特許第6012378号(P6012378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012378
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】使い捨てオムツ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20161011BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61F13/15 311Z
   A61F13/15 356
   A61F13/15 350
   A61F13/49 312Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-218618(P2012-218618)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-68907(P2014-68907A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】金子 知央
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊光
(72)【発明者】
【氏名】南 香莉
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−095936(JP,A)
【文献】 特開2012−126140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴回り開口と一対の脚回り開口とを備える使い捨てオムツであって、
縦方向と、縦方向に直交する横断方向とを含み、
前記使い捨てオムツの前記胴回り開口と前記脚回り開口との間に位置する胴回り部分のうち少なくとも側部に複合伸縮性材料が設けられ、
前記複合伸縮性材料は、互いに重ね合わされた第の不織布シート部分及び第の不織布シート部分と、前記第の不織布シート部分と前記第の不織布シート部分との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分がそれぞれ、
前記横断方向に沿って交互に繰り返されると共に前記縦方向に延びる凸部及び凹部を備える複数の凹凸領域と、
これら凹凸領域を前記縦方向に互いに離間させる少なくとも1つの非凹凸領域と、
を備え、
前記凹凸領域同士が互いに隣接しかつ前記非凹凸領域同士が互いに離間するように、かつ前記縦方向に関し前記凹凸領域同士及び前記非凹凸領域同士がそれぞれ互いに整列されるように、前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分が重ね合わされ、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分は、前記弾性部材に適用された接着剤により互いに接合される、
使い捨てオムツ。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記縦方向に互いに離間されつつ互いに整列された前記非凹凸領域同士間を延びる、
請求項1に記載の使い捨てオムツ。
【請求項3】
前記複合伸縮性材料は、前記胴回り部分の一方の側部から他方の側部にわたって延びる、
請求項1又は2に記載の使い捨てオムツ。
【請求項4】
前記第一の不織布シート部分の前記凸部が前記第二の不織布シート部分の前記凹部内部に入り込むと共に、前記第二の不織布シート部分の前記凸部が前記第一の不織布シート部分の前記凹部内部に入り込んでいる、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨てオムツ。
【請求項5】
前記凸部はそれぞれ、前記非凹凸領域から厚さ方向に突出し、
前記凹部はそれぞれ、互いに隣接する2つの前記凸部同士の間で前記非凹凸領域まで到っている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨てオムツ。
【請求項6】
前記複合伸縮性材料は、長繊維不織布から作成される、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨てオムツ。
【請求項7】
互いに重なり合う前記第一の不織布シート部分及び前記第二の不織布シート部分が、単一の不織布シート内に形成されており、
前記単一の不織布シートが、前記非凹凸領域に平行な折り曲げ線に沿って折り曲げられ、互いに重ね合わされている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨てオムツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てオムツに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のシート材と、これら両シート材間に配された複数本の弾性部材とからなる伸縮部を有する複合伸縮性材料であって、前記2枚のシート材は、前記伸縮部の伸縮方向及びそれに直交する方向において間欠的に互いに接合されており、前記弾性部材は、両シート材同士の接合部を通らないように前記伸縮部に配されており且つその両端部において両シート材に固定されており、前記両シート材のそれぞれが、各々複数本の前記弾性部材に亘って連続して延びる複数本の襞を形成している複合伸縮性材料が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
さらに、特許文献1には、このような複合伸縮性材料を使い捨てオムツの胴回り開口部や胴回り側部に配置することが示されている。このような複合伸縮性材料は、吸収性物品等に感触が柔らかいギャザー(多数の襞を有する伸縮部)を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−80859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パンツ型の使い捨てオムツを着用者に着用させるときに、着用者の足が胴回り部分、特に胴回り部分の側部に触れることによって、これらの部分に対して着用者の足を通す方向に力が作用する。このとき、特許文献1に示されているような複合伸縮性材料が当該部分に配置されている使い捨てオムツでは、その複合伸縮性材料が着用者の足を通す方向に力を受けることによって、互いに接合されているシートの収縮によって厚さ方向に変形して大きな皺を生じさせる場合がある。このとき、着用者の足がこのような皺に引っかかってしまい、使い捨てオムツを着用させることが困難となるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、着用者に着用させやすい使い捨てオムツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
胴回り開口と一対の脚回り開口とを備える使い捨てオムツであって、
縦方向と、縦方向に直交する横断方向とを含み、
前記使い捨てオムツの前記胴回り開口と前記脚回り開口との間に位置する胴回り部分のうち少なくとも側部に複合伸縮性材料が設けられ、
前記複合伸縮性材料は、互いに重ね合わされた第の不織布シート部分及び第の不織布シート部分と、前記第の不織布シート部分と前記第の不織布シート部分との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分がそれぞれ、
前記横断方向に沿って交互に繰り返されると共に前記縦方向に延びる凸部及び凹部を備える複数の凹凸領域と、
これら凹凸領域を前記縦方向に互いに離間させる少なくとも1つの非凹凸領域と、
を備え、
前記凹凸領域同士が互いに隣接しかつ前記非凹凸領域同士が互いに離間するように、かつ前記縦方向に関し前記凹凸領域同士及び前記非凹凸領域同士がそれぞれ互いに整列されるように、前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分が重ね合わされ、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分は、前記弾性部材に適用された接着剤により互いに接合される、
使い捨てオムツを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、着用者に着用させやすい使い捨てオムツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一の実施形態の使い捨てオムツを示す正面俯瞰図。
図2図1の使い捨てオムツの展開図。
図3】複合伸縮性材料を製造するための装置の概略図。
図4】複合伸縮性材料を製造する装置の賦形装置に係る欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールの斜視図。
図5図4の欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールの正面図。
図6図4の欠歯ギヤロール又は連続ギヤロールの側面拡大図。
図7】一方の不織布シート部分を折り重ね装置で折り重ねる前の複合伸縮性材料の正面図及び断面図。
図8】一方の不織布シート部分を折り重ね装置で折り重ねた後の複合伸縮性材料の正面図及び断面図。
図9図8のIX線部の切断部分拡大斜視図。
図10図9の複合伸縮性材料の分解図。
図11】弾性部材の断面周辺を拡大した図9の正面図。
図12A】欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールの周囲方向を直線状に展開した、欠歯ギヤロールの欠歯部分における、欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールとこれらの間に配置され変形されている不織布シートとの噛み合わせ部分周辺の拡大断面イメージ図。
図12B】欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールの周囲方向を直線状に展開した、欠歯ギヤロールの不連続歯部分における、欠歯ギヤロール及び連続ギヤロールとこれらの間に配置され変形されている不織布シートとの噛み合わせ部分周辺の拡大断面イメージ図。
図13A】第一の実施形態の複合伸縮性材料が、第二の方向に圧縮される前の形状の一例を示す線図。
図13B】第一の実施形態の複合伸縮性材料が、第二の方向に圧縮された後の形状の一例を示す線図。
図14A】賦形されていない2つの不織布シート部分から形成される複合伸縮性材料が、第二の方向に圧縮される前の形状の一例を示す線図。
図14B】賦形されていない2つの不織布シート部分から形成される複合伸縮性材料が、第二の方向に圧縮された後の形状の一例を示す線図。
図15A】圧縮強度試験の試験片のサイズを説明する図。
図15B】圧縮強度試験の試験片の概略斜視図。
図16】圧縮強度試験における時間と圧縮力の推移の一例を示すグラフ。
図17】断面曲線の例を用いて高さ及び長さを説明する線図である。
図18】第二の実施形態の使い捨てオムツを示す正面俯瞰図。
図19図18の使い捨てオムツの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は上述の図面を参照しつつより詳細に記載される。なお、図面は、本発明の理解を容易にすると共に図面の記載を簡略化するために、実際の構成要素の大きさ、縮尺、形状と同一に描かれていない場合があることに留意されたい。
【0011】
本発明の使い捨てオムツは、いわゆるパンツ型オムツであって、例えば、3P(スリーピース)、サイドパネル、オールインワン、インナー・アウター等のあらゆる構造及び形状の使い捨てオムツを含むものとする。
【0012】
(第一の実施形態)
図1は、1つの胴回り開口WO及び1対の脚回り開口LOを備える、第一の実施形態の使い捨てオムツ1を示す正面俯瞰図である。第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、いわゆるサイドパネル型の使い捨てオムツである。図2は、図1の使い捨てオムツ1の展開図である。図2では、前側領域FA及び後側領域RAが縦方向Tに離間しており、前側領域FAと後側領域RAとの間に股領域CAが位置する。なお、図面において、後述する凹凸領域41に生じる皺の記載については、図面の見易さからその全てを記載しない場合があることに留意されたい。
【0013】
第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、トップシート、バックシート及びトップシートとバックシートとの間に配置される吸収体から構成される吸収要素3と、複合伸縮性材料5から作成される、吸収要素3に接合された4つのサイドパネル5Sとを少なくとも含む。図2を参照すると、吸収要素3は、前側領域FAから股領域CAを介して後側領域RAまで、つまり着用者の腹側から股を通過して背側まで縦方向Tに延びている。
【0014】
トップシートは、着用時に着用者の肌に接する肌当接側に設けられる。トップシートは、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成される。
【0015】
バックシートは、トップシートの逆側に設けられる。バックシートは、防漏性(液不透過性)プラスチックフィルム、又は難透液性繊維不織布、それらのラミネート等から形成される。例えば、主にはプラスチックフィルムや、不織布とプラスチックフィルムのラミネートなどから形成できる。
【0016】
吸収体は、着用者の体液を吸収するものであり、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの吸収性コアと、吸収性コアを被覆するティッシュ等の吸収性シートとによって形成される。
【0017】
第一の実施形態では、各サイドパネル5Sは、オムツ展開時の吸収要素3の両方の縦方向端部の側部3Cに接合される。吸収要素3のそれぞれの横断方向の側(図2の右側及び左側)に配置されるサイドパネル5Sが、これらの側縁部5Ssにおいて互いに接合されている。各サイドパネル5Sは、前側領域FA及び後側領域RAでは、略矩形形状をなしており、股領域CAにおいて使い捨てオムツ1の縦方向T中央に向かうにつれ幅が狭くなっている。この使い捨てオムツ1では、前側領域FA及び後側領域RAよりも幅が狭くなっている股領域CAに位置する部分によって、脚回り開口LOを形成する脚回り開口形成部1LOが形成されている。
【0018】
第一の実施形態の使い捨てオムツ1では、前側領域FA及び後側領域RAに位置する吸収要素3及び各サイドパネル5Sによって、胴回り部分WPが構成されている。そして、前側領域FA及び後側領域RAの各側縁部FAE,RAEを含む胴回り部分の側部WPEに、サイドパネル5S、ひいては複合伸縮性材料5が設けられている。
【0019】
これより、複合伸縮性材料5について説明する。まず、複合伸縮性材料5の製造方法の例について説明する。
【0020】
図3は、複合伸縮性材料5を製造するための装置10の概略図である。図3を参照すると、複合伸縮性材料5を構成する不織布シート6は、不織布シート繰り出し部11に巻き付けられて保持されており、そこから資材搬送方向MDすなわち第一の方向D1(図4等)に巻き出すことによって予熱ロール13に移送される。予熱ロール13は、巻き出した不織布シート6Aを変形し易いように予熱するものであり、この例では50〜130℃に設定されている。予熱温度は不織布の種類に応じて定められるものである。
【0021】
予熱された不織布シート6Bは次いで賦形装置15に移送される。賦形装置15は、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bから構成され、この例では、予熱ロール13と同様に賦形し易いように50〜130℃に温度設定されている。
【0022】
図4は、この例に係る欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの斜視図と賦形後の不織布シート6Cの略図とを示している。なお、図4及び図5では、図3の欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの位置が逆に示されていることに留意されたい。図4に示されているように、連続ギヤロール15Bは周方向に離間された複数の連続歯27を有し、これらの連続歯の各々は幅方向に連続している。また、欠歯ギヤロール15Aは、周方向に離間された複数の不連続歯29を有し、これらの不連続歯29の各々は少なくとも1つの欠歯部分31によって幅方向に不連続になっており、これらの欠歯部分31は周方向に整列されている。
【0023】
予熱された不織布シート6Bは、互いに噛み合いかつ互いに逆方向に回転する欠歯ギヤロール15Aと連続ギヤロール15Bとの間を通過する。すると、不織布シート6Bが第一の方向D1に部分的に延伸されて、第一の方向D1に直交する、不織布シート6の横断方向である第二の方向D2に沿って各々延びる凹部51及び凸部53(図9)が形成される。第一の方向D1に交互に繰り返し形成された凹部51及び凸部53(図9)が凹凸領域41を画定し、これらの凹凸領域41が非凹凸領域43を隔てて不織布シート6Cに形成される。
【0024】
図5は、図4の欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの正面図を示している。この例では、欠歯ギヤロール15Aの中央にある欠歯部分31cの幅Wvcは2mmであり、欠歯ギヤロール15Aの中央にある欠歯部分以外の欠歯部分31sの幅Wvsは1mmであり、不連続歯29の連続している部分の幅Wgは全て共通であり、4mmである。しかしながら、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの各構成要素の寸法は上記寸法に限定されない。中央の欠歯部分31cの中央が他の欠歯部分31sよりも幅が広いのは、後述する不織布シート6を折り重ねる段階において、不織布シート6を折る部分となるからである。
【0025】
なお、この例では、各不連続歯29は第二の方向D2に6列設置されている。しかしながら、この不連続歯29の列の数は図を簡略化するためのものであり、実際には、不連続歯29の列は、第一の実施形態の使い捨てオムツ1のサイズに合わせてこれよりも多くなっている。不連続歯29の列数は、使い捨てオムツ1のサイズや、賦形装置15の各箇所の寸法等に応じて変更することができる。
【0026】
図6は、図4の欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの部分側面図を示している。この例では、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの歯27,29の高さTHは約1mmであり、隣り合う歯27,29の頂部同士の間隔TPは1mmである。また、各歯27,29の頂部には平坦部があり、その平坦部の周方向の長さTLは約0.1mmである。しかしながら、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの各構成要素の寸法は上記寸法に限定されない。
【0027】
図3に戻って、糸状の弾性部材7は、弾性部材繰り出し部17に巻き付けられて保管されており、そこから巻き出すことによって接着剤適用部19に移送される。弾性部材7には、あらかじめ一定の張力が付与されており、その張力が維持されたまま後の工程が行われることになる。この例では、弾性部材貼り合わせ倍率(=(不織布シート部分と貼り合わせるときの伸張状態にある弾性材料の長さ)÷(弾性材料の収縮状態長さ))が3となるように、張力が弾性部材7に付与されている。
【0028】
接着剤適用部19は、接着剤を弾性部材繰り出し部17から移送されてきた弾性部材7Aに適用する。
【0029】
なお、この例では、接着剤適用部19ではスリット連続塗工を行い、スリットノズル(図示しない)から接着剤を吐出した部分に弾性部材7Aを沿わせることで、弾性部材7Aの周囲に接着剤を適用する。ここでは、接着剤はホットメルト接着剤であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
次いで、合流部21において、賦形された不織布シート6Cの非凹凸領域43上に、接着剤が適用された弾性部材7Bを配置する。このときの複合伸縮性材料5Aが図7に示されている。
【0031】
次いで、図7の状態の複合伸縮性材料5Aは折り重ね装置23に移送される。この例では、折り重ね装置23は巻き込みセーラである。巻き込みセーラは、複合伸縮性材料5Aを、中心軸線CL(図7)を折り曲げ線として折り、不織布シート6の一方の片側部分6Uを他方の片側部分6Lの上に、互いの非凹凸領域43が整列するように重ね合わせられる。ひいては、凹凸領域41も互いに整列する。その結果、図7の状態の複合伸縮性材料5Aは折り重ね装置23を通過すると図8の状態の複合伸縮性材料5Bになる。
【0032】
この例では、折り重ね装置23は、中心軸線CLに沿って折り重ねているが、非凹凸領域43に平行な折り曲げ線に沿ってさえいれば、必要に応じてどの位置を中心に折り重ねてもよく、この場合2箇所で折り曲げてもよい。
【0033】
さらに、この例では、複合伸縮性材料5は、1つの不織布シート6内の2つの不織布シート部分同士6U,6Lを重ね合わせることによって製造されている。別の例では、2つの不織布シート6を別個に上述のように賦形して、その後にこれらの不織布シート同士を重ね合わせることによって製造される。
【0034】
図3に戻って、最後に、折り重ね装置23を通過した複合伸縮性材料5Bは、貼り合わせプレス25に移送され、その厚さ方向DTに圧力が印加される。それにより、不織布シート部分同士6U,6Lが非凹凸領域43において弾性部材7を介して接合されて、最終的な複合伸縮性材料5Cが完成する。
【0035】
上述のようにこの例では、不織布シート部分同士6U,6Lが非凹凸領域43において弾性部材7を介して接合されている。しかしながら、別の例では、不織布シート部分同士6U,6Lは、少なくとも一部は凹凸領域41に弾性部材7を介して接合されている。
【0036】
この例では、不織布シート6は秤量15g/mのSMS不織布を使用している。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。使用される不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ヒートロール不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを組み合わせたSMS不織布、エアースルー不織布、スパンレース不織布、エアーレイド不織布等を使用することができる。また、不織布シートの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等を使用することができる。
【0037】
不織布シート6には、繊維を切らずに直接紡糸することによって形成される長繊維不織布、例えばSMS不織布又はスパンボンド不織布等を使用することが好ましい。賦形処理するために必要な不織布シートの強度の低下が起こりにくいという観点から、伸度が高く、さらには、不織布シート自体6が短繊維不織布を使用するよりも薄くなりかつ平面性(フラットネス)の高い布地を作ることができるからである。
【0038】
またこの例では、弾性材料7は、Lycra(登録商標)470dtexを使用している。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。この弾性材料7に、ウレタンスパンデックス等の弾性糸を使用することができる。繊度としては、30〜1500dtex程度の弾性糸を複数本使用し、同一の繊度、または互いに異なる繊度の弾性糸を使用することが好ましい。30dtex以下となると、単位幅あたりの弾性糸使用本数が増加して製造設備が大きくなるおそれがあり、1500dtex以上となると、隣接する弾性糸同士の間隔が大きくなり、上下不織布シート部分6U,6L同士の噛合いが不均一になるおそれがあるからである。また、弾性部材7の素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、SIS、SEBS、SEPS、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を使用することができる。
【0039】
これより、上記製造方法によって製造された複合伸縮性材料5の構成について説明する。
【0040】
図9は、図8のIX部の切断部分拡大斜視図を示し、図10は、図9の分解図を示す。図9及び図10を参照すると、複合伸縮性材料5は、互いに重ね合わされた上側不織布シート部分6U及び下側不織布シート部分6Lと、これらの不織布シート部分の間に配置された弾性材料7とから構成されている。上側不織布シート部分6U及び下側不織布シート部分6Lには、上述のように互いに第一の方向D1に略平行に直線状に延びる複数の凹凸領域41が、非凹凸領域43により第二の方向D2に離間するように形成されている。
【0041】
凹凸領域41はそれぞれ、第一の方向に交互に繰り返し形成された凹部51と凸部53とを含む。具体的には、凹凸領域41において、下側不織布シート部分6Lの凸部53Lが上側不織布シート部分6Uの凹部51Uに入り込み、上側不織布シート部分6Uの凸部53Uが下側不織布シート部分6Lの凹部51Lに入り込んでいる。したがって、上側不織布シート部分6U及び下側不織布シート部分6Lの凹凸領域41は互いに隣接している。これに対して、上側不織布シート部分6U及び下側不織布シート部分6Lに形成されている非凹凸領域43は、互いにその厚さ方向DTに離間されている。
【0042】
図11は弾性部材7の断面周辺を拡大した図9の正面図である。図11を参照すると、2つの不織布シート部分6U、6Lが、非凹凸領域43U,43Lにおいて、弾性部材7を介して接着剤によって互いに接合されていることが、さらに厳密には、接着剤適用部19において適用された接着剤によって形成される接着部45において互いに接合されることが理解できる。なお、図11を参照すると、この例では、接着部45は、弾性部材2の周囲全体を覆うように分布している。別の例では、弾性部材7と非凹凸領域43U,43Lとが接合する箇所にのみ接着剤が適用されている。
【0043】
ここで、各不織布シート部分6U,6Lが、図9及び図10に示されているような形状に変形される機構について説明する。図12A及び図12Bは、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの周囲方向を直線状に展開した、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bとこれらの間に配置され変形されている不織布シート1との、噛み合わせ部分周辺の拡大断面イメージ図を示す。図12Aは、欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31における断面図を示し、図12Bは、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29部分における断面図を示すものである。
【0044】
図12A及び図12Bを参照すると、一方では、図12Aに示されているように、欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31に導入される不織布シート6は、連続ギヤロール15Bに、連続ギヤロール15Bの半径方向外側に押されるものの変形せず、非凹凸領域43を形成することになる。他方では、図12Bに示されているように、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29と連続ギヤロール15Bの連続歯27との間に噛み込まれる不織布シート6は、歯先端部分33にロックされることになる。そうすることによって、三点曲げ状に隣り合う歯先端部分33Bと歯先端部分33Aと別の歯先端部分33Bとの間で延伸されて、その歯先端部分33Aを頂部とする凸部53を形成する。
【0045】
さらに、三点曲げ状に隣り合う歯先端部分33Aと歯先端部分33Bと別の歯先端部分33Aとの間で延伸されて、その歯先端部分33Bを底部とする凹部53を形成する。このとき欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31において連続ギヤロール15Bに押される不織布シートの非凹凸領域43と、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29部分において連続ギヤロール15Bの歯先端部分33Bでロックされることになる不織布シート6の凹部51の底部との、各ギヤロール15A,15Bにおける半径方向の位置がほぼ同じになる。すなわち不織布シート6における厚さがほぼ同じになる。よって、不織布シート6に凹凸領域41及び非凹凸領域43が形成された後も、これらはほぼ同一の面上に存在することになる。ここで、前記面を各不織布シート部分6U,6Lについての仮想の基準面RPと定義する。ここでは、基準面RPは平面状であり、非凹凸領域43はこの基準面RP上で拡がることとなる。なお、各不織布シート部分6U,6Lはそれぞれ柔軟性を備えているので、基準面RPは必ずしも平面状ではない。
【0046】
したがって、凸部53と基準面RPとの間の関係でいうと、凸部53は、基準面RPから、つまり非凹凸領域43から厚さ方向に突出している。そして、凹部51は、互いに隣接する2つの凸部53同士の間で凹凸領域まで到っている。
【0047】
さらにここで、上記製造工程において凸部53が凹部51に入り込む機構について説明する。
【0048】
図9を参照すると、上側不織布シート6Uと下側不織布シート6Lとの基準面RP同士の間に、凸部53が基準面RPから突出している分だけ離れているのが理解できる。つまり、上側不織布シート6Uと下側不織布シート6Lとの対向する非凹凸領域43U,43Lが互いに離間している。これは、賦形装置15の一方を欠歯ギヤロール15Aとし、他方を連続ギヤロール15Bとしたことによって、凸部53が、基準面RPから一方向のみに突出することと、凸部53を有する側の各不織布シート6U,6Lの面同士が互いに向くように重ね合わせられ、ひいては各不織布シート6U,6Lのそれぞれの基準面RPが複合伸縮性材料5の互いに異なる外側の面に位置するように重ね合わされることとによって達成される。したがって、各不織布シート6U,6Lの非凹凸領域43U,43L同士の間において、一定の間隔で画定される空間で延びる弾性部材7を配置することができる。ひいては、各不織布シート部分6U,6L同士の間に弾性部材7を配置することによって凹部51に凸部53が入り込む作用を妨げない。
【0049】
さらに、上記製造工程において凸部53が凹部51に入り込むことを以下の機構により説明することができる。
【0050】
不織布は一般的に柔らかく変形し易いので、製造工程において不織布シートを搬送するために、通常は一定の張力を資材搬送方向MD、すなわち第一の方向D1に付与している。この例では、上記工程において、複合伸縮性材料5Aの不織布シート6Cを折り重ねるときに、折り重ね装置23を使用する。
【0051】
折り重ね装置23を通過するときに、不織布シート部分6Uには折り重ね装置23により張力が第一の方向D1にさらに付与される。具体的には、この張力は、折り重ね装置23の1つの具体的実施態様である巻き込みセーラのセーラエッジ(図示しない)により付与されたものである。これにより、上側不織布シート部分6Uが下側不織布シート部分6Lよりも第一の方向D1に伸びることとなる。ひいては上側不織布シート部分6Uの凹凸領域41の凹凸ピッチ(凹部51及び凸部53の第一の方向の1周期当たりの長さ)が下側不織布シート部分6Lの凹凸領域41の凹凸ピッチよりもわずかに拡がることになる。
【0052】
その後に、上側不織布シート部分6Uが、下側不織布シート部分6Lに重ねられるときに、張力が解放されて、折り重ね装置23に導入される以前より付与されていた張力が付与されている状態に戻ることになる。次いで、凹凸ピッチが、複合伸縮性材料5Aが折り重ね装置23に導入される以前の状態に戻る。したがって、上側不織布シート部分6Uの凹部51U及び凸部53Uと下側不織布シート部分6Lの凸部53L及び凹部51Lとの相対的な位置が変化することになる。その結果、これらの部分の凹凸ピッチが、張力が解放されて互いに同じになるときに、上記の凹部51及び凸部53の形状も貢献して半ピッチ分オフセットすることによって、凸部53が凹部51に入り込むこととなる。
【0053】
なお、この複合伸縮性材料5では、凹凸領域41において不織布シート6が厚さ方向DTに延伸されているという構成により、収縮状態になると、凹凸領域41における複合伸縮性材料5の厚さが、非凹凸領域43における厚さよりも厚くなる。したがって、複合伸縮性材料5に着用者が触れたときの感触が良い。弾性部材7の周囲に適用された接着剤によって固くなっている非凹凸領域43が凹凸領域41よりも突出して、凹凸領域41よりも先に非凹凸領域43が着用者の体に触れて着用者に異物感を感じさせることを妨げるからである。同様の理由から、弾性部材7の直径が、互いに整列している非凹凸領域43同士の間隔よりもわずかに小さいとさらに好ましい。
【0054】
上記では、折り重ね装置23を使用した場合の製造方法を述べた。別の例では、2つの不織布シートを別々に同形状に賦形処理して重ね合わることによって、折り重ね装置23を使用することなく、上述したような複合伸縮性材料5を製造する。この場合、不織布シート同士を重ね合わせるときに、一方の不織布シートに他方の不織布シートよりも高い張力を第一の方向に付与しておく。それにより、1つの不織布シート6の2つの不織布シート部分6U,6Lを重ねる場合と同じ構成を取ることができる。上述した理由により、不織布シート部分6U,6Lの凸部53U,53Lが、不織布シート部分6L,6Uの凹部51L,51U内部に入り込むことになるからである。ただし、2つの不織布シートの秤量や繊維の太さなどが互いに異なる場合には、互いの凹凸ピッチを適合させるように各不織布シートに付与する張力を調節する必要があることに留意されたい。
【0055】
ところで、第一の実施形態に関する記載の冒頭で説明したように、第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、使い捨てオムツ1のサイズに適合するように上述の製造方法を用いて製造された複合伸縮性材料5をサイドパネル5Sとして備える。このとき、第一の実施形態では、複合伸縮性材料5は、複合伸縮性材料5の第一の方向D1が使い捨てオムツ1の横断方向Lとほぼ整列するように、かつ複合伸縮性材料5の第二の方向D2が使い捨てオムツ1の縦方向Tとほぼ整列するように、吸収要素3に接合される。
【0056】
明細書の冒頭で説明したように、着用者にパンツ型の使い捨てオムツ1を着用させるときに、着用者の足が胴回り部分WP(図1)、特に胴回り部分の側部WPE(図1)に触れることによって、これらの部分に対して着用者の足を通す方向に、ひいては特に縦方向Tに力が作用する。第一の実施形態の使い捨てオムツ1では、この胴回り部分WPのうちの側部WPEに複合伸縮性材料5が配置されている。
【0057】
これより、第一の実施形態の使い捨てオムツ1が従来のものと比較して着用させ易い機構について説明する。
【0058】
上述したように、複合伸縮性材料5は、凹凸領域41において、凹部51及び凸部53が第一の方向に交互に形成されているという形状を有する。図9の手前側の断面からも理解できるように、凹凸領域41の第一の方向に沿った断面が波形を有しており、この形状が一般的な段ボールの内側に配設されている、断面波形の中芯のような働きをする。さらに、2つの不織布シート部分6U,6Lの凹凸領域41が互いに隣接しており、より具体的には不織布シート部分6U,6Lの凸部53U,53Lが、不織布シート部分6L,6Uの凹部51L,51U内部に入り込んでいることから、2つの不織布シート部分6U,6Lが互いを支え合い協働する。その結果、複合伸縮性材料5第二の方向D2、ひいては使い捨てオムツ1の縦方向Tの圧縮力に対する剛性が、賦形されていない2つの不織布シート部分6’から形成される複合伸縮性材料5’よりも高いものとなる。
【0059】
図13A及び図13Bはそれぞれ、複合伸縮性材料5が、第二の方向に圧縮される前及び後の形状の一例を示す線図である。そして、図14A及び図14Bはそれぞれ、賦形されていない2つの不織布シート部分6’から形成される複合伸縮性材料5’が、第二の方向に圧縮される前及び後の形状の一例を示す線図である。複合伸縮性材料5は、第二の方向に圧縮力が印加された場合でも、凹凸領域41ではその賦形形状及び構成に起因する圧縮剛性によって、弾性部材7同士の間で折れ曲がりにくく、すなわち座屈しにくくなっている。図13Bを参照すると、この複合伸縮性材料5は、凹凸領域41では曲がらずに、非凹凸領域43のところで若干折れ曲がっている様子が示されている。これに対して、図14Bを参照すると、賦形されていない複合伸縮性材料5’では、第二の方向に圧縮力が付与されると、弾性部材7同士の間に位置する不織布シート部分6’は、形状による力を発生することなく自由に動くので、弾性部材7同士の間隔が短くなる。それに伴い、不織布シート部分6’が厚さ方向に突出するので、賦形されていない複合伸縮性材料5’では、大きな皺が発生しやすい。以上により、複合伸縮性材料5は、従来の複合伸縮性材料5’よりも第二の方向D2の圧縮強度が高いことが理解できる。その結果、第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、着用時に着用者の足を胴回り開口WOから脚回り開口LOまで通す過程で、着用者の足が引掛ってしまうおそれのある大きな皺を発生しにくい。さらには、着用者に使い捨てオムツ1を着用させるときに印加される縦方向Tの力を伝達し易くなる。よって、第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、従来の使い捨てオムツよりも着用させ易いものとなっている。
【0060】
さらに、複合伸縮性材料5の圧縮剛性が高いことを確認するために以下に説明する圧縮強度試験が行われた。
【0061】
−試験方法−
このために実施された圧縮強度試験は、紙及び板紙の圧縮強さ試験に使用されるリングクラッシュ試験(JIS P8126)に類する試験である。この圧縮強度試験では、図15Aに示されるように、第一の方向に100mmかつ第二の方向に20mmの長さの形状の試験片61を用意する。次いで、試験片61は、図15Bに示されるように、リング状にされて、その端部同士が2mmの重複部分をもって、ステープラー(図15Bにはステープラーの針63が示されている。)によって略中央で1箇所のみ接合されることによって、形成される。
【0062】
この圧縮強度試験を実施するには、この試験片61が試験台上に載置されて、試験片61の上方縁部全体に対して鉛直方向下方に圧縮力が、試験片61が座屈するまで印加される。図16は、圧縮強度試験における時間T[s]と圧縮力Fc[N]の推移の一例を示すグラフである。図16を参照すると、試験片61に徐々に圧縮力を印加し、その後、図16の参照番号65が示す時点で試験片61が圧縮力に耐えられなくなり座屈したのが理解できる。この座屈した時点に印加されていた圧縮力を圧縮強度試験の評価基準とする。
【0063】
以下に示すサンプルについて、この圧縮強度試験が実施された。
【0064】
(実施例)
実施例の試験片61は、上述の製造方法によって製造された複合伸縮性材料5から作成されたものであり、上述の試験片61のサイズにしたものを使用した。実施例の試験片61では、弾性部材7同士の間隔は5mmであり、秤量15g/mのSMS不織布が使用された。
【0065】
(比較例)
賦形されていない不織布シート部分6’使用している以外は、複合伸縮性材料5と全く同じように作成した複合伸縮性材料5’を、上述の試験片61のサイズにしたものを使用した。
【0066】
以下に、圧縮強度試験の結果を示す。なお、以下の測定結果は、実施例及び比較例共に3つの試験片における測定結果の平均値である。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示されているように、第一の実施形態の複合伸縮性材料5は、賦形されていない従来の複合伸縮性材料よりも第二の方向の圧縮強度が十分に高いことが確認された。
【0069】
また、第一の実施形態の複合伸縮性材料5は、50%伸長状態において複合伸縮性材料に3gf/cm(0.3kPa)の圧力を厚さ方向に印加したときに、測定装置によって計測される厚さが2.0mm以下である。
【0070】
さらに、第一の実施形態の複合伸縮性材料5は、50%伸長状態における断面曲線要素の密度Dが8から15個/cmである。
【0071】
ここで、上述の50%伸長状態は、伸長率が50%になるように複合伸縮性材料を伸縮方向に伸長させた状態を指す。伸長率は次式で定義される。
伸長率(%)=(LM−LM0)/LM0・100
ここで、LM:伸長させた複合伸縮性材料部分の伸縮方向長さ
LM0:自然状態にある当該複合伸縮性材料部分の伸縮方向長さ
【0072】
上述の断面曲線要素の密度Dは、以下のようにして求められる。まず、複合伸縮性材料5の凹凸領域41における伸縮方向に沿った断面曲線が形状測定機により測定される。なお、断面形状は互いに隣接する2本の弾性部材同士間のほぼ中央で測定されるのが好ましい。次いで、この断面曲線から、基準長さにおける断面曲線要素の高さZ(x)及び長さXsが求められる(JIS B0601:2001(ISO4287:1997)、JIS B0651:2001(ISO3274:1996)及び図17参照)。最後に、断面曲線要素の密度Dは、上述の断面曲線要素の長さXsの平均値PSmから、算出される(D=1/PSm)。
【0073】
上述したように、第一の実施形態の複合伸縮性材料5は、50%伸長状態において複合伸縮性材料に3gf/cm(0.3kPa)の圧力を厚さ方向に印加したときに、測定装置によって計測される厚さが2.0mm以下である。したがって、この複合伸縮性材料5は、十分に薄くて大きな皺がなく、ひいては使い捨てオムツ1を着用者に着用させやすい。しかしながら、別の実施形態の複合伸縮性材料は、厚さが2.0mmよりも厚い。
【0074】
また、上述したように、第一の実施形態の複合伸縮性材料5はさらに、50%伸長状態における断面曲線要素の密度Dが8から15個/cmである。したがって、皺がより均一となり、ひいては収縮状態にあるときでも全体的に薄く表面がより平滑になる複合伸縮性材料が提供される。それにより、より優れた感触及び審美性を有する複合伸縮性材料が提供される。しかも、皺が過度に小さくないので、複合伸縮性材料の製造が容易である。しかしながら、別の実施形態の複合伸縮性材料は、断面曲線要素の密度Dが8個/cm未満である。さらに別の実施形態の複合伸縮性材料は、断面曲線要素の密度Dが15個/cmよりも大きい。
【0075】
まとめると、第一の実施形態の使い捨てオムツ1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)上述の方法で製造された複合伸縮性材料5が、着用者の足が最も引っかかり易い使い捨てオムツ1の胴回り側部WPEに配置されている。したがって、従来の使い捨てオムツのように大きな皺が形成されず、さらには、着用者に使い捨てオムツ1を着用させるときに印加される縦方向Tの力を伝達し易くなるので、着用者に使い捨てオムツ1を着用させ易い。
(2)また、複合伸縮性材料5は着用者の肌に触れるという観点から、より優れた感触を有するのが好ましい。上述したように、収縮状態にあるときの複合伸縮性材料5の厚さが非凹凸領域43よりも凹凸領域41において厚いので、弾性部材7の周囲に適用された接着剤によって固くなっている非凹凸領域43が、着用者の肌に直接触れない。その結果、複合伸縮性材料5に触れたときの感触が良い。
【0076】
(3)また、複合伸縮性材料5は、外側から視認されるという観点から、より優れた審美性を有するのが好ましい。凹部51に凸部53が入り込むという複合伸縮性材料5の構成によって、収縮状態においても賦形した通りの規則的な皺を形成することができる。それにより、全体的に薄くかつ表面が平滑な複合伸縮性材料5を製造することができるので、着用時に着用者の足がその表面で滑り易くなり、ひいては着用者に使い捨てオムツ1を着用させ易い。
(4)また、長繊維不織布を複合伸縮性材料5の素材として使用しているので、短繊維不織布を素材として使用するよりも薄く、平面性の高い複合伸縮性材料5を形成することができる。したがって、使い捨てオムツ1に足をさらに通しやすく、着用者に使い捨てオムツ1を着用させ易い。
【0077】
(第二の実施形態)
これより、図18及び図19を用いて、第二の実施形態の使い捨てオムツ1について説明する。なお、第二の実施形態については、第一の実施形態との差異点のみを説明する。
【0078】
図18は、第二の実施形態の使い捨てオムツ1の正面俯瞰図である。第二の実施形態の使い捨てオムツ1は、いわゆる3P(スリーピース)型のオムツである。図19は、第二の実施形態の使い捨てオムツ1の展開図である。この使い捨てオムツ1は、トップシート、吸収体及びバックシート等から構成される吸収要素3と、複合伸縮性材料5から作成される略矩形形状の前側部材5F及び後側部材5Rとを少なくとも含む。
【0079】
図19を参照すると、前側部材5Fは前側領域FAに配置され、後側部材5Rは後側領域RAに配置される。前側部材5Fは吸収要素3の縦方向端部3LEの一方と接合し、後側部材5Rは吸収要素3の縦方向端部3LEの他方と接合する。股領域CAの前側領域FA及び後側領域RAよりも幅が狭くなっている部分によって脚回り開口LOを形成する脚回り開口形成部1LOが形成されている。
【0080】
図19を参照すると、前側領域FAの側縁部FAE及び後側領域RAの側縁部RAEを含む領域に複合伸縮性材料5が設けられていることが理解できる。その上、第二の実施形態では、1つの複合伸縮性材料5から構成される前側部材5Fが前側領域FAの横断方向端部FAEの一方から前側領域FAの横断方向端部FAEの他方にわたって延びており、さらに別の1つの複合伸縮性材料5から構成される後側部材5Rが後側領域RAの横断方向端部RAEの一方から後側領域RAの横断方向端部RAEの他方にわたって延びている。
【0081】
上記の第二の実施形態の使い捨てオムツ1は、使い捨てオムツ1の胴回り部分の側部WPE図18)のみではなく、胴回り部分WPの一方の側部WPEから他方の側部WPEにわたって複合伸縮性材料5が延びている。言い換えれば、この使い捨てオムツ1では、胴回り部分WP(図18)全体に、すなわち着用時に着用者の足が触れ得るより広域な部分に複合伸縮性材料5が配されている。したがって、さらに足が引っかかりづらく、使い捨てオムツ1を着用者に着用させ易い構成になっているので有利である。
【0082】
なお、本明細書、図面及び特許請求の範囲から当業者によって理解されることのできるような全ての特徴は、これらの特徴が特定の他の特徴に関連してのみ組み合わされて説明されたとしても、それらの特徴が明確に除外されない限り、又は技術的な態様が不可能な若しくは意味のない組み合わせにならない限りにおいて、独立して、またさらに、ここで開示された他の特徴又は特徴の複数の群と任意に組み合わせて、結合されることができるものとする。
【0083】
本発明は、以下のように規定される。
(1) 胴回り開口と一対の脚回り開口とを備える使い捨てオムツであって、
縦方向と、縦方向に直交する横断方向とを含み、
前記使い捨てオムツの前記胴回り開口と前記脚回り開口との間に位置する胴回り部分のうち少なくとも側部に複合伸縮性材料が設けられ、
前記複合伸縮性材料は、互いに重ね合わされた第の不織布シート部分及び第の不織布シート部分と、前記第の不織布シート部分と前記第の不織布シート部分との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分がそれぞれ、
前記横断方向に沿って交互に繰り返されると共に前記縦方向に延びる凸部及び凹部を備える複数の凹凸領域と、
これら凹凸領域を前記縦方向に互いに離間させる少なくとも1つの非凹凸領域と、
を備え、
前記凹凸領域同士が互いに隣接しかつ前記非凹凸領域同士が互いに離間するように、かつ前記縦方向に関し前記凹凸領域同士及び前記非凹凸領域同士がそれぞれ互いに整列されるように、前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分が重ね合わされ、
前記第の不織布シート部分及び前記第の不織布シート部分は、前記弾性部材に適用された接着剤により互いに接合される、
使い捨てオムツ。
【0084】
(2) 前記弾性部材は、前記縦方向に互いに離間されつつ互いに整列された前記非凹凸領域同士間を延びる、
(1)に記載の使い捨てオムツ。
【0085】
(3) 前記複合伸縮性材料は、前記胴回り部分の一方の側部から他方の側部にわたって延びる、
(1)又は(2)に記載の使い捨てオムツ。
【0086】
(4) 前記第一の不織布シート部分の前記凸部が前記第二の不織布シート部分の前記凹部内部に入り込むと共に、前記第二の不織布シート部分の前記凸部が前記第一の不織布シート部分の前記凹部内部に入り込んでいる、
(1)〜(3)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。
【0087】
(5) 前記凸部はそれぞれ、前記非凹凸領域から厚さ方向に突出し、
前記凹部はそれぞれ、互いに隣接する2つの前記凸部同士の間で前記非凹凸領域まで到っている、
(1)〜(4)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。
【0088】
(6) 前記複合伸縮性材料は、長繊維不織布から作成される、
(1)〜(5)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。
【0089】
(7) 互いに重なり合う前記第一の不織布シート部分及び前記第二の不織布シート部分が、単一の不織布シート内に形成されており、
前記単一の不織布シートが、前記非凹凸領域に平行な折り曲げ線に沿って折り曲げられ、互いに重ね合わされている、
(1)〜(6)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。
【符号の説明】
【0090】
1 使い捨てオムツ
5 複合伸縮性材料
6 不織布シート
6U 上側不織布シート部分(第一の又は第二の不織布シート部分)
6L 下側不織布シート部分(第二の又は第一の不織布シート部分)
7 弾性部材
41 凹凸領域
43 非凹凸領域
51 凹部
53 凸部
WO 胴回り開口
LO 脚回り開口
T 縦方向
L 横断方向
WP 胴回り部分
WPE (胴回り部分の)側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19