【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下は本発明の一例であり、実施にあたっては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態を採用することができる。
【0046】
〔銅箔の製箔(実施例1〜22および比較例1〜10、14〜30で共通)〕
次に示す組成の電解液を調製し、下記の条件で、アノードには貴金属酸化物被覆チタン電極、カソードにはチタン製回転ドラムを用いて、電流密度=50〜100A/dm
2で、厚さ10μmの電解銅箔を製造した。
銅: 70〜130g/L
硫酸: 80〜140g/L
添加剤: 3−メルカプト1−プロパンスルホン酸ナトリウム=1〜10ppm
ヒドロキシエチルセルロース=1〜100ppm
低分子量膠(分子量3,000)=1〜50ppm
塩化物イオン濃度=10〜50ppm
温度: 50〜60℃
【0047】
〔防錆処理・加熱処理〕
〔実施例1〜5〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度600〜1800ppmの窒素含有防錆化合物と濃度55〜350ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
窒素含有防錆化合物と炭素数4以上のケトン類の種類と濃度、および炭素数4以上のケトン類の量の窒素含有防錆化合物の量に対する比は、表に示した通りである(以下同様)。
【0048】
〔実施例6〜8〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度2200〜3000ppmの窒素含有防錆化合物と濃度200〜450ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0049】
〔実施例9〜11〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度150〜400ppmの窒素含有防錆化合物と濃度12〜75ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0050】
〔実施例12〜16〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度600〜1800ppmの窒素含有防錆化合物と濃度46〜350ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0051】
〔実施例17〜19〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度2400〜2800ppmの窒素含有防錆化合物と濃度35〜200ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0052】
〔実施例20〜22〕
電解製箔された銅箔を、ただちに濃度180〜450ppmの窒素含有防錆化合物と濃度3〜33ppmの炭素数4以上のケトン類との混合水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0053】
〔比較例1〕
電解製箔された銅箔を、防錆剤等による処理を行わず、直ちに大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0054】
〔比較例2〕
製箔直後の電解銅箔を、濃度を0.1wt%に調製した酸化クロム〔III〕水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬させてドライヤーにて乾燥させることによりクロメート層を設け、直ちに大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0055】
〔比較例3〜10〕
比較例3〜9では、電解製箔された銅箔を、ただちに濃度100〜2200ppmの窒素含有防錆化合物のみの水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
比較例10では、窒素含有防錆化合物に加え、炭素数4以上を満たさないケトン化合物としてアセトンを100ppm混合した水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行い、その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0056】
〔比較例11〜13〕
熱間圧延後の純銅(タフピッチ銅)板に、中間焼鈍を反復して施し、途中、溶剤脱脂と硫酸水溶液による酸洗・研磨を行い、更に充分な水洗を行った後、最終仕上げ圧延により10μmの厚みの圧延銅箔とした。
その後、トルエンなどを含む溶剤で洗浄する脱脂処理を行って乾燥させた後、ただちに濃度750〜2000ppmの窒素含有防錆化合物と濃度40〜140ppmの炭素数4以上のケトン類とを混合した水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬させ、ドライヤーで乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0057】
〔比較例14〜16〕
比較例14〜16では、特許文献1(特許第5081481号公報)の実施例4、9、12に記載された表面処理方法に基づき、カルボキシベンゾトリアゾール(以下CBT)をを0.005〜0.080wt%を、イソプロピルアルコール(以下IPA)、ノルマルパラフィン(以下NP、JX日鉱日石エネルギー株式会社製NSクリーン100R(商品名))、もしくはそれらの混合溶媒で濃度を調整した混合液、および、CBTに加えてモノエチルアミン(以下EA)を0.0040wt%添加して同様に濃度を調整した混合液を表面処理に用いた。
表面処理は、製箔した電解銅箔をただちに上記の混合液(液温35℃)に5秒間浸漬させた後、ドライヤーで乾燥させることにより行い、その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0058】
〔比較例17〜19〕
比較例17〜19では、特許文献2(特許第5512585号公報)の実施例11、10、15に記載された表面処理方法に基づき、CBT(1wt%)をジメチルアセトアミド(以下DMAC、5wt%)に溶解した後にイソプロピルアルコール(以下IPA、15wt%)を添加し、ヘキサンと混合して濃度を調整した混合液を用いて表面処理した。
このうち比較例17は、製箔した電解銅箔をただちに上記の混合液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより、直接処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
比較例18は、製箔直後の電解銅箔を、イミダゾールシラン(JX日鉱日石金属株式会社製IS-1000(商品名))3×10
−4 mol/L水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬させてドライヤーにて乾燥させることにより、中間層としてシラン層を設けた上で、さらに比較例17と同様の処理、加熱を行った。
比較例19は、製箔直後の電解銅箔を、濃度を0.1wt%に調製した酸化クロム〔III〕水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬させてドライヤーにて乾燥させることにより、中間層としてクロメート層を設けた上で、さらに比較例17と同様の処理、加熱を行った。
【0059】
〔比較例20〜22〕
比較例20〜22では、特許文献3(特許第5417436号公報)の実施例1−9〜1−11に記載された表面処理方法基づき、ベンゾトリアゾール(BTA)1×10
−4〜6×10
−4 mol/Lとシランカップリング剤(イミダゾールシラン、JX日鉱日石金属株式会社製IS-1000(商品名))3×10
−4 mol/Lとを混合した水溶液を調製し、電解銅箔を表面処理した。
製箔した電解銅箔をただちに上記の水溶液(液温35℃)に5秒間浸漬し、ドライヤーで乾燥させることにより、直接処理を行い、その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0060】
〔比較例23〜24〕
比較例23〜24では、特許文献4(特開平6−279463号公報)の実施例1にある手法で合成した2種類の反応生成物(以下SBTA1=分子構造は式(1)、SBTA2=分子構造は式(2))を、当該特許文献の[0027]段落の内容に基づいて6wt%の濃度になるようにそれぞれメタノールに溶解させた溶液(液温35℃)を調製し、これに製箔した電解銅箔を5秒間浸漬させ、ドライヤーによって乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0061】
〔比較例25〜27〕
比較例25〜27では、特許文献5(特開平7−309846号公報)の実施例1、2、3にある手法で合成した3種類の反応生成物(以下FSBTA1=式(3)、FSBTA2=式(4)、FSBTA3=式(5)。いずれも、1位のN置換体、2位のN置換体の比率2:1の混合物。)の原液(液温35℃)に、製箔した電解銅箔を5秒間浸漬させ、ドライヤーによって乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0062】
〔比較例28〜30〕
比較例28〜30では、特許文献6(特開平6−256358号公報)の実施例1、2、3にある手法で合成した3種類の反応生成物(以下FBIA1=式(6)、FBIA2=式(7)、FBIA3=式(8))を、当該特許文献6の[0026]段落の内容に基づいて6wt%の濃度になるようにそれぞれメタノールに溶解させた溶液(液温35℃)を調製し、これに製箔した電解銅箔を5秒間浸漬させ、ドライヤーによって乾燥させることにより表面処理を行った。その後、大気オーブン(ヤマト科学株式会社製DF−411(商品名))を用いて180℃の温度で1時間加熱を行った。
【0063】
【化1】
【0064】
【化2】
【0065】
〔第一プラトー領域における最大電位の測定〕
銅箔を作用電極(WE、測定部面積1cm
2)、白金電極を対極(CE)、塩化カロメル電極(SCE)を基準電極(RE)として、塩化カリウム(KCl)0.1N水溶液を電解液とする3電極セルを構成し、窒素ガスで十分に脱気したあと、北斗電工製電気化学測定装置HZ−3000(商品名)を用いて、カソード定電流800μAを入力し、電位信号の応答を観測した。横軸を測定時間、縦軸を電位値としたときに、最初に電位が時間に対してほぼ一定となる領域(第一プラトー電位領域)を検知し(
図1参照)、この領域の中での最大の電位値を測定した。
【0066】
〔カール値の測定〕
図4に示したように、各実施例、各比較例で作製した銅箔を縦10cm×横5cmの長方形に切り、銅箔のマット面(M面)側を表にして、左端が幅2cmはみ出すように、コクヨ製TZ−1343(商品名)のステンレス直定規(C型 JIS1級 30cm)を重石として乗せた。その後、銅箔の縦方向の中央部分(
図4中の線1の位置)と、その上下2cmの部分(
図4中の線2と線3の位置)の計3点について、銅箔を置いた面からの端部の立ち上がりの高さ[mm]を測定し、3点の平均値を算出することにより、カール値を測定した。
得られたカールの度合いについて、次の基準で評価した。すなわち、カール値が0.5mm未満のものを優として「A」、0.5mm以上1.5mm未満となるものを良として「B」、1.5mm以上3.0mm未満となるものを可として「C」、3.0mm以上となるものを不可として「D」と、それぞれ表中に示した。
【0067】
〔活物質層の形成と密着性の評価〕
各実施例、各比較例で作製した銅箔(表面処理、およびドライヤーによる乾燥は行うが、大気オーブンによる乾燥は行わないもの)の両面に下記炭素材料からなる活物質スラリーペーストを用い、銅箔と活物質の密着性を下記により評価した。その結果を表1、2に示す。炭素材料としては塊状人造黒鉛を用い、該塊状人造黒鉛をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に8%PVDF(ポリフッ化ビニリデン)粉を溶かした溶液と混合してペースト状とし、このペーストを銅箔表面に約50μmの厚さに塗布して、180℃で1時間乾燥後圧延によるプレスを行い、さらに真空乾燥した。
この活物質塗布面に両面テープを貼り付け、支持板にも両面テープを貼り付け、両面テープ同士を張り合わせた。そして、JIS C 6471に準じる方法で引き剥がし角度90度にて剥離強度を測定した。以下の表には、電解銅箔のS面と支持板の間の剥離強度、電解銅箔のM面と支持板の間の剥離強度を、それぞれ測定した結果を示した。支持板としては、引き剥がし試験に供しても折れないような硬さを有するポリスチレン板を用いた。
このように形成した活物質層の密着性について、活物質剥離試験の結果を以下の基準で評価した。剥離強度が4000gf/cm以上のものを優として「A」、3000gf/cm以上4000gf/cm未満となるものを良として「B」、2000gf/cm以上3000gf/cm未満となるものを可として「C」、2000gf/cm未満となるものを不可として「D」と、それぞれ表中に示した。
【0068】
[原子含有量の測定]
銅箔表面付近の原子含有量を、アルバック・ファイ株式会社製XPS測定装置5600MC(商品名)を使用し下記条件で測定した。
到達真空度1×10
−10Torr(Arガス導入時1×10
−8Torr)、
X線:X線種単色化Al−Kα線、
出力300W、
検出面積800μmφ、
イオン線:イオン種Ar
+、
加速電圧3kV、
掃引面積3×3mm
2、
試料入射角45°(試料と検出器とのなす角)、
スパッタリングレート2.3nm/分(SiO
2換算)
測定開始後5.2秒後(深さ0.2nm)における原子C、N、O、Cuの含有量の和を分母、原子Nの含有量を分子として、原子Nの量の原子百分率[atm%]を算出した。
【0069】
表1に実施例、表2に比較例の評価結果を示す。また、
図5に各実施例と比較例での、第一プラトー電位領域最大電位と窒素量との関係を示す。
なお、表中の窒素含有防錆化合物の名称は、BTAが1,2,3−ベンゾトリアゾール、TTAがトリルトリアゾール、EBTAはエチルベンゾトリアゾール、BIAはベンゾイミダゾールを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2-1】
【0072】
【表2-2】
【0073】
実施例1〜11は、酸化皮膜の第一プラトー電位領域の最大電位が−820mVを下回っている例である。
このうち、実施例1〜5は、窒素量が特に適切な範囲内(3〜20atm%)であり、カール値は0.5mm未満の範囲となっており、活物質の剥離はほぼ問題のないレベルに抑制されている。実施例6〜8は窒素量が20atm%を超えており、カール値は0.5mm未満に抑えられているものの、酸化皮膜と有機防錆層との密着性がやや劣るため、活物質の密着性はやや劣っているが、負極の品質に大きな問題はない。実施例9〜11は窒素量が3atm%を下回っており、加熱乾燥に伴って生成する酸化皮膜量がやや多く、カール値は1.5〜3.0mm未満とやや劣り、活物質の密着性もやや劣っているが、負極の品質に大きな問題はない。
一方、実施例12〜22は、酸化皮膜の第一プラトー電位領域の最大電位が−800〜−820mVの範囲に入っている例である。全体的に実施例1〜11と比べてカール防止特性や活物質密着性がやや劣るが、負極の品質に大きな問題はない。
このうち、実施例12〜16は、窒素量が特に適切な範囲内(3〜20atm%)であり、カール値は0.5〜1.5mm未満の範囲となっており、活物質の剥離はほぼ問題のないレベルに抑制されている。
実施例17〜19は窒素量が20atm%を超えており、カール値は0.5〜1.5mm未満に抑えられているものの、酸化皮膜と有機防錆層との密着性がやや劣るために活物質の密着性はやや劣っているが、負極の品質に大きな問題はない。
実施例20〜22は窒素量が3atm%を下回っており、加熱乾燥に伴って生成する酸化皮膜量がやや多く、カール値は1.5〜3.0mm未満とやや劣り、活物質の密着性はやや劣っているが、負極の品質に大きな問題はない。
【0074】
これに対し、各比較例では、酸化皮膜の第一プラトー電位領域の最大電位がS面とM面の少なくともいずれか一方で−820mVを上回っており、特性が劣っていた。
比較例1は、窒素含有防錆化合物および炭素数4以上のケトン類による防錆処理を行っておらず、カール値は7.0mmを超えてかなり大きく、活物質の剥離がかなり大きかった。
比較例2は、銅箔表面がクロメート皮膜と共に酸化し、十分な密着性を持つ酸化皮膜が形成することができなかったため、6.0mmを超える大きなカールが発生し、活物質の剥離を抑制することはできなかった。
また、比較例3〜9は、窒素含有防錆化合物は使用しているものの、炭素数4以上のケトン類を使用しなかったため、カールを十分に抑制することができず、活物質の剥離が大きかった。特に比較例3〜4では、第一プラトー電位領域の最大電位が−800mV(vs.SCE)を下回る面と上回る面とがそれぞれ存在し、酸化皮膜の密着性が面ごとに異なっていたため、かえってカールが発生しやすくなっていた。
比較例10は、炭素数3のアセトンを使用したため、カールを十分に抑制することができず、活物質の剥離が大きかった。
比較例11〜13は、タフピッチ銅の圧延により形成した圧延銅箔に対して、窒素含有防錆化合物および炭素数4以上のケトン類による防錆処理を行った試験例である。圧延銅箔では、内部に多く含有する酸素が加熱によって放出されて酸化皮膜に含有され、十分な密着性を持つ酸化皮膜を形成することができなかった。このため、4.0mmを超えるカールが発生し、活物質の剥離を抑制することができなかった。
このほか、比較例14〜16におけるCBTにより形成した有機防錆層を形成した例、比較例17〜19におけるCBT、DMAC、IPAを組み合わせて形成した有機防錆層を設け、必要に応じてシラン層もしくはクロメート層からなる中間層を設けた例、比較例20〜22におけるBTAとシランカップリング剤からなる混合層を設けた例、比較例23〜30におけるシランもしくはフッ素シランを分子構造中に含むアゾール化合物もしくはイミダゾール化合物からなる防錆層を設けた例では、いずれの場合においても、酸化皮膜の第一プラトー電位領域の最大電位が−800mV(vs.SCE)を上回っており、形成された防錆皮膜及び中間層に酸化膜の密着性をコントロールする能力がなく、加熱後のカールを十分に抑制することができず、活物質の剥離は大きかった。
【0075】
本発明をその実施形態および実施例とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0076】
本願は、2015年1月19日に日本国で特許出願された特願2015−7793に基づく優先権を主張するものであり、これらはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。