(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
音響機器の設置環境に関するパラメータごとに環境条件およびパラメータ値、前記音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとに聴取者条件およびパラメータ値、ならびに前記音響機器に関するパラメータごとに機器条件およびパラメータ値を、それぞれ対応付けて記憶するパラメータ記憶部と、
前記環境条件、前記聴取者条件、および前記機器条件から、パラメータごとに選択された条件を取得する選択条件取得部と、
前記選択条件取得部が取得した前記条件に対応するパラメータ値を前記パラメータ記憶部から読み込み、前記読み込んだパラメータ値を音響再生環境の音響条件に関する複数の評価関数に入力して、前記複数の評価関数それぞれに対応する音響条件値を計算する音響条件値計算部と、
前記音響条件値計算部が計算した前記音響条件値に基づいて、音響機器の設置方法ごとに音響再生環境の評価値を計算する評価値計算部と、
前記条件、前記音響条件値、および前記評価値計算部が計算した前記評価値に基づいて、前記音響機器の設置方法を外部の提示装置に提示させる提示制御部と、
を備えることを特徴とする音響再生環境提示装置。
前記提示制御部は、前記条件、前記音響条件値、および前記評価値に基づいて前記音響機器の配置図を生成し、前記配置図を前記音響機器の設置方法として前記提示装置に提示させる
ことを特徴とする請求項1または2いずれか記載の音響再生環境提示装置。
音響機器の設置環境に関するパラメータごとに環境条件およびパラメータ値、前記音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとに聴取者条件およびパラメータ値、ならびに前記音響機器に関するパラメータごとに機器条件およびパラメータ値を、それぞれ対応付けて記憶するパラメータ記憶部を備えるコンピュータを、
前記環境条件、前記聴取者条件、および前記機器条件から、パラメータごとに選択された条件を取得する選択条件取得部と、
前記選択条件取得部が取得した前記条件に対応するパラメータ値を前記パラメータ記憶部から読み込み、前記読み込んだパラメータ値を音響再生環境の音響条件に関する複数の評価関数に入力して、前記複数の評価関数それぞれに対応する音響条件値を計算する音響条件値計算部と、
前記音響条件値計算部が計算した前記音響条件値に基づいて、音響機器の設置方法ごとに音響再生環境の評価値を計算する評価値計算部と、
前記条件、前記音響条件値、および前記評価値計算部が計算した前記評価値に基づいて、前記音響機器の設置方法を外部の提示装置に提示させる提示制御部と、
として機能させるための音響再生環境提示プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[1 構成]
図1は、本発明の一実施形態である音響再生環境提示装置を適用した音響再生環境提示システムの概略の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、音響再生環境提示システム1は、音響再生環境提示装置10と、表示装置(提示装置)30とを含んで構成される。
【0013】
音響再生環境提示装置10は、音響機器の設置環境に関するパラメータごとの環境条件、音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとの聴取者条件、および音響機器に関するパラメータごとの機器条件を表示装置30に表示させる。そして、音響再生環境提示装置10は、表示装置30に表示された環境条件、聴取者条件、および機器条件から、パラメータごとに所望の条件をユーザに選択させる。音響再生環境提示装置10は、選択された条件に基づいて音響再生環境の音響条件を求め、この音響条件に基づいて、音響機器の設置方法ごとの音響再生環境の評価値を求める。そして、音響再生環境提示装置10は、所望の条件、音響条件、および評価値に基づいて、例えば、音響機器の設置方法および音響機器に関する情報を表示装置30に表示させる。
【0014】
本実施形態において、音響機器は、例えば、スピーカ、スピーカシステム、ヘッドホン等の音響出力装置、スピーカが内蔵されたテレビジョン受像機、スピーカが内蔵された表示装置、携帯端末、およびオーディオ再生装置である。
また、環境条件は、音響再生環境を構築する制約条件である。また、聴取者条件および機器条件は、音響再生環境を構築する要求条件である。
また、音響再生環境とは、音響機器、およびこの音響機器を設置する場所、ならびにその音響機器の設置方法を含む。
【0015】
図1に示すとおり、音響再生環境提示装置10は、環境・聴取者条件記憶部11と、機器条件記憶部12と、パラメータ記憶部13と、操作部14と、操作制御部15と、音響条件値計算部16と、評価値計算部17と、提示制御部18と、音響機器情報記憶部19とを備える。
【0016】
環境・聴取者条件記憶部11は、音響機器の設置環境に関するパラメータごとの一つまたは複数の環境条件を含む環境条件テーブルを記憶する。具体的に、環境・聴取者条件記憶部11は、パラメータに関係する項目ごとの一つまたは複数の環境条件を含む環境条件テーブルを記憶する。音響機器の設置環境に関するパラメータに関係する項目は、例えば、建物構造、建物種別、室形、部屋の種類、床材、壁材、天井材、および画面サイズである。
また、環境・聴取者条件記憶部11は、音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとの一つまたは複数の聴取者条件を含む聴取者条件テーブルを記憶する。具体的に、環境・聴取者条件記憶部11は、パラメータに関係する項目ごとの一つまたは複数の聴取者条件を含む聴取者条件テーブルを記憶する。音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータに関係する項目は、例えば、要求音質および部屋内の聴取場所である。環境条件テーブルおよび聴取者条件テーブルの具体例については後述する。
【0017】
機器条件記憶部12は、音響機器に関するパラメータごとの一つまたは複数の機器条件を含む機器条件テーブルを記憶する。具体的に、機器条件記憶部12は、パラメータに関係する項目ごとの一つまたは複数の機器条件を含む機器条件テーブルを記憶する。音響機器に関するパラメータに関係する項目は、例えば、希望する音響機器の種類である。機器条件テーブルの具体例については後述する。
【0018】
パラメータ記憶部13は、環境・聴取者条件記憶部11が記憶する環境条件テーブルに含まれる各環境条件に対応するパラメータ値をパラメータごとに記憶する。また、パラメータ記憶部13は、環境・聴取者条件記憶部11が記憶する聴取者条件テーブルに含まれる各聴取者条件に対応するパラメータ値をパラメータごとに記憶する。また、パラメータ記憶部13は、機器条件記憶部12が記憶する機器条件テーブルに含まれる各機器条件に対応するパラメータ値をパラメータごとに記憶する。つまり、パラメータ記憶部13は、音響機器の設置環境に関するパラメータごとに環境条件およびパラメータ値、音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとに聴取者条件およびパラメータ値、ならびに音響機器に関するパラメータごとに機器条件およびパラメータ値を、それぞれ対応付けて記憶する。
【0019】
パラメータについてのパラメータ値は、対応する条件(環境条件、聴取者条件、または機器条件)によって定まる所定の音響特性を示す値である。これらパラメータおよびパラメータ値については後述する。
【0020】
音響機器情報記憶部19は、音響機器に関する複数の情報を、当該音響機器を識別する情報(音響機器識別情報)に対応付けて記憶する。つまり、音響機器情報記憶部19は、音響機器ごとの音響機器情報を含む音響機器情報テーブルを記憶する。
【0021】
具体的に、音響機器情報は、例えば、音響機器の種類、メーカ名、型番、価格、仕様、外観画像、部屋内観グラフィックス等の音響機器に関する情報を、音響機器識別情報に対応付けて含む。音響機器の種類は、例えば、ヘッドホン、テレビジョン受像機内蔵型(テレビ一体型)、ディスクリートスピーカ等を示す情報である。価格は、定価および売価またはいずれか一方の金額情報である。仕様は、音響機器の電気的仕様、音響的仕様、および機構的仕様またはいずれかの情報である。電気的仕様は、例えば、消費電力、入出力信号方式である。音響的仕様は、例えば、実用最大出力、定格インピーダンス、定格感圧レベル、周波数特性である。機構的仕様は、例えば、質量、外形寸法、取り付け方法、色である。外観画像は、例えば、音響機器の外観を写した写真画像である。または、外観画像は、音響機器の外観を、視点を移動させながら表す映像である。部屋内観グラフィックスは、部屋の室形、種類等の組み合わせごとに、当該音響機器が設置された部屋内の様子を表すグラフィックスである。部屋内覧グラフィックスは、例えば、部屋の内観を水平面における4方位それぞれから表すグラフィックス、または、部屋の内観を三次元での全方位から表すパノラマパースである。
【0022】
環境・聴取者条件記憶部11、機器条件記憶部12、パラメータ記憶部13、および音響機器情報記憶部19は、例えば、磁気ハードディスク装置、半導体ディスク装置、半導体記憶装置により実現される。
なお、音響機器情報記憶部19を外部のサーバ装置に備え、音響再生環境提示装置10がそのサーバ装置の音響機器情報記憶部19に記憶された音響機器情報テーブルにアクセスするようにしてもよい。
【0023】
操作部14は、ユーザによる操作に応じた操作信号を生成し、この操作信号を操作制御部15に供給する操作インタフェースである。操作部14は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、表示装置30の表示画面に設けられるタッチパネルにより実現される。
【0024】
操作制御部15は、操作部14が供給する操作信号を取り込み、この操作信号から入力情報を抽出し、この入力情報を音響再生環境提示装置10の各処理部に供給する。操作制御部15は、その機能構成として、選択条件取得部151と、設置プラン指定部152とを備える。
【0025】
選択条件取得部151は、表示装置30に表示された環境・聴取者条件選択メニューおよび機器条件選択メニューにしたがって操作された操作部14が供給する操作信号を取り込む。環境・聴取者条件選択メニューは、環境条件および聴取者条件をユーザに選択させるためのメニューである。機器条件選択メニューは、機器条件をユーザに選択させるためのメニューである。選択条件取得部151は、取り込んだ操作信号から所定の条件を取得する。この条件は、環境条件、聴取者条件、および機器条件からパラメータごとに選択された条件である。選択条件取得部151は、取得した条件を音響条件値計算部16および提示制御部18に供給する。環境・聴取者条件選択メニューおよび機器条件選択メニューの詳細については後述する。
【0026】
設置プラン指定部152は、表示装置30に表示された設置プラン選択メニューにしたがって操作された操作部14が供給する操作信号を取り込む。設置プラン選択メニューは、音響機器の設置プランをユーザに選択させるためのメニューである。設置プラン指定部152は、取り込んだ操作信号から設置プランの指定情報を取得する。設置プランの指定情報は、複数の設置プランそれぞれを示す情報であり、例えば設置プランの識別情報である。設置プラン指定部152は、取得した指定情報を評価値計算部17に供給する。設置プラン選択メニューの詳細については後述する。
【0027】
音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する条件を取り込み、この条件に対応するパラメータ値をパラメータ記憶部13から読み込む。そして、音響条件値計算部16は、読み込んだパラメータ値を音響再生環境の音響条件に関する複数の評価関数に入力して、複数の評価関数それぞれに対応する音響条件値を計算する。評価関数は、音響条件をモデル化したモジュールとして音響条件値計算部16に設けられている。これらモジュールは、音響再生環境提示装置10の外部から追加、更新、削除可能である。音響条件値計算部16は、算出した音響条件値を評価値計算部17に供給する。音響条件値計算部16が実行する音響条件値の計算処理については後述する。
【0028】
評価値計算部17は、音響条件値計算部16が供給する各種の音響条件値を取り込み、これらの音響条件値に基づいて、音響機器の設置方法ごとに音響再生環境の評価値を計算する。音響再生環境の評価が高いほど、評価値は大きい。評価値計算部17の機能も、上記のモジュールと同様、音響再生環境提示装置10の外部から更新可能である。
【0029】
より具体的に、評価値計算部17は、音響条件値計算部16が供給する各種の音響条件値を取り込み、また、設置プラン指定部152が供給する設置プランの指定情報を取り込む。評価値計算部17は、取り込んだ音響条件値をキーとして音響機器情報記憶部19に記憶された音響機器情報テーブルを検索し、キーに合致(マッチ)する音響機器情報を抽出する。そして、評価値計算部17は、取り込んだ指定情報に応じて音響条件値に重み付けし、この重み付けした音響条件値と抽出した音響機器情報とに基づいて、音響機器ごとの評価値を計算する。評価値計算部17は、算出した音響機器ごとの評価値と、この評価値の計算に用いた音響条件値と、音響機器情報とを、提示制御部18に供給する。評価値計算部17が実行する評価値の計算処理については後述する。
【0030】
提示制御部18は、表示装置30の表示を制御する。提示制御部18は、その機能構成として、条件提示制御部181と、設置方法提示制御部182とを備える。
【0031】
条件提示制御部181は、環境・聴取者条件記憶部11から環境条件テーブルおよび聴取者条件テーブルの各テーブルデータを読み込む。そして、条件提示制御部181は、読み込んだ両テーブルデータに基づいて環境・聴取者条件選択メニューを生成し、この環境・聴取者条件選択メニューを表示装置30に表示させる。
また、条件提示制御部181は、機器条件記憶部12から機器条件テーブルのテーブルデータを読み込む。そして、条件提示制御部181は、読み込んだテーブルデータに基づいて機器条件選択メニューを生成し、この機器条件選択メニューを表示装置30に表示させる。
ただし、条件提示制御部181は、環境・聴取者条件選択メニューを表示装置30に表示させた後に、その環境・聴取者条件選択メニューから機器条件選択メニューに切り替える。
【0032】
設置方法提示制御部182は、あらかじめ保有する設置プラン選択メニューを表示装置30に表示させる。
また、設置方法提示制御部182は、選択条件取得部151が供給する条件、および、評価値計算部17が供給する評価値と音響条件値と音響機器情報との組み合わせ情報を取り込む。設置方法提示制御部182は、条件、評価値、音響条件値、および音響機器情報に基づいて、音響機器の設置方法と音響機器に関する情報とを含む提示情報を生成し、この提示情報を表示装置30に表示させる。
【0033】
具体的に、設置方法提示制御部182は、例えば、評価値の最大値(最大評価値)に対応する音響機器情報に含まれる部屋内観グラフィックス、音響条件値に含まれるスピーカ数、ならびに、条件に含まれる室形、部屋の種類、および希望する音響機器の種類に基づいて、評価が最も高い音響機器の配置図を生成する。この配置図は、例えば、音響機器が設置された部屋の内観を表す設置環境画像、および音響機器が設置された部屋の平面図(天井視)またはいずれか一方である。設置方法提示制御部182は、その配置図と音響機器情報に含まれる音響機器に関する情報とを、提示情報として表示装置30に表示させる。音響機器に関する情報は、例えば、仕様、価格、型番、外観画像である。
【0034】
表示装置30は、音響再生環境提示装置10の提示制御部18が供給する情報を取り込み、この情報を表示する。具体的に、表示装置30は、条件提示制御部181が供給する環境・聴取者条件選択メニューを取り込み、この環境・聴取者条件選択メニューを表示する。また、表示装置30は、条件提示制御部181が供給する機器条件選択メニューを取り込み、この機器条件選択メニューを表示する。また、表示装置30は、設置方法提示制御部182が供給する設置プラン選択メニューを取り込み、この設置プラン選択メニューを表示する。また、表示装置30は、設置方法提示制御部182が供給する提示情報を取り込み、この提示情報を表示する。表示装置30は、例えば、液晶表示装置等のディスプレイ装置により実現される。
【0035】
なお、表示装置30を音響再生環境提示装置10に含めてもよい。
【0036】
[2 データ構成]
図2は、環境・聴取者条件記憶部11が記憶する環境条件テーブルのデータ構成を示す図である。同図に示すように、環境条件テーブルは、音響機器の設置環境に関するパラメータごとの一つまたは複数の環境条件(同図は複数の例である)を含む。すなわち、環境条件テーブルは、項目“建物構造”に、建物の構造を示す“鉄筋コンクリート造”、“鉄骨鉄筋コンクリート造”、“鉄骨造”、および“木造”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“建物種別”に、建物の種類を示す“一戸建て”、“マンション”、および“アパート”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“室形”に、部屋の上側(天井側)から見た場合の部屋の平面形状を表す“正方形”、“長方形”、“L字形”、“コの字形”、“ロの字形”および“吹抜け筒状形”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“部屋の種類”に、部屋の種類または用途を示す“ホームシアタ”、“リビングルーム”、“個人部屋(車両を含む)”、および“非固定”を環境条件として対応付けて含む。非固定は、聴取する場所を限定しないことを示す。
【0037】
また、環境条件テーブルは、項目“床材”に、部屋の床材の種類を示す“フローリング”、“畳”、“絨毯”、“タイル”、および“コンクリート”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“壁材”に、部屋の壁材の種類を示す“石膏ボード”、“コンクリート”、“穴空板”、“木材”、および“レンガ”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“天井材”に、部屋の天井材の種類を示す“石膏ボード”、“コンクリート”、“岩綿吸音板”、および“木材”を環境条件として対応付けて含む。また、環境条件テーブルは、項目“画面サイズ”に、コンテンツを表示させる表示装置の画面サイズの分類を示す“携帯端末(6)”、“小画面(42)”、“中画面(75)”、および“大画面(130〜150)”を環境条件として対応付けて含む。ただし、画面サイズに対応する環境条件のカッコ内の数字は、表示装置の画面サイズ(単位は、inch(インチ))である。音響再生環境提示装置10は、環境・聴取者条件記憶部11に記憶される環境条件テーブルの全てまたは一部を変更、削除可能であり、また、新たな条件を追加可能である。
【0038】
図3は、環境・聴取者条件記憶部11が記憶する聴取者条件テーブルのデータ構成を示す図である。同図に示すように、聴取者条件テーブルは、音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとの一つまたは複数の聴取者条件(同図は複数の例である)を含む。すなわち、聴取者条件テーブルは、項目“要求音質”に、聴取者が求める音質や臨場感を表す“全体の包み込まれ感重視”、“画面上の定位重視”、および“忠実・正確な三次元音像定位・空間印象”を聴取者条件として対応付けて含む。また、聴取者条件テーブルは、項目“聴取場所”に、聴取者所望の部屋内の聴取場所を示す“部屋の前方”、“部屋の後方”、“部屋の中央”、“部屋の右方”、および“部屋の左方”を聴取者条件として対応付けて含む。ただし、部屋の前方は、例えば、任意に決定される方向である。また、部屋の右方は、例えば、部屋の中で前方を向いた場合の右方向である。音響再生環境提示装置10は、環境・聴取者条件記憶部11に記憶される聴取者条件テーブルの全てまたは一部を変更、削除可能であり、また、新たな条件を追加可能である。
【0039】
図4は、機器条件記憶部12が記憶する機器条件テーブルのデータ構成を示す図である。同図に示すように、機器条件テーブルは、音響機器に関するパラメータごとの一つまたは複数の機器条件(同図は、一つのパラメータおよび複数の機器条件の例である)を含む。すなわち、機器条件テーブルは、項目“希望する音響機器の種類”に、音響機器の種類を表す“なし”、“ヘッドホン”、“前方スピーカ(テレビ一体型)”、および“ディスクリートスピーカ”を機器条件として含む。ただし、“なし”は、聴取者が音響機器の種類を指定しないことを示す。
【0040】
図5は、パラメータ記憶部13が記憶する、設置環境に関するパラメータごとの、環境条件に対応するパラメータ値を示す図である。同図において、環境条件“鉄筋コンクリート造”、“鉄骨鉄筋コンクリート造”、“鉄骨造”、および“木造”それぞれに対応するパラメータ値“p
1”、“p
2”、“p
3”、および“p
4”は、パラメータ“遮音性能”を示す遮音性能値である。つまり、建物構造によって遮音性能が決まる。
また、環境条件“一戸建て”、“マンション”、および“アパート”それぞれに対応するパラメータ値“b
1”、“b
2”、および“b
3”は、パラメータ“建物種別”を示す建物種別値である。つまり、建物種別によって建物種別値が決まる。
【0041】
また、環境条件“フローリング”、“畳”、“絨毯”、“タイル”、および“コンクリート”それぞれに対応するパラメータ値“f
1”、“f
2”、“f
3”、“f
4”、および“f
5”は、パラメータ“床材の吸音率”を示す床材の吸音率値である。つまり、床材によって床材の吸音率が決まる。
また、環境条件“石膏ボード”、“コンクリート”、“穴空板”、“木材”、および“レンガ”それぞれに対応するパラメータ値“w
1”、“w
2”、“w
3”、“w
4”、および“w
5”は、パラメータ“壁材の吸音率”を示す壁材の吸音率値である。つまり、壁材によって壁材の吸音率が決まる。
また、環境条件“石膏ボード”、“コンクリート”、“岩綿吸音板”、および“木材”それぞれに対応するパラメータ値“c
1”、“c
2”、“c
3”、および“c
4”は、パラメータ“天井材の吸音率”を示す天井材の吸音率値である。つまり、天井材によって天井材の吸音率が決まる。
【0042】
図6は、パラメータ記憶部13が記憶する、聴取者に関するパラメータごとの、聴取者条件に対応するパラメータ値を示す図である。同図において、聴取者条件“部屋の前方”、“部屋の後方”、“部屋の中央”、“部屋の右方”、および“部屋の左方”それぞれに対応するパラメータ値“l(エル)
1”、“l(エル)
2”、“l(エル)
3”、“l(エル)
4”、および“l(エル)
5”は、パラメータ“聴取位置”を示す聴取位置情報である。つまり、聴取場所によって聴取位置情報が決まる。
また、聴取者条件“1”、“2”、および“3”それぞれに対応するパラメータ値“m
1”、“m
2”、および“m
3”は、パラメータ“聴取人数に対するリスニングエリア面積”を示す必要面積値である。つまり、聴取人数によって必要面積値が決まる。
また、聴取者条件“全体の包み込まれ感重視”、“画面上の定位重視”、および“忠実・正確な、三次元音像定位・空間印象”それぞれに対応するパラメータ値“q
1”、“q
2”、および“q
3”は、パラメータ“要求音質”を示す要求音質情報である。つまり、要求音質によって要求音質情報が決まる。
【0043】
[3 表示例]
図7は、条件提示制御部181が表示装置30に表示させる環境・聴取者条件選択メニューを模式的に示す図である。同図に示すように、環境・聴取者条件選択メニューは、音響機器の設置環境に関するパラメータごとに、一つまたは複数の環境条件を、例えばグラフィカル・ユーザ・インタフェース(Graphical User Interface;GUI)ボタンまたは入力ボックスとして含む。また、環境・聴取者条件選択メニューは、聴取者に関するパラメータごとに、一つまたは複数の聴取者条件を、例えばGUIボタンまたは入力ボックスとして含む。
【0044】
具体的に、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“建物構造”に関して、環境条件のGUIボタン“鉄筋コンクリート造”、“鉄骨鉄筋コンクリート造”、“鉄骨造”、および“木造”が設けられている。
図7は、建物構造に関するGUIボタン“鉄筋コンクリート造”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“鉄筋コンクリート造”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“建物種別”に関して、環境条件のGUIボタン“一戸建て”、“マンション”、および“アパート”が設けられている。同図は、建物種別に関するGUIボタン“マンション”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“マンション”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0045】
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“築年数”に関して、環境条件のGUIボタン“設計中”、および入力ボックス“築後[ ]年”が設けられている。
図7は、操作部14によって、築年数に関する入力ボックス“築後[ ]年”に“3”が入力され、入力ボックス“築後[ 3]年”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“室形”に関して、環境条件のGUIボタン“正方形”、“長方形”、“L字形”、“コの字形”、“ロの字形”、および“吹抜け筒状形”が設けられている。同図は、室形に関するGUIボタン“長方形”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“長方形”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0046】
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“部屋の種類”に関して、環境条件のGUIボタン“ホームシアタ”、“リビングルーム”、“個人部屋(車両を含む)”、および“非固定”が設けられている。
図7は、部屋の種類に関するGUIボタン“リビングルーム”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“リビングルーム”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“部屋の広さ”に関して、環境条件の入力ボックス“[ ]畳”、および“[ ]m
2”が設けられている。同図は、操作部14によって、部屋の広さに関する入力ボックス“[ ]畳”に“12”が入力され、入力ボックス“[12]畳”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0047】
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“床材”に関して、環境条件のGUIボタン“フローリング”、“畳”、“絨毯”、“タイル”、および“コンクリート”が設けられている。
図7は、床材に関するGUIボタン“フローリング”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“フローリング”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“壁材”に関して、環境条件のGUIボタン“石膏ボード”、“コンクリート”、“穴空板”、“木材”、および“レンガ”が設けられている。同図は、壁材に関するGUIボタン“石膏ボード”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“石膏ボード”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“天井材”に関して、環境条件のGUIボタン“石膏ボード”、“コンクリート”、“岩綿吸音板”、および“木材”が設けられている。同図は、天井材に関するGUIボタン“木材”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“木材”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0048】
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“聴取場所”に関して、聴取条件のGUIボタン“部屋の前方”、“部屋の後方”、“部屋の中央”、“部屋の右方”、および“部屋の左方”が設けられている。
図7は、聴取場所に関するGUIボタン“部屋の後方”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“部屋の後方”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“視聴人数”に関して、聴取者条件の入力ボックス“[ ]人”が設けられている。同図は、操作部14によって、視聴者に関する入力ボックス“[ ]人”に“4”が入力され、入力ボックス“[ 4]人”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0049】
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“要求音質”に関して、聴取条件のGUIボタン“全体の包み込まれ感重視”、“画面上の定位重視”、および“忠実・正確な、三次元音像定位・空間印象”が設けられている。
図7は、要求音質に関するGUIボタン“全体の包み込まれ感重視”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“全体の包み込まれ感重視”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
また、環境・聴取者条件選択メニューには、パラメータ“画面サイズ”に関して、聴取条件のGUIボタン“携帯端末(6)”、“小画面(42)”、“中画面(75)”、および“大画面(130〜150)”が設けられている。同図は、画面サイズに関するGUIボタン“小画面(42)”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“小画面(42)”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0050】
図7の環境・聴取者条件選択メニューによれば、以下の条件が指定されたことを示す。すなわち、建物は、築後3年を経過した鉄筋コンクリート造のマンションである。音響機器を設置する部屋は、12畳の広さを有する長方形(天井視)のリビングルームである。部屋の部材は、床材がフローリング、壁材が石膏ボード、天井材が木材である。聴取者は4人であり、その聴取場所は部屋の後方である。ユーザが求める音質は、全体の包み込まれ感重視である。部屋に設置される表示装置の画面サイズは、42インチ相当の小画面タイプである。
【0051】
図8は、条件提示制御部181が表示装置30に表示させる機器条件選択メニューを模式的に示す図である。同図に示すように、機器条件選択メニューは、音響機器に関するパラメータごとに、一つまたは複数の環境条件を、例えばGUIボタンまたは入力ボックスとして含む。
【0052】
具体的に、機器条件選択メニューには、パラメータ“希望する音響機器”に関して、機器条件のGUIボタン“なし”、“ヘッドホン”、“前方スピーカ(テレビ一体型)”、および“ディスクリートスピーカ”が設けられている。
図8は、希望する音響機器に関するGUIボタン“ディスクリートスピーカ”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“ディスクリートスピーカ”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0053】
また、機器条件選択メニューには、パラメータ“設置可能な場所”に関して、環境・聴取者条件選択メニューで選択された室形に応じた形状の枠と、部屋の方向と、機器条件選択メニューで選択された希望する音響機器に応じたタイプの音響機器とを表す、模式的な部屋の平面図が設けられる。
図8は、
図7の環境・聴取者条件選択メニューで選択された室形“長方形”と、機器条件選択メニューで選択された希望する音響機器“ディスクリートスピーカ”とに基づいて、長方形の枠と、部屋の方向を表す“前方”および“後方”と、その枠の中にディスクリートスピーカを示す6個の楕円形とが、部屋の平面図(天井視)として描画された状態を示している。音響機器を示す楕円形はGUIボタンとして表示される。よって、任意の一つまたは複数の楕円形は、操作部14によって指定可能である。
図8は、表示された6個のディスクリートスピーカのうち、任意の一つが指定されてハイライト表示された状態を示している。
【0054】
実際の部屋には、部屋の構造、配置された家具、ユーザの希望により音響機器を設置できない場所があり得る。上記の設置可能な場所に関するメニュー項目を設けることによって、音響再生環境提示装置10は、設置不可能な場所を除外して音響再生環境を評価および提示することができる。
【0055】
また、機器条件選択メニューには、パラメータ“ご予算”に関して、機器条件の入力ボックス“[ ]円”が設けられている。
図8は、操作部14によって、ご予算に関する入力ボックス“[ ]円”に“100000”が入力され、入力ボックス“[ 100000]円”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0056】
図8の機器条件選択メニューによれば、以下の条件が指定されたことを示す。すなわち、ユーザが希望する音響機器のタイプは、ディスクリートスピーカである。ディスクリートスピーカの設置可能場所は、
図8に示す部屋後方の右側である。音響再生環境を構築する予算は100000円である。
【0057】
図9は、設置方法提示制御部182が表示装置30に表示させる設置プラン選択メニューを模式的に示す図である。同図に示すように、設置プラン選択メニューは、音響機器の設置プランを選択させるためのGUIボタンを含む。
【0058】
具体的に、設置プラン選択メニューには、GUIボタン“スペース効率重視”、“音質重視”、“コスト重視”、および“内観重視”が設けられている。“スペース効率重視”は、部屋の広さまたは容積に対して効率的な音響再生環境を提示するプランである。“音質重視”は、ユーザが要求する音質を最も重視した音響再生環境を提示するプランである。“コスト重視”は、音響機器および音響機器の設置にかかるコストを最も重視した音響再生環境を提示するプランである。“内観重視”は、音響機器を設置した部屋内の内観を最も重視した音響生成環境を提示するプランである。
図9は、GUIボタン“音質重視”が操作部14によって指定されたことにより、GUIボタン“音質重視”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0059】
図10は、設置方法提示制御部182が表示装置30に表示させる提示情報を模式的に示す図である。同図に示すように、提示情報100は、設置環境画像101と、部屋平面
図102と、平面図切替えボタン103と、機器情報104とを含む。
【0060】
設置環境画像101は、設置方法提示制御部182が評価値計算部17から供給される、音響機器情報に含まれる部屋内観グラフィックスを表示するグラフィックスである。つまり、設置環境画像101は、音響機器の設置方法を可視化した情報である。設置環境画像101は、例えば、部屋の内観を水平面における4方位それぞれから表すグラフィックスである。設置環境画像101が4方位のグラフィックスである場合、設置方法提示制御部182は、操作部14の操作に応じて方位ごとにグラフィックスを切替える。または、設置環境画像101は、例えばパノラマパースである。設置環境画像101がパノラマパースである場合、設置方法提示制御部182は、操作部14の操作に応じて設置環境画像101内の視点を三次元空間内で自在に変える。
【0061】
部屋平面
図102は、選択条件取得部151から供給される条件における室形および希望する音響機器の種類と、評価値計算部17から供給される音響条件値におけるスピーカ数とに基づいて、設置方法提示制御部182が生成する平面図(天井視)である。部屋平面
図102は、音響機器がマルチチャンネル音響出力装置である場合、複数の層のうち平面図切替えボタン103の操作によって選択された層を示す。
【0062】
平面図切替えボタン103は、部屋平面
図102が複数の層を有する場合に任意の層を選択して表示させるためのGUIボタンである。
図10は、部屋平面
図102が3層構造である場合に、GUIボタン“上層”が操作部14によって指定されたことにより、上層に該当する部屋平面
図102が表示され、GUIボタン“上層”がハイライト表示された状態を模式的に示している。
【0063】
機器情報104は、評価値計算部17から供給される音響機器情報に基づいて設置方法提示制御部182が表示する音響機器に関する情報である。例えば、機器情報104は、音響機器の仕様、コスト(定価、売価等)、型番等の情報である。
【0064】
[4 処理]
[4.1 音響条件値の計算処理]
音響条件値計算部16が実行する音響条件値の計算処理について説明する。
音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する、床材、壁材、および天井材についての環境条件を取り込むと、床材、壁材、および天井材それぞれに対応するパラメータ値である吸音率をパラメータ記憶部13から読み込む。また、音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する部屋の広さについての環境条件を取り込む。取り込んだ部屋の広さが畳数である場合、音響条件値計算部16は、その畳数に対応するパラメータ値である面積値をパラメータ記憶部13から読み込む。または、音響条件値計算部16は、畳数を面積値に換算する。
【0065】
音響条件値計算部16は、床材、壁材、および天井材それぞれに対応する吸音率および部屋の面積値に基づいて、例えば、評価関数である下記の(1)式によって、部屋の残響時間Tを計算する。ただし、Kは残響係数(摂氏20度において0.16)、Vは部屋の容積値、Sは床材、壁材、および天井材の全面積値、a
nは部材の吸音率、S
nは部材の面積である。なお、部屋の高さ寸法値を規定値として、音響条件値計算部16は、その高さ寸法値と部材の面積値S
nとに基づいて容積値Vを計算する。
【0067】
また、音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する、聴取場所、聴取人数、および要求音質についての聴取者条件を取り込むと、聴取場所、聴取人数、および要求音質それぞれに対応するパラメータ値である、聴取位置情報、必要面積値、および要求音質情報をパラメータ記憶部13から読み込む。
【0068】
音響条件値計算部16は、聴取位置情報、必要面積値、および要求音質情報に基づいて、例えば、評価関数である下記の(2)式によって、スピーカの必要最小数LA
minおよびスピーカの必要最大数LA
max、ならびにスピーカの設置角度SLを計算する。ただし、mはリスニングエリアの必要面積値、qは要求音質情報、SPは聴取位置から見たスピーカ設置方向角、l(エル)は聴取位置情報である。
【0070】
また、音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する、建物構造および建物種別についての環境条件を取り込むと、建物構造および建物種別それぞれに対応するパラメータ値である、遮音性能値および建物種別値をパラメータ記憶部13から読み込む。
【0071】
音響条件値計算部16は、遮音性能値および建物種別値に基づいて、例えば、評価関数である下記の(3)式によって、再生音最大許容音圧O(オー)および音響機器設置制約値Eを計算する。ただし、pは遮音性能値、bは建物種別値である。
【0073】
音響条件値計算部16は、それぞれ算出した残響時間T、スピーカの必要最小数LA
min、スピーカの必要最大数LA
max、スピーカの設置角度SL、再生音最大許容音圧O(オー)、および音響機器設置制約値Eを、音響条件値として評価値計算部17に供給する。
【0074】
図7に示した環境・聴取者条件選択メニューおよび
図8に示した機器条件選択メニューから得られる条件によれば、音響条件値計算部16は、評価関数による計算によって以下の音響条件値を得る。すなわち、音響条件値計算部16は、建物構造が鉄筋コンクリート造、建物種別がマンション、および部屋の種類がリビングルームであることから、遮音性能はDr−50程度を示す音響条件値を評価関数により計算する。
また、音響条件値計算部16は、室形が長方形、部屋の広さが12畳、床材がフローリング、壁材が石膏ボード、および天井材が木材であることから、残響時間が500Hzで0.8秒程度を示す音響条件値を評価関数により計算する。
また、音響条件値計算部16は、希望する音響機器がディスクリートスピーカ、築年数が3年、および建物種別がマンションであることから、スピーカを壁面に埋め込むことが不可能であり、床または家具等の上に設置する必要があることを示す音響条件値を評価関数により計算する。
【0075】
また、音響条件値計算部16は、視聴場所が部屋の後方、視聴人数が4人、および要求音質が全体の包み込まれ感重視であることから、包み込まれ感が保持されるリスニングエリアは例えば、左右200cm、前後50cmを確保する必要があり、そのために必要なスピーカ数が12個、スピーカの配置が均等配置に加えて部屋の後方に補強した配置をすることが必要であることを示す音響条件値を評価関数により計算する。
また、音響条件値計算部16は、予算が100000円であることから、この予算内に収まるスピーカ数が12個であることを示す音響条件値を評価関数により計算する。
【0076】
[4.2 評価値の計算処理]
評価値計算部17が実行する評価値の計算処理について説明する。
評価値計算部17は、音響条件値計算部16が供給する音響条件値である、残響時間T、スピーカの必要最小数LA
min、スピーカの必要最大数LA
max、スピーカの設置角度SL、再生音最大許容音圧O(オー)、音響機器設置制約値E等を取り込む。また、評価値計算部17は、設置プラン指定部152が供給する設置プランの指定情報を取り込む。そして、評価値計算部17は、下記の式(4)に示すように、取り込んだ音響条件値を設置プランに応じて総合的に評価し、定量的な評価値SP
xを算出する。ただし、w
1,w
2,w
3,w
4,w
5,w
6等は、設置プランの指定情報に応じて決まる重み係数である。
【0078】
すなわち、評価値計算部17は、残響時間Tに基づく処理g
1(T)に重み係数w
1、スピーカの必要最小数LA
minに基づく処理g
2(LA
min)に重み係数w
2、スピーカの必要最大数LA
maxに基づく処理g
3(LA
max)に重み係数w
3、スピーカの設置角度SLに基づく処理g
4(SL)に重み係数w
4、再生音最大許容音圧O(オー)に基づく処理g
5(O(オー))に重み係数w
5、音響機器設置制約値Eに基づく処理g
6(E)に重み係数w
6等を掛け合わせることにより、評価値SP
xを算出する。
【0079】
例えば、設置プランの指定情報が
図9の“スペース効率重視”を示す場合、評価値計算部17は、スペース効率に関係する音響条件値を適用した処理により大きな重み付けをして評価値SP
xを計算する。具体的に、評価値計算部17は、スピーカの必要最小数LA
minを適用した処理g
2(LA
min)の重み係数w
2をスピーカの必要最大数LA
maxを適用した処理g
3(LA
max)の重み係数w
3よりも大きくして、スペース効率重視プランの評価値SP
xを計算する。
【0080】
また、設置プランの指定情報が
図9の“音質重視”を示す場合、評価値計算部17は、音質や臨場感に関係する音響条件値を適用した処理により大きな重み付けをして評価値SP
xを計算する。具体的に、評価値計算部17は、スピーカの必要最大数LA
maxを適用した処理g
3(LA
max)の重み係数w
3をスピーカの必要最小数LA
minを適用した処理g
2(LA
min)の重み係数w
2よりも大きくして、音質重視プランの評価値SP
xを計算する。
また、設置プランの指定情報が
図9の“コスト重視”を示す場合、評価値計算部17は、音響機器および音響機器の設置にかかるコストに関係する音響条件値を適用した処理により大きな重み付けをして評価値SP
xを計算する。
また、設置プランの指定情報が
図9の“内観重視”を示す場合、評価値計算部17は、音響機器を設置した室内等の内観に関係する音響条件値を適用した処理により大きな重み付けをして評価値SP
xを計算する。
【0081】
[5 動作]
次に、音響再生環境提示装置10の動作について説明する。
図11は、音響再生環境提示装置10の基本的な動作手順を示すフローチャートである。
ステップS1において、条件提示制御部181は、環境・聴取者条件記憶部11から環境条件テーブルおよび聴取者条件テーブルの各テーブルデータを読み込む。次に、条件提示制御部181は、読み込んだ両テーブルデータに基づいて環境・聴取者条件選択メニューを生成し、この環境・聴取者条件選択メニューを表示装置30に表示させる。
【0082】
次に、ステップS2において、選択条件取得部151は、表示装置30に表示された環境・聴取者条件選択メニューにしたがって操作された操作部14が供給する操作信号を取り込む。選択条件取得部151は、取り込んだ操作信号から所定の条件を取得する。この条件は、環境条件および聴取者条件からパラメータごとに選択された条件である。選択条件取得部151は、取得した条件を音響条件値計算部16および設置方法提示制御部182に供給する。
【0083】
次に、ステップS3において、条件提示制御部181は、機器条件記憶部12から機器条件テーブルのテーブルデータを読み込む。次に、条件提示制御部181は、読み込んだテーブルデータに基づいて機器条件選択メニューを生成し、この機器条件選択メニューを表示装置30に表示させる。
【0084】
次に、ステップS4において、選択条件取得部151は、表示装置30に表示された機器条件選択メニューにしたがって操作された操作部14が供給する操作信号を取り込む。選択条件取得部151は、取り込んだ操作信号から所定の条件を取得する。この条件は、機器条件からパラメータごとに選択された条件である。選択条件取得部151は、取得した条件を音響条件値計算部16および設置方法提示制御部182に供給する。
【0085】
次に、ステップS5において、音響条件値計算部16は、選択条件取得部151が供給する条件を取り込み、この条件に対応するパラメータ値をパラメータ記憶部13から読み込む。次に、音響条件値計算部16は、読み込んだパラメータ値を音響再生環境の音響条件に関する複数の評価関数に入力して、複数の評価関数それぞれに対応する音響条件値を計算する。次に、音響条件値計算部16は、算出した音響条件値を評価値計算部17に供給する。
【0086】
次に、ステップS6において、設置方法提示制御部182は、あらかじめ保有する設置プラン選択メニューを表示装置30に表示させる。
次に、ステップS7において、設置プラン指定部152は、表示装置30に表示された設置プラン選択メニューにしたがって操作された操作部14が供給する操作信号を取り込む。次に、設置プラン指定部152は、取り込んだ操作信号から設置プランの指定情報を取得し、この指定情報を評価値計算部17に供給する。
【0087】
次に、ステップS8において、評価値計算部17は、音響条件値計算部16が供給する各種の音響条件値を取り込み、設置プラン指定部152が供給する設置プランの指定情報を取り込む。次に、評価値計算部17は、取り込んだ音響条件値をキーとして音響機器情報記憶部19に記憶された音響機器情報テーブルを検索し、キーに合致(マッチ)する音響機器情報を抽出する。次に、評価値計算部17は、取り込んだ指定情報に応じて音響条件値に重み付けし、この重み付けした音響条件値と抽出した音響機器情報とに基づいて、音響機器ごとの評価値を計算する。評価値計算部17は、算出した音響機器ごとの評価値と、この評価値の計算に用いた音響条件値と、音響機器情報とを、提示制御部18に供給する。
【0088】
次に、ステップS9において、設置方法提示制御部182は、選択条件取得部151が供給する条件、および、評価値計算部17が供給する評価値と音響条件値と音響機器情報との組み合わせ情報を取り込む。次に、設置方法提示制御部182は、条件、評価値、音響条件値、および音響機器情報に基づいて、音響機器の設置方法と音響機器に関する情報とを含む提示情報を生成し、この提示情報を表示装置30に表示させる。
【0089】
以上詳述したように、本発明の一実施形態である音響再生環境提示装置10は、環境・聴取者条件選択メニューを表示装置30に表示させて、音響再生環境を構築するための制約条件である環境条件と要求条件である聴取者条件とを操作部14により選択させる。
また、音響再生環境提示装置10は、機器条件選択メニューを表示装置30に表示させて、音響再生環境を構築するための要求条件である機器条件を操作部14により選択させる。
また、音響再生環境提示装置10は、音響機器の設置環境に関するパラメータごとに環境条件およびパラメータ値、音響機器が出力する音の聴取者に関するパラメータごとに聴取者条件およびパラメータ値、ならびに音響機器に関するパラメータごとに機器条件およびパラメータ値を、それぞれ対応付けてパラメータ記憶部13にあらかじめ記憶させている。
【0090】
音響再生環境提示装置10は、取得した条件に対応するパラメータ値をパラメータ記憶部から読み込み、読み込んだパラメータ値を音響再生環境の音響条件に関する複数の評価関数に入力して、複数の評価関数それぞれに対応する音響条件値を音響条件値計算部16に計算させる。
音響再生環境提示装置10は、音響条件値計算部16が計算した音響条件値に基づいて、音響機器の設置方法ごとに音響再生環境の評価値を評価値計算部17に計算させる。
音響再生環境提示装置10は、条件、音響条件値、および評価値計算部17が計算した評価値に基づいて、音響機器の設置方法を提示制御部18によって表示装置30に提示させる。
【0091】
このように構成したことにより、本発明の一実施形態である音響再生環境提示装置10は、様々な制約条件やユーザの要求条件に応じて音響再生環境を提示することができる。
【0092】
なお、上述した実施形態である音響再生環境提示装置10の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するための音響再生環境提示プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録された音響再生環境提示プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて、このコンピュータシステムが実行することによって実現してもよい。なお、このコンピュータシステムとは、オペレーティング・システム(Operating System;OS)や周辺装置のハードウェアを含むものである。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに備えられる磁気ハードディスクやソリッドステートドライブ等の記憶装置のことをいう。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のコンピュータネットワーク、および電話回線や携帯電話網を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、さらには、その場合のサーバ装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記の音響再生環境提示プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。