特許第6012289号(P6012289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012289パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012289
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20161011BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20161011BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20161011BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G03F7/32
   G03F7/32 501
   G03F7/004 503A
   G03F7/038 601
   G03F7/039 601
   G03F7/004 501
   C08F20/36
   C08F20/38
【請求項の数】22
【全頁数】149
(21)【出願番号】特願2012-146001(P2012-146001)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-10245(P2014-10245A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀知
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−025708(JP,A)
【文献】 特開2012−088658(JP,A)
【文献】 特開2012−083727(JP,A)
【文献】 特開2013−125204(JP,A)
【文献】 特開2013−105163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(但し、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位であって、前記保護が脱保護された際にカルボキシ基を生じない繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を除く)によって膜を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を含む、パターン形成方法であって、
前記樹脂(P)の前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全体中の配合率が、全固形分中30〜99質量%である、パターン形成方法。
【化101】

式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
【請求項2】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【化102】

式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)を、前記樹脂(P)の全繰り返し単位に対して55モル%以上で含有する、請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、前記化合物(B)として、下記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化103】

一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【化104】

一般式(ZI−3)中、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良い。
Zcは、非求核性アニオンを表す。
【化105】

一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【請求項5】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化106】

一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−、又は、−SO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【化107】

は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
【請求項6】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化108】

’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
【請求項7】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)を更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、下記一般式(F)で表される化合物を更に含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化109】

一般式(F)において、Rは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
は、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但し、−C(R)(R)(R)において、1つ以上のRが水素原子のとき、残りのRの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
【請求項9】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、疎水性樹脂を更に含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
更に、(エ)有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、前記樹脂(P)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂(P)の前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全体中の配合率が、全固形分中30〜99質量%である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(但し、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位であって、前記保護が脱保護された際にカルボキシ基を生じない繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物(i)、及び、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、かつ、露光により酸を発生する基材成分(A’)を含有するレジスト組成物であって、前記基材成分(A’)は、下記一般式(a5−10)で表される基を含む構成単位(a5)と、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1’)と、下記一般式(a3−1)で表される構成単位(a3)とを有する樹脂成分(A1’)を含有することを特徴とするレジスト組成物(ii)を除く)。
【化110】

式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
【化111】

[式(a5−10)中、Qは単結合又は2価の連結基であり、Rは水素原子、フッ素原子、アルキル基、又はフッ素化アルキル基であり、pは1〜10の整数である。Aは有機カチオンである。式(a3−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Pは−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合である。Wは置換基として−OH、−COOH、−CN、−SONH及び−CONHからなる群より選択される少なくとも一種の基を有する環状の炭化水素基であり、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。]
【請求項13】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂である、請求項12に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化112】

式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【請求項14】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)を、前記樹脂(P)の全繰り返し単位に対して55モル%以上で含有する、請求項12又は13に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項15】
前記化合物(B)として、下記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化113】

一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【化114】

一般式(ZI−3)中、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良い。
Zcは、非求核性アニオンを表す。
【化115】

一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【請求項16】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化116】

一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【化117】

は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
【請求項17】
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂である、請求項12〜16のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化118】

’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
【請求項18】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)を更に含有する、請求項12〜17のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項19】
下記一般式(F)で表される化合物を更に含有する、請求項12〜18のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化119】

一般式(F)において、Rは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
は、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但し、−C(R)(R)(R)において、1つ以上のRが水素原子のとき、残りのRの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
【請求項20】
疎水性樹脂を更に含有する、請求項12〜19のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項12〜20のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、それに用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及び、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関する。より詳細には、本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶及びサーマルヘッド等の回路基板の製造、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程に好適なパターン形成方法、該パターン形成方法に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びレジスト膜、電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関する。特には、本発明は、波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とするArF露光装置及びArF液浸式投影露光装置での露光に好適なパターン形成方法、該パターン形成方法に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びレジスト膜、電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うべく、化学増幅を利用したパターン形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅法では、まず、露光部に含まれる光酸発生剤が、光照射により分解して酸を発生する。そして、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)過程等において、発生した酸の触媒作用により、感光性組成物に含まれるアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させる。その後、例えばアルカリ溶液を用いて、現像を行う。これにより、露光部を除去して、所望のパターンを得る。
上記方法において、アルカリ現像液としては、種々のものが提案されている。例えば、このアルカリ現像液として、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
【0003】
また、半導体素子の微細化のために、露光光源の短波長化及び投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では、193nmの波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。解像力を更に高める技術として、投影レンズと試料との間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)を満たす方法(即ち、液浸法)が提唱されている。また、更に短い波長(13.5nm)の紫外光で露光を行なうEUVリソグラフィも提唱されている。
【0004】
しかしながら、総合的に優れた性能を有したパターンを形成するために必要なレジスト組成物、現像液及びリンス液等の適切な組み合わせを見出すことは、極めて困難であるのが実情である。
【0005】
例えば、上記ポジ型の化学増幅型の画像形成方法としては、特定の極性基含有脂肪族多環式基を有する樹脂を含有するレジスト組成物を使用する技術が知られており(特許文献1参照)、特許文献1の実施例に記載のポジ型画像形成方法によれば、高感度と低ラインエッジラフネスとを達成できるとされている。
【0006】
近年では、有機溶剤を含んだ現像液を用いたパターン形成方法も開発されつつある(例えば、特許文献2〜5参照)。例えば、特許文献2には、基板上に、活性光線又は放射線の照射により、アルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤現像液に対する溶解度が減少するレジスト組成物を塗布する工程、露光工程、及び有機溶剤現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法が開示されている。この方法によると、高精度な微細パターンを安定的に形成することが可能となる。
また、特許文献4、5などには、有機溶剤を含んだ現像液を用いたパターン形成方法において、基板密着性向上などの観点から、置換基としてシアノ基などの極性基を有する多環炭化水素構造(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基)を有する繰り返し単位を含有する樹脂を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−88658号公報
【特許文献2】特開2008−292975号公報
【特許文献3】特開2010−197619号公報
【特許文献4】特開2010−152353号公報
【特許文献5】特開2009−25707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような有機溶剤を含んだ現像液を用いたパターン形成方法のいずれにおいても、ラフネス性能、露光ラチチュード、及び、局所的なパターン寸法の均一性について、更なる改善が求められている。
【0009】
本発明の目的は、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、露光ラチチュード、及び、局所的なパターン寸法の均一性に優れるパターン形成方法、それに用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、及び電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記課題が解決される。
<1>
(ア)環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(但し、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位であって、前記保護が脱保護された際にカルボキシ基を生じない繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を除く)によって膜を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を含む、パターン形成方法であって、
前記樹脂(P)の前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全体中の配合率が、全固形分中30〜99質量%である、パターン形成方法。
【化120】

式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
<2>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂である、<1>に記載のパターン形成方法。
【化121】

式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
<3>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)を、前記樹脂(P)の全繰り返し単位に対して55モル%以上で含有する、<1>又は<2>に記載のパターン形成方法。
<4>
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、前記化合物(B)として、下記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有する、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化122】


一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【化123】

一般式(ZI−3)中、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良い。
Zcは、非求核性アニオンを表す。
【化124】

一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
<5>
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化125】

一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−、又は、−SO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【化126】

は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
<6>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化127】

’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
<7>
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)を更に含有する、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
<8>
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、下記一般式(F)で表される化合物を更に含有する、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化128】


一般式(F)において、Rは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
は、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但し、−C(R)(R)(R)において、1つ以上のRが水素原子のとき、残りのRの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
<9>
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、疎水性樹脂を更に含有する、<1>〜<8>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
<10>
前記現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
<11>
更に、(エ)有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含む、<1>〜<10>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
<12>
環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、前記樹脂(P)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂(P)の前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全体中の配合率が、全固形分中30〜99質量%である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(但し、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位であって、前記保護が脱保護された際にカルボキシ基を生じない繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物(i)、及び、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、かつ、露光により酸を発生する基材成分(A’)を含有するレジスト組成物であって、前記基材成分(A’)は、下記一般式(a5−10)で表される基を含む構成単位(a5)と、α位の炭素原子に水素原子以外の原子又は置換基が結合していてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1’)と、下記一般式(a3−1)で表される構成単位(a3)とを有する樹脂成分(A1’)を含有することを特徴とするレジスト組成物(ii)を除く)。
【化129】

式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
【化130】

[式(a5−10)中、Qは単結合又は2価の連結基であり、Rは水素原子、フッ素原子、アルキル基、又はフッ素化アルキル基であり、pは1〜10の整数である。Aは有機カチオンである。式(a3−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Pは−C(=O)−O−、−C(=O)−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)又は単結合である。Wは置換基として−OH、−COOH、−CN、−SONH及び−CONHからなる群より選択される少なくとも一種の基を有する環状の炭化水素基であり、任意の位置に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。]
<13>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂である、<12>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化131】

式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
<14>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)を、前記樹脂(P)の全繰り返し単位に対して55モル%以上で含有する、<12>又は<13>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<15>
前記化合物(B)として、下記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有する、<12>〜<14>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化132】

一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【化133】

一般式(ZI−3)中、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良い。
Zcは、非求核性アニオンを表す。
【化134】

一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
<16>
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位である、<12>〜<15>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化135】

一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【化136】

は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
<17>
前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂である、<12>〜<16>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化137】


’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
<18>
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)を更に含有する、<12>〜<17>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<19>
下記一般式(F)で表される化合物を更に含有する、<12>〜<18>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化138】

一般式(F)において、Rは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
は、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但し、−C(R)(R)(R)において、1つ以上のRが水素原子のとき、残りのRの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
<20>
疎水性樹脂を更に含有する、<12>〜<19>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<21>
<12>〜<20>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜。
<22>
<1>〜<11>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
尚、本発明は、上記<1>〜<22>に係る発明であるが、以下、その他についても参考のため記載した。

【0011】
〔1〕 (ア)環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって膜を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程
を含む、パターン形成方法。
【化1】

式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
〔2〕 前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂である、上記〔1〕に記載のパターン形成方法。
【化2】

式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
〔3〕 前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(b)を、前記樹脂(P)の全繰り返し単位に対して55モル%以上で含有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載のパターン形成方法。
〔4〕 前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、前記化合物(B)として、下記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化3】

一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【化4】

一般式(ZI−3)中、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良い。
Zcは、非求核性アニオンを表す。
【化5】

一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
〔5〕 前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化6】
一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−、又は、−SO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【化7】

は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
〔6〕 前記樹脂(P)が、前記繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化8】

’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
〔7〕 前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)を更に含有する、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔8〕 前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、疎水性樹脂を更に含有する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔9〕 前記現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔10〕 更に、(エ)有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を含む、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔11〕 上記〔2〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法に供せられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔12〕 上記〔11〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜。
〔13〕 上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔14〕 上記〔13〕に記載の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイス。
【0012】
本発明は、更に、下記の構成であることが好ましい。
〔15〕 前記繰り返し単位(a)が、環状構造と上記一般式(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位である、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔16〕 前記化合物(B)が前記樹脂(P)とは異なる、上記〔1〕〜〔10〕及び〔15〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔17〕 前記樹脂(P)が、実質的には芳香環を有さない樹脂である、上記〔1〕〜〔10〕、〔15〕及び〔16〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔18〕 前記工程(イ)における露光が、ArF露光である、上記〔1〕〜〔10〕、〔15〕〜〔17〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔19〕 前記工程(イ)における露光が、液浸露光である、上記〔1〕〜〔10〕、〔15〕〜〔18〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、露光ラチチュード、及び、局所的なパターン寸法の均一性に優れるパターン形成方法、それに用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、及び電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0015】
本発明のパターン形成方法は、
(ア)環状構造と下記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)、並びに、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって膜を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程
を含む、パターン形成方法。
【0016】
【化9】
【0017】
式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
【0018】
前記環状構造と一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)を使用する本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含む現像液によるネガ型パターン形成において、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、露光ラチチュード、及び、局所的なパターン寸法の均一性が優れる理由は定かではないが以下のように推定される。
【0019】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像を行う場合、レジスト膜における溶解コントラストが低いとパターン境界部が部分的に溶解してしまい、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能や露光ラチチュードを悪化させてしまう。
これに対し、本発明によれば、繰り返し単位(a)における環状構造の存在によって、樹脂のガラス転移温度(Tg)が高くなっており、その結果、活性光線又は放射線の照射により化合物(B)より発生する酸が、未露光部に拡散しすぎることが抑制され、露光ラチチュード及び局所的なパターン寸法の均一性が向上するものと考えられる。
更に、繰り返し単位(a)における前記一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造は高い極性を有する。これにより、レジスト膜の有機溶剤を含む現像液に対する溶解性を適度に下げることができるため、上記したパターン境界部の部分的な溶解を抑制でき、その結果、ラフネス性能及び露光ラチチュードに優れるものと推定される。
【0020】
本発明のパターン形成方法は、前記現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0021】
本発明のパターン形成方法は、更に、(エ)有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよい。
【0022】
リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液であることが好ましい。
【0023】
本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程の後に、(オ)加熱工程を有することが好ましい。
【0024】
また、樹脂(P)は酸の作用により極性が増大して、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂であることが好ましく、この場合、樹脂(P)は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂でもある。
よって、本発明のパターン形成方法は、(カ)アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有していてもよい。
【0025】
本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程を、複数回有することができる。
本発明のパターン形成方法は、(オ)加熱工程を、複数回有することができる。
【0026】
本発明のレジスト膜は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって形成される膜であり、例えば、基材に、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布することにより形成される膜である。
【0027】
以下、本発明で使用し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物について説明する。
また、本発明は以下に説明する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関するものでもある。
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられる。即ち、本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
【0028】
[1]環状構造と一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)、及び、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂(P)
樹脂(P)は、環状構造と一般式(I)、(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位(a)を有する樹脂である。
【0029】
【化10】
【0030】
式中、A及びAは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RとRとが互いに結合して環を形成してもよい。
は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は、結合手を表す。ただし、上記一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、上記一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
【0031】
繰り返し単位(a)における環状構造は特に限定されないが、単環あるいは多環の脂肪族炭化水素構造が好ましく、多環の脂肪族炭化水素構造がより好ましい。
【0032】
環状構造は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等)、アシロキシ基(アセトキシ基、ブチリルオキシ基等)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基)等、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、カルボキシ基が挙げられる。
【0033】
単環の脂肪族炭化水素構造の環員における炭素数は、炭素数3〜10のものが好ましい。
置換基を有していてもよい、単環の脂肪族炭化水素構造の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられ、特にシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基が好ましい。
【0034】
多環の脂肪族炭化水素構造の環員における炭素数は、炭素数6〜20のものが好ましい。
置換基を有していてもよい、多環の脂肪族炭化水素構造の具体例としては、上記のように置換基を有していてもよく、例えば、ビシクロ[4.3.0]ノナニル基、ナフタレニル基、デカヒドロナフタレニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニル基、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル基、ボルニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、1,7,7−トリメチルトリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタニル基、3,7,7−トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタニル基等があげられ、特にノルボルニル基、アダマンチル基、ノルアダマンチル基が好ましい。
【0035】
前記単環あるいは多環の脂肪族炭化水素構造としては、例えば、下記の環状構造を好適に挙げることができる。
【0036】
【化11】
【0037】
一般式(I)のR及びRとしてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても良く、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。
アルキル基は更に置換基を有してもよく、このような置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等)、アシロキシ基(アセトキシ基、ブチリルオキシ基等)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基)等、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、カルボキシ基が挙げられる。 R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
とRとが互いに結合して形成してもよい環としては、4〜10員環の脂肪族環であることが好ましく、5〜8員環の脂肪族環であることがより好ましく、5又は6員環の脂肪族環であることが更に好ましい。
なお、RとRとが互いに結合して環を形成する場合、この環は、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造とは異なる環である。
【0038】
一般式(I)で表される部分構造の好ましい例を以下に示す。
【0039】
【化12】
【0040】
一般式(II−1)のRとしてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても良く、炭素数1〜12が好ましく、炭素数2〜10がより好ましく、炭素数4〜8が最も好ましい。アルキル基は更に置換基を有してもよく、このような置換基としては、一般式(I)のR及びRとしてのアルキル基が更に有していても良い置換基で例示した基を同様に挙げることができる。
は、炭素数2〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
【0041】
上記したように、一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造の環に直接又は間接的に結合し、一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造の環に直接又は間接的に結合する。
結合手が環状構造の環に直接又は間接的に結合するとは、具体的には、複数の結合手が、それぞれ独立して、単結合又は連結基を介して、環状構造の環に結合することを意味し、上記連結基としては、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数が組合された連結基などが挙げられ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。
一般式(II−1)における部分構造の2つの結合手は、それぞれ、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造の環に、単結合又はアルキレン基を介して結合することが好ましい。また、一般式(II−2)における部分構造の3つの結合手の内の2つ以上は、それぞれ、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造の環に、単結合又はアルキレン基を介して結合することが好ましい。
【0042】
一般式(I−1)で表される部分構造及び一般式(I−2)で表される部分構造の好ましい例を以下に示す。下記例中、*は結合手を表す。
【0043】
【化13】
【0044】
前記繰り返し単位(a)は、環状構造と上記一般式(II−1)又は(II−2)で表される部分構造とを有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0045】
繰り返し単位(a)は、下記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0046】
【化14】
【0047】
一般式(V)中、R31、R32、及び、R33は、各々独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。R32とR33とが互いに結合して環を形成してもよい。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基を表す。
は、単結合、−O−、又は、−NR34−を表す。
34は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、−CO−、又は、−SO−を表す。
nは、1又は2を表す。
一般式(VI)中、R41は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
は、単結合、又は、−O−を表す。
は、環員として酸素原子を含んでいてもよい、下記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は下記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合する脂環基を表す。
【0048】
【化15】
【0049】
は、−CO−、又は、−SO−を表す。
42は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
*は結合手を表す。
【0050】
31及びR41としてのアルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
31及びR41は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0051】
32及びR33としてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、R及びRとしてのアルキル基で記載したものと同様である。
32及びR33の好ましい例は、R及びRの上記した好ましい例と同様である。
【0052】
32とR33とが互いに結合して形成してもよい環の好ましい例は、RとRとが互いに結合して形成してもよい環の上記した好ましい例と同様である。
【0053】
としての「環員として酸素原子を含んでいてもよい、(n+1)価の脂環基」は、単環であっても多環であってもよく、nが1である場合、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であることが好ましい。単環のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及び、シクロへキシレン基などが挙げられる。多環のシクロアルキレン基としては、ノルボルニレン基、イソボルニレン基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、アダマンチレン基、及び、これらの基における環を形成する環員としての炭素原子が酸素原子により置換された基などが挙げられる。
nが1である場合におけるWとしては、シクロへキシレン基、ノルボルニレン基、イソボルニレン基、トリシクロデカニレン基、又は、アダマンチレン基が好ましく、シクロへキシレン基、トリシクロデカニレン基、又は、アダマンチレン基がより好ましく、アダマンチレン基が最も好ましい。
nが2である場合におけるWとしては、シクロアルキレン基の上記具体例における任意の水素原子を1個除去してなる基を好適に挙げることができる。
【0054】
34としてのアルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0055】
としての脂環基は、単環であっても多環であってもよく、炭素数3〜20のシクロアルキル基であることが好ましい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基などが挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基、及び、これらの基における環を形成する環員としての炭素原子が酸素原子により置換された基などが挙げられる。
【0056】
上記したように、Wとしての脂環基は、上記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は上記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に直接又は間接的に結合している。
より具体的には、Wとしての脂環基は、上記一般式(VII−1)で表される部分構造の2つの結合手又は上記一般式(VII−2)で表される部分構造の3つの結合手の内の2つ以上に、単結合又は連結基を介して結合しており、連結基の具体例及び好ましい例は、上記(II−1)又は(II−2)で表される部分構造における複数の結合手が、繰り返し単位(a)が有する前記環状構造の環に結合する際に介在され得る連結基として記載したものを同様に挙げることができる。また、上記「単結合又は連結基」は、単結合又はアルキレン基であることが好ましい。
【0057】
の好ましい例を以下に示す。下記例中、*はXに結合する結合手を表す。
【0058】
【化16】
【0059】
一般式(V)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。R”は、水素原子又はメチル基を表す。
【0060】
【化17】

【0061】
一般式(VI)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。R”は、水素原子又はメチル基を表す。
【0062】
【化18】
【0063】
樹脂(P)は、繰り返し単位(a)として、下記繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。
【0064】
【化19】
【0065】
’は、水素原子又はアルキル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
【0066】
’としてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(V)におけるR31及び上記一般式(VI)におけるR41としてのアルキル基の具体例及び好ましい例と同様である。
Rとしてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(II−1)におけるRとしてのアルキル基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0067】
繰り返し単位(a)は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
繰り返し単位(a)の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜60モル%であることが好ましく、5〜55モル%であることがより好ましく、10〜50モル%であることが更に好ましい。
【0068】
樹脂(P)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する繰り返し単位(b)を有している。
【0069】
極性基としては、有機溶剤を含む現像液中で難溶化又は不溶化する基であれば特に限定されないが、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基(従来レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、又はアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0070】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、フッ素化アルコール基(ヘキサフルオロイソプロパノール基など))は除くものとする。アルコール性水酸基としては、pKaが12以上且つ20以下の水酸基であることが好ましい。
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
【0071】
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
上記一般式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36〜R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
36とR37とが結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環若しくは多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
【0072】
樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0073】
【化20】
【0074】
式中、Rは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
〜Rの内の2つが結合して、環(単環若しくは多環)を形成してもよい。
のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
〜Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
〜Rのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
〜Rの内の2つが結合して形成される環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの単環の炭化水素環、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環などの多環の炭化水素環が好ましい。炭素数5〜6の単環の炭化水素環が特に好ましい。
〜Rは、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることがより好ましい。
上記各基は、更に、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、シクロアルキル基(炭素数3〜8)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。なかでも、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストをより向上させる観点から、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有さない置換基であることがより好ましく(例えば、水酸基で置換されたアルキル基などではないことがより好ましく)、水素原子及び炭素原子のみからなる基であることが更に好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが特に好ましい。
【0075】
樹脂(P)は、前記一般式(III)で表される繰り返し単位として、下記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
【0076】
【化21】
【0077】
式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。R’、R’及びR’は、各々独立に、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
なお、R’、R’及びR’の2つ以上が互いに結合して環を形成することはない。
【0078】
’としてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(III)のRとしてのアルキル基の上記した具体例及び好ましい例と同様である。
’は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0079】
’、R’及びR’としての直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(III)のR’、R’及びR’としての直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0080】
樹脂(P)は、前記一般式(III)で表される繰り返し単位を2種類以上で有することにより、反応性及び/又は現像性の微調整が可能となり、諸性能の最適化が容易となる。
【0081】
上記酸分解性基を有する繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Rx、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは、置換基を表し、複数存在する場合、複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよい。pは0又は正の整数を表す。Zの具体例及び好ましい例は、R〜Rが更に有していてもよい置換基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
また、一般式(III’)で表される繰り返し単位は、以下の一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)のいずれかで表される繰り返し単位であることが好ましい。下記具体例中、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。
【0087】
【化26】
【0088】
また樹脂(P)は酸分解性基を有する繰り返し単位として下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
【0089】
【化27】
【0090】
上記一般式中、Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
Ry〜Ryは、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Ry〜Ryの内の2つが連結して環を形成していてもよい。
Zは、(n’+1)価の、環員としてヘテロ原子を有していてもよい多環式炭化水素構造を有する連結基を表す。Zは、多環を構成する原子団として、エステル結合を含有していてもよい。
及びLは、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
n’は1〜3の整数を表す。
n’が2又は3のとき、複数のL、複数のRy、複数のRy、及び、複数のRyは、各々、同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
Xaの具体例及び好ましい例は、一般式(III)におけるRの具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
【0092】
Ry〜Ryのアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましく、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Ry〜Ryのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Ry〜Ryの内の2つが結合して形成される環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの単環の炭化水素環、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環などの多環の炭化水素環が好ましい。炭素数5〜6の単環の炭化水素環が特に好ましい。
Ry〜Ryは、各々独立に、鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることがより好ましい。また、Ry〜Ryとしての鎖状アルキル基の炭素数の合計は、5以下であることが好ましい。
【0093】
Ry〜Ryは、更に、置換基を有してもよく、そのような更なる置換基の具体例及び好ましい例としては、前記一般式(III)におけるR〜Rが更に有していてもよい置換基の具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。なかでも、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストをより向上させる観点から、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有さない置換基であることがより好ましく(例えば、水酸基で置換されたアルキル基などではないことがより好ましく)、水素原子及び炭素原子のみからなる基であることが更に好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが特に好ましい。
【0094】
Zの多環式炭化水素構造を有する連結基としては環集合炭化水素環基、架橋環式炭化水素環基が含まれ、それぞれ、環集合炭化水素環から(n’+1)個の任意の水素原子を除してなる基、及び、架橋環式炭化水素環から(n’+1)個の任意の水素原子を除してなる基を挙げることができる。
環集合炭化水素環基の例としては、ビシクロヘキサン環基、パーヒドロナフタレン環基などが含まれる。架橋環式炭化水素環基として、例えば、ピナン環基、ボルナン環基、ノルピナン環基、ノルボルナン環基、ビシクロオクタン環基(ビシクロ[2.2.2]オクタン環基、ビシクロ[3.2.1]オクタン環基等)などの2環式炭化水素環基及び、ホモブレダン環基、アダマンタン環基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環基、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環基などの3環式炭化水素環基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環基、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環基などの4環式炭化水素環基などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環基には、縮合環式炭化水素環基、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)環基、パーヒドロアントラセン環基、パーヒドロフェナントレン環基、パーヒドロアセナフテン環基、パーヒドロフルオレン環基、パーヒドロインデン環基、パーヒドロフェナレン環基などの5〜8員シクロアルカン環基が複数個縮合した縮合環基も含まれる。
好ましい架橋環式炭化水素環基として、ノルボルナン環基、アダマンタン環基、ビシクロオクタン環基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環基としてノルボナン環基、アダマンタン環基が挙げられる。
【0095】
Zで表される多環式炭化水素構造を有する連結基は置換基を有していてもよい。Zが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ケト基(アルキルカルボニル基等)、アシルオキシ基、―COOR、―CONR、―SOR、−SOR、―SONR等の置換基が挙げられる。ここでRは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Zが有していてもよい置換基としてのアルキル基、アルキルカルボニル基、アシルオキシ基、―COOR、―CONR、―SOR、−SOR、―SONRは、更に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
【0096】
Zで表される多環式炭化水素構造を有する連結基において、多環を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)は、カルボニル炭素であっても良い。また、該多環は、上記したように、環員として、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有していてもよい。上記したように、Zは、多環を構成する原子団としてのエステル結合を含有していてもよい。
【0097】
及びLで表される連結基としては、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数が組合された連結基などが挙げられ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。
は、単結合、アルキレン基、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−アルキレン基−COO−、−アルキレン基−OCO−、−アルキレン基−CONH−、−アルキレン基−NHCO−、−CO−、−O−、−SO−、−アルキレン基−O−が好ましく、単結合、アルキレン基、−アルキレン基−COO−、又は、−アルキレン基−O−がより好ましい。
は、単結合、アルキレン基、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−、−NHCO−アルキレン基−、−CO−、−O−、−SO−、−O−アルキレン基−、−O−シクロアルキレン基−が好ましく、単結合、アルキレン基、−COO−アルキレン基−、−O−アルキレン基−、又は、−O−シクロアルキレン基−がより好ましい。
【0098】
上記の記載方法において、左端の結合手“−”は、Lにおいては主鎖側のエステル結合に、LにおいてはZに接続することを意味し、右端の結合手“−”は、LにおいてはZに、Lにおいては(Ry)(Ry)(Ry)C−で表される基に接続するエステル結合に結合することを意味する。
【0099】
なお、L及びLは、Zにおける多環を構成する同一の原子に結合してもよい。
【0100】
n’は1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0101】
以下に一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例において、Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0102】
【化28】
【0103】
【化29】
【0104】
また、上記で例示された繰り返し単位とは異なる酸分解性基を有する繰り返し単位の態様として、以下に表されるような、アルコール性水酸基を生じる繰り返し単位の態様であってもよい。
下記具体例中、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。
【0105】
【化30】
【0106】
上記酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
樹脂(P)における酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、前記樹脂(P)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、5モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上65モル%以下であることが更に好ましい。
樹脂(P)が前記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一種を含有する場合、前記一般式(III)及び(IV)で表される繰り返し単位の含有量の総和が、前記樹脂(P)中の全繰り返し単位に対して50モル%以上であることが特に好ましく、55モル%以上であることが最も好ましい。前記一般式(III)及び(IV)で表される繰り返し単位の含有量の総和の上限としては、前記樹脂(P)中の全繰り返し単位に対して80モル%以下であることが好ましく、75モル%以下であることがより好ましい。
【0108】
樹脂(P)が前記一般式(III’)で表される繰り返し単位を含有する樹脂である場合、一般式(III’)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、55モル%以上であることが好ましく、60モル以上であることがより好ましい。また、一般式(III’)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、80モル%以下であることが好ましく、75モル%以下であることがより好ましい。
【0109】
樹脂(P)は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0110】
【化31】
【0111】
一般式(AII)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0112】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキル構造を有する2価の連結基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。Abは、好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される2価の連結基である。
Abは、直鎖又は分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を表す。
【0113】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造又は5〜7員環スルトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は、5〜7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1−1)〜(SL1−3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−8)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)である。
【0114】
【化32】
【0115】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7の1価のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0116】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0117】
樹脂(P)はラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有しても含有しなくてもよいが、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜20モル%の範囲であり、更に好ましくは5〜10モル%の範囲である。
以下に、樹脂(P)中のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0118】
【化33】
【0119】
【化34】
【0120】
【化35】
【0121】
また、樹脂(P)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0122】
【化36】
【0123】
一般式(A−1)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環又は多環構造を形成する原子団を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0124】
一般式(A−1)について詳細に説明する。
で表されるアルキル基は、フッ素原子等の置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
で表される置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数3〜5の分岐状アルキル基等を挙げることができる。アルキル基はヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。
nは置換基数を表す0以上の整数である。nは、例えば、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0である。
【0125】
Aにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
本発明の一形態において、Aは、単結合、アルキレン基であることが好ましい。
【0126】
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む単環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルにおいて、n=2〜4である5〜7員環が挙げられ、5員環又は6員環(n=2又は3)であることが好ましく、5員環(n=2)であることがより好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む多環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルが1又は2以上の他の環構造と共に縮合環を形成している構造や、スピロ環を形成している構造が挙げられる。縮合環又はスピロ環を形成し得る「他の環構造」としては、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、複素環であってもよい。
【0127】
【化37】
【0128】
前記一般式(A−1)で表される繰り返し単位に対応する単量体は、例えば、Tetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された、従来公知の方法により、合成することができる。
【0129】
樹脂(P)には、一般式(A−1)で表される繰り返し単位のうちの1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0130】
以下に、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のRは、一般式(A−1)におけるRと同義である。
【0131】
【化38】
【0132】
樹脂(P)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を1種で含有しても、2種以上を含有しても良い。
樹脂(P)が環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を含有する場合、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜55モル%、更に好ましくは10〜50モル%である。
【0133】
樹脂(P)は、水酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基を有する繰り返し単位は、水酸基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造が好ましい。
【0134】
【化39】
【0135】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
c〜Rcは、各々独立に、水素原子又は水酸基を表す。ただし、Rc〜Rcの内の少なくとも1つは、水酸基を表す。好ましくは、Rc〜Rcの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc〜Rcの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0136】
一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0137】
【化40】
【0138】
一般式(AIIa)〜(AIIc)に於いて、
cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0139】
c〜Rcは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、Rc〜Rcと同義である。
【0140】
樹脂(P)が水酸基を有する繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、水酸基を有する繰り返し単位を含有する場合、水酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜20モル%が好ましく、より好ましくは3〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
【0141】
水酸基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0142】
【化41】
【0143】
樹脂(P)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。酸基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。酸基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。酸基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位、更には酸基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入のいずれも好ましい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0144】
樹脂(P)は、酸基を有する繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。樹脂(P)が酸基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(P)における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
酸基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH、CHOH又はCFを表す。
【0145】
【化42】
【0146】
本発明における樹脂(P)は、更に極性基(例えば、前記酸基、水酸基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できるとともに、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(VIII)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0147】
【化43】
【0148】
一般式(VIII)中、Rは少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0149】
が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0150】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0151】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0152】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
【0153】
上記水素原子の置換基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0154】
樹脂(P)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜20モル%が好ましく、より好ましくは5〜15モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0155】
【化44】
【0156】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0157】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
これにより、本発明に係る組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0159】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0160】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0161】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物のドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更には感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0162】
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(P)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(P)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
また、本発明の組成物が、後述する樹脂(D)を含んでいる場合、樹脂(P)は、樹脂(E)との相溶性の観点から、フッ素原子及び珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0163】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0164】
本発明の組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(P)は、更に、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等の酸分解性繰り返し単位を有するが好ましい。
【0165】
ヒドロキシスチレン系の好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルによる繰り返し単位等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位がより好ましい。
【0166】
本発明における樹脂(P)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の感光性組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0167】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0168】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶或いは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0169】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0170】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0171】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0172】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0173】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶或いは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
また、組成物の調製後に樹脂が凝集することなどを抑制する為に、例えば、特開2009−037108号公報に記載のように、合成された樹脂を溶剤に溶解して溶液とし、その溶液を30℃〜90℃程度で30分〜4時間程度加熱するような工程を加えてもよい。
【0174】
本発明における樹脂(P)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜40,000、更により好ましくは3,000〜30,000、特に好ましくは3,000〜27,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、かつ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
【0175】
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、かつ、レジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0176】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、樹脂(P)の組成物全体中の配合率は、全固形分中30〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。
また、本発明において、樹脂(P)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0177】
[2]繰り返し単位(a)を有さない樹脂(A)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記繰り返し単位(a)を有さない樹脂(A)を含有してもよい。
樹脂(A)は、酸の作用により極性が増大して、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂であることが好ましく、より具体的には、上述した「酸分解性基を有する繰り返し単位(b)」を有する樹脂であることが好ましい。
【0178】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、20〜70モル%が好ましく、より好ましくは30〜65モル%である。
【0179】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位に加えて、樹脂(P)が有していてよい繰り返し単位として説明した繰り返し単位を含有してもよい。これらの繰り返し単位の樹脂(A)中の全繰り返し単位に対する含有量の好ましい範囲は、樹脂(P)で記載したものと同様である。
また、樹脂(A)の各物性値(例えば、分子量、分散度)の好ましい範囲、及び、樹脂(A)の合成方法も、樹脂(P)で説明したものと同様である。
【0180】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、樹脂(A)を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、樹脂(A)の組成物の全固形分に対する含有量は、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。
【0181】
[3]活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明における組成物は、更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。ここで、酸発生剤は、前記樹脂(P)又は樹脂(A)とは異なる(すなわち同一成分でない)ことが好ましく、樹脂(P)とは異なることがより好ましい。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であることが好ましい。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0182】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0183】
酸発生剤の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0184】
【化45】
【0185】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表す。
【0186】
としての非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
【0187】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これによりレジスト組成物の経時安定性が向上する。
【0188】
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。
【0189】
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。
【0190】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基等を挙げることができる。
【0191】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0192】
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)を挙げることができる。
【0193】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0194】
脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけるものと同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。
【0195】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0196】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が互いに連結してアルキレン基(好ましくは炭素数2〜4)を成し、イミド基及び2つのスルホニル基とともに環を形成していてもよい。これらのアルキル基及びビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が互いに連結して成すアルキレン基が有し得る置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF)、フッ素化硼素(例えば、BF)、フッ素化アンチモン等(例えば、SbF)を挙げることができる。
【0197】
の非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくは炭素数4〜8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0198】
酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により下記一般式(V)又は(VI)で表される酸を発生する化合物であることが好ましい。下記一般式(V)又は(VI)で表される酸を発生する化合物であることにより環状の有機基を有するので、解像性、及び、ラフネス性能をより優れたものにできる。
前記非求核性アニオンとしては、下記一般式(V)又は(VI)で表される有機酸を生じるアニオンとすることができる。
【0199】
【化46】
【0200】
上記一般式中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
11及びR12は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表す。
Lは、各々独立に、2価の連結基を表す。
Cyは、環状の有機基を表す。
Rfは、フッ素原子を含んだ基である。
xは、1〜20の整数を表す。
yは、0〜10の整数を表す。
zは、0〜10の整数を表す。
【0201】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。より具体的には、Xfは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、又はCHCHであることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0202】
11及びR12は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基である。このアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R11及びR12の置換基を有するアルキル基の具体例としては、例えば、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、及びCHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0203】
Lは、2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−SO−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−又は−NHCO−アルキレン基−が好ましく、−COO−、−OCO−、−CONH−、−SO−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−がより好ましい。
【0204】
Cyは、環状の有機基を表す。環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
【0205】
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0206】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
【0207】
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環又はスルトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環又はスルトン環の例としては、前述の樹脂(A)において例示したラクトン構造又はスルトンが挙げられる。
【0208】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
【0209】
xは1〜8が好ましく、中でも1〜4が好ましく、1が特に好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、中でも0〜4が好ましい。
Rfで表されるフッ素原子を含んだ基としては、例えば、少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキル基、少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基、及び少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基が挙げられる。
これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、フッ素原子により置換されていてもよく、フッ素原子を含んだ他の置換基により置換されていてもよい。Rfが少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基又は少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基である場合、フッ素原子を含んだ他の置換基としては、例えば、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基が挙げられる。
また、これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、フッ素原子を含んでいない置換基によって更に置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、先にCyについて説明したもののうち、フッ素原子を含んでいないものを挙げることができる。
Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、Xfにより表される少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基として先に説明したのと同様のものが挙げられる。Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するシクロアルキル基としては、例えば、パーフルオロシクロペンチル基、及びパーフルオロシクロヘキシル基が挙げられる。Rfにより表される少なくとも1つのフッ素原子を有するアリール基としては、例えば、パーフルオロフェニル基が挙げられる。
【0210】
また前記非求核性アニオンは、下記一般式(B−1)〜(B−3)のいずれかで表されるアニオンであることも好ましい。
まず、下記一般式(B−1)で表されるアニオンについて説明する。
【0211】
【化47】
【0212】
上記一般式(B−1)中、
b1は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基(CF)を表す。
nは1〜4の整数を表す。
nは1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
b1は単結合、エーテル結合、エステル結合(−OCO−若しくは−COO−)又はスルホン酸エステル結合(−OSO−若しくは−SO−)を表す。
b1はエステル結合(−OCO−若しくは−COO−)又はスルホン酸エステル結合(−OSO−若しくは−SO−)であることが好ましい。
b2は炭素数6以上の置換基を表す。
b2についての炭素数6以上の置換基としては、嵩高い基であることが好ましく、炭素数6以上の、アルキル基、脂環基、アリール基、及び複素環基などが挙げられる。
b2についての炭素数6以上のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数6〜20の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、直鎖又は分岐ヘキシル基、直鎖又は分岐ヘプチル基、直鎖又は分岐オクチル基などが挙げられる。嵩高さに観点から分岐アルキル基であることが好ましい。
【0213】
b2についての炭素数6以上の脂環基としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0214】
b2についての炭素数6以上のアリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
【0215】
b2についての炭素数6以上の複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、及びジベンゾチオフェン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、ベンゾフラン環又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環の例としては、前述の樹脂(P)において例示したラクトン構造が挙げられる。
【0216】
上記Rb2についての炭素数6以上の置換基は、更に置換基を有していてもよい。この更なる置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、上述の脂環基、アリール基、又は複素環基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
【0217】
次に、下記一般式(B−2)で表されるアニオンについて説明する。
【0218】
【化48】
【0219】
上記一般式(B−2)中、
b1はラクトン構造を有する基、スルトン構造を有する基又は環状カーボネート構造を有する基を表す。
b1についてのラクトン構造及びスルトン構造としては、例えば、先に樹脂(P)の項で説明したラクトン構造及びスルトン構造を有する繰り返し単位におけるラクトン構造及びスルトン構造と同様のものが挙げられる。具体的には、上記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造又は上記一般式(SL1−1)〜(SL1−3)のいずれかで表されるスルトン構造が挙げられる。
前記ラクトン構造又はスルトン構造が直接、上記一般式(B−2)中のエステル基の酸素原子と結合していてもよいが、前記ラクトン構造又はスルトン構造がアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)を介してエステル基の酸素原子と結合していてもよい。その場合、前記ラクトン構造又はスルトン構造を有する基としては、前記ラクトン構造又はスルトン構造を置換基として有するアルキル基ということができる。
b1についての環状カーボネート構造としては5〜7員環の環状カーボネート構造であることが好ましく、1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オンなどが挙げられる。
前記環状カーボネート構造が直接、上記一般式(B−2)中のエステル基の酸素原子と結合していてもよいが、前記環状カーボネート構造がアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)を介してエステル基の酸素原子と結合していてもよい。その場合、前記環状カーボネート構造を有する基としては、環状カーボネート構造を置換基として有するアルキル基ということができる。
【0220】
次に、下記一般式(B−3)で表されるアニオンについて説明する。
【0221】
【化49】
【0222】
上記一般式(B−3)中、
b2は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。
b2はエーテル結合又はエステル結合(−OCO−若しくは−COO−)を表す。
b2は脂環基又は芳香環を含有する基を表す。
b2についての脂環基としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が好ましい。
b2についての芳香環を含有する基における芳香環としては、炭素数6〜20の芳香環であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環などが挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。前記芳香環としては、少なくとも1つのフッ素原子により置換されていてもよく、少なくとも1つのフッ素原子で置換された芳香環としては、パーフルオロフェニル基などが挙げられる。
前記芳香環がXb2と直接結合していてもよいが、前記芳香環がアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)を介してXb2と結合していてもよい。その場合、前記芳香環を含有する基としては、前記芳香環を置換基として有するアルキル基ということができる。
【0223】
201、R202及びR203により表される有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)における対応する基を挙げることができる。
【0224】
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくとも一つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0225】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)及び(ZI−4)を挙げることができる。
【0226】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0227】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
【0228】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0229】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0230】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0231】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0232】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、下記一般式(ZI−2)で表される化合物である。すなわち、化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0233】
【化50】
【0234】
一般式(ZI−2)中、
201’〜R203’は、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表す。
【0235】
201’〜R203’としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
【0236】
201’〜R203’は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0237】
201’〜R203’のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2−オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0238】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0239】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
【0240】
201’〜R203’は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0241】
次に、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0242】
【化51】
【0243】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0244】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3〜10員環を挙げることができ、4〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
5cとR6c、及び、R5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基等を挙げることができる。
【0245】
Zcは、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0246】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜10個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0247】
1c〜R5cとしてのアリール基は、好ましくは炭素数5〜15であり、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0248】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜10の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0249】
1c〜R5cとしてのアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基の具体例は、前記R1c〜R5cとしてのアルコキシ基の具体例と同様である。
【0250】
1c〜R5cとしてのアルキルカルボニルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基の具体例は、前記R1c〜R5cとしてのアルキル基の具体例と同様である。
【0251】
1c〜R5cとしてのシクロアルキルカルボニルオキシ基におけるシクロアルキル基の具体例は、前記R1c〜R5cとしてのシクロアルキル基の具体例と同様である。
【0252】
1c〜R5cとしてのアリールオキシ基及びアリールチオ基におけるアリール基の具体例は、前記R1c〜R5cとしてのアリール基の具体例と同様である。
好ましくは、R1c〜R5cの内のいずれかが直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐若しくは環状アルコキシ基であり、更に好ましくは、R1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0253】
1c〜R5cのいずれか2つ以上が互いに結合して形成してもよい環構造としては、好ましくは5員又は6員の環、特に好ましくは6員の環(例えばフェニル環)が挙げられる。
【0254】
5c及びR6cが互いに結合して形成してもよい環構造としては、R5c及びR6cが互いに結合して単結合又はアルキレン基(メチレン基、エチレン基等)を構成することにより、一般式(I)中のカルボニル炭素原子及び炭素原子と共に形成する4員以上の環(特に好ましくは5〜6員の環)が挙げられる。
【0255】
6c及びR7cとしてのアリール基としては、好ましくは炭素数5〜15であり、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
6c及びR7cの態様としては、その両方がアルキル基である場合が好ましい。特に、R6c及びR7cが各々炭素数1〜4の直鎖又は分岐状アルキル基である場合が好ましく、とりわけ、両方がメチル基である場合が好ましい。
【0256】
また、R6cとR7cとが結合して環を形成する場合に、R6cとR7cとが結合して形成する基としては、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などを挙げることができる。また、R6cとR7cとが結合して形成する環は、環内に酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0257】
及びRとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、R1c〜R7cにおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができる。
【0258】
及びRとしての2−オキソアルキル基及び2−オキソシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基及びシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0259】
及びRとしてのアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cおけると同様のアルコキシ基を挙げることができ、アルキル基については、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)を挙げることができる。
【0260】
及びRとしてのアリル基としては、特に制限は無いが、無置換のアリル基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基)で置換されたアリル基であることが好ましい。
【0261】
及びRとしてのビニル基としては特に制限は無いが、無置換のビニル基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基)で置換されたビニル基であることが好ましい。
【0262】
5c及びRが互いに結合して形成してもよい環構造としては、R5c及びRが互いに結合して単結合又はアルキレン基(メチレン基、エチレン基等)を構成することにより、一般式(I)中の硫黄原子とカルボニル炭素原子と共に形成する5員以上の環(特に好ましくは5員の環)が挙げられる。
【0263】
及びRが互いに結合して形成してもよい環構造としては、2価のR及びR(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)が一般式(ZI−3)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられる。
【0264】
及びRは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基又はシクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基又はシクロアルキル基である。
【0265】
1c〜R7c、R及びRは、更に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アリールカルボニル基、アルコキシアルキル基、アリールオシキアルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0266】
上記一般式(ZI−3)中、R1c、R2c、R4c及びR5cが、各々独立に、水素原子を表し、R3cが水素原子以外の基、すなわち、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表すことがより好ましい。
【0267】
本発明における一般式(ZI−2)又は(ZI−3)で表される化合物のカチオンとしては、以下の具体例が挙げられる。
【0268】
【化52】
【0269】
【化53】
【0270】
【化54】
【0271】
【化55】
【0272】
【化56】
【0273】
【化57】
【0274】
次に、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、下記一般式(ZI−4)で表される。
【0275】
【化58】
【0276】
一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。これらの基は置換基を有してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0277】
一般式(ZI−4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0278】
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基)が挙げられ、特にシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが好ましい。
【0279】
13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
【0280】
13及びR14のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数2〜11のものが好ましく、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が好ましい。
【0281】
13及びR14のシクロアルキル基を有する基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基)が挙げられ、例えば、単環若しくは多環のシクロアルキルオキシ基、及び、単環若しくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられる。これら基は、置換基を更に有していてもよい。
【0282】
13及びR14の単環若しくは多環のシクロアルキルオキシ基としては、総炭素数が7以上であることが好ましく、総炭素数が7以上15以下であることがより好ましく、また、単環のシクロアルキル基を有することが好ましい。総炭素数7以上の単環のシクロアルキルオキシ基とは、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロドデカニルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基に、任意にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、iso−アミル基等のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシルオキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する単環のシクロアルキルオキシ基であって、該シクロアルキル基上の任意の置換基と合わせた総炭素数が7以上のものを表す。
また、総炭素数が7以上の多環のシクロアルキルオキシ基としては、ノルボルニルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基、テトラシクロデカニルオキシ基、アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
【0283】
13及びR14の単環若しくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基としては、総炭素数が7以上であることが好ましく、総炭素数が7以上15以下であることがより好ましく、また、単環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基であることが好ましい。総炭素数7以上の、単環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、iso−アミルオキシ等のアルコキシ基に上述の置換基を有していてもよい単環シクロアルキル基が置換したものであり、置換基も含めた総炭素数が7以上のものを表す。たとえば、シクロヘキシルメトキシ基、シクロペンチルエトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基等が挙げられ、シクロヘキシルメトキシ基が好ましい。
【0284】
また、総炭素数が7以上の多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基としては、ノルボルニルメトキシ基、ノルボルニルエトキシ基、トリシクロデカニルメトキシ基、トリシクロデカニルエトキシ基、テトラシクロデカニルメトキシ基、テトラシクロデカニルエトキシ基、アダマンチルメトキシ基、アダマンチルエトキシ基等が挙げられ、ノルボルニルメトキシ基、ノルボルニルエトキシ基等が好ましい。
【0285】
14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13〜R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
【0286】
14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐状、環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が好ましい。
【0287】
上記各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0288】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシ基等を挙げることができる。
【0289】
前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシアルキル基等を挙げることができる。
【0290】
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0291】
前記アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ等の炭素原子数2〜21の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0292】
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2個のR15が一般式(ZI−4)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられ、アリール基又はシクロアルキル基と縮環していてもよい。この2価のR15は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。前記環構造に対する置換基は、複数個存在しても良く、また、それらが互いに結合して環(芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又はこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環など)を形成しても良い。
一般式(ZI−4)におけるR15としては、メチル基、エチル基、ナフチル基、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましい。
【0293】
13及びR14が有し得る置換基としては、水酸基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
【0294】
lとしては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
rとしては、0〜2が好ましい。
【0295】
本発明における一般式(ZI−4)で表される化合物のカチオンとしては以下の具体例が挙げられる。
【0296】
【化59】
【0297】
【化60】
【0298】
次に、一般式(ZII)、(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R204〜R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
204〜R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0299】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0300】
【化61】
【0301】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI−1)におけるR201、R202及びR203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI−2)におけるR201、R202及びR203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0302】
酸発生剤の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物である。
また、酸発生剤として、スルホン酸基又はイミド基を1つ有する酸を発生する化合物が好ましく、更に好ましくは1価のパーフルオロアルカンスルホン酸を発生する化合物、又は1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含有する基で置換された芳香族スルホン酸を発生する化合物、又は1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含有する基で置換されたイミド酸を発生する化合物であり、更により好ましくは、フッ化置換アルカンスルホン酸、フッ素置換ベンゼンスルホン酸、フッ素置換イミド酸又はフッ素置換メチド酸のスルホニウム塩である。使用可能な酸発生剤は、発生した酸のpKaが−1以下のフッ化置換アルカンスルホン酸、フッ化置換ベンゼンスルホン酸、フッ化置換イミド酸であることが特に好ましく、感度が向上する。
【0303】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸発生剤として、上記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を含有することが好ましく、これにより、ラフネス性能、露光ラチチュード、及び、局所的なパターン寸法の均一性を、より優れたものにできる。
【0304】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0305】
【化62】
【0306】
【化63】
【0307】
【化64】
【0308】
【化65】
【0309】
【化66】
【0310】
【化67】
【0311】
また、化合物(B)の内、上記一般式(B−1)〜(B−3)のいずれかで表されるアニオンを有するものとして、特に好ましい例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0312】
【化68】
【0313】
【化69】
【0314】
酸発生剤は、公知の方法で合成することができ、例えば、特開2007−161707号公報、特開2010−100595号公報の[0200]〜[0210]、国際公開第2011/093280号の[0051]〜[0058]、国際公開第2008/153110号の[0382]〜[0385]、特開2007−161707号公報等に記載の方法に準じて合成することができる。
酸発生剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(上記一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される場合は除く。)の組成物中の含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(I)の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。
また、酸発生剤が上記一般式(ZI−3)又は(ZI−4)により表される場合には、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、5〜35質量%が好ましく、8〜30質量%がより好ましく、9〜30質量%が更に好ましく、9〜25質量%が特に好ましい。
【0315】
[4]疎水性樹脂(D)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、特に液浸露光に適用する際、疎水性樹脂(以下、「疎水性樹脂(D)」又は単に「樹脂(D)」ともいう)を含有してもよい。ここで、樹脂(D)は、通常、樹脂(P)及び樹脂(A)とは異なる樹脂である。
これにより、膜表層に疎水性樹脂(D)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角を向上させ、液浸液追随性を向上させることができる。
疎水性樹脂(D)は前述のように界面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0316】
疎水性樹脂(D)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することが更に好ましい。
【0317】
疎水性樹脂(D)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂(D)に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0318】
疎水性樹脂(D)がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0319】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、及びフッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0320】
【化70】
【0321】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖若しくは分岐)を表す。但し、R57〜R61少なくとも1つ、R62〜R64の少なくとも1つ、及びR65〜R68の少なくとも1つは、それぞれ独立に、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0322】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CFOH、−C(COH、−C(CF)(CH)OH、−CH(CF)OH等が挙げられ、−C(CFOHが好ましい。
【0323】
フッ素原子を含む部分構造は、主鎖に直接結合しても良く、更に、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレイレン結合よりなる群から選択される基、或いはこれらの2つ以上を組み合わせた基を介して主鎖に結合しても良い。
【0324】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。Xは、−F又は−CFを表す。
【0325】
【化71】
【0326】
【化72】
【0327】
疎水性樹脂(D)は、珪素原子を含有してもよい。珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、又は環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0328】
【化73】
【0329】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される単独或いは2つ以上の組み合わせ(好ましくは総炭素数12以下)が挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
【0330】
以下、一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。
【0331】
【化74】
【0332】
疎水性樹脂(D)はスルホン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位を含有することができる。以下、スルホン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0333】
【化75】
【0334】
上記各式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。Mはスルホン酸イオンを表し、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート、メジチレンスルホネート、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、ナフチルスルホネート、ピレンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のスルホン酸イオンであることが好ましい。
【0335】
【化76】
【0336】
【化77】
【0337】
上記各式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基又は炭素数6〜10のアリール基を表す。Rについての炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、シアノ基、アミノ基、2重結合、又はハロゲン原子を有していてもよい。2〜4個のR同士が結合して炭素数3〜20の環を形成してもよい。
【0338】
疎水性樹脂(D)はカルボン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位を含有することができる。以下、カルボン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0339】
【化78】
【0340】
上記各式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
COOで表されるカルボン酸アニオンとして具体的には、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、イソ酪酸アニオン、吉草酸アニオン、イソ吉草酸アニオン、ピバル酸アニオン、ヘキサン酸アニオン、オクタン酸アニオン、シクロヘキサンカルボン酸アニオン、シクロヘキシル酢酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、パルミチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、フェニル酢酸アニオン、ジフェニル酢酸アニオン、フェノキシ酢酸アニオン、マンデル酸アニオン、ベンゾイルギ酸アニオン、ケイヒ酸アニオン、ジヒドロケイヒ酸アニオン、安息香酸アニオン、メチル安息香酸アニオン、サリチル酸アニオン、ナフタレンカルボン酸アニオン、アントラセンカルボン酸アニオン、アントラキノンカルボン酸アニオン、ヒドロキシ酢酸アニオン、ピバリン酸アニオン、乳酸アニオン、メトキシ酢酸アニオン、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸アニオン、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸アニオン、ジフェノール酸アニオン、モノクロロ酢酸アニオン、ジクロロ酢酸アニオン、トリクロロ酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、ペンタフルオロプロピオン酸アニオン、ヘプタフルオロ酪酸アニオンなどが例示され、またコハク酸、酒石酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸などのジカルボン酸のモノアニオンなどが挙げられる。
【0341】
【化79】
【0342】
【化80】
【0343】
上記各式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基又は炭素数6〜10のアリール基を表す。Rについての炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、シアノ基、アミノ基、2重結合、又はハロゲン原子を有していてもよい。2〜4個のR同士が結合して炭素数3〜20の環を形成してもよい。
【0344】
疎水性樹脂(D)はアミン構造を有する繰り返し単位を含有することができる。
以下、アミン構造を有する繰り返し単位を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0345】
【化81】
【0346】
上記各式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
本発明において、疎水性樹脂(D)がスルホン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位、カルボン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位又はアミン構造を有する繰り返し単位を含有するとき、スルホン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位、カルボン酸アミン塩構造を有する繰り返し単位又はアミン構造を有する繰り返し単位の疎水性樹脂(D)中の含有量は、それぞれ、疎水性樹脂(D)の全繰り返し単位に対して、0〜30モル%であることが好ましく、0〜20モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。
【0347】
また、上記したように、疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH部分構造を含むことも好ましい。
ここで、前記樹脂(D)中の側鎖部分が有するCH部分構造(以下、単に「側鎖CH部分構造」ともいう)には、エチル基、プロピル基等が有するCH部分構造を包含するものである。
一方、樹脂(D)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により樹脂(D)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に包含されないものとする。
【0348】
より具体的には、樹脂(D)が、例えば、下記一般式(M)で表される繰り返し単位などの、炭素−炭素二重結合を有する重合性部位を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含む場合であって、R11〜R14がCH「そのもの」である場合、そのCHは、本発明における側鎖部分が有するCH部分構造には包含されない。
一方、C-C主鎖から何らかの原子を介して存在するCH部分構造は、本発明におけるCH部分構造に該当するものとする。例えば、R11がエチル基(CH2CH)である場合、本発明におけるCH部分構造を「1つ」有するものとする。
【0349】
【化82】
【0350】
上記一般式(M)中、
11〜R14は、各々独立に、側鎖部分を表す。
側鎖部分のR11〜R14としては、水素原子、1価の有機基などが挙げられる。
11〜R14についての1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0351】
疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。
【0352】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0353】
【化83】
【0354】
上記一般式(II)中、Xb1は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Rは1つ以上のCH部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表す。ここで、酸に対して安定な有機基は、より具体的には、前記樹脂(P)において説明した“酸の作用により分解して極性基を生じる基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0355】
b1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
b1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0356】
としては、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基が挙げられる。上記のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基は、更に、置換基としてアルキル基を有していても良い。
は、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基が好ましい。
としての1つ以上のCH部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH部分構造を2個以上10個以下有することが好ましく、2個以上8個以下有することがより好ましい。
【0357】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。好ましいアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基等が挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基である。
【0358】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、ノルボルニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルケニル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルケニル基が好ましく、分岐のアルケニル基がより好ましい。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0359】
に於ける、2つ以上のCH部分構造を有する炭化水素基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−tブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジtert−ブチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−tブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基である。
【0360】
一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0361】
【化84】
【0362】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0363】
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0364】
【化85】
【0365】
上記一般式(III)中、Xb2は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Rは1つ以上のCH部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。
【0366】
b2のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子である事が好ましい。
b2は、水素原子であることが好ましい。
【0367】
は、酸に対して安定な有機基であるため、より具体的には、前記樹脂(P)において説明した“酸の作用により分解して極性基を生じる基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0368】
としては、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基が挙げられる。
としての1つ以上のCH部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH部分構造を1個以上10個以下有することが好ましく、1個以上8個以下有することがより好ましく、1個以上4個以下有することが更に好ましい。
【0369】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。好ましいアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基等が挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基である。
【0370】
に於ける、2つ以上のCH部分構造を有するアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、などが挙げられる。より好ましくは、炭素数5〜20であることがより好ましく、イソプロピル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基である。
【0371】
nは1から5の整数を表し、1〜3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
【0372】
一般式(III)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0373】
【化86】
【0374】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0375】
樹脂(D)が、側鎖部分にCH部分構造を含む場合であり、更に、特にフッ素原子及び珪素原子を有さない場合、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)の含有量は、樹脂(D)の全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。前記含有量は、樹脂(D)の全繰り返し単位に対して、通常、100モル%以下である。
【0376】
樹脂(D)が、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を、樹脂(D)の全繰り返し単位に対し、90モル%以上で含有することにより、樹脂(D)の表面自由エネルギーが増加する。その結果として、樹脂(D)がレジスト膜の表面に偏在しにくくなり、水に対するレジスト膜の静的/動的接触角を確実に向上させて、液浸液追随性を向上させることができる。
【0377】
また、疎水性樹脂(D)は、(i)フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合においても、(ii)側鎖部分にCH部分構造を含む場合においても、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)酸基、
(y)ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基、
(z)酸の作用により分解する基
【0378】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましい酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0379】
酸基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に、直接、酸基が結合している繰り返し単位、或いは、連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、更には酸基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。酸基(x)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していても良い。
酸基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(D)中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは3〜35モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0380】
酸基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、Rxは水素原子、CH、CF、又は、CHOHを表す。
【0381】
【化87】
【0382】
【化88】
【0383】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基(y)としては、ラクトン構造を有する基が特に好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位は、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接この基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、この基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、この基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
【0384】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に酸分解性樹脂(A)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0385】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(D)中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、3〜98モル%であることがより好ましく、5〜95モル%であることが更に好ましい。
【0386】
疎水性樹脂(D)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していても良い。疎水性樹脂(D)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(D)中の全繰り返し単位に対し、1〜80モル%が好ましく、より好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。
【0387】
疎水性樹脂(D)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0388】
【化89】
【0389】
一般式(III)に於いて、
c31は、水素原子、アルキル基(フッ素原子等で置換されていても良い)、シアノ基又は−CH−O−Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子を含む基で置換されていても良い。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0390】
一般式(III)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
c3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、エーテル結合、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
一般式(III)により表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0391】
疎水性樹脂(D)は、更に、下記一般式(CII−AB)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
【0392】
【化90】
【0393】
式(CII−AB)中、
c11’及びRc12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc’は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
一般式(CII−AB)により表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0394】
以下に一般式(III)、(CII−AB)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。
【0395】
【化91】
【0396】
疎水性樹脂(D)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(D)の重量平均分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(D)に含まれる全繰り返し単位中10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(D)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(D)の重量平均分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(D)に含まれる全繰り返し単位中、10〜100モル%であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましい。
【0397】
一方、特に樹脂(D)が側鎖部分にCH部分構造を含む場合においては、樹脂(D)が、フッ素原子及び珪素原子を実質的に含有しない形態も好ましく、この場合、具体的には、フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の含有量が、樹脂(D)中の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが更に好ましく、理想的には0モル%、すなわち、フッ素原子及び珪素原子を含有しない。また、樹脂(D)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。より具体的には、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位が、樹脂(D)の全繰り返し単位中95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、理想的には100モル%である。
【0398】
疎水性樹脂(D)のGPC法による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
また、疎水性樹脂(D)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂(D)の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0399】
疎水性樹脂(D)は、樹脂(P)及び樹脂(A)と同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%、0.05〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲である。
【0400】
疎水性樹脂(D)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒、重合開始剤、反応条件(温度、濃度等)、及び、反応後の精製方法は、樹脂(A)で説明した内容と同様であるが、疎水性樹脂(D)の合成においては、反応の濃度が30〜50質量%であることが好ましい。
【0401】
以下に疎水性樹脂(D)の具体例を示す。また、下記表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0402】
【化92】
【0403】
【化93】
【0404】
【化94】
【0405】
【化95】
【0406】
【化96】
【0407】
【表1】
【0408】
【表2】
【0409】
【表3】

【0410】
【化97】
【0411】
【化98】
【0412】
【化99】
【0413】
【化100】
【0414】
【表4】
【0415】
【表5】
【0416】
[5−1]活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(N)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(以下、「化合物(N)」ともいう)を含有していてもよい。
【0417】
化合物(N)は、塩基性官能基又はアンモニウム基と、活性光線又は放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する化合物(N−1)であることが好ましい。すなわち、化合物(N)は、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物、又は、アンモニウム基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有するアンモニウム塩化合物であることが好ましい。
化合物(N)又は(N−1)が、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する、塩基性が低下した化合物として、下記一般式(PA−I)、(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物を挙げることができ、LWR、局所的なパターン寸法の均一性及びDOFに関して優れた効果を高次元で両立できるという観点から、特に、一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物が好ましい。
まず、一般式(PA−I)で表される化合物について説明する。
【0418】
Q−A−(X)−B−R (PA−I)
【0419】
一般式(PA−I)中、
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、−SOH、又は−COHを表す。Qは、活性光線又は放射線の照射により発生される酸性官能基に相当する。
Xは、−SO−又は−CO−を表す。
nは、0又は1を表す。
Bは、単結合、酸素原子又は−N(Rx)−を表す。
Rxは、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rは、塩基性官能基を有する1価の有機基又はアンモニウム基を有する1価の有機基を表す。
【0420】
における2価の連結基としては、好ましくは炭素数2〜12の2価の連結基であり、例えば、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。より好ましくは少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキレン基であり、好ましい炭素数は2〜6、より好ましくは炭素数2〜4である。アルキレン鎖中に酸素原子、硫黄原子などの連結基を有していてもよい。アルキレン基は、特に水素原子の数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が好ましく、Q部位と結合した炭素原子がフッ素原子を有することがより好ましい。更にはパーフルオロアルキレン基が好ましく、パーフロロエチレン基、パーフロロプロピレン基、パーフロロブチレン基がより好ましい。
【0421】
Rxにおける1価の有機基としては、好ましくは炭素数4〜30であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。
Rxにおけるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
なお、置換基を有するアルキル基として、特に直鎖又は分岐アルキル基にシクロアルキル基が置換した基(例えば、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、カンファー残基など)を挙げることができる。
Rxにおけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子を有していてもよい。
Rxにおけるアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基である。
Rxにおけるアラルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
Rxにおけるアルケニル基としては、置換基を有していてもよく、例えば、Rxとして挙げたアルキル基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。
【0422】
塩基性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、一〜三級アミン、含窒素複素環(ピリジン、イミダゾール、ピラジンなど)の構造が挙げられる。
アンモニウム基の好ましい部分構造として、例えば、一〜三級アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラジニウム構造などを挙げることが出来る。
なお、塩基性官能基としては、窒素原子を有する官能基が好ましく、1〜3級アミノ基を有する構造、又は含窒素複素環構造がより好ましい。これら構造においては、構造中に含まれる窒素原子に隣接する原子の全てが、炭素原子又は水素原子であることが、塩基性向上の観点から好ましい。また、塩基性向上の観点では、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、ハロゲン原子など)が直結していないことが好ましい。
このような構造を含む一価の有機基(基R)における一価の有機基としては、好ましい炭素数は4〜30であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができ、各基は置換基を有していても良い。
Rにおける塩基性官能基又はアンモニウム基を含むアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基に於けるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基は、それぞれ、Rxとして挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基と同様のものである。
【0423】
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、アミノアシル基(好ましくは炭素数2〜20)などが挙げられる。アリール基、シクロアルキル基などにおける環状構造については、置換基としては更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)を挙げることができる。アミノアシル基については、置換基として更に1又は2のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)を挙げることができる。
【0424】
Bが−N(Rx)−の時、RとRxが結合して環を形成していることが好ましい。環構造を形成することによって、安定性が向上し、これを用いた組成物の保存安定性が向上する。環を形成する炭素数は4〜20が好ましく、単環式でも多環式でもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでいてもよい。
単環式構造としては、窒素原子を含む4〜8員環等を挙げることができる。多環式構造としては、2又は3以上の単環式構造の組み合わせから成る構造を挙げることができる。単環式構造、多環式構造は、置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10)、アシル基(好ましくは炭素数2〜15)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜15)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アミノアシル基(好ましくは炭素数2〜20)などが好ましい。アリール基、シクロアルキル基などにおける環状構造については、置換基としては更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。アミノアシル基については、置換基として1又は2のアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0425】
一般式(PA−I)で表される化合物の内、Q部位がスルホン酸である化合物は、一般的なスルホンアミド化反応を用いることで合成できる。例えば、ビススルホニルハライド化合物の一方のスルホニルハライド部を選択的にアミン化合物と反応させて、スルホンアミド結合を形成した後、もう一方のスルホニルハライド部分を加水分解する方法、あるいは環状スルホン酸無水物をアミン化合物と反応させ開環させる方法により得ることができる。
【0426】
次に、一般式(PA−II)で表される化合物について説明する。
【0427】
−X−NH−X−Q (PA−II)
【0428】
一般式(PA−II)中、
及びQは、各々独立に、1価の有機基を表す。但し、Q及びQのいずれか一方は、塩基性官能基を有する。QとQは、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有してもよい。
及びXは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
なお、−NH−は、活性光線又は放射線の照射により発生された酸性官能基に相当する。
【0429】
一般式(PA−II)に於ける、Q、Qとしての1価の有機基は、好ましくは炭素数1〜40であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。
、Qにおけるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
、Qにおけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子、窒素原子を有していてもよい。
、Qにおけるアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基である。
、Qにおけるアラルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
、Qにおけるアルケニル基としては、置換基を有していてもよく、上記アルキル基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、アミノアシル基(好ましくは炭素数2〜10)などが挙げられる。アリール基、シクロアルキル基などにおける環状構造については、置換基としては更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。アミノアシル基については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。置換基を有するアルキル基として、例えば、パーフロロメチル基、パーフロロエチル基、パーフロロプロピル基、パーフロロブチル基などのパーフルオロアルキル基を挙げることができる。
【0430】
、Qの少なくともいずれかが有する塩基性官能基の好ましい部分構造としては、一般式(PA−I)のRが有する塩基性官能基として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0431】
とQとが、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有する構造としては、例えば、QとQの有機基が更にアルキレン基、オキシ基、イミノ基等で結合された構造を挙げることができる。
【0432】
一般式(PA−II)に於いて、X及びXの少なくとも片方が、−SO−であることが好ましい。
【0433】
次に、一般式(PA−III)で表される化合物を説明する。
【0434】
−X−NH−X−A−(X−B−Q (PA−III)
【0435】
一般式(PA−III)中、
及びQは、各々独立に、1価の有機基を表す。但し、Q及びQのいずれか一方は、塩基性官能基を有する。QとQは、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有していてもよい。
、X及びXは、各々独立に、−CO−又は−SO−を表す。
は、2価の連結基を表す。
Bは、単結合、酸素原子又は−N(Qx)−を表す。
Qxは、水素原子又は1価の有機基を表す。
Bが、−N(Qx)−の時、QとQxが結合して環を形成してもよい。
mは、0又は1を表す。
なお、−NH−は、活性光線又は放射線の照射により発生された酸性官能基に相当する。
【0436】
は、一般式(PA−II)に於けるQと同義である。
の有機基としては、一般式(PA−II)に於けるQ、Qの有機基と同様のものを挙げることができる。
また、QとQとが、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有する構造としては、例えば、QとQの有機基が更にアルキレン基、オキシ基、イミノ基等で結合された構造を挙げることができる。
【0437】
における2価の連結基としては、好ましくは炭素数1〜8のフッ素原子を有する2価の連結基であり、例えば炭素数1〜8のフッ素原子を有するアルキレン基、フッ素原子を有するフェニレン基等が挙げられる。より好ましくはフッ素原子を有するアルキレン基であり、好ましい炭素数は2〜6、より好ましくは炭素数2〜4である。アルキレン鎖中に酸素原子、硫黄原子などの連結基を有していてもよい。アルキレン基は、水素原子の数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が好ましく、更にはパーフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0438】
Qxにおける1価の有機基としては、好ましくは炭素数4〜30の有機基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基は上記式(PA−I)におけるRxと同様のものを挙げることができる。
【0439】
一般式(PA−III)に於いて、X、X、Xは、−SO−であることが好ましい。
【0440】
化合物(N)としては、一般式(PA−I)、(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物のスルホニウム塩化合物、一般式(PA−I)、(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物のヨードニウム塩化合物が好ましく、更に好ましくは下記一般式(PA1)又は(PA2)で表される化合物である。
【0441】
【化101】
【0442】
一般式(PA1)において、
R’201、R’202及びR’203は、各々独立に、有機基を表し、具体的には、前記(B)成分における式ZIのR201、R202及びR203と同様である。
は、一般式(PA−I)で示される化合物の−SOH部位若しくは−COOH部位の水素原子が脱離したスルホン酸アニオン若しくはカルボン酸アニオン、又は一般式(PA−II)若しくは(PA−III)で表される化合物の−NH−部位から水素原子が脱離したアニオンを表す。
【0443】
前記一般式(PA2)中、
R’204及びR’205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、具体的には、前記(B)成分における式ZIIのR204及びR205と同様である。
は、一般式(PA−I)で示される化合物の−SOH部位若しくは−COOH部位の水素原子が脱離したスルホン酸アニオン若しくはカルボン酸アニオン、又は一般式(PA−II)若しくは(PA−III)で表される化合物の−NH−部位から水素原子が脱離したアニオンを表す。
【0444】
化合物(N)は、活性光線又は放射線の照射により分解し、例えば、一般式(PA−I)、(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物を発生する。
一般式(PA−I)で表される化合物は、塩基性官能基又はアンモニウム基とともにスルホン酸基又はカルボン酸基を有することにより、化合物(N)に比べて塩基性が低下、消失、又は塩基性から酸性に変化した化合物である。
一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物は、塩基性官能基とともに有機スルホニルイミノ基若しくは有機カルボニルイミノ基を有することにより、化合物(N)に比べて塩基性が低下、消失、又は塩基性から酸性に変化した化合物である。
本発明に於いて、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下することは、活性光線又は放射線の照射により化合物(N)のプロトン(活性光線又は放射線の照射により発生された酸)に対するアクセプター性が低下することを意味する。アクセプター性が低下するとは、塩基性官能基を有する化合物とプロトンとからプロトン付加体である非共有結合錯体が生成する平衡反応が起こる時、あるいは、アンモニウム基を有する化合物の対カチオンがプロトンに交換される平衡反応が起こる時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
このように、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する化合物(N)がレジスト膜に含有されていることにより、未露光部においては、化合物(N)のアクセプター性が十分に発現されて、露光部等から拡散した酸と樹脂(A)との意図しない反応を抑制することができるとともに、露光部においては、化合物(N)のアクセプター性が低下するので、酸と樹脂(A)との意図する反応がより確実に起こり、このような作用機構の寄与もあって、線幅バラツキ(LWR)、局所的なパターン寸法の均一性、フォーカス余裕度(DOF)及びパターン形状に優れるパターンが得られるものと推測される。
なお、塩基性は、pH測定を行うことによって確認することができるし、市販のソフトウェアによって計算値を算出することも可能である。
【0445】
以下、活性光線又は放射線の照射により一般式(PA−I)で表される化合物を発生する化合物(N)の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0446】
【化102】
【0447】
【化103】
【0448】
これらの化合物の合成は、一般式(PA−I)で表される化合物又はそのリチウム、ナトリウム、カリウム塩と、ヨードニウム又はスルホニウムの水酸化物、臭化物、塩化物等から、特表平11−501909号公報又は特開2003−246786号公報に記載されている塩交換法を用いて容易に合成できる。また、特開平7−333851号公報に記載の合成方法に準ずることもできる。
【0449】
以下、活性光線又は放射線の照射により一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物を発生する化合物(N)の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0450】
【化104】
【0451】
【化105】
【0452】
これらの化合物は、一般的なスルホン酸エステル化反応あるいはスルホンアミド化反応を用いることで容易に合成できる。例えば、ビススルホニルハライド化合物の一方のスルホニルハライド部を選択的に一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される部分構造を含むアミン、アルコールなどと反応させて、スルホンアミド結合、スルホン酸エステル結合を形成した後、もう一方のスルホニルハライド部分を加水分解する方法、あるいは環状スルホン酸無水物を一般式(PA−II)で表される部分構造を含むアミン、アルコールにより開環させる方法により得ることができる。一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される部分構造を含むアミン、アルコールは、アミン、アルコールを塩基性下にて(R’OC)Oや(R’SOO等の無水物、R’OCClやR’SOCl等の酸クロリド化合物と反応させることにより合成できる(R’は、メチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基等)。特に、特開2006−330098号公報の合成例などに準ずることができる。
化合物(N)の分子量は、500〜1000であることが好ましい。
【0453】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は化合物(N)を含有してもしていなくてもよいが、含有する場合、化合物(N)の含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0454】
[5−2]塩基性化合物(N’)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、前記樹脂(A)とは異なる、塩基性化合物(N’)を含有していてもよい。
塩基性化合物(N’)としては、好ましくは、下記式(A’)〜(E’)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0455】
【化106】
【0456】
一般式(A’)と(E’)において、
RA200、RA201及びRA202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、RA201とRA202は、互いに結合して環を形成してもよい。RA203、RA204、RA205及びRA206は、同一でも異なってもよく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)を表す。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A’)と(E’)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0457】
塩基性化合物(N’)の好ましい具体例としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい具体例としては、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0458】
イミダゾール構造を有する化合物としては、イミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としては、オニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン構造を有する化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0459】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
前記フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合していることが好ましい。また、前記アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でも−CHCHO−、−CH(CH)CHO−若しくは−CHCHCHO−の構造が好ましい。
前記フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物の具体例としては、米国特許出願公開2007/0224539号明細書の[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0460】
また、塩基性化合物の1種として、酸の作用により脱離する基を有する含窒素有機化合物を用いることもできる。この化合物の例として、例えば、下記一般式(F)で表される化合物を挙げることができる。なお、下記一般式(F)で表される化合物は、酸の作用により脱離する基が脱離することによって、系中での実効的な塩基性を発現する。
【0461】
【化107】
【0462】
一般式(F)において、Rは、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
は、独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。但し、−C(R)(R)(R)において、1つ以上のRが水素原子のとき、残りのRの少なくとも1つはシクロプロピル基又は1−アルコキシアルキル基である。
少なくとも2つのRは結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、n+m=3である。
【0463】
一般式(F)において、R及びRが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記Rのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、上記官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)としては、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、これらのアルカンに由来する基を、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン、ノラダマンタン等のシクロアルカンに由来する基、これらのシクロアルカンに由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物に由来する基、これらの芳香族化合物に由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、インドール、インドリン、キノリン、パーヒドロキノリン、インダゾール、ベンズイミダゾール等の複素環化合物に由来する基、これらの複素環化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルキル基或いは芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基、直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基・シクロアルカンに由来する基をフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基等或いは前記の置換基が水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基で置換された基等が挙げられる。
【0464】
また、前記Rが相互に結合して、形成する2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20)若しくはその誘導体としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0465】
一般式(F)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0466】
【化108】
【0467】
【化109】
【0468】
上記一般式(F)で表される化合物は、市販のものを用いても、市販のアミンから、Protective Groups in Organic Synthesis 第四版等に記載の方法で合成してもよい。もっとも一般的な方法としては、例えば、特開2009−199021号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
【0469】
また、塩基性化合物(N’)としては、アミンオキシド構造を有する化合物も用いることもできる。この化合物の具体例としては、トリエチルアミンピリジン N−オキシド、トリブチルアミン N−オキシド、トリエタノールアミン N−オキシド、トリス(メトキシエチル)アミン N−オキシド、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン=オキシド、2,2’,2”−ニトリロトリエチルプロピオネート N−オキシド、N−2−(2−メトキシエトキシ)メトキシエチルモルホリン N−オキシド、その他特開2008−102383に例示されたアミンオキシド化合物が使用可能である。
【0470】
塩基性化合物(N’)の分子量は、250〜2000であることが好ましく、更に好ましくは400〜1000である。LWRのさらなる低減及び局所的なパターン寸法の均一性の観点からは、塩基性化合物の分子量は、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、600以上であることが更に好ましい。
【0471】
これらの塩基性化合物(N’)は、前記化合物(N)と併用していてもよいし、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0472】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は塩基性化合物(N’)を含有してもしていなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物(N’)の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0473】
[6]溶剤(E)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]〜[0455]に記載のものを挙げることができる。
【0474】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有しても良いモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0475】
[7]界面活性剤(F)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有してもしなくても良く、含有する場合、フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0476】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられ、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106、KH−20(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等である。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0477】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
上記に該当する界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体等を挙げることができる。
【0478】
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0479】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0480】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、10ppm以下とすることで、疎水性樹脂の表面偏在性があがり、それにより、レジスト膜表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることが出来る。
【0481】
[8]その他添加剤(G)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもしなくても良い。このようなカルボン酸オニウム塩は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0605]〜[0606]に記載のものを挙げることができる。
【0482】
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0483】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物がカルボン酸オニウム塩を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0484】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0485】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0486】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0487】
[9]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法(ネガ型パターン形成方法)は、
(ア)上記した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により膜(レジスト膜)を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程、
を少なくとも有する。
上記工程(イ)における露光が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程の後に、(エ)加熱工程を有することが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(オ)アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(イ)露光工程を、複数回有することができる。
本発明のパターン形成方法は、(オ)加熱工程を、複数回有することができる。
【0488】
レジスト膜は、上記した本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるものであり、より具体的には、基板上に形成されることが好ましい。本発明のパターン形成方法に於いて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物による膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0489】
製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70〜130℃で行うことが好ましく、80〜120℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0490】
本発明における露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザーであることがより好ましい。
【0491】
また、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。
液浸露光方法とは、解像力を高める技術として、投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たし露光する技術である。
前述したように、この「液浸の効果」はλを露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA=sinθとすると、液浸した場合、解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。ここで、k及びkはプロセスに関係する係数である。
(解像力)=k・(λ/n)/NA
(焦点深度)=±k・(λ/n)/NA
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0492】
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
【0493】
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0494】
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。
このような添加剤としては、例えば、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。
【0495】
一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0496】
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(DO)を用いてもよい。
【0497】
本発明の組成物を用いて形成した膜を、液浸媒体を介して露光する場合には、必要に応じて更に前述の疎水性樹脂(D)を添加することができる。疎水性樹脂(D)が添加されることにより、表面の後退接触角が向上する。膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
【0498】
本発明の組成物を用いて形成した膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適性、放射線、特に193nmの波長を有した放射線に対する透明性、及び液浸液難溶性が挙げられる。トップコートは、レジストと混合せず、更にレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nmにおける透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましい。
具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、及びフッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(D)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズが汚染されるため、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0499】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性であることが好ましいが、膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がないか又は小さいことが好ましい。この場合、解像力を向上させることが可能となる。露光光源がArFエキシマレーザー(波長:193nm)の場合には、液浸液として水を用いることが好ましいため、ArF液浸露光用トップコートは、水の屈折率(1.44)に近いことが好ましい。また、透明性及び屈折率の観点から、トップコートは薄膜であることが好ましい。
【0500】
トップコートは、膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。更に、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0501】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiOやSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて有機反射防止膜を膜と基板の間に形成させても良い。
【0502】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。
【0503】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0504】
有機溶剤を含有する現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程における当該現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン、フェネトール、ジブチルエーテル等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0505】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン、フェネトール、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、イソ酪酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、フェネトール、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0506】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0507】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・レジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0508】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0509】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0510】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0511】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、最も好ましくは、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0512】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0513】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0514】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0515】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0516】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0517】
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0518】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<合成例:樹脂(P−1)>
シクロヘキサノン 115.7質量部を窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記構造式Aで表されるモノマー 31.2質量部、下記構造式Bで表されるモノマー 2.8質量部、下記構造式Cで表されるモノマー 12.6質量部、下記構造式Dで表されるモノマー 11.7質量部、シクロヘキサノン 214.8質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.99質量部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチル(質量比8:2)で再沈殿、ろ過し、得られた固体を真空乾燥することで、本発明の樹脂(P−1)を52.5質量部得た。
得られた樹脂のGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=8900、分散度はMw/Mn=1.58であった。13C−NMRにより測定した組成比は45/5/30/20であった。
【0519】
【化110】
【0520】
<酸分解性樹脂>
以下、同様にして、樹脂(P−2)〜(P−17)を合成した。合成した樹脂の構造、繰り返し単位の組成比(モル比)、質量平均分子量、及び、分散度を以下に示す。
【0521】
【化111】
【0522】
【化112】
【0523】
【化113】
【0524】
【化114】
【0525】
<酸発生剤>
酸発生剤としては、以下の化合物を用いた。
【0526】
【化115】
【0527】
<活性光線又は放射線の照射により、塩基性が低下する塩基性化合物(N)、及び塩基性化合物(N’))>
活性光線又は放射線の照射により、塩基性が低下する塩基性化合物、あるいは、塩基性化合物として、以下の化合物を用いた。
【0528】
【化116】
【0529】
<疎水性樹脂(D)>
疎水性樹脂としては、先に挙げた樹脂(HR−1)〜(HR−84)から、適宜選択して用いた。
【0530】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、以下のものを用いた。
W−1: メガファックF176(DIC(株)製;フッ素系)
W−2: メガファックR08(DIC(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−4: トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5: KH−20(旭硝子(株)製)
W−6: PolyFox PF−6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
【0531】
<溶剤>
溶剤としては、以下のものを用いた。
(a群)
SL−1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート
SL−3: 2−ヘプタノン
(b群)
SL−4: 乳酸エチル
SL−5: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−6: シクロヘキサノン
(c群)
SL−7: γ−ブチロラクトン
SL−8: プロピレンカーボネート
【0532】
<現像液>
現像液としては、以下のものを用いた。
SG−1:酢酸ブチル
SG−2:メチルアミルケトン
SG−3:エチル−3−エトキシプロピオネート
SG−4:酢酸ペンチル
SG−5:酢酸イソペンチル
SG−6:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SG−7:シクロヘキサノン
<リンス液>
リンス液として、以下のものを用いた。
SR−1:4−メチル−2−ペンタノール
SR−2:1−ヘキサノール
SR−3:酢酸ブチル
SR−4:メチルアミルケトン
SR−5:エチル−3−エトキシプロピオネート
【0533】
[実施例1〜34及び比較例1〜4]
<レジスト調製>
下記表1に示す成分を同表に示す溶剤に固形分で3.8質量%溶解させ、それぞれを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。その上に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
得られたウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用い、遮光部としてホールサイズが60nmのホールを有し、且つホール間のピッチが90nmである正方配列のハーフトーンマスク(すなわち、ホール以外の部分は光透過部となっている)を介して、パターン露光を行った。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、下記表1に記載の現像液で30秒間パドルして現像し、下記表1に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスした(ただし、実施例27はリンスを行わなかった)。続いて、4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させることにより、45nmのコンタクトホールパターンを得た。
ただし、比較例1〜4については、光透過部としてホールサイズが60nmのホールを有し、且つホール間のピッチが90nmである正方配列のハーフトーンマスク(すなわち、ホール以外の部分は遮光部となっている)を介して、パターン露光を行ち、現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を、リンス液としては、純水を用いて、パターン形成を行った。
【0534】
〔露光ラチチュード(EL、%)〕
測長走査型電子顕微鏡(SEM(株)日立製作所S−9380II)によりホールサイズを観察し、ホールサイズが45nmのコンタクトホールパターンを解像する時の最適露光量を感度(Eopt)(mJ/cm)とした。求めた最適露光量(Eopt)を基準とし、次いでホールサイズが目的の値である45nmの±10%(即ち、40.5nm及び49.5nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL、%)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さく、良好である。
[EL(%)]={[(ホールサイズが40.5nmとなる露光量)−(ホールサイズが49.5nmとなる露光量)]/Eopt}×100
【0535】
〔局所的なパターン寸法の均一性(Local CDU、nm)〕
露光ラチチュード評価における最適露光量で露光された1ショット内において、1μm間隔で20箇所、各箇所で任意の25個、計500個のホールサイズを測定し、これらの標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、良好な性能であることを示す。
【0536】
これらの評価結果を下記表1に示す。
【0537】
【表6】
【0538】
表1に示す結果から明らかなように、アルカリ現像液によるポジ型の画像形成方法を用いた比較例1〜4では、所望のコンタクトホールパターンを形成することができなかった。
これに対して、本発明のレジスト組成物を使用するとともに、有機系現像液によるネガ型の画像形成方法を用いた実施例1〜34によれば、露光ラチチュード(EL)が小さく、ローカルCDUが大きいことが分かった。
特に、上記一般式(III’)で表される繰り返し単位を有する樹脂を用いた実施例11〜34は、ローカルCDUがより小さくなることが分かった。
また、酸発生剤として、上記一般式(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を用いた実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32及び34は、ローカルCDUがより小さくなることが分かった。