(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサにより予め設定された周期で連続的に計測された波形データを単位期間ごとにネットワークを介して波形データ管理装置に伝送し、当該波形データ管理装置から前記波形データを表示装置へ伝送して表示させるシステムで使用される前記波形データ管理装置であって、
前記波形データを前記単位期間ごとに受信してメモリに保存する受信手段と、
前記表示装置から検索要求が送られるごとに、前記メモリから前記波形データを前記単位期間分ずつ読み出して要求元の表示装置へ送信し表示させる送信手段と、
前記センサにより計測された波形データを前記表示装置にリアルタイム表示する際に許容される遅延時間kと、前記表示装置が検索要求を送信してから当該検索要求に応じて第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わるまでの時間Trとを合計した時間k+Trと、前記センサにおいて前記第1の単位期間の波形データの計測開始時刻から当該第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わり当該表示装置から次の第2の単位期間の波形データに対する検索要求が送信されるまでの時間Tdとを比較し、その比較結果に基づいて前記時間Tdと前記時間k+Trとの差を減少させるべく、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の期間における、前記波形データを構成する各サンプリングデータの読み出し間隔を可変する読み出し制御手段と
を具備することを特徴とする波形データ管理装置。
センサにより予め設定された周期で連続的に計測された波形データを単位期間ごとにネットワークを介して波形データ管理装置に伝送し、当該波形データ管理装置から前記波形データを表示装置へ伝送して表示させるシステムにおいて、前記波形データ管理装置が実行する波形データ表示制御方法であって、
前記波形データを前記単位期間ごとに受信してメモリに保存する過程と、
前記表示装置から検索要求が送られるごとに、前記メモリから前記波形データを前記単位期間分ずつ読み出して要求元の表示装置へ送信し表示させる過程と、
前記波形データを表示装置へ送信する際に、前記センサにより計測された波形データを前記表示装置にリアルタイム表示する際に許容される遅延時間kと、前記表示装置が検索要求を送信してから当該検索要求に応じて第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わるまでの時間Trとを合計した時間k+Trと、前記センサにおいて前記第1の単位期間の波形データの計測開始時刻から当該第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わり当該表示装置から次の第2の単位期間の波形データに対する検索要求が送信されるまでの時間Tdとを比較し、その比較結果に基づいて前記時間Tdと前記時間k+Trとの差を減少させるべく、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の期間における、前記波形データを構成する各サンプリングデータの読み出し間隔を可変する過程と
を具備することを特徴とする波形データ表示制御方法。
【背景技術】
【0002】
健康診断などにおいて被検者の心機能の状態を把握する場合、病院などの検診施設において被検者の心電図を計測し、この心電図を医療従事者がモニタリングするようにしている。また、心疾患や呼吸器疾患の持病を持ち容体が急変する可能性がある患者に対しては、心電計を装着してその計測データを医師がモニタリングして患者の容体を見守るようにしている。すなわち、一般的な心臓モニタリング方法は、計測した心電図をその場でリアルタイムに見るものとなっている。
【0003】
一方、近年医療従事者ではない一般の人々が簡単に使うことのできる携帯型心電計が販売され、この携帯型心電計を使用してユーザ自身が普段の生活をしながら健康管理を行うことが提案されている。また、できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした医療や介護を目指す地域包括ケアシステムへの取り組みも提案されている。しかし、患者が在宅医療や介護に移行することになると、それまで病院内だけで見られればよかった様々な患者の様子が把握できなくなる。
【0004】
そこで、患者の生体情報をネットワーク経由でサーバに伝送して蓄積し、当該生体情報を遠隔地にいる医療従事者が閲覧することで、患者の日常生活における容体を把握して治療方針を変更する、或いは急変したときに駆けつけて対応する、といったことができるようにするシステムが提案されている。この種のシステムが実用化されれば、携帯型心電計を使うことで経過観察の患者も在宅医療に移行できるため、より多くの人が住み慣れた地域で治療を受けながら暮らすことが可能となる。なお、心電図以外に、血圧や血中酸素飽和度、血糖値等などのその他の生体情報についても、遠隔監視の対象とすることが考えられている。
【0005】
しかし、心拍や血中酸素飽和度は計測データを連続的に取得する必要があり、医療従事者が遠隔地から患者の状態を把握するには、計測データを途切れることなく閲覧できるようにすることが求められる。このため、無線を使って実現する方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載された方法では、読み取り装置に生体情報を格納するバッファメモリを複数用意し、生体情報をバッファメモリに書き込む速度よりも高速に読み出すことによって、途切れることなく生体情報を外部機器へ無線送信するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、地域によってはネットワーク環境が充実しているとは限らない。また、ネットワーク環境が充実している地域でも、使用する人数が増えたり他の要因などでネットワークが不調になると、遅延時間が許容値を超えてしまう場合がある。回線の状態によりデータ送信が途切れることがあっては、心電図が途切れてしまって見づらくなるため、ネットワークが原因で心電図が途切れているのか、或いは患者の容体が悪化しているのかを判別することが困難になる。
【0008】
特許文献1に記載されたシステムでは、保存するデータ領域を時間ごとに交互に使うことによって遅延をなくすようにしているが、通信環境によって途切れることなく生体情報を送ることができなくなることに対しては、いまだ対策が確立されていない。
【0009】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、伝送遅延や処理遅延等による遅延量が時系列的に変化する場合でも、連続する波形データを途切れることなく安定に表示できるようにした波形データ管理装置とその波形データ表示制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の態様は、センサにより予め設定された周期で連続的に計測された波形データを単位期間ごとにネットワークを介して波形データ管理装置に伝送し、当該波形データ管理装置から前記波形データを表示装置へ伝送して表示させるシステムで使用される前記波形データ管理装置にあって、前記波形データを前記単位期間ごとに受信してメモリに保存し、当該波形データを前記表示装置からの検索要求に応じて前記単位期間分ずつ読み出して要求元の表示装置へ送信し表示させる際に、前記センサにより計測された波形データを前記表示装置にリアルタイム表示する際の許容遅延時間kと、前記表示装置が検索要求を送信してから当該検索要求に応じて第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わるまでの時間Trとを合計した時間k+Trを求める。そして、この合計時間k+Trを、前記センサにおいて前記第1の単位期間の波形データの計測開始時刻から当該第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わり当該表示装置から次の第2の単位期間の波形データに対する検索要求が送信されるまでの時間Tdとを比較し、その比較結果に基づいて前記時間Tdと前記時間k+Trとの差を減少させるべく、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の期間における
、前記波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を可変するようにしたものである。
【0011】
この発明の第2の態様は、上記波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を可変する際に、前記比較結果に基づいて、前記時間Tdより前記時間k+Trが短い場合に、その差を減少させるべく、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の期間における
、前記波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を
、先行する単位期間における
各サンプリングデータの読み出し
間隔より長くするものである。
【0012】
この発明の第3の態様は、上記波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を可変する際に、前記比較結果に基づいて、前記時間Tdより前記時間k+Trが長い場合に、その差を減少させるべく、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の後続期間における
、前記波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を
、先行する単位期間における
各サンプリングデータの読み出し
間隔より短くするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の第1の態様によれば、センサにより計測された波形データを表示装置にリアルタイム表示する際に許容される遅延時間kと、表示装置が検索要求を送信してから当該検索要求に応じて第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わるまでの時間Trとを合計した時間k+Trが、センサにおいて前記第1の単位期間の開時刻から当該第1の単位期間の波形データが表示装置で表示し終わり当該表示装置から次の第2の単位期間の波形データに対する検索要求が送信されるまでの時間Tdとを比較され、前記時間Tdと前記時間k+Trとの差が減少するように、前記メモリからの前記第2の単位期間以降の期間における波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔が可変制御される。このため、伝送路環境の変化や管理装置等による処理負荷の変化の影響により波形データが計測されてから表示されるまでの遅延時間が変化しても、波形データ管理装置による波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔が可変制御されるので、上記遅延時間が常に適切な範囲内に収まるように維持することが可能となる。
【0014】
この発明の第2の態様によれば、波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を可変する際に、時間Tdより時間k+Trが短い場合に、その差を減少させるべく、メモリからの後続の単位期間における波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔が
、先行する単位期間における
各サンプリングデータの読み出し
間隔より長い周期に変更される。このため、後続の単位期間においてその波形データが表示し終わるまでの時間Trが延長され、これによりある単位期間の波形データの表示が終了してから次の単位期間の波形データの表示が開始されるまでの間の境界で波形データの途切れが発生しないようにすることが可能となる。
【0015】
一般に、心電計などのセンサの仕様において、固有のサンプリング周波数(sHz)と計測データ出力間隔(tms)との関係が、床関数を用いた逆数(t=[1000/s]ms、床関数:[x]は、実数xに対してxを超えない最大の整数)で表されるため、1単位期間あたりの読み出し時間(Trm)が、1単位期間あたりの測定時間(Tf)よりも短くなってしまい、その結果表示時に単位期間の境界において波形データの表示の不連続が発生してしまう場合がある。
【0016】
しかしながら、この発明の第2の態様によれば、上記のように時間Tdより時間k+Trが短い場合には波形データが表示し終わるまでの時間Trが延長されるので、単位期間の境界における波形データの表示の不連続を防止することが可能となる。また伝送遅延量が予想される時間より短くなって時間k+Trが時間Tdより短い場合にも、同様の効果が奏せられる。
【0017】
この発明の第3の態様によれば、波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔を可変する際に、時間Tdより時間k+Trが長い場合に、その差を減少させるべく、メモリからの後続の単位期間における波形データ
を構成する各サンプリングデータの読み出し
間隔が
、先行する単位期間における
各サンプリングデータの読み出し
間隔より短い周期に変更される。このため、後続の単位期間において波形データが表示し終わるまでの時間Trが短縮され、これにより遅延時間の累積を減らして波形データを表示する際のリアルタイム性を維持することが可能となる。すなわち、許容量を超える伝送遅延が生じる度にその遅延量が累積され、この累積遅延量に依存して後続の単位期間における波形データの表示タイミングが際限なく遅延してしまうといった事態に陥ることを防ぐことができる。
【0018】
すなわちこの発明によれば、伝送遅延や処理遅延等による遅延量が時系列的に変化する場合でも、連続する波形データを途切れることなく安定に表示できるようにした波形データ管理装置とその波形データ表示制御方法およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成)
図1はこの発明の一実施形態に係る波形データモニタリングシステムの全体構成を示す図である。
このシステムは、患者宅/介護施設CSと病院/データセンタHCとの間でネットワークNWを介して通信可能とすると共に、病院/データセンタHCと病院/診療所HSとの間で上記ネットワークNWを介して通信を可能にしたものである。なお、同図では図示の簡単のため、患者宅/介護施設CSおよび病院/診療所HSをそれぞれ1つだけ図示したが、実際には多数存在する。
【0021】
患者宅/介護施設CSは、図示しない患者に装着される簡易心電計SSと、波形データ送信クライアントTCを備える。
簡易心電計SSは、ユーザの心拍情報を計測してその計測データを送信する。心拍情報は、例えば圧力センサまたは繊維センサを用いることで検出される。繊維センサは、ナノファイバ繊維の間隙に導電性高分子をコーティングして樹脂の連続層を形成することにより生体信号を検出可能としたものである(例えば、http://www.ntt.co.jp/news2014/1401/140130a.html参照)。
【0022】
波形データ送信クライアントTCは例えばウエアラブル端末からなり、以下のように構成される。
図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、波形データ送信クライアントTCは、処理受付部11と、認証処理部12と、波形データ処理部13と、波形データ送信処理部14と、波形データ処理設定ファイル15と、波形データ送信処理設定ファイル16と、情報格納部17を備えている。このうち、処理受付部11、認証処理部12、波形データ処理部13および波形データ送信処理部14は、図示しないプログラムメモリに格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)に実行させることにより実現される。
【0023】
情報格納部17は、ユーザ情報格納部171と、波形データ格納部172と、ログ情報格納部173を備える。ユーザ情報格納部171には、患者ごとにその識別情報に関連付けて氏名や年齢等の属性情報と認証用パスワードが予め記憶されている。波形データ格納部172は、簡易心電計SSから送信された波形データを記憶するためのバッファメモリとして用いられる。ログ情報格納部173は、波形データ処理部13による処理履歴を表す情報を記憶するために使用される。
【0024】
処理受付部11は入出力インタフェースからなり、図示しないキーボードまたはタブレットの操作により入力された操作データを受信する。認証処理部12は、処理受付部11により患者の識別情報または氏名とパスワードが受信された場合に、情報格納部17のユーザ情報格納部171に格納されたユーザ情報をもとに認証を行う。
【0025】
波形データ処理部13は、波形データ受信部131と、フォーマット変換部132と、ログ出力部133を備える。波形データ受信部131は、簡易心電計SSから送信される波形データを受信し、情報格納部17内の波形データ格納部172に一時格納する。フォーマット変換部132は、波形データ処理設定ファイル15に設定された変換パラメータに従い、上記受信された波形データを波形データ格納部172から単位期間長(Tf秒)分ずつ読み出して標準フォーマットのファイルデータに変換する。ログ出力部133は、上記波形データ受信部131およびフォーマット変換部132による処理履歴を表す情報を生成し、当該生成された処理履歴情報をログ情報格納部173に格納する。
【0026】
波形データ送信処理部14は、変換済み波形データ送信部141と、ログ出力部142を備える。変換済み波形データ送信部141は、波形データ送信処理設定ファイル16に事前に設定された送信処理パラメータに従い、上記波形データ格納部172に単位期間(Tf)分の変換済み波形データ(ファイルデータ)が格納されるごとに、このファイルデータを読み出し、当該ファイルデータを対応する患者の属性情報と共に、病院/データセンタHCに設けられた波形データ管理サーバSVへ送信する。ログ出力部142は、上記変換済み波形データ送信部141による処理履歴を表すログ情報を生成してログ情報格納部173に格納する。
【0027】
病院/データセンタHCに設けられた波形データ管理サーバSVは、波形データ管理装置として動作するもので、例えば以下のように構成される。
図3はその構成を示すブロック図である。
すなわち、波形データ管理サーバSVは、処理受付部21と、認証処理部22と、変換済み波形データ処理部23と、変換済み波形データモニタリング処理部24と、情報格納部25を備えている。このうち、処理受付部21、認証処理部22、変換済み波形データ処理部23および変換済み波形データモニタリング処理部24は、図示しないプログラムメモリに格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)に実行させることにより実現される。
【0028】
情報格納部25は、ユーザ情報格納部251と、変換済み波形データ格納部252と、ログ情報格納部253を備えている。ユーザ情報格納部251には、医師等の医療従事者ごとにその識別情報に関連付けて氏名や年齢等の属性情報と認証用パスワードが予め記憶されている。変換済み波形データ格納部252は、上記波形データ送信クライアントTCから受信したファイルデータおよび属性情報を、ファイルデータの識別情報と関連付けて記憶する。ログ情報格納部253は、変換済み波形データ処理部23による動作履歴を表す情報を記憶するために使用される。
【0029】
変換済み波形データ処理部23は、変換済み波形データ受信部231と、ログ出力部232を備えている。変換済み波形データ受信部231は、波形データ送信クライアントTCから、患者の心電図データをフォーマット変換したファイルデータと当該患者の属性情報を受信し、この受信されたファイルデータおよび属性情報を、ファイルデータの識別情報と関連付けて変換済み波形データ格納部252に格納する。ログ出力部232は、変換済み波形データ受信部231による処理履歴を表す情報を生成し、生成された情報をログ情報格納部253に格納する。
【0030】
変換済み波形データモニタリング処理部24は、変換済み波形データ表示制御部241と、ログ出力部242を備えている。変換済み波形データ表示制御部241は、病院/診療所において医療従事者が使用するユーザ端末UTから特定の患者の波形データに対するアクセス要求を受信した場合に、当該アクセス要求元に対する認証処理を行った後、変換済み波形データ格納部252から該当する患者のファイルデータを読み出し、この読み出したファイルデータを要求元のユーザ端末UTへ送信する処理を行う。ログ出力部242は、変換済み波形データ表示制御部241による処理履歴を表すログ情報を生成し、この生成されたログ情報をログ情報格納部253に格納する。
【0031】
病院/診療所に設置されたユーザ端末UTは、パーソナルコンピュータやタブレット型端末からなり、上記波形管理サーバSVから波形データをダウンロードするために必要なブラウザを備えている。
【0032】
(動作)
先ず簡易心電計SSにより心電図の波形データの計測が行われてから当該波形データがユーザ端末UTに表示されるまでの動作の概要を説明する。
図4は当該動作の概要を示すタイミング図、
図5は当該動作の詳細を示すタイミング図である。
【0033】
患者の心電図は、簡易心電計SSにより予め設定されたサンプリング周波数sHzで計測され、当該計測された波形データは波形データ送信クライアントTCに送信されて波形データ受信部131により受信される。例えば、いまサンプリング周波数sHzをs=1000とすると、波形データは1000/s msec間隔で波形データ送信クライアントTCにより受信される。ここで、サンプリング周波数とは、アナログ波形をデジタルデータにするために必要な処理である標本化(サンプリング)に使用するもので、単位期間あたりに標本をとる頻度のことである。また、[x]は床関数で書かれた値であり、実数xに対してx以下の最大の整数と定義される。
【0034】
上記受信された波形データは、フォーマット変換部132により予め設定された単位期間(Tf秒)ごとにフォーマット変換されてファイルデータに変換され、波形データ格納部172に一旦格納された後、変換済み波形データ送信部141により読み出され、当該患者の属性情報と共に波形データ管理サーバSVへ送信される。
【0035】
波形データ管理サーバSVでは、上記波形データクライアントTCから送信された単位期間(Tf)分のファイルデータおよび属性情報が変換済み波形データ処理部23により受信され、変換済み波形データ格納部252に一旦格納される。そして、この状態でユーザ端末UTからファイルの検索要求が送信されると、当該検索要求に応じて変換済み波形データモニタリング処理部24により、上記変換済み波形データ格納部252から上記ファイルデータを構成する波形データが読み出され、検索要求元のユーザ端末UTへ送信される。
【0036】
ユーザ端末UTでは、上記検索要求に対し波形データ管理サーバSVから該当する患者の波形データが送信されると、当該波形データが患者の属性情報と共に表示部に表示される。
【0037】
ところで、上記波形データ管理サーバSVの変換済み波形データモニタリング処理部24は、ユーザ端末UTからの検索要求に応じてファイルデータを構成する波形データを変換済み波形データ格納部252から読み出す際に、その読み出し周期を次のように可変制御する。
【0038】
すなわち、いま簡易心電計SSにより計測された波形データをユーザ端末UTにリアルタイムに表示する際に許容される遅延時間をk、ユーザ端末UTが検索要求を送信してから波形データ管理サーバSVから1つのファイルの波形データが受信されて表示し終わるまでの時間をTr、上記簡易心電計SSにおいてm番目の単位期間の計測開始時刻から当該単位期間の波形データがユーザ端末UTにおいて表示し終わりそれと同時に当該ユーザ端末UTから次の単位期間の波形データの検索要求が送信されるまでの時間をTdとする。このうち、許容遅延時間kはリアルタイムな観測が可能な時間範囲であり、多少の幅±αを持たせて設定される。m番目の単位期間の波形データを表示するに必要な時間Trmと、当該m番目の単位期間における波形データの計測開始時点から当該波形データの表示が終了するまでに要する時間Tdは、何れも波形データ管理サーバSVにおいて、例えばファイルデータに含まれるタイムスタンプや検索要求の受信タイミングをもとに計時される。
【0039】
そして、変換済み波形データモニタリング処理部24は、m番目の単位期間のファイルデータを波形データ送信クライアントTCから受信してその波形データをユーザ端末UTへ送信し表示させるごとに、上記時間TrmおよびTdをそれぞれ計時する。そして、この計時された時間Trmと上記許容遅延時間k±αとの和(Trm+(k±α))を求め、この時間和(Trm+(k±α))を上記掲示された時間Tdと比較する。
【0040】
そして、その比較の結果(Trm+(k−α))>Tdの場合には、次のm+1番目の単位期間における波形データの読み出し周期を、m番目の単位期間における波形データの読み出し周期より長く設定する。これに対し、上記比較の結果(Trm+(k+α))<Tdの場合には、次のm+1番目の単位期間における波形データの読み出し周期を、m番目の単位期間における波形データの読み出し周期より短く設定する。
【0041】
以上の読み出し周期可変制御動作の具体例を以下に説明する。
(1)(Trm+(k−α))>Tdの場合
簡易心電計SSの仕様では、固有のサンプリング周波数(sHz)と計測データ出力間隔(tms)との関係が、床関数を用いた逆数(t=[1000/s]ms)で表されるため、1単位期間Tfあたりのデータ読み出し時間(Trm)が、1単位期間あたりの計測時間(Tf)よりも短くなる場合がある。また、伝送遅延が予想値より短くなった場合や、(2)で後述するデータ読み出し周期の短縮化処理により、データ読み出し時間(Trm)が1単位期間あたりの測定時間(Tf)よりも短くなる場合もある。この場合には(Trm+(k−α))>Tdとなり、後続の単位期間における波形データのデータ読み出し周期を長くする処理が行われる。
【0042】
図6はその動作タイミングの一例を示す図である。なお、同図において、
図5に示した処理のうち、簡易心電計SSから送信された波形データが変換済み波形データモニタリング処理部24に受信されるまでの処理を省略している。また、便宜上kの値をTfと同一値に設定しているが、波形観測のリアルタイム性を維持できる値であればこれに限るものではない。
【0043】
変換済み波形データモニタリング処理部24では、波形データのサンプリング周期[1000/s]msecと、([1000/s]+1)msecとの割合を
[1000/s]:([1000/s]+1)=1:n
のように設定する。但しnは3以上の自然数とする。
【0044】
m−1番目の単位期間における表示処理の結果、(Trm+(k−α))>Tdでない場合には、n=3に設定される。この状態で、m番目の単位期間における波形データの表示処理の結果、(Trm+(k−α))>Tdとなったことが検出されると、n=n+1に設定される。この結果、次のm+1番目の単位期間における波形データの平均読み出し間隔は、([1000/s]+n/(n+1))msecとなり、m番目の単位期間における波形データの読み出し間隔よりn/(n+1)msec分長くなる。したがって、m+1番目の単位期間における波形データの読み出し時間は、
Trm+1=([1000/s]+n/(n+1))×s×Tf×1/1000
となる。この結果、m+1番目の単位期間における波形データの読み出し時間Trm+1は、m番目の単位期間における波形データの読み出し時間TrmよりTf×n/(n+1)×s/1000秒分長くなる。
【0045】
したがって、1単位期間Tfあたりのデータ読み出し時間(Trm)が、1単位期間あたりの測定時間(Tf)よりも短くなった場合や、伝送遅延が予想値より短くなった場合でも、m+1番目の単位期間の波形データの表示期間が延長され、これによりm+1番目の単位期間における波形データの表示期間とm+2番目の単位期間における波形データの表示期間との間で、波形データの表示の不連続が発生しないようにすることが可能となる。
【0046】
(2)(Trm+(k+α))<Tdの場合
ネットワークNWにおけるファイルデータの伝送遅延または処理遅延が想定範囲より大きくなると、その遅延量が累積されてユーザ端末UTにおける波形データの表示タイミングのリアルタイム性を維持できなくなる。この場合には(Trm+(k+α))<Tdとなり、後続の単位期間における波形データのデータ読み出し周期を短くする処理が行われる。
【0047】
図7はその動作タイミングの一例を示す図である。なお、同図においても、
図5に示した処理のうち、簡易心電計SSから送信された波形データが変換済み波形データモニタリング処理部24に受信されるまでの処理を省略している。また、ここでも便宜上kの値をTfと同一値に設定しているが、波形観測のリアルタイム性を維持できる値であればこれに限るものではない。
【0048】
変換済み波形データモニタリング処理部24では、これ以上遅延量を増加させないようにするために、後続の単位期間における波形データの表示期間において当該データの読み出し間隔を、格納するときの間隔よりも短くする。
【0049】
いま1つの単位期間における波形データの読み出し間隔を[1000/s]msecとすると、m+1番目の単位期間における波形データの読み出し時間Trmは、
Trm=[1000/s]×s×Tf×1/1000
となる。この結果、[1000/s]×sは1よりも小さな値になるため、Trm≦Tfとなり、m+1番目の単位期間における波形データの読み出し時間は、
図7に例示したようにm番目の単位期間における波形データの読み出し時間よりも短くなる。
したがって、伝送遅延または処理遅延による遅延量が累積された場合でも、後続のm+1番目の単位期間における波形データの表示時間が短縮されることで上記累積遅延量が短縮され、これにより波形データの表示のリアルタイム性を維持することが可能となる。
【0050】
(3)Trm+(k+α)≧Td>Trm+(k−α)の場合
上記(2)による波形データの読み出し時間の短縮化処理を実施した場合、1つの波形データにつきその読み出しタイミングが{(1000/s)−[1000/s]}msecずつ早くなるため、この短縮化された周期で読み出し処理を続けると、[(k+α)/{(1000/s)−[1000/s]}]経過後には、波形データの登録よりも前に表示動作が終了してしまう。このため、ユーザ端末UTでは波形データの表示が途切れてしまい、医師は波形データの表示上の不具合なのか、或いは患者の波形データが本当に途切れたのかが判断できなくなってしまう。
【0051】
そこで、以下のような処理を実行する。
図8はその動作タイミングを示す図である。なお、同図においても、
図5に示した処理のうち、簡易心電計SSから送信された波形データが変換済み波形データモニタリング処理部24に受信されるまでの処理を省略している。
【0052】
すなわち、上記波形データの読み出し時間の短縮化処理を実施している期間中に、Trm+(k+α)≧Td>Trm+(k−α)となると、遅延状態が改善されたと判断し、読み出し時間の短縮化処理を緩和する。例えば、1つの波形データの読み出し間隔として、[1000/s]msecと([1000/s]+1)msecとを交互に選択する。このようにすると、波形データの平均読み出し間隔は、([1000/s]+1/2)msecとなり、(2)の場合に比べて1/2msec分遅くなる。このときの波形データの読み出し時間Trm+1は、
Trm+1=([1000/s]+1/2)×s×Tf×1/1000
となり、(2)の場合に比べると波形データの読み出し時間はTf×s/2000秒分遅くなる。
【0053】
(効果)
以上詳述したようにこの実施形態では、波形データ管理サーバSVの変換済み波形データモニタリング処理部24において、波形データ送信クライアントTCから送られた波形データを変換済み波形データ格納部252に一旦保存した後読み出す際に、その読み出し周期を可変制御している。具体的には、簡易心電計SSにより計測された波形データをユーザ端末UTにリアルタイムに表示する際に許容される遅延時間kと、ユーザ端末UTが検索要求を送信してから波形データ管理サーバSVから1つのファイルの波形データが受信されて表示し終わるまでの時間Trとの和を求め、この和(Tr+k)を上記簡易心電計SSにおける計測開始時刻からその波形データをユーザ端末UTにおいて表示し終わるまでの時間Tdと比較する。そして、その比較の結果(Tr+k)>Tdの場合には、後続の単位期間における波形データの読み出し周期を長く設定し、一方(Tr+k)<Tdの場合には後続の単位期間における波形データの読み出し周期を短く設定するようにしている。
【0054】
したがって、1単位期間Tfあたりのデータ読み出し時間(Trm)が、1単位期間あたりの測定時間(Tf)よりも短くなった場合や、伝送遅延が予想値より短くなった場合でも、m+1番目の単位期間の波形データの表示期間が延長され、これによりm+1番目の単位期間における波形データの表示期間とm+2番目の単位期間における波形データの表示期間との間で、波形データの表示の不連続が発生しないようにすることが可能となる。
【0055】
また、伝送遅延または処理遅延による遅延量が累積された場合でも、後続のm+1番目の単位期間における波形データの表示時間が短縮されることで上記累積遅延量が短縮され、これにより波形データの表示のリアルタイム性を維持することが可能となる。
【0056】
[他の実施形態]
前記実施形態では、m番目の単位期間における波形データの表示期間に得られたTrm+kとTdとの比較結果をもとに、次のm+1番目の単位期間における波形データの読み出し周期を制御するようにした。しかし、それに限らず過去の複数の単位期間にわたりTrm+kとTdとの比較結果の傾向性を判定し、その判定結果に基づいて後続の単位期間における波形データの読み出し周期を制御するようにしてもよい。
【0057】
その他、波形管理サーバの構成とその動作手順と動作内容、波形データの種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0058】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。