特許第6012917号(P6012917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6012917
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ゲル状組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20161011BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20161011BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20161011BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20161011BHJP
【FI】
   A23D7/00 504
   A23L29/20
   A23L5/00 L
   A23L29/10
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-544681(P2016-544681)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2016060318
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-87680(P2015-87680)
(32)【優先日】2015年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康信
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523112(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118810(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/026474(WO,A1)
【文献】 特開2006−296315(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161253(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/052847(WO,A1)
【文献】 特開2016−073269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00−29/10
A23L 33/00−33/19
A23L 29/20−29/206
A23L 29/231−29/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物のゲル状組成物であって、トリグリセリドを20〜60質量%含有し、該トリグリセリドの全構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸含有量が40質量%以上であることを特徴とするゲル状組成物。
【請求項2】
前記トリグリセリドが中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことを特徴とする請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの構成脂肪酸が、炭素数8、炭素数10、及び炭素数12の中鎖脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
前記トリグリセリドの構成脂肪酸として含まれる中鎖脂肪酸の合計中、炭素数が8以下の中鎖脂肪酸の占める割合が40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のゲル状組成物を製造する方法であって、ゲル化剤を含む水相と、トリグリセリドを含む油相とを乳化し、平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物を調製した後、該水中油型乳化物をゲル化することを特徴とするゲル状組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂を大量に含むにも関わらず、喫食後に胃部不快感の発生が抑制され、油脂の分離がないゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や入院患者は、通常の食事を十分に摂ることが困難な場合があり、低栄養状態に陥る場合がある。こうした問題に対処するべく、少量の摂取で十分な栄養が摂取できるような食品が種々開発されている。特に、エネルギー(カロリー)の補給が目的の場合、脂質含量を高めた方が摂取効率がよい。そして、このような食品に使用される脂質としては中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTともいう)が知られている。
【0003】
MCTの構成脂肪酸である中鎖脂肪酸は、消化管内で速やかに吸収され、肝臓で極めて早く代謝されてエネルギー化されることから、効率良くエネルギーを補給できると考えられる。しかしながら、MCTや構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を多く含む油脂は、一度に多量摂取すると、胃上部の刺激、胃もたれ、胃の膨満感など、胃部不快感を誘発する恐れがあった。
また、上記のエネルギー補給用の食品は、脂質含量を高めた場合、脂質(油脂)の分離が起こり、食品の品質を損なうことがあった。よって、食品中に油脂を安定して分散させる必要があるため、油脂の配合量には制限があった。
【0004】
効率的にカロリー摂取ができる高脂質の食品として、植物性油脂を50〜74重量%、ショ糖脂肪酸エステル、ゲル化剤を含む嚥下困難者用高栄養ゼリー食品が報告されている(特許文献1)。しかし、前記ゼリー食品は、油脂の分離の問題や摂取時の胃部不快感について十分な検討がされていなかった。
また、MCTを一度に多く摂取した場合の、胃部不快感が軽減された食品として、構成脂肪酸が、炭素数8の中鎖脂肪酸と炭素数10の中鎖脂肪酸からなり、且つ炭素数10の中鎖脂肪酸の占める割合が60質量%以上であるMCTを含む濃厚流動食が報告されている(特許文献2)。しかし、前記濃厚流動食よりも、さらに大量の中鎖脂肪酸を一度に摂取でき、且つ胃部不快感が起きにくい食品に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−182785号公報
【特許文献2】国際公開WO2010/052847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の要望を鑑みてなされたものであり、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂を大量に含むにもかかわらず、油脂の分離がなく、喫食後に胃部不快感の発生が抑制されたゲル状組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂を含有し、平均乳化粒子が所定の大きさの水中油型乳化物をゲル化剤でゲル化することによって、上記課題が解決される点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は下記のものを提供する。
【0008】
(1)平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物のゲル状組成物であって、トリグリセリドを20〜60質量%含有し、該トリグリセリドの全構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸含有量が40質量%以上であることを特徴とするゲル状組成物。
(2)前記トリグリセリドが中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことを特徴とする(1)に記載のゲル状組成物。
(3)前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの構成脂肪酸が、炭素数8、炭素数10、及び炭素数12の中鎖脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のゲル状組成物。
(4)前記トリグリセリドの構成脂肪酸として含まれる中鎖脂肪酸の合計中、炭素数が8以下の中鎖脂肪酸の占める割合が40質量%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載のゲル状組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル状組成物を製造する方法であって、ゲル化剤を含む水相と、トリグリセリドを含む油相とを乳化し、平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物を調製した後、該水中油型乳化物をゲル化することを特徴とするゲル状組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂を多く含み、油脂の分離がなく、喫食時に胃部不快感の発生が抑制されたゲル状組成物、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0011】
[ゲル状組成物]
本発明のゲル状組成物は、平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物をゲル化剤でゲル化(流動性を失っている状態)した食品である。本発明のゲル状組成物は、水中油型乳化物がゲル化されているため、喫食後の消化時間が遅延され、該水中油型乳化物中の油脂が緩やかに吸収される。前記食品の例としては、ゼリー、プリン、ゼリー飲料等、及びそれらと類似の態様である食品が挙げられる。また、本発明のゲル状組成物は、調味料として他の食品に添加することもできる。
本発明のゲル状組成物の包装形態は、特に限定されるものではなく、ゼリー、プリン、ゼリー飲料等に通常用いられるものであれば目的に応じて任意に選択することができる。例えば、カップ、缶、紙容器、アルミパウチ、瓶等が挙げられる。
【0012】
本発明のゲル状組成物は、硬さが5000〜20000N/mであることが好ましく、6000〜16000N/mであることがより好ましく、8000〜12000N/mであることが最も好ましい。硬さが上記の範囲にあると、喫食しやすく、ゲルから油の分離を防ぐことができる。
本発明のゲル状組成物の硬さは、ゲルを崩す前の保形状態のゲルを、レオメーターを用いて、直径20mmの円柱状プランジャー、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、20℃の条件で測定したときの値を指す。
【0013】
本発明のゲル状組成物は、20〜60質量%のトリグリセリドを水中油型乳化物中に含有する。本発明のゲル状組成物のトリグリセリド含有量は、30〜55質量%が好ましく、35〜53質量%がより好ましく、40〜50質量%が最も好ましい。
【0014】
[水中油型乳化物]
本発明で用いる水中油型乳化物は、連続相である水の中に油脂が分散しているO/W型のエマルジョンを指す。また、前記水中油型乳化物の調製は、特に制限されず、物理的方法、反転乳化法、液晶乳化法、D相乳化法、三相乳化法等の一般的な方法で調製できる。
本発明で用いる水中油型乳化物は、平均乳化粒子径が2〜40μmであり、2〜20μmが好ましく、2.5〜10μmがより好ましく、2.5〜8μmがさらにより好ましく、3〜6μmが最も好ましい。ここで、平均乳化粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%の粒子径を意味する。また、本発明で用いる水中油型乳化物は、前記測定法で測定した時の積算値10%の粒子径が平均乳化粒子径の0.4倍以上、及び積算値90%の粒子径が平均粒子径の2倍以下であることが好ましい。
平均乳化粒子径が上記の範囲にあると、本発明のゲル状組成物の喫食時の胃部不快感が軽減され、且つ、ゲルからの油の分離も抑制できる。他方、平均乳化粒子径が2μmよりも小さくなると、喫食時における中鎖脂肪酸の消化吸収が速くなるため胃部不快感が起きやすくなり、また、平均乳化粒子径が40μmよりも大きくなると乳化状態が不安定となり、ゲルからの油の分離が起きやすくなる。
【0015】
[トリグリセリド]
本発明に用いるトリグリセリドは、全構成脂肪酸中に中鎖脂肪酸を40質量%以上含有する。ここで、中鎖脂肪酸とは、炭素数が6〜12の脂肪酸(好ましくは炭素数が8及び10の直鎖飽和脂肪酸)を指す。前記全構成脂肪酸中に中鎖脂肪酸を40質量%以上含有するトリグリセリドとしては、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を含有する油脂、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸からなる中長鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MLCTともいう)を含有する油脂等が挙げられる。本発明に用いるトリグリセリドは、全構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸の含量が40質量%以上であれば、複数の油脂の混合油であってもよいが、速やかにエネルギー補給ができる点から、MCTのみを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明に用いるトリグリセリドは、構成脂肪酸として含まれる中鎖脂肪酸の合計中、炭素数が8以下の中鎖脂肪酸の占める割合が40質量%以下(0〜40質量%)であることが好ましい。ここで、炭素数が8以下の中鎖脂肪酸とは、具体的には、炭素数6の飽和脂肪酸であるn−ヘキサン酸、炭素数8の飽和脂肪酸であるn−オクタン酸が挙げられ、他方、炭素数が8よりも大きい中鎖脂肪酸としては、炭素数10の飽和脂肪酸であるn−デカン酸、炭素数12の飽和脂肪酸であるn−ドデカン酸が挙げられる。
炭素数が8以下の中鎖脂肪酸の占める割合が上記の範囲にあると、喫食時の胃部不快感の軽減効果がさらに優れたものになる。
【0017】
前記MCT及びMLCTは、ヤシ油やパーム核油由来の中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸とグリセリンとを原料として、エステル化反応させることにより得ることができる。エステル化反応の条件は、特に限定されるものではなく、無触媒且つ無溶剤にて加圧下で反応させてもよく、触媒や溶剤を用いて反応させてもよい。また、上記MLCTは、MCTとMCT以外の油脂とをエステル交換する方法によっても得ることができる。エステル交換する方法としては、特に限定されるものではなく、ナトリウムメトキシドを触媒とした化学的エステル交換や、リパーゼ製剤を触媒とした酵素的エステル交換など、通常行われる方法で行えばよい。
なお、本発明に用いるトリグリセリドの構成脂肪酸を確認、定量する方法としては、例えば、トリグリセリドの構成脂肪酸をメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析する方法が挙げられる。
【0018】
[ゲル化剤]
本発明に用いるゲル化剤は、本発明に用いる水中油型乳化物をゲル化(流動性を失っている状態)できるものであれば、種類及び含有量は特に制限されない。例えば、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩等が挙げられ、これらを複数併用して用いてもよい。本発明のゲル状組成物のゲル化剤の含有量は、0.2〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましく、0.8〜1.2質量%が最も好ましい。
【0019】
[他の原料]
本発明のゲル状組成物は、乳化剤を含むことが望ましい。乳化剤は、水中油型の乳化形態をとる食品に用いられる乳化剤であれば、特に制限されない。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、加工澱粉等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。また、好ましくはHLB10〜15のポリグリセリン脂肪酸エステルが使用できる。本発明のゲル状組成物の乳化剤の含有量は、0.2〜4質量%が好ましく、0.8〜2質量%がより好ましく、1.3〜1.8質量%が最も好ましい。
本発明に使用する水は、特に限定されず、水道水、井戸水、精製水、イオン交換水等を用いることができる。
【0020】
本発明のゲル状組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記原料以外にも他の原料を配合してもよい。例えば、糖類、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、食塩、ミネラル、果汁、香料、色素等が挙げられる。
【0021】
[ゲル状組成物の製造方法]
本発明のゲル状組成物は、水中油型乳化物をゲル化剤でゲル化して製造する。具体的には、水に油脂以外の原料を分散させた後、ゲル化剤の溶解温度まで昇温して原料を混合溶解し、均一な調製液(水相)にする。その後、油脂(油相)を投入してミキサーやホモジナイザー等で乳化する。その後、調合液(水中油型乳化物)をゲル化剤の凝固温度以上に保持しながら容器に充填し、密封した後、冷却してゲル化させる。また、本発明のゲル状組成物を殺菌する場合は、容器に充填後、密封して加熱殺菌する方法、加熱殺菌しながら容器に充填する方法、充填前に加熱殺菌し、その後無菌充填する方法等を使用できる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[ゲル状組成物の製造]
表1に記載の配合に従い、原料を秤量し、以下に記載した手順でゲル状組成物を製造した。
水に油脂以外の原料を分散させた後、90℃まで昇温して原料を混合溶解して均一な調合液(水相)とした。その後、油脂(MCT:油相)を投入してホモミキサーで乳化した。また、比較例1については、さらにホモジナイザーで乳化した。次に、得られた乳化調合液(水中油型乳化物:1400g)をアルミパウチ袋に15gずつ充填・密封した後、レトルト殺菌し、冷却してゲル化し、ゲル状組成物を得た。ゲル状組成物の製造に使用した原材料は以下の通りである。
MCT:日清オイリオグループ(株)製造品、構成脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70である中鎖脂肪酸トリグリセリド
乳化剤―1〔加工澱粉〕:商品名「エマルスター500」、松谷化学工業(株)製
乳化剤―2〔グリセリン脂肪酸エステル〕:商品名「ポエムJ−0081HV」(HLB12)、理研ビタミン(株)製
ゲル化剤−1〔グルコマンナン〕:商品名「レオックスRS」、清水化学(株)製
ゲル化剤−2〔カラギーナン〕:商品名「GENUGEL WG−108」、三晶(株)製
ゲル化剤−3〔キサンタンガム〕:商品名「エコーガム」、DSP五協フード&ケミカル(株)製
ゲル化剤−4〔寒天〕:商品名「伊那寒天S−6」、伊那食品工業(株)製
ゲル化剤−5〔ローカストビーンガム〕:商品名「メイプロディン 200」、三晶(株)製
上白糖:商品名「上白糖」、三井製糖(株)製
クエン酸:商品名「クエン酸(無水)」、扶桑化学工業(株)製
ヨーグルトフレーバー:商品名「HL01043」、小川香料(株)製
【0024】
【表1】
【0025】
[平均乳化粒子径の測定]
平均乳化粒子径の測定は、上記のゲル状組成物の製造において調製したゲル化する前の乳化調合液を、精製水で30〜300倍に適宜希釈して測定用試料液とし、レーザー回折式粒度分布計(マイクロトラックMT3000II、日機装(株)製)を用いて測定した。そして、求めた粒度分布における積算値50%の粒子径の測定値を、平均乳化粒子径とした。また、積算値10%及び90%の粒子径も測定した。測定結果を表2に示す。
【0026】
[人工胃液における乳化粒子の溶出試験]
MCTを大量に摂取した時に生じる胃部不快感は、摂取したMCTが胃及び小腸で急速に加水分解されて、中鎖脂肪酸濃度が上昇することが原因と考えられている。よって、本発明のゲル状組成物が胃で消化される際に、胃液中への乳化粒子の放出が遅延されれば、胃部不快感を軽減できると考えられた。前記の予想のもと、人工胃液を用いた溶出試験で、本発明のゲル状組成物が消化される際の乳化粒子の放出の割合を測定した。
【0027】
溶出試験は下記の方法で実施した。はじめに、上記で製造したゲル状組成物を咀嚼後の状態に近づけるため、5mm角にカットした。次に、200mLビーカーに日本薬局方の崩壊試験法に基づいて調製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2g/L、塩酸7mL/L)100mLとカットしたゲル状組成物2gを入れ、液温を37℃に保持しながら、スターラーで撹拌(100rpm)して試験を開始した。
試験開始後、1分、30分、及び180分後にゲル状組成物を採取しないように人工胃液を1mL採取し、イオン交換水で6倍希釈したものについて、500nmの吸光度(UV−160A、(株)島津製作所製)を測定した。測定は各ゲル状組成物につき3サンプル準備して行い、測定値の平均値“A”を求めた。
また、各ゲル状組成物について、ゲル化する前の乳化調合液2gを前記と同様の条件で人工胃液に添加して、1分、30分、及び180分後の500nmの吸光度を測定し、測定値の平均値“B”(すなわち、全ての乳化粒子が人工胃液中に放出したと仮定した時の吸光度)を求めた。そして、以下の計算式で吸光度の相対値を求めた。
乳化粒子の人工胃液への放出割合=A/B
前記の相対値を求めることにより、小さい値ほど、人工胃液中への乳化粒子の放出が少なく、大きい値ほど(1に近いほど)、人工胃液中への乳化粒子の放出が多いと判断した。測定結果を表2に示す。
なお、平均乳化粒子径が約50μmである水中油型乳化物をゲル化したゲル状組成物(比較例2)は、乳化が不安定で測定時に油の分離が起きたため、正確な評価はできないと判断して、溶出試験を行わなかった。
【0028】
[喫食時の胃部不快感の評価]
MCT摂取時に胃部不快感が起こりやすい3名のパネラーが、上記で製造したゲル状組成物を15g摂取し、30分及び180分後の胃部不快感について評価した、評価基準は下記に従い、3名の総意で評価した。評価結果を表2に示す。
◎:上腹部刺激、膨満感、胃もたれ等の胃部不快感がない。
○:若干の胃部不快感があるが、食品として許容できる。
×:上腹部刺激、膨満感、胃もたれ等の胃部不快感がある。
【0029】
[油の分離の評価]
上記で製造したゲル状組成物を製造後7日目にアルミパウチ袋から取り出し、外観を目視により以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
○:均一な色調で、油の分離が認められない。
×:油の分離が認められる。
【0030】
【表2】
【0031】
上記の結果より、平均乳化粒子径が2〜40μmの範囲内である水中油型乳化物をゲル化したゲル状組成物(実施例1〜3)は、いずれもゲルから油の分離が起きず、喫食後の胃部不快感がないものであった。一方、平均乳化粒子径が2μmよりも小さな水中油型乳化物をゲル化したゲル状組成物(比較例1)は、ゲルから油の分離は起きないが、喫食後の胃部不快感が起きた。また、乳化粒子の溶出試験でも、平均乳化粒子径が比較例1よりも大きい実施例1〜3は、人工胃液中への乳化粒子の放出が少ない結果であり、胃液中への乳化粒子の放出が遅延されれば、胃部不快感を軽減できるという予想を支持するものであった。
また、平均乳化粒子径が40μmよりも大きな水中油型乳化物をゲル化したゲル状組成物(比較例2)は、ゲルから油の分離が起こり、喫食後の胃部不快感もあった。
【要約】
本発明の課題は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂を多く含み、油脂の分離がなく、喫食時に胃部不快感の発生が抑制されたゲル状組成物、及びその製造方法を提供することにある。
本発明のゲル状組成物は、平均乳化粒子径が2〜40μmである水中油型乳化物をゲル化したゲル状組成物であって、トリグリセリドを20〜60質量%含有し、該トリグリセリドの全構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸含有量が40質量%以上のゲル状組成物である。また、前記トリグリセリドは中鎖脂肪酸トリグリセリドを含んでもよい。