特許第6012577号(P6012577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012577画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理プログラム、及び画像処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012577
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理プログラム、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20161011BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61B6/02 301H
   A61B6/00 350P
   A61B6/02ZDM
【請求項の数】18
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-205479(P2013-205479)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66344(P2015-66344A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】福田 航
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−245060(JP,A)
【文献】 特開2008−43757(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/002326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/02
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、前記放射線照射部を移動させながら前記断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成手段と、
前記投影画像に基づいて、強調の度合いが前記第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成手段と、
前記第2断層画像生成手段によって生成された複数の前記第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記第1断層画像生成手段は、前記第1断層画像として、前記投影画像に基づいて、空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成し、
前記第2断層画像生成手段は、前記第2断層画像として、前記投影画像に基づいて、強調の度合いが前記第1断層画像に比較して低くされて空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1断層画像生成手段は、前記投影画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する処理を行った後、当該投影画像を用いた再構成により前記第1断層画像を生成し、
前記第2断層画像生成手段は、前記投影画像に対して強調の度合いを前記第1断層画像に比較して低くして空間周波数が高くなるほど強調する処理を行った後、当該投影画像を用いた再構成により前記第2断層画像を生成する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1断層画像生成手段は、前記投影画像を用いた再構成により断層画像を生成し、当該断層画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する処理を行うことにより前記第1断層画像を生成し、
前記第2断層画像生成手段は、前記投影画像を用いた再構成により断層画像を生成し、当該断層画像に対して強調の度合いを前記第1断層画像に比較して低くして空間周波数が高くなるほど強調する処理を行うことにより前記第2断層画像を生成する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1断層画像生成手段及び前記第2断層画像生成手段は、前記読影を行う際の関心物の大きさに応じて、前記強調を行う空間周波数の範囲を決定する
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1断層画像生成手段によって生成された第1断層画像及び前記二次元画像生成手段によって生成された合成二次元画像の少なくとも一方を表示する表示手段
を更に備えた請求項1〜請求項5の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記入射角度が大きくなるほど度合いを高くして、前記投影画像の空間周波数における予め定められた低周波成分を当該低周波成分より空間周波数の高い高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行う処理手段を更に備え、
前記第1断層画像生成手段は、前記処理手段によって前記周波数処理が行われた投影画像に基づいて前記第1断層画像を生成し、
前記第2断層画像生成手段は、前記処理手段によって前記周波数処理が行われた投影画像に基づいて前記第2断層画像を生成する
請求項1〜請求項6の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記周波数処理として、前記投影画像の前記低周波成分を減弱させる処理、及び前記投影画像の前記高周波成分を強調させる処理の少なくとも一方を行う
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記入射角度が予め定められた第1閾値以上の投影画像の空間周波数における予め定められた低周波成分を当該低周波成分より空間周波数の高い高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行う処理手段を更に備え、
前記第1断層画像生成手段は、前記入射角度が前記第1閾値未満の投影画像及び前記処理手段によって前記周波数処理が行われた投影画像に基づいて前記第1断層画像を生成し、
前記第2断層画像生成手段は、前記入射角度が前記第1閾値未満の投影画像及び前記処理手段によって前記周波数処理が行われた投影画像に基づいて前記第2断層画像を生成する
請求項1〜請求項6の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記周波数処理として、前記入射角度が前記第1閾値以上の投影画像の前記低周波成分を減弱させる処理、及び前記入射角度が前記第1閾値以上の投影画像の前記高周波成分を強調させる処理の少なくとも一方を行う
請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記処理手段は、前記周波数処理を行う際に、前記入射角度が大きくなるほど前記低周波成分を相対的に減弱させる度合いを高くする
請求項9又は請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1断層画像生成手段及び前記第2断層画像生成手段の少なくとも一方は、前記入射角度に応じて重み付けされた前記投影画像に基づいて前記生成を行う
請求項9〜請求項11の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記処理手段は、更に、前記入射角度が前記第1閾値以下である第2閾値未満の投影画像の前記低周波成分を前記高周波成分に対して相対的に強調させる周波数処理を行う
請求項9〜請求項12の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記処理手段は、前記低周波成分を相対的に強調させる周波数処理を行う際に、前記入射角度が小さくなるほど低周波成分を相対的に強調させる度合いを高くする
請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記二次元画像生成手段は、前記第2断層画像生成手段によって生成された複数の前記第2断層画像を積層した積層画像に対して予め定められた方向に沿って投影処理を行うか又は予め定められた方向に沿って対応する画素の画素値を加算する加算処理を行うことにより、前記合成二次元画像を生成する
請求項1〜請求項14の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項16】
放射線検出器及び放射線照射部を備え、前記放射線検出器と前記放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体に、前記放射線照射部を移動させながら前記断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて放射線を照射して、異なる入射角度毎の複数の投影画像を撮影する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置で撮影された複数の投影画像から読影に用いる第1断層画像、合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像、及び当該合成二次元画像を生成する請求項1〜請求項15の何れか1項に記載の画像処理装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項17】
コンピュータを、
放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、前記放射線照射部を移動させながら前記断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成手段と、
前記投影画像に基づいて、強調の度合いが前記第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成手段と、
前記第2断層画像生成手段によって生成された複数の前記第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成手段と、
として機能させるための画像処理プログラム。
【請求項18】
放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、前記放射線照射部を移動させながら前記断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成工程と、
前記投影画像に基づいて、強調の度合いが前記第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成工程と、
前記第2断層画像生成工程によって生成された複数の前記第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成工程と、
を備えた画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理プログラム、及び画像処理方法に係り、特に異なる入射角度で放射線を照射して撮影された投影画像から断層画像を生成する画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理プログラム、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が知られている。この種の放射線画像撮影装置として、例えば、乳がんの早期発見等を目的として被検者の乳房を撮影するマンモグラフィが挙げられる。また、マンモグラフィにおいて、被検者の乳房に対して異なる角度で放射線を照射して撮影するトモシンセシス撮影を行う技術が知られている。トモシンセシス撮影では、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する断層画像の生成対象とする被写体を、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する入射角度(以下、単に「入射角度」ともいう。)を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影し、撮影した複数の放射線画像(以下、「投影画像」という。)から再構成して、所定のスライス間隔で断層画像を生成する。
【0003】
一方、マンモグラフィ診断において、トモシンセシス撮影が広く用いられつつあるが、トモシンセシス撮影により得られた断層画像は、放射線照射部を移動させないで固定位置から放射線を被写体に照射して撮影する通常の二次元撮影により得られた放射線画像を補助する機能としての位置づけで使用されることが多い。この理由としては、通常の二次元撮影により得られた放射線画像は、医師等が見慣れている、濃度が断層画像とは異なる、全体を一度に把握できる、等が挙げられる。
【0004】
従って、従来は、二次元撮影を行うと共にトモシンセシス撮影も行って、二次元撮影による放射線画像と、トモシンセシス撮影による断層画像とを組み合わせて診断が行われることが多かった。
【0005】
しかしながら、トモシンセシス撮影のみで、通常の二次元撮影で得られる放射線画像に相当する画像も得ることができれば、撮影時の放射線の線量及び撮影時間を大幅に低減でき、好ましい。
【0006】
従来、トモシンセシス撮影による断層画像から通常の二次元撮影で得られる放射線画像に相当する画像を生成する技術として、特許文献1には、患者の胸の複数のX線トモシンセシス投影画像を獲得し、代数方法または最大強度投影方法の少なくとも一つを使用し、複数のX線トモシンセシス投影画像の少なくとも一つのサブセットを組み合わせることによって二次元乳房X線写真を合成する方法が開示されている。
【0007】
なお、複数の断層画像が合成されることにより生成された二次元乳房X線写真等の二次元画像を、以下では「合成二次元画像」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0135558号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、トモシンセシス撮影では、放射線を照射するときの入射角度が制限されている。そのため、例えば、逆投影法等により単純に投影画像を重ね合せて断層画像を再構成しても、本来は物体が存在しない領域に、本来は存在しない物体の虚像(以下、「アーチファクト」ともいう。)が写りこんでしまうことがある。この場合、虚像が目立ちすぎると、関心物の確認がしにくくなる。なお、断層画像の再構成を他の手法により実施する場合も同様の問題が生じる。
【0010】
これに対し、この問題を解決するために、CT(Computed Tomography)再構成法の代表的な手法であるFBP(Filtered Back Projection)法を適用して、一例として図15に示す、空間周波数領域における低周波成分を減弱する所謂Rampフィルタ(以下、「第1フィルタ」という。)等による処理によって一様にフィルタ処理を施した投影画像から逆投影して断層画像を再構成することも考えられる。
【0011】
しかしながら、この場合、深さ方向の虚像をある程度軽減することはできるが、トモシンセシス撮影の場合、一様にフィルタ処理を行うと、断層画像の被写体像の濃度が投影画像からかけ離れてしまうことがある。そして、この場合、断層画像を合成して合成二次元画像を生成すると、当該合成二次元画像でも被写体像の濃度が投影画像からかけ離れてしまうという問題点がある。
【0012】
これに対し、投影画像から断層画像を再構成する手法として、一例として図15に示す、上記低周波成分を減弱しない高周波強調フィルタ(以下、「第2フィルタ」という。)によって一様にフィルタ処理を施した投影画像から逆投影して断層画像を再構成する手法も知られている。
【0013】
しかしながら、この場合、断層画像の被写体像の濃度を投影画像に近付けることはできるが、低周波成分を減弱していないため、比較的大きな物体(例えば、脂肪、腫瘤等)の虚像が発生しやすくなる。そして、この場合、虚像が写った断層画像を合成して合成二次元画像を生成すると、当該合成二次元画像にも虚像が写ってしまうという問題点がある。
【0014】
なお、上記特許文献1に記載の技術では、上述した各問題点に関して考慮されていないため、断層画像の被写体像の濃度が投影画像からかけ離れている場合、合成二次元画像でも被写体像の濃度が投影画像からかけ離れてしまう。また、断層画像に虚像が発生した場合、合成二次元画像にも断層画像と同様に虚像が発生してしまう。
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、トモシンセシス撮影により得られた投影画像から、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる画像処理装置、放射線画像撮影システム、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、第1の発明は、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得手段と、取得手段によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成手段と、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成手段と、第2断層画像生成手段によって生成された複数の第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成手段と、を備えている。
【0017】
本発明によれば、取得手段により、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像が取得される。また、本発明では、第1断層画像生成手段により、取得手段によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像が生成される。
【0018】
ここで、本発明では、第2断層画像生成手段により、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像が生成される。そして、本発明では、二次元画像生成手段により、第2断層画像生成手段によって生成された複数の第2断層画像が合成された合成二次元画像が生成される。
【0019】
すなわち、本発明では、読影に用いる第1断層画像及び合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像の各断層画像として同一の投影画像(群)を用いるのではなく、各々強調の度合いが異なるものとして個別に生成している。これにより、本発明では、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像が生成される。
【0020】
このように、第1の発明によれば、投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する一方、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された、合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像を生成しているので、トモシンセシス撮影により得られた投影画像から、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる。
【0021】
ところで、医師等がトモシンセシス撮影により得られた断層画像を読影する際には、通常の二次元撮影により得られた放射線画像よりも空間周波数領域における高周波成分が強調された画像が好まれる傾向にある。これは、医師等は、複数の断層面における各断層画像を高速に切り替えて動画のように表示して読影することが多く、この場合における、例えば石灰化等の比較的小さい物体の見落としを防ぐためである。
【0022】
しかしながら、投影画像から読影に用いられる断層画像を再構成する際に、投影画像に対して高周波成分の強調の度合いを高くしてフィルタ処理を行うと、断層画像に過強調による虚像が発生してしまうことがある。この場合、この断層画像を合成して合成二次元画像を生成すると、生成した合成二次元画像にも虚像が写ってしまう。
【0023】
そこで、上記第1の発明は、第1断層画像生成手段が、第1断層画像として、投影画像に基づいて、空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成し、第2断層画像生成手段が、第2断層画像として、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像に比較して低くされて空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成してもよい。
【0024】
すなわち、本発明では、読影に用いる第1断層画像を、空間周波数が高くなるほど強調されたものとして生成している。これにより、本発明では、医師等の好みに応じた、読影に適した断層画像が生成される。また、本発明では、第1断層画像とは別に、合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像を、強調の度合いが第1断層画像に比較して低くされて空間周波数が高くなるほど強調されたものとして生成している。これにより、本発明では、過強調による虚像の発生が抑制された、合成二次元画像の生成に適した断層画像が生成される。
【0025】
このように、本発明によれば、投影画像に基づいて、空間周波数が高くなるほど強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する一方、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像に比較して低くされて空間周波数が高くなるほど強調された、合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像を生成しているので、トモシンセシス撮影により得られた投影画像から、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる。
【0026】
特に、本発明は、第1断層画像生成手段が、投影画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する処理を行った後、強調する処理を行った投影画像を用いた再構成により第1断層画像を生成し、第2断層画像生成手段が、投影画像に対して強調の度合いを第1断層画像に比較して低くして空間周波数が高くなるほど強調する処理を行った後、強調する処理を行った投影画像を用いた再構成により第2断層画像を生成してもよい。
【0027】
また、本発明は、第1断層画像生成手段が、投影画像を用いた再構成により断層画像を生成し、断層画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する処理を行うことにより第1断層画像を生成し、第2断層画像生成手段が、投影画像を用いた再構成により断層画像を生成し、断層画像に対して強調の度合いを第1断層画像に比較して低くして空間周波数が高くなるほど強調する処理を行うことにより第2断層画像を生成してもよい。
【0028】
また、上記第1の発明は、第1断層画像生成手段及び第2断層画像生成手段が、読影を行う際の関心物の大きさに応じて、強調を行う空間周波数の範囲を決定してもよい。
【0029】
また、上記第1の発明は、第1断層画像生成手段によって生成された第1断層画像及び二次元画像生成手段によって生成された合成二次元画像の少なくとも一方を表示する表示手段を更に備えてもよい。
【0030】
また、上記第1の発明は、入射角度が大きくなるほど度合いを高くして、投影画像の空間周波数における予め定められた低周波成分を低周波成分より空間周波数の高い高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行う処理手段を更に備え、第1断層画像生成手段が、処理手段によって周波数処理が行われた投影画像に基づいて第1断層画像を生成し、第2断層画像生成手段が、処理手段によって周波数処理が行われた投影画像に基づいて第2断層画像を生成してもよい。
【0031】
特に、本発明は、処理手段が、周波数処理として、投影画像の低周波成分を減弱させる処理、及び投影画像の高周波成分を強調させる処理の少なくとも一方を行ってもよい。
【0032】
また、上記第1の発明は、入射角度が予め定められた第1閾値以上の投影画像の空間周波数における予め定められた低周波成分を低周波成分より空間周波数の高い高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行う処理手段を更に備え、第1断層画像生成手段が、入射角度が第1閾値未満の投影画像及び処理手段によって周波数処理が行われた投影画像に基づいて第1断層画像を生成し、第2断層画像生成手段が、入射角度が第1閾値未満の投影画像及び処理手段によって周波数処理が行われた投影画像に基づいて第2断層画像を生成してもよい。
【0033】
特に、本発明は、処理手段が、周波数処理として、入射角度が第1閾値以上の投影画像の低周波成分を減弱させる処理、及び入射角度が第1閾値以上の投影画像の高周波成分を強調させる処理の少なくとも一方を行ってもよい。
【0034】
また、上記第1の発明は、処理手段が、周波数処理を行う際に、入射角度が大きくなるほど低周波成分を相対的に減弱させる度合いを高くしてもよい。
【0035】
また、上記第1の発明は、第1断層画像生成手段及び第2断層画像生成手段の少なくとも一方が、入射角度に応じて重み付けされた投影画像に基づいて断層画像の生成を行ってもよい。
【0036】
また、上記第1の発明は、処理手段が、更に、入射角度が第1閾値以下である第2閾値未満の投影画像の低周波成分を高周波成分に対して相対的に強調させる周波数処理を行ってもよい。
【0037】
特に、本発明は、処理手段が、低周波成分を相対的に強調させる周波数処理を行う際に、入射角度が小さくなるほど低周波成分を相対的に強調させる度合いを高くしてもよい。
【0038】
さらに、上記第1の発明は、二次元画像生成手段が、第2断層画像生成手段によって生成された複数の第2断層画像を積層した積層画像に対して予め定められた方向に沿って投影処理を行うか又は予め定められた方向に沿って対応する画素の画素値を加算する加算処理を行うことにより、合成二次元画像を生成してもよい。
【0039】
一方、上記目的を達成するために、第2の発明は、放射線検出器及び放射線照射部を備え、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体に、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて放射線を照射して、異なる入射角度毎の複数の投影画像を撮影する放射線画像撮影装置と、放射線画像撮影装置で撮影された複数の投影画像から読影に用いる第1断層画像、合成二次元画像の生成に用いる第2断層画像、及び合成二次元画像を生成する画像処理装置と、を備えている。
【0040】
また、上記目的を達成するために、第3の発明は、コンピュータを、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得手段と、取得手段によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成手段と、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成手段と、第2断層画像生成手段によって生成された複数の第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成手段と、として機能させるためのものである。
【0041】
さらに、上記目的を達成するために、第4の発明は、放射線検出器と放射線照射部との間に位置する、断層画像の生成対象とする被写体を、放射線照射部を移動させながら断層画像の断層面の法線方向に対する放射線の入射角度を所定範囲内で異ならせて、異なる入射角度毎に撮影した複数の投影画像を取得する取得工程と、取得工程によって取得された投影画像に基づいて、空間周波数に応じて強調された、読影に用いる第1断層画像を生成する第1断層画像生成工程と、投影画像に基づいて、強調の度合いが第1断層画像とは異なるものとされて空間周波数に応じて強調された第2断層画像を生成する第2断層画像生成工程と、第2断層画像生成工程によって生成された複数の第2断層画像が合成された合成二次元画像を生成する二次元画像生成工程と、を備えている。
【0042】
このような放射線画像撮影システム、画像処理プログラム、及び画像処理方法も、上記第1の発明と同様に作用するため、トモシンセシス撮影により得られた投影画像から、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、トモシンセシス撮影により得られた投影画像から、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す側面図である。
図2】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の撮影時における構成の一例を示す正面図である。
図3】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の撮影時の説明に供する概略正面図である。
図4】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成の一例を示すブロック図である。
図5】第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図6A】実施の形態に係るトモシンセシス撮影の一例を模式的に示す図である。
図6B】撮影された投影画像の何れにも周波数処理を実施せずに、断層画像を再構成し、各断層画像のスライス位置に対応させてZ軸方向(深さ方向)に積層したときの、図6AのY軸方向の位置150におけるX-Z平面に平行な断面図である。
図6C図6Bのスライス位置S1及びS2に対応する断層画像を示す図である。
図7】アーチファクトが発生する理由の説明に供する概略正面図である。
図8A図8Bに示す各画像の位置を模式的に示す斜視図である。
図8B】再構成した断層画像を各スライス位置に対応させて深さ方向に積層した場合に、関心物が存在する深さ方向の位置における断層面に平行な図8Aの位置S1に対応する断層画像と、深さ方向に沿った図8Aの断面S2に対応する画像との組み合わせを周波数処理の種類毎に示す図である。
図9A】実施の形態に係る周波数処理を施さない場合の説明に供する概略正面図である。
図9B】入射角度が大きい投影画像に低周波成分を減弱させる周波数処理を施す場合の説明に供する概略正面図である。
図10】実施の形態に係る最大値投影処理の説明に供する概略正面図である。
図11】アーチファクトの合成二次元画像への影響の説明に供する図である。
図12】実施の形態に係る合成二次元画像の生成状態の説明に供する図である。
図13】実施の形態に係る合成二次元画像の生成結果の一例を示す図である。
図14】第2の実施の形態に係る第2画像生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図15】第1フィルタ及び第2フィルタの各々のフィルタ特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0046】
[第1の実施の形態]
図1図3に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、被検者Wが立った立位状態において、当該被検者Wの乳房Nを放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wに近い手前側を放射線画像撮影装置10の装置前方側とし、放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wから離れた奥側を放射線画像撮影装置10の装置後方側とし、放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wの左右方向を放射線画像撮影装置10の装置左右方向として説明する(図1及び図2の各矢印参照)。
【0047】
また、放射線画像撮影装置10の撮影対象は、乳房Nに限らず、例えば、身体の他の部位、物体であってもよい。また、放射線画像撮影装置10としては、被検者Wがイス(車イスを含む。)等に座った座位状態において、その被検者Wの乳房Nを撮影する装置であってもよく、少なくとも被検者Wの上半身が立位した状態でその被検者Wの乳房Nが左右別個に撮影可能な装置であればよい。
【0048】
放射線画像撮影装置10は、図1に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状の測定部12と、測定部12を装置後方側から支える基台部14と、を備えている。
【0049】
測定部12は、立位状態にある被検者Wの乳房Nと当接する平面状の撮影面20が形成された撮影台22と、乳房Nを撮影台22の撮影面20との間で圧迫するための圧迫板26と、撮影台22及び圧迫板26を支持する保持部28と、を備えて構成されている。なお、圧迫板26には、放射線を透過する部材が用いられる。
【0050】
また、測定部12は、管球などの放射線源30(図4も参照。)が設けられ、放射線源30から撮影面20に向けて検査用の放射線を照射する放射線照射部24と、保持部28とは分離され放射線照射部24を支持する支持部29とを備えている。
【0051】
さらに、測定部12には、基台部14に回動可能に支えられている回動軸16が設けられている。回動軸16は、支持部29に対して固定されており、回動軸16と支持部29は一体に回動するようになっている。
【0052】
一方、保持部28に対しては、回動軸16が連結されて一体に回動する状態と、回動軸16が分離されて空転する状態とに切り替え可能とされている。具体的には、回動軸16及び保持部28にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態・非噛合状態を切替えるようになっている。
【0053】
なお、回動軸16の回動力の伝達・非伝達の切り替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0054】
また、保持部28は、撮影面20と放射線照射部24とが所定間隔離れるように撮影台22と放射線照射部24とを支持すると共に、圧迫板26と撮影面20との間隔が可変であるように圧迫板26をスライド移動可能に保持している。
【0055】
乳房Nが当接する撮影面20は、放射線透過性や強度の観点から、例えば、カーボンで形成されている。撮影台22の内部には、乳房N及び撮影面20を通過した放射線が照射され、その放射線を検出する放射線検出器42が配置されている。放射線検出器42が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成される。
【0056】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、乳房Nに対して、入射角度を所定範囲内で異ならせて(変化させて)放射線を照射し、異なる入射角度毎の撮影(トモシンセシス撮影)を行うことができる装置とされている。
【0057】
図2図3は、それぞれ、トモシンセシス撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢を示している。図2及び図3に示すように、当該トモシンセシス撮影は、放射線照射部24を支持すると共に、保持部28を介して撮影台22を支持する支持部29を傾けて撮影を行うものである。
【0058】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10では、図3に示すように、乳房Nに対して、入射角度を所定範囲内(例えば、±20度の範囲内)で異ならせて放射線を照射して撮影を行う場合、保持部28に対して回動軸16が空転して撮影台22と圧迫板26が動かず、支持部29が回動することにより放射線照射部24のみが円弧状に移動する。なお、本実施の形態では、図3に示すように角度αから所定角度θずつ放射線照射部24の位置を移動させて、放射線照射部24の位置がP1〜Pnのn箇所で撮影が行われる。
【0059】
なお、一般に、トモシンセシス撮影を行う場合、被検者Wの乳房Nに対してn回放射線を照射するため、被曝量が多くならないように、1回分の放射線の線量を低くして、例えば、n回の総合で通常の二次元撮影(放射線源30を移動させないで固定位置から放射線を被写体に照射して撮影する通常の撮影)と同じ程度の線量になるように放射線が照射される。
【0060】
また、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10では、乳房Nに対して、CC(Cranio & Caudal:頭尾方向)撮影とMLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位方向)撮影との両者を行うことができる装置とされている。なお、CC撮影時においては、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢が調整されると共に、放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被検者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影がなされる。また、MLO撮影時では、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に保持部28の姿勢が調整され、撮影台22の装置前方側の側壁角部22Aに被検者Wの腋窩をあてるようにポジショニングされる。これにより、被検者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影がなされる。
【0061】
なお、撮影台22の装置前方側の面には、撮影時において、被検者Wの乳房Nよりも下方の胸部分を当接させる胸壁面25が形成されている。本実施の形態に係る胸壁面25は平面状とされている。
【0062】
図4には、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成の一例が示されている。
【0063】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5は、放射線画像撮影装置10、画像処理装置50、及び表示装置80を備えて構成されている。
【0064】
放射線画像撮影装置10は、上述したように放射線照射部24、及び放射線検出器42を含むと共に、操作パネル44、撮影装置制御部46、及び通信I/F部48を含んで構成されている。
【0065】
本実施の形態に係る撮影装置制御部46は、放射線画像撮影装置10全体の動作を制御する機能を有するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部を備えて構成されている。また、撮影装置制御部46は、放射線照射部24、放射線検出器42、操作パネル44、及び通信I/F部48と接続されている。
【0066】
撮影装置制御部46は、操作パネル44(一例として曝射スイッチ)によりオペレータから照射指示を受け付けると、指定された曝射条件に基づいて設定された撮影メニュー(詳細後述)に従って、放射線照射部24に設けられた放射線源30から撮影面20に対して放射線を照射させる。なお、本実施の形態において、放射線源30は、コーンビームの放射線(一例として円錐状のX線ビーム)を照射する。
【0067】
一方、放射線検出器42は、画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、記録した画像情報を出力するものであり、例えば、放射線感応層が配置され、放射線をデジタルデータに変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)として構成されている。放射線感応層は撮影面20に略平行に配置することができる。放射線検出器42は、放射線が照射されると、放射線画像を示す画像情報を撮影装置制御部46へ出力する。本実施の形態では、放射線検出器42によって、乳房Nを透過した放射線の照射を受けて放射線画像を示す画像情報が得られる。
【0068】
また、操作パネル44は、撮影条件を含む各種の操作情報、各種の操作指示等が設定される機能を有するものである。
【0069】
なお、操作パネル44で設定される撮影条件には、管電圧、管電流、照射時間を含む曝射条件、及び姿勢情報等の情報が含まれている。また、操作パネル44で指定される姿勢情報には、乳房Nに対して複数の入射角度で放射線を入射させて撮影を行う場合の撮影位置(当該入射角度を含む。)を表す情報が含まれている。
【0070】
なお、これらの曝射条件、姿勢情報等の各種の操作情報及び各種の操作指示等は、操作パネル44によりオペレータが設定するようにしてもよいし、他の制御装置(RIS:Radiology Information System、放射線情報システム(放射線を用いた、診療、診断等の情報の管理を行うシステム))等から得るようにしてもよいし、予め記憶部に記憶させておいてもよい。
【0071】
操作パネル44から各種情報が設定されると、撮影装置制御部46は、設定された各種情報に基づいて設定された撮影メニューに従って、放射線照射部24から放射線を被検者Wの撮影部位(乳房N)に照射させて放射線画像の撮影を実行する。撮影装置制御部46は、乳房Nに対してトモシンセシス撮影を行う場合には、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整する。そして、撮影装置制御部46は、図3に示すように、撮影条件に基づいて、支持部29を回動させて放射線照射部24を円弧状に角度αから角度θずつ移動させ、放射線照射部24に設けられた放射線源30から放射線を照射させる。これにより放射線の入射角度が各々異なるn枚の放射線画像が得られる。
【0072】
さらに、通信I/F部48は、放射線画像撮影装置10と、画像処理装置50と、の間で撮影された放射線画像や各種情報等を、ネットワーク49を介して送受信するための機能を有する通信インターフェイスである。
【0073】
一方、本実施の形態に係る画像処理装置50は、放射線画像撮影装置10から取得した放射線画像から再構成した断層画像を生成する機能を有しており、腫瘤や石灰化等の関心物を医師等が観察するための画像処理を放射線画像に対して行う機能を有している。なお、以下では、医師等、撮影された放射線画像や生成された断層画像の観察や腫瘍等の診断等を行う者を「ユーザ」といい、放射線画像撮影装置10においてトモシンセシス撮影により放射線検出器42が放射線を検出することで得られた放射線画像を「投影画像」という。
【0074】
画像処理装置50は、CPU52、ROM54、RAM56、HDD58、通信I/F部60、画像表示指示部62、指示受付部64、周波数処理部66、断層画像生成部68、二次元画像生成部70、及び記憶部74を備えて構成されている。これらは、コントロールバスやデータバス等のバス75を介して互いに情報等の授受が可能に接続されている。
【0075】
CPU52は、画像処理装置50全体の制御等を行うものであり、具体的には、ROM54に格納されているプログラム55(後述する第1画像生成処理プログラムを含む。)を実行することにより制御を行っている。なお、本実施の形態では、プログラム55は、予めROM54に格納されている構成としているが、これに限らず、プログラム55をCD−ROMやリムーバブルディスク等の記録媒体に記憶しておき、当該記録媒体からROM54等にインストールするようにしてもよいし、インターネット等の通信回線を介して、外部装置からROM54等にインストールするようにしてもよい。また、RAM56は、CPU52でプログラム55を実行する際の作業用の領域を確保するものである。さらに、HDD58は、各種データを記憶して保持するものである。
【0076】
一方、通信I/F部60は、画像処理装置50と、放射線画像撮影装置10と、の間で撮影された放射線画像や各種情報等を、ネットワーク49を介して送受信するための機能を有する通信インターフェイスである。
【0077】
また、画像表示指示部62は、放射線画像を表示させるように表示装置80の後述するディスプレイ82に指示する機能を有するものである。
【0078】
本実施の形態に係る表示装置80は、撮影された放射線画像の表示を行う機能を有するものであり、放射線画像が表示されるディスプレイ82及び指示入力部84を備えて構成されている。指示入力部84は、例えば、タッチパネルディスプレイや、キーボード、マウス等であってもよい。指示入力部84により、ユーザが、放射線画像の表示に関する指示を入力することができる。これに対し、指示受付部64は、表示装置80の指示入力部84により入力されたユーザからの指示を受け付ける機能を有するものである。
【0079】
一方、本実施の形態に係る周波数処理部66は、投影画像に対し、予め定められた空間周波数の範囲の周波数成分を、強調する度合いを示す強調係数に応じて強調及び減弱させる周波数処理を行う。
【0080】
ここで、本実施の形態に係る周波数処理部66は、強調係数が、予め定められた閾値(本実施の形態では、1.0)を超えて大きくなるほど、周波数成分を強調する度合いが高くなり、当該閾値を下回って小さくなるほど、周波数成分を減弱する度合いが高くなるものとされている。
【0081】
上記周波数処理として、例えば、特開平10−63838号公報に開示されている技術を適用する。具体的には、周波数処理部66は、まず、投影画像に対し、画像の鮮鋭度を低くする度合いを変えて、当該鮮鋭度を低くする処理を行うことにより、投影画像より鮮鋭度が低く、かつ鮮鋭度が互いに異なる複数の画像(以下、「非鮮鋭画像」という。)を生成する。なお、本実施の形態では、上記鮮鋭度を低くする処理として、ガウシアンフィルタによるフィルタ処理を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、移動平均フィルタによるフィルタ処理等、他の公知の手法を適用してもよい。
【0082】
次に、周波数処理部66は、投影画像及び各非鮮鋭画像を用いて、上記鮮鋭度が最も近い画像同士の差分の各々に対し、予め定められた変換関数による変換を行うと共に、当該変換後の各差分を積算した画像を生成する。そして、周波数処理部66は、当該積算により得られた画像に対して、予め設定された強調係数に応じて強調及び減弱させる処理を行った画像と投影画像とを加算した画像を、上記周波数処理が行われた画像として生成する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る周波数処理部66は、投影画像における予め定められた空間周波数の範囲の周波数成分を、強調係数に応じて強調及び減弱させた画像を生成する。ここで、周波数処理部66が投影画像に対して周波数処理を行う際に適用する空間周波数の範囲及び強調係数は、ROM54等の記憶手段に予め記憶されていてもよいし、指示入力部84を介してユーザにより入力されてもよいし、通信I/F部60を介して外部装置等により入力されてもよい。なお、以上の周波数処理については、従来既知の技術であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0084】
一方、断層画像生成部68は、周波数処理部66により周波数処理が行われた投影画像を用いた再構成により、所定のスライス間隔で撮影面20に平行な断層画像を生成する機能を有する。なお、ここで言う「平行」とは、放射線画像撮影装置10の経時変化や環境条件の変化等に起因して生じる誤差を許容した範囲内での平行を意味する。
【0085】
本実施の形態に係る断層画像生成部68は、周波数処理部66により周波数処理が行われた、放射線照射部24(放射線源30)をP1、P2、P3、・・・、Pnの位置に移動して撮影された複数の投影画像から所定のスライス間隔で断層画像を生成する。なお、放射線の入射角度によって、関心物が放射線画像上に投影される位置が異なる。そこで、本実施の形態に係る断層画像生成部68は、放射線画像撮影装置10から当該放射線画像を撮影した際の撮影条件を取得する。そして、断層画像生成部68は、取得した撮影条件に含まれる放射線の入射角度に基づいて、複数の放射線画像間における関心物の移動量を算出して、逆投影法やシフト加算法等、公知の再構成法に基づいて断層画像の再構成を行う。
【0086】
なお、再構成法としては、逆投影法やシフト加算法の他、従来公知のCT再構成法(一例として、上述したFBP法)を用いることができる。FBP法は、断層撮影の平行平面式断層走査をコーンビームCT走査の一部として捉え、フィルタ逆投影法を拡張した再構成法である。また、再構成法として、特開2011−125698号公報に記載の反復再構成法を用いることもできる。この反復再構成法もCT用の再構成法ではあるが、FBP法と同様に、トモシンセシス撮影時の再構成にも適用できる。
【0087】
一方、本実施の形態に係る二次元画像生成部70は、断層画像生成部68により生成された複数の断層画像を積層した積層画像(三次元画像)に対して予め定められた方向に沿った投影処理を行うことにより合成二次元画像を生成する。なお、本実施の形態に係る二次元画像生成部70では、上記投影処理を行うことにより合成二次元画像を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、二次元画像生成部70は、予め定められた方向に沿って対応する画素値を加算する加算処理を行うことにより合成二次元画像を生成してもよい。
【0088】
以上の周波数処理部66、断層画像生成部68、及び二次元画像生成部70の各々は、ハードウェア、例えば、一般的な電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、或いはFPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されたハードウェア等により実現することができる。
【0089】
さらに、本実施の形態に係る記憶部74は、放射線画像撮影装置10で撮影された投影画像、断層画像生成部68で生成された断層画像、二次元画像生成部70で生成された合成二次元画像の各々を表わす画像情報等を記憶する機能を有するものであり、例えば、ハードディスク等の大容量記憶装置である。また、本実施の形態では、記憶部74に、放射線画像撮影装置10で放射線画像の撮影を行った際の撮影条件(放射線の入射角度等)も記憶される。
【0090】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の作用について図面を参照して説明する。
【0091】
放射線画像の撮影を行う場合、放射線画像撮影装置10は、撮影メニューが設定されると、撮影メニューに従って撮影が実行される。
【0092】
放射線画像撮影装置10は、トモシンセシス撮影を行う撮影指示が入力された場合、図2に示すように、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整する。
【0093】
被検者Wは、放射線画像撮影装置10の撮影面20に乳房Nを当接させる。放射線画像撮影装置10は、この状態でオペレータから操作パネル44に対して圧迫開始の操作指示が行われると、圧迫板26が撮影面20に向けて移動する。
【0094】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、この状態で操作パネル44に、トモシンセシス撮影の実行指示が入力された場合、図3に示すように、支持部29のみを回動させて放射線照射部24を円弧状に角度αから所定角度θずつ移動させ、放射線照射部24の位置がP1〜Pnのn箇所で各々撮影条件に基づいた放射線の照射を行う。放射線照射部24から個別に照射された放射線は、それぞれ乳房Nを透過した後に放射線検出器42に到達する。
【0095】
放射線検出器42は、放射線が照射されると、照射された放射線による投影画像を示す画像情報をそれぞれ撮影装置制御部46へ出力する。上記のように、放射線照射部24の位置がP1〜Pnのn箇所で放射線の照射が行われた場合には、n枚の投影画像の画像情報を撮影装置制御部46へ出力することとなる。
【0096】
撮影装置制御部46は、入力された各画像情報を画像処理装置50へ出力する。なお、上記のように、放射線照射部24の位置がP1〜Pnのn箇所で放射線の照射が行われた場合には、撮影装置制御部46のCPUは、n枚の投影画像の画像情報を画像処理装置50へ出力する。
【0097】
本実施の形態に係る画像処理装置50は、投影画像に対して周波数処理を行った後に、読影に用いる断層画像(以下、「第1断層画像」という。)を再構成して、第1断層画像を、画像表示指示部62を介して表示装置80に表示する。さらに、画像処理装置50は、投影画像に対して周波数処理を行った後に、合成二次元画像の生成に用いる断層画像(以下、「第2断層画像」という。)を再構成する。そして、画像処理装置50は、第2断層画像から上述した合成二次元画像を生成して、当該合成二次元画像を、画像表示指示部62を介して表示装置80に表示する。
【0098】
ここで、本実施の形態に係る画像処理装置50では、周波数処理部66及び断層画像生成部68により、上記第1断層画像として、投影画像に基づいて、空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成する。また、本実施の形態に係る画像処理装置50では、周波数処理部66及び断層画像生成部68により、上記第2断層画像として、投影画像に基づいて、強調の度合いが上記第1断層画像に比較して低くされて空間周波数が高くなるほど強調された断層画像を生成する。
【0099】
図5は、本実施の形態に係る画像処理装置50のCPU52が実行する、第1画像生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0100】
同図のステップ100において、CPU52は、放射線画像撮影装置10から複数の(ここではn枚の)投影画像の画像情報を取得する。
【0101】
ステップ102において、CPU52は、周波数処理部66を制御して、投影画像に対し、入射角度に応じた周波数処理(以下、「原周波数処理」という)を実行させる。ここで、本実施の形態に係る周波数処理部66は、撮影時の入射角度が予め定められた第1閾値以上の投影画像の低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行う。ここでは、低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理の一例として、高周波成分に対する強調係数を1.0とし、かつ低周波成分に対する強調係数を1.0未満とすることにより、高周波成分を強調させる処理は行わずに低周波成分を減弱させる処理(以下、「低周波成分減弱処理」という。)を行うものとする。
【0102】
なお、本実施の形態では、ユーザによる読影の対象とする関心物の大きさ以下の物体が含まれる空間周波数の範囲を低周波領域として、当該低周波領域に含まれる物体を低周波成分とみなしている。また、本実施の形態では、当該低周波領域の上限値より高い空間周波数の範囲を高周波領域として、当該高周波領域に含まれる物体を高周波成分とみなしている。さらに、本実施の形態では、上記関心物の大きさとして、石灰化の一般的な大きさ(例えば、300μm)を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、腫瘤等の他の関心物の大きさを適用してもよい。
【0103】
ここで、本ステップ102の処理により、周波数処理部66で行われる処理について詳細に説明する。
【0104】
図6Aは、トモシンセシス撮影の一例を模式的に示す図である。Z軸は、放射線検出器42の検出面に垂直な方向の座標値(検出面からの距離)を示す。放射線検出器42の検出面がZ=0の面である。なお、ここでは、図6Aに図示するように放射線照射部24を移動させて、3カ所から4つの物体OB1〜OB4に対して放射線を照射する場合で説明する。4つの物体のうち、物体OB1が最もサイズが大きく、物体OB4が最もサイズが小さい。
【0105】
図6Bは、撮影された投影画像の何れにも原周波数処理を実施せずに、断層画像を再構成し、各断層画像のスライス位置に対応させて深さ方向(Z軸方向)に積層したときの、Y軸位置150におけるX-Z平面に平行な断面図である(図6Aも参照。)。また、図6Cは、図6Bのスライス位置S1及びS2に対応する断層画像である。
【0106】
図6Bに示すように、スライス位置S1は実際に物体OB1が存在する位置に対応し、スライス位置S1の断層画像には物体OB1の画像が明確に表われている。しかし、スライス位置S2は、本来物体OB1が存在しない位置であるにも拘わらず、スライス位置S2の断層画像には物体OB1のアーチファクトが写りこんでしまっている。そして、図6B及び図6Cから明らかなように、物体のサイズが大きくなるほど、深さ方向に大きなアーチファクトが生じている。ここで、画像を空間周波数領域に変換すると、大きいサイズの物体の画像は低周波成分として変換され、サイズの小さな(細かい)物体の画像は高周波成分として変換されるが、このように空間周波数領域で画像を表わした場合、低周波数成分の物体ほど深さ方向のアーチファクトは大きくなり、高周波成分の物体ほど深さ方向のアーチファクトは小さくなることがわかる。
【0107】
図7に示すように、物体のサイズが大きいほど、放射線が照射される面積が大きくなり、物体を透過した放射線が検出面で検出されて投影画像に写り込むサイズも大きくなる。そして、入射角度が大きくなるほど、物体が現実に存在する領域から離れた領域への写り込みが大きくなり、このような投影画像から再構成された断層画像を積層すると、深さ方向において放射線の各照射領域が重なる範囲で、物体が深さ方向に伸びたようなアーチファクトが発生してしまう。従って、物体が大きくなるほど、深さ方向のアーチファクトも大きくなる。
【0108】
上述した第1フィルタを用いるFBP法や第2フィルタを用いて断層画像を再構成する手法等では、複数の投影画像に一律にフィルタ処理を施してから再構成することで、アーチファクトを抑制している。これらの手法を適用して、トモシンセシス撮影で得られた投影画像に一律にフィルタ処理を施した場合について説明する。
【0109】
図8Bに、関心物が存在する深さ方向の位置における放射線検出器42の検出面に平行なスライス位置S1に対応する断層画像と、深さ方向に沿った断面S2に対応する画像との組み合わせを示す(図8Aも参照)。ここでは、(1)から(3)まで、3つのパターンの組み合わせを示した。図8Bの(1)は、本来投影されるべき理想的な画像の組み合わせである。(2)は、全ての投影画像に対して一律に低周波成分透過フィルタ(LPF:ローパスフィルタ)によりフィルタ処理を施して再構成したときの画像の組み合わせである。(3)は、全ての投影画像に対して高周波成分透過フィルタ(HPF:ハイパスフィルタ)によりフィルタ処理を施して再構成したときの画像の組み合わせである。
【0110】
図8Bの(2)に示すように、一律に低周波成分を抽出して高周波成分を減弱させると、深さ方向にアーチファクトが発生する。また、上述したように、物体が大きいほどアーチファクトが大きくなる。
【0111】
一方、図8Bの(3)に示すように、一律に高周波成分を抽出して低周波成分を減弱させると、アーチファクトは小さく(目立たなく)なるが、大きな物体においては、物体の輪郭だけが残り、物体内部の低周波成分の情報、すなわち濃度情報が消失してしまう。これは、HPFにより、濃度が大きく変化する部分だけが抽出され、濃度の変化が少ない低周波成分の領域は抽出されずに、消失してしまうためである。
【0112】
マンモグラフィにより乳房の放射線画像を読影する場合、読影の対象(関心物)とされる脂肪、乳腺、病変(腫瘤)等は、ある程度サイズが大きな低周波成分に分類される。従って、本実施の形態に係る原周波数処理では、全ての投影画像に対して一律な周波数処理を施すのではなく、入射角度が上記第1閾値以上の投影画像の低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行うことで、関心物の画像濃度が極端に低下することを抑制しつつ、関心物が本来存在しない断層画像のアーチファクトを目立たなくする。
【0113】
この原理について図9A及び図9Bの模式図を参照して説明する。図9Aは、各投影画像に原周波数処理を施さない場合の説明に供する概略正面図であり、図9Bは、入射角度が大きい投影画像に対し、原周波数処理を施す場合の説明に供する概略正面図である。
【0114】
図9A及び図9Bの何れにも、放射線照射部24を移動させて(1)、(2)及び(3)の3カ所から被写体に向かって放射線を照射し、3枚の投影画像を撮影する様子が示されている。(1)は、入射角度が0度の位置であり、(2)及び(3)は、入射角度が上記第1閾値以上となる位置である。異なる方向から照射された複数の放射線の照射範囲が重なる部分は、その重なり状態に応じて濃度が濃くなるよう図示した。なお、実際のトモシンセシス撮影ではコーンビームの放射線が照射されるが、ここでは、周波数処理の理解を容易にするため、各位置から平行な放射線が照射されるものとして図示した。
【0115】
図9Aに示すように、(1)の位置から被写体に放射線が照射されると、投影画像のG1のエリアに被写体画像が投影される。(2)の位置から被写体に放射線が照射されると、投影画像のG2のエリアに被写体画像が投影される。(3)の位置から被写体に放射線が照射されると、投影画像のG3のエリアに被写体画像が投影される。従って、本来被写体が存在しないスライス位置に対応する断層画像を再構成した場合、G2及びG3によりアーチファクトが発生してしまう。
【0116】
一方、図9Bに示すように、(2)の位置から被写体に放射線を照射して撮影した投影画像に低周波成分減弱処理を施すと、被写体画像の投影範囲はg2のエリアに限定される。同様に、(3)の位置から被写体に放射線を照射して撮影した投影画像に低周波成分減弱処理を施すと、被写体画像の投影範囲はg3のエリアに限定される。すなわち、図9AのG2及びG3と比較して、被写体の画像の輪郭部分だけが残り、内側の濃度が減弱される。従って、これら投影画像から、本来被写体が存在しないスライス位置に対応する断層画像を再構成しても、上記低周波成分の減弱によりアーチファクトの濃度が薄まる。なお、(1)の位置から被写体に放射線を照射して撮影した投影画像には、低周波成分減弱処理は施さないため、再構成される断層画像において被写体の濃度が極端に低下することが抑制される。
【0117】
なお、ここでは、低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理の一例として、高周波成分を強調させる処理は行わずに低周波成分を減弱させる処理を行う例について説明したが、これに限定されない。上記周波数処理として、例えば、低周波成分を減弱させる処理は行わずに高周波成分を強調させる処理(以下、「高周波成分強調処理」という。)を行ってもよい。また、上記周波数処理として、低周波成分を減弱させる処理及び高周波成分を強調させる処理の双方を行うようにしてもよい。また、例えば、低周波成分及び高周波成分の双方を減弱させる処理を行い、その際、低周波成分の減弱の度合いをD1とし、高周波成分の減弱の度合いを度合いD1より低いD2として処理してもよい。また、例えば、低周波成分及び高周波成分の双方を強調させる処理を行い、その際、低周波成分の強調の度合いをD3とし、高周波成分の強調の度合いを度合いD3より高いD4として処理してもよい。
【0118】
また、ここでは、低周波成分を相対的に減弱させる周波数処理を、入射角度が上記第1閾値以上の投影画像に対して実施するが、当該第1閾値は、例えば、放射線照射部24(放射線源30)の移動間隔等に応じて予め設定しておくことができる。また、周波数処理部66は、入射角度が最小の投影画像以外の投影画像に対して各々の低周波成分を減弱させる周波数処理を実施するようにしてもよい。この場合には、複数の投影画像の撮影時の入射角度のうち、最も小さい入射角度をa1とし、2番目に小さい入射角度をa2としたときに、入射角度a1より大きく、入射角度a2以下の範囲内で上記第1閾値を設定することができる。なお、トモシンセシス撮影の際の放射線源30の位置は、予め設定されているため、上記第1閾値そのものを設定する代わりに、トモシンセシス撮影の際の放射線源30の複数の位置のうち、上記第1閾値以上の入射角度となる放射線源30の位置を設定しておくようにしてもよい。この場合、設定された位置から放射線を照射して得られた投影画像に低周波成分を減弱させる処理を実施すればよい。
【0119】
次に、ステップ104において、CPU52は、周波数処理部66を制御して、以上の処理を経た投影画像(以下、「処理対象投影画像」という。)に対し、空間周波数が高くなるほど強調係数を大きくして強調の度合いを高くする周波数処理(以下、「第1周波数処理」という。)を実行させる。なお、ここでいう「処理対象投影画像」は、上記ステップ102の処理により原周波数処理が行われた投影画像及び入射角度が上記第1閾値未満の投影画像の双方である。
【0120】
ここで、本実施の形態に係る第1周波数処理では、上記原周波数処理が行われた投影画像に対する上記強調係数として、当該原周波数処理において減弱した低周波成分が、減弱する前の状態より強調されない範囲内で強調される値を適用する。
【0121】
このように、本実施の形態では、上記第1周波数処理として、全ての処理対象投影画像に対して、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用しているが、これに限らない。
【0122】
例えば、第1周波数処理として、上記原周波数処理において減弱の対象とした低周波成分を除く成分に対して、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理、入射角度が上記第1閾値未満の投影画像、すなわち原周波数処理が施されていない投影画像のみを対象として、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理等を適用する形態としてもよい。
【0123】
また、第1周波数処理として、予め定められた高周波数側の周波数の範囲に対し、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用する形態としてもよい。ここで、空間周波数の範囲に上限値を設けているのは、例えば石灰化等の関心物より小さい物体(投影画像の生成時に生じる雑音を含む。)が強調されることを防ぐためである。
【0124】
なお、本ステップ104において、処理対象投影画像に対し、空間周波数が高くなるほど強調する周波数処理を行っているのは、読影の際に、例えば石灰化等の比較的小さい関心物の見落としを防ぐためである。従って、ここで用いる強調係数は、当該関心物の大きさに応じて、結果的に得られる断層画像を読影した際に、当該関心物が視認できる値として、放射線画像撮影装置10の実機を用いた実験や、放射線画像撮影装置10の設計仕様に基づくコンピュータ・シミュレーション等により予め得られた値を適用することができる。
【0125】
次に、ステップ106において、CPU52は、断層画像生成部68を制御して、第1周波数処理が行われた投影画像から、上述した逆投影法により第1断層画像を再構成させる。
【0126】
なお、上記ステップ102において、上記原周波数処理として高周波成分を強調する処理を行う場合、必ずしも第1周波数処理を行う必要はなく、この場合は上記ステップ104の処理を実行しない形態としてもよい。この場合、本ステップ106では、上記ステップ102の処理により得られた処理対象投影画像を用いて第1断層画像を生成することになる。この場合、原周波数処理を行う際の高周波成分の強調の度合いを、読影の際に関心物が視認できる値として予め得られた度合いとすることが好ましいことは言うまでもない。
【0127】
次に、ステップ108において、CPU52は、再構成された第1断層画像の画像情報を出力(例えば、画像表示指示部62に出力)する。
【0128】
次に、ステップ110において、CPU52は、周波数処理部66を制御して、処理対象投影画像に対し、第1周波数処理より強調係数を小さくし、かつ空間周波数が高くなるほど強調係数を大きくして強調の度合いを高くする周波数処理(以下、「第2周波数処理」という。)を実行させる。
【0129】
なお、本実施の形態に係る第2周波数処理では、上記強調係数として、第1周波数処理で適用した強調係数(以下、「第1強調係数」という。)の予め定められた割合(一例として、50%)の値を適用することにより、上記強調係数を第1周波数処理より小さくしているが、これに限らない。例えば、強調係数として、第1強調係数から0を超え、かつ1未満の定数を減算して得られた値を適用する形態等としてもよい。
【0130】
さらに、これらの形態において、上記割合および上記定数として、空間周波数の予め定められた範囲毎に異なる値(一例として、空間周波数が高くなるほど大きな値)を適用する形態としてもよい。
【0131】
このように、本実施の形態では、上記第2周波数処理としても、上記第1周波数処理と同様、全ての投影画像を対象として周波数処理を実行する処理を適用しているが、これに限らない。
【0132】
例えば、第2周波数処理として、上記原周波数処理において減弱の対象とした低周波成分を除く成分を対象として周波数処理を実行する処理、入射角度が上記第1閾値未満の投影画像、すなわち原周波数処理が施されていない投影画像のみを対象として周波数処理を実行する処理等を適用する形態としてもよい。
【0133】
また、第2周波数処理として、予め定められた高周波数側の周波数の範囲に対し、第1周波数処理より強調の度合いを低くし、かつ空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用する形態としてもよい。
【0134】
ここで、本ステップ110において、処理対象投影画像に対し、第1周波数処理より強調の度合いを低くし、かつ空間周波数が高くなるほど強調する周波数処理を行っているのは、過強調によるアーチファクトの発生を低減するためである。
【0135】
次に、ステップ112において、CPU52は、断層画像生成部68を制御して、第2周波数処理が行われた投影画像から、上述した逆投影法により第2断層画像を再構成させる。
【0136】
次に、ステップ114において、CPU52は、二次元画像生成部70を制御して、上述した投影処理を行うことにより、第2断層画像から合成二次元画像を生成させる。
【0137】
ここで、二次元画像生成部70は、図10に示すように、まず、断層画像生成部68により生成された複数の第2断層画像を積層した積層画像に対して任意の視点方向に沿って投影処理を行い、投影経路中の最大の画素値(輝度値)を選択する。この処理を画素毎に行って、合成二次元画像を生成する。或いは投影経路中の最小の画素値を選択して合成二次元画像を生成してもよい。また、任意の方向に沿って各断層画像の対応する画素の画素値を加算する加算処理を行うことにより、合成二次元画像を生成するようにしてもよい。また、米国特許出願公開第2010/0135558号明細書に示される合成二次元画像生成方法を採用してもよい。このように、合成二次元画像の生成方法は、一般的に知られている手法を用いればよく、特に限定されない。
【0138】
次に、ステップ116において、CPU52は、生成された合成二次元画像の画像情報を出力(例えば、画像表示指示部62に出力)し、本第1画像生成処理プログラムを終了する。
【0139】
ところで、上述したように、二次元画像生成部70は、第2断層画像から合成二次元画像を生成するため、第2断層画像に生じたアーチファクトによっては、当該合成二次元画像にも当該アーチファクトの影響が及び、画像ボケが生じてしまうことがある。図11は、第2断層画像を積層した積層画像の断面図の一例であるが、実際に関心物が存在する領域をOBとしたときに、例えば図11のA1、A2に示すように領域OBの斜め方向にアーチファクトが生じると、当該アーチファクトが二次元画像の画像ボケの原因となってしまう。
【0140】
しかしながら、本実施の形態では、入射角度が第1閾値以上の投影画像に低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を施してから断層画像を再構成することにより、上記アーチファクトが目立たない断層画像が生成されるため、当該断層画像から生成した合成二次元画像もアーチファクトが目立たない画像となる。
【0141】
なお、入射角度が第1閾値未満の投影画像に対して低周波成分を相対的に減弱させる処理を実施しないことで、関心物の画像濃度の低下が抑制されるが、これにより、例えば図11のA3に示すように、関心物が本来存在しないスライス位置の上記領域OBに対応する領域(領域OBの真上方向の領域)に、多少のアーチファクトが残ることがある。しかしながら、合成二次元画像は上述した加算処理或いは投影処理により生成されることから、図11のA3に例示したアーチファクトは、図11のA1、A2に例示したアーチファクトに比べて合成二次元画像の画像ボケに対する影響度は小さい。
【0142】
さらに、本実施の形態では、処理対象投影画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する周波数処理を行った第1断層画像が生成されると共に、強調の度合いを第1断層画像に比較して低くして空間周波数が高くなるほど強調する周波数処理を行って第2断層画像が生成される。これにより、読影に用いる第1断層画像と比較してアーチファクトが目立たない第2断層画像が生成されるため、当該第1断層画像から合成二次元画像を生成した場合と比較して、当該第2断層画像から生成された合成二次元画像もアーチファクトが目立たない画像となる。
【0143】
すなわち、本実施の形態では、石灰化等の比較的小さい物体がより強調された第1断層画像が生成されると共に、第1断層画像と比較してアーチファクトが低減された第2断層画像が生成されるので、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像が生成される。
【0144】
図13には、図12に示すように異なる入射角度で異なる大きさの複数の物体をトモシンセシス撮影した場合に生成される合成二次元画像の例を示す。
【0145】
図13(1)は、通常の放射線撮影により得られる二次元画像の一例である。図13(2)は、上記原周波数処理及び第2周波数処理を行わず、投影画像から再構成した断層画像を用いて生成した合成二次元画像の一例である。図13(3)は、上記原周波数処理及び第2周波数処理を行った投影画像から再構成した第2断層画像を用いて生成した合成二次元画像の一例である。同図に示すように、図13(3)に示す合成二次元画像は、図13(2)に示す合成二次元画像に比較して、アーチファクトが低減され、小さい物体が強調された合成二次元画像となっている。
【0146】
なお、上記加算処理を行って合成二次元画像を生成する場合に、関心物が存在するスライス位置に対応する第2断層画像の重み付けを、他の第2断層画像の重み付けよりも大きくする等、画像全体の濃度の変化が実際の濃度と乖離しないように重合のバランスをとりながら処理してもよい。
【0147】
以上、説明したように、本実施の形態に係る画像処理装置50は、投影画像に対して入射角度に応じた原周波数処理を行っているので、一律に周波数処理を行う場合に比べて、アーチファクトの抑制と画像濃度の低下の抑制とをバランスよく実現することができる。また、本実施の形態に係る画像処理装置50は、処理対象投影画像に対して第1周波数処理を行って第1断層画像を再構成し、処理対象投影画像に対して第2周波数処理を行って第2断層画像を再構成しているので、第1周波数処理及び第2周波数処理を行わない場合に比較して、読影及び合成二次元画像の生成の双方に適した断層画像を生成することができる。
【0148】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10の構成は、図1図3に示した上記第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置10と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0149】
まず、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成について説明する。なお、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成は、上記第1の実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の構成(図4も参照。)と周波数処理部66の機能のみが異なっている。
【0150】
すなわち、本実施の形態に係る周波数処理部66は、上記原周波数処理を、上記第1の実施の形態と同様に投影画像に対して行う。これに対し、本実施の形態に係る周波数処理部66は、上記第1の実施の形態と同様の第1周波数処理及び第2周波数処理を、投影画像に対してではなく、断層画像生成部68により生成された断層画像に対して行う。
【0151】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5の作用について説明する。なお、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10及び表示装置80の作用は、上記第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0152】
本実施の形態に係る画像処理装置50は、投影画像に対して原周波数処理を行った後に、当該投影画像から断層画像を生成する。さらに、画像処理装置50は、生成した断層画像に対して第1周波数処理を実行することにより第1断層画像を生成する。そして、画像処理装置50は、上記生成した断層画像に対して第2周波数処理を実行することにより第2断層画像を生成し、当該第2断層画像から二次元合成画像を生成する。
【0153】
次に、本実施の形態に係る画像処理装置50の作用について図面を参照して詳細に説明する。図14は、本実施の形態に係る画像処理装置50のCPU52が実行する、第2画像生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0154】
まず、同図のステップ200において、CPU52は、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ100と同様に投影画像の画像情報を取得する。次に、ステップ202において、CPU52は、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ102と同様に周波数処理部66を制御して、投影画像に対して原周波数処理を実行させる。
【0155】
次に、ステップ204において、CPU52は、断層画像生成部68を制御して、上記第1の実施の形態と同様の処理対象投影画像から、上述した逆投影法により断層画像(以下、「処理対象断層画像」という。)を再構成させる。
【0156】
次に、ステップ206において、CPU52は、周波数処理部66を制御して、処理対象断層画像に対して上記第1周波数処理を実行させる。ここで、本実施の形態に係る第1周波数処理では、強調係数として、上記第1の実施の形態に係る第1周波数処理における強調係数と同様の値を適用する。
【0157】
このように、本実施の形態では、上記第1周波数処理として、全ての処理対象断層画像に対して、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用しているが、これに限らない。
【0158】
例えば、第1周波数処理として、上記原周波数処理において減弱の対象とした低周波成分を除く成分に対して、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用する形態としてもよい。
【0159】
また、第1周波数処理として、予め定められた高周波数側の周波数の範囲に対し、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用する形態としてもよい。
【0160】
次に、ステップ208において、CPU52は、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ108と同様に、第1周波数処理が実行された断層画像(第1断層画像)の画像情報を出力(例えば画像表示指示部62に出力)する。
【0161】
なお、上記ステップ202において、上記原周波数処理として高周波成分を強調する処理を行う場合、必ずしも第1周波数処理を行う必要はなく、この場合は上記ステップ206の処理を実行しない形態としてもよい。この場合、本ステップ208では、上記ステップ204の処理により得られた処理対象断層画像の画像情報を出力することになる。この場合、原周波数処理を行う際の高周波成分の強調の度合いを、読影の際に関心物が視認できる値として予め得られた度合いとすることが好ましいことは言うまでもない。
【0162】
次に、ステップ210において、CPU52は、周波数処理部66を制御して、処理対象断層画像に対して上記第2周波数処理を実行させる。ここで、本実施の形態に係る第2周波数処理では、強調係数として、上記第1の実施の形態に係る第2周波数処理における強調係数と同様の値を適用する。
【0163】
このように、本実施の形態では、上記第2周波数処理として、全ての処理対象断層画像を対象として周波数処理を実行する処理を適用しているが、これに限らない。
【0164】
例えば、第2周波数処理として、上記原周波数処理において減弱の対象とした低周波成分を除く成分を対象として周波数処理を実行する処理を適用する形態としてもよい。
【0165】
また、第2周波数処理として、予め定められた高周波数側の周波数の範囲に対し、第1周波数処理より強調の度合いを低くして、空間周波数が高くなるほど強調の度合いを高くする処理を適用する形態としてもよい。
【0166】
次に、ステップ212において、CPU52は、二次元画像生成部70を制御して、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ114と同様に、第2周波数処理が実行された断層画像(第2断層画像)から合成二次元画像を生成させる。
【0167】
次に、ステップ214において、CPU52は、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ116と同様に、生成された合成二次元画像の画像情報を出力(例えば画像表示指示部62に出力)し、本第2画像生成処理プログラムを終了する。
【0168】
以上、説明したように本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5では、放射線画像撮影装置10が、トモシンセシス撮影により複数の投影画像を撮影する。本実施の形態に係る画像処理装置50は、撮影された複数の投影画像を取得して記憶部74に記憶し、取得した投影画像に対して入射角度に応じた原周波数処理を実行した後、当該投影画像により再構成を行って断層画像を生成し、出力する。さらに、画像処理装置50は、再構成した断層画像に対して第1周波数処理を実行して第1断層画像を生成する。そして、画像処理装置50は、再構成した断層画像に対して第2周波数処理を実行して第2断層画像を生成し、当該第2断層画像から合成二次元画像を生成する。
【0169】
このように、本実施の形態に係る画像処理装置50は、上記第1の実施の形態で処理対象投影画像に対して行っている第1周波数処理及び第2周波数処理を、処理対象断層画像に対して行っているので、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム5によれば、結果的に上記第1の実施の形態と略同様の効果を奏することができる。
【0170】
以上、本発明を上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の主旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えてもよく、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0171】
また、上記各実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、また、上記各実施の形態に係る中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における状況に応じた組み合わせにより種々の発明が抽出される。上記各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出される。
【0172】
例えば、周波数処理部66は、原周波数処理を行う際に、入射角度が大きくなるにしたがって低周波成分を相対的に減弱させる度合いを高くするようにしてもよい。例えば、入射角度が第1閾値以上の投影画像に低周波成分減弱処理を行う場合には、入射角度が大きくなるにしたがって低周波成分を減弱させる度合いを高くするようにしてもよい。また、例えば、入射角度が第1閾値以上の投影画像に高周波成分強調処理を行う場合には、入射角度が大きくなるにしたがって高周波成分を強調する度合いを高くするようにしてもよい。これにより、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から再構成される断層画像に含まれる関心物の画像濃度の低下の抑制とアーチファクトの抑制とを、よりバランスよく実現できる。
【0173】
また、周波数処理部66で行われる入射角度に応じた原周波数処理として、上記例示した処理に加えて、入射角度が第1閾値以下である第2閾値未満の投影画像の低周波成分を高周波成分に対して相対的に強調させる周波数処理が行われるように周波数処理部66を構成してもよい。例えば、入射角度が第2閾値未満の投影画像に対し、高周波成分は減弱させずに低周波成分を強調させる周波数処理か、低周波成分を強調させずに高周波成分を減弱させる周波数処理か、或いは低周波成分を強調し且つ高周波成分を減弱させる周波数処理を行うことができる。これにより、関心物の濃度がアーチファクトの濃度に対して相対的に低下することがより抑制される。
【0174】
また、周波数処理部66は、入射角度が第2閾値未満の投影画像の低周波成分を相対的に強調させる周波数処理を行う際に、入射角度が小さくなるにしたがって低周波成分を相対的に強調させる度合いを高くするようにしてもよい。
【0175】
また、周波数処理部66は、上記第1閾値及び第2閾値を設けずに、入射角度が大きくなるほど度合いを高くして、投影画像の空間周波数における低周波成分を高周波成分に対して相対的に減弱させる周波数処理を行ってもよい。
【0176】
また、断層画像生成部68は、再構成の際に、入射角度に応じた重み付けを投影画像に付与して再構成するようにしてもよい。例えば、入射角度が第1閾値以上の投影画像に対しては、入射角度が第1閾値未満の投影画像より重み付けを小さくして再構成するようにしてもよい。これにより、アーチファクトがより目立たなくなる。また、入射角度が大きい投影画像ほど小さな重み付けを付与して再構成を行うようにしてもよい。
【0177】
なお、周波数処理部66で行われる原周波数処理、第1周波数処理、及び第2周波数処理の各周波数処理の手法は、特に限定されない。例えば、重み付け係数を一次元或いは二次元状に配置したフィルタを用い、畳み込み積分を行うことにより上記各周波数処理を行うようにしてもよい。
【0178】
また、処理対象とする画像をフーリエ変換により空間周波数領域の情報に変換し、上記各周波数処理の処理対象とする周波数の範囲及び強調係数に応じて、周波数成分毎に重み付けを付与して加算し、逆フーリエ変換を行って、実空間領域に戻すことにより、上記各周波数処理を行うようにしてもよい。
【0179】
また、特開平6−301766号公報等に記載の多重解像度分解の手法を用いてもよい。具体的には、例えば、平滑化処理等を行って画像を複数の解像度の画像に変換し、解像度毎の画像間の差分画像を求め、当該差分画像に対して重み付け係数を付与して積分することにより、特定の周波数成分が減弱或いは強調された画像を形成することができる。
【0180】
フーリエ変換や多重解像度分解等により画像を複数の周波数成分に分解して上記各周波数処理を行う場合、アーチファクト及び画像の濃度の変動が抑制されるように、各周波数成分の重み付けのバランスを調整して処理するとよい。このように、重み付けのバランスを自由に(非線形で)調整できるため、複数の周波数成分に分解して行う周波数処理を非線形フィルタ処理と呼称することもできる。
【0181】
また、コントラストに依存した強調係数で上記各周波数処理を実施してもよい。具体的には、非線形フィルタ処理を実施する場合、周波数成分毎のコントラストの高さを判定して、上記周波数成分毎の重み付けをコントラストの高さに応じて変更することができる。コントラストが高い物体(人工物や石灰化等の高吸収体等)が存在する場合には、高周波成分の強調の度合いを抑制し過強調によるアーチファクトを抑制するようにしてもよい。また、通常乳腺や腫瘤のようにコントラストが小さい物体が存在する場合には、低周波成分を減弱するだけでなく、高周波成分を積極的に強調して見やすくするようにしてもよい。このようにコントラストに依存して周波数処理を行うことにより、より診断しやすい断層画像を再構成することができる。
【0182】
さらに、第2断層画像を生成する際に、逐次近似法による再構成の手法を用いてもよい。具体的には、第1周波数処理より強調の度合いが低くなる逐次近似法の反復演算回数を求める。そして、求めた反復演算回数だけ逐次近似法による演算を繰り返すことにより、アーチファクトが低減された断層画像が再構成される。
【0183】
また、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ102において実行した原周波数処理は必須の処理ではなく、当該原周波数処理を実行しない形態としてもよい。この場合、画像処理装置50は、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ104において、投影画像に対して第1周波数処理を実行し、上記第1の実施の形態に係る第1画像生成処理プログラムのステップ110において、投影画像に対して第2周波数処理を実行する。
【0184】
同様に、上記第2の実施の形態に係る第2画像生成処理プログラムのステップ202において実行した原周波数処理も必須の処理ではなく、当該原周波数処理を実行しない形態としてもよい。この場合、画像処理装置50は、上記第2の実施の形態に係る第2画像生成処理プログラムのステップ204において、投影画像から断層画像を再構成する。
【0185】
また、上記各実施の形態では、第1断層画像及び合成二次元画像の双方を表示装置80に表示しているが、これに限定されるものではなく、第1断層画像及び合成二次元画像の何れか一方を表示装置80に表示する形態としてもよいことは言うまでもない。
【0186】
また、上記各実施の形態では、画像処理装置50の記憶部74に記憶されている投影画像から第1断層画像及び第2断層画像を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、ネットワーク49等を介して外部から受信した投影画像から第1断層画像及び第2断層画像を生成する形態としてもよい。
【0187】
また、上記各実施の形態では、第1周波数処理及び第2周波数処理として、処理対象とする画像に対して空間周波数が高くなるほど強調する処理を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、石灰化等の比較的小さい物体と腫瘤等の比較的大きな物体との間の中間的な大きさの物体を特に注目する関心物とする場合がある。この場合等には、第1周波数処理及び第2周波数処理として、当該中間的な大きさの物体が含まれる空間周波数の範囲等の予め定められた空間周波数の範囲を、その他の空間周波数の範囲に対して相対的に強調する処理を行う形態としてもよい。
【0188】
また、上記各実施の形態では、第2周波数処理として、第1周波数処理より強調の度合いを低くして、処理対象とする画像に対して強調する処理を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2周波数処理として、上記中間的な大きさの物体が含まれる空間周波数の範囲等の予め定められた空間周波数の範囲を、第1周波数処理より強調の度合いを高くして強調する処理を行う形態としてもよい。
【0189】
また、上記第1の実施の形態では、第1周波数処理及び第2周波数処理の対象を投影画像とし、上記第2の実施の形態では、第1周波数処理及び第2周波数処理の対象を断層画像としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1周波数処理及び第2周波数処理の対象を投影画像及び断層画像の双方としてもよい。この場合、結果的に得られる第1断層画像及び第2断層画像が、上記各実施の形態により得られる第1断層画像及び第2断層画像と同様の画像になるように第1周波数処理及び第2周波数処理における強調係数を調整することが好ましい。
【0190】
また、上記各実施の形態では、マンモグラフィにより撮影された投影画像の断層画像の生成に画像処理装置を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線源と放射線検出器との位置関係が固定された状態で回動する所謂Cアーム型の放射線画像撮影装置等の他の放射線画像撮影装置により撮影された投影画像の断層画像の生成に適用してもよい。
【0191】
また、トモシンセシス撮影に用いられる放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0192】
その他、上記各実施の形態で説明した放射線画像撮影システム5、放射線画像撮影装置10、画像処理装置50、及び表示装置80の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0193】
また、上記各実施の形態では、周波数処理部66、断層画像生成部68、及び二次元画像生成部70の各々を、ハードウェア(例えば、一般的な電子回路や、ASIC、或いはFPGA等により構成されたハードウェア)により実現する例について説明したが、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェアにより実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。
【0194】
さらに、上記各実施の形態で説明した各画像生成処理プログラムの処理の流れ(図5図14参照。)も一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0195】
5 放射線画像撮影システム
10 放射線画像撮影装置
24 放射線照射部
42 放射線検出器
50 画像処理装置
62 画像表示指示部
64 指示受付部
66 周波数処理部(処理手段、第1断層画像生成手段、第2断層画像生成手段)
68 断層画像生成部(第1断層画像生成手段、第2断層画像生成手段)
70 二次元画像生成部(二次元画像生成手段)
74 記憶部
80 表示装置(表示手段)
N 乳房(被写体)
図3
図4
図5
図14
図15
図1
図2
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13