(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサ(220,250)は、該センサ(220,250)の前記検出方向が、前記センサレセプタクル(210)の温度の変化時の該センサ(220,250)の前記検出領域(225,255)での該センサレセプタクル(210)の熱膨張方向に対して実質的に直交するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
第1の検出方向の物理量を検出するための第1の検出領域(225a)を有する第1のセンサ(220a)と、第2の検出方向の物理量を検出するための第2の検出領域(225b)を有する第2のセンサ(220b)とを含み、
前記第1のセンサ(220a)は、前記センサレセプタクル(210)の所定の温度変化値による温度の変化時に、前記第1の検出領域(225a)が前記構造要素(140)に対して前記第1の検出方向に実質的に変位しないように配置され、
前記第2のセンサ(220b)は、前記センサレセプタクル(210)の所定の温度変化値による温度の変化時に、前記第2の検出領域(225b)が前記構造要素(140)に対して前記第2の検出方向に実質的に変位しないように配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記第1及び/又は前記第2のセンサ(220a,220b)は、所定の温度変化値による温度の変化時に、前記構造要素(140)に対していかなる方向にも所定の絶対膨張値を超えて変位しない前記センサレセプタクル(210)の領域に配置されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記センサ(220,250)は、前記センサレセプタクル(210)の10mK、好ましくは100mK、特に好ましくは1Kの温度の変化時に、前記検出領域(225,255)が、前記構造要素(140)に対して前記検出方向に100nm、好ましくは10nm、特に好ましくは1nmを超えずに変位するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記センサレセプタクル(210)は、前記構造要素(140)よりも大きい熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記センサレセプタクル(210)は、バネ要素を用いて前記構造要素(140)に固定されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記センサレセプタクル(210)は、前記構造要素(140)から熱的に分離されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
前記センサ(220,250)は、リソグラフィ装置(100)の光学要素(130)の位置を検出するようになっていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置(100)。
【背景技術】
【0003】
そのようなリソグラフィ装置は、例えば、集積回路すなわちICの製造中にマスク上のマスクパターンを例えばシリコンウェーハのような基板上に結像するのに使用される。この場合、一例として、照明装置によって生成された光ビームが、マスクを通過して基板上に向けられる。光ビームを基板上にフォーカスさせるために、例えばミラー及び/又はレンズ要素のような複数の光学要素で構成することができる露光レンズが設けられる。光学要素の僅かな位置ずれであっても、製造される集積回路内の欠陥をもたらす場合がある結像パターンの劣化をもたらす場合があるので、個々の光学要素は、その向きに関して可能な限り正確に位置決めされることになる。この理由から、多くの場合に、リソグラフィ装置は、光学要素の位置を検出するためのセンサを含み、更に、光学要素の位置を再調節することを可能にするアクチュエータを含む。
【0004】
公開特許出願DE 101 34 387 A1は、この文脈において、荷重支持構造上に配置された複数の光学要素と、光学要素の位置を検出する位置センサが配置された測定構造とを含む半導体リソグラフィのための露光レンズを開示している。測定構造は、荷重除去構造とは独立に具現化され、その結果、高い測定精度を可能にすることが意図されている。
【0005】
公開特許出願DE 102 59 186A1は、測定計器、特に干渉計を支持するための装置であって、非常に低い熱膨張係数を有する複数の相互接続した構造要素から形成された装置を開示している。
【0006】
更に、WO 2005/081060 A2は、少なくとも2つの自由度で移動可能な少なくとも1つの光学要素と、光学要素を調節するための少なくとも1つのアクチュエータとを含み、かつ光学要素に関してアクチュエータの斜向かい側に配置されたセンサも含む光学装置を開示している。
【0007】
リソグラフィ装置において生じる1つの問題は、温度によって決定される(temperature-dictated)構造要素及び光学要素の膨張(すなわち、温度変化によってもたらされる膨張)である。露光装置の作動中に生じる熱に起因して、リソグラフィ装置において構造要素及び光学要素の熱膨張をもたらす温度変化が発生する可能性がある。この温度変化は、例えば、リソグラフィ装置内の温度を可能な限り一定に保つ冷却器を用いた温度調整によってある程度まで相殺することができる。更に、既に上記に挙げたDE 101 34 387 A1は、基準フレームとして機能する測定構造を例えばインバー(Invar)(登録商標)又はゼロデュア(Zerodur)(登録商標)のような可能な限り低い熱膨張係数を有する材料から製造することを提案している。
【0008】
しかし、結像される構造の益々進む小型化により、センサ精度の要求基準もまた高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、センサの測定結果がリソグラフィ装置内の温度変化によって影響を受ける又は損なわれることが可能な限りほとんどないセンサを含むリソグラフィ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様により、この目的は、構造要素と、構造要素に対する少なくとも1つの検出方向の物理量を検出するための検出領域を有するセンサと、センサを構造要素に装着するためのセンサレセプタクルとを含み、センサレセプタクルの温度の変化時に、構造要素に対する検出領域の検出方向の最大変位が、そ
れに対して直交してセンサが配置された場合、言い換えれば、センサが90°だけ回転した配置の場合の検出領域の検出方向の最大変位よりも大きくないようにセンサが配置されるリソグラフィ装置によって達成される。本発明の一態様により、この目的は、構造要素と、構造要素に対する少なくとも1つの検出方向の物理量を検出するための検出領域を有するセンサと、センサを構造要素に装着するためのセンサレセプタクルとを含み、センサレセプタクルの温度の変化時に、構造要素に対する検出領域の検出方向の変位が、その検出方向に対して直交する、構造要素に対する検出領域の変位よりも大きくないようにセンサが配置されるリソグラフィ装置によって達成される。
【0012】
これは、より高い測定精度を達成することができるように、センサレセプタクルの温度変化がセンサの測定結果により低い程度までしか影響を及ぼさないことを確実にする。
【0013】
この場合、センサレセプタクルの温度の変化時に、検出領域は、構造要素に対して検出方向に実質的に変位せず、これは、取りわけ、センサレセプタクルの所定の温度変化値による温度の変化時に、検出領域が構造要素に対して検出方向に所定の絶対変位値を超えて変位しないことを意味することができる。この場合、所定の温度変化値は、10mK、好ましくは、100mK、特に好ましくは、1Kとすることができる。所定の絶対変位値は、例えば、100nm、好ましくは、10nm、特に好ましくは、1nm、取りわけ好ましくは、0.1nmとすることができる。
【0014】
センサは、センサの検出方向が、温度変化時のセンサの検出領域におけるセンサレセプタクルの熱膨張方向に対して実質的に直交するように、すなわち、この熱膨張方向に対して直交する直交範囲内にあるように配置することができる。一例として、センサの検出方向は、検出領域におけるセンサレセプタクルの熱膨張方向と90°±10°、好ましくは、90°±1°、特に好ましくは、90°±0.1°、取りわけ好ましくは、90°±0.01°の角度を形成することができる。この角度が90°に近い程、センサレセプタクルの熱膨張に起因する測定誤差は小さい。
【0015】
センサの検出領域は、所定の温度の変化時に、構造要素に対していかなる方向にも所定の絶対膨張値を超えて変位しないセンサレセプタクルの場所に配置することができる。従って、言い換えれば、センサの検出領域を温度不変点(temperature-invariant point)に配置することができる。温度不変点は、センサレセプタクルの均一な温度変化時に構造要素に対して変位しないセンサレセプタクルの面における点である。上述の場合と同様に、この場合、所定の温度変化値は、例えば、10mK、好ましくは、100mK、特に好ましくは、1Kとすることができ、所定の絶対変位値は、例えば、100nm、好ましくは、10nm、特に好ましくは、1nm、取りわけ好ましくは、0.1nmとすることができる。センサの検出領域を温度不変点に配置した結果として、この場合も測定結果に対する温度変化の影響を最小にすることができる。
【0016】
リソグラフィ装置は、第1の検出方向の物理量を検出するための第1の検出領域を有する第1のセンサと、第2の検出方向の物理量を検出するための第2の検出領域を有する第2のセンサとを含むことができ、第1のセンサは、センサレセプタクルの温度の変化時に第1の検出領域が構造要素に対して第1の検出方向に実質的に変位しないように配置され、第2のセンサは、センサレセプタクルの温度の変化時に第2の検出領域が構造要素に対して第2の検出方向に実質的に変位しないように配置される。その結果、より省スペースの配置が可能となるようにセンサレセプタクル上に2つのセンサが配置されたリソグラフィ装置が提供される。更に、この配置の場合に、センサレセプタクルの個数を低減することができることが有利である。更に、両方のセンサの測定結果に対する温度変化の影響が最小にされる。
【0017】
2つのセンサの第1の検出方向と第2の検出方向は実質的に直交するものとすることができ、すなわち、互いに対して直交する直交範囲内にあるとすることができ、すなわち、例えば、90°±10°、好ましくは、90°±1°、特に好ましくは、90°±0.1°、取りわけ好ましくは、90°±0.01°の角度を形成することができる。その結果、リソグラフィ装置内の光学要素の位置を2つの自由度に関して検出するセンサ装置を提供することができる。
【0018】
第1及び/又は第2のセンサは、所定の温度変化値による温度の変化時に、構造要素に対していかなる方向にも所定の絶対膨張値を超えて変位しないセンサレセプタクルの領域に配置することができる。この場合、所定の温度変化値及び所定の絶対膨張値は、上述したようなものとすることができる。
【0019】
更に、温度変化時に、構造要素に対して方向に依存せずに所定の絶対膨張値を超えないで変位するセンサレセプタクルの位置に配置された2つの検出方向の物理量を検出するようにされたセンサを提供することができる。この場合、所定の温度変化値及び所定の絶対膨張値は、上述したようなものとすることができる。そのようなセンサは、リソグラフィ装置内の光学要素の位置を2つの自由度に関して検出するセンサ装置を可能とする。検出領域を温度不変点に配置した結果として、測定結果に対する温度変化の影響を最小にすることができる。
【0020】
センサレセプタクルは、構造要素から熱的に分離することができる。これは、センサレセプタクルが構造要素とは異なる熱膨張係数、特に構造要素よりも大きい熱膨張係数を有する装置を可能とする。
【0021】
構造要素は、測定フレームとすることができる。そのような測定フレームは、リソグラフィ装置内の光学要素の位置の検出において基準として機能することができ、特に、温度変化及び振動などに関して不動である。
【0022】
センサは、リソグラフィ装置の光学要素の位置を検出する位置センサとして具現化することができる。一例として、センサは、光学要素上のエンコーダパターンを検出する光検出器を含むことができる。
【0023】
添付図面を参照して更に別の例示的な実施形態を説明する。
【0024】
別途示さない限り、図内の同一参照符号は、同一な又は機能的に同一な要素を指している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の例示的な実施形態
図1は、第1の例示的な実施形態によるリソグラフィ装置100の概略図を示している。リソグラフィ装置100は、少なくとも1つの光学要素130を装着するための保持フレーム120と、センサ装置200を装着するための測定フレーム140とがその上に設けられた底板110を含む。リソグラフィ装置100は、典型的には複数の光学要素を含む。しかし、
図1には、リソグラフィ装置100の機能を概略的に解説するために、一例として光学要素130を1つしか示していない。
【0027】
図示の例では、光学要素130の下に、ウェーハ170、例えば、シリコンウェーハを支持することができるウェーハレセプタクル(ウェーハホルダ)160が設けられる。ウェーハレセプタクル160は、例えば、露光中にかつ同じく露光休止時に底板110に対してステップ−バイ−ステップでウェーハ170を移動するステップ−アンド−スキャンシステムとして具現化することができる。
【0028】
図1に示す光学要素130は、レンズ要素系、すなわち、レンズ要素の組合せ、又はレンズ要素及びミラーの組合せを含む。光学要素130の上方には、照明装置180が設けられ、照明装置180は、ウェーハ170の露光のための放射ビームを発生させる。照明装置180から射出した光ビームは、この図では概略的にしか示していないマスク190を通過し、マスク190内に設けられたパターンがウェーハ170上に縮小されて結像されるように光学要素130のレンズ要素システムによって集中させられる。この実施形態に対する代替として、光学要素130はまた、照明装置180から射出した光を集中させるミラー配列として、すなわち、ミラーの組合せ又はそうでなければミラー及びレンズ要素の組合せとして具現化することができる。
【0029】
高い光学分解能を確実にするために、各露光工程中に、光学要素130は、最適な位置及び最適な向きに正確に配置されなければならない。この目的のために、光学要素130の向きを6つ全ての自由度に関して検出する複数のセンサが設けられる。6つの自由度は、3つの空間軸に沿った並進移動と3つの空間軸の回りの回転移動とを含む。本例では、簡略化の目的で、図は、光学要素130の位置を1つの自由度に関して検出する1つのセンサが設けられたセンサ装置200のみを示している。
【0030】
測定フレーム140は、リソグラフィ装置100の構造要素であり、保持フレーム120とは独立して設けられた独立基準フレームとして機能する。測定フレーム140は、底板110上に、例えば、バネ手段及び/又はダンパーを介して装着することができる。その結果、作動中に発生する振動が減衰し、測定フレーム140と保持フレーム120の間のほぼ完全な機械的分離が可能になる。この減衰は、能動的減衰とすることができる。
【0031】
図2は、光学要素130の位置の検出及び調整を略示している。
【0032】
光学要素130のセンサ装置200に面する側には、エンコーダパターン132が設けられる。このエンコーダパターン132は、例えば、バーコード又は線格子と類似の暗いバーと明るいバーのシーケンスから構成される。センサ装置200上に配置されたセンサ220は、パターン領域134内のエンコーダパターン132を検出する。センサ220は、例えば、光検出器として具現化することができ、特に、センサ220の検出方向に沿って配置されたフォトダイオードアレイを有することができる。フォトダイオードは、パターン領域134から反射された光をセンサ220内の構成要素(具体的には示していない)によって処理される電気信号に変換し、得られるセンサ信号を評価デバイス230に渡す。
【0033】
センサ信号に基づいて、評価デバイス230は、センサ220に対する光学要素130の検出方向の位置を決定する。
図2に示す例では、検出方向はy方向である。更に、評価デバイス230は、光学要素130の検出方向の位置を調整するアクチュエータ240に制御信号を出力する。その結果、センサ220と評価デバイス230とアクチュエータ240とは、光学要素130の位置を1つの自由度に関して調整し、すなわち、この場合、y方向の並進を調整する調整システムを形成する。光学要素130の向きを6つ全ての自由度に関して正確に定めることができるように、6つ全ての自由度に対して対応する調整システムが設けられる。更に、リソグラフィ装置100に配置された複数の光学要素130に対して対応する調整システムを設けることができる。従って、リソグラフィ装置が、例えば、照明装置から射出した光を集中させるために5つのミラーを含む場合には、対応する個数のミラー位置センサを有する合計で30個の説明した調整システムを設けることができる。
【0034】
エンコーダパターンは、必ずしも光学要素130自体の上に設ける必要はなく、例えば、光学要素を支持するためのフレームのような光学要素130に固定接続した構成要素上に設けることができることが考慮されなければならない。しかしながら、熱膨張に起因する測定誤差を最大限可能な程度で回避するために、エンコーダパターンを可能な限り光学要素130の近くに設けることが有利である。
【0035】
センサ220は、光学要素130の移動方向、すなわち、
図2のy方向の位置変化に反応する。以下では、センサ220が感度を有する方向を「検出方向」とも呼ぶ。それとは対照的に、センサ220は、検出方向に直交する方向、すなわち、例えば
図2のx方向の光学要素130の移動に対しては比較的感度が低い。光学要素130が例えばx方向に移動した場合には、エンコーダパターン132上のパターン領域134は、エンコーダパターン132に関して反対の方向、すなわち、図示の例では負のx方向に変位するが、この変位は、検出されるパターンの変化を引き起こさず、従って、センサ220によって出力されるセンサ信号も変更されないままに留まる。
【0036】
図3は、センサ装置200の平面図を示している。
【0037】
センサ装置200は、センサレセプタクル(センサホルダ)210と、センサレセプタクル210上に支持又は装着されたセンサ220とを含む。センサレセプタクル210は、例えば、約140mm長及び100mm幅のものとすることができる例えば矩形の板の形をした底板211を有することができる。センサ220は、例えば、底板211上に固定され、例えば、ねじ止めすることができ、もしくは底板211内に設けられた切り欠きに固定することができる。底板211内には、センサ220への接続部をセンサレセプタクル210の後側に誘導する貫通孔(図示せず)を更に設けることができる。
【0038】
センサレセプタクル210は、例えば、鋼鉄から製造することができ、低い熱膨張係数を有する例えば「インバー」又は適切なセラミックから製造された測定フレーム140よりも高い熱膨張係数をセンサ220と同じく有する。センサ220が測定フレーム140上に面固定された場合には、異なる熱膨張係数は、高い機械的応力をもたらし、更に、測定結果を損ねる場合があるセンサ220の変形をもたらすことになる。この理由から、センサ220は、熱的に分離されたマウントを用いて測定フレーム140に固定される。この目的のために、センサレセプタクル210の3つの場所に四角形の切り欠きが設けられる。この切り欠きの内部には、それぞれの板バネ213が設けられる。図示の例では、板バネ213は、四角形の切り欠きの片側の中心の領域からその反対側まで延びている。この板バネ213は帯形のものであり、センサレセプタクル210と同じ材料から製造される。従って、本例では、センサレセプタクル210全体は一体的なものである。板バネ213の中心の領域内には、円筒形肥厚部215が設けられる。センサレセプタクル210と板バネ213と肥厚部215とは、同じ材料から一体的に製造することができ、その結果、ドリフトを回避することができる。センサレセプタクル210の図示の形態及びセンサレセプタクル210内の板バネ213の配置は、単なる例に過ぎないことが考慮されなければならない。
【0039】
肥厚部215には、センサレセプタクル210を測定フレーム140に固定し、例えば、ねじ止めすることができる固定手段(図面内には示していない)が設けられる。従って、センサレセプタクル210は、測定フレーム140に3つの場所で堅固に固定される。
【0040】
リソグラフィ装置100の作動中には、例えば、照明装置180によって放出される熱に起因して、温度変動が発生する可能性がある。更に、センサ220も、作動中に主にセンサレセプタクル210を加熱する更なる熱源を構成する。測定フレーム140の材料は、非常に低い熱膨張係数を有するので、その位置は、作動中に発生する温度範囲にわたって固定されたものと見なすことができる。従って、測定フレーム140は、光学要素の位置の測定のための基準フレームとして機能する。それとは対照的に、センサレセプタクル210は、センサフレーム140における基準点に対して膨張する。この膨張は、センサレセプタクル210の温度不変点217から距離Δx、2.Δx、3.Δx等に位置する
図3に示す膨張線216a、216b、216c等によって明らかである。これらの円形の膨張線216の各々は、センサレセプタクル210の均一な温度増大時に、温度不変点217から半径方向に同じ絶対値だけ後退する線形領域を印している。均一な温度変化時には、これらの同一の変位の領域は、3次元センサレセプタクル210を通る円柱の側面として拡がっている。膨張線216a、216b、216c等は、これらの円柱側面とセンサレセプタクル210の面との交差線を表している。
【0041】
従って、膨張線216aに沿った点は、温度増大ΔTの時に温度不変点217から絶対膨張値Δxだけ変位し、膨張線216bに沿った点は、均一な温度増大ΔTの時に温度不変点217から絶対膨張値の2倍2・Δxだけ変位し、等々となる。ここで、温度不変点217と線216aの間の距離は、線216aと216bの間の距離と同じであると仮定する。
【0042】
特定の温度の変化時の温度不変点に対するセンサ220の変位が所定の絶対膨張値Δxよりも小さい温度不変点217の周囲の実質的に円形の領域は、実質的に温度不変な領域と見なすことができる。
図3に示す例では、この絶対膨張値Δxは、3Kの温度増大ΔTの時に、例えば、約0.3μmとすることができる。それに応じて、膨張線216a上の点は、この温度増大の後に、温度不変点217から約0.3μm更に離れて位置し、膨張線216b上の点は、0.6μm更に離れて位置し、等々となる。
【0043】
固定手段は、測定フレーム140に堅固に固定されるので、固定手段と膨張するセンサレセプタクル210との間で相対変位が発生し、これらの相対変位は、板バネ213によって補償される。板バネ213は、センサレセプタクル210の膨張時に若干内向きに屈曲する。この場合、板バネ213と垂直にセンサレセプタクル210の内部に作用するバネ力が生じる。温度不変点217は、センサレセプタクル210の面において、センサレセプタクル210の均一な温度変化時に構造要素140に対して変位しない点である。
【0044】
エンコーダパターンは、センサ220の測定点において検出される。この検出は、特定の寸法を有し、従って、点状(点形)のものではない光検出器によって行われるので、この測定点は、エンコーダパターンを検出するための光検出器が内部に配置された検出領域225に対応する。
図3には、この検出領域225を概略的にしか示しておらず、この検出領域225は、エンコーダパターンの検出に寄与する光検出器の実際の膨張に必ずしも対応するわけではない。
図3に示す検出領域225は、光信号を取り出すために必要とされる取り出し窓のサイズにほぼ対応する。この場合、図に示す偏菱形状は、その形状又は寸法のいずれに関しても実際の検出領域225に対応せず、単に概略的な説明のためのものである。検出領域225は、例えば、検出方向にそれに直交する方向のものよりも大きい長さを有することができる。光検出器を保護するために、この検出領域225は、ガラス板などで覆うことができる。
【0045】
図3に示すセンサ220の検出方向はy方向である。従って、この検出方向は、検出領域225の場所において、膨張線216と垂直に延びる膨張方向に直交する。これは、測定が、温度によって決定されるセンサレセプタクル210の膨張によって可能な限りほとんど影響を受けないことを確実にする。具体的には、センサ220及びその検出領域225の位置が、センサレセプタクル210の加熱時に負のx方向に変位した場合には、光学要素130上のパターン領域134もx方向に変位するが、エンコーダパターンのx方向の膨張は、センサ220の場所における温度によって決定されるセンサレセプタクル210の最大膨張よりも大きいので、エンコーダパターンの検出は、この変位によって影響を受けない。
【0046】
センサ220の検出領域225は、所定の温度変化ΔTの時に、構造要素に対して検出方向に所定の絶対変位値を超えないで変位するセンサレセプタクル210の場所に配置される。温度変化ΔTは、例えば、リソグラフィ装置の作動中に発生する可能性がある最大温度変化、すなわち、例えば、10mK、好ましくは100mK、又は特に好ましくは1Kに対応する。検出方向の最大絶対変位値は、温度変化ΔTの時に、検出方向の変位が非常に小さく、測定値が特定の測定誤差、例えば、10%、好ましくは、1%、特に好ましくは、0.1%、取りわけ好ましくは、0.01%を超えては損なわれないように決定される。一例として、この検出方向の最大絶対変位値は、100nm、好ましくは、10nm、特に好ましくは、1nm、取りわけ好ましくは、0.1nmとして定めることができる。この最大絶対変位値は、検出方向が膨張方向からずれることが最大限許される角度で表すことができる。特に、検出方向は、膨張方向に対して実質的に直交する。言い換えれば、検出方向は、膨張方向に対して直交するものとして、90°±10°、好ましくは、90°±1°、特に好ましくは、90°±0.1°、取りわけ好ましくは、90°±0.01°の特定の直交範囲内で定められる。
【0047】
従って、
図3に示す例示的な実施形態において、センサ220は、センサレセプタクル210又はセンサ220の温度の変化時にセンサ(検出方向)が膨張方向と平行に(すなわち、
図3に示す配置に対して直交するように)配置された場合の検出方向の変位よりも小さい程度に検出領域225が測定フレーム140に対して検出方向(y方向)に変位しないように配置される。この例では、センサ(検出方向)が膨張方向と平行に配置された場合には、検出方向はx方向になる。この比較事例では、検出方向がセンサの場所において膨張方向と対応するので、検出領域225の検出方向のかなりの変位が存在し、測定を歪ませることになる。言い換えれば、本実施形態の装置を使用すると、検出方向を膨張方向に対して直角に配置することにより、検出方向が例えば膨張方向と平行に配置されたセンサ装置と比較して、センサ精度の向上を達成することができる。
【0048】
測定フレーム140に対する最小の変位は、上述の温度不変点217において生じる。従って、検出領域225が非変位点217に位置するようにセンサ220を配置することが有利である。この一例を温度変化時のセンサレセプタクル210又はセンサ220の温度不変点217の周囲の局所膨張を示す
図4に示している。
図3とは対照的に、
図4の膨張度は方向に依存する。より正確には、温度変化時に、センサレセプタクル210は、x方向よりもy方向に大きく膨張する。その結果、
図4の破線の膨張線も、x方向よりもy方向において互い近くに位置する。
【0049】
図4に示す例では、センサ220は、帯形の検出領域225が、小さい方の膨張の方向に対して実質的に平行に、すなわち、x方向と平行に配置されるように配置される。この場合、測定フレーム140に対する検出領域225の最大変位は、帯形の検出領域225の2つの端部において生じ、検出領域225の右手の端部における変位は、+x方向に約1.5Δaであり、検出領域225の左手の端部における変位は、−x方向に約1.5Δaである。
図5に示す比較例では、センサ220は、帯形の検出領域225が、大きい方の膨張の方向に対して実質的に平行に、すなわち、y方向と平行に配置されるように配置される。この場合、測定フレーム140に対する検出領域225の最大変位は、帯形の検出領域225の2つの端部において生じ、検出領域225の上側端部における変位は、+y方向に2Δaよりも少し大きく、検出領域225の左手の端部における変位は、−y方向に2Δaよりも少し大きく、すなわち、検出領域225が小さい方の膨張の方向に対して実質的に平行に配置された
図4に示す場合のものよりも大きい。従って、言い換えれば、
図4に示す配置の場合には、センサレセプタクル210の温度の変化時に、構造要素に対する検出領域225の検出方向(x方向)の最大変位は、
図5に示す配置の場合の、すなわち、
図4に示す配置に対して直交するセンサ(又は検出領域)の配置の場合の構造要素に対する検出領域225の検出方向(y方向)の最大変位よりも小さい。
【0050】
図4の配置の場合の測定誤差は、センサ220(又は検出領域225)が
それに対して60°、30°、又は10°の角度だけ回転された配置の場合の測定誤差よりも小さいことも直ちに明らかである。取りわけ、
図4にあるようなセンサ220は、センサレセプタクルの温度の変化時に、構造要素に対する検出領域225の検出方向の最大変位がセンサ220のいかなる回転の場合におけるものよりも小さいように配置することができる。一例として、検出領域225の重心又は中心をセンサの回転における基準点として選択することができることに注意されたい。
【0051】
図4及び
図5から明らかなように、検出領域225、又はセンサレセプタクル210の対応する領域の拡大又は圧縮が大きい程、より多くの膨張線が検出領域225と交わる。従って、検出領域225を可能な限り少数の膨張線と交わるように配置することにより、測定誤差を最小にすることができる。
【0052】
更に、
図3に示すような等方的な膨張の場合には、温度不変点における検出領域225の好ましい配置は存在せず、従って、全ての向きに対して、測定フレーム140に対する検出領域225の検出方向の最大変位が、任意の角度だけ回転されたセンサの配置の場合、すなわち、例えば、
それに対して直交する配置の場合よりも大きくないという条件が満たされることにも補足的に注意されたい。
【0053】
リソグラフィ装置100の作動中に、センサレセプタクル210の温度がセンサレセプタクル210全体にわたって必ずしも均一ではないことが考慮されなければならない。センサレセプタクル210の温度は局所的に変化する可能性があり、特にセンサ220における熱発生により、センサレセプタクル210の縁部領域においてよりも、センサ220が配置された領域において幾分高い場合がある。しかしながら、そのような温度変化を互いに重ね合わされた場所依存の局所温度変化と広域温度変化として考えることができる。この場合、局所温度変化は、例えば、センサ220における熱発生によって引き起こされ、広域温度変化は、例えば、周辺の温度変化によって引き起こされる、特定の絶対値の、センサレセプタクル210の場所に依存しない温度変化である。この場合、最大温度変化が、検出領域自体又はその近くにある場合には、検出領域の変位は、全く又はごく僅かしか発生しないので、センサ220における熱発生によって引き起こされる温度変化は、一般的により低い程度までしか測定結果に影響を及ぼさない。従って、「温度変化時」という表現は、特に、センサレセプタクルの温度が場所に依存しない均一に特定の絶対値だけ変化する広域温度変化を意味すると理解することができる。
【0054】
第2の例示的な実施形態
図6は、第2の例示的な実施形態によるリソグラフィ装置のセンサ装置200の平面図を示している。下記では、第1の例示的な実施形態の要素と構造的又は機能的に同一である要素を同じ参照符号に示し、詳細に説明しない。特に、
図6に示すセンサ装置200は、
図1のリソグラフィ装置100内で位置センサとして使用することができる。
【0055】
この例示的な実施形態において、センサレセプタクル210内に光学要素130の位置を2つの自由度に関して決定するセンサ250が配置される。センサ250は、測定フレーム140に対する光学要素130のx方向及びy方向に関する位置を決定する。従って、センサ250は、センサが光学要素130の位置変化を検出する2つの検出方向を有する。この例示的な実施形態においても、センサ250は、この目的のために、エンコーダパターンから反射された光を電気信号に変換する光検出器を含むことができ、この電気信号からセンサ信号を生成する。この場合、光検出器は、検出領域255にわたって拡がる2次元アレイとして具現化することができ、両方の検出方向に実質的に同じ幅を有することができる。この場合、エンコーダパターンは、2次元バーコードと類似の2次元で符号化された情報を有することができる。第1の例示的な実施形態の場合と同様に、センサ信号は評価デバイスに供給され、それによって評価される。第1の例示的な実施形態とは対照的に、この場合、光学要素130は2つの方向に移動させられる。その結果、光学要素130の位置を2つの並進自由度に関して同時に調整することができる調整が提供される。
【0056】
センサ250の検出領域255は、センサレセプタクル210の温度不変点217又は温度不変領域に配置される。これは、温度によって決定されるセンサレセプタクル210の膨張時に、検出領域255の位置が、基準として機能する測定フレーム140に対するいかなる変化も受けないことを確実にする。従って、検出領域255は、測定フレーム140に対して両方の検出方向に変位しない。
【0057】
更に、大きな温度変化の時でさえも温度不変点の変位は僅かであるので、検出領域255を温度不変点217に配置することは、温度変動に対して特に安定したセンサ装置を提供することを可能とする。
【0058】
温度不変点は、必ずしもセンサレセプタクル210の重心又はその対称線上に位置しないことが考慮されなければならない。更に、温度不変点の位置は、3つの板バネ213の向き及びバネ定数に依存する。
【0059】
第3の例示的な実施形態
図7は、第3の例示的な実施形態によるリソグラフィ装置のセンサ装置200の平面図を示している。下記では、第1の例示的な実施形態の要素と構造的又は機能的に同一である要素を同じ参照符号に示し、詳細に説明しない。特に、
図7に示すセンサ装置200は、
図1のリソグラフィ装置100内で光学要素130の位置を検出するための位置センサとして使用することができる。
【0060】
この例示的な実施形態において、センサレセプタクル210上には、2つのセンサ220a及び220bが配置される。センサ220a及び220bは、それぞれ、物理量を検出するための検出領域225a及び225bを有する。この例示的な実施形態において、センサ220a及び220bは、それぞれ、第1の例示的な実施形態からのセンサ220と構造的に同一であるとすることができ、その結果、同様に各場合にセンサ220a及び220bのそれぞれの検出方向に沿って配置されたフォトダイオードアレイを有することができる。
【0061】
センサ220a及び220bは、光学要素130の位置を検出するための位置センサとして具現化することができる。この場合、センサ220aの検出方向は、センサ220bの検出方向に対して直交するように配置され、センサ220aの検出方向はy方向であり、センサ220bの検出方向はx方向である。更に、2つのセンサ220a及び220bの各々には、光学要素130上のエンコーダパターンが割り当てられる。これらのエンコーダパターンは、それぞれセンサ220a及び220bに対向して配置される。その結果、センサ220aは、それに対向して配置されたエンコーダパターンを用いて光学要素130のy方向の変位を検出し、センサ220bは、それに対向して配置されたエンコーダパターンを用いて光学要素130のx方向の変位を検出する。
【0062】
第1の例示的な実施形態のセンサと同様に、センサ220aの検出方向は、検出領域225aの場所における膨張方向に対して直交するように配置される。これは、測定が、温度によって決定されるセンサレセプタクル210の膨張によっても可能な限りほとんど影響を受けないことを確実にする。更に、センサ220bの検出領域225bは、センサレセプタクル210の温度不変点217又は温度不変領域に配置される。これは、温度によって決定されるセンサレセプタクル210の膨張時に、検出領域255bの位置が、基準として機能する測定フレーム140に対していかなる変化も受けないことを確実にする。言い換えれば、センサレセプタクル210の均一な加熱時に、両方のセンサ220a及び220bの位置は、検出方向において変化しない。
【0063】
この実施形態に関して有利なのは、2つのセンサ220a及び220bが、センサレセプタクル210上に装着されることである。それによって1つのセンサレセプタクル210だけを測定フレーム140に対して位置合わせするだけでよいので、リソグラフィ装置100内に設けられるセンサの装着が簡単になる。更に、この場合、省スペース配置が可能になる。
【0064】
この例示的な実施形態の変形(具体的には図示しない)では、センサ220a及び220bは、センサ220aの検出領域225aとセンサ220bの検出領域225bのいずれも温度不変点217に位置しないようにセンサレセプタクル上に配置される。そのような構成は、例えば、
図7のセンサ220bがセンサレセプタクル210上でy方向に変位した場合に生じる。センサ220bの検出方向はx方向であるので、この場合もセンサ220bの検出方向は、検出領域225bの場所において膨張方向に対して直交し、従って、温度によって決定されるセンサレセプタクル210の膨張に起因する測定誤差が最小にされる。この場合、センサ220a及び220bの検出方向は、必ずしも互いに対して直交する必要がない。それどころか、センサ220a及び220bの検出方向が互いに対して90°に等しくない角度で配置され、これらの検出方向が各場合にそれぞれの検出領域225の場所における膨張線216の接線方向に対応する配置を考えることができる。
【0065】
上述の実施形態は、一例としてのものに過ぎず、特許請求の範囲の保護の範囲の文脈において多様に変化する可能性があることが考慮されなければならない。
【0066】
従って、例えば、センサレセプタクル上に2つよりも多いセンサを配置することもできる。一例として、冗長性の理由から、同じ検出方向を有する複数のセンサを設けることができる。更に、センサレセプタクル上に平行又は逆平行の検出方向を有する2つのセンサを配置し、センサ信号の対応する評価を用いて回転センサを提供するように考えることができる。
【0067】
更に、上述のセンサ原理は例示的なものに過ぎず、少なくとも1つの検出方向の物理量を検出するのに使用される他のセンサ原理も可能である。従って、センサの代わりに、光学要素上のエンコーダパターンを検出する送受光器を含む装置を設けることができる。そのような装置の場合には、一例として、測定フレームに堅固に接続したレーザは、光学要素上に設けられたミラーから反射されてセンサの検出領域によって検出される光線を放出することができる。この場合、検出領域上の反射光の入射場所は、測定フレームに対する光学要素の位置に依存して変化する。従って、この場合も、センサは、検出方向によって特徴付けられ、検出方向に沿った入射場所は、1つの自由度に関する光学要素の位置に関する情報を含む。
【0068】
検出方向によって同様に特徴付けられるレーザ干渉計及び容量センサが、センサについて更に別の構成として可能である。