特許第6013218号(P6013218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013218酸発生剤、化学増幅型レジスト材料、及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013218
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】酸発生剤、化学増幅型レジスト材料、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20161011BHJP
   C07C 309/12 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20161011BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20161011BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G03F7/004 503A
   C07C309/12
   C07C381/12
   G03F7/004 501
   G03F7/038 601
   G03F7/039 601
【請求項の数】8
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2013-24204(P2013-24204)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2013-209360(P2013-209360A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-42321(P2012-42321)
(32)【優先日】2012年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 知洋
(72)【発明者】
【氏名】提箸 正義
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006908(JP,A)
【文献】 特開2012−013807(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0013869(KR,A)
【文献】 特開2011−190247(JP,A)
【文献】 特開2012−123189(JP,A)
【文献】 特開2012−046501(JP,A)
【文献】 特開2013−028540(JP,A)
【文献】 特開2013−001850(JP,A)
【文献】 特開2012−072109(JP,A)
【文献】 特開2012−031134(JP,A)
【文献】 特開2011−197464(JP,A)
【文献】 特開2010−132560(JP,A)
【文献】 特開2007−145797(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/104127(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/057769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18,
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギー線又は熱に感応し、下記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生することを特徴とする酸発生剤。
【化1】
[式中、Rは下記一般式(1−1)で示される基を示す。Aは水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
(R)(R)N−L− (1−1)
(式中、R、Rは相互に独立に水素原子か、ヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基を示す。Lはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を示す。ただし、式中、(i)R、Rのうち1つがアリール基、又はアラルキル基であるか、又は、(ii)Lがフェニレン基、又はナフチレン基であるか、のいずれかを満たす。)]
【請求項2】
前記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生する酸発生剤が、下記一般式(2)で示されるスルホニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の酸発生剤。
【化2】
(式中、R及びAは前述の通りである。R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の、アルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18の、アリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項3】
前記スルホニウム塩が、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩であることを特徴とする請求項2に記載の酸発生剤。
【化3】
(式中、R及びAは前述の通りである。Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の、アルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。pは0又は1、qは1〜5の整数を示す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸発生剤、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで示される酸を発生する光酸発生剤、ベース樹脂及び有機溶剤を含有することを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【化4】
(式中、R、Rb1、Rb2、Rc1、Rc2、Rc3は相互に独立にフッ素原子か、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。あるいはRb1とRb2、及びRc1とRc2は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項5】
前記ベース樹脂が、下記一般式(7)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位と下記一般式(8)で示される繰り返し単位とを含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項4に記載の化学増幅型レジスト材料。
【化5】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。Zは単結合、フェニレン基、ナフチレン基及び(主鎖)−C(=O)−O−Z’−のいずれかを示す。Z’はヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示すか、あるいはフェニレン基又はナフチレン基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLは水素原子を示すか、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、及びカルボン酸無水物から選択されるいずれか一つ以上の構造を有する極性基を示す。)
【請求項6】
請求項4又は5に記載の化学増幅型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介してKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVリソグラフィー、及び電子ビームのいずれかで露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記露光を、屈折率1.0以上の液体をレジスト塗布膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光にて行うことを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記レジスト塗布膜の上に更に保護膜を塗布し、該保護膜と投影レンズとの間に前記液体を介在させて液浸露光を行うことを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレジスト材料の酸発生剤等として好適に用いられる新規酸発生剤、これを用いた化学増幅型レジスト材料、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィー及び真空紫外線リソグラフィーが有望視されている。中でもArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーは、0.13μm以下の超微細加工に不可欠な技術である。
【0003】
ArFリソグラフィーは130nmノードのデバイス製作から部分的に使われ始め、90nmノードデバイスからはメインのリソグラフィー技術となった。次の45nmノードのリソグラフィー技術として、当初F2レーザーを用いた157nmリソグラフィーが有望視されたが、諸問題による開発遅延が指摘されたため、投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーが急浮上してきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ArFリソグラフィーでは、精密かつ高価な光学系材料の劣化を防ぐために、少ない露光量で十分な解像性を発揮できる感度の高いレジスト材料が求められており、実現する方策としては、その各成分として波長193nmにおいて高透明なものを選択するのが最も一般的である。例えばベース樹脂については、ポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン−無水マレイン酸交互重合体、ポリノルボルネン及び開環メタセシス重合体、開環メタセシス重合体水素添加物等が提案されており、樹脂単体の透明性を上げるという点ではある程度の成果を得ている。
【0005】
また、光酸発生剤も種々の検討がなされてきた。従来のKrFエキシマレーザー光を光源とした化学増幅型レジスト材料に用いられてきたようなアルカンあるいはアレーンスルホン酸を発生する光酸発生剤を上記のArF化学増幅型レジスト材料の成分として用いた場合には、樹脂の酸不安定基を切断するための酸強度が十分でなく、解像が全くできない、あるいは低感度でデバイス製造に適さないことがわかっている。
【0006】
このため、ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤としては、酸強度の高いパーフルオロアルカンスルホン酸を発生するものが一般的に使われている。これらのパーフルオロアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤は既にKrFレジスト材料として開発されてきたものであり、例えば、特許文献1や特許文献2には、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸を発生する光酸発生剤が記載されている。また新規な酸発生剤として、特許文献3〜5においてパーフルオロアルキルエーテルスルホン酸が発生する酸発生剤が提案されている。
【0007】
一方でパーフルオロオクタンスルホン酸、あるいはその誘導体は、その頭文字をとりPFOSとして知られており、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっている。米国環境庁(EPA)は最重要新規利用規則(Significant New Use Rule)にPFOS関連の13物質を制定し、同75物質にもフォトレジスト分野における利用は免除項目となっているものの制定を行った。更にパーフルオロアルカンスルホン酸、あるいはその誘導体の183物質にも最重要新規利用規則の適用が提案されている。
【0008】
このようなPFOSに関する問題に対処するため、各社よりフッ素の置換率を下げた部分フッ素置換アルカンスルホン酸の開発が行われている。例えば、特許文献6には、α,α−ジフルオロアルケンと硫黄化合物によりα,α−ジフルオロアルカンスルホン酸塩を開発し、露光によりこのスルホン酸を発生する光酸発生剤、具体的にはジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム=1,1−ジフルオロ−2−(1−ナフチル)エタンスルホネートを含有するレジスト材料が公開されており、更に、特許文献7には、α,α,β,β−テトラフルオロ−α−ヨードアルカンと硫黄化合物によるα,α,β,β−テトラフルオロアルカンスルホン酸塩の開発とこのスルホン酸を発生する光酸発生剤及びレジスト材料が公開されている。また、特許文献3には、合成方法の記載が無いものの、明細書中にはジフルオロスルホ酢酸アルキルエステル(1−(アルコキシカルボニル)−1,1−ジフルオロメタンスルホネート)、ジフルオロスルホ酢酸アミド(1−カルバモイル−1,1−ジフルオロメタンスルホンネート)などを有する光酸発生剤が開示され、更に、特許文献8には、パーフルオロアルキレンジスルホニルジフルオリドから誘導されるスルホニルアミド構造を有する部分フッ素化アルカンスルホン酸を発生する化合物を含有する感光性組成物が開示されている。
【0009】
しかし、上記特許文献の物質は、共にフッ素置換率は下げられているものの、基本骨格が分解し難い炭化水素骨格であり、エステル基等の容易に分解可能な置換基を持たないため分解性に乏しく、アルカンスルホン酸の大きさを変化させるための分子設計に制限があり、更にフッ素含有の出発物質が高価である等の問題を抱えている。
【0010】
光酸発生剤の分解性や酸強度以外にも課題は多くある。例えば、近年パターンレイアウトの微細化が進み、パターン線幅の揺らぎ(ラインウィズスラフネス、LWR)が問題になってきている。例えば、LSI回路製造工程のゲート電極部の加工において、LWRが悪いとリーク電流等の問題を引き起こしトランジスタの電気特性を劣化させてしまう。LWRの原因として様々な要因が考えられている。主な原因としてベース樹脂と現像液との親和性が悪いこと、つまりベース樹脂の現像液に対する溶解性が悪いことが挙げられる。従来から用いられているカルボン酸保護基は嵩高い三級アルキル基であり、疎水性が高いために概して溶解性が悪い。特に微細な溝を形成するような高い解像性を要求される場合においては、LWRが大きいために寸法が不均一となってしまう。従来から知られているLWR低減策としては、光酸発生剤の添加量を増やすこと(非特許文献2)等が挙げられる。しかし、その際は露光量依存性、マスク忠実性、パターン矩形性といった特性が極端に悪化する場合があり、その効果は十分なレベルではない。光酸発生剤においては、単に増量するだけでなく、均一に分散していることがLWRを改善する上で重要となる。
【0011】
更に、回路線幅の縮小に伴い、レジスト材料においては、酸拡散によるコントラスト劣化の影響が一層深刻になってきた。これは、パターン寸法が酸の拡散長に近づくためであり、マスク忠実性の低下やパターン矩形性の劣化を招く。従って、光源の短波長化及び高NA化による恩恵を十分に得るためには、従来材料以上に溶解コントラストの増大、又は酸拡散の抑制が必要となる。
【0012】
特許文献9には、トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネ−トなどの炭素数1〜20のアルカンカルボニルオキシあるいはアレーンカルボニルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネ−トが開示されているが、拡散性の制御及び低LWRの達成にはまだ不十分である。
【0013】
なお、特許文献10や特許文献11には、多環式炭化水素基を有する部分フッ素化アルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤が開示されているが、こちらも十分なレジスト性能を発現するには至っておらず、またいずれの光酸発生剤も、不安定なジフルオロ酢酸のエステルであることから、該光酸発生剤を含んだレジスト材料において、保存安定性が懸念される。
【0014】
また、デバイスプロセスの光リソグラフィーでの光源の短波長化により、焦点深度が浅くなりがちであるため、短波長の光源を用いた場合であっても広い範囲を解像できる焦点深度を持つことが求められている。パターンルールのより一層の微細化が求められる中、感度、基板密着性、エッチング耐性において優れた性能を発揮することに加え、解像性の劣化を伴わず、LERの改善策やより広い焦点深度(DOF)を有することが必要とされているのである。
【0015】
更に、液浸露光においては、露光後のレジストウエハー上に微少な水滴が残ることによる欠陥に起因するレジストパターン形状の不良、現像後のレジストパターンの崩壊やTtop形状化といった問題点があり、液浸リソグラフィーにおいても、現像後に良好なレジストパターンを得られるパターン形成方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−122296号公報
【特許文献2】特開平11−282168号公報
【特許文献3】特開2002−214774号公報
【特許文献4】特開2003−140332号公報
【特許文献5】米国特許第2002/197558号明細書
【特許文献6】特表2004−531749号公報
【特許文献7】特開2004−2252号公報
【特許文献8】特開2005−266766号公報
【特許文献9】特開2007−145797号公報
【特許文献10】特開2007−161707号公報
【特許文献11】特開2008−69146号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587 (2004)
【非特許文献2】Journal of Photopolymer Science and Technology, Vol.19, No.3, 2006, 327−334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
酸発生剤の発生酸としては、レジスト材料中の酸不安定基を切断するのに十分な酸強度があること、レジスト材料中で保存安定性が良好であること、レジスト材料中で適当な拡散があること、揮発性が少ないこと、水への溶出が少ないこと、現像後、剥離後の異物が少ないこと、リソグラフィー用途終了後は環境に負荷をかけずに良好な分解性を持つこと等が望まれるが、従来の光酸発生剤から発生した酸はこれらを満足していない。
【0019】
また、従来の光酸発生剤を用いたレジスト材料では、解像性の劣化を伴わず、LER、より広い焦点深度の問題を解決できない。更に、従来の酸発生剤は、設計の幅が小さく、これにより露光条件、ポリマーの種類や組成等が必然的に限定されてしまい、多様なニーズに応えられない。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、特に、解像性の劣化を伴わず、LER、焦点深度の問題を満足し、幅広く有効に使用し得るなど、レジスト材料の酸発生剤として好適な新規酸発生剤、これを用いた化学増幅型レジスト材料、並びにパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は、高エネルギー線又は熱に感応し、下記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生することを特徴とする酸発生剤を提供する。
【化1】
[式中、Rは含窒素複素環基又は下記一般式(1−1)で示される基のいずれかを示す。Aは水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
(R)(R)N−L− (1−1)
(式中、R、Rは相互に独立に水素原子か、ヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基を示すか、あるいはR及びRが相互に結合して上記一般式(1−1)中の窒素原子と共に環を形成してもよい。Lはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を示す。)]
【0022】
このような酸発生剤は、合成も簡便で、幅広い分子設計が可能である。そのため、必要とされるレジストの条件に合わせて分子設計することができる。また、化学増幅レジスト材料用として使用した場合にも、解像性の劣化を伴わず、LERや焦点深度等の問題を満足することができる酸発生剤となる。
【0023】
この場合、前記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生する酸発生剤を、下記一般式(2)で示されるスルホニウム塩とすることができる。
【化2】
(式中、R及びAは前述の通りである。R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の、アルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18の、アリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0024】
また、前記スルホニウム塩を、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩とすることもできる。
【化3】
(式中、R及びAは前述の通りである。Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の、アルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。pは0又は1、qは1〜5の整数を示す。)
【0025】
このように、上記一般式(1)で示される酸を発生する酸発生剤として、上記一般式(2)、更に上記一般式(3)が挙げられる。
【0026】
また本発明は、前記酸発生剤、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで示されるスルホン酸を発生する光酸発生剤、ベース樹脂及び有機溶剤を含有することを特徴とする化学増幅型レジスト材料を提供する。
【化4】
(式中、R、Rb1、Rb2、Rc1、Rc2、Rc3は相互に独立にフッ素原子か、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。あるいはRb1とRb2、及びRc1とRc2は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0027】
このような本発明の化学増幅型レジスト材料は、LERに優れ、より広い焦点深度を有し、また、微細加工に適した高解像性を有する。
【0028】
また、前記ベース樹脂が、下記一般式(7)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位と下記一般式(8)で示される繰り返し単位とを含有する高分子化合物であることが好ましい。
【化5】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。Zは単結合、フェニレン基、ナフチレン基及び(主鎖)−C(=O)−O−Z’−のいずれかを示す。Z’はヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示すか、あるいはフェニレン基又はナフチレン基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLは水素原子を示すか、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、及びカルボン酸無水物から選択されるいずれか一つ以上の構造を有する極性基を示す。)
【0029】
このようなベース樹脂を用いれば、高い解像性を得ることができ、さらに、本発明の酸発生剤を用いて化学増幅型とすることで、感度、ドライエッチング耐性も高くなり、特に遠紫外線リソグラフィーに有望なレジスト材料とすることができる。
【0030】
また本発明は、前記化学増幅型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介してKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVリソグラフィー、及び電子ビームのいずれかで露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0031】
このように、本発明のパターン形成方法によれば、パターン形状、ラフネス、DOFの全てにおいて極めて優れたパターンを形成することができる。
【0032】
この場合、前記露光を、屈折率1.0以上の液体をレジスト塗布膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光にて行うことができる。
【0033】
このように、本発明において、露光工程は、レジスト塗布膜と投影レンズとの間を液浸し、屈折率1.0以上の液体を介在させて行うImmersion法を用いることも可能である。
【0034】
また、前記レジスト塗布膜の上に更に保護膜を塗布し、該保護膜と投影レンズとの間に前記液体を介在させて液浸露光を行ってもよい。
これにより、液浸露光時にレジスト膜の表面を保護できるので、より正確なパターン形成をすることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の酸発生剤は、合成も簡便で、幅広い分子設計が可能であり、必要とされるレジストの条件に合わせて分子設計することができる。また、化学増幅レジスト材料用として使用した場合にも、解像性の劣化を伴わず、LERや焦点深度等の問題を満足することができる酸発生剤となる。
そのため、本発明の酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト材料を用いてパターンを形成すれば、パターン形状、ラフネス、DOF等に優れたパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】合成例1−1の[PAG−1]のH−NMRを示した図である。
図2】合成例1−1の[PAG−1]の19F−NMRを示した図である。
図3】合成例1−2の[PAG−2]のH−NMRを示した図である。
図4】合成例1−2の[PAG−2]の19F−NMRを示した図である。
図5】合成例1−3の[PAG−3]のH−NMRを示した図である。
図6】合成例1−3の[PAG−3]の19F−NMRを示した図である。
図7】合成例1−4の[PAG−4]のH−NMRを示した図である。
図8】合成例1−4の[PAG−4]の19F−NMRを示した図である。
図9】合成例1−5の[PAG−5]のH−NMRを示した図である。
図10】合成例1−5の[PAG−5]の19F−NMRを示した図である。
図11】合成例1−6の[PAG−6]のH−NMRを示した図である。
図12】合成例1−6の[PAG−6]の19F−NMRを示した図である。
図13】合成例1−7の[PAG−7]のH−NMRを示した図である。
図14】合成例1−7の[PAG−7]の19F−NMRを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
上述のように、レジスト材料等に用いられる従来の酸発生剤は、発生する酸が種々の特性を満足することができず、また特に、解像性の劣化を伴わずして、LER、より広い焦点深度の問題を解決することができないものであった。更に、従来の酸発生剤は、設計の幅が小さく、これにより露光条件、ポリマーの種類や組成等が必然的に限定されてしまい、多様なニーズに応えられない。
【0038】
そこで本発明者は、特にレジスト材料に用いられる酸発生剤について種々の検討を行った結果、分子内に窒素原子を含んだ特定の構造を有する酸を発生する酸発生剤であれば、上記問題点を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0039】
すなわち、本発明の酸発生剤は、高エネルギー線又は熱に感応し、下記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生することを特徴とする。
【化6】
[式中、Rは含窒素複素環基又は下記一般式(1−1)で示される基のいずれかを示す。Aは水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
(R)(R)N−L− (1−1)
(式中、R、Rは相互に独立に水素原子か、ヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基を示すか、あるいはR及びRが相互に結合して上記一般式(1−1)中の窒素原子と共に環を形成してもよい。Lはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を示す。)]
【0040】
このような本発明の酸発生剤における特徴の一つとして挙げられるのは、Rで示される構造を後述する手法により、容易に種々変更できることである。即ち構造改変の自由度が高く、アシル基の改変によりレジスト諸特性の調整が容易に可能となる。従って露光条件、ポリマーの種類や組成等に合わせてその時に最適なRの構造を有する酸発生剤を選択することができる。
【0041】
また、このような本発明の酸発生剤は、露光部では自らの窒素原子によって本発明の酸発生剤から発生した酸をクエンチさせることも可能であるので、例えば後述のスルホニウム塩におけるカウンターカチオンの選択によっても、レジスト諸特性の調整が可能となる。
【0042】
本発明の酸発生剤は、窒素原子を有しており、基本的にクエンチャーとして機能する。ただし、露光部では本発明の酸発生剤から酸が発生することで、そのクエンチ機能が消失し、併用した光酸発生剤から生じた酸が効率的に拡散する。一方未露光部では、本発明の化合物は単純にクエンチャーとして機能するので、露光部から拡散してきた酸をトラップする役目を果たす。
結果として、コントラストが向上し、それにともなって、パターン形状、ラフネス、DOFが改善される。
【0043】
ここで、上記一般式(1)中のRの含窒素複素環としては、例えばアジリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピリジン、アゼチン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリン、2−イミダゾリン、イミダゾリジン、3−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペラジン、トリアジン、オキサジアジン、ジチアジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プリン、プテリジン、インドリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン、1,10−フェナントロリン、フェノキサジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、ベンゾ[e]インドール、ベンゾ[cd]インドール等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(1−1)中、Lはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を示し、例えばメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基、前記直鎖状アルカンジイル基に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の側鎖を付け加えた分岐鎖状アルカンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の飽和環状炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の不飽和環状炭化水素基が挙げられ、さらにLはこれらの基の2種以上を組み合わせても良い。またこれらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成しても良い。
【0045】
上記一般式(1−1)中、R、Rは相互に独立に水素原子か、ヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基を示すか、あるいはR及びRが相互に結合して上記一般式(1−1)中の窒素原子と共に環を形成してもよい。
具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。さらに上記炭化水素基において、その水素原子の一部が上述の炭化水素基に置換したり、あるいは酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成しても良い。
【0046】
及びRが相互に結合して上記一般式(1−1)中の窒素原子と共に環を形成する場合、具体的な環種としてはアジリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピリジン、アゼチン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリン、2−イミダゾリン、イミダゾリジン、3−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペラジン、トリアジン、オキサジアジン、ジチアジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プリン、プテリジン、インドリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン、1,10−フェナントロリン、フェノキサジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、ベンゾ[e]インドール、ベンゾ[cd]インドール等が挙げられ、これらの環の水素原子の一部が上述の炭化水素基に置換したり、あるいは酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成しても良い。
【0047】
以下、上記一般式(1)で示されるスルホン酸の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
上記一般式(1)中のRについて特に好ましい置換基としては、入手容易性や合成容易性の観点からピリジン環やアニリン誘導体等が挙げられる。また、これらの置換基は弱塩基性であることから、一般的に求核試薬や塩基性化合物に対して不安定なアルキルスルホニウムカチオンを有する材料を含むレジスト組成物にも適用しうるので、材料設計の幅も広がり好ましい。
【0051】
このような上記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生する酸発生剤として、例えばオニウム塩(ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩)等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、高エネルギー線又は熱に感応し、上記一般式(1)の酸を発生する酸発生剤であればいずれでもよい。
【0052】
より具体的な酸発生剤としては、例えば下記一般式(2)で示されるスルホニウム塩を挙げることができる。
【化10】
【0053】
上記一般式(2)におけるR及びAは前述の通りである。R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の、アルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18の、アリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0054】
具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。
【0055】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。
【0056】
また、R、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成する場合には、これらの環状構造を形成する基としては、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等の二価の有機基が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0057】
より具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、5−フェニルジベンゾチオフェニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。
【0058】
より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。更には4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。これら重合可能なスルホニウムカチオンに関しては特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができ、これら重合可能なスルホニウム塩は後述する高分子量体の構成成分のモノマーとして用いることができる。
【0059】
特に、本発明の酸発生剤としてのスルホニウム塩は、カウンターカチオンとして、求核試薬や塩基性化合物に対して不安定なアルキルスルホニウムカチオン等を選択することも可能である。
例えば、本発明の酸発生剤は、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩であってもよい。
【化11】
(式中、R及びAは前述の通りである。Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の、アルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。pは0又は1、qは1〜5の整数を示す。)
【0060】
上記一般式(3)におけるR及びAは前述の通りである。R−(O)p−基の置換位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、更にp=1の場合にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。pは0(零)又は1である。qは1〜5の整数であり、好ましくは1である。
【0061】
具体的なスルホニウムカチオンとしては、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム)、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0062】
ここで、本発明の上記一般式(1)で示される酸を発生する酸発生剤の一つである上記一般式(2)で示されるスルホニウム塩の合成方法について以下に述べる。
最初に、Aが水素原子である場合の合成方法について述べる。
【0063】
まず、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネートを有するスルホニウム塩を調製する。以下にその製法を示す。
2−ブロモ−2,2−ジフルオロエタノールとカルボン酸クロリドとの反応で2−ブロモ−2,2−ジフルオロエチルアルカンカルボキシレート、あるいは2−ブロモ−2,2−ジフルオロエチルアレーンカルボキシレートを得て、次いで亜二チアン酸ナトリウム等の硫黄化合物によりブロモ基をスルフィン酸ナトリウムとし、次いで過酸化水素等の酸化剤によりスルフィン酸をスルホン酸に変換する。
【化12】
(上記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
【0064】
エステル化、ハロゲン化アルカンからスルフィン酸ナトリウム化、スルホン酸化は公知であるが、後者二つの処方は特開2004−2252号公報等に詳しい。
得られたスルホン酸ナトリウムとスルホニウム塩化合物のイオン交換反応により目的のスルホニウム塩を得ることができる。イオン交換反応は特開2007−145797号公報等に詳しい。
【化13】
(上記式中、R〜R、Rは上記と同意である。Xは対アニオンであり、I、Br、Cl等のハライド、硫酸アニオン、メチル硫酸アニオン等の硫酸又はアルキル硫酸アニオン、アセテート、ベンゾエート等のカルボン酸アニオン、メタルスルホネート、プロパンスルホネート等のアルカンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等のアレーンスルホネート、ヒドロキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。)
【0065】
更には、上記のように導入されたRCO−で示されるアシル基をエステル加水分解あるいは加溶剤分解することにより、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネートを有するスルホニウム塩を合成することができる。下記に工程の概略を示す。
【化14】
(上記式中、R〜R、Rは前述の通りであり、Meはメチル基を示す。)
【0066】
この処方により、先のアニオン合成時の条件(亜二チアン酸ナトリウム等の硫黄化合物によりブロモ基をスルフィン酸ナトリウムとし、次いで過酸化水素等の酸化剤によりスルフィン酸をスルホン酸に変換する。)に対しRが不安定な置換基である場合も、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネートより導入することができる。
また、上記一般式(3)で示されるスルホニウム塩も同様に合成することができる。
【0067】
原料のスルホニウム塩やヨードニウム塩は、特開平8−311018号公報、特開平9−15848号公報、特開2001−122850号公報等を参考に合成することができる。また、重合可能な置換基としてアクリロイルオキシ基あるいはメタクリロイルオキシ基を有するオニウムカチオンは、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等記載の方法で、既存のヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムハライドを塩基性条件下でアクリロイルクロリドあるいはメタクリロイルクロリドと反応させることで合成できる。
【0068】
以上のように合成される1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネートを有するスルホニウム塩を、下記一般式(9)で示されるカルボン酸ハライドと塩基性条件下にて反応させることにより、本発明の上記一般式(2)で示されるスルホニウム塩(酸発生剤)を合成することができる。
R−COCX (9)
(式中、Rは前述の通りである。Xはハロゲン原子を示す。)
【0069】
次に、本発明の上記一般式(2)で示されるスルホニウム塩について、Aがトリフルオロメチル基である場合の合成方法について述べる。
【0070】
1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネートを有するスルホニウム塩の代わりに1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパンスルホネートを有するスルホニウム塩を合成し、その後はAが水素原子である場合と同様の手法を用いることで、本発明の上記一般式(2)において、Aがトリフルオロメチル基であるスルホニウム塩(酸発生剤)を合成することができる。
【0071】
なお、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパンスルホネートを有するスルホニウム塩の合成については、特開2007−145804号公報を参照することができる。
【0072】
上記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生する本発明の酸発生剤の合成法は、前述の通りであるが、あくまでも製法の一つであり、本発明において何ら限定されるものではない。
【0073】
[化学増幅型レジスト材料]
本発明では、高エネルギー線照射又は熱により上記一般式(1)で示されるスルホン酸を発生する酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト材料を提供するものである。このような化学増幅型レジスト材料として、例えば、本発明の酸発生剤、ベース樹脂及び有機溶剤を含有する化学増幅型レジスト材料が挙げられる。
【0074】
本発明の化学増幅型レジスト材料における本発明の酸発生剤は上述の通りであり、その配合量は、ベース樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜80質量部、特に1〜40質量部の割合で配合することが好ましい。配合量が上記範囲内であれば、解像性が向上し、現像/レジスト剥離時に異物の問題が起きることもない。
【0075】
本発明の化学増幅型レジスト材料には、本発明に係る酸発生剤以外の酸発生剤を含有することもできる。本発明に係る酸発生剤以外の酸発生剤(その他の酸発生剤)は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等があり、好ましくは、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで示されるスルホン酸を発生する光酸発生剤が挙げられる。
【化15】
(式中、R、Rb1、Rb2、Rc1、Rc2、Rc3は相互に独立にフッ素原子か、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。あるいはRb1とRb2、及びRc1とRc2は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0076】
、Rb1、Rb2、Rc1、Rc2、Rc3のヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の一価の炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐状アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルケニル基等が挙げられる。上記直鎖状又は分岐状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0077】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0078】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0079】
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0080】
ヘテロ原子が含まれる炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、ヒドロキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイルオキシ基等のエステル結合を置換基として有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を置換基として有する上記炭化水素基、更には、これらのうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0081】
環を形成する場合には、例えば単結合又は合計して炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでもよい2価炭化水素基を示す。上記2価炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、更にこれら2価炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されたものがより好ましい。
【0082】
本発明の化学増幅型レジスト材料におけるその他の酸発生剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜80質量部、特に0.1〜40質量部が好適である。その他の光酸発生剤の割合が上記範囲内であれば、解像性がより向上し、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きることもない。
【0083】
なお、上記その他の光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0084】
ベース樹脂としては、特に下記一般式(7)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位と下記一般式(8)で示される繰り返し単位とを含有する高分子化合物であることが好ましい。
【化16】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基のいずれかを示す。Zは単結合、フェニレン基、ナフチレン基及び(主鎖)−C(=O)−O−Z’−のいずれかを示す。Z’はヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示すか、あるいはフェニレン基又はナフチレン基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLは水素原子を示すか、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、及びカルボン酸無水物から選択されるいずれか一つ以上の構造を有する極性基を示す。)
【0085】
上記一般式(7)のZを変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。
【化17】
【0086】
上記一般式(7)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【化18】
【0087】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。具体的な直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。具体的な置換アルキル基としては、下記のものが例示できる。
【化19】
【0088】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはRL01、RL02、RL03のうち環形成に関与する基はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0089】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0090】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。m’は0又は1、n’は0、1、2、3のいずれかであり、2m’+n’=2又は3を満足する数である。
【0091】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL07とRL10、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の2価炭化水素基を示し、具体的には上記1価炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15、RL14とRL15等)。
【0092】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】
【0093】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0094】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0095】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0096】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化21】
【0097】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0098】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0099】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化22】
【0100】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化23】
【0101】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【化24】
【0102】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化25】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0103】
上記一般式(7)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化26】
【0104】
【化27】
【0105】
【化28】
【0106】
【化29】
【0107】
【化30】
【0108】
【化31】
【0109】
上記具体例はZが単結合の場合であるが、Zが単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。Zが単結合以外の場合における具体例はすでに述べたとおりである。
【0110】
上記一般式(8)において、YLはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物から選択されるいずれか一つ以上の構造を有する極性基を示す。具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化32】
【0111】
【化33】
【0112】
【化34】
【0113】
【化35】
【0114】
【化36】
【0115】
【化37】
【0116】
【化38】
【0117】
【化39】
【0118】
【化40】
【0119】
【化41】
【0120】
上記一般式(8)で示される繰り返し単位を使用する場合において、特にラクトン環を極性基として有するものが最も好ましく用いられる。
【0121】
上記一般式(8)で示される繰り返し単位は、上記一般式(7)で示される繰り返し単位と共重合させて使用するが、さらに他の繰り返し単位と共重合させても構わない。
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物は、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。また、開環メタセシス重合体の水素添加物は特開2003−66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0122】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0123】
レジスト材料用の高分子化合物を合成する一般的な方法としては、例えば不飽和結合を有するモノマー一種あるいは数種を有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これは特開2005−264103号公報を始めとして多数の既知文献を参考にできる。
【0124】
本発明のレジスト材料で使用される有機溶剤としては、前記の酸発生剤(本発明及び本発明以外のもの)、前記ベース樹脂、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0125】
有機溶剤の配合量は、上記ベース樹脂100質量部に対して200〜10,000質量部が好ましく、特に300〜5,000質量部とすることが好ましい。
【0126】
また、本発明の化学増幅型レジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落(0165)〜(0166)に記載されており、その添加量は、通常量とすることができる。
【0127】
また、本発明のレジスト材料には、必要に応じてクエンチャーを1種又は2種以上配合することができる。
【0128】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられ、具体例としては、特開2008−111103号公報の段落(0146)〜(0163)に記載されている。
【0129】
なお、クエンチャーの配合量は、全ベース樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部、特に0.1〜10質量部が好適である。配合量が0.01質量部以上であれば配合効果を確実に得ることができ、20質量部以下であれば感度を良好に保つことができる。
【0130】
更に、上記成分以外に任意成分として必要に応じて、架橋剤、溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素等の他の成分を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は通常量とすることができる。
【0131】
[パターン形成方法]
本発明の化学増幅型レジスト材料は、多層レジスト法(特に2層レジスト法や3層レジスト法)や単層レジスト法のフォトレジスト層を形成するためのレジスト材料として好適に用いられる。
【0132】
即ち、本発明では、前記化学増幅型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介してKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVリソグラフィー、及び電子ビームのいずれかで露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0133】
本発明の化学増幅型レジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークする。
【0134】
次いで目的のパターンを形成するためのマスク(フォトマスク)を上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子ビームを照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。
【0135】
本発明の化学増幅型レジスト材料は、特に高エネルギー線の中でもKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVリソグラフィー、及び電子ビームによる微細パターニングに最適である。
【0136】
露光量は、光露光であれば1〜200mJ/cm、好ましくは10〜100mJ/cm程度、また電子線露光であれば、0.1〜20μC/cm程度、好ましくは3〜10μC/cm程度となるように露光することが好ましい。
【0137】
露光は通常の露光法の他、場合によっては屈折率1.0以上の液体(例えば水、エチレングリコール、グリセリン等)をレジスト塗布膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0138】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0139】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型ともう1種はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
【0140】
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
【0141】
なお、本発明化学増幅型レジスト材料は、現像液として有機溶剤を用いたネガ型パターンの形成に用いることも可能である。
当該有機溶剤の現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸−2−フェニルエチルから選ばれる1種以上を成分として含む現像液等を使用することができ、現像液成分1種又は2種以上の合計が、50質量%以上である現像液を使用することが、パターン倒れ改善等の観点から好ましい。
【0142】
その他の成膜方法、基板等についてはアルカリ現像液を用いたパターン形成方法で説明したものと同様とすることができる。
【0143】
本発明のパターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等のその他の各種工程が行われても良く、これらその他の工程は、常法に従い行うことができる。
【実施例】
【0144】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0145】
[合成例1−1]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピリジン−4−カルボニルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成(PAG−1)
特開2007−145804号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート148g(0.30モル)、イソニコチノイルクロリド塩酸塩64g(0.36モル)、塩化メチレン750gの混合溶液に、トリエチルアミン73g(0.72モル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン3.7g(0.03モル)、塩化メチレン150gの混合溶液を滴下し、その後室温で一晩撹拌した。攪拌後水500gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮し、濃縮残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。析出した結晶をろ別し、50℃で減圧乾燥することで目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピリジン−4−カルボニルオキシ)プロパン−1−スルホネート(PAG−1)を白色結晶として161g得た(収率90%)。
【化42】
【0146】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(H−NMR,19F−NMR/DMSO−d)の結果を図1及び図2に示す。なお、H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
【0147】
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1
1747、1474、1446、1408、1375、1328、1281、1255、1211、1199、1158、1113、1090、1073、1064、996、990、906、842、767、750、705、683、640。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M263((C相当)
NEGATIVE M334((NC‐CO)CH(CF)CFSO相当)
【0148】
[合成例1−2]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成(PAG−2)
特開2007−145804号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート4.9g(10ミリモル)、ニコチノイルクロリド塩酸塩2.1g(12ミリモル)、塩化メチレン20gの混合溶液に、トリエチルアミン2.4g(24ミリモル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン0.1g(1ミリモル)、塩化メチレン5gの混合溶液を滴下し、その後室温で4時間撹拌した。攪拌後水20gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮し、濃縮残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。析出した結晶をろ別し、50℃で減圧乾燥することで目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)プロパン−1−スルホネート(PAG−2)を白色結晶として5.1g得た(収率85%)。
【化43】
【0149】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(H−NMR,19F−NMR/DMSO−d)の結果を図3及び図4に示す。なお、H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
【0150】
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm−1
1741、1590、1475、1446、1419、1376、1330、1288、1255、1214、1199、1160、1110、1074、996、906、843、767、753、738、685、641。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M263((C相当)
NEGATIVE M334((NC‐CO)CH(CF)CFSO相当)
【0151】
[合成例1−3]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(4−ジブチルアミノベンゾイルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成(PAG−3)
ジブチルアミノ安息香酸2.7g(11ミリモル)にオキザリルクロリド1.5g(12ミリモル)を作用させることで調製したジブチルアミノ安息香酸クロリド、特開2007−145804号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート4.9g(10ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液に、トリエチルアミン2.4g(24ミリモル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン0.1g(1ミリモル)、塩化メチレン10gの混合溶液を滴下し、その後室温で2時間撹拌した。攪拌後水30gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮後、t−ブチルメチルエーテルを加えてデカンテーションを行った。残渣を減圧濃縮し、目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(4−ジブチルアミノベンゾイルオキシ)プロパン−1−スルホネート(PAG−3)を油状物として4.2g得た(収率58%)。
【化44】
【0152】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(H−NMR,19F−NMR/DMSO−d)の結果を図5及び図6に示す。なお、H−NMRにおいて微量の残溶剤(塩化メチレン、水)が観測されている。
【0153】
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M263((C相当)
NEGATIVE M460((CNC‐CO)CH(CF)CFSO相当)
【0154】
[合成例1−4]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(4−ジメチルアミノベンゾイルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成(PAG−4)
ジメチルアミノ安息香酸1.8g(11ミリモル)にオキザリルクロリド1.8g(14ミリモル)を作用させることで調製したジメチルアミノ安息香酸クロリド、特開2007−145804号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート4.9g(10ミリモル)、塩化メチレン15gの混合溶液に、トリエチルアミン2.4g(24ミリモル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン0.1g(1ミリモル)、塩化メチレン10gの混合溶液を滴下し、その後室温で2時間撹拌した。攪拌後水30gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮後、t−ブチルメチルエーテルを加えてデカンテーションを行った。残渣を減圧濃縮し、目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(4−ジメチルアミノベンゾイルオキシ)プロパン−1−スルホネート(PAG−4)を油状物として5.0g得た(収率79%)。
【化45】
【0155】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(H−NMR,19F−NMR/DMSO−d)の結果を図7及び図8に示す。なお、H−NMRにおいて微量の残溶剤(塩化メチレン、水)が観測されている。
【0156】
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M263((C相当)
NEGATIVE M376((CHNC‐CO)CH(CF)CFSO相当)
【0157】
[合成例1−5]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(3−(N−フェニルアミノ))プロピオニルオキシプロパン−1−スルホネートの合成(PAG−5)
【化46】
特開2008−133448号公報記載のトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート2.7g(0.005モル)、アニリン1.86g(0.02モル)、塩化メチレン20gを混合し室温で一晩撹拌した。反応溶液を氷冷し、水25gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮し、濃縮残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。析出した結晶をろ別し、50℃で減圧乾燥することで目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(3−(N−フェニルアミノ))プロピオニルオキシプロパン−1−スルホネートを白色結晶として2.9g得た(収率90%)。
【0158】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図9及び図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(塩化メチレン)が観測されている。
【0159】
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1
3355、3061、2970、1770、1603、1500、1476、1448、1371、1323、1248、1170、1141、1073、1022、995、916、841、749、684、642。
【0160】
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C65+相当)
NEGATIVE M-376(CNHCHCH‐CO2)CH(CF3)CF2SO3-相当)
【0161】
[合成例1−6]トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(3−(3−ピリジル)アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成(PAG−6)
【化47】
特開2007−145804号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート79.0g(0.16モル)、3−(3−ピリジル)アクリロイルクロリド塩酸塩49g(0.24モル)、塩化メチレン500gの混合溶液に、トリエチルアミン48.7g(0.48モル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン1.95g(0.016モル)、塩化メチレン100gの混合溶液を氷冷下滴下し、その後室温で12時間撹拌した。反応溶液を氷冷し水900gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて水洗を行い、洗浄した有機層を濃縮し、ジイソプロピルエーテルを加えてデカンテーションを行った。残渣を減圧濃縮し、目的物であるトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(3−(3−ピリジル)アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホネートを油状物として82.4g得た(収率83%)。
【0162】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図11及び図12に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(塩化メチレン、水)が観測されている。
【0163】
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1
3062、1740、1639、1586、1477、1448、1417、1372、1329、1251、1217、1186、1144、1073、1024、995、927、879、835、809、751、685、642。
【0164】
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C65+相当)
NEGATIVE M-360(NCCH=CH‐CO2)CH(CF3)CF2SO3-相当)
【0165】
[合成例1−7]トリフェニルスルホニウム=2−(4−ジメチルアミノベンゾイルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネートの合成(PAG−7)
【化48】
特開2010−116550号公報記載の方法に準じて得たトリフェニルスルホニウム=1,1ジフルオロ−2−ヒドロキシエタンスルホネート85g(0.20モル)、4−ジメチルアミノベンゾイルクロリド55g(0.30モル)、塩化メチレン250gの混合溶液に、トリエチルアミン51g(0.50モル)、N,N’−ジメチルアミノピリジン4.9g(0.040モル)、塩化メチレン100gの混合溶液を氷冷下滴下し、その後室温で12時間撹拌した。反応溶液を氷冷し水180gを加えて反応をクエンチし、有機層を分取後、水洗を行った。水洗後の有機層を濃縮、次いでメチルイソブチルケトンを加えて濃縮し、濃縮残渣に再びメチルイソブチルケトンを加えて反応液から結晶を析出させた。析出させた結晶をろ過し、メチルイソブチルケトンで洗浄を行い、その後減圧乾燥させることで、目的物であるトリフェニルスルホニウム=2−(4−ジメチルアミノベンゾイルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネートを微褐色結晶として106g得た(収率87%)。
【0166】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図13及び図14に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
【0167】
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1
3087、2974、1712、1602、1525、1474、1447、1366、1276、1244、1209、1187、1129、1097、1064、1014、997、972、946、838、775、764、746、700、683、645。
【0168】
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263((C65+相当)
NEGATIVE M-308((CHNC‐CO)CHCFSO相当)
【0169】
本発明のレジスト材料に用いる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例2−1]ポリマー1(P−1)の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸=3−ヒドロキシ−1−アダマンチル7.1gとメタクリル酸3−エチル−3−exo−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル11.0gとメタクリル酸=4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−2−イル6.7gと2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.9gをメチルエチルケトン72.8gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下80℃で撹拌したメチルエチルケトン20.7gに4時間かけて滴下した。滴下終了後80℃を保ったまま2時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液を400gのヘキサンに滴下した。析出した固形物を濾別し、メチルエチルケトン45gとヘキサン195gの混合溶媒で二回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、下記ポリマー1で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は23.6g、収率は95%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【化49】
【0170】
[合成例2−2〜10]ポリマー2〜10(P−2〜P−10)の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−1と同様の手順により、下記表1に示した樹脂を製造した。表1中、各単位の構造を表2及び3に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
[実施例1−1〜1−17、比較例1−1〜1−6]
上記合成例で示した高分子化合物(P−1〜P−10)、更に光酸発生剤(PAG−1〜PAG−7、及びPAG−A〜PAG−D)、アミンクエンチャー及びアルカリ可溶型界面活性剤(F−1)を、表5に示す組成で下記界面活性剤(F−2)(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト液をそれぞれ調製した。
【0174】
【表4】
【0175】
なお、表4において、光酸発生剤、溶剤、アミンクエンチャー、アルカリ可溶型界面活性剤(F−1)、界面活性剤(F−2)は下記の通りである。
【0176】
[酸発生剤]
(PAG−A):トリフェニルスルホニウム ノナフルオロ−1−ブタンスルホネート
(PAG−B):トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(特開2007−145797号公報記載化合物)
(PAG−C):N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド
(PAG−D):トリフェニルスルホニウム カンファースルホネート
【0177】
[有機溶剤]
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
CyHO:シクロヘキサノン
[アミンクエンチャー]
(Q−1):2,6−ジイソプロピルアニリン
【0178】
[界面活性剤]
(F−1):下記ポリマーI(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
重量平均分子量(Mw)=7,300、分散度(Mw/Mn)=1.86
【化50】
【0179】
(F−2):3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(構造式を以下に示す。)
【化51】
【0180】
レジスト材料の評価
[実施例2−1〜2−17及び比較例2−1〜2−6]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液(R−01〜R−20)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、90nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光し、任意の温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0181】
(評価方法)
レジストの評価は、60nmトレンチ(スペース)/160nmピッチのパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察、トレンチ寸法幅が60nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン側壁の垂直性が高い。好ましい形状。
不良:トレンチパターン表層部が閉塞気味、あるいは基板に近い部分でトレンチ寸法
幅が縮小する傾向(テーパー)が強い。好ましくない形状。
【0182】
また、最適露光量におけるトレンチエッジ部のラフネスについて、寸法幅のバラツキ(30点測定、3σ値を算出)を求めることで数値化し、比較した(ラフネス、nm)。
【0183】
更に、最適露光量におけるトレンチ寸法のフォーカス依存性を調べ、解像しているフォーカス範囲を求め焦点深度(DOF、nm)とした。
【0184】
(評価結果)
上記表4に示した本発明のレジスト材料及び比較レジスト材料の評価結果を下記表5に示す。
【表5】
【0185】
上記表5に示した結果より本発明のレジスト材料がトレンチパターンの形状、ラフネス、DOFにおいて良好な性能を示すことが確認できた。
【0186】
レジスト材料の評価(2)
[実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−2]
上記表4に示したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベーク(PAB)し、レジスト膜の厚みを90nmにした。
【0187】
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.74、ダイポール開口90度、s偏光照明)を用い、露光量を変化させながら露光を行い、その後任意の温度にて60秒間ベーク(PEB)し、その後酢酸ブチルを現像液として30秒間現像し、その後ジイソアミルエーテルでリンスした。
【0188】
(評価方法)
レジストの評価は、バイナリーマスク上のデザインが45nmライン/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンについて、光透過部に形成されたラインパターンを電子顕微鏡にて観察した。ライン寸法幅が45nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm)とし、最適露光量におけるパターン断面形状を電子顕微鏡にて観察し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン側壁の垂直性が高い。好ましい形状。
不良:表層部が閉塞気味(T−トップ形状)又はパターン側壁が傾斜した逆テーパー
形状(表層部に近いほどライン幅大)。好ましくない形状。
【0189】
また、露光量を小さくすることでライン寸法を細らせた場合に、ラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0190】
(評価結果)
上記表4に示した本発明のレジスト材料及び比較レジスト材料の評価結果を下記表6に示す。
【表6】
【0191】
表6の結果より、本発明のレジスト材料が有機溶剤ネガ型現像においても良好なパターン形状と倒れ耐性を示すことがわかった。
【0192】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14