特許第6012667号(P6012667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012667
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   B41J2/01 205
   B41J2/01 207
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-130518(P2014-130518)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-83369(P2015-83369A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-195473(P2013-195473)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 淳
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−000685(JP,A)
【文献】 特開平08−174805(JP,A)
【文献】 特開2009−018504(JP,A)
【文献】 特開2008−074061(JP,A)
【文献】 特開2008−168592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録用液滴を吐出する複数の吐出ノズルを同数個それぞれ有する複数の画像記録用ヘッドを備える画像記録部と、
入力画像を2種類以上のドットサイズのドットデータに変換する画像処理部と、
前記ドットデータを前記画像処理部から前記画像記録部に転送するデータ転送部と、
前記画像記録部を制御して画像記録速度の異なる少なくとも2つの画像記録モードにより画像を記録する画像記録モード制御部と、
前記複数の吐出ノズルの吐出状態を読み取る吐出状態読み取り部と、
前記吐出状態読み取り部が、前記複数の画像記録用ヘッドのうち1つの画像記録用ヘッドの前記複数の吐出ノズルのうちJ番目の第1の吐出ノズルの吐出不良を検知すると、前記画像記録モードのうち画像記録速度の速い第1のモードにより画像を記録する場合において、前記第1の吐出ノズルを有する前記画像記録用ヘッド以外の少なくとも1つの画像記録用ヘッドのJ番目の第2の吐出ノズルから吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、前記第1の吐出ノズルから吐出すべきであった本来の画像記録用液滴のドットサイズより大きい第1のサイズに変更し、前記画像記録モードのうち画像記録速度が前記第1のモードより遅い第2のモードにより画像を記録する場合において、前記第2の吐出ノズルから吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、前記ドットサイズのうち一番大きいドットサイズより大きい第2のサイズに変更するドットデータ変更部と、
を備えた画像記録装置。
【請求項2】
前記第2のサイズのドットサイズを有する画像記録用液滴を作成する波形の周期をλDa、前記一番大きいドットサイズを有する画像記録用液滴を作成する波形の周期をλD、画像記録速度が第1のモードの場合の前記第1、前記第2の吐出ノズルの吐出時間間隔をTH、画像記録速度が第2のモードの場合の前記第1、前記第2の吐出ノズルの吐出時間間隔をTSとしたとき、前記周期λDa、前記周期λD、吐出時間間隔THおよび吐出時間間隔TSが、
TS>λDa>TH>λD
の関係である請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ドットデータ変更部は、前記第1のモードにより画像を記録する場合において、前記第1の吐出ノズルを有する前記画像記録用ヘッドのJ−1番目の第3の吐出ノズルおよびJ+1番目の第4の吐出ノズルの少なくとも一方から吐出される画像記録用液滴のドットサイズを前記第1のサイズに変更する請求項1または請求項2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記ドットデータ変更部は、前記第2のモードにより画像を記録する場合において、前記第1の吐出ノズルを有する前記画像記録用ヘッドのJ−1番目の第3の吐出ノズルおよびJ+1番目の第4の吐出ノズルから吐出する画像記録用液滴のドットサイズの少なくとも一方を、前記第2のサイズ以下のドットサイズに変更する請求項1または請求項2記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記複数の吐出ノズルから前記画像記録用液滴が吐出されるタイミングを制御する吐出タイミング制御部を更に備え、
前記吐出タイミング制御部は、第1の吐出ノズルと、当該第1の吐出ノズルが吐出すべき画像記録用液滴が着弾すべき位置と連続する位置に着弾すべき画像記録用液滴を吐出する複数の画像記録用ヘッドのうちの1つの画像記録用ヘッドの複数の吐出ノズルのうちJ−1番目またはJ+1番目の第5の吐出ノズルとが吐出不良である場合に、前記第1の吐出ノズルおよび前記第5の吐出ノズルが吐出すべき画像記録用液滴が着弾すべき位置に画像記録用液滴を着弾可能な第6の吐出ノズルの吐出のタイミングを、本来の吐出のタイミングから、前記第1の吐出ノズルおよび第5の吐出ノズルが吐出不良でない場合のタイミングにずらす制御を行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像記録装置では、各ノズルから吐出される液滴の着弾位置がずれたり、液滴の大きさが他と異なったり、吐出されなかったりと言った吐出不良が生じると、スジムラとして視認されるという不具合が有る。このような吐出不良が起きても、それがスジムラとして視認されないように、その付近の液滴の大きさを調整(補正)する、という方法が知られている。
【0003】
例えば、不吐出ノズルの両脇の液滴を通常のサイズより大きくする補正を行うことで、スジムラの視認性を低下させている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−168592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2種類以上のサイズの液滴を吐出する方式の場合、液滴のサイズを大きくした最大サイズの液滴を吐出可能な周波数がそのヘッドの吐出可能な周波数となってしまう。従って、単に不吐出ノズルの両脇の液滴を通常のサイズより大きくすることで、スジムラの視認性を低下させる方法では、印刷速度が遅くなってしまう。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、印刷速度と画質(補正によるスジムラの視認性低下)を選択可能な画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい一態様によれば、
画像記録用液滴を吐出する複数の吐出ノズルを同数個それぞれ有する複数の画像記録用ヘッドを備える画像記録部と、
入力画像を2種類以上のドットサイズのドットデータに変換する画像処理部と、
ドットデータを画像処理部から画像記録部に転送するデータ転送部と、
画像記録部を制御して画像記録速度の異なる少なくとも2つの画像記録モードにより画像を記録する画像記録モード制御部と、
複数の吐出ノズルの吐出状態を読み取る吐出状態読み取り部と、
吐出状態読み取り部が、複数の画像記録用ヘッドのうち1つの画像記録用ヘッドの複数の吐出ノズルのうちJ番目の第1の吐出ノズルの吐出不良を検知すると、画像記録モードのうち画像記録速度の速い第1のモードにより画像を記録する場合において、第1の吐出ノズルを有する画像記録用ヘッド以外の少なくとも1つの画像記録用ヘッドのJ番目の第2の吐出ノズルから吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、第1の吐出ノズルから吐出すべきであった本来の画像記録用液滴のドットサイズより大きい第1のサイズに変更し、画像記録モードのうち画像記録速度が第1のモードより遅い第2のモードにより画像を記録する場合において、第2の吐出ノズルから吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、ドットサイズのうち一番大きいドットサイズより大きい第2のサイズに変更するドットデータ変更部と、
を備えた画像記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷速度と画質(補正によるスジムラの視認性低下)を選択可能な画像記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の基本構成を説明するための概略構成図である。
図2】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録用ドラムを展開した状態で示す概略説明図である。
図3】(A)は本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置における制御装置の基本構成を説明するためのブロック図、(B)は制御装置の制御部のブロック図である。
図4】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置において階調値に対する小滴及び中滴の使用比率を模式的に示した図である。
図5】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置のインクジェット画像記録ヘッドの駆動波形を説明するための模式図である。
図6】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置において、インクジェット方式の画像記録ヘッドの構成と、正常吐出状態を示す図である。
図7】(A)及び(B)は本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置により画像を記録する方式を説明するための図である。
図8】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置により画像を記録する方法を説明するためのフローチャートである。
図9】(A)は本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出の場合に記録される画像を説明するための図であり、(B)は高速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図である。
図10】(A)及び(B)は、本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出の場合に、高速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図である。
図11】高速画像記録モードの場合の、本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの駆動波形を説明するための模式図である。
図12】(A)は本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出の場合に記録される画像を説明するための図であり、(B)は低速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図である。
図13】(A)及び(B)は、本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出の場合に、低速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図である。
図14】低速画像記録モードの場合の、本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置のインクジェット画像記録ヘッドの駆動波形を説明するための模式図である。
図15】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出であって、連続する位置に着弾すべき画像記録用液滴が吐出不良となった場合に記録される画像を説明するための図である。
図16】(A)は、本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出であって、連続する位置に着弾すべき画像記録用液滴が吐出不良となった場合に、高速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図であり、(B)は、高速画像記録モードの場合の補正後の画像を説明するための図である。
図17】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部が不吐出であって、連続する位置に着弾すべき画像記録用液滴が吐出不良となった場合に、高速画像記録モードの場合であって、画像記録用液滴の吐出タイミングをずらさずに行った補正後の画像を説明するための図である。
図18】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部から吐出される画像記録用液滴のドットサイズが小さくなった場合に記録される画像を説明するための図である。
図19】本発明の好ましい実施の形態の画像記録装置の画像記録ヘッドの一部から吐出される画像記録用液滴の着弾位置がノズルが正常な場合の着弾位置からずれた場合に記録される画像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るインクジェット記録方式の画像記録装置10を説明する。画像記録装置10は、給紙部114、処理液塗布部116、画像記録部118、乾燥部120、定着部122、及び排紙部124を有している。
画像記録装置10は、記録媒体の一例である用紙154(図2等参照)を給紙部114から処理液塗布部116等の各部位に沿って順に搬送しながら、用紙154に出力画像を記録する装置である。
【0012】
給紙部114には、給紙トレイ125に用紙154が積載されると共に、この用紙154を1枚ずつ送り出すように構成されている。送り出された用紙154は、給紙ドラム126を経て、処理液塗布部116へ搬送される。
【0013】
用紙154としては、紙種や大きさ(媒体サイズ)の異なる複数種の用紙を使用することが可能である。以下では、用紙154として、枚葉紙(カット紙)を用いた場合を例に説明する。
【0014】
処理液塗布部116には処理液塗布ドラム128が回転可能に配置されている。用紙154の先端が処理液塗布ドラム128に設けられた爪形状の保持部材130(グリッパー)で保持された状態において、処理液塗布ドラム128の回転により用紙154が下流側へ搬送される。そして、処理液塗布ドラム128の上部に配置された処理液塗布装置132により処理液が用紙154に塗布される。
【0015】
処理液塗布部116で用紙154に塗布される処理液は、画像記録部118で用紙154に付与されるインク中の色材(顔料もしくは染料)を凝集もしくは増粘させる成分を含んでいる。この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0016】
処理液の付与方法としては、処理液吐出による打滴、ローラによる塗布、スプレーによって一様に付与する方法等が使用可能である。
【0017】
処理液塗布部116は、処理液塗布ドラム128の外周面に対向する位置に、処理液乾燥装置146を有している。処理液乾燥装置146では、用紙154上に付与された処理液中の溶媒成分を乾燥させる。これにより、色材浮遊(インク滴が処理液の上に浮遊してしまうことで、所望の位置にインク滴による画素が記録されない現象)を抑制することが可能である。
【0018】
次に、用紙154は、搬送ドラム134を経て、画像記録部118に送られる。画像記録部118では、用紙154は画像記録用ドラム136に保持されて搬送されつつ、画像記録用ドラム136の上方に配置されたインクジェット方式の画像記録ヘッド138の吐出ノズルから吐出されたインク滴が付着することで、用紙154の表面に画像が記録される。画像記録用ドラム136は、モータ等によって矢印R3方向に回転されるようになっており、本発明における相対移動手段を兼ねている。
【0019】
本実施形態では、基本色であるK(クロ)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(サイアン)の4色のインクジェット画像記録部138K、138Y、138M、138Cが画像記録用ドラム136の周方向に沿って配置されている。それぞれのインクジェット画像記録部138K、138Y、138M、138Cは、用紙154の最大幅に対応するインク吐出範囲を有する、いわゆるフルラインヘッドを複数具備したものとされている。
【0020】
特に、本実施形態では、上記したように、処理液塗布部116によって、インク中の色材と搬送する処理液をあらかじめ用紙154に付与しているため、インク中の色材が凝集(あるいは増粘)し、にじみを抑制することができる。
【0021】
図2は、本発明の好ましい実施形態の画像記録装置10において、画像記録用ドラム136の表面を周方向に展開した状態を示している。
【0022】
図2に示すように、画像記録部118の画像記録用ドラム136には、保持された用紙154が存在しない部分(図2の例では、用紙154よりも搬送方向(矢印M1で示す)の後方側)に、チェック用画像記録領域137が設定されている。そして、このチェック用画像記録領域137には、後に詳述するように、所定のタイミング及びパターンで、画像記録用ドラム136において、インクジェット画像記録部138Y、138M、138C、138Kの各ヘッドからインク滴が吐出され、後述するチェック用画像(チェックパターン)156が記録されるようになっている。
【0023】
なお、図1では、1つの画像記録用ドラム136において、1周あたり2枚の用紙154を配置可能な構造(2倍胴)を示しているが、用紙154を1枚のみ配置可能な構造(1倍胴、図2参照)であってもよいし、3枚配置可能な構造(3倍胴、図示せず)であってもよいし、さらには、4枚以上配置可能な構造であってもよい。
【0024】
図1に示すように、画像記録部118はさらに、チェック用画像読取センサ158を有している。インクジェット画像記録部138Y、138M、138C、138Kの各ヘッドによって、画像記録用ドラム136のチェック用画像記録領域137に記録されたチェック用画像156は、チェック用画像読取センサ158により読み取られる。チェック用画像読取センサ158は、チェック用画像の形状や色合い、インクの滲み、掠れ等を読み取り可能とされている。CCDラインセンサー等が、読み取り用のセンサーとして用いられている。
【0025】
読み取られたデータは、制御装置160に送られ、ノズルの状態(たとえばインク吐出方向の曲がりや不吐出等)が検出される。そして、この状態検出の値が所定の閾値よりも悪いノズルを吐出不良ノズルとして抽出し、吐出不良ノズルの影響が少なくなる(好ましくはスジムラとして視認されなくなる)ように、制御装置160は後述する手順で出力画像を補正する。
【0026】
画像記録部118は、さらに、チェック用画像除去部材170を有している。チェック用画像除去部材170は、画像記録用ドラム136に記録された図2に示すチェック用画像156を、画像記録用ドラム136から除去するための除去処理を行う。
【0027】
本実施形態では、チェック用画像除去部材170は、クリーニング液塗布ローラー172と、インク除去ブレード174とを有している。
【0028】
クリーニング液塗布ローラー172は、図示しないクリーニング液供給部から供給されたクリーニング液を、画像記録用ドラム136の表面に転写塗布する。
【0029】
インク除去ブレード174は、ゴム等の弾性を有する材料により、少なくともチェック用画像156の幅以上の幅を有する板状により設けられている。インク除去ブレード174が画像記録用ドラム136の周面に圧着されると、チェック用画像156を記録していたインクが掻き取られる。
【0030】
チェック用画像除去部材170によってチェック用画像156の除去が行われた後に画像記録用ドラム136へのインクの残存度合いを検出するインク検出センサー175が設けられてもよい。
【0031】
上記例では、画像記録用ドラム136上にチェック用画像156を記録する態様を記載したが、チェック用画像156は用紙154の非画像記録部上(例えば、記録媒体の端部)に記録しても良い。
【0032】
画像記録部118によって画像が記録された用紙154は、搬送ドラム140を経て、乾燥部120に送られる。乾燥部120では、用紙154は乾燥用ドラム142に保持されて搬送されつつ、インク中の溶媒(水分)を乾燥させる。
【0033】
本実施形態では、乾燥部120は、乾燥用ドラム142の内側に配置され、用紙154の画像記録面の反対側から溶媒を乾燥させる第1乾燥手段120Aと、乾燥用ドラム142の外側に配置され、用紙154の画像記録面から溶媒を乾燥させる第2乾燥手段120Bと、を有している。具体的には、第1乾燥手段120Aとしては、用紙154の画像記録面の反対側から用紙154に加熱部材を押し当て、接触熱伝導により熱供給する構成などが用いられる。第2乾燥手段120Bとしては、用紙154の画像記録面側から用紙154へ温風を流す構成などが用いられる。また、第2乾燥手段120Bは、温風送付に加え、カーボンヒーターやハロゲンヒーターなどからの熱の輻射により用紙154を乾燥する構成としてもよい。
【0034】
乾燥部120によって、インク中の溶媒(水分)が乾燥された用紙154は、搬送ドラム148を経て、定着部122に送られる。定着部122では、定着ローラー166による加熱及び圧接により、画像(インク)が定着される。具体的には、たとえば、約75℃の温度且つ約0.3MPaの圧力で、用紙154の表面に定着ローラー166を接触させることにより、インクに含まれるポリマー樹脂粒子(ラテックス)を溶融させ、用紙154との密着力が高められる。
【0035】
このようにして画像が記録された用紙154は、排出ローラー168から、排出ベルト171によってさらに搬送され、排紙部124を経て画像記録装置10から排出される。排紙部124では複数枚の用紙154が積層される。
【0036】
図3(A)に示すように、画像記録装置10は、画像記録装置10を制御する制御装置160を有している。
【0037】
制御装置160は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えて画像記録装置10の処理用プログラムを実行させる制御部180、画像記録ヘッド138の各ヘッドを制御する画像記録ヘッド制御部18、チェックパターン情報を記憶するチェックパターン記録部20、画像データ等を記憶させる画像メモリ182、及び読み取られたチェックパターンデータを記憶する読み取りデータ蓄積部181を備えている。処理プログラムは、記録媒体としてのROMに記憶されている。
【0038】
制御装置160には、印刷ジョブに関する情報の入出力を行うホストコンピュータ183、画像記録ヘッド制御部18により制御され出力画像を印刷する画像記録ヘッド138、及び画像記録ヘッド138が記録したチェックパターンを読み取るチェック用画像読取センサ158が接続されている。
【0039】
図3(B)に示すように、制御部180は、画像処理部184、ドットデータ変更部185、データ転送部186、画像記録モード制御部187、吐出状態読み取り部188および吐出タイミング制御部189を備えている。画像処理部184は、入力画像等を、2種類以上のドットサイズで構成されるドットデータに変換する。データ転送部186は、ドットデータを画像処理部から画像記録ヘッド138の各ヘッドに送る。画像記録モード制御部187は、高速画像記録モード(第1のモード)と低速画像記録モード(第2のモード)の少なくとも2つの画像記録モードを制御する。吐出状態読み取り部188は、チェック用画像読取センサ158からのデータに基づいて、画像記録ヘッド138の各ヘッドの吐出ノズルの吐出状態を読み取る。ドットデータ変更部185は、吐出状態読み取り部188が吐出不良ノズルを検出した際に、画像記録ヘッド138の各ヘッドに送られるドットデータを変更する。吐出タイミング制御部189は、画像記録ヘッド138の各ヘッドの吐出ノズルが画像記録用液滴を吐出するタイミングを制御する。
【0040】
画像記録ヘッド138は、基本色であるK(クロ)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(サイアン)の4色のインクジェット画像記録部138K、138Y、138M、138Cを備えている。このインクジェット画像記録部138K、138Y、138M、138Cは、画像記録用ドラム136の周方向に沿って配置されている(図1参照)。インクジェット画像記録部138K、138Y、138M、138Cは、いずれも同じ構成であるので、色分けを意味する記号(K、C、M、Y)を「A」に代えて、共通の構成のインクジェット画像記録部138Aとして以下説明する。
【0041】
インクジェット画像記録部138Aは、K、C、M、Yの各色につき、複数(N個)の記録ヘッドを備えている。複数の記録ヘッドの各々は、画像記録用液滴を吐出する吐出ノズルを同数個(M個)それぞれ有している。
【0042】
本実施の形態の画像記録装置10は、記録ヘッドの吐出ノズルから、2種類以上のドットサイズの液滴のうちのいずれかのドットサイズの液滴が吐出されるか、または液滴が吐出されない方式を採用している。
【0043】
より具体的には、液滴として、例えば、小滴、中滴、大滴の3種類が採用されている。即ち、各画素は、吐出される液滴が無い、という状態も入れると、4値のデータとなる。液滴が小さい方から、Dot−1、Dot−2、…、Dot−Dとする。ここでは、小滴および中滴が用いられているので、D=2となる。また、大滴はDot−Daとする。
【0044】
通常の画像記録においては、液滴無し、小滴(Dot−1)、中滴(Dot−2)の3つのパターンから画像を記録し、大滴は吐出不良の補正の場合のみ利用することとする。
【0045】
図4は階調値に対する、小滴及び中滴の使用比率を模式的に示したものである。低階調値域(低濃度域)では粒状性の観点から小滴を使用し、小滴がある頻度になったら、中滴を混ぜていくと共に小滴の比率を下げることにより、画素間の白抜けを埋めて、濃度を出すことができる。中滴を入れ始める階調値や小滴を減らす階調値、そのときの小滴比率、最大濃度における中滴と小滴との比率等は、必ずしも図4のようにしなくてもよい。打滴密度やインク濃度、小滴や中滴の液滴量等によって最適な設計がなされている。
【0046】
次に、液滴の大きさと液滴の吐出周期との関係について説明する。
図5に本実施の形態の画像記録ヘッド138の駆動波形の模式図を示す。図5の左側に駆動波形、中央に空中での液滴の状態、右側に着弾後の液滴のドットの状態がそれぞれ示されている。一つの液滴のドットの吐出に必要な波形の長さ(時間)を、ここでは、必要吐出周期と呼ぶことにする。
【0047】
小滴の場合は、空中に小さい液滴が本例においては1つ吐出されればよく、必要吐出周期は短い。中滴の場合は、空中に小さい液滴を本例においては4つ吐出するので、必要吐出周期はその分小滴の場合よりも長くなる。大滴の場合は、空中に小さい液滴を5つ吐出し、最後に大きい液滴を1つ吐出するので、必要吐出周期はその分中滴の場合よりも長くなる。一般的に液滴のドットサイズが大きい方が1滴を飛ばすのに必要な波形が長くなる。図5においては、必要吐出周期は、大滴の場合は40μsec、中滴の場合は25μsec、小滴の場合は10μsecである。
【0048】
図5では小さな液滴を複数個吐出させ、飛翔中若しくは着弾時に合一させて中滴や大滴を記録しているが、吐出時に大きな液滴を吐出しても良い。その場合でも液滴量が大きい方が1滴を飛ばすのに必要な波形、即ち必要吐出周期が長くなる。従って、最大ドットサイズの液滴を吐出可能な吐出周期が律速となる。
【0049】
上述のように、大滴は吐出不良の補正の場合のみ利用する液滴であるが、この必要吐出周期をλDa、中滴(通常使用する液滴の中で最大のドットサイズの液滴)の必要吐出周期をλDとする。
【0050】
吐出不良の補正をするために大滴を使用すると、大滴の吐出周期が印刷速度の律速となる。即ち、印刷速度の上限は、画像記録ヘッド138を各色1本のヘッドからなる構成とし、画像記録ヘッド138のノズルから吐出されたドットが1200dpiの間隔で並んでいる場合、以下の値となる。
25400μm/1200dpi/40μsec=0.529dpi/μsec=529mm/sec
ここでは、ヘッドが一つの場合の印刷速度は500mm/secとされる。
【0051】
次に、本実施の形態の画像記録ヘッド138の構成と正常吐出のドットの状態とを図6に示す。本実施の形態では、例えば、各色について、同一のインクジェット画像記録部138Aとして、2つのヘッド(ヘッドH1およびヘッドH2)が用意されている。これにより各ヘッドの吐出dutyは1/2に下げられるので、印刷速度を少なくとも2倍にすることができる。なお、図6ではヘッドH1からの液滴とヘッドH2からの液滴のハッチングを異ならせて示しているが、これは、ヘッドH1から吐出されたドットとヘッドH2から吐出されたドットとを説明の都合上区別しているだけであり、同一色のドットである。ここで、1色当たりのヘッドの本数はN本(図6では、この例ではN=2)であり、各ヘッドはH1、H2、…、HNとされる。
【0052】
本実施の形態の画像記録方法としては、記録媒体(用紙154)の上をヘッドH1およびH2が相対的に1回移動するだけで印刷が完了する。具体的には、図7(A)のように、略用紙幅を有するヘッドH1およびH2の下を用紙が通過することにより画像が記録される方式や、図7(B)のように、幅が狭いヘッドH1およびH2が用紙の幅方向に移動して画像が記録された後にヘッドH1およびH2の画像記録長さ分と略等しい距離だけ用紙が移動する方式がある。
【0053】
次に、本実施の形態の画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)に吐出不良ノズルがあった場合の画像記録方法について説明する。
【0054】
まず、本実施の形態の画像記録装置10を使用して、画像を記録する方法について説明する。
【0055】
図8を参照すれば、最初に、画像処理部184(図3参照)が入力画像等を2種類以上のドットサイズで構成されるドットデータに変換する(ステップS101)。
【0056】
次に、吐出状態読み取り部188(図3参照)が、チェック用画像読取センサ158(図3参照)からのデータに基づいて、画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)の吐出ノズルの吐出状態を読み取り(ステップS102)、吐出不良ノズルを検出したか否かを判断する(ステップS103)。
【0057】
吐出不良ノズルを検出しなければ、データ転送部186(図3参照)が、ステップS101により作成したドットデータを変更なしで、画像記録部118(図1参照)の画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)に転送し(ステップS306)、画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)により用紙154(図1参照)に画像の記録が行われる(ステップS107)。
【0058】
吐出不良ノズルを検出(検知)した場合には、制御部180(図3(A)及び図3(B)参照)が、現在選択されている画像記録モードが高速画像記録モードであるか否かを判断する(ステップS104)。
【0059】
高速画像記録モードの場合には、ドットデータ変更部185(図3参照)が、ステップS101により作成したドットデータを高速画像記録モード用に変更する(ステップS105)。そして、データ転送部186(図3参照)が、変更後のドットデータを、画像記録部118(図1参照)の画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)に転送する(ステップS106)。変更後のドットデータに基づき、画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)では、用紙154(図1参照)に画像が記録される(ステップS107)。
【0060】
高速画像記録モードでない場合には、ドットデータ変更部185(図3参照)が、ステップS101により作成したドットデータを低速画像記録モード用に変更する(ステップS205)。そして、データ転送部186(図3参照)が、変更後のドットデータを画像記録部118(図1参照)の画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)に転送する(ステップS206)。変更後のドットデータに基づき、画像記録ヘッド138(ヘッドH1およびヘッドH2)では、用紙154(図1参照)に画像が記録される(ステップS107)。
【0061】
次に、高速画像記録モードでのドットデータの変更について説明する。高速画像記録モードでは、補正時に大滴を使用せずに吐出不良が補正される。
【0062】
図9(A)では、ヘッドH2の上から3番目のノズル3(H2[3]と記す)が不吐出になりかつドットデータの変更が無い場合のドットの状態が示されている。図9(B)では、ヘッドH2の上から3番目の同一のノズル3(H2[3])が不吐出になりかつドットデータの変更が有る場合のドットの状態が示されている。ここで、ヘッドをHn(n=1,2,…,N)と表記すると、本実施の形態では、各色について2つのヘッドが設けられているので、Nは2となる。また、吐出不良になったノズルをHI[J]と表記する。すると、本実施の形態では、ヘッドH1はノズルH1[1]〜H1[5]を備え、ヘッドH2はノズルH2[1]〜H2[5]を備えている。不吐出になったノズルは、Iが2、Jが3であるので、ノズルH2[3]と表記される。
【0063】
ドットデータを変更するには、まず、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH1のノズル3(H1[3])からの小滴が中滴に変更されて吐出される(図9(B)の太実線参照)。
【0064】
さらに、ヘッドH1のノズル3(H1[3])の両隣である、ヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])からの小滴の一部が中滴に変更されて吐出される(図9(B)の太破線参照)。
【0065】
なお、図9(B)においては、ヘッドH1のノズル3(H1[3])の両隣の、ヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])からの吐出を中滴に変更しているが、図10(A)に示すように、ヘッドH2のノズル3(H2[3])の両隣の、ヘッドH2のノズル2(H2[2])とノズル4(H2[4])からの吐出を中滴に変更してもよい。但し、図10(B)に示すように、不吐出ノズルである、ヘッドH2のノズル3(H2[3])が打滴すべき画素に対して、ノズル列方向について、両隣のヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])およびヘッドH2のノズル2(H2[2])とノズル4(H2[4])からの吐出は中滴にした方が良い。
【0066】
この場合、中滴が最大のドットサイズであるので、印刷速度は中滴の必要吐出周期で決まる。ヘッドが2つなので、各ヘッドのノズルから吐出されるドットが1200/2=600dpiの間隔で並んでいることになり、印刷速度は以下の値まで上げられる。
25400μm/600dpi/25μsec=1.693μm/μsec=1693mm/sec
言い換えると、ヘッド数が2倍とされ、印刷速度が約3.2倍とされている。ここでは高速モードの印刷速度を1600mm/secとする。
ここで、高速画像記録モードの場合の、各ヘッドの吐出周期をTHとすると、各ヘッドのノズルの吐出周期THは、以下の値となる。
TH=25400μm/600dpi/1600μm/msec=約26.5μsec
このときのヘッドの駆動波形は図11のようになる。
【0067】
次に、低速画像記録モードでのドットデータの変更について説明する。低速画像記録モードでは、補正時に大滴を使用して吐出不良が補正される。大滴を使用して補正するので、高品質な画像記録が行えるが、画像記録速度は遅くなる。
【0068】
図12(A)は、ヘッドH2の上から3番目のノズル3(H2[3])が不吐出になりかつドットデータの変更が無い場合のドットの状態が示されている。図12(B)では、ヘッドH2の上から3番目の同一のノズル3(H2[3])が不吐出になりかつドットデータの変更が有る場合のドットの状態が示されている。
【0069】
ドットデータを変更するには、まず、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH1のノズル3(H1[3])からの小滴が大滴に変更されて吐出される(図12(B)の太実線参照)。
【0070】
さらに、ヘッドH1のノズル3(H1[3])の両隣である、ヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])からの小滴の一部が中滴もしくは大滴に変更されて吐出される(図12(B)の太破線参照)。
【0071】
なお、図12(B)においては、ヘッドH1のノズル3(H1[3])の両隣の、ヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])からの吐出の一部が中滴もしくは大滴に変更されているが、図13(A)に示すように、ヘッドH2のノズル3(H2[3])の両隣の、ヘッドH2のノズル2(H2[2])とノズル4(H2[4])から吐出の一部が中滴もしくは大滴に変更されてもよい。但し、図13(B)に示すように、不吐出ノズルである、ヘッドH2のノズル3(H2[3])が打滴すべき画素に対して、ノズル列方向について、両隣のヘッドH1のノズル2(H1[2])とノズル4(H1[4])およびヘッドH2のノズル2(H2[2])とノズル4(H2[4])からの吐出の一部は中滴もしくは大滴を中滴にした方が良い。
【0072】
この場合、大滴が最大のドットサイズであるので、印刷速度は大滴の必要吐出周期で決まる。ヘッドが2つなので、各ヘッドのノズルから吐出されるドットが1200/2=600dpiの間隔で並んでいることになり、印刷速度は以下の値まで上げられる。
25400μm/600dpi/40μsec=1.058μm/μsec=1058mm/sec
言い換えると、ヘッド数が2倍とされ、印刷速度が2倍とされている。ここでは低速(高画質)モードの印刷速度が1000mm/secとされている。
ここで、低速(高画質)画像記録モードの場合の、各ヘッドの吐出周期をTSとすると、各ヘッドのノズルの吐出周期TSは、以下の値になる。
TS=25400μm/600dpi/1000μm/msec=約42.3μsec
このときのヘッドの駆動波形は図14のようになる。
【0073】
次に、不良ノズルが2つ並んだ場合のドットデータの変更および液滴の吐出のタイミングの変更について説明する。なお、ドットデータの変更はドットデータ変更部185により行い、液滴の吐出のタイミングの変更は吐出タイミング制御部189(図3(B)参照)により行われる。
図15は、ヘッドH2のノズル3(H2[3])とヘッドH1のノズル2(H1[2])が不吐出になりかつドットデータの変更が無い場合のドットの状態を示している。本来、2つ分のドットが着弾すべき位置にドットの空きが生じている(一点鎖線部参照)。
【0074】
図16(A)を参照して、高速画像記録モードでのドットデータの変更および液滴の吐出のタイミングの変更について説明する。まず、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH1のノズル3(H1[3])と、不吐出ノズルであるヘッドH1のノズル2(H1[2])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH2のノズル2(H2[2])とからの小滴が中滴に変更されて吐出される。さらに、ノズル3(H1[3])からの吐出位置に対して、ノズル2(H2[2])からの中滴の吐出位置が1画素ずれている(太実線参照)。
【0075】
図17は、ヘッドH2のノズル2(H2[2])とヘッドH1のノズル3(H1[3])とが、中滴に変更されると共に、吐出位置が1画素ずらさなかった場合を示している(太実線参照)。
【0076】
図17に示すように、1画素ずらさなかった場合には、2つ分の連続したドットが着弾されていない空きが生じる。これに対して、図16(A)に示すように、1画素ずらした場合には、ドットが着弾されていない空きの領域を減少することができる。なお、ノズル3(H1[3])からの中滴の吐出位置に対して、ノズル2(H2[2])からの中滴の吐出位置を1画素ずらす代わりに、ノズル2(H2[2])からの中滴の吐出位置に対して、ノズル3(H1[3])からの中滴の吐出位置が1画素ずれてもよい。
【0077】
さらに、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])及び不吐出ノズルであるヘッドH1のノズル2(H1[2])の両隣である、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])からの小滴の一部が中滴に変更されて吐出される(図16(A)の太破線参照)。なお、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])に代えて、ヘッドH2のノズル1(H2[1])とノズル4(H2[4])からの小滴の一部が中滴に変更されてもよい。また、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])及びヘッドH2のノズル1(H2[1])とノズル4(H2[4])からの小滴の一部が中滴に変更されて吐出されてもよい。
【0078】
次に、図16(B)を参照して、低速(高画質)画像記録モードでのドットデータの変更および液滴の吐出のタイミングの変更について説明する。まず、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH1のノズル3(H1[3])と、不吐出ノズルであるヘッドH1のノズル2(H1[2])に対して、ノズル列方向に関して同一位置に打滴出来るヘッドH2のノズル2(H2[2])からの小滴が大滴に変更されて吐出される(太実線参照)。さらに、ノズル3(H1[3])からの吐出位置に対して、ノズル2(H2[2])からの大滴の吐出位置が1画素ずれている(太実線参照)。1画素ずらすことによって、ドットの空きを減少することができる。なお、ノズル2(H2[2])からの大滴の吐出位置を1画素ずらす代わりに、ノズル3(H1[3])からの大滴の吐出位置を1画素ずらしてもよい。
【0079】
さらに、不吐出ノズルであるヘッドH2のノズル3(H2[3])及び不吐出ノズルであるヘッドH1のノズル2(H1[2])の両隣である、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])からの小滴の一部が中滴もしくは大滴に変更されて吐出される(図16(B)の太破線参照)。なお、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])に代えて、ヘッドH2のノズル1(H2[1])とノズル4(H2[4])からの小滴の一部が中滴もしくは大滴に変更されて吐出されてもよい。また、ヘッドH1のノズル1(H1[1])とノズル4(H1[4])及びヘッドH2のノズル1(H2[1])とノズル4(H2[4])からの小滴の一部が中滴もしくは大滴に変更されて吐出されてもよい。
【0080】
以上は、ノズルが不吐出となった場合の補正について説明したが、図18に示すように、着弾する液滴のドットサイズがノズルが正常な場合よりも小さくなった場合(ヘッドH2のノズル3(H2[3])からの液滴のドットサイズが小さくなった場合)に、上述の補正方法を適用することができる。また、図19に示すように、液滴の着弾位置がノズルが正常な場合の着弾位置からずれた場合(ヘッドH2のノズル3(H2[3])からの液滴の着弾位置がノズル2(H2[2])方向へずれている場合)にも、上述の補正方法を適用することができる。
【0081】
また、液滴のドットサイズが小さくなった場合や、液滴の着弾位置がずれた場合には、そのような不良ノズルの吐出動作を停止して(又は不吐出ノズルとして)、上述の補正方法を適用することができる。
【0082】
以上、好ましい実施の形態について説明してきたが、上記で説明した好ましい実施の形態は一例であり、好ましい実施の形態の一般化した第1の態様の画像記録装置は、
画像記録用液滴を吐出する複数(M(≧2))の吐出ノズルを同数個それぞれ有する複数(N(≧2))組の画像記録用ヘッド(各ヘッドをH1、H2、…、HNとする)を備える画像記録部と、
入力画像を2種類以上のドットサイズのドットデータに変換する画像処理部(ドットサイズは2種類以上で、小さい順にDot−1、Dot−2、…、Dot−Dとする)と、
ドットデータを画像処理部から画像記録部に送るデータ転送部と、
画像記録部を制御して画像記録速度の異なる少なくとも2つの画像記録モードにより画像を記録する画像記録モード制御部と、
複数の吐出ノズルの吐出状態を読み取る吐出状態読み取り部と、
吐出状態読み取り部が、複数の画像記録用ヘッド(H1、H2、…、HN)のうち1つ(I番目)の画像記録用ヘッドHIの複数(M個)の吐出ノズルのうち1つ(J番目)の吐出ノズル(HI[J])の吐出不良を検知すると、画像記録速度の速い第1のモード(高速画像記録モード)により画像を記録する場合において、吐出ノズル(HI[J])を有する画像記録用ヘッドHI以外(K番目(K=1、2、…、Nであり、I以外である)の画像記録用ヘッドHKのJ番目の吐出ノズル(HK[J])から吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、吐出ノズル(HI[J])から吐出すべき画像記録用液滴のドットサイズ(Dot−d(1≦d<D))より大きいサイズ(Dot−da(d<da≦D))に変更し、画像記録速度が第1のモードより遅い第2のモード(低速画像記録モード)により画像を記録する場合において、吐出ノズル(HK[J])から吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、ドットサイズのうち一番大きいドットサイズ(Dot−D)より大きいサイズ(Dot−Da)に変更するドットデータ変更部と、
を備える。
【0083】
画像記録速度は、最大のドットサイズの画像記録用液滴の吐出周期が律速となるが、画像記録速度の速い第1のモード(高速画像記録モード)の場合は、2種類以上のドットサイズ内のサイズの画像記録用液滴により補正を行うので、画像記録速度を落とさずに画質の補正をすることができる。また、画像記録速度が第1のモードより遅い第2のモード(低速画像記録モード)の場合は、2種類以上のドットサイズのうち一番大きいドットサイズ(Dot−D)より大きいドットサイズ(Dot−Da)で補正を行うので、画像記録速度は第1のモードより遅くなるが、高品質な画質が得られる(補正によりスジムラの視認性を低下させることができる)。このように、好ましい実施の形態の一般化した第1の態様の画像記録装置では、印刷速度と画質(補正によるスジムラの視認性低下)を選択可能となる。
【0084】
好ましい実施の形態の一般化した第2の態様の画像記録装置では、第1の態様の画像記録装置において、2種類以上のドットサイズのうち一番大きいドットサイズより大きいドットサイズ(Dot−Da)の画像記録用液滴を作成する波形の必要吐出周期をλDa、一番大きいドットサイズ(Dot−D)の画像記録用液滴を作成する波形の必要吐出周期をλD、画像記録速度の速い第1のモード(高速画像記録モード)の場合の各吐出ノズルの吐出時間間隔をTH、画像記録速度が第2のモード(低速画像記録モード)の場合の各吐出ノズルの吐出時間間隔をTSとしたとき、必要吐出周期λDa、 必要吐出周期λD、吐出時間間隔TH及び吐出時間間隔TSが、下記不等式の関係である。
TS>λDa>TH>λD
このようにすれば、画像記録速度の速い第1のモード(高速画像記録モード)場合の画像記録速度が適切に設定される。
【0085】
好ましい実施の形態の一般化した第3の態様の画像記録装置は、第1または第2の態様の画像記録装置において、ドットデータ変更部は、画像記録速度の速い第1のモード(高速画像記録モード)により画像を記録する場合において、吐出ノズル(HI[J])を有する画像記録用ヘッドHIのJ−1番目の吐出ノズル(HI[J−1])およびJ+1番目の吐出ノズル(HI[J+1])の少なくとも一方の吐出ノズルから吐出される画像記録用液滴のドットサイズを、大きいサイズ(Dot−D)に変更する。
このようにすれば、吐出不良の補正をしっかりと行うことができる。
【0086】
好ましい実施の形態の一般化した第4の態様の画像記録装置は、第1または第2の態様の画像記録装置において、ドットデータ変更部は、画像記録速度が第2のモード(低速画像記録モード)により画像を記録する場合において、吐出ノズル(HI[J])を有する画像記録用ヘッドHIのJ−1番目の吐出ノズル(HI[J−1])およびJ+1番目の吐出ノズル(HI[J+1])から吐出される画像記録用液滴のドットサイズの少なくとも一方を、一番大きいドットサイズ(Dot−D)より大きいドットサイズ(Dot−Da)以下のサイズに変更する。
このようにすれば、吐出不良の補正をしっかりと行うことができる。
【0087】
好ましい実施の形態の一般化した第5の態様の画像記録装置は、第1〜第4の態様のいずれか1つの画像記録装置において、複数の画像記録用ヘッドの複数の吐出ノズルから画像記録用液滴がそれぞれ吐出されるタイミングを制御する吐出タイミング制御部を更に備え、
吐出タイミング制御部は、複数の画像記録用ヘッド(H1、H2、…、HN)のうち1つ(I番目)の画像記録用ヘッドHIの複数(M個)の吐出ノズルのうち1つ(J番目)の吐出ノズル(HI[J])と、吐出ノズル(HI[J])が吐出すべき画像記録用液滴が着弾すべき位置と連続する位置に着弾すべき画像記録用液滴を吐出する複数の画像記録用ヘッド(H1、H2、…、HN)のうちの1つの画像記録用ヘッドHi(iは1、2、…、Nのうちの1つであり、Iも含む)の複数(M個)の吐出ノズルのうち1つ(J−1番目またはJ+1番目)の吐出ノズル((Hi[J−1])または(Hi[J+1]))とが吐出不良である場合に、吐出ノズル(HI[J])が吐出すべき画像記録用液滴が着弾すべき位置および吐出ノズル((Hi[J−1])または(Hi[J+1])のいずれか一方)が吐出すべき画像記録用液滴が着弾すべき位置に画像記録用液滴を着弾可能な正常な吐出ノズルの吐出のタイミングを、本来の吐出のタイミングから、吐出ノズル(HI[J])および吐出ノズル((Hi[J−1])または(Hi[J+1]))が吐出不良でない場合の吐出のタイミングにずらす制御を行う。
【0088】
このようにすれば、ノズル列方向について、連続する位置に着弾すべきドットが吐出不良になった場合、吐出不良の吐出ノズルとノズル列方向について同一位置に着弾すべきドットを吐出可能な正常な吐出ノズルの吐出のタイミングを変更することで、吐出不良の補正をしっかりと行うことができる。
【0089】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0090】
H1,H2 画像記録用ヘッド
H1(1)〜H1(5)、H2(1)〜H2(5) 吐出ノズル
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図3