【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明のセリシン抽出・精製方法をさらに詳しく説明するが、本発明のセリシン抽出・精製方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>天蚕由来セリシンの抽出、精製
天蚕由来セリシンの抽出、精製の工程を
図1に沿って説明する。
図1は、本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法の一実施形態を例示したフローチャートである。
【0056】
材料の絹繊維は、天蚕の繭を切開して得た繭層を使用した。この繭層を、65℃の純水(浴比1:100)で3分間洗浄して、夾雑物や細菌類を除去した。
【0057】
次に、精練工程として、0.025%(w/v)NaOHと、0.475%(w/v)Na
2CO
3を含む98℃のNaOH/Na
2CO
3混合液に、洗浄した繭層を浴比1:50で7分間浸漬してセリシンを抽出し、精練液を得た。
【0058】
さらに、この精練液を17Gガラスフィルターで沈殿物が混入しないように濾過し、抽出残渣(フィブロイン)と精練液とに分別した。
【0059】
そして、第1冷却工程としてこの精練液を水道水で10分水冷(25℃)後、第2冷却工程として1時間氷冷(10℃)した。
【0060】
その後、遠心工程として、この精練液を遠心機で遠心(2,000rpm、5分間)して、精練液中のCa(COO)
2等の不純物を沈殿させ、上澄み液を濾紙によって濾過した。
【0061】
そして、濾過後の精練液を透析用セルロースチューブ(エーディア株式会社、MWCO:10000)に充填し、20℃で流水透析2〜3日、純水透析1日行った後、再度、濾紙による濾過を行って天蚕セリシン溶液を得た。
【0062】
この天蚕セリシン溶液を凍結乾燥して、天蚕セリシン粉末(可溶性パウダー)を得た。
【0063】
<実施例2>天蚕由来セリシンのアミノ酸組成分析
実施例1で得た天蚕セリシン粉末(可溶性パウダー)を6Nの塩酸1mlに溶解し、減圧封管した。封管したものを加水分解(110℃/24時間)を経て真空乾燥処理した後、Lithium citrate サンプルバッファー(pH2.2)で溶解し、孔径0.45μmのフィルター(直径4mm, Millipore社)で濾過し、分析試料とした。分析試料は、アミノ酸アナライザー(JLC-500/v, 日本電子社)に注入してアミノ酸組成を測定した。
【0064】
この結果を表1に示す。また、比較のため、従来の方法(Isolation and characterization of a 41 kDa sericin from the wild silkmoth Antheraea yamamai, Journal of Insect Biotechnology and Sericology 2009 Vol.78 No.1 pp.11-16)で得た天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成も示す。
【0065】
【表1】
表1に示したように、実施例1で得た天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成(右欄)は、従来の方法で得られた天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成(左欄)とは異なり、スレオニン、セリン、ヒスチジン、アルギニンなどが多く含まれていることが確認された。具体的には、アミノ酸組成として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含まれていることが特徴の一つであると考えられる。また、アスパラギン酸も15.0 Mol%以上、グリシンも19.0Mol%以上含まれている。
【0066】
このようなアミノ酸組成の違いによって、実施例1で得た天蚕セリシン粉末は、従来の天蚕セリシン粉末とは異なる薬理作用を有している可能性が示唆された。
【0067】
<実施例3>精練工程における精練濃度の検討
実施例1の精練工程におけるNaOH/Na
2CO
3混合液について、NaOHとNa
2CO
3の濃度を変更し、天蚕セリシンを得るために好適な比率を検討した。
【0068】
具体的には、精練工程において、NaOHとNa
2CO
3の比率が異なる以下の5種類のNaOH/Na
2CO
3混合液;
(1)NaOH:0.010%、Na
2CO
3:0.490%、
(2)NaOH:0.025%、Na
2CO
3:0.475%(実施例1と同じ)、
(3)NaOH:0.050%、Na
2CO
3:0.450%、
(4)NaOH:0.100%、Na
2CO
3:0.400%、
(5)NaOH:0.200%、Na
2CO
3:0.300%、
を使用し、実施例1と同様の精練工程、第1冷却工程、第2冷却工程、遠心工程、透析工程を経て、天蚕セリシン粉末を得た。
【0069】
また、以下の通り、精練工程の後には、繭層重量に基づいて練減率を算出し、さらに、練減量(当初の繭層重量−精練後の繭層重量)と、天蚕セリシン粉末の回収量に基づいて天蚕セリシンの収率を算出した。
【0070】
練減率=(当初の繭層重量−精練後の繭層重量)/当初の繭層重量×100
収率=天蚕セリシン粉末の回収量/練減量×100
結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
表2に示したように、(1)NaOH:0.010%、Na
2CO
3:0.490%、(2)NaOH:0.025%、Na
2CO
3:0.475%(実施例1と同じ)、(3)NaOH:0.050%、Na
2CO
3:0.450%の場合には、練減率が低く、天蚕セリシンの収率が好ましく高いことが確認された。
【0072】
特に、(2)NaOH:0.025%、Na
2CO
3:0.475%(実施例1と同じ)の場合には、その他の場合と比較して、練減率が26.9%となり、天蚕セリシンの収率が54.0%と最も大きくなることが確認された。
【0073】
<実施例4>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討1
マウス脾臓リンパ細胞(A:全リンパ球細胞、B:リンパ球B細胞)について、天蚕セリシンによる免疫賦活作用の検討を行った。
【0074】
免疫賦活活性試験は、マウス脾臓由来のリンパ球細胞の細胞数を指標とした。活性および細胞数は還元型発色試薬であるWST-1[2-(4-lodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt](和光純薬)を用い、細胞内のミトコンドリアが持つ還元作用によって生成されるホルマザン塩の量を測定することで算出した。
【0075】
実験動物は4-6週齢のICR系統マウス(雄、日本SLC)を用いた。培地の組成は、10%ウシ胎児血清 (FBS)、2 mMグルタミン、50 mM 2-メルカプトエタノール、 100 U/ml ペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン、10% NaCO
3を含むRPMI 1640培地(日水製薬)を使用した。培養は5%CO
2存在下、37℃湿潤条件のCO
2インキュベーター内でおこなった。
【0076】
リンパ球浮遊液の調製は、藤原・淀井(1996)の方法を用いた。ジエチルエーテルで麻酔したマウスの頚椎を脱臼させ、屠殺したマウスから脾臓を取り出し、PBS(-)中で脾臓を磨砕し、セルストレーナー(孔径100 mm、FALCON)でろ過した。ろ液を遠心分離(1,100 rpm,10 min)し、上清を取り除いた。赤血球を除去するため、溶血バッファーであるトリス塩化アンモニウム溶液(0.14 M NH
4Cl,17 mM Tris-HCl,pH 7.65)5 mlを沈殿に加え、ピペッティング後5分間常温でインキュベートした。その後、遠心分離(1,100 rpm,10 min)して上清を除去し、再度同量のトリス塩化アンモニウム溶液を加え、同様の操作をおこなった。上清を取り除いた後、洗浄のために30 mlのPBS(-)を加え、遠心分離(1,100 rpm,10 min)後、上清を除去した。同様の操作を2回おこない、溶血バッファーを取り除いた。得られた沈殿物に20 mlの培地を加えて懸濁し、懸濁液を50 mlの組織培養用フラスコ(FALCON)に移し、CO
2インキュベーター内で2時間インキュベートした。その後、リンパ球以外の吸着細胞を取り除くため静かに上清を回収した。
【0077】
回収したリンパ球浮遊液は0.4%トリパンブルー溶液を用いて生細胞のみ染色し、ビュルケルチュルク血球計算盤を用いて計数した。細胞数は5×10
6 cells/mlとなるように培地で調製し、リンパ球細胞懸濁液とした。懸濁液を96 wellマイクロプレートの各wellに90 μlずつ分注し、実験区にはDMSOおよび超純水を用いて検定濃度に調製したサンプル溶液を、対照区にはサンプルを調製する際に用いた溶媒を10 μlずつ添加した。CO
2インキュベーター内で48時間培養後、WST-1溶液(13 mg WST-1、 1.4 mg 1-Methoxy PMS、20 ml PBS(-))を10 μl添加しさらに4時間培養し、マイクロプレートリーダーを用いて波長450 nmにおける各wellの吸光度を測定し、細胞数の変化を算出した。
【0078】
実験区の吸光度を(A)、対照区の吸光度を(B)、サンプルカラーコントロールの吸光度を(C)とすると、各吸光度から免疫賦活活性を算出する計算式は以下のようになる。
【0079】
細胞増殖率(%)= [( A−C ) / B] ×100
図2−Aに、天蚕セリシンの濃度に対する全リンパ球細胞の増殖率を示す。
【0080】
B細胞を単離するために、B cell Isolation Kit mouse(Miltenyi Biotec社)を用いた。最初に、前述の全リンパ球を得るための工程と同様の手順でマウス脾臓リンパ細胞を 2 時間インキュベートした後、マウスリンパ細胞数を確認し、全リンパ球が 5×10
7 cells/ml になるように15 mlのチューブに分注した。細胞を遠心(1000 g,10分,4℃)し、上清を取り途き、沈殿物を得た。再懸濁のために MACS バッファー{PBS(-), pH 7.2, 0.5% bovine serum albumin(BSA), 2 mM EDTA}を 200 μl 加えて混和し、Biotin-Antibody Cocktail を50 μl加えて混和した後、4℃で 15 分間インキュベートした。さらに、MACSバッファーを 150 μl、Anti-Biotin MicroBeads を 100 μl加えて混和し、再び 4℃ で 15 分間インキュベートした。次に、細胞洗浄のために15 mlのチューブにMACSバッファーを 5〜10 ml 加えて遠心(1000 g,10分,4℃)し、上清を取り除いた。沈殿物に MACSバッファーを500 μl加えて細胞を懸濁させ、分離カラム(MACS 社)にアプライした後、MACS バッファーを 3 ml 加えて洗浄し、さらに同様の洗浄を 2 回おこなった。その後フラクションを回収し、2.5×10
6cells/ml の B 細胞を得た。このB細胞を用いて前述の全リンパ球に対する同様の手順で吸光度による免疫賦活活性を算出した。
【0081】
図2−Bに、天蚕セリシンの濃度に対するマウス脾臓リンパ球B細胞の増殖率を示している。
図2に示したように、マウス脾臓の全リンパ球(A)の細胞増殖率は、天蚕セリシンを添加しない場合(0%)と比較して、天蚕セリシン0.05%の場合は1.9倍、天蚕セリシン0.1%の場合には2.3倍に、天蚕セリシン0.2%の場合には、3.7倍になることが確認された。
【0082】
また、マウス脾臓のリンパ球B細胞(B)の細胞増殖率は、天蚕セリシンを添加しない場合(0%)と比較して、天蚕セリシン0.05%の場合は2.5倍、天蚕セリシン0.1%の場合には4.6倍に、天蚕セリシン0.2%の場合には、5.3倍になることが確認された。
【0083】
以上の結果から、本発明の方法で得た天蚕セリシンには、顕著な免疫賦活作用があることが確認された。
【0084】
<実施例5>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討2
ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)およびショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)について、天蚕セリシンによる影響を検討した。
【0085】
具体的には、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)、実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.25 mg/ml 0.5 mg/ml、1.0 mg/ml)に調製した培地で、ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)の細胞を培養し、細胞数の変化を検討した。
【0086】
また、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)および実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.1 mg/ml、0.2 mg/ml、0.5 mg/ml)に調製した培地でショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)を培養し、細胞数の変化を検討した。
【0087】
結果を
図3、
図4に示す。
【0088】
図3に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンは、ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)に対して細胞増殖活性はないものの、細胞数の減少などは確認されず、正常細胞への悪影響はないことが確認された。
【0089】
一方、
図4に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンは、ショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)を増殖することができることが確認された。特に、天蚕セリシンの濃度が0.1mg/mlの場合に115.9%の増殖活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.2mg/mlの場合に113.6%の増殖活性が確認され、また天蚕セリシンの濃度が0.5mg/mlの場合に108.6%の増殖活性が確認された。
【0090】
以上の結果から、本発明の方法で得た天蚕セリシンには、正常細胞への悪影響がなく、正常細胞増殖作用があることから、天蚕セリシンを有効成分として配合することで医薬組成物や食品(サプリメントを含む)などに利用可能であることが確認された。
【0091】
<実施例6>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討3
ラット肝ガン細胞(dRLh84)について、天蚕セリシンによる影響を検討した。
【0092】
具体的には、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)、実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.125 mg/ml、0.25 mg/ml、0.5 mg/ml、1.0 mg/ml、2.0 mg/ml)に調製した培地で、ラット肝ガン細胞(dRLh84)を培養し、細胞数の変化を検討した。
【0093】
結果を
図5に示す。
【0094】
図5に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンを添加することで、ラット肝ガン細胞の増殖を抑制することができることが確認された。特に、天蚕セリシンの濃度が2.0mg/mlの場合に37.1%の増殖抑制活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.5mg/mlの場合に33.0%の増殖抑制活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.25mg/mlの場合に27.5%の増殖抑制活性が確認された。
【0095】
したがって、この天蚕セリシンにはガン細胞の増殖抑制作用があり、この天蚕セリシンを有効成分として配合することで抗ガン用医薬組成物や食品(サプリメントを含む)などに利用可能であることが確認された。
【0096】
<実施例7>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討4
線虫(C.elegans)に対して、実施例1で得られた天蚕セリシンが与える影響について検討した。
【0097】
具体的には、実施例1の方法で得た天蚕セリシンを濃度1.0 mg/mlに調製した培地を用い、実験動物には、線虫(C. elegans)の野生型であるN2系統を用い、線虫の生存率と生存日数(寿命)を検討した。
【0098】
また、比較として、カイコ由来のセリシンを添加した培地と、いずれのセリシンも添加していない培地(control)とを用意し、これらの培地においても線虫を培養し、線虫の生存率と生存日数(寿命)を比較検討した。
線虫は飼育プレート上で、インキュベーター(MIR-153、SANYO)を用い、20oCで飼育した。培地は、0.3%NaCl、0.25%ポリペプトン、1.7%寒天、0.5μg/ml コレステロール、1mM CaCl
2、1mM MgSO
4、25mM KH
2PO
4-KOH(pH 6.0)を含む Nematode Growth Medium(NGM)寒天培地を用い、これをコントロールとした。供試試料についても、同様の方法で調製した。プレートは、滅菌シャーレに各 NGM 寒天培地を約2.5 ml ずつ分注して作製した。線虫の飼育には、餌として大腸菌 Escherichia coli(OP50)を用いた。餌とする大腸菌は、 5mlのLB培地に一白銀耳懸濁させ、バイオシェーカー(BR-40LF、TAITEC)により、37oC、120rpm、15時間培養したものを用いた。この懸濁液を1プレートあたり約30μl滴下し、壁面に当らない程度にスプレッダーで広げた。大腸菌を塗った NGM 寒天培地(以下飼育プレート)は室温で 12 時間培養した後、使用するまで4℃で保存した。平均寿命の測定に用いる線虫は、4齢幼虫(L4)であるが、孵化直後から供試試料を与えた線虫を使用するためにあらかじめ各飼料を添加した飼育プレートで飼育しておいた。飼育プレート中の線虫の多くが L4 に成長するまで飼育し、1 試料に対して 2 枚の新しい飼育プレートを用意して、30 頭ずつ植え継いだ。この日を観察 0 日目とし、線虫が卵を産まなくなるまで毎日〜1日おきに新しい飼育プレートに植え継いだ。観察は毎日定時±2時間の範囲でおこない、死亡個体はその都度除外した。また、平均寿命の測定試験中に体内で卵が孵化してしまったものや、植え継ぎの際に外傷を負ってしまった個体も同様に除外した。
【0099】
なお、各試料における平均寿命は以下の式により算出した。
平均寿命(days)=
(線虫が死亡し始めた観察日 + 線虫が生きていた最後の観察日)/ 2
結果を表3および
図6に示す。
図6は、controlと天蚕セリシンの生存率、生存日数の比較を示したグラフである。
【0100】
【表3】
表3に示したように、線虫の平均寿命±標準偏差(日数)は、対照区(control)の培地では17.0±0.7であり、天蚕セリシンを培地としたものでは18.5±1.3であった。また、線虫の最長寿命は、対照区(control)の培地では25日、天蚕セリシンを培地としたものでは29日であった。
【0101】
表3、
図6に示したように、天蚕セリシンを培地としたものでは、対照区(control)の培地に対して平均寿命が9%延長された。
【0102】
このことから、天蚕セリシンには寿命延長作用があり、天蚕セリシンを有効成分として配合することで抗加齢用医薬組成物や抗加齢用食品などとすることができることが確認された。
【0103】
<実施例8>天蚕セリシンの作用効果の検討5
実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液について、UV吸光度を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-570)で測定した。
【0104】
結果を
図7に示す。なお、
図7では、比較例1として、特許文献1の実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液AについてのUV吸光度(abs)を分光光度計(日立製作所株式会社製、U-1100)で測定したものであり、同文献1の表4並びに同文献1の
図6に示されているものを曲線(A)として示している。なお、
図7の曲線(A)の数値は、UV吸光度のスケールを同一にするために、特許文献1の
図6のUV吸光度の1000分の1に換算して表示している。
【0105】
図7の曲線(B)に示したように、実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液(
図7中では本願実施例8のセリシンと記載)は、セリシンの構成アミノ酸であるチロシンとフェニルアラニンの存在から波長280nmに吸収のピークを与え、310nm付近まで急峻に低下するが、それ以降の500nm付近まではなだらかに低下している。すなわち、このセリシンは紫外部の短波長(UV CおよびUV B)領域での吸収は高く、UV Aの領域でも吸収を示し、その吸収は500nm付近まで達し、その吸収波長領域がかなり広いことが分かった。したがって、UV吸収性に優れた化粧料として利用することが有効であると考えることができる。
【0106】
また、実施例1の抽出技術で得られた天蚕セリシンは、
図7の曲線(B)に示すように、全てのUV波長帯域において、
図7の曲線(A)に示す従来の天蚕セリシン抽出技術で得られたセリシンよりもUV波長帯域吸収効果が高く、UV吸収性に優れた化粧料(例えばUVカット化粧料(乳液や化粧水など))として利用することが有効であると考えることができる。
【0107】
<実施例9>Tricine-SDSポリアクリルアミド電気泳動による天蚕セリシンの分子量の検討
実施例1で得た天蚕セリシン粉末を、10%(T)、3%(C)の分離ゲル上に濃縮ゲルを重層した垂直型スラブゲルを用いて分離した(Schagger and Jagow, 1987)。電気泳動装置の陰極槽は0.1M Tris、0.1M Tricine、0.1%(W/V)SDSとし、陽極槽は0.2M Tris-HCl buffer (pH 8.9)とし、泳動用試料(10μl)は等量のTricine SDS-PAGE用sample buffer [50mM Tris-HCl(pH 6.8)、4%(W/V) SDS、12%(W/V) glycerol、2%(V/V)β-mercaptethanol、0.01%(W/V) Serva blue ]を加え、3分間熱処理したものを用いた。分子量マーカーには、Protein Marker Kit (M.W. Range 97,000〜14,400, GEヘルスケアサイエンス社)を使用した。泳動は、分離ゲルに入るまでは印加電圧を30Vととし、その後、分離ゲルの下端に達するまでは印加電圧を100Vの定電圧で通電した。泳動後のゲルは、0.25% Coomassie brilliant blure (CBB) R-250、45% ethanol、7% acetic acid 中で染色し、20% ethanol、7% acetic acid中で脱色した。
【0108】
電気泳動の結果を
図8に示す。
図8の左側のレーンはマーカーであり、右側レーンは実施例1で得た天蚕セリシン粉末のタンパク質のバンドを示している。この実施例1で得た天蚕セリシン粉末に含まれるセリシンは、<1>100〜120kDa付近のグループ、<2>35〜50kDa付近のグループ、及び<3>15〜25kDa付近のグループがラダー状になったタンパク質が検出された。特に、グループ<1>では100kDa付近に、グループ<2>では40kDa付近に、グループ<3>では20kDa付近に濃度の濃いバンドが見出された。
【0109】
これに対し、特許文献1の方法で抽出された天蚕セリシン(比較例1)の分子量については、特許文献1の
図4(B)にも示されるように41kDaのバンドのみである。したがって、本願発明(実施例1)の抽出方法によって抽出された天蚕セリシンはUV波長帯域で吸収能の高いタンパク質を多く含んでいることから、UV吸収性に優れた化粧料(UVカット化粧料など)として利用することが有効であると考えることができる。