが優先(Act)クエリアとなる。
【0008】
図1の場合、ルータBの保持するIPアドレスIP2の方がルータAの保持するIPアドレスIP1よりも小さい値であるため、ルータBが優先クエリアとして動作する。優先クエリアに選出されたルータBが上部からのマルチキャストフローF1を下部マルチキャストメンバに配信することでAct-Standby運用が可能となる。
【0009】
次に優先クエリアであるルータBに障害が発生した場合の動作を説明する。
【0010】
ルータBはクエリアとしてクエリア機能部1から定期的にメンバ確認のためのクエリを送出しているが、障害発生と同時にクエリの送信も停止する。
【0011】
ルータAはクエリア機能部1においてルータBから定期的にクエリが届いていることをタイマを使って監視しており、タイマに設定された一定時間、優先クエリアであるルータBからクエリが届かなかった場合、ルータAが優先クエリアとして動作を開始する。優先クエリアとして動作を開始したルータAによって上部からのマルチキャストフローF1を下部マルチキャストメンバに配信することで、配信を継続することができるようになる。切替完了後の配信形態を図を図2に示す。
【0012】
ここでの切替時間はクエリの送信間隔(クエリインターバル)に比例するため、IGMPv3/MLDv2の標準ではデフォルト値の255秒かかることとなり、映像配信等のサービスを想定すると、信頼性の観点でサービス要件を満たさない場合も出てくると思われる。
【0013】
原理上、クエリの送信間隔を短くすることで切替時間を短縮化することは可能であるが、その場合、ホスト側のL2SWはそのホスト機能部2により、前記送信されたクエリに対して必ずレポートを返すことから、ホスト側のCPUの負荷が増大することとなり、装置コスト増に繋がる恐れがあった。
【0014】
また、従来技術ではクエリアの選択とマルチキャストフローの転送を独立して動作させるため、クエリアの選択は正常に動作しているが、マルチキャストフローの転送がうまくいかないなどのように、連携動作に失敗した場合(サイレント故障)に対応できないという欠点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、従来技術ではクエリの送信間隔でマルチキャストルータの切替が行われるため、切替までに時間がかかるという問題があった。また、原理上、クエリの送信間隔を短くすることで切替時間を短くすることが可能になるが、クエリに対して下部マルチキャストメンバが必ずレポートを返さなければならないため、メンバ側のCPUの負荷が増大するという問題があった。また、クエリアの選択とマルチキャストフローの転送の連携動作に失敗した場合(サイレント故障)に対応できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、前記課題を解決するため、
マルチキャストフローを構成するパケットをイーサネットフレームに収めて転送することによりIPマルチキャスト配信を行うマルチキャスト配信システムにおいて、経路を多重化することにより同一内容のマルチキャストフローが複数の異なる経路を介して同時に配信される常時多重配信状態の複数のマルチキャストフローのうちの一つを選択的に受信して下部マルチキャストメンバに転送する装置であって、
受信対象マルチキャストフローを特定する対象フロー情報、当該対象フロー情報で特定される受信対象マルチキャストフローを構成するパケットを収めたイーサネットフレームの送信元MACアドレス、並びに当該送信元MACアドレスのうち転送すべき受信対象マルチキャストフローに対応するものをACT、そうでないものをSTBで表した判定情報を保持する判定テーブルと、
所定の一定時間を計測するタイマと、
受信した受信対象マルチキャストフローのフレーム数を送信元MACアドレスごとに計数するカウンタと、
判定テーブル中の対象フロー情報に対応するマルチキャストフローのフレームを受信すると、カウンタにより送信元MACアドレスごとに計数させ、当該送信元MACアドレスに対応する判定テーブル中の判定情報がACTであれば当該フローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送し、STBであれば廃棄し、タイマにより計測される一定時間ごとにカウンタ値を比較して判定情報がACTの送信元MACアドレスの計数値より大きな値があれば判定テーブル中のACTをSTBに書き換えるとともに、当該計数値に対応する送信元MACアドレスの判定情報をACTに書き換える選択処理部とを備えた
ことを特徴とするマルチキャスト選択受信装置を提案する。
【0017】
また、本発明では、前記課題を解決するため、
マルチキャストフローを構成するパケットをイーサネットフレームに収めて転送することによりIPマルチキャスト配信を行うマルチキャスト配信システムにおいて、経路を多重化することにより同一内容のマルチキャストフローが複数の異なる経路を介して同時に配信される常時多重配信状態の複数のマルチキャストフローのうちの一つを選択的に受信して下部マルチキャストメンバに転送する方法であって、
受信対象マルチキャストフローを特定する対象フロー情報、当該対象フロー情報で特定される受信対象マルチキャストフローを構成するパケットを収めたイーサネットフレームの送信元MACアドレス、並びに当該送信元MACアドレスのうち転送すべき受信対象マルチキャストフローに対応するものをACT、そうでないものをSTBで表した判定情報を保持する判定テーブルを用い、
判定テーブル中の対象フロー情報に対応するマルチキャストフローのフレームを受信したときに送信元MACアドレスごとに計数する工程と、
当該送信元MACアドレスに対応する判定テーブル中の判定情報がACTであれば当該マルチキャストフローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送し、STBであれば廃棄する工程と、
一定時間ごとに計数値を比較して判定情報がACTの送信元MACアドレスの計数値より大きな値があれば判定テーブル中のACTをSTBに書き換えるとともに、当該計数値に対応する送信元MACアドレスの判定情報をACTに書き換える工程とを含む
ことを特徴とするマルチキャスト選択受信方法を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配信側のルータの一方からのフローが何らかの理由で途絶えた場合において、受信側装置にて瞬時に正常系からのフローを認識して配信を継続できるようになる。
【0019】
従来技術と比較して、負荷を増大させることなく高速な切替動作が可能なことと、フロー単位での切替が可能になり、上位装置のサイレント故障にも対応できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術によるマルチキャスト配信システムの一例を示す構成図
図2】受信フロー切替後の図1と同様な図
図3】本発明によるマルチキャスト配信システムの実施の形態の一例を示す構成図
図4】マルチキャスト選択受信装置の判定テーブルの一例を示す説明図
図5】マルチキャスト選択受信装置の選択処理部における全体的な処理の流れを示す図
図6】マルチキャスト選択受信装置の選択処理部における送信元MACアドレスおよび判定情報の設定にかかわる処理の流れの一例を示す図
図7】受信フロー切替時の判定テーブルを示す説明図
図8】受信フロー切替後の図3と同様な図
図9】マルチキャスト選択受信装置の選択処理部における送信元MACアドレスおよび判定情報の設定にかかわる処理の流れの他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態の構成>
図3は本発明によるマルチキャスト配信システムの実施の形態の一例の構成をその正常状態での動作とともに示すもので、本システムは通常のマルチキャスト機能を有するルータA,Bと、マルチキャスト選択受信装置10とが同一のLAN上で接続されて構成されている。
【0022】
ルータA,Bはそれぞれ、MACアドレスMAC1,MAC2を保持しており、MAC1はMAC2よりも大きい値(MAC1>MAC2)となっている。なお、ルータA,Bは共に上部より同一のマルチキャストフローF1を受信し、ホストであるマルチキャスト選択受信装置10にそのまま転送、即ち同じマルチキャストフローF1を常時多重(2重)配信している状態である。
【0023】
マルチキャスト選択受信装置10は、複数の同一のマルチキャストフローF1を送信元MACアドレス単位に識別し、所定の判定方法に従って選択された送信元MACアドレスのフローのみを下部のマルチキャストメンバに配信するもので、判定テーブル11、タイマ12、カウンタ13および選択処理部14より構成されている。
【0024】
ここで、判定テーブル11は、図4に示すように、選択受信対象となるマルチキャストフロー(以下、受信対象マルチキャストフロー)を特定する対象フロー情報、当該対象フロー情報で特定される受信対象マルチキャストフローを構成するパケットを収めたイーサネットフレームの送信元MACアドレス、並びに当該送信元MACアドレスのうち転送すべき受信対象マルチキャストフローに対応するものをACT、そうでないものをSTBで表した判定情報を保持する。但し、初期状態においては全て空欄である。
【0025】
ここで、対象フロー情報としては、受信対象マルチキャストフローを構成するパケットの送信元IPアドレスおよびマルチキャストグループアドレスの組み合わせ、例えば受信対象マルチキャストフローF1を構成するパケットの送信元IPアドレスがS1であり、マルチキャストグループアドレスがG1であれば、F1<S1,G1>を用いるものとする。
【0026】
対象フロー情報の設定方法としては、(1)手動で設定する方法、(2)マルチキャスト選択受信装置10がIGMP/MLD Proxyを同時に実装している場合にProxy配下からのJoin要求があったマルチキャストフローを自動設定する方法の2つが考えられる。本例ではIGMP/MLD Proxy機能は所持しない前提の元、事前に手動で設定するものとする。
【0027】
また、初期状態での判定情報の設定方法としては、(1)送信元MACアドレスの大小を比較し、最も値の小さいアドレスをACTに設定し、それ以外をSTBに設定する、(2)最初に受信したフローのアドレスをACTに設定し、それ以後に受信したフローのアドレスをSTBに設定する、(3)手動で設定する方法の3つが採れる。本例では(1)の方法で設定、つまりルータBから配信されるマルチキャストフローF1(送信元MACアドレス:MAC2)をACTに設定するものとする。
【0028】
タイマ12は、所定の一定時間を計測する。カウンタ13は、受信した受信対象マルチキャストフローのフレーム数を送信元MACアドレスごとに計数する。
【0029】
選択処理部14は、判定テーブル11中の対象フロー情報に対応するマルチキャストフローのフレームを受信すると、カウンタ13により送信元MACアドレスごとに計数させ、当該送信元MACアドレスに対応する判定テーブル11中の判定情報がACTであれば当該フローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送し、STBであれば廃棄し、タイマ12により計測される一定時間ごとにカウンタ値を比較して判定情報がACTの送信元MACアドレスの計数値より大きな値があれば判定テーブル11中のACTをSTBに書き換えるとともに、当該計数値に対応する送信元MACアドレスの判定情報をACTに書き換える。
【0030】
なお、マルチキャスト選択受信装置10は、従来のL2SWと置き換えて実装することもできるが、従来のL2SW内に実装するようにしても良い。
【0031】
<実施の形態の動作>
図5図6はマルチキャスト選択受信装置10の選択処理部14における処理の流れを示すもので、図5は全体的な処理を、図6は初期状態および新規フローを受信した場合の送信元MACアドレスおよび判定情報の設定にかかわる処理をそれぞれ示している。
【0032】
以下、図5図6に従ってマルチキャスト選択受信装置10の動作を説明するが、判定テーブル11には対象フロー情報、ここではF1<S1,G1>のみが書き込まれているものとする。
【0033】
まず、選択処理部14はタイマ12およびカウンタ13をリセットし(s1)、タイマ12による一定時間の計時を開始させる(s2)。
【0034】
そして、選択処理部14はマルチキャストフロー(のフレーム)を受信すると、これが受信対象マルチキャストフローであるか否か、即ちそのフローを構成するパケットの送信元IPアドレスおよびマルチキャストグループアドレスが判定テーブル11に記載されたもの、ここでは<S1,G1>であるか否かを判定し(s3)、受信対象マルチキャストフローでなければ(s3:No)何もせず(又はそのフレームを廃棄して)、そのままs2に戻る。
【0035】
一方、受信対象マルチキャストフローであれば(s3:Yes)、選択処理部14はそのフレームの送信元MACアドレスに該当するものが判定テーブル11内にあるか否かを判定する(s4)。初期状態では、判定テーブル11には送信元MACアドレスが何も書き込まれていないため、選択処理部14は送信元MACアドレスおよび判定情報の設定動作に移る(s4:No)。
【0036】
即ち、選択処理部14は、まず判定テーブル11に前記マルチキャストフロー(のフレーム)の送信元MACアドレスを新規な送信元MACアドレスとして書き込み(s21)、次に判定テーブル11内に送信元MACアドレスが複数有るか否かを判定する(s22)が、ここでは1つ目の送信元MACアドレスであり、1つしかない(s22:No)から、判定テーブル11に当該新規な送信元MACアドレスの判定情報としてACTを設定する(s23)。
【0037】
その後、選択処理部14は、カウンタ13により送信元MACアドレスごとのカウンタ値に1加算し(s5)、さらに受信フロー(のフレーム)の送信元MACアドレスの判定情報がACTか否かを判定する(s6)。この場合、判定情報はACTであるから(s6:Yes)、当該受信フローのフレームを下部マルチキャストメンバに転送する(s7)。
【0038】
この後、前述した受信対象マルチキャストフローのみが受信され続ければ、選択処理部14は、s3〜s7の処理を繰り返す。
【0039】
次に、受信対象マルチキャストフローではあるが、そのフレームの送信元MACアドレスが異なるものが受信される(s3)と、選択処理部14は、前述したs4(No)およびs21の処理を経て、再び判定テーブル11内に送信元MACアドレスが複数有るか否かを判定する(s22)。この場合は2つ目の送信元MACアドレスであるから(s22:Yes)、選択処理部14は、判定テーブル11内の送信元MACアドレスを比較し(S24)、最も値の小さいアドレスをACTに設定し、それ以外をSTBに設定する(S25)。
【0040】
上述した2つの受信対象マルチキャストフローが図3におけるMACアドレスMAC1のルータAおよびMACアドレスMAC2のルータBからのマルチキャストフローであるとすると、MAC1>MAC2であるから、送信元MACアドレスMAC2がACTに設定され、送信元MACアドレスMAC1がSTBに設定され、図4に示す状態となる。
【0041】
その後、選択処理部14は、一旦、タイマ12およびカウンタ13をリセットし(s26)、s5以降の処理を繰り返す。
【0042】
ここまでの動作を完了することで、マルチキャスト選択受信装置10は、図3に示したような、ルータBからのマルチキャストフローF1のみを下部マルチキャストメンバに配信する状態(正常状態)となり、ルータAからのマルチキャストフローF1は廃棄される(s8)。
【0043】
また、選択処理部14は、タイマ12より一定時間の経過が通知される(s2:Yes)と、カウンタ13で計数している送信元MACアドレスごとのカウンタ値を比較する(s9)。この際、選択処理部14は、ACTに設定されている送信元MACアドレスのカウンタ値を基準値に、それ以外の送信元MACアドレスのカウンタ値が当該基準値と同値もしくはそれより小さい場合(s10:No)は問題なしとして何もせず、s1に戻る。
【0044】
一方、基準値より大きい値のカウンタ値があった場合(s10:Yes)、選択処理部14は、ACTに設定されている送信元MACアドレスのフローに問題が生じた可能性があると判断し、判定テーブル11において当該大きなカウンタ値の送信元MACアドレスの判定情報をACTに設定し、それ以外の送信元MACアドレスの判定情報をSTBに設定し(s11)、s1に戻る。
【0045】
例えば、図3図4の状態においてルータBに障害が発生したことを想定すると、送信元MACアドレスMAC2のマルチキャストフローが途絶えることになり、MAC1とMAC2のカウンタ値の比較でMAC1のカウンタ値の方が大きくなる。これにより、選択処理部14は、判定テーブル11を図7に示すように、これまでACTであったMAC2の判定情報をSTBに、逆にこれまでSTBであったMAC1の判定情報をACTに再設定する。
【0046】
その結果、マルチキャスト選択受信装置10は、図8で示すような、ルータAからのマルチキャストフローF1のみを下部マルチキャストメンバに配信する状態となる。
【0047】
図9は初期状態での判定情報の設定方法として、前述した(2)の方法を採用した場合の図6と同様な図である。
【0048】
この場合、選択処理部14は、まず判定テーブル11に新規に受信した受信対象マルチキャストフロー(のフレーム)の送信元MACアドレスを新規な送信元MACアドレスとして書き込み(s31)、次に判定テーブル11内に既に判定情報がACTのものが有るか否かを判定する(s32)。
【0049】
前記受信対象マルチキャストフローが初めてのものであれば、判定情報がACTのものはないはずであるから(s32:No)、判定テーブル11に当該新規な送信元MACアドレスの判定情報としてACTを設定する(s33)。また、前記受信対象マルチキャストフローが新規な送信元MACアドレスとして2つ目以降のものであれば既に1つ目のものに判定情報としてACTが設定されているはずであるから(s32:Yes)、判定テーブル11に当該新規な送信元MACアドレスの判定情報としてSTBを設定する(s34)。
【0050】
なお、この方法の場合、新規なアドレスの追加によってACT−STBの入替が発生することはないため、この時点でのタイマやカウンタのリセットは不要である。また、初期状態での判定情報の設定方法として、(3)の方法を採用した場合、図5中のs4を含めて図6図9の処理が不要であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10:マルチキャスト選択受信装置、11:判定テーブル、12:タイマ、13:カウンタ、14:選択処理部、A,B:ルータ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0052】
【非特許文献1】rfc3376 Internet Group Management Protocol, Version 3
【非特許文献2】rfc3810 Multicast Listener Discovery Version 2 (MLDv2) for IPv6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9