(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部の外表面とは反対側の裏面の、前記突出位置から前記解除位置へのスライド方向の前方に位置する部分に、前記操作部収容穴の縁との引っ掛かりを防止するためのテーパ面が形成されている請求項5に記載の電子カセッテ。
前記操作部の外表面の平面形状において、前記突出位置から前記解除位置へのスライド方向の後方に位置する部分は、前記スライド方向に対して直交する直線、または前記スライド方向の前方に向けて凸の曲線である請求項5ないし8のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および
図2において、電子カセッテ2は、画像検出部10とこれを収容する可搬型の筐体11とで構成される。筐体11は例えば導電性樹脂で形成されている。
図1に示すように、X線が入射する筐体11の前面12には矩形状の開口が形成されており、開口には天板として透過板13が取り付けられている。透過板13は、軽量で剛性が高く、かつX線透過性が高いカーボン材料で形成されている。
【0028】
図2において、筐体11の背面14には、画像検出部10を駆動するための電力を供給するバッテリユニット15が装着される。背面14には、バッテリユニット15が着脱自在に装着されるバッテリ装着部16が設けられている。バッテリユニット15にはコネクタ17が、バッテリ装着部16にはソケット18(ともに
図3および
図4参照)がそれぞれ設けられており、バッテリユニット15がバッテリ装着部16に装着されたときに、コネクタ17とソケット18が嵌合して電気的に接続される。
【0029】
バッテリユニット15には操作部19が設けられている。操作部19は、後述するように、バッテリユニット15をバッテリ装着部16に装着した状態でロックするロック機構45(
図4以下参照)のロックとロックを解除する操作を行うためのものである。
【0030】
筐体11は扁平な箱型の形状を有し、フイルムカセッテやIPカセッテ、CRカセッテと略同様の国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさである。電子カセッテ2は、X線を照射するX線源と前面12が対向する姿勢で保持されるよう、立位撮影台や臥位撮影台のホルダに着脱自在にセットされる。また、電子カセッテ2は、立位撮影台や臥位撮影台にセットされる他に、被写体が仰臥するベッド上に置いたり被写体自身に持たせたりして単体で使用されることもある。さらに電子カセッテ2は、フイルムカセッテやIPカセッテ、CRカセッテと略同様の大きさであるため、これらのカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。なお、電子カセッテ2は、国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさでなくともよい。
【0031】
筐体11の上側部には、オペレータが電子カセッテ2を持ち運ぶ際に手が通される把手20が形成されている。また、電子カセッテ2の電源オン/オフやバッテリユニット15の残量を報せるためのLEDなどのインジケータ21が設けられている。把手20およびインジケータ21が設けられた側と反対側の筐体11の下側部の2つの角には、画像検出部10を落下衝撃から保護する衝撃吸収材22が取り付けられている。筐体11は、電子カセッテ2への電磁ノイズの侵入、および電子カセッテ2から外部への電磁ノイズの放射を防止する電磁シールドとしても機能する。
【0032】
図3において、画像検出部10はパネル部25と回路部26とを有する。パネル部25は、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板を有し、この基板上に撮像領域27が形成されている。撮像領域27には、X線の到達線量に応じた電荷を蓄積する複数の画素28が、所定のピッチでn行(x方向)×m列(y方向)の行列状に配置されている。n、mは2以上の整数であり、例えばn、m≒2000である。なお、画素28の配列は、本例のように正方配列でなくともよく、ハニカム配列でもよい。
【0033】
パネル部25は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素28で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd2O2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)などからなり、画素28が配列された撮像領域27の全面と対向するように配置されている。なお、シンチレータとTFTアクティブマトリクス基板は、X線の入射する側からみてシンチレータ、基板の順に配置されるPSS(Penetration Side Sampling)方式でもよいし、逆に基板、シンチレータの順に配置されるISS(Irradiation Side sampling)方式でもよい。また、シンチレータを用いず、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレンなど)を用いた直接変換型のパネル部を用いてもよい。
【0034】
画素28は、周知のように、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生してこれを蓄積する光電変換部29、およびスイッチング素子であるTFT30を備える。光電変換部29は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。光電変換部29は、下部電極にTFT30が接続され、上部電極にはバイアス線が接続されている。バイアス線は画素28の行数分(n行分)設けられて1本の母線に接続されている。母線はバイアス電源に繋がれている。母線とその子線のバイアス線を通じて、バイアス電源から光電変換部29の上部電極にバイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性をもつ上部電極と下部電極に移動し、光電変換部29に電荷が蓄積される。
【0035】
TFT30は、ゲート電極が走査線31に、ソース電極が信号線32に、ドレイン電極が光電変換部29にそれぞれ接続される。走査線31と信号線32は格子状に配線されており、走査線31は1行分の画素28に対して共通に1本ずつ、画素28の行数分(n行分)設けられている。また信号線32は1列分の画素28に対して共通に1本ずつ、画素28の列数分(m列分)設けられている。走査線31はゲートドライバ33に接続され、信号線32は信号処理回路34に接続される。
【0036】
回路部26は、ゲートドライバ33、信号処理回路34、制御部35などを有している。ゲートドライバ33は、制御部35の制御の下にTFT30を駆動することにより、X線の到達線量に応じた信号電荷を画素28に蓄積する蓄積動作と、画素28から蓄積された信号電荷を読み出す読み出し動作と、画素28に蓄積された不要電荷を掃き出すリセット動作とを画像検出部10に行わせる。蓄積動作ではTFT30がオフ状態にされ、その間に画素28に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ33から同じ行のTFT30を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを所定の間隔で順次発生して、走査線31を1行ずつ順に活性化し、走査線31に接続されたTFT30を1行分ずつオン状態とする。画素28の光電変換部29に蓄積された電荷は、TFT30がオン状態になると信号線32に読み出されて、信号処理回路34に入力される。
【0037】
信号処理回路34は、積分アンプ、CDS回路、マルチプレクサ、A/D変換器などを備える。積分アンプ、CDS回路は各信号線32に対して個別に接続される。積分アンプは、信号線32から入力される電荷を積算し、アナログ電圧信号に変換して出力する。CDS回路は、積分アンプからの電圧信号に対して相関二重サンプリングを施し、積分アンプからの電圧信号を所定期間保持する。マルチプレクサは、パラレルに接続される各列のCDSから順に1つのCDSを電子スイッチで選択し、選択したCDSから出力される電圧信号をシリアルにA/D変換器に入力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されたアナログの電圧信号をデジタルの画素値に変換して、これをメモリ36に出力する。メモリ36には、画素値がそれぞれの画素28の座標に対応付けられて記録される。
【0038】
ゲートドライバ33からゲートパルスが発生されてTFT30を1行分ずつオン状態とする毎に、メモリ36には1行分の画素28の画素値が記録される。全行の読み出しが完了すると、1枚分のX線画像を表す画像データがメモリ36に記録される。この画像データはメモリ36から読み出され、制御部35で各種画像処理を施された後、通信部37を通じてコンソールなどの外部装置に出力される。こうして被写体のX線画像が検出される。
【0039】
通信部37は、無線通信用の電波を発生するアンテナや発振回路、および有線通信用のソケットなどを有し、無線通信、有線通信のどちらにも対応可能である。通信部37は、コンソールなどの外部装置との間で、X線画像やX線の照射時間といった撮影条件の情報を遣り取りする。なお、無線通信は電波に限らず赤外線などの光通信を採用してもよい。
【0040】
電源回路38は、バッテリ装着部16のソケット18を介してバッテリユニット15と接続される。電源回路38は、制御部35の制御の下、バッテリユニット15からの所定電圧の電力を、画像検出部10の各部に適合した電圧の電力に変換して各部に供給する。また、電源回路38は、バッテリユニット15から供給される電力の電圧レベルを監視してバッテリユニット15の残量を検出し、検出結果を制御部35に出力する。制御部35は、電源回路38から送られるバッテリユニット15の残量に応じて、インジケータ21の表示を切り替える。なお、図示は省略するが、電源回路38には外部電源から引かれた電源ケーブルを接続することができ、バッテリユニット15以外から電力を受けることも可能である。
【0041】
図4において、バッテリユニット15は、バッテリ15aと、バッテリ15aを収容するバッテリケース15bとで構成されている。バッテリケース15bには、バッテリユニット15をバッテリ装着部16に装着した状態でロックするロック機構45が設けられている。ロック機構45は、バッテリユニット15がバッテリ装着部16に装着されたときに、バッテリ装着部16からのバッテリユニット15の不用意な脱落を防止する。
【0042】
バッテリケース15bは、平面形状が長方形の薄い箱形をしている。操作部19は、バッテリケース15bの外表面の一面を成す上面46に設けられている。上面46には、操作部19を上面46に対して突没自在に収容する操作部収容穴48が形成されている。上面46は、バッテリケース15bの下方部分よりも一回り大きなサイズで形成されており、外側に張り出している。
【0043】
操作部19は円板形状の平板である。操作部19は、外部から操作ができるように外表面49を外部に露呈した状態で操作部収容穴48に収容される。外表面49は全く凹凸のない平面である。操作部収容穴48の平面形状および平面サイズは、操作部19をほぼ隙間なく収容できるように、操作部19の平面形状および平面サイズと同一に形成されている。操作部収容穴48は操作部19を突没自在に収容する穴であるため、その機能上、当然ながら操作部19の外周と操作部収容穴48の内周の間には僅かな隙間が必要である。したがって、平面サイズが同一とは、操作部収容穴48の平面サイズが、操作部19の平面サイズよりも若干、例えば数ミリ程度大きい場合も含む概念である。同様に、平面形状が同一とは、完全に同一な相似形に加えて、操作部19を突没自在とするために必要とされる僅かな形状の違いを許容する概念である。
【0044】
操作部19の平面サイズは、例えば直径20mmである。操作部19の平面サイズは、手の平よりも小さい平面サイズである直径50mm以下であることが好ましい。操作部19の平面サイズを50mm以下とするのは、50mmよりも大きいと、筐体11の背面14やバッテリケース15bの上面46に付着した汚れ(塵、埃、被写体の汗、血液など)を布などで拭き取る際に、手の平で誤って操作部19が操作されてしまうおそれがあるためである。
【0045】
図5において、操作部収容穴48は、ロック機構45によるロックが掛かった状態において、操作部19の外表面49がバッテリケース15bの上面46に対して平坦になる収容位置で操作部19を収容することが可能である。ここで、平坦とは、外表面49と上面46の高さが完全に一致する同一平面となる場合に加えて、例えば数ミリ程度の若干の誤差がある場合を含む。操作部19が収容位置にあるとき、操作部19は電子カセッテ2の外表面から突出しないので、操作部19が被写体の体や衣服に引っ掛かることはない。また、操作部19が収容位置にあるときは電子カセッテ2の外表面に凹みも生じないので、汚れも溜まりにくく、付着した汚れの拭き取りもしやすい。
【0046】
操作部19は、収容位置にあるときに操作部収容穴48内に押し込む押し込み操作が行われると、
図4に示すように、操作部収容穴48から突出する突出位置に移動する。そして、突出位置にある操作部19を突出方向と直交する横方向(
図8に示す矢印D1方向)にスライドして解除位置に移動させることにより、ロック機構45のロックが解除される。つまり、収容位置にある操作部19に対する押し込み操作と、押し込み操作によって突出位置に移動した操作部19を解除位置に向けてスライドさせるスライド操作の2段階の操作により、ロック機構45のロックが解除される。
【0047】
押し込み操作の際には、操作部19は収容位置から操作部収容穴48内に沈み込むため、操作部収容穴48は、この操作部19の沈み込みを許容する深さを有する(
図13参照)。また、突出位置においては、操作部19のスライド操作を可能とするため、外表面49は上面46に対して操作部19の厚み分以上の高さに突出する。例えば、操作部19の厚みを2mmとすると、外表面49は上面46に対して2mm以上浮き上がる。
【0048】
図4において、バッテリケース15bの側面50には、矩形状の切り欠き51が形成されており、切り欠き51にはバッテリ装着部16のロック溝63と係合するロック爪52が突没自在に配置されている。操作部19およびロック爪52は、ロック機構45を構成する。ロック爪52は、操作部19のスライド操作に連動して切り欠き51に対して突没し、これによりロック機構45のロックとロック解除が行われる。側面50と反対側の側面53には、凸状のコネクタ17と、コネクタ17を挟んだ両脇に凸状の1対の係合部54が設けられている。
【0049】
バッテリ装着部16は背面14に形成された穴である。バッテリ装着部16は、バッテリユニット15がほぼ隙間なく収まるように、バッテリユニット15の平面形状および平面サイズと同一形状および同一サイズの長方形をしている。バッテリ装着部16の内周面には段差が形成されている。バッテリユニット15が装着されたときに、段差はバッテリケース15bの上面46の外側に張り出した部分と当接して、バッテリユニット15の装着時の厚み方向の位置を規制する。バッテリユニット15が装着されたときには、バッテリケース15bの上面46と筐体11の背面14とが平坦となる(
図5参照)。ここで、平坦とは、上面46と背面14の高さが完全に一致する同一平面となる場合に加えて、例えば数ミリ程度の若干の誤差がある場合を含む。
【0050】
バッテリ装着部16の長辺側の側面60には、バッテリユニット15のコネクタ17と接続するソケット18と、1対の係合部54と係合する1対の係合穴61が設けられている。バッテリユニット15を装着する際には、バッテリユニット15をバッテリ装着部16に対して傾けた状態で、コネクタ17とソケット18の接続、および係合部54と係合穴61の係合が行われるので、ソケット18や係合穴61は、コネクタ17および係合部54の外形よりも大きめに形成されている(
図14など参照)。
【0051】
また、側面60と対向する側面62には、ロック爪52と係合するロック溝63と、ガイド溝64とが形成されている。ガイド溝64は、バッテリユニット15を装着する際にバッテリ装着部16の上方からロック溝63に向けて進入するロック爪52をロック溝63まで案内するための溝で、ロック溝63の上方の側面62を切り欠いて形成される。ガイド溝64は、ロック爪52やロック溝63よりも幅広に形成されており、バッテリユニット15が装着される際にロック爪52の位置が多少ずれていても、ロック爪52を受け入れることが可能である。
【0052】
バッテリ装着部16の短辺側の両側面65、66には、ポップアップ機構67が設けられている。ポップアップ機構67は、バッテリ装着部16に装着されたバッテリユニット15に対して、バッテリ装着部16から押し出す方向に付勢力を与えることにより、ロックが解除されたときに、バッテリユニット15をバッテリ装着部16からポップアップさせる。ポップアップ機構67は、バッテリユニット15が装着されたときに、バッテリケース15bの上面46の外側に張り出した部分と当接する。ポップアップ機構67は、ロック溝63が形成される側面62に寄った位置に設けられているので、バッテリユニット15は、ロックが解除されたとき、ポップアップ機構67の付勢により、ロック爪52が設けられた側面50側がバッテリ装着部16から浮き上がる。
【0053】
図6〜
図9に示すように、ロック機構45は、操作部19およびロック爪52に加えて、可動部75、ケース76、第1バネ77、第2バネ78などを備えている。可動部75は、操作部19に取り付けられ、操作部19と一体に変位する。
図5のA−A線に沿う断面を示す
図6ないし
図8において、可動部75は、操作部19が操作部収容穴46に対して突没する方向である上下方向に延びる円柱状の軸部79と、軸部79の下端に連設され、第1バネ77からの押圧を受ける被押圧部80とを有している。被押圧部80は、軸部79よりも径が太い略直方体形状をしている。
【0054】
軸部79の上端は、操作部19の裏面の中央に取り付けられて固定されている。上述のとおり、操作部19は、
図4に示す突出位置から、突没方向である上下方向に対して直交する
図8に示す矢印D1方向(スライド方向)とその反対の方向にスライド可能である。操作部収容穴48の底面81には、軸部79が挿通され、かつ、軸部79の矢印D1方向の移動を案内する長穴状のスライドガイド82が形成されている(
図10も参照)。スライドガイド82の下方は空洞83になっており、この空洞83内に、操作部19および軸部79の一部を除くロック機構45の各部が収容される。
【0055】
被押圧部80には、第1バネ77を収容するバネ収容穴84が設けられている。バネ収容穴84は、被押圧部80の下端から上方に向けて形成された有底の穴である。第1バネ77は圧縮コイルバネで形成されており、軸方向を上下方向にした姿勢で、上端がバネ収容穴84の上端面に当接した状態で収容される。
【0056】
ケース76は箱形をしており、軸部79の上端部を除いて被押圧部80を含む可動部75の大半を収容する。ケース76の上端部である天板には、軸部79が挿通される挿通穴85が形成されている。挿通穴85は軸部79とほぼ同径である。ケース76は、空洞83内において上下方向の移動が規制されており、矢印D1方向とその反対方向のみにスライド移動する。ケース76の底板内面には第1バネ77の下端が当接する。ケース76は上下方向の移動が規制されているため、第1バネ77の付勢力によって可動部75がケース76に対して上方に付勢され、その結果、操作部19が突出位置に向けて付勢される。被押圧部80は軸部79が挿通される挿通穴85よりもサイズが大きいため、操作部19および可動部75の上方への移動は、被押圧部80の上端とケース76の天板内面とが当接した
図6などに示す位置で規制される。この位置が突出位置に対応する。
【0057】
また、操作部19および可動部75の下方への移動は、操作部19が
図7に示す収容位置を超えて、操作部収容穴48内に沈み込み、操作部19の裏面と操作部収容穴48の底面81が当接する押し込み位置(
図13参照)で規制される。被押圧部80は、ケース76内で操作部19に連動して上下動するので、ケース76は、その上下方向の高さが、操作部19の上下方向への移動量が確保されるのに必要十分なサイズで形成されている。
【0058】
ケース76の下端部には、ロック爪52が取り付けられている。ロック爪52は、ケース76のスライド方向である矢印D1方向と平行に延びた切片状の部材である。ロック爪52の先端部には、ロック爪52がスムーズにガイド溝64によってロック溝63に案内されるよう、テーパ面86が形成されている。
【0059】
ロック爪52は、ケース76のスライド移動に連動して、先端部が切り欠き51から突出する
図6などに示すロック位置と、切り欠き51内に引き込まれる
図8に示す解除位置との間で移動する。ロック爪52の位置と操作部19の位置との対応関係は、
図6、
図7などに示すように操作部19が収容位置、突出位置、および押し込み位置にあるときには、ロック爪52はロック位置にあり、
図8に示すように突出位置にある操作部19が解除位置にスライド操作されたときには、ロック爪52も解除位置に移動する。
【0060】
ケース76は、圧縮コイルバネで形成された第2バネ78によって、ロック爪52がロック位置に向かう矢印D1方向と反対の方向に付勢されている。
図6などに示すように、ケース76は、ロック位置において、空洞83の側面50側の内壁87と当接する。操作部19の突出位置から解除位置に向けてのスライド操作は、第2バネ78の付勢に抗して行われる。ケース76は、解除位置において、内壁87と対向する空洞83の内壁88と当接する。空洞83の内壁87、88によって、ロック爪52および操作部19のスライド方向の移動量が規制される。操作部19に矢印D1方向の力が加えられていないときは、第2バネ78の付勢によって、操作部19は
図6などに示す突出位置で静止する。
【0061】
内壁88と対向するケース76の側板外面には、第2バネ78に挿通される円柱状の軸89が取り付けられている。軸89は、内壁88に形成された円筒状の穴90に挿入されて嵌合している。ケース76がスライドすると、軸89は穴90内で軸方向に移動する。軸89と穴90の嵌合により、ケース76の上下方向の移動が規制される。
【0062】
図9および
図10に詳しく示すように、被押圧部80の内壁88側の側面91には、カム溝92が形成されている。カム溝92と対向する位置には、スライドカム93が設けられている。スライドカム93は、ケース76に取り付けられている。カム溝92とスライドカム93は、突出位置にある操作部19に対して押し込み操作が行われたときに、第1バネ77の付勢に抗して操作部19を収容位置に保持し、かつ、収容位置にある操作部19に対して押し込み操作が行われたときに、保持を解除して、操作部19を突出位置に移動させる保持機構94を構成する。
【0063】
スライドカム93は、ケース76に形成されたスライドレール95にスライド自在に取り付けられている。スライドレール95により、スライドカム93は、被押圧部80およびカム溝92の移動方向である上下方向に対して直交する
図10に示すD2方向にスライドする。D2方向は、
図8で示したケース76のスライド方向である矢印D1方向と直交する方向であり、
図6ないし
図8において奥行き方向に対応する。なお、
図9は、
図5のB−B線に沿う断面図である。
【0064】
スライドカム93にはカム溝92に進入してカム溝92と係合するカムピン96が設けられている。カム溝92は略Y字形状をしており、その中央に略ハート形のカム突起97が設けられている。カムピン96は、カム溝92が上下方向に移動する際に、D2方向に移動しながら、カム溝92内においてカム突起97の外周を時計方向に周回する。カムピン96は、突出位置にある操作部19への押し込み操作と、収容位置にある操作部19への押し込み操作の合計2回の押し込み操作が行われると、カム突起97の外周を一回りする。
【0065】
図6などでは、カムピン96とカム突起97との係合が外れており、操作部19は突出位置にある。この状態から、
図11に示すように第1バネ77の付勢に抗して上面46に垂直な下方(矢印D3方向)に操作部19が押し込み操作されると、可動部75の矢印D3方向への移動に伴い、カムピン96はカム突起97の下部に突き当たった後、矢印D4で示すようにカム突起97の左側のカム溝92を相対的に摺動する。そして、カムピン96はカム突起97の上部に到達する。
【0066】
その後操作部19に対する矢印D3方向への操作力が解除されると、
図12に示すように、可動部75が第1バネ77の付勢力により上方(矢印D3方向とは反対方向)に戻されるとともに、カムピン96がカム突起97に係合する。この状態では、操作部19は収容位置にあり、上面46と外表面49とが同一平面となる。バッテリユニット15がバッテリ装着部16に装着されたときには、上面46と背面14とが同一平面となるため、結局、収容位置においては、背面14、上面46、および外表面49が同一平面となる。
【0067】
図12の収容位置から、
図13に示すように再度矢印D3方向に操作部19が押し込み操作されると、可動部75の矢印D3方向への移動に伴い、カムピン96とカム突起97との係合が外れ、カムピン96はカム溝92の上部に突き当たる。その後操作部19に対する操作力が解除されると、可動部75が第1バネ77の付勢力により上方に戻されるとともに、矢印D5で示すようにカムピン96がカム突起97の右側のカム溝92を相対的に摺動して、
図6などに示す元の位置に戻る。これにより操作部19は突出位置に戻る。なお、保持機構としては、上記のカム溝92、スライドカム93、およびハート型のカム突起97で構成されるものに限らず、回転カムやラチェットカムを用いた周知の構成を採用してもよい。
【0068】
次に、バッテリ装着部16にバッテリユニット15を装着する際の手順について説明する。まず、
図6などに示すように操作部19を突出位置としたうえで、
図14に示すように、背面14に対して側面53が下になるよう斜めにした状態で、バッテリユニット15をバッテリ装着部16の上方から矢印D2方向に挿入する。そして、ソケット18および係合穴61にコネクタ17および係合部54をそれぞれ挿入する。ソケット18および係合穴61はコネクタ17および係合部54の外形よりも大きめに形成されているため、コネクタ17および係合部54をソケット18および係合穴61に容易に挿入可能である。
【0069】
次いで、
図15に示すように、上面46が背面14とほぼ平行になるよう側面50側の上面46を矢印D3方向に押し込む。この過程でロック爪52の先端がガイド溝64に嵌り込み、テーパ面86がガイド溝64に押されて、ロック爪52が切り欠き51内に没する方向に力が働く。この力により操作部19が第2バネ78の付勢に抗して矢印D2方向にスライドし、操作部19は
図8に示す解除位置近くまで移動する。
【0070】
側面50側の上面46を矢印D3方向に押し込んでいくと、ロック爪52がガイド溝64に案内されてロック溝63に近付く。ガイド溝64およびテーパ面86によって、ロック爪52は余計な力が加わることなくロック溝63にスムーズに誘導される。また、側面50側の上面46の張り出した部分にポップアップ機構67が当接する。このポップアップ機構67の上方への付勢に抗してさらに側面50側の上面46を矢印D3方向に押し込んでいくと、
図16に示すようにロック爪52がロック溝63に嵌り込み、バッテリユニット15がバッテリ装着部16内に収容される。このとき、操作部19は解除位置近くから第2バネ78の付勢力によって
図6などに示す突出位置に自動的に戻され、ロック爪52が切り欠き51から突出するロック位置となる。したがってバッテリユニット15の上方への移動が制限され、もってバッテリユニット15がバッテリ装着部16に装着された状態でロックされる。第2バネ78の付勢により、操作部19が解除位置から突出位置に自動的に戻されるので、わざわざ操作部19を解除位置から突出位置に操作する手間が省ける。なお、
図14〜
図16においては、バッテリ装着部16を
図4のC−C線に沿う断面図で示している。
【0071】
その後、操作部19を矢印D3方向に押し込み操作し、
図5などに示すように操作部19を収容位置とする。このロック状態においては、上面46、外表面49、背面14が同一平面となり、背面14に汚れが溜まる凹みが存在しない。また、外表面49自体も凹凸のない平面である。このため衛生的であり凹みに溜まる汚れを掃除する必要もない。また、背面14には凸部も存在しないため、電子カセッテ2を被写体が仰臥するベッド上に置いたり被写体自身に持たせたりして単体で使用する場合に、凸部が被写体の衣服などに引っ掛かるといったことがない。
【0072】
続いて、バッテリ装着部16からバッテリユニット15を取り外す際の手順について説明する。まず、
図5などに示す操作部19が収容位置にある状態から、
図13に示すように操作部19を矢印D3方向に押し込み操作し、カムピン96とカム突起97との係合を解除する。その後操作部19から指を離して操作部19から操作力を除き、第1バネ77の付勢力により操作部19を突出位置とする。次いで、
図8に示すように第2バネ78の付勢に抗して操作部19をD1方向にスライド操作し、操作部19を解除位置とする。こうすることでロック爪52が切り欠き51に没してロック爪52とロック溝63との係合が解除され、バッテリユニット15の上方への移動が許容される。スライド操作時には突出位置にある操作部19の外周を指でつまむか押せばよいため、外表面49に滑り止め用のリブなどを設けなくとも操作に支障はない。このような押し込み操作とスライド操作の2段階の操作によりロックが解除される。
【0073】
ポップアップ機構67によって、バッテリケース15bの上面46の張り出した部分に対して上方に押し出す力が与えられているので、ロック爪52とロック溝63との係合が解除されると同時にバッテリユニット15の側面50側がバッテリ装着部16から浮き上がる。このバッテリ装着部16から浮き上がったバッテリユニット15の操作部19を指でつまみ、
図14の矢印D2方向と反対方向にバッテリユニット15を引き出すことで、バッテリユニット15をバッテリ装着部16から取り外す。このように、バッテリユニット15をバッテリ装着部16から取り外すときには、上面46から浮き上がった突出位置にある操作部19が把手の役割を果たすので、取り外しが容易である。
【0074】
なお、
図17に示す操作部100のように、外表面49と反対側の裏面101の矢印D1方向の前方に位置する部分にテーパ面102を設けてもよい。テーパ面102により、操作部100を矢印D1方向にスライド操作したときに、操作部100の矢印D1方向の前方に位置する部分の角が操作部収容穴48の縁に衝突してそれ以上スライドさせることができないという事態を避けることができる。
【0075】
上記実施形態では、操作部19をスライドさせることでロックとロック解除を行うロック機構45を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図18に示すロック機構105のように、操作部106を回転させることでロックとロック解除を行ってもよい。
【0076】
図18(A)において、ロック機構105は、保持機構などの基本的な構成は上記実施形態のロック機構45と同じであるが、ロック爪52の代わりに先が丸まった舌状のロック爪107をもち、矢印D6で示すように操作部106がその中心軸まわりに回転可能である点で異なる。この場合、上記実施形態の第2バネ78と同様の機能をもつバネとして、ケース76を反時計回りの方向(矢印D7方向と反対の方向)に付勢するトーションバネ(図示せず)が用いられる。また、ロック爪107がのぞくバッテリユニットの側面108と対向するバッテリ装着部の側面109には、ロック爪107と対応する位置に、ロック爪107が回転するときの逃げ部をもつ断面略半円状のロック溝110が形成されている。
【0077】
操作部106に力が加えられていないときには、上記実施形態と同様、操作部106は
図18(B)に示すように操作部収容穴111から浮き上がった突出位置にあり、また、トーションバネの付勢力によって、ロック機構105はロック爪107が側面108から突出する
図18(A)に点線と実線で示す位置(ロック位置)で静止する。ロック爪107はロック溝110と係合し、これによりバッテリ装着部にバッテリユニットがロックされる。操作部106が突出位置にあるときに、トーションバネの付勢に抗して操作部106を時計回りの方向である矢印D7方向に回転させると、
図18(A)に二点鎖線で示すようにロック爪107が側面108内に引っ込み(解除位置)、ロックが解除される。このような構成とすれば、上記実施形態のように操作部収容穴の底面に長穴状のスライドガイドを設ける必要がないため、バッテリユニットの気密性、水密性が確保される。
【0078】
なお、操作部を押し込み操作して操作部収容穴から浮き上がらせたうえで回転操作するのではなく、操作部を操作部収容穴の奥に押し込んだうえで回転操作することで、ロックが解除される構成としてもよい。
【0079】
操作部の外表面の平面形状は上記実施形態の真円状に限らず楕円状でもよい。また、例えば
図19(A)に示すように、スライド方向である矢印D1方向の後方に位置する部分115を、矢印D2方向に対して直交する直線状とした操作部116や、矢印D2方向の後方に位置する部分115を、指の腹の形状に倣った矢印D1方向の前方に向けて凸の曲線とした
図19(B)に示す操作部117、あるいは
図19(C)に示す矢印D1方向の後方に位置する部分115だけでなく前方に位置する部分118を、矢印D1方向に対して直交する直線状とした操作部119を用いてもよい。操作部を回転操作する
図18に示す例では、
図19(D)に示すように、回転方向である矢印D7方向の後方の部分120を周囲から角状に突き出させた操作部121を用いてもよい。操作部116、117、119、121によって、矢印D1方向または矢印D7方向に力が掛けやすくなる。また、操作部119は、矢印D1方向の前方に位置する部分118にも指が掛けやすいため、上記実施形態のロック機構45に適用した場合、第2バネ78の付勢により解除位置からロック位置に操作部119が戻される途中で、ロック爪52が切り欠き51の縁に引っ掛かったり、操作部119が操作部収容穴49の縁に引っ掛かるなどして、ロック爪52がロック位置に正常に戻りきらなかったときに、矢印D1方向の前方に位置する部分118を押すことで、上記のような引っ掛かりを解くためのリカバリー用として機能する。
【0080】
操作部のスライド方向の前方に位置する部分118と操作部収容穴の縁との引っ掛かりを防止するためには、上記実施形態の円形状、あるいは
図19(A)、(B)などのように、スライド方向の前方に位置する部分118がスライド方向の前方に向けて凸の曲線であることが好ましい。なお言うまでもないが、
図19に示す例においても、操作部収容穴の平面形状および平面サイズは、操作部をほぼ隙間なく収容できるように、操作部の平面形状および平面サイズと同一に形成される。
【0081】
上記実施形態では、収容位置にある操作部を押し込み操作して操作部収容穴から浮き上がらせたうえで、操作部をスライド操作、または回転操作することでロックを解除する、いわゆるツーアクションのロック解除の構成を例示したが、ワンアクションでロックを解除する構成としてもよい。例えば、上記実施形態の自己保持型の押しボタンスイッチではなく、1回の押し込み操作で指を離したら操作部が上面と同一平面となる元の位置に自動的に復帰するモーメンタリタイプの押しボタンスイッチとし、1回の押し込み操作でロックが解除される構成としてもよい。あるいは、ロック爪の突没動作をソレノイドなどで行わせ、操作部が1回操作されたらロックが解除される構成としてもよい。さらには、
図18の例で、操作部を操作部収容穴から浮き上がらせたり押し込んだりすることなく、回転操作のみでロックが解除される構成としても可である。ただし、ワンアクションでロックが解除される構成であると、オペレータが意図しないときにロックが解除されてしまうおそれがあるため、上記実施形態のようにツーアクション、またはそれ以上の段階的な操作でロックが解除される構成とすることが好ましい。また、これと併せて操作部の外表面の平面サイズを50mm以下とすることで、さらに不用意なロックの解除を防止することができる。
【0082】
上記実施形態では、操作部およびロック機構をバッテリユニットに、ロック溝を筐体に設けているが、逆にロック溝をバッテリユニットに、操作部およびロック機構を筐体に設けてもよい。しかし、操作部およびロック機構を筐体に設ける場合は筐体に穴を開ける必要があり、筐体の気密性、水密性が損なわれて画像検出部などの内部部品の故障の原因になる。また、ロック機構が破損した場合は電子カセッテごと修理に出す必要があり、場合によっては電子カセッテを買い替えなくてはならなくなる。ロック機構は、操作部を収容位置や突出位置、解除位置に移動させるために構成が複雑にならざるを得ず、したがって比較的壊れやすい。このため、ロック機構が破損する度に電子カセッテを修理に出したり買い替えたりしていると相当な出費となる。対して上記実施形態のようにバッテリユニットにロック機構を設けておけば、筐体の気密性、水密性が確保されるうえ、ロック機構が破損しても比較的安価で手に入りやすいバッテリユニットを交換するだけで済むので経済的である。
【0083】
上記実施形態では、バッテリユニットがバッテリ装着部に装着されたときに、バッテリユニットの上面が筐体の背面から露呈する例を挙げて説明したが、筐体の一部を、バッテリ装着部の開口に嵌ってバッテリユニットごとすっぽりと覆う平板状の蓋とし、この蓋にロック機構を設けてもよい。ただし、蓋にロック機構を設けるためには、蓋にある程度の厚みが必要となり、さらに蓋の上面と筐体の背面を同一平面とするためにはバッテリ装着部の深さをその分深くしなければならないため、筐体にもある程度の厚みとスペースが必要となる。したがって、上記実施形態のように蓋がない構成としたほうが筐体の薄型化に寄与するため好ましい。
【0084】
また、筐体の背面ではなく、筐体の側面にバッテリ装着部を設けてもよい。この場合は上記実施形態のようにバッテリユニットの上面が露呈するようにバッテリ装着部を縦穴式に穿つのではなく、バッテリユニットの1側面が露呈するようバッテリ装着部を横穴式に穿つ。
【0085】
上記実施形態では、外表面が凹凸のない平面の操作部を例示したが、操作部のごく一部に、電子カセッテの取り回しに邪魔にならない程度の高さの滑り止め用のリブを設けてもよい。
【0086】
上記実施形態では、TFT型の画像検出部を例示しているが、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の画像検出部を用いてもよい。さらに、本発明は、X線に限らず、γ線などの他の放射線を撮影対象とした場合にも適用することができる。