【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例、参考例及び比較例を共に示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1〜42)
実施例1〜42として、表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、酸洗またはカソード電解で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、還元性雰囲気で熱処理を行えばこのような金属酸化層は形成されず、その場合、当該酸化物除去工程は行う必要がない。
【0064】
(素材)
(1)板材:厚み0.30mm、幅30mm、成分Cu−30Zn
(2)オス端子:厚み0.64mm、幅2.3mm、成分Cu−30Zn
(3)圧入型端子:常盤商行製、プレスフィット端子PCBコネクタ、R800
【0065】
(第1めっき条件)
(条件1)半光沢Niめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液+サッカリン
めっき温度:55℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
(条件2)光沢Niめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液+サッカリン+添加剤
めっき温度:55℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
(条件3)Cuめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:硫酸Cuめっき液
めっき温度:30℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
(条件4)無光沢Niめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液
めっき温度:55℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
(条件5)Ni−Pめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液+亜リン酸塩
めっき温度:55℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
【0066】
(第2めっき条件)
(条件1)Agめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:シアン化Agめっき液(Agに対して100ppm相当のAuを錯体で添加)
めっき温度:40℃
電流密度:0.2〜4A/dm
2
(条件2)Snめっき
表面処理方法:電気めっき
めっき液:メタンスルホン酸Snめっき液
めっき温度:40℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
【0067】
(第3めっき条件)
(条件1)Snめっき条件
表面処理方法:電気めっき
めっき液:メタンスルホン酸Snめっき液
めっき温度:40℃
電流密度:0.5〜4A/dm
2
【0068】
(熱処理)
熱処理はホットプレートにサンプルを置き、ホットプレートの表面が所定の温度になったことを確認して実施した。
【0069】
(中間処理)
熱処理後のサンプルを希硫酸(10g/1L)に5秒浸漬させた。その後純水に5秒浸漬させた。
【0070】
(後処理)
さらに表面処理液としてリン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)を用いて、陽極電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。このときの表面処理条件は下記の表3に示した。これらの処理の後に、試料を温風により乾燥した。めっき表面に付着するPおよびNの量は、まず付着量既知の数種類の試料を用いてXPS(X線光電子分析法)での定性分析を行ない、P(2s軌道)とN(1s軌道)の検出強度(1秒間に検出されるカウント数)を測定した。次に、この結果をもとに付着量と検出強度の関係を導出し、この関係から未知試料のPとNの付着量を求めた。XPS分析結果の一例を
図2に、後処理液成分付着量とXPS検出強度の関係を
図3に示す(P付着量=1.1×10
-9mol/cm
2を1倍、N付着量=7.8×10
-11mol/cm
2を1倍とする)。
【0071】
(実施例43〜74)
実施例43〜74については、中間処理として、後処理と同じ成分の水溶液中で、金属材料を陰極にして電解(2V、定電圧電解)を2秒行い、後処理は表3の条件で作製した。それ以外は、実施例43〜58は実施例1と、実施例59〜74は実施例26と同様にして作製した。
【0072】
(実施例75)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、カソード電解で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、カソード電解は、リン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)に浸漬させ、金属材料を陰極にして電解(2V、定電圧電解)を2秒行い、金属酸化層(酸化錫層)を除去した。さらに、後処理(アノード電解)はカソード電解と同じ組成の液で、金属材料を陽極にして電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。
【0073】
(実施例76)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、酸洗で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、酸洗は、Snめっき液を1000分の1に希釈した水溶液に3秒浸漬し、後処理(アノード電解)として、表面処理液としてリン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)を用いて、陽極電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。
【0074】
(実施例77)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、酸洗で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、酸洗は、希釈塩酸(1cc/L)に2秒浸漬し、後処理として、表面処理液としてリン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)を用いて、陽極電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った
【0075】
(実施例78)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、カソード電解で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、カソード電解は、リン酸エステル系液ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)に浸漬させ、金属材料を陰極にして電解(2V、定電圧電解)を2秒行い、金属酸化層(酸化錫層)を除去した。さらに、後処理(アノード電解)はカソード電解と同じ組成の液で、金属材料を陽極にして電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。
【0076】
(実施例79)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、酸洗で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、酸洗は、Snめっき液を1000分の1に希釈した水溶液に3秒浸漬し、後処理(アノード電解)として、表面処理液としてリン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)を用いて、陽極電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。
【0077】
(実施例80)
表1に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を行った後、酸洗で金属酸化層(酸化錫層)を除去し、アノード電解を行った。なお、酸洗は、希釈塩酸(1cc/L)に2秒浸漬し、後処理として、表面処理液としてリン酸エステル系液(ラウリル酸性リン酸モノエステルとメルカプトベンゾチアゾールのNa塩を含む)を用いて、陽極電解(2V、定電圧電解)を5秒行い、めっき表面に表面処理を行った。
【0078】
(参考例1〜18、比較例1〜22)
表2に示す条件で、電解脱脂、酸洗、第1めっき、第2めっき、第3めっき、熱処理を
行った。なお、第2めっきのAgめっきでは、実施例では加えたAuの錯体をAgめっき液には添加しなかった。
【0079】
(上層、中層及び下層の厚み測定、上層の組成及び構造の決定)
得られた試料の上層及び中層の厚み測定、上層の組成決定は、STEM(走査型電子顕微鏡)分析による線分析で行った。分析した元素は、上層、中層及び下層の組成と、C、S及びOである。これら元素を指定元素とする。また、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(at%)を分析した。厚みは、線分析(または面分析)から求めた距離に対応する。STEM装置は、日本電子株式会社製JEM−2100Fを用いた。本装置の加速電圧は200kVである。
上層の構造の決定は、STEMによって決定した組成を状態図に照らし合わせることにより決定した。
また、下層の厚みは、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製 SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で測定した。
上層、中層及び下層の厚み測定、上層の組成及び構造の決定は、任意の10点について評価を行って平均化した。
【0080】
(評価)
各試料について以下の評価を行った。
A.凝着磨耗
凝着磨耗は、市販のSnリフローめっきメス端子(090型住友TS/矢崎090IIシリーズメス端子非防水/F090−SMTS)を用いてめっきを施したオス端子と挿抜試験することによって評価した。
試験に用いた測定装置は、アイコーエンジニアリング製1311NRであり、オスピンの摺動距離5mmで評価した。サンプル数は5個とし、凝着磨耗は挿入力を用いて評価した。挿入力は、各サンプルの最大値を平均した値を採用した。凝着磨耗のブランク材としては、比較例11、比較例22のサンプルを採用し、当該比較例11、比較例22のサンプルに対する凝着磨耗性について評価した
凝着磨耗の目標は、比較例11、比較例22の最大挿入力と比較して85%未満である。これは、比較例3が比較例11の最大挿入力と、また比較例14が比較例22の最大挿入力と比較して90%であり、この比較例3、比較例22よりも、より大きな挿入力の減少を目標とした。
【0081】
B.ウィスカ
ウィスカは、JEITA RC−5241の荷重試験(球圧子法)にて評価した。すなわち、各サンプルに対して荷重試験を行い、荷重試験を終えたサンプルをSEM(JEOL社製、型式JSM−5410)にて100〜10000倍の倍率で観察して、ウィスカの発生状況を観察した。荷重試験条件を以下に示す。
球圧子の直径:Φ1mm±0.1mm
試験荷重:2N±0.2N
試験時間:120時間
サンプル数:10個
目標とする特性は、長さ20μm以上のウィスカが発生しないことであるが、最大の目標としては、どの長さのウィスカも1本も発生しないことである。
【0082】
C.接触抵抗
接触抵抗は、山崎精機研究所製接点シミュレーターCRS−113−Au型を使用し、接点荷重50gの条件で4端子法にて測定した。サンプル数は5個とし、各サンプルの最小値から最大値の範囲を採用した。目標とする特性は、接触抵抗10mΩ以下である。
【0083】
D.耐熱性
耐熱性は、大気加熱(200℃×1000h)試験後のサンプルの接触抵抗を測定し、評価した。目標とする特性は、接触抵抗10mΩ以下であるが、最大の目標としては、接触抵抗が、耐熱性試験前後で変化がない(同等である)こととした。
【0084】
E.耐微摺動磨耗性
耐微摺動磨耗性は、山崎精機研究所製精密摺動試験装置CRS−G2050型を使用し、摺動距離0.05mm、摺動速度0.1mm/s、接触荷重2.4Nで接触抵抗が50mΩに達する摺動回数を測定した。サンプル数は5個とし、各サンプルの測定値の平均を採用した。
【0085】
F.はんだ濡れ性
はんだ濡れ性はめっき後のサンプルを評価した。ソルダーチェッカ(レスカ社製SAT−5000)を使用し、フラックスとして市販の25%ロジンメタノールフラックスを用い、メニスコグラフ法にてはんだ濡れ時間を測定した。はんだはSn−3Ag−0.5Cu(250℃)を用いた。サンプル数は5個とし、各サンプルの最小値から最大値の範囲を採用した。目標とする特性は、ゼロクロスタイム5秒(s)以下である。
【0086】
G.耐ガス腐食性
耐ガス腐食性は、下記の試験環境で評価した。耐ガス腐食性の評価は、環境試験を終えた試験後のサンプルの外観である。なお、目標とする特性は、外観が変色していないことか、実用上問題のない若干の変色である。
硫化水素ガス腐食試験
硫化水素濃度:10ppm
温度:40℃
湿度:80%RH
曝露時間:96h
サンプル数:5個
【0087】
H.機械的耐久性
機械的耐久性は、スルーホール(基板厚2mm、スルーホールΦ1mm)に挿入した圧入型端子をスルーホールから抜き出し、圧入型端子断面をSEM(JEOL社製、型式JSM−5410)にて100〜10000倍の倍率で観察して、粉の発生状況を確認した。粉の直径が5μm未満であるものを○とし、5〜10μm未満であるものを△とし、10μm以上のものを×とした。
【0088】
I.曲げ加工性
曲げ加工性は、W字型の金型を用いて試料の板厚と曲げ半径の比が1となる条件で90°曲げで評価した。評価は曲げ加工部表面を光学顕微鏡で観察し、クラックが観察されない場合の実用上問題ないと判断した場合には○とし、クラックが認められた場合を×とした。なお○と×との区別がつかない場合には△とした。
【0089】
J.ビッカース硬さ
下層のビッカース硬さは、下層断面より荷重980.7mN(Hv0.1)、荷重保持時間15秒で打根を打って測定した。
【0090】
K.押し込み硬さ
上層の押し込み硬さは、超微小硬さ試験(エリオニクス製ENT−2100)により、サンプル表面に荷重10mNまたは1mNで打根を打って測定した。荷重が1mNの時の押し込み深さは約0.1μmである。ここで、1mNの打根による測定は、極薄の酸化スズ層(厚み1〜2nm)の硬さを測定するために最低荷重(1mN)で測定したものである。
また、下層の押し込み硬さは、下層断面より荷重10mN(Hv0.1)、荷重保持時間15秒で打根を打って測定した。
【0091】
L.表面粗さ
表面粗さ(面粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz))の測定は、JIS B 0601に準拠し、非接触式三次元測定装置(三鷹光器社製、形式NH−3)を用いて行った。カットオフは0.25mm、測定長さは1.50mmで、1試料当たり5回測定した。
【0092】
M.上層の厚みと上層の最小厚みとの関係
上層の厚みと上層の最小厚みとの関係は、STEM(走査型電子顕微鏡)分析によるHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて評価した。HAADF(高角度散乱暗視野)像の模式図を
図4に示す。評価は次のようにして行った。
(1)評価は、倍率50KのHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて、基準長さ3μm/視野とした。
(2)基準長さ3μm/視野の中で上層の最小厚み部位を特定した。また、最小厚み部位が特定しにくい場合には、必要に応じて倍率を高倍率にして特定した。
(3)上層の最小厚みを正確に求めるため、特定した部位より高倍率で観察した。倍率100〜200KのHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて「上層の最小厚み」を正確に求めた。
(4)上述のSTEM(走査型電子顕微鏡)分析による線分析で決定した「上層の厚み(μm)」と「上層の最小厚み(μm)」の関係を、1試料あたり5視野を測定して把握した。
図4は、上記(1)〜(4)の評価方法が理解しやすいように、各層の表面粗さを実測値より誇張して模式的に記載している。
【0093】
N.上層の厚みと、上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値との関係
上層の厚みと、上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値との関係は、STEM(走査型電子顕微鏡)分析によるHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて評価した。HAADF(高角度散乱暗視野)像の模式図を
図4に示す。評価は次のようにして行った。
(1)評価は、倍率50KのHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて、基準長さ3μm/視野とした。
(2)基準長さ3μm/視野の中で上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値部位を特定した。また、上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値部位が特定しにくい場合には必要に応じて倍率を高倍率にして特定した。
(3)上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値部位を正確に求めるため、特定した部位より高倍率で観察した。倍率100〜200KのHAADF(高角度散乱暗視野)像を用いて「上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差」を正確に求めた。
(4)上述のSTEM(走査型電子顕微鏡)分析による線分析で決定した「上層の厚み(μm)」と「上層と中層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差(μm)」の関係を、1試料あたり5視野を測定して把握した。
図4は、上記(1)〜(4)の評価方法が理解しやすいように、各層の表面粗さを実測値より誇張して模式的に記載している。
【0094】
O.めっき材の表面分析〔XPS survey〕
めっき板材の表面分析を下記の条件にてXPS(multiplex mode)で分析し、表層からの深さ5nmにおけるA、B及びC構成元素群の金属におけるAuの濃度(at%)を算出した。
・装置:アルバック・ファイ株式会社製5600MC
・到達真空度:2.3×10-9 Torr
・励起源:単色化 AlKα
・出力:210W
・検出面積:800μmφ
・入射角:45度
・取り出し角:45度
・中和銃なし
・スパッタ条件
イオン種:Ar
+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:1.8nm/min (SiO
2換算)
上記試験条件及び試験結果を表1〜11に示す。表において、「組成」はそれぞれ原子濃度(at%)の比を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
*)「リン酸エステル系液処理条件」について、実施例27は2Vで5秒間の陽極電解、それ以外の実施例は浸漬処理を行った。
A1:ラウリル酸性リン酸モノエステル(リン酸モノラウリルエステル)
A2:ラウリル酸性リン酸ジエステル(リン酸ジラウリルエステル)
B1:ベンゾトリアゾール
B2:メルカプトベンゾチアゾールのNa塩
B3:トリルトリアゾール
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
【表9】
【0104】
【表10】
【0105】
【表11】
【0106】
(評価結果)
実施例1〜80は、挿入力、はんだ濡れ性、耐食性、微摺動摩耗性のいずれも優れた電子部品金属材料であった。
【0107】
参考例1、10は、上層のAg:Snが3:7であり、若干Snの割合が多いため、目標とする特性は得られたものの、長さ20μm未満のウィスカが発生し、また凝着磨耗性及び耐微摺動磨耗性が実施例よりも悪かった。
参考例2は、中間層のSn:Niが3:7であり、実施例と比較すると中間層のNiの割合が多いため、目標とする特性は得られたものの、実施例と比較して曲げ加工性が若干悪かった。
参考例3は、上層の厚みが0.90μmであり、若干厚いため、目標とする特性は得られたものの、凝着磨耗性及び機械的耐久性が実施例よりも悪かった。
参考例4は、上層と下層の厚みの比が上層:下層=1:3であり下層の割合が多いため、目標とする特性は得られたものの、耐熱性、耐微摺動摩耗性、はんだ濡れ性及び耐ガス腐食性が実施例と比較すると若干悪かった。
参考例5は、上層の超微小硬さ、下層の超微小硬さ及びビッカース硬さが実施例1と比較して硬いため、目標とする特性は得られたものの、曲げ加工性は悪かった。
参考例6は、最表層の最小厚みが最表層の厚みの50%未満であり、目標特性は得られたものの、耐熱性、はんだ濡れ性、耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例7は、最表層と上層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値が、最表層の厚みの50%を超えていたために、目標とする特性は得られたものの、耐熱性、はんだ濡れ性、耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例8は、酸化層が厚かったためか、接触抵抗、耐熱性、はんだ濡れ性が実施例と比較すると若干悪かった。また、微摺動摩耗性は実施例と比較すると著しく悪かった。
参考例9は、上層の厚みが0.03μmと実施例よりも薄かったために、目標とする特性は得られたものの、耐熱性、はんだ濡れ性、耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例11は、上層の厚みが0.60μmであり、若干厚いため、目標とする特性は得られたものの、凝着磨耗性及び機械的耐久性が実施例よりも悪かった。
参考例12は、中層の厚みが0.03μmであり、若干厚いため、目標とする特性は得られたものの、耐熱性、耐微摺動摩耗性、はんだ濡れ性及び耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例13は、中層の厚みが0.4μmであり、若干厚いため、目標とする特性は得られたものの、凝着摩耗性及び機械的耐久性が実施例よりも悪かった。
参考例14は、中層の厚みが0.4μmであり、若干厚く、上層:中層=7:93であり、若干中層の割合が高いため、目標とする特性は得られたものの、凝着摩耗性、耐ガス腐食性及び機械的耐久性が実施例よりも悪かった。
参考例15は、上層の超微小硬さが10800MPaであり、若干値が大きいために、目標とする特性は得られたものの、曲げ加工性が実施例よりも悪かった。
参考例16は、最表層の最小厚みが最表層の厚みの50%未満であり、目標とする特性は得られたものの、耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例17は、最表層と上層との界面プロフィールの隣り合う山と谷の高低差の最大値が、最表層の厚みの50%を超えていたため、目標とする特性は得られたものの、耐ガス腐食性が実施例よりも悪かった。
参考例18は、酸化層が厚かったためか、接触抵抗、耐熱性、はんだ濡れ性が実施例と比較すると若干悪かった。また、微摺動摩耗性は実施例と比較すると著しく悪かった。
【0108】
比較例1は、上層の厚みが目標よりも薄かったため、耐熱性、耐微摺動磨耗性、はんだ濡れ性及び耐ガス腐食性が悪かった。
比較例2は、上層の厚みが目標よりも厚かったため、凝着磨耗が多いために挿入力が高く、機械的磨耗性が悪かった。
比較例3は、上層がβSn単独で存在したため、長さ20μm以上のウィスカが発生してしまい、凝着磨耗が多いために挿入力も高く、耐熱性及び耐微摺動磨耗性が悪かった。
比較例4は、中層の厚みが目標よりも薄く、凝着磨耗が多いために挿入力が高かった。
比較例5は、中層の厚みが目標よりも厚かったため、機械的磨耗性や曲げ加工性が悪かった。
比較例6は、下層の厚みが目標よりも薄かったため、凝着磨耗が多いために挿入力が高かく、耐熱性及びはんだ濡れ性が悪かった。
比較例7は、下層の厚みが目標よりも厚かったため、曲げ加工性が悪かった。
比較例8〜10は、上層に占めるAgの割合が高いため、耐ガス腐食性が悪かった。
比較例11は、本発明のブランク材である。長さ20μm以上のウィスカが発生してしまい、耐熱性や耐微摺動磨耗性が悪かった。
比較例12は、上層の厚みが目標よりも薄かったため、目標よりも薄いため、耐ガス腐食性が悪かった。
比較例13は、上層の厚みが目標よりも厚かったため、凝着磨耗が多いために挿入力が高く、機械的磨耗性が悪かった。
比較例14は、上層がβSn単独で存在しており、目標よりも厚いため、長さ20μm未満のウィスカが発生し、耐熱性及び耐微摺動磨耗性が悪かった。
比較例15は、中層の厚みが目標よりも薄いため、耐熱性、耐微摺動磨耗性、はんだ濡れ性及び耐ガス腐食性が悪かった。
比較例16は、中層の厚みが目標よりも厚いため、凝着磨耗性及び機械的耐久性が悪かった。
比較例17は、下層の厚みが目標よりも薄いため、凝着磨耗性、耐熱性及びはんだ濡れ性が悪かった。
比較例18は、下層の厚みが5.5μmであり、目標よりも厚いため、曲げ加工性が悪かった。
比較例19〜21は、上層に占めるAgの割合が高いため、耐ガス腐食性が悪かった。
比較例22は、本発明のブランク材である。長さ20μm以上のウィスカが発生してしまい、耐熱性や耐微摺動磨耗性が悪かった。
【0109】
また、
図5に本発明の実施形態に係る電子部品用金属材料のSTEM(走査型電子顕微鏡)の線分析結果模式図を示す。
図5の場合、最表面から、上層がAgSn合金で0.23μmの厚み、中層がAgで0.15μmの厚みで存在すると言う。さらに、AgSn合金の組成(at%)が、Ag:Sn=8:2とも言う。このAg:Sn=8:2を
図6のAgSn状態図と照らし合わせるとSnAg合金のζ相(Sn11.8〜22.9%)とε相(Ag
3Sn)が存在していると言う。
図7に実施例12のXPSによる表面プロファイルを示す。