(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1抑圧比は、40dB以上であり、前記レーザ信号光の横モードにおける主モード光の強度に対する1次の高次モード光の強度の第2抑圧比が10dB以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明に係る光モジュールの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下では、シングルモード、マルチモード等の用語におけるモードは、横モードを意味する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光モジュールの模式図である。光モジュール1000は、基板B上に配置された面発光レーザ素子100と、ミラー20と、光ファイバ30とを備えている。
【0018】
面発光レーザ素子100には、面発光レーザ素子100を駆動するための制御器Cが接続されている。光ファイバ30の端面の側部には、光結合手段としてのミラー20が配置されている。ミラー20および光ファイバ30は、不図示の支持部材によって好適な配置になるように支持されている。面発光レーザ素子100は、ミラー20の下方に配置されている。制御器Cは面発光レーザ素子100を駆動してレーザ信号光L1を出力させる。面発光レーザ素子100から出力されたレーザ信号光L1はミラー20によって反射されて光ファイバ30に光学結合し、光ファイバ30を伝搬して外部に出力される。
【0019】
図2は、
図1に示す面発光レーザ素子の模式的な断面図である。
図1に示すように、面発光レーザ素子100は、面方位(001)のn型GaAsからなる基板1上に積層された、下部多層膜反射鏡として機能するアンドープの下部DBR(Distributed Bragg Reflector)ミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層8、p型スペーサ層9、p型コンタクト層10、p側電極11、および上部反射鏡として機能する上部誘電体DBRミラー12を備える。
【0020】
p型コンタクト層10およびn型コンタクト層3は、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー12との間に配置されている。活性層6は、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー12との間に配置されている。電流狭窄層8は、p型コンタクト層10と活性層6との間に配置されている。p型スペーサ層9は、電流狭窄層8とp型コンタクト層10との間に介挿されている。p側電極11はp型コンタクト層10上に形成され、n側電極4はn型コンタクト層3上に形成されている。
【0021】
n型クラッド層5からp型コンタクト層10までの積層構造は、エッチング処理等によって柱状に成形されたメサポストMとして形成されている。メサポスト径はたとえば直径30μmである。また、n型コンタクト層3はメサポストMの外周側に延設している。また、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー12とは光共振器を構成している。
【0022】
下部DBRミラー2は、n型GaAsからなる基板1上に積層されたアンドープGaAsバッファ層(不図示)上に形成される。下部DBRミラー2は、低屈折率層として機能するAl
0.9Ga
0.1As層と、高屈折率層として機能するGaAs層とを1ペアとする複合半導体層がたとえば40.5ペア積層された、周期構造を有する半導体多層膜ミラーとして形成されている。下部DBRミラー2の複合半導体層を構成する各層の層厚は、λ/4n(λ:レーザ発振波長、n:屈折率)である。たとえば、λが1.06μmの場合、Al
0.9Ga
0.1As層の層厚は約88nmであり、GaAs層の層厚は約76nmである。
【0023】
n型コンタクト層3およびn型クラッド層5は、n型GaAsを材料として形成される。
【0024】
p型クラッド層7は、p型AlGaAsを材料として形成される(たとえば、Al
0.3Ga
0.7Asが望ましい)。p型スペーサ層9は、p型AlGaAsを材料として形成される。p型コンタクト層10は、p型GaAsを材料として形成される。
【0025】
n型クラッド層5、p型クラッド層7、p型スペーサ層9には、キャリア濃度がたとえば1×10
18cm
−3程度となるようにp型またはn型ドーパントが添加されており、確実にp型またはn型の導電型とされている。また、n型コンタクト層3、p型コンタクト層10のキャリア濃度はたとえばそれぞれ2×10
18cm
−3、3×10
19cm
−3程度である。
【0026】
電流狭窄層8は、電流注入部としての開口部8aと電流狭窄部としての選択酸化層8bとから構成されている。開口部8aはAl
1−xGa
xAs(0≦x<0.2)からなり、選択酸化層8bは(Al
1−xGa
x)
2O
3からなる。なお、xはたとえば0.02である。
【0027】
電流狭窄層8は、Al
1−xGa
xAsからなるAl含有半導体層を選択酸化熱処理することによって形成される。すなわち、選択酸化層8bは、このAl含有半導体層がメサポストMの外周部から積層面に沿って所定範囲だけ酸化されることで、開口部8aの外周にリング状に形成されている。選択酸化層8bは、絶縁性を有し、p側電極11から注入される電流を狭窄して開口部8a内に集中させることで、開口部8aの直下における活性層6に注入される電流密度を高める機能を有する。開口部8aの開口径はたとえば6μm〜7μmである。電流狭窄層8の厚さはたとえば20nm〜30nmである。これによって、面発光レーザ素子100はマルチモード発振する。
【0028】
活性層6は、井戸層と障壁層とが交互に積層した多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)層の両側を分離閉じ込め(Separate Confinement Heterostructure)層で挟んだMQW−SCH構造を有する。なお、井戸層は所望の波長の光を放出するように選択される材料からなり、たとえばGaInAs系の半導体材料からなる。障壁層はたとえばGaAsからなる。この活性層6は、p側電極11から注入されて電流狭窄層8によって狭窄された電流により、たとえば1.0μm〜1.1μm(1.0μm帯とする)の波長の光を含む自然放出光を発するようにその半導体材料の組成および層厚が設定されている。
【0029】
上部誘電体DBRミラー12は、低屈折率層として機能するSiO
2層と、高屈折率層として機能するSiNx層とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された、周期構造を有する誘電体多層膜ミラーとして形成されており、下部DBRミラー2と同様に各層の層厚がλ/4nとされている。
【0030】
p側電極11は、p型コンタクト層10の外
縁に沿ってリング状に形成されている。一方、n側電極4は、メサポストMの外周側に延設したn型コンタクト層3の延設部分の表面に形成され、メサポストMの周囲を取り囲むようにC字状に形成されている。
【0031】
つぎに、この面発光レーザ素子100の動作について説明する。はじめに、制御器Cが、p側電極11とn側電極4との間にバイアス電圧および変調電圧信号を印加し電流を注入する。p側のキャリア(ホール)は、p型コンタクト層10では層内を紙面横方向に流れ、その後p型スペーサ層9を通過し、電流狭窄層8の開口部8a内に集中して密度が高められた状態で、活性層6に注入される。一方、n側のキャリア(電子)については、n側電極4からn型コンタクト層3、n型クラッド層5を通過して、活性層6に注入される。
【0032】
このように、面発光レーザ素子100は、p側のキャリアおよびn側のキャリアのいずれもが、DBRミラーを経由しないで活性層に注入される、いわゆるダブルイントラキャビティ構造を有する。
【0033】
キャリアが注入された活性層6は、自然放出光を発生する。発生した自然放出光は、活性層6の光増幅作用と光共振器の作用とによって、1.0μm波長帯のいずれかの波長においてレーザ発振する。その結果、この面発光レーザ素子100は、上部誘電体DBRミラー12上から変調信号を含むレーザ信号光L1を出力する。
【0034】
ここで、電流狭窄層8の厚さおよび開口部8aの開口径の調整によって、レーザ信号光L1はマルチモードで出力される。
図3は、電流狭窄層8の厚さを20nmとし、開口部8aの開口径を6.5μmとした実施例の面発光レーザ素子の出力光スペクトルを示す図である。なお、変調電圧信号の変調速度は10Gbpsとし、バイアス電流は5mAとしている。
図3に示すようにレーザ信号光L1のスペクトルには、主モード光M1、1次の高次モード光M2、2次の高次モード光M3、およびさらに高次の高次モード光の成分が含まれる。
【0035】
図3では、光強度がデシベル単位である。したがって、主モード光M1の強度に対する2次の高次モード光M3の強度の抑圧比は、両者の強度の差分で表される値であり、−5dBm−(−45dBm)=40dBである。このとき、レーザ信号光L1に含まれるモード競合雑音が抑制される。
【0036】
以下、具体的に説明する。
図4は、
図2に示す面発光レーザ素子100と同様の構成の面発光レーザ素子における、主モード光の強度に対する2次の高次モード光の強度の抑圧比と、レーザ信号光の相対強度雑音(Relative Intensity Noise:RIN)との関係を示す図である。黒四角点は測定データ点を示し、実線は測定データ点の最小自乗法によるフィッティング曲線を示している。縦軸のRINは周波数1Hzあたりの値に規格化した値である。測定に用いた面発光レーザ素子では、抑圧比を様々な値にするために、電流狭窄層の厚さおよび開口部の開口径が調整されている。
【0037】
図4に示すように、抑圧比が低い場合は、RINの値が大きいが、抑圧比が高くなるにつれてRINの値が小さくなり、35dB以上では、抑圧比の変化に対してRINの変化が小さく、RINが安定した領域となっている。
【0038】
本発明者らがモード競合雑音を抑制するために鋭意検討を行って得た知見によれば、主モード光の強度に対する2次の高次モード光の強度の抑圧比(第1抑圧比)の値を調整することで、レーザ信号光に含まれるモード競合雑音を抑制することができる。たとえば、
図4の場合は、抑圧比を35dB以上に調整することが好ましく、40dB以上に調整することがより好ましい。
【0039】
また、第1抑圧比は、RINが基準値から10dB/Hz以上低くなる範囲に調整することが好ましい。基準値としては、一般的な規格などが挙げられるが、例えば−128dB/Hzとしても良い。その場合は、RINが−138dB/Hz以下とするのが好ましい。
【0040】
このように主モード光と2次の高次モード光との抑圧比の調整によって、モード競合雑音を効果的に抑制できる理由は、以下の通りと考えられる。すなわち、主モード光はLP01モードであり、2次の高次モード光はLP02モードであるが、LP01モードとLP02モードはいずれも近視野像(Near Field Pattern:NFP)が発光領域の中央に強度ピークを有しており、光のパターンの対称性が類似しているため、光が両モード間で遷移しやすくなっており、モード競合雑音に対する寄与が大きいと考えられる。したがって、寄与が大きい2つのモード光間の抑圧比の調整によって、モード競合雑音を効果的に抑制できる。
【0041】
なお、主モード光と他の高次モードとの関係については、3次以上の高次モード光の強度が、2次モード光の強度よりも低いこと、モード競合雑音の抑制の点で好ましい。さらには、第1抑圧比が、40dB以上であり、主モード光の強度に対する1次の高次モード光の強度の抑圧比(第2抑圧比)が5dB以上40dB以下であることが、モード競合雑音の抑制の点で好ましい。たとえば、
図3の場合は、第2抑圧比は−5dBm−(−15dBm)=10dBである。
【0042】
つぎに、
図2に示す面発光レーザ素子100と同様の構成の面発光レーザ素子において、電流狭窄層8の厚さを40nmとし、開口部8aの開口径を6.5μmとした比較例の面発光レーザ素子を作製し、その動作特性を測定した。
【0043】
図5は、比較例の面発光レーザ素子の出力光スペクトルを示す図である。なお、動作時の変調電圧信号の変調速度は10Gbpsとし、バイアス電流は5mAとしている。
図5に示す出力光スペクトルでは、レーザ信号光のスペクトルには、主モード光M11、1次の高次モード光M12、2次の高次モード光M13、およびさらに高次の高次モード光の成分が含まれる。ただし、第1抑制比、第2抑制比はいずれも10dBより小さかった。
【0044】
つぎに、
図3、
図5の出力光スペクトルを測定した条件と同じ条件で、実施例、比較例の面発光レーザ素子から出力されたレーザ信号光のアイダイアグラムを測定した。なお、変調信号の消光比は6dBに設定した。
【0045】
図6は、実施例のアイダイアグラムを示す図である。
図7は、比較例のアイダイアグラムを示す図である。
図6、7に示すように、比較例のアイダイアグラムでは、トレースが太くなっていた。この現象は、比較例ではレーザ信号光のジッタが大きく、伝送データの誤り率が高いことを示している。一方、実施例のアイダイアグラムでは、トレースが細いままであった。この現象は、実施例ではレーザ信号光のジッタが小さく、伝送データの誤り率が低いことを示している。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光モジュール1000は、面発光レーザ素子100がマルチモード発振であるため、電気抵抗の増大や信頼性の低下などが抑制され、かつ低コストであり、さらにモード競合雑音が抑制されているために高速変調に適するものである。
【0047】
つぎに、実施の形態1に係る光モジュールに使用できる面発光レーザ素子の別の実施の形態について説明する。
図8は、実施の形態1に係る光モジュールに使用できる面発光レーザ素子の別の実施の形態の模式的な断面図である。面発光レーザ素子200は、基板1上に積層された、下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、電流狭窄層8、p型スペーサ層9、p型コンタクト層10、p側電極21、中間層23、および上部誘電体DBRミラー22を備える。
【0048】
下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、電流狭窄層8、p型スペーサ層9およびp型コンタクト層10については、
図2に示す面発光レーザ素子100の対応する要素と同じなので、説明を省略する。
【0049】
中間層23は、p型コンタクト層10と上部誘電体DBRミラー22との間に形成されており、第1層23aと第2層23bとで構成されている。
【0050】
第1層23aは、たとえば、位相調整層、保護層、非線形層または吸収層である。位相調整層は、例えばメサポストMとは屈折率の異なる誘電体で形成され、面発光レーザ素子200が出力するレーザ信号光の位相を調整する機能を有する。保護層は、たとえば誘電体で形成され、メサポストMの上面を保護する機能を有する。非線形層は、例えば窒化シリコンで形成され、面発光レーザ素子100が出力するレーザ信号光に対して非線形光学効果を生じさせ、高次高調波を生じさせる機能を有する。吸収層は、例えば高次高調波を吸収する機能を有する。第2層23bは、第1層23aと同様に、位相調整層、保護層、非線形層または吸収層等、あるいは上部誘電体DBRミラー22の最下層として機能する層である。
【0051】
p側電極21は、p型コンタクト層10の外
縁に沿ってリング状に形成されている。p側電極21の内周側には中間層23の上部に延在する延在部21aが形成されている。
【0052】
上部誘電体DBRミラー22は、SiO
2層と、SiNx層とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された、周期構造を有する誘電体多層膜ミラーとして形成されている。
【0053】
ここで、上部誘電体DBRミラー22は、中間層23およびp側電極21を覆うように形成されている。p側電極21の延在部21aが中間層23の上部に延在しているため、延在部21aの上では、上部誘電体DBRミラー22を構成する各層にはリング状の凸部22aが形成される。凸部22aの内周側にはレーザ信号光の出力領域に位置する平坦部22bが形成される。
【0054】
各層の平坦部22bの周囲にある凸部22aは光の出力方向に向かって内径が小さくなるように形成される。線Lは各凸部22aの頂部を結んだ線であるが、線Lは内側(平坦部22b側)に傾斜する。これによって、各平坦部22bも光の出力方向に向かって面積が小さくなるように形成される。
【0055】
面発光レーザ素子200では、このように上部誘電体DBRミラー22を構成する各層の各平坦部22bが、光の出力方向に向かって面積が小さくなるように形成されているため、高次モード光のレーザ発振が抑制される。たとえば、各平坦部22bの面積や面積が小さくなる程度(すなわち線Lの傾斜角度)を調整することによって、レーザ信号光に含まれる主モード光の強度に対する2次の高次モード光の強度の抑圧比(第1抑圧比)、および他の高次モード光の抑圧比を調整することができる。これによって、面発光レーザ素子200から出力されるレーザ信号光に含まれるモード競合雑音を抑制することができる。また,p側電極21の開口部の形状や面積を制御することで,2次のモードの強度を制御することができる。開口部を大きくすると、キャリアの注入の均一性が悪くなり、メサの中心軸から離れた部分に強度分布を持つ2次のモードが発振しやすくなる。したがって、電極の開口部の面積を狭くして、電流注入を均一化することによって、モード競合雑音を低減させることができる。
【0056】
図9は、
図8に示す面発光レーザ素子の変形例1の要部を示す図である。なお、面発光レーザ素子300のメサポストMから基板側の構成は
図8に示す面発光レーザ素子200と同様なので、説明を省略する。
【0057】
p側電極31は、メサポストMの外
縁に沿ってリング状に形成されている。また、中間層33は、その外周面がp側電極31の内周面とほぼ一致するように形成されている。中間層33は、たとえば、位相調整層、保護層、非線形層または吸収層である。また、中間層33は、
図8に示す中間層23と同様に第1層と第2層とで構成されていてもよい。
【0058】
上部誘電体DBRミラー32は、SiO
2層と、SiNx層とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された、周期構造を有する誘電体多層膜ミラーとして形成されている。なお、層の数は省略して図示している。
【0059】
ここで、中間層33の厚さはp側電極31の厚さよりも薄くなっているため、中間層33の表面33aとp側電極31とによって段差Sが円状に形成されている。これによって、段差Sの上では、上部誘電体DBRミラー32を構成する各層にはリング状の凸部32aが形成される。凸部32aの内周側にはレーザ信号光の出力領域に位置する平坦部32bが形成される。
【0060】
各層の凸部32aは光の出力方向に向かって内径が小さくなるように形成される。各凸部32aの頂部を結んだ線Lは、内側(平坦部32b側)に傾斜する。これによって、各平坦部32bも光の出力方向に向かって面積が小さくなるように形成される。
【0061】
面発光レーザ素子300では、このように上部誘電体DBRミラー32を構成する各層の各平坦部32bが、光の出力方向に向かって面積が小さくなるように形成されているため、高次モード光のレーザ発振が抑制される。したがって、面発光レーザ素子200と同様に、面発光レーザ素子300から出力されるレーザ信号光に含まれる主モード光の強度に対する2次の高次モード光の強度の抑圧比(第1抑圧比)および他の高次モード光の抑圧比を調整することができる。これによって、面発光レーザ素子300から出力されるレーザ信号光に含まれるモード競合雑音を抑制することができる。
【0062】
図10は、
図8に示す面発光レーザ素子の変形例2の要部を示す図である。なお、面発光レーザ素子400のメサポストMから基板側の構成は
図8に示す面発光レーザ素子200と同様なので、説明を省略する。
【0063】
p側電極41は、
図9に示すp側電極41と同様のものである。中間層43は、たとえば、位相調整層、保護層、非線形層または吸収層であるが、その外周面とp側電極41の内周面との間に隙間Gが形成されるような外径を有する。
【0064】
上部誘電体DBRミラー42は、SiO
2層と、SiNx層とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された、周期構造を有する誘電体多層膜ミラーとして形成されている。なお、層の数は省略して図示している。
【0065】
面発光レーザ素子300の場合と同様に、中間層43の厚さはp側電極41の厚さよりも薄くなっているため、中間層43の表面43aとp側電極41とによって段差Sが円状に形成されている。これによって、段差Sの上では、上部誘電体DBRミラー42を構成する各層にはリング状の凸部42aが形成される。凸部42aの内周側にはレーザ信号光の出力領域に位置する平坦部42bが形成される。また、隙間Gによって、平坦部42bと凸部42aとの間に溝42cが形成される。
【0066】
面発光レーザ素子400では、面発光レーザ素子300と同様に、上部誘電体DBRミラー42を構成する各層の各平坦部42bが、光の出力方向に向かって面積が小さくなるように形成されているため、高次モード光のレーザ発振が抑制される。したがって、面発光レーザ素子300と同様に、面発光レーザ素子400から出力されるレーザ信号光に含まれる主モード光の強度に対する2次の高次モード光の強度の抑圧比(第1抑圧比)および他の高次モード光の抑圧比を調整することができる。これによって、面発光レーザ素子400から出力されるレーザ信号光に含まれるモード競合雑音を抑制することができる。
【0067】
なお、本発明は、イントラキャビティ構造でない面発光レーザ素子にも適用できる。すなわち、活性層に注入されるキャリアが、下部DBRミラーおよび/または上下部DBRミラーのそれぞれを経由して活性層に注入される構造の面発光レーザ素子にも本発明は適用できる。
【0068】
また、上記実施の形態では、活性層の下部にn型半導体層が配置され、活性層の上部にp型半導体層が配置されているが、活性層の上部にn型半導体層が配置され、活性層の下部にp型半導体層が配置されていてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、1.0μm波長帯用にその化合物半導体の材料、サイズ等が設定されている。しかしながら、各材料やサイズ等は、所望のレーザ光の発振波長に応じて適宜設定されるものであり、特に限定はされない。たとえば、各半導体層を構成する半導体材料としてInP系の材料を用いてもよい。この場合、Al含有層はInAlAs層で構成することができる。
【0070】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。