(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートと、前記半導体発光素子から発せられる紫外線の波長領域に吸収領域を有する光重合開始剤とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光ファイバの製造方法および光ファイバの製造装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明にかかる光ファイバの製造方法によって製造される光ファイバの一実施形態について説明する。
図1に、光ファイバの一実施形態の概略断面図を示す。
図1に示すように、光ファイバ10は、光ファイバ裸線11と、光ファイバ裸線11の外周に被覆された軟質層であるプライマリ層(一次被覆層)12および硬質層であるセカンダリ層(二次被覆層)13の2層の被覆層14とを有する。プライマリ層12およびセカンダリ層13は、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して硬化されてなる被覆樹脂からなり、光ファイバ裸線11を保護する機能を有している。また、識別性を付与するためプライマリ層12またはセカンダリ層13を着色する、あるいはセカンダリ層13の外周に着色層を設ける場合もある。更には、光ファイバを複数本平行に並べてテープ層を一括被覆し、光ファイバテープ心線とする場合もある。このようにセカンダリ層13の外周に着色層を設ける場合や、テープ層を設ける場合は、被覆が形成された光ファイバを一度ボビンに巻き取り、さらにその表面に樹脂を被覆して被覆樹脂を形成する。
【0012】
光ファイバ裸線11は、中心に位置し光を導波するコアと、それを取り囲むクラッドを有する。また、光ファイバ裸線11は、例えば石英系のガラスからなり、コアには屈折率を上げるためにGe(ゲルマニウム)やP(リン)等が添加されていてもよく、また、クラッドには屈折率を下げるためにB(ホウ素)やF(フッ素)等が添加されていてもよい。
光ファイバ裸線11の直径は、通常100〜150μmであり、124〜126μmが一般的である。プライマリ層12の厚さは、通常10〜50μmであり、セカンダリ層13の厚さは、通常10〜50μmである。また、光ファイバの直径(セカンダリ層13の外径)は、通常245μm〜255μmである。
【0013】
光ファイバの特性および機能を保持するために、プライマリ層12は、好ましくはヤング率が0.2MPa以上3MPa以下、より好ましくはヤング率が0.3MPa以上2MPa以下である。セカンダリ層13は、好ましくはヤング率が500MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上2000MPa以下であり、さらに好ましくはヤング率が800MPa以上1500MPa以下である。
【0014】
以下、紫外線硬化型樹脂についてより詳細に説明する。
光ファイバの被覆樹脂として用いる紫外線硬化型樹脂は、例えば、紫外線で重合・硬化するエチレン性不飽和基を少なくとも2つ有する紫外線硬化型樹脂を使用し、好ましくはオリゴマーを使用する。
該紫外線硬化型樹脂は、オリゴマー以外に、希釈モノマー、光重合開始剤、光増感剤、シランカップリング剤、連鎖移動剤および各種添加剤を含んでもよい。希釈モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートが用いられる。希釈モノマーとは、紫外線硬化型樹脂を希釈するためのモノマーを意味する。
なお、ここでオリゴマーとは、重合度が2〜100の重合体である。
【0015】
オリゴマーとしてはポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートのようなウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが用いられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリエーテル骨格を有するポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、の反応物のように、ポリエーテルセグメント、(メタ)アクリレートおよびウレタン結合を有する化合物である。また、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリエステル骨格を有するポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応物のように、ポリエステルセグメント、(メタ)アクリレートおよびウレタン結合を有する化合物である。
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、柔軟性と硬度を調整しやすく、適度な柔軟性と硬度を両立できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタアクリレートのいずれをも含む意味で用いる。
【0016】
希釈モノマーとしての単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートには、以下のものを挙げることができる。例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2―ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の多官能(メタ)アクリレート;前記(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0017】
上記希釈モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。希釈モノマー使用量は、得られる塗膜の耐摩耗性を考慮して、オリゴマー100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、10〜70質量部であることが好ましい。
【0018】
半導体発光素子から発せられる紫外線の波長領域に適応したラジカル系光重合開始剤を添加してもよい。一例として、半導体発光素子光源より発せられる発光波長領域が350〜405nmである場合には、この波長領域に紫外線吸収を有し、組成物を好適に硬化させ得る光重合開始剤であれば種々のものを用いることができる。
また、従来の高圧水銀ランプ等で硬化する場合と同様のラジカル系光重合開始剤を添加してもよい。この場合、半導体発光素子光源より発せられる発光波長領域では紫外線の吸収が非常に小さくなる。このときは紫外線硬化型樹脂を加熱することで、紫外線硬化型樹脂を充分硬化させることができる。
【0019】
例えば、α−アミノケトン型である、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等を挙げることができる。市販品では、Irgacure907、Irgacure369、Irgacure379およびIrgacure389(商品名、BASF製)を挙げることができる。なお、「Irgacure」は、BASFの登録商標である。
【0020】
α−ヒドロキシアルキルフェノン型である、市販品のIrgacure184、Irgacure2959、およびIrgacure127(商品名、BASF製)を挙げることができる。
【0021】
アシルホスフィンオキサイド型である、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。市販品では、Irgacure819、LucirinTPO、LucirinTPO―LおよびIrgacure2100、Darocur4265およびIrgacure2022(商品名、BASF製)を挙げことができる。
【0022】
O−アシルオキシム型である、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]− ,1−(o−アセチルオキシム)等を挙げることができる。市販品では、IrgacureOXE01およびIrgacureOXE02(商品名、BASF製)を挙げることができる。
【0023】
本発明では、これらの光重合開始剤を2種以上組み合わせて使用してもよく、この場合、α−ヒドロキシアルキルフェノン型と、アシルホスフィンオキサイド型またはO−アシルオキシム型との組み合わせが好ましい。
【0024】
上記光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化型樹脂の被覆条件や硬化後の物性等を考慮し、塗布する紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、0.01〜20質量部がより好ましく、さらには0.01〜10質量部がより好ましい。
【0025】
シランカップリング剤は、ガラス光ファイバへの密着性を付与するために、主にプライマリ層に添加される。シランカップリング剤としては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。また、これらシランカップリング剤を併用して用いてもよい。
【0026】
また、従来高圧水銀ランプで用いられているラジカル系光重合開始剤に、光増感剤を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤に光増感剤を組み合わせることで光重合開始剤が吸収を持たない波長領域に感光性を持たせることができる。350nm〜405nmの半導体発光素子光源に反応し得る光増感剤としては、例えば、チオキサントン系化合物のうち、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンを挙げることができる。また、アミン系化合物のうち、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0027】
上記光増感剤の配合量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部の割合が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。0.01〜20質量部の割合とすることにより、十分な増感効果と光硬化性を得ることができる。
【0028】
感度を向上するために連鎖移動剤として公知のN−フェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸およびその誘導体等を挙げることができる。これらの連鎖移動剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂を含む全固形分に対して、0.01〜10質量%の範囲であることが、感度ばらつきを低減するという観点から好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0029】
紫外線硬化型樹脂には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、タレ止め等の目的で各種添加剤を含んでもよい。また、着色剤としては顔料、染料、色素等が好適に使用される。
【0030】
本発明にかかる光ファイバの製造方法は、(a)光ファイバの外周に、紫外線硬化型樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、(b)前記紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱工程と、(c)前記紫外線硬化型樹脂が加熱された状態で、前記紫外線硬化型樹脂に、半導体発光素子から発せられる紫外線を照射して、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ被覆樹脂とする光照射工程と、を有する。
【0031】
加熱工程(b)は、紫外線照射時に紫外線硬化型樹脂が加熱されていればよく、紫外線樹脂を塗布する樹脂塗布工程(a)乃至光照射工程(c)に設けられている。例えば、樹脂塗布工程(a)、加熱工程(b)および光照射工程(c)をこの順に設けてもよい。また、樹脂塗布工程(a)、加熱工程(b)および光照射工程(c)の全部または一部が繰り返されてもよい。また、樹脂塗布工程(a)および加熱工程(b)を同時に行ってもよい。またさらに、加熱工程(b)および光照射工程(c)を同時に行ってもよい。
【0032】
樹脂塗布工程(a)と加熱工程(b)を同時に行う場合には、例えば、樹脂が吐出されるダイスを、ダイスの周囲に設けられたヒータ等で加熱する。
加熱工程(b)と光照射工程(c)とを同時に行う場合には、例えば、紫外線硬化型樹脂を被覆した後の光ファイバが通過する光照射手段に設けられた筒状体の内部をヒータ等で加熱する。
ヒータ等としては、テープヒータ、リボンヒータ、ラバーヒータ、オーブンヒータ、セラミックヒータ、赤外線照射ユニット、紫外線照射ユニット、電熱線ヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ、など、周知のヒータを使用することができる。
【0033】
次に、加熱工程(b)における加熱温度について、さらに詳細に説明する。
従来の高圧水銀ランプ等を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化する場合には、必要な量の紫外線照射を行うことにより、所望の弾性率を有する被覆樹脂を得ることができる。しかしながら、高圧水銀ランプ等に代えて半導体発光素子を用いた場合は、必要な量の紫外線照射を行っても所望の弾性率が得られないことが分かった。この点は、紫外線硬化型樹脂に半導体発光素子から発せられる紫外線の波長領域に適応したラジカル系光重合開始剤を添加することで改善がみられる。しかしこのような光重合開始剤を用いても、高圧水銀ランプ等を用いた場合と同程度まで十分にヤング率を高めることはできなかった。
この原因について本発明者らは種々検討を重ねたところ以下の知見を得、本発明を成すにいたった。すなわち、高圧水銀ランプ等を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化させる際、輻射熱等により、紫外線硬化型樹脂がガラス転移温度(Tg)より高い130℃以上に加熱される。一方、高圧水銀ランプ等に代えて半導体発光素子を用いたときは紫外線硬化型樹脂はほとんど加熱されず、30℃〜50℃程度にしかならない。そのことが所望の弾性率が得られない結果に影響しているのではないかと推測した。
【0034】
本発明においては、紫外線硬化型樹脂を加熱することで、半導体発光素子で紫外線照射する際に、紫外線硬化型樹脂の硬化を促進する作用を利用する。これにより樹脂硬化用の光源として半導体発光素子を用いても、目的の、十分に高弾性率の被覆樹脂を有する光ファイバを得ることを可能にした。
ここで、紫外線硬化型樹脂の加熱温度は、後述の温度Tx以上であることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度Tg以上である。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、現実的には、消費エネルギー節約及び紫外性硬化樹脂中の低分子成分の揮発防止の観点からガラス転移温度(Tg)より40℃高い温度以下が好ましい。
【0035】
ここで、温度Txの導き方について、
図2を参照して説明する。
図2に、被覆樹脂における貯蔵弾性率E’およびtan delta(損失正接、以下tan δと記載する)と温度との関係をそれぞれプロットしたグラフA、Bを示す。グラフ左縦軸に貯蔵弾性率E’を示し、右縦軸にtan δを示す。
【0036】
図2は、以下のようにして得られる。まず、硬化前の紫外線硬化型樹脂をガラス板上にバーコーターにて0.050mm厚さに塗布し、FUSIONランプ(Dバルブ)にて紫外線を1.0J/cm
2になるように照射する。樹脂はガラス板上で光重合し、フィルム状に硬化する。このとき、紫外線硬化型樹脂は、硬化反応がほぼ完全に進んだ状態となる。このフィルムを幅6mmの短冊状に切断し、動的粘弾性測定装置RSA3(TAインスツルメンツ製)を用い、−100℃から150℃の温度範囲で昇温速度5℃/minで粘弾性を測定する。
測定により得られた貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”からtan δを求める。tan δは以下の式より求められる。
【0037】
tan δ=損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’
【0038】
次に、測定結果から、tan δの極大点の温度を読み取る。この値が紫外線硬化型樹脂のガラス転移温度(Tg)に相当し、本発明におけるガラス転移温度(Tg)である。
【0039】
また、その測定結果から得られる貯蔵弾性率E’曲線(A)において、ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域でその曲線に対する傾きの絶対値が最小である接線(L1)とその曲線に対する傾きの絶対値が最大である接線(L2)との交点に対応する温度をTxとする。
【0040】
なお、紫外線硬化型樹脂を温度Tx以上、より好ましくはガラス転移温度Tg以上に加熱することが好ましい理由は、以下のように考えられる。
紫外線硬化樹脂は紫外線照射により重合が進行する。樹脂は液体状態では低いガラス転移温度Tg’を有し、紫外線照射により重合が進行するにしたがって樹脂中に分子鎖の網目構造が形成されて弾性率が増加し、最終的に硬化が完了するとガラス転移温度はTg’よりも高いTgとなる。反応が完了した以降は、ガラス転移温度の上昇は停止する。
【0041】
図3は、半導体発光素子光源を用いて硬化した被覆樹脂における貯蔵弾性率E’およびtan δと温度との関係をプロットしたグラフである。硬化前の紫外線硬化型樹脂をガラス板上にバーコーターにて0.050mm厚さに塗布し、LEDランプ(波長365nm)にて紫外線を1.0J/cm
2になるように照射する。樹脂はガラス板上で光重合し、フィルム状に硬化する。このフィルムを幅6mmの短冊状に切断し、動的粘弾性測定装置RSA3(TAインスツルメンツ製)を用い、25℃から150℃の温度範囲で昇温速度5℃/minで粘弾性を測定する。図中、A及びBは、それぞれ貯蔵弾性率E’及びtan δの、温度との関係を示す曲線である。
【0042】
図2と比較するとわかるように、半導体発光素子光源で硬化した被覆樹脂のガラス転移温度Tg
LEDは高圧水銀ランプ等で硬化した被覆樹脂のガラス転移温度Tgよりも低い。
これは、半導体発光素子光源で硬化させた場合、従来の高圧水銀ランプ等で硬化させた場合よりも被覆樹脂の架橋反応の進行度が低く、紫外線硬化型樹脂の硬化反応が一部完了していないことによる。
これにより、半導体発光素子光源のみによる硬化では、従来の高圧水銀ランプ等を使用した場合と同レベルの硬化性が得られない。
【0043】
ここで、ガラス転移温度以上の温度になると樹脂中の分子鎖の網目構造が緩み架橋反応が進行しやすくなる。このため、重合中経由するTg’〜Tgの間の温度であるTg
LED以上、より好ましくはTg以上に加熱することにより、反応中に網目構造が緩み架橋反応が進行しやすくなる。その結果、加熱せずに半導体発光素子光源を用いて硬化した場合と比較して、十分高い弾性率を有する樹脂硬化物が得られる。
なお、半導体発光素子光源で硬化した被覆樹脂のガラス転移温度Tg
LEDは、高圧水銀ランプ等で硬化した被覆樹脂のTx近傍となるため、Tg
LEDはTxで代用でき、Tx以上、より好ましくはTg以上に加熱することが好ましい。
【0044】
なお、高弾性率の樹脂ほど、重合反応による網目構造は剛直でTgは高く、加熱の効果が大きい。
本発明にかかる光ファイバの製造方法および製造装置によれば、紫外線硬化型樹脂を加熱して必要な熱を補うことで紫外線硬化型樹脂の硬化を促進し、樹脂硬化用の光源として半導体発光素子を用いた場合でも、高い弾性率の被覆樹脂を有する光ファイバを得ることができる。
ここで、所望の弾性率が得られない問題は、例えば、所望の弾性率が500MPaと高い被覆樹脂の場合に顕著であり、このような高い弾性率が求められる被覆樹脂は、一般的には光ファイバのセカンダリ層、セカンダリ層の外周に設けられる着色層、あるいは光ファイバを複数本平行に並べて一括被覆するテープ層である。
【0045】
被覆樹脂のヤング率は、例えばポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートであれば、ポリエーテル部分やポリエステル部分の鎖長(分子量)、希釈モノマーの種類や添加量により調整する。例えば、ヤング率を下げるには、ポリエーテル部分またはポリエステル部分の鎖長を長くすること、直鎖状のソフトセグメントを有するモノマーを添加することを挙げることができる。一方、ヤング率を上げる場合には、ポリエステル部分またはポリエーテル部分の鎖長を短くすること、ウレタン基濃度を上げること、芳香環等の剛直な分子構造を有するモノマーや多官能モノマーを選定することでヤング率を大きくすることができる。
【0046】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる光ファイバの製造方法について図面を参照しながら説明する。
図4、
図6に本発明の第1の実施形態にかかる光ファイバの製造装置の概略模式図を示す。
図4に示す本実施形態の光ファイバの製造装置は、複数の被覆層を同時に被覆するWet−on−Wet方式の装置であり、ここでは、プライマリ層とセカンダリ層を同時に形成する例を示す。
図4に示すように、光ファイバの製造装置は、光ファイバ母材21を溶融延伸して光ファイバ裸線23を引き出す線引き手段としてのヒータ22と、ヒータ22の下方に配置され、光ファイバ裸線23の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布する樹脂塗布手段としての樹脂塗布装置24aと、半導体発光素子を備え、該半導体発光素子から発せられる紫外線を紫外線硬化型樹脂に照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させて硬化樹脂とする光照射手段としての紫外線照射ユニット26aと、紫外線照射ユニット26aの直上に配置された紫外線硬化型樹脂の温度を測定する温度測定器31と、光ファイバ裸線23に樹脂が被覆された光ファイバ25を巻き取る巻取り装置28と、光ファイバ25を巻取り装置28にガイドするガイドローラ27と、を備える。また、樹脂塗布装置24aは、紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱手段を備えている。
【0047】
紫外線照射ユニット26aは、例えば300nmから405nmにピーク波長を有する半導体発光素子が、一または複数個配設されてなるものである。また、300nmから405nmにピーク波長を有する半導体発光素子を複数組み合わせて複数のピーク波長を有する1つの光照射手段としてもよい。また、同じピーク波長の半導体発光素子を複数個、同一光照射手段内に配置し、この光照射手段を複数配置してもよい。照射エネルギーは、10mJ〜3000mJ/cm
2が好ましく、30〜1500mJ/cm
2がより好ましい。半導体発光素子は、制御装置(図示せず)に電気的に接続され、その出力が制御される。半導体発光素子としては、例えば、半導体レーザーや発光ダイオード等を用いることができる。
【0048】
温度測定器31としては、例えば、サーモビューアを用いることができる。サーモビューアは物質の表面温度を測定するが、前述したように光ファイバの被覆は充分薄いため、表面温度を紫外線硬化型樹脂の温度として問題ない。
また、光ファイバは、製造中、例えば500m/min以上の高速で走行しているため、紫外線照射ユニットに挿通される直前の温度は、紫外線光照射ユニットでの光照射時の加熱温度と同じであるとして問題ない。
【0049】
光ファイバ母材21は、例えば石英系のガラスからなり、VAD法、OVD法、CVD法など周知の方法で製造される。光ファイバ母材21の端部は、光ファイバ母材21の周囲に配置されたヒータ22によって加熱されて溶融し、線引きされて光ファイバ裸線23が引き出される。引き出されたファイバ裸線23は、下方に位置する樹脂塗布装置24aによってプライマリ層とセカンダリ層とが一括して被覆される。このとき、樹脂被覆装置24aに備えられた加熱手段により紫外線硬化型樹脂を加熱することによって、紫外線硬化型樹脂が光ファイバ裸線23の外周に塗布されると同時に加熱される。紫外線硬化型樹脂は加熱された状態で、すぐ紫外線照射ユニット26aに入り、半導体発光素子から発せられる紫外線によって紫外線硬化型樹脂が硬化される。これにより、被覆樹脂であるプライマリ層とセカンダリ層が形成される。
【0050】
ここで、樹脂被覆装置24aの構成とその被覆方法について具体的に説明する。
図5は、樹脂被覆装置24aを示す概略構成図である。
図5に示すように、この樹脂被覆装置24aは、ダイス部52と、ダイス部52を下方から保持するダイスホルダ53と、ダイス部52に樹脂を供給する樹脂供給器54、55と、制御部51と、を備える。
【0051】
ダイス部52は光ファイバ裸線23を導入する図示しない光ファイバ導入部を備え、ダイスホルダ53は、光ファイバ導入部と同軸上に連結した円孔である図示しない開口部と、加熱手段としてのヒータ53bを備える。樹脂供給器54、55は、プライマリ層用の紫外線硬化樹脂である樹脂R1、セカンダリ層用の紫外線硬化樹脂である樹脂R2をそれぞれ貯留する樹脂タンク54a、55aと、樹脂タンク54a、55aに貯留された樹脂R1、R2をそれぞれ送り出すポンプ54b、55bと、ポンプ54b、55bが送り出す樹脂R1、R2をダイス部52に供給する供給管54c、55cとを備える。制御部51は、温度測定器31で測定される紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、これにもとづいてダイスホルダ53のヒータ53bを制御する。
【0052】
樹脂被覆装置24aは、以下のように光ファイバ裸線23にプライマリ層を形成する樹脂R1、とセカンダリ層を形成する樹脂R2を塗布する。はじめに、樹脂供給器54、55のポンプ54b、55bが樹脂タンク54a、55aに貯留された樹脂R1、R2を送り出し、供給管54c、55cを介してダイス部52に供給する。
一方で、光ファイバ裸線23は、ダイス部52の光ファイバ導入部から導入され、ダイスホルダ53の開口部から送り出される。その結果、光ファイバ裸線23の外周には、樹脂R1、R2が被覆される。
【0053】
ここで、制御部51は、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、ダイスホルダ53のヒータ53bの出力を制御し、光ファイバ裸線23に被覆されるセカンダリ層用の樹脂R2が、例えば前述した温度Tx以上になるようにする。その後、制御部51は、紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度になるようにヒータ53bを制御する。
【0054】
本実施の形態においては、上記のように制御部51がヒータ53bを制御することによって、樹脂R2を所望の温度に加熱できる。その結果、樹脂硬化用光源として半導体発光素子を用いた場合であっても紫外線硬化型樹脂を良好に硬化させて高い弾性率の被覆樹脂を有する光ファイバを得ることができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、これにもとづいてダイスホルダ53のヒータ53bを制御する方法について説明したが、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度測定を行わず、過去の製造データを記憶しておき、これにもとづいてヒータ53bの温度を制御する方法や、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度を下回らないようにヒータ53bを一定の温度に保つ方法を用いてもよい。また、樹脂タンク54a、55aを加熱し、ダイス部52に供給する樹脂R1、R2を予め所望の温度に近づけておくことがさらに好ましい。
【0056】
次に、本発明の第1の実施形態にかかる別の光ファイバの製造方法について
図6を参照しながら説明する。
図6に示す本実施形態の製造装置は、被覆層を1層ずつ被覆するWet−on−Dry方式の装置であり、ここではプライマリ層とセカンダリ層の樹脂を別々に被覆する例を示す。
図4に示す第1の実施形態の製造装置と異なる要素について説明し、同要素には同符号を付し説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態の製造装置は、プライマリ層とセカンダリ層の樹脂塗布装置、紫外線照射ユニットをそれぞれ別々に設けていること以外は、第1の実施形態と同様であり、本実施形態の製造装置は、プライマリ層用樹脂塗布装置24bと、プライマリ層用紫外線照射ユニット26bと、セカンダリ層用樹脂塗布装置24cと、セカンダリ層用紫外線照射ユニット26cとを備える。セカンダリ層用紫外線照射ユニット26cは、一または複数の半導体発光素子を備え、該半導体発光素子から発せられる紫外線を紫外線硬化型樹脂に照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させるものである。紫外線硬化型樹脂の温度を測定する温度測定器31は、セカンダリ層用紫外線照射ユニット26cの直上に配置される。
【0057】
以下、本実施の形態の光ファイバの製造方法を具体的に説明する。
具体的には、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材21の端部は、光ファイバ母材21の周囲に配置されたヒータ22によって加熱されて溶融し、線引きされて光ファイバ裸線23が引き出される。引き出されたファイバ裸線23は、プライマリ層用樹脂塗布装置24bによってプライマリ層が被覆され、プライマリ層用紫外線照射ユニット26bによって紫外線が照射される。続いて、セカンダリ層用樹脂塗布装置24cによりセカンダリ層の紫外線硬化型樹脂が被覆され、セカンダリ層用紫外線照射ユニット26cによって、セカンダリ層の樹脂が硬化される。この時、セカンダリ層用樹脂塗布装置24cを加熱することによって、紫外線硬化型樹脂がプライマリ層が被覆された光ファイバ25の外周に塗布されると同時に加熱される。セカンダリ層が被覆された光ファイバ25は加熱された状態で、すぐ紫外線照射ユニット26cに挿通され、紫外線照射ユニット26cの半導体発光素子から発せられる紫外線によって硬化型樹脂が硬化される。これにより、セカンダリ層が被覆される。
【0058】
ここで、セカンダリ層用樹脂塗布装置24cの構成とその被覆方法について具体的に説明する。
図7は、
図6に示すセカンダリ層用樹脂塗布装置24cを示す概略構成図である。
図7に示すように、このセカンダリ層用樹脂塗布装置24cは、ダイス部52と、ダイス部52を下方から保持するダイスホルダ53と、ダイス部52に樹脂を供給する樹脂供給器55と、制御部51と、を備える。
【0059】
樹脂塗布装置24cは
図5の樹脂供給器24aと比較して、樹脂供給器55と樹脂供給管55cをそれぞれ1つだけ備える点が異なり、それ以外の構成は
図5の樹脂供給器24aと同じである。
【0060】
セカンダリ層用樹脂塗布装置24cは、以下のようにプライマリ層が被覆された光ファイバ25に樹脂R2を塗布する。はじめに、
図7に示すように、樹脂供給器55のポンプ55bが樹脂タンク55aに貯留された樹脂R2を送り出し、供給管55cを介してダイス部52に供給する。
一方で、プライマリ層が被覆された光ファイバ25は、ダイス部52の光ファイバ導入部から導入され、ダイスホルダ53の開口部から送り出される。その結果、プライマリ層が被覆された光ファイバ25の外周には、樹脂R2が被覆される。
【0061】
ここで、制御部51は、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、ダイスホルダ53のヒータ53bの出力を制御し、プライマリ層が被覆された光ファイバ25に被覆される樹脂R2が例えば前述した温度Tx以上になるようにする。その後、制御部51は、紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度になるようにヒータ53bを制御する。
【0062】
本実施の形態においては、制御部51が上記のようにヒータ53bを制御することによって、プライマリ層が被覆された光ファイバ25に樹脂R2を所望の温度で被覆できる。その結果、樹脂硬化用光源として半導体発光素子を用いた場合であっても紫外線硬化型樹脂を良好に硬化させて高い弾性率の被覆樹脂を有する光ファイバを得ることができる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、これにもとづいてダイスホルダ53のヒータ53bを制御する方法について記載したが、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度測定を行わず、過去の製造データを記憶しておき、これにもとづいてヒータ53bの温度を制御する方法や、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度を下回らないようにヒータ53bを一定の温度に保つ方法を用いてもよい。また、樹脂タンク55aを加熱し、ダイス部52に供給する樹脂R2を予め所望の温度に近づけておくことがさらに好ましい。
【0064】
第1の実施形態は、樹脂塗布装置において紫外線硬化型樹脂を塗布すると同時に加熱する態様であり、ヒータ53bとして、テープヒータやリボンヒータ等を用いることができ、簡易に加熱を行うことができるという利点を有する。また、樹脂塗布装置からの樹脂溢れや泡混入の抑制のため、樹脂塗布装置を温度調整することがあり、このような場合、本実施の形態は大きな設備を改造することなく、温度設定を変更するだけで実現できる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる光ファイバの製造方法について図面を参照して説明する。第1の実施形態は、樹脂塗布装置のダイスを加熱することによって紫外線硬化型樹脂を加熱する方法を用いたが、本実施形態は、紫外線照射ユニットにおいて紫外線硬化型樹脂を加熱する方法である。
図8に加熱手段を備えた紫外線照射ユニットの一実施形態の概略断面図を示す。
本実施形態の紫外線照射ユニットは、
図8に示すように、紫外線照射ユニット本体61と、吸気装置62と、排気装置63と、紫外線を透過する筒状体65とを備える。吸気装置62および排気装置63には、紫外線硬化型樹脂が被覆された光ファイバ25が挿通する挿通口64が設けられている。紫外線照射ユニット本体61内部には、半導体発光素子66と、集光光学系67と、筒状体の両側あるいは周囲に配置されたミラー68とを備え、半導体発光素子66からの紫外線は集光光学系67によって集光され、散乱した紫外光はミラー68によって反射され、光ファイバ25に効率良く照射される。
また、筒状体65の上端部および下端部には、ヒータ69が備えられている。
さらに、本実施形態にかかる光ファイバの製造装置は、制御部70と、筒状体65内部の温度を測定する温度測定器31を備え、制御部70は、温度測定器31で測定される温度の情報を受け、これにもとづいてヒータ69を制御する。
【0066】
ここで、制御部70は、温度測定器31の情報を受け、ヒータ69の出力を制御し、筒状体65内部を例えば前述した温度Tx以上になるようにする。その後、制御部70は、筒状体65内部が所望の温度になるようにヒータ69を制御する。これにより、紫外線照射とともに紫外線硬化型樹脂を加熱する。
なお、前述したように光ファイバの被覆は充分薄いため、筒状体65内部の温度を紫外線硬化型樹脂の温度として問題ない。
【0067】
なお、本実施の形態においては、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、これにもとづいてヒータ69を制御する方法について記載したが、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度測定を行わず、過去の製造データを記憶しておき、これにもとづいてヒータ69の温度を制御する方法や、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度を下回らないようにヒータ69を一定の温度に保つ方法を用いてもよい。
【0068】
本実施形態は、Wet−on−Wet方式、Wet−on−Dry方式のいずれにも適用可能である。Wet−on−Dry方式に適用する場合は、ヤング率500MPa以上の被覆を形成する、例えばセカンダリ層の光照射工程の紫外線照射ユニットに適用すると効果的である。
【0069】
本実施形態の製造方法は、紫外線硬化型樹脂の加熱工程と光照射工程とが同時に設けられた態様であり、紫外線硬化型樹脂の加熱と同時に紫外線硬化型樹脂に紫外線照射が行われる。
本実施形態では、ヒータ69としてテープヒータやリボンヒータ等により簡易に加熱を行うことができるという利点を有する。また、紫外線照射ユニット内部に加熱手段を設けることにより、加熱された樹脂の温度を低下させることなく、加熱と同時に照射を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかる光ファイバの製造方法について図面を参照して説明する。
図9、
図10に本発明の第3の実施形態にかかる光ファイバの製造装置の概略構成図を示す。本実施形態は、紫外線照射ユニットの上部に紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱手段を設け、紫外線硬化型樹脂を加熱する方法である。
図9、
図10に加熱手段を備えた紫外線照射ユニットの一実施形態の概略構成図を示す。
図9は、Wet−on−Wet方式、
図10は、Wet−on−Dry方式に適用した場合を示し、それぞれ第1の実施形態、第2の実施形態と異なる要素について説明し、同要素には同符号を付し説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の光ファイバの製造装置は、紫外線硬化型樹脂を塗布する樹脂塗布手段としての樹脂塗布装置44aと光照射手段としての紫外線照射ユニット46aとの間に、被覆された紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱手段としての加熱ユニット29を備える。
さらに、本実施形態にかかる光ファイバの製造装置は、制御部(図示せず)と、紫外線照射ユニット46aの直上に設置された塗布された紫外線硬化型樹脂の温度を測定する温度測定器31を備え、制御部は、温度測定器31で測定される温度の情報を受け、これにもとづいて加熱ユニット29を制御する。
【0071】
ここで、制御部は、温度測定器31の情報を受け、加熱ユニット29の出力を制御し、紫外線硬化型樹脂の温度を、例えば前述した温度Tx以上になるようにする。その後、制御部は、紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度になるように加熱ユニット29を制御する。これにより、紫外線硬化型樹脂を加熱する。
【0072】
なお、本実施の形態においては、温度測定器31から紫外線硬化型樹脂の温度の情報を受け、これにもとづいて加熱ユニット29を制御する方法について記載したが、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度測定を行わず、過去の製造データを記憶しておき、これにもとづいて加熱ユニット29の温度を制御する方法や、製造中は紫外線硬化型樹脂の温度が所望の温度を下回らないように加熱ユニット29を一定の温度に保つ方法を用いてもよい。
【0073】
本実施形態は、Wet−on−Wet方式、Wet−on−Dry方式のいずれにも適用可能である。
図10に示すWet−on−Dry方式の光ファイバの製造装置は、プライマリ層用樹脂塗布装置44bと、プライマリ層用紫外線照射ユニット46bと、セカンダリ層用樹脂塗布装置44cと、セカンダリ層用紫外線照射ユニット46cとを備える。Wet−on−Dry方式に適用する場合は、ヤング率500MPa以上の被覆を形成する、例えばセカンダリ層の光照射工程の紫外線照射ユニット46cの上部に加熱ユニット29を設けると効果的である。
【0074】
また、
図11に示すように、半導体発光素子を備える紫外線照射ユニットを複数設け、紫外線照射ユニット46aおよび46hの間に配置された加熱ユニット29を設けてもよい。さらに
図12に示すように、紫外線照射ユニット46aおよび46iの上に加熱ユニット29を設けてもよい。
【0075】
加熱ユニット29は、オーブン、セラミックヒータ、赤外線照射ユニット、電熱線ヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ等公知の加熱手段を用いることが可能であり、樹脂を加熱することができれば種類は問わない。
【0076】
本実施形態のように、紫外線照射ユニット46aの直上に加熱ユニット29を設けることによって、光照射ユニットに入る直前に紫外線硬化型樹脂を加熱し、紫外線硬化型樹脂の温度を低下させることなく紫外線照射を行うことができる。
【0077】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態にかかる光ファイバの製造方法について図面を参照して説明する。
図13、
図14に本発明の第4の実施形態にかかる光ファイバの製造装置の概略構成図を示す。本実施形態は、紫外線照射ユニットの上部に紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱手段として光源として高圧水銀ランプまたはメタルハライドランプを用いた紫外線照射ユニット46dを設け、紫外線照射ユニット46dを用いて被覆樹脂を硬化させつつ紫外線硬化型樹脂を加熱する方法である。
図13は、Wet−on−Wet方式、
図14は、Wet−on−Dry方式に適用した場合を示し、それぞれ第1の実施形態、第2の実施形態と異なる要素について説明し、同要素には同符号を付し説明を省略する。
【0078】
図13に示すように、本実施形態の光ファイバの製造装置は、紫外線硬化型樹脂を塗布する樹脂塗布手段としての樹脂塗布装置44aと紫外線照射ユニット46eとの間に、被覆された紫外線硬化型樹脂を加熱する加熱手段としての紫外線照射ユニット46dと、温度測定器31とを備える。
本実施形態の加熱手段として、光源に高圧水銀ランプまたはメタルハライドランプを用いた紫外線照射ユニット46dを用いる。加熱された紫外線硬化型樹脂の温度は、温度測定器31によって監視されている。
紫外線照射ユニット46dは、加熱手段としての役割とともに紫外線照射手段としての役割も有している。1灯目を高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射ユニットにすることで、その輻射熱により紫外線硬化樹脂を加熱することができ、加熱された状態で紫外線照射ユニット46eによって紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。このように従来の高圧水銀ランプ等で紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、ガラス転移温度(Tg)より極めて高い130℃以上の輻射熱が紫外線硬化型樹脂に与えられる。
本実施形態によれば、従来の設備である高圧水銀ランプを加熱手段として用いることができるので、装置コスト上有利で、設備の大幅な改造が不要であるという利点がある。
【0079】
本実施形態は、Wet−on−Wet方式、Wet−on−Dry方式のいずれにも適用可能である。Wet−on−Dry方式に適用する場合は、
図14に示すようにヤング率500MPa以上の被覆を形成する例えばセカンダリ層の光照射工程の紫外線照射ユニット46gの上部に加熱ユニットとしての紫外線照射ユニット46fを設けると効果的である。
【0080】
被覆を形成する例えばセカンダリ層の光照射工程の紫外線照射ユニットの光源として250nm以下の短波長帯の光をゲルマニウムが添加された光ファイバに照射すると、石英ガラス中に欠陥が生じることが知られており、この欠陥の生成により光ファイバの損失が増加する場合がある。また、400nm以上の長波長の光を効率的に吸収するラジカル系光重合開始剤は少なく、可視光領域に近いためこの波長で反応する光重合開始剤を使用した紫外線硬化樹脂は室内光の保存安定性が低下することがある。したがって半導体発光素子から発せられる光の波長は、300nm以上が好ましく、300nm以上405nm以下がより好ましく、さらには365nm以上405nm以下であることが好ましい。
また、第4の実施形態のように加熱ユニットとして光源として高圧水銀ランプまたはメタルハライドランプを用いた紫外線照射ユニットを用いる場合は、紫外線照射ユニット内に300nm以下の波長をカットする短波長カットフィルター(ロングパスフィルター)を設置することがさらに好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例に基いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
[フィルムを用いた試験例]
(紫外線硬化型樹脂)
ウレタンアクリレートの分子量や置換基を調整してガラス転移温度(Tg)を80℃としたものを用いた。なお、このTgは以下に示す無電極UVランプ(Dバルブ)を有するコンベヤ型紫外線照射装置を用いて作成したフィルムのTgと一致する。この樹脂の温度Txを上記方法により求めたところ、45℃であった。光重合開始剤としてIrgacure184を用いた。
【0083】
(硬化フィルム作製方法)
石英ガラスに紫外線硬化樹脂を厚さ50μmになるようにスピンコートした。作製したサンプルをパージボックスに入れ窒素雰囲気にし、無電極UVランプ(Dバルブ)または365±10nmにピーク波長を有するライン型LEDユニットを装着したコンベヤ型紫外線照射装置にて、積算照射エネルギー1000mJ/cm
2で紫外線(365nm)照射し、樹脂を硬化した。
加熱を行わずに(25℃)LEDを照射させて作製したフィルムのTg
LEDは45℃であった。
【0084】
(加熱方法)
加熱しながらUV照射する場合は、所定温度に加熱したラバーヒータ上にサンプルを設置し、これパージボックスに入れ窒素雰囲気にし、コンベヤ型紫外線照射装置にて所定の積算光量になるように照度、速度を調整し、紫外線(365nm)照射し、樹脂を硬化した。加熱温度は40℃、60℃、80℃とした。
【0085】
(弾性率の測定方法)
得られたフィルムをガラス基材より剥がし、6mm幅の短冊状に切断して短冊状にした。この試験片を23℃下、引張試験機(商品名「テンシロン万能試験機TRC」、株式会社エーアンドデイ製)を用いて引張速度1.0mm/min、標線間距離25mmの条件で引張り試験を行い、2.5%歪時の引張り強さからヤング率を算出した。
【0086】
(試験結果)
試験結果は
図15に示す通り、加熱なし(室温、25℃)でLEDランプで硬化した被覆樹脂のフィルム弾性率は約600MPaであるが、この値は無電極UVランプで硬化したフィルムの弾性率の約半分程度であり、LEDランプのみによる硬化では無電極UVランプと同じ積算光量の光を照射しても充分に硬化が進まない。
一方で、被覆樹脂を加熱しながらUV照射した場合、樹脂のTxより高い温度60℃及び80℃に加熱しながらUV硬化したフィルムの弾性率は無電極UVランプで硬化したフィルムと同等の弾性率を示し、硬化が充分に進行していることが確認された。
樹脂のTxより低い温度40℃に加熱した場合は、弾性率は室温で硬化したフィルムよりやや向上するが、無電極UVランプほどの硬化性は得られない。
よって、この実験からも樹脂の加熱温度は、温度Tx以上であることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度Tg以上である。
【0087】
[光ファイバを用いた実施例]
第2の実施形態による、プライマリ層とセカンダリ層とを別々に被覆する製造装置(Wet−on−Dry方式)を用い、
図8に示す第2の実施形態の製造方法で光ファイバを製造した。その詳細は後記の実施例1以下に示した。
具体的には、セカンダリ層を硬化する紫外線照射ユニット内の筒状体の上端部および下端部に、ヒータを備えた装置を用い、ヒータ温度を変更して光ファイバを製造し、セカンダリ層のヤング率を測定した。なお、セカンダリ用の紫外線硬化型樹脂としてのTgが異なる2種類の紫外線硬化型樹脂AまたはBを用いた。得られた光ファイバは、ガラス光ファイバ裸線の外周に、プライマリ層(厚さ 30μm)およびセカンダリ層(厚さ30μm)の2層からなる紫外線硬化型樹脂を被覆し硬化させたものである。
【0088】
(プライマリ層用紫外線硬化型樹脂)
オリゴマーとしてポリエーテル系ウレタンアクリレートを用い、光重合開始剤、光増感剤等を添加したものを用いて、ヤング率2.0MPaおよびガラス転移温度(Tg)−30℃の被覆樹脂となるように調製した。
【0089】
(セカンダリ層用紫外線硬化型樹脂)
紫外線硬化型樹脂A:ウレタンアクリレートの分子量や置換基を調整してガラス転移温度(Tg)を82℃としたものを用いた。この樹脂の温度Tx、Tg
LEDを上記方法によりそれぞれ求めたところ、42℃、46℃であった。光重合開始剤としてIrgacure184およびLucirinTPOを用いた。
紫外線硬化型樹脂B:ウレタンアクリレートの分子量や置換基を調整してガラス転移温度(Tg)を98℃としたものを用いた。この樹脂の温度Tx、Tg
LEDを上記方法によりそれぞれ求めたところ、54℃、51℃であった。光重合開始剤としてIrgacure184およびIrgacureOXE02を用いた。
紫外線硬化型樹脂C:ウレタンアクリレートの分子量や置換基を調整してガラス転移温度(Tg)を80℃としたものを用いた。この樹脂の温度Tx、Tg
LEDを上記方法によりそれぞれ求めたところ、45℃、45℃であった。光重合開始剤としてIrgacure184を用いた。
【0090】
(光照射ユニット)
1つの光照射ユニット本体61に365±10nmにピーク波長を有する半導体発光素子66(商品名「6SMG」日亜化学社製、光出力2W)を20個、光ファイバの走行方向に沿って配置し、積算照射エネルギー600mJ/cm
2で、幅30mm×長さ200mmの領域が光照射領域となる紫外線照射ユニットを用いた。
【0091】
(セカンダリ層のヤング率の測定方法)
図1に示す光ファイバ10の被覆層14をカッターナイフ等で光ファイバ裸線11とプライマリ層12の界面からそぎ取り、この試験片を23℃下、引張試験機(商品名「テンシロン万能試験機TRC」、株式会社エーアンドデイ製)を用いて引張速度1.0mm/min、標線間距離25mmの条件で引張り試験を行い、2.5%歪時の引張り強さからヤング率を算出した。尚、試験片の断面積にはマイクロスコープを用いた実測値を用いた。プライマリ層12とセカンダリ層13とからなる被覆層14を有する本実施例においては、プライマリ層12のヤング率は、セカンダリ層13のヤング率に比べて十分小さいため、被覆層14を実質セカンダリ層13のヤング率としても問題ない。
被覆樹脂のガラス転移温度(Tg)は上記測定方法にて測定した。
【0092】
(実施例1)
紫外線硬化型樹脂Aを用いて、紫外線照射ユニット中の紫外線透過筒状体の温度をリボンヒータにより85℃に調整した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は70℃であり、温度Txの42℃以上であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は1100MPaであった。
【0093】
(実施例2)
紫外線硬化型樹脂Bを用いて、紫外線照射ユニット中の紫外線透過筒状体の温度をリボンヒータにより90℃に調整した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は76℃であり、温度Txの54℃以上であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は、実施例1と同等の1150MPaであった。
【0094】
(実施例3)
紫外線硬化型樹脂Bを用いて、紫外線照射ユニット中の紫外線透過筒状体の温度をリボンヒータにより120℃に調整した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は108℃であり、ガラス転移温度Tgの98℃以上であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は、実施例2より高い1210MPaであった。
【0095】
(実施例4)
紫外線硬化型樹脂Cを用いて、樹脂塗布装置と紫外線照射ユニットの間に赤外加熱ユニットを設置し、赤外線により紫外線硬化樹脂を加熱した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は85℃であり、ガラス転移温度Tgの80℃以上であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は1000MPaであった。
【0096】
(比較例1)
紫外線硬化型樹脂Aを用いて、硬化光源に無電極ランプ(Dバルブ)を使用して、照射エネルギーが1000mJ/cm
2になるように線速を調整した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は134℃であり、温度Txの42℃以上であった。得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は1200MPaであった。
【0097】
(比較例2)
実施例1において、加熱手段であるリボンヒータを設けず、発光ダイオードの照射エネルギーが1000mJ/cm
2になるように線速を調整して、実施例1と同様に作製した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は32℃であり、温度Txの42℃未満であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は730MPaであり、加熱手段を用いた実施例1の場合と比較して低い値となった。
【0098】
(比較例3)
紫外線硬化型樹脂Bを用い、実施例2の光照射ユニットの光源である発光ダイオードを水銀キセノンランプ(Hg−Xe)に変更した以外は同条件で光ファイバを作製した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は140℃であり、温度Txの54℃以上であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は1310MPaであった。
【0099】
(比較例4)
紫外線硬化型樹脂Bを用い、実施例2における紫外線照射ユニットを発光ダイオードに変更し、照射エネルギーが1000mJ/cm
2になるように線速を調整した。比較例4では加熱手段は用いなかった。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は30℃であり、温度Txの54℃未満であった。その結果、得られた光ファイバは、セカンダリ層のヤング率は680MPaと、加熱手段を用いた実施例2のヤング率よりも低くなった。
【0100】
(比較例5)
実施例4において、赤外加熱ユニットを設けず、発光ダイオードの照射エネルギーが600mJ/cm
2になるように線速を調整して、実施例4と同様に作製した。紫外線照射ユニットから出てきたファイバ被覆樹脂の表面温度は30℃であり、温度Txの45℃未満であった。その結果、得られた光ファイバのセカンダリ層のヤング率は410MPaであり、加熱手段を用いた実施例4の場合と比較して低い値となった。
【0101】
得られた結果をまとめて、下記表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、従来の紫外線光源として無電極ランプを用いた比較例1では、セカンダリ層のヤング率は1200MPaであり、水銀キセノンランプを用いた比較例3は1310MPaであり、セカンダリ層として高い弾性率が得られている。
そして、紫外線光源を発光ダイオード(LED)にし、かつ加熱手段を用いていない比較例2および比較例4では、セカンダリ層のヤング率が730MPaおよび680MPaであり、無電極ランプを用いた場合(比較例1)、水銀キセノンランプを用いた場合(比較例3)と比較して、それぞれ、61%、52%程度に低下している。
【0104】
一方、紫外線硬化型樹脂Aを用い、発光ダイオードを紫外線光源に用い、さらに加熱手段を設け、加熱温度をTx以上とした実施例1では1100MPaとなり、メタルハライドランプを用いた場合(比較例1)とほぼ同等のヤング率が得られている。また、紫外線硬化型樹脂Bを用い、加熱温度をTx以上とした実施例2では1150MPaであり、水銀キセノンランプを用いた場合(比較例3)の約90%のヤング率となった。また、加熱温度をガラス転移温度(Tg)以上にした実施例3では1210MPaとなり、さらに水銀キセノンランプを用いた場合(比較例3)とほぼ同等のヤング率となった。
【0105】
なお、樹脂硬化用の光源として発光ダイオードを用いた場合、無電極ランプや水銀キセノンランプを用いた場合(比較例1、3)と比較して、大幅に消費電力の低減を図ることができ、さらには光源を長寿命とすることができた。
【0106】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0107】
本願は、2014年6月27日に日本国で特許出願された特願2014−133321に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。