(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱線反射層の前記層Aおよび前記層Bの反対側に、前記条件(1)または(2)を満たす第二の層(A)及び第二の層(B)を、前記層A、前記層B、前記第二の層(A)および前記第二の層(B)の順で有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
前記熱線吸収層に含まれる前記金属酸化物粒子の少なくとも一種類が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、およびセシウム含有酸化タングステン(CWO)のいずれかである請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
請求項14に記載の合わせガラス用中間膜と、少なくとも2枚のガラス板を有し、前記2枚のガラス中に前記合わせガラス用中間膜が挿入されたことを特徴とする合わせガラス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[熱線遮蔽材]
本発明の熱線遮蔽材は、銀平板粒子を含む熱線反射層と、複数種類の金属酸化物粒子を含有する熱線吸収層とを有し、前記熱線反射層における銀平板粒子の含有量が、15〜45mg/m
2であることを特徴とする。
このような構成により、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができる熱線遮蔽材となる。
以下、本発明の熱線遮蔽材のより好ましい態様について、具体的に説明する。
【0014】
<熱線遮蔽材の特性>
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率としては、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましく、72%以上であることがより特に好ましい。前記可視光線透過率が、60%以上であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見やすい。
【0015】
本発明の熱線遮蔽材の紫外線透過率としては、日射を遮蔽し、室温の上昇を防ぎ、また、健康に有害な紫外線をカットするという観点から、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましく、0.5%以下がより特に好ましい。
【0016】
<熱線遮蔽材の構成>
本発明の熱線遮蔽材は、外光側から、熱線反射層と、複数種類の金属酸化物粒子を含有する熱線吸収層とをこの順に有する。さらに、必要に応じて、易接着層、アンダーコート層、オーバーコート層、粘着層、支持体(以下、基材ともいう)、バックコート層などのその他の層を有する態様も好ましい。
以下、図面をもとに本発明の熱線遮蔽材の好ましい構成について説明する。
【0017】
図1は、合わせガラスの一例であり、ガラス板21および中間膜22に熱線遮蔽材が挟持されている態様である。合わせガラスの詳細については後述する。
本発明の熱線遮蔽材の好ましい態様としては、
図1に示すように、本発明の熱線遮蔽材は、銀平板粒子を含む熱線反射層2と、複数種類の金属酸化物粒子を含有する熱線吸収層14とを有し、支持体1を介して互いに反対側に熱線反射層2および熱線吸収層14を有する態様である。このような態様とすることで、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができる熱線遮蔽材を提供することができる。
【0018】
本発明の熱線遮蔽材の好ましい態様としては、
図3に示すように、本発明の熱線遮蔽材は、複数種類の金属酸化物粒子を含有する熱線吸収層14、支持体1であり、かつ、屈折率がnBである層5B(1かつ5B)、屈折率がnAである層5A(アンダーコート層5A)、および熱線反射層2の順で有し、下記条件(1)または(2)を満たす態様である。熱線反射層2、層5A、および層5Bをこの順で有する態様とすることで、反射防止機能を付与し、正面や、特に斜め(例えば60°)から入射した光の映り込み量を抑制することができる観点から好ましい。
条件(1) nA>nBかつ、下記式(1)を満たす。
式(1):
λ/8 + mλ/2 − λ/12 < nA×dA <λ/8 + mλ/2 + λ/12
(式(1)中、mは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dAは層Aの膜厚を表す。)
条件(2) nA<nBかつ、下記式(2)を満たす。
式(2):
3λ/8 + mλ/2 − λ/12 < nA×dA <3λ/8 + mλ/2 + λ/12
(式(2)中、mは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dAは層Aの膜厚を表す。)
【0019】
前記式(1)および前記式(2)中、mは0以上の整数を表し、0〜5の整数であることが製造コストや膜厚のロバスト性の観点から好ましい。
【0020】
本発明の熱線遮蔽材は、前記mが0であることが、斜め入射光の反射や映り込みを抑制する観点、膜厚が薄いことによる生産性の向上と膜厚制御の容易な点から好ましい。銀平板粒子を含む熱線反射層の共振モードを最低次のm=0とする(高屈折率の場合1/8λ近傍、低屈折率の場合3/8λ近傍)ことで、正面入射と斜め60°の両方に対して反射防止効果を持たせることができ、可視光透過率と映り込みの抑制を両立することができる。
【0021】
なお、前記mは、可視光反射抑制と近赤外光の反射増強を両立した設計ができる観点からは1〜5の整数としてもよく、その場合は1であることが可視光反射抑制と1000nm付近の近赤外線の反射増強の観点から好ましい。また、m>5であると膜厚が大きくなりすぎ、膜厚の精密な制御が難しくなることから生産性の観点でm<=5が好ましい。
【0022】
反射防止効果が得られる膜厚(光路差)の範囲は、光学的に許容されるずれの範囲も含まれる。光学的効果を考慮し、反射防止効果が十分に得られるのは±λ/12の範囲であるため、式(1)および式(2)中、−λ/12の項と、+λ/12の項を設けてある。ずれはこの膜厚幅に収まることが好ましく、±λ/16の範囲であることがより好ましい。
【0023】
すなわち、前記式(1)は、下記式(1’)を満たすことが好ましく、前記式(2)は、下記式(2’)を満たすことが好ましい。
式(1’):
λ/8 + mλ/2 − λ/16 < nA×dA <λ/8 + mλ/2 + λ/16
(式(1’)中、mは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dAは層Aの膜厚を表す。)
式(2’):
3λ/8 + mλ/2 − λ/16 < nA×dA <3λ/8 + mλ/2 + λ/16
(式(2’)中、mは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dAは層Aの膜厚を表す。)
前記式(1’)および前記式(2’)中のmの好ましい範囲は、前記式(1)および前記式(2)中のmの好ましい範囲と同様である。
【0024】
前記層5Aおよび前記層5Bは、上記
図3の構成に限定されるものではない。例えば、層5Aはアンダーコート層以外のその他の機能層であってもよく、層5Bはアンダーコート以外の他の機能層または支持体であってもよい。その他の機能層としては、易接着層などを挙げることができる。
【0025】
図3の構成では、特に前記層Bが支持体である場合、反射を防止したい波長λにおける屈折率が通常のガラス(屈折率nが1.5以下)より大きい屈折率1.5以上の支持体を用いることで、層Aの屈折率n2よりも大きな屈折率としやすく、支持体自体の屈折率を活かして支持体自体を層Bとして用いることができる観点から好ましい。また、前記層Bが支持体である場合は、屈折率1.55以上の支持体を用いることがより好ましく、1.61以上の支持体を用いることが特に好ましい。
図3の前記層Bの好ましい範囲は、後述の
図4〜
図5における層Bの好ましい範囲と同様である。
【0026】
本発明の熱線遮蔽材の好ましい態様としては、
図4に示すように、屈折率がnAである層5Aをアンダーコート層5Aとして有し、屈折率がnBである層5Bを第二のアンダーコート層5Bとして有し、層Cを支持体1として有し、前記条件(1)または条件(2)を満たす態様である。熱線反射層、層A、および層Bをこの順で有する態様とすることで、反射防止機能を付与し、正面や、特に斜め(例えば60°)から入射した光の映り込み量を抑制することができる観点から好ましい。
【0027】
図4の構成ではさらに、前記層Bが下記式(3)を満たすことが、より良い反射防止効果を得る観点から好ましい。また、特に前記層Bを挟む前記層Aおよび前記層Cがともに誘電体であるときに、前記層Bが以下の下記式(3)を満たすことが反射防止の観点から好ましい。
条件(3)nA>nBかつnB<nC、もしくは、nA<nBかつnB>nCのいずれかを満たし、かつ、下記式(3)を満たす。
式(3):
λ/4 + Lλ/2 − λ/12 < nB×dB <λ/4 + Lλ/2 + λ/12
(式(3)中、Lは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dBは層Bの膜厚を表す。)
前記式(3)の好ましい範囲について説明する。なお、以下の前記式(3)の好ましい範囲は、
図4の構成以外の本発明の熱線遮蔽材においても同様である。
前記式(3)中、Lは0以上の整数を表し、0〜5であることが好ましく、0であることが斜め入射光の反射や映り込みを抑制する観点、膜厚が薄いことによる生産性の向上と膜厚制御の容易な点からより好ましい。銀平板粒子を含む熱線反射層の共振モードを最低次のL=0とすることで、正面入射と斜め60°の両方に対して反射防止効果を持たせることができ、可視光透過率と映り込みの抑制を両立することができる。
【0028】
光学的効果を考慮し、反射防止効果が十分に得られるのは±λ/12の範囲であるため式(3)中、−λ/12の項と、+λ/12の項を設けてある。ずれはこの膜厚幅に収まることが望ましく、±λ/16の範囲であることがさらに望ましい。
すなわち、前記式(3)は、下記式(3’)を満たすことが好ましい。
式(3’):
λ/4 + Lλ/2 − λ/16 < nB×dB <λ/4 + Lλ/2 + λ/16
(式(3’)中、Lは0以上の整数を表し、λは反射を防止したい波長を表し、dBは層Bの膜厚を表す。)
前記式(3’)中のLの好ましい範囲は、前記式(3)中のLの好ましい範囲と同様である。
【0029】
前記式(1)〜式(3)中、前記反射を防止したい波長λは特に制限はなく、例えば、可視光、赤外光、紫外光の各帯域などを挙げることができ、その中でも赤外光であることが熱線遮蔽材として用いる観点から好ましく、本発明の熱線反射材は、前記反射を防止したい波長λが400〜700nmが好ましく、550nm±50nmがより特に好ましい。
【0030】
図4の構成では、前記層Cの反射を防止したい波長λにおける屈折率ncが、前記層Bの反射を防止したい波長λにおける屈折率nBよりも大きいことが、層Bおよび層Cの間においても、前記熱線反射層の反射光との光学干渉が起き、より良い反射防止効果を得ることができる観点から好ましい。特に前記層Cが支持体である場合、反射を防止したい波長λにおける屈折率が通常のガラス(屈折率nが1.5以下)より大きい屈折率1.5以上の支持体を用いることで、層Bの屈折率n2よりも大きな屈折率としやすく、支持体自体の屈折率を活かして層Cとして用いることができる観点から好ましい。また、前記層Cが支持体である場合は、屈折率1.55以上の支持体を用いることがより好ましい。
【0031】
本発明の熱線遮蔽材の好ましい態様としては、
図5に示すように、熱線吸収層14、支持体1、屈折率がnBの層5B(アンダーコート層5B)、屈折率がnAの層5A(第2のアンダーコート層5A)、熱線反射層2、および屈折率がnA’の層4(オーバーコート層4)の順で有し、上記条件(1)または(2)を満たす態様である。層4、熱線反射層2、層5A、および層5Bをこの順で有する態様とすることで、更に反射を低減する観点から好ましい。
【0032】
その他、本発明の熱線遮蔽材では、前記層Bが複数の層B’’からなる積層体であり、前記層B’’がどの層もそれぞれ前記式(3)を満たすことが反射防止の観点から好ましい(この態様は不図示)。
本発明の熱線遮蔽材は、前記層Cが、前記式(3)を満たす構成が好ましい。この構成の場合、層Cの上にさらに前記式(3)を満たす層を有していてもよい。
このように前記式(3)を満たす層を複数層有することによっても、反射を防止したい波長λにおける反射を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の熱線遮蔽材は、熱線反射層の前記層Aおよび前記層Bの反対側に、上記条件(1)または(2)を満たす第二の層A’および第二の層B’を有し、層A、層B、第二の層A’、および第二の層Bの順で有する態様も好ましい。このような態様とすることで熱線反射層の両側に干渉層を設けることができ、より反射防止機能を付与し、正面や、特に斜め(例えば60°)から入射した光の映り込み量をより抑制することができるという効果が得られる。
なお、本発明の熱線遮蔽材がすべての上記の干渉層(層A、層B、層C、層A’、層B’など)を含む必要はなく、
図5に示すように、合わせガラス用中間膜または合わせガラスを形成するときに用いる公知の中間膜(例えばPVB層)に、上記の干渉層のうちの一部の機能をもたせてもよい。
図5には、中間膜を層B’として用い、上記条件(1)または(2)を満たす第二の層A’および第二の層B’としてオーバーコート層4および中間膜22を用いた態様を示した。
【0034】
(各層の配置および多層構造の形態)
本発明の熱線遮蔽材では、前記条件(1)または(2)を満たし、上述の
図3〜
図5に示したような層構成とすることにより、熱線反射層に含まれる銀粒子によるプラズモン共鳴波長による反射のうち、所望の波長λの反射を光学干渉により抑制することができる。
ここで、本発明の熱線遮蔽材は、前記熱線反射層、前記層A、前記層B、前記層C、前記第2の層A’、前記第2の層B’は、各層が隣接して配置されていても、30nm以下の層を介して配置されていてもよい。本発明の波長λの反射を光学干渉により抑制する効果は、特に、前記層C、前記層B、前記層A、前記熱線反射層、前記第2の層A’、前記第2の層B’の各層が、隣接して配置されているとき、顕著である。すなわち、前記層Cと前記層Bは隣接して配置されていることが好ましく、直接全面が接合していることがより好ましい。前記層Bと前記層Aは隣接して配置されていることが好ましく、直接全面が接合していることがより好ましい。前記層Aと前記熱線反射層は隣接して配置されていることが好ましく、直接全面が接合していることがより好ましい。前記熱線反射層と前記第2の層A’は隣接して配置されていることが好ましく、直接全面が接合していることがより好ましい。前記第2の層A’と前記第2の層B’は隣接して配置されていることが好ましく、直接全面が接合していることがより好ましい。
【0035】
また、本発明の熱線遮蔽材は、シート状の状態であっても、ロール状に巻き取られた状態であってもよい。なお、本発明の熱線遮蔽材がロール状に巻き取られた状態である場合は、直径50〜250mmの巻き芯にまかれていることが好ましい。
【0036】
<各層の構成>
(熱線吸収層)
本発明の熱線遮蔽材は、複数種の金属酸化物粒子を含有する熱線吸収層を有する。熱線吸収層は、支持体よりも内側(入射光または外光側とは反対側)に積層されていることが、遮蔽性能の観点から好ましい。熱線反射層が太陽光などの熱線の入射方向側となるように本発明の熱線遮蔽材を配置したときに、熱線反射層で熱線の一部(または全部でもよい)を反射した後、金属酸化物粒子層で熱線の一部を吸収することとなり、金属酸化物粒子層で吸収されずに熱線遮蔽材を透過した熱線に起因して熱線遮蔽材の内側で直接受ける熱量と、熱線遮蔽材の金属酸化物粒子層で吸収されて間接的に熱線遮蔽材の内側に伝わる熱量の合計としての熱量を低減することができる。
【0037】
前記金属酸化物粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と略記する。)、セシウム含有タングステン(以下、「CWO」と略記する。組成は特に制限はないが、Cs
0.33WO
3であることが好ましい。)、アンチモンドープ酸化錫(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックス、6硼化ランタン(LaB
6)などが挙げられ、これらの中から複数種選択される。
これらの中でも、熱線吸収能力に優れ、金属平板粒子と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽材が製造できる点、赤外線遮蔽能力が高く、可視光透過率を維持できる点で、ITOおよびCWOを選択することが特に好ましい。
前記金属酸化物粒子の一次粒子の体積平均粒径としては、可視光透過率を低下させないため、また、ヘイズを発生させないために、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下が最も好ましい。
前記金属酸化物粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0038】
前記金属酸化物粒子の合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜5.0g/m
2が好ましく、0.5〜4.0g/m
2がより好ましく、1.0〜3.0g/m
2がより好ましい。
前記合計含有量が、0.5g/m
2未満であると、肌に感じる日射量が上昇することがあり、5g/m
2を超えると、可視光透過率が悪化することがある。
CWOを用いる場合、CWOの含有量としては、0.3〜1.3g/m
2が好ましく、0.6〜1.3g/m
2がより好ましい。
ITOとCWOを組み合わせて用いる場合、ITOとCWOとの質量比としては、5〜95:95〜5が好ましく、10〜90:90〜10がより好ましく、20〜80:80〜20がさらに好ましい。
なお、前記金属酸化物粒子の含有量は、例えば、熱線吸収層の吸収スペクトルを測定し、その吸光度から算出することができる。また、蛍光X線分析法によって算出することもできる。
【0039】
本発明の熱線遮蔽材は、前記熱線吸収層の膜厚は、特に限定はないが、十分な熱線吸収能を持たせ、かつ、塗布性を維持するという観点で0.5〜10μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることが好ましい。
【0040】
(熱線反射層)
本発明の熱線遮蔽材は、銀平板粒子を含有する熱線反射層を有し、銀平板粒子の含有量が、15〜45mg/m
2である。
銀平板粒子の含有量としては、15〜45mg/m
2であり、15〜35g/m
2が好ましく、20〜35g/m
2がより好ましい。
前記熱線反射層の厚みをdとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の80個数%以上が、前記熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在していることが好ましく、前記熱線反射層の表面からd/3の範囲に存在することよりが好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもなく、また、本発明の熱線遮蔽材は以下の製造方法に限定されるものではないが、前記熱線反射層を製造するときに特定のポリマー(好ましくはラテックス)を添加することなどにより、銀平板粒子を前記熱線反射層の一方の表面に偏析させることができる。
【0041】
−1−1.銀平板粒子−
本発明の熱線遮蔽材では、前記銀平板粒子は、平板状の銀粒子を60個数%以上有することが好ましく、六角形状乃至円形状の平板状銀粒子を60個数%以上有することがより好ましい。
前記熱線反射層において、六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の存在形態としては、熱線反射層の一方の表面(本発明の熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の主平面が平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましく、平均0°〜±20°の範囲で面配向していることがより好ましく、平均0°〜±10°の範囲で面配向していることが特に好ましい。
なお、前記熱線反射層の一方の表面は、フラットな平面であることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材の前記熱線反射層が仮支持体としての基材を有する場合は、基材の表面とともに略水平面であることが好ましい。ここで、前記熱線遮蔽材は、前記仮支持体を有していてもよく、有していなくてもよい。
前記銀平板粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、500nm以下の平均粒子径を有するものであってもよい。
なお、熱線反射層は、銀平板粒子の他に、他の金属粒子を含んでいてもよい。他の金属粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0042】
−1−2.銀平板粒子−
前記銀平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(
図7A及び
図7B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状〜円形状であることがより好ましく、六角形状または円形状であることが特に好ましい。
本明細書中、円形状とは、後述する銀平板粒子(平板状銀粒子と同義)の平均円相当径の50%以上の長さを有する辺の個数が1個の銀平板粒子当たり0個である形状のことを言う。前記円形状の銀平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で銀平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書中、六角形状とは、後述する銀平板粒子の平均円相当径の20%以上の長さを有する辺の個数が1個の銀平板粒子当たり6個である形状のことを言う。なお、その他の多角形についても同様である。前記六角形状の平板状銀粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で銀平板粒子を主平面の上方から観察した際に、六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記熱線反射層に存在する金属粒子のうち、六角形状乃至円形状の平板状銀粒子は、銀粒子の全個数に対して、60個数%以上であることが好ましく、65個数%以上がより好ましく、70個数%以上が特に好ましい。前記銀平板粒子の割合が、60個数%以上であると、可視光線透過率が高くなる。
【0044】
−1−2−1.面配向−
本発明の熱線遮蔽材において、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子は、その主平面が熱線反射層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して、平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましく、平均0°〜±20°の範囲で面配向していることがより好ましく、平均0°〜±10°の範囲で面配向していることが特に好ましい。
前記銀平板粒子の存在状態は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
ここで、
図6A〜
図6Cは、本発明の熱線遮蔽材において、銀平板粒子を含む熱線反射層の存在状態を示した概略断面図である。
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、熱線反射層2中における銀平板粒子3の存在状態を示す。
図6Aは、基材1の平面と銀平板粒子3の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(±θ)を説明する図である。
図6Bは、熱線反射層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図6Aにおいて、基材1の表面と、銀平板粒子3の主平面(円相当径Dを決める面)または主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、
図6Aに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に基材1の表面と銀平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態が好ましい。基材1の表面に対する銀平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち
図6Aにおけるθが±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまう。
【0046】
前記熱線反射層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して銀平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における熱線反射層(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材)及び銀平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0047】
前記熱線遮蔽材において、銀平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において銀平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。
【0048】
前記の通り作製した断面サンプルまたは断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて熱線反射層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して銀平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、銀平板粒子の形状と傾角(
図6Aの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0049】
−1−2−2.平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布における変動係数−
本発明の熱線遮蔽材において、銀平板粒子の粒度分布における変動係数としては、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。前記変動係数が、35%以下であることが熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がシャープになることから好ましい。
ここで、前記銀平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の銀平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径(平均円相当径))で割った値(%)である。
【0050】
−1−2−3.銀平板粒子の厚み・アスペクト比−
本発明の熱線遮蔽材では、前記銀平板粒子の厚みは14nm以下であることが好ましく、5〜14nmであることがより好ましく、5〜12nmであることが特に好ましい。
前記銀平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長800nm〜1,800nmの赤外光領域での反射率が高くなる点から、6〜40が好ましく、10〜35がより好ましい。前記アスペクト比が6未満であると反射波長が800nmより小さくなり、40を超えると、反射波長が1,800nmより長くなり、十分な熱線反射能が得られないことがある。
前記アスペクト比は、銀平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)を銀平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、銀平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、
図7A及び
図7Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に銀平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
【0051】
−1−2−4.銀平板粒子の存在範囲−
本発明の熱線遮蔽材において、前記銀平板粒子の存在領域の厚みは、5〜60nmであることが好ましく、5〜20nmであることがより好ましい。
本発明の熱線遮蔽材では、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の80個数%以上が、前記熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在することが好ましく、d/3の範囲に存在することがより好ましく、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の60個数%以上が前記熱線反射層の一方の表面に露出していることが更に好ましい。銀平板粒子が熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在するとは、銀平板粒子の少なくとも一部が熱線反射層の表面からd/2の範囲に含まれていることを意味する。すなわち、銀平板粒子の一部が、熱線反射層の表面よりも突出している銀平板粒子も、熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在する銀平板粒子として扱う。
また、銀平板粒子が前記熱線反射層の一方の表面に露出しているとは、銀平板粒子の一方の表面の一部が、熱線反射層の表面よりも突出していることを意味する。
ここで、前記熱線反射層中の銀平板粒子存在分布は、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
【0052】
本発明の熱線遮蔽材において、
図6Bに示すように、熱線反射層2における銀平板粒子3を構成する銀のプラズモン共鳴波長をλとし、熱線反射層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記熱線反射層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲内であると、熱線遮蔽材の上側と下側のそれぞれの熱線反射層の界面での反射波の位相により反射波の振幅が強めあう効果が十分大きく、可視光透過率及び熱線最大反射率が良好となる。
前記熱線反射層における銀平板粒子を構成する銀のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
【0053】
−1−2−5.熱線反射層の媒質−
前記熱線反射層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の熱線遮蔽材は、前記熱線反射層がポリマーを含むことが好ましく、透明ポリマーを含むことがより好ましい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、前記ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の銀平板粒子の80個数%以上を前記熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材のこすり耐性をより改善する観点から特に好ましい。
前記ポリエステル樹脂の中でも、飽和ポリエステル樹脂であることが二重結合を含まないために優れた耐候性を付与できる観点からより特に好ましい。また、分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つことが、水溶性・水分散性の硬化剤等で硬化させることで高い硬度・耐久性・耐熱性を得られる観点から、より好ましい。
前記ポリマーとしては、商業的に入手できるものを好ましく用いることもでき、例えば、互応化学工業株式会社製の水溶性ポリエステル樹脂である、プラスコートZ−867などを挙げることができる。
また、本明細書中、前記熱線反射層に含まれる前記ポリマーの主ポリマーとは、前記熱線反射層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
前記熱線反射層に含まれる前記銀粒子に対する前記ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の含有量が1〜10000質量%であることが好ましく、10〜1000質量%であることがより好ましく、20〜500質量%であることが特に好ましい。前記熱線反射層に含まれるバインダーを上記範囲以上とすることで、こすり耐性性等の物理特性を改善することができる。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の厚みをaとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の80個数%以上が、厚み方向のa/10以上を前記ポリマーに覆われていることが好ましく、厚み方向のa/10〜10aを前記ポリマーに覆われていることがより好ましく、a/8〜4aを前記ポリマーに覆われていることが特に好ましい。このように前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子が前記熱線反射層に一定割合以上埋没していることにより、よりこすり耐性を高めることができる。
【0054】
−1−2−6.銀平板粒子の面積率−
熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(熱線反射層に対して垂直方向から見たときの前記熱線反射層の全投影面積A)に対する銀平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材基材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0055】
−1−2−7.銀平板粒子の平均粒子間距離−
前記熱線反射層における水平方向に隣接する銀平板粒子の平均粒子間距離としては、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から、銀平板粒子の平均粒子径の1/10以上が好ましい。
前記銀平板粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記銀平板粒子の平均粒子径の1/10未満となると、熱線の最大反射率が低下してしまう。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、可視光線の吸収が起こり、透過率が低下してしまうことがある。
【0056】
ここで、前記銀平板粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の銀平板粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0057】
−1−2−8.熱線反射層の層構成−
本発明の熱線遮蔽材において、銀平板粒子は、
図6A〜
図6Cに示すように、銀平板粒子を含む熱線反射層の形態で配置される。
前記熱線反射層としては、
図6A〜
図6Cに示すように単層で構成されてもよく、複数の熱線反射層で構成されてもよい。複数の熱線反射層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。なお、前記熱線反射層が複数の熱線反射層で構成される場合、本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも最表面の熱線反射層において、該最表面の熱線反射層の厚みをd’としたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の80個数%以上が、該最表面の熱線反射層の表面からd’/2の範囲に存在することが好ましい。
【0058】
−1−2−9.熱線反射層の厚み−
本発明の熱線遮蔽材は、前記熱線反射層の厚みが5〜80nmであることが好ましく、6〜20nmであることがより好ましい。前記熱線反射層の厚みdは、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の厚みをaとしたとき、a〜10aであることが好ましく、2a〜8aであることがより好ましく、1a〜5aであることが特に好ましい。
【0059】
ここで、前記熱線反射層の各層の厚みは、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
また、熱線遮蔽材の前記熱線反射層の上に、例えば後述するオーバーコート層などの他の層を有する場合においても、他の層と前記熱線反射層の境界は同様の方法によって決定することができ、前記熱線反射層の厚みdを決定することができる。なお、前記熱線反射層に含まれるポリマーと同じ種類のポリマーを用いて、前記熱線反射層の上にコーティングをする場合は通常はSEM観察した画像によって前記熱線反射層との境界を判別できることができ、前記熱線反射層の厚みdを決定することができる。
【0060】
−1−2−10.銀平板粒子の合成方法−
前記銀平板粒子の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが六角形状乃至円形状の平板状銀粒子を合成し得るものとして挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の銀平板粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の銀平板粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の平板状銀粒子を得てもよい。
【0061】
前記銀平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0062】
本発明の熱線遮蔽材において、銀平板粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0063】
−1−2−10−1.高屈折率シェル層の形成−
前記銀平板粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiO
x、BaTiO
3、ZnO、SnO
2、ZrO
2、NbO
xなどが挙げられる。
【0064】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の銀平板粒子の表面にTiO
x層を形成する方法であってもよい。
【0065】
また、前記銀平板粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り銀平板粒子を合成した後、適宜SiO
2やポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiO
xを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiO
xが光触媒活性を有することから、銀平板粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて銀平板粒子にTiO
x層を形成した後、適宜SiO
2層を形成してもよい。
【0066】
−1−2−10−2.各種添加物の添加−
本発明の熱線遮蔽材において、前記熱線反射層がポリマーを含み、前記ポリマーの主ポリマーがポリエステル樹脂である場合には、架橋剤を添加することが膜強度の観点から好ましい。前記架橋剤としては特に制限はなく、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらの中でカルボジイミド系及びオキサゾリン系架橋剤が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、例えばカルボジライトV−02−L2(日清紡績(株)製)などがある。前記熱線反射層中の全バインダーに対して1〜20質量%の架橋剤由来の成分を含有することが好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
また、本発明の熱線遮蔽材において、前記熱線反射層がポリマーを含む場合、添加することがハジキの発生を抑えて良好な面状な層が得られる観点から好ましい。界面活性剤を前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる界面活性剤の具体例としては、例えばラピゾールA−90(日油株式会社製)、ナロアクティーHN−100(三洋化成工業株式会社製)などがある。前記熱線反射層中の全バインダーに対して0.05〜10質量%の界面活性剤を含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0067】
前記銀平板粒子は、該銀平板粒子を構成する銀などの酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が銀平板粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiO
2などの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
前記銀平板粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子量分散剤、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0068】
<支持体>
本発明の熱線遮蔽材は、支持体を有することが好ましい。
前記支持体としては特に制限は無く公知の支持体を用いることができる。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、熱線遮蔽材の使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であるが薄膜化の要請の観点からはより薄い方が好ましい。前記支持体の厚みは10μm〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましく、20〜75μmであることが特に好ましい。前記支持体の厚みが十分に厚いと、接着故障が起き難くなる傾向にある。また、前記支持体の厚みが十分に薄いと、熱線遮蔽材として建材や自動車に貼り合わせる際、材料としての腰が強過ぎず、施工し易くなる傾向にある。更に、支持体が十分に薄いことにより、可視光透過率が増加し、原材料費を抑制できる傾向にある。
【0069】
前記支持体としては、光学的に透明な支持体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
【0070】
前記支持体としては、光学的に透明な支持体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
【0071】
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0072】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、熱線遮蔽材の使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であるが薄膜化の要請の観点からはより薄い方が好ましい。前記支持体の厚みは10μm〜100μmであることが好ましく、20〜75μmであることがより好ましく、35〜75μmであることが特に好ましい。前記支持体の厚みが十分に厚いと、接着故障が起き難くなる傾向にある。また、前記支持体の厚みが十分に薄いと、熱線遮蔽材として建材や自動車に貼り合わせる際、材料としての腰が強過ぎず、施工し易くなる傾向にある。更に、支持体が十分に薄いことにより、可視光透過率が増加し、原材料費を抑制できる傾向にある。
【0073】
<その他の層>
(紫外線吸収層)
本発明の熱線遮蔽材は、熱線反射層よりも外光側に、紫外線吸収層を有していてもよい。
前記紫外線吸収層は単独の機能層として有していても、他の機能を兼ね備える層として有していてもよいが、前記紫外線吸収層は他の機能を兼ね備える層であることが積層数を減らして、熱線遮蔽材の膜厚を薄くできる観点から好ましい。また、積層数についても特に制限はなく、1層のみ有していても複数層有していてもよいが、1層のみ有することが積層数を減らして、熱線遮蔽材の膜厚を薄くできる観点から好ましい。
【0074】
本発明の熱線遮蔽材は、前記紫外線吸収層の390nmにおける透過率は50%以下であることが好ましく、40%以下であることが太陽光の紫外線により前記熱線反射層が劣化したり、あるいは、室内にいる人が有害な紫外線を浴びたり、室内の調度品が色褪せたりするのを防ぐという観点からより好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
【0075】
−紫外線吸収剤−
本発明の熱線遮蔽材では、前記紫外線吸収層に含まれる紫外線吸収剤の含有量や種類としては、前記紫外線吸収層の390nmにおける透過率を特性の範囲以下に制御できること以外は特に制限はない。
【0076】
前記紫外線吸収層中の紫外線吸収剤の含有量としては、用いる紫外線吸収層によって異なり、一概に規定することができないが、本発明の熱線遮蔽材において所望の紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
【0077】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、特開2012−136019号公報の段落0040〜0088に記載された化合物を用いることができ、これらの内容は本明細書に取り込まれる。
【0078】
−紫外線吸収層のバインダー−
紫外線吸収層のバインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂などが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板粒子との間に形成される紫外線吸収層としては、450nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択することが好ましい。
【0079】
−紫外線吸収層の膜厚−
本発明の熱線遮蔽材は、紫外線吸収層の膜厚を厚くすることが十分に紫外線をカットするという観点から好ましく、前記紫外線吸収層の厚さが5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。そのため、粘着剤、中間膜、もしくは、支持体に紫外線吸収剤を含ませる構成が好ましい。
塗布層に耐光性の低い層がある場合には、その層よりも外光側に紫外線吸収層があることが好ましく、その点で、粘着剤、もしくは、中間膜であることが好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みの上限としては200μmが可視光の透過率の観点から好ましく、100μmがより好ましい。
前記紫外線吸収層層は、前記条件(1)または(2)を満たすように組成を変更して屈折率を調整したり、厚みを調整したりしてもよい。
屈折率は、バインダーの屈折率を調整したり、あるいは、屈折率の異なる微粒子を添加することによって、調整することができる。屈折率を下げるためには、低屈折率バインダー、あるいは、バインダー中に低屈折率微粒子を添加することが望ましい。低屈折率バインダーとしては、フッ素含有ポリマーを挙げることができる。低屈折率微粒子としては、例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。屈折率をより一層低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、更に好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。微粒子の平均粒径は、30nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
逆に屈折率を上げるためには、バインダー中に高屈折率微粒子を添加することが好ましい。高屈折率微粒子としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0080】
(粘着剤層)
本発明の熱線遮蔽材は、粘着剤層(以下、粘着層ともいう)を有することが好ましい。
前記粘着剤層の形成に利用可能な材料としては、透明性を損なわないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、貼り合わせにより、形成してもよいし、塗布により形成してもよい。貼り合わせにより形成する場合には、厚みを薄くできるという点から、基材レス粘着剤を用いる場合が好ましい。
さらに、前記粘着剤層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
【0081】
前記粘着剤層の厚みとしては、0.1μm〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0082】
(ハードコート層)
耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有するハードコート層を含むことも好適である。ハードコート層には金属酸化物粒子を含むことができる。
前記ハードコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その種類も形成方法も選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。前記ハードコート層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記ハードコート層上に更に反射防止層を形成すると、耐擦傷性に加え、反射防止性が得られ好適である。また、前記ハードコート層が、前記金属酸化物粒子を有し、前記金属酸化物粒子を有する熱線吸収層を兼ねていてもよい。
【0083】
(オーバーコート層)
本発明の熱線遮蔽材において、物質移動による銀平板粒子の酸化・硫化を防止し、耐擦傷性を付与するため、本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が露出している方の前記熱線反射層の表面に密接するオーバーコート層を有していてもよい。本発明の熱線遮蔽材は特に銀平板粒子が熱線反射層の表面に偏在するため場合は、銀平板粒子の剥落による製造工程のコンタミ防止、別層塗布時の銀平板粒子配列乱れの防止、などのため、オーバーコート層を有していてもよい。
前記オーバーコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、マット剤、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0084】
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05〜1μmがより特に好ましい。また、前記オーバーコート層は、前記条件(1)または(2)を満たすように組成を変更して屈折率を調整したり、厚みを調整したりすることも好ましい。前記オーバーコート層の屈折率を調整する方法としては、前記紫外線吸収層の屈折率を調整する方法と同様の方法を用いることができ、屈折率の調整に用いる好ましい成分も同様である。
【0085】
(アンダーコート層)
一方、本発明の熱線遮蔽材において、前記支持体と前記熱線反射層との間に、アンダーコート層を有していてもよい。前記アンダーコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記アンダーコート層を複数層設けてもよい。
前記アンダーコート層は、前記条件(1)または(2)を満たすように組成を変更して屈折率を調整したり、厚みを調整したりすることが好ましい。前記アンダーコート層の好ましい組成は、前記オーバーコート層の好ましい組成と同様である。前記アンダーコート層の屈折率を調整する方法としては、前記紫外線吸収層の屈折率を調整する方法と同様の方法を用いることができ、屈折率の調整に用いる好ましい成分も同様である。
【0086】
(バックコート層)
一方、本発明の熱線遮蔽材において、前記支持体の前記熱線反射層とは反対側の面上に、バックコート層を有していてもよい。前記バックコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記赤外領域に吸収を有する化合物を含む層としてもよく、前述の金属酸化物粒子を有する熱線吸収層としてもよい。前記バックコート層は、前記条件(1)または(2)を満たすように組成を変更して屈折率を調整したり、厚みを調整したりすることが好ましい。前記赤外領域に吸収を有する化合物を含む層や前述の金属酸化物粒子を有する熱線吸収層ではない場合のバックコート層の好ましい組成は、前記オーバーコート層の好ましい組成と同様である。前記バックコート層の屈折率を調整する方法としては、前記紫外線吸収層の屈折率を調整する方法と同様の方法を用いることができ、屈折率の調整に用いる好ましい成分も同様である。
【0087】
<熱線遮蔽材の製造方法>
本発明の熱線遮蔽材を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0088】
−1.アンダーコート層、オーバーコート層、バックコート層の形成方法−
前記アンダーコート層、オーバーコート層、バックコート層、紫外線吸収層の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体かつ紫外線吸収層である層を形成する場合は、特開2012−136019号公報の[0094]〜[0155]、あるいは、特開2012−122000号公報の[0086]〜[0148]に記載の方法を用いて、紫外線吸収剤を支持体に含ませることができる。
【0089】
前記紫外線吸収層を粘着層、アンダーコート層、オーバーコート層や、バックコート層として形成する場合の形成方法としては、特に制限はないが、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0090】
−2.熱線反射層の形成方法−
前記熱線反射層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材などの下層の表面上に、前記銀平板粒子を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。本発明の熱線遮蔽材を製造するとき、後述の実施例で用いた熱線反射層の組成とし、ラテックスを添加する等によって、前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の銀平板粒子の80個数%以上が、前記熱線反射層の表面からd/2の範囲に存在するようにすることが好ましい。前記六角形状乃至円形状の平板状銀粒子の銀平板粒子の80個数%以上が、前記熱線反射層の表面からd/3の範囲に存在するようにすることがより好ましい。前記ラテックスの添加量に特に制限は無いが、例えば銀平板粒子に対して、1〜10000質量%添加することが好ましい。
【0091】
なお、面配向を促進するために、銀平板粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラーなどの圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0092】
−3.粘着層の形成方法−
前記粘着剤層は、塗布により形成することが可能である。例えば、前記熱線反射層、前記オーバーコート層、前記金属酸化物粒子含有層などの下層の表面上に積層することができる。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0093】
(ドライラミネーションによる粘着剤層積層)
熱線反射層表面への粘着剤層積層に当っては、当該表面に直接粘着剤入りの塗布液を塗工することもできるが、粘着剤に含まれる各種添加剤、可塑剤や、使用溶剤などが、場合によっては熱線反射層の銀粒子の配列を乱したり、熱線反射層の銀粒子自身を変質させたりすることがある。そうした弊害を最小限に留めるためには、粘着剤を予め離型フィルム上に塗工及び乾燥させたフィルムを作製しておいて、当該フィルムの粘着剤面と本発明の熱線遮蔽材の熱線反射層表面とをラミネートすることにより、ドライな状態のままの積層をすることが有効である。
【0094】
<熱線遮蔽材の用途>
本発明の熱線遮蔽材は、単独で熱線遮蔽材として用いてもよく、他の機能層と積層してもよい。また、本発明の熱線遮蔽材はガラスなどと貼り合わせて遮熱ガラスとしてもよい。また、本発明の熱線遮蔽材は合わせガラスに挟み込んでも、合わせガラスとして用いてもよい。
本発明の熱線遮蔽材は、近赤外線を選択的に反射(必要に応じて吸収)するために使用される態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体であることが好ましい。
【0095】
(遮熱ガラス)
本発明の熱線遮蔽材の前記粘着剤層上に、ガラスが貼り付けられた遮熱ガラスとしてもよい。内貼り用途の場合には、外光側から、ガラス、粘着層、熱線反射層、熱線吸収層が、この順になるように貼り合せる。一方、外貼り用途の場合には、外光側から、熱線反射層、熱線吸収層、粘着層、ガラスが、この順になるように貼り合せる。
このような構成とすることで、遮熱性能が良好となる。
【0096】
[合わせガラス用中間膜・合わせガラス]
本発明の合わせガラス用中間膜は、本発明の熱線遮蔽材を含むことを特徴とする。
また、本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜と、少なくとも2枚のガラス板を有し、前記2枚のガラス中に前記合わせガラス用中間膜が挿入されたことを特徴とする。本発明の熱線遮蔽材は合わせガラスの中間膜に積層したときに、外光側から、熱線反射層と、熱線吸収層がこの順となるようにして用いたときに、遮熱性能が良好となる。
図1、
図3〜5に本発明の合わせガラスの好ましい態様を示す。
図1、
図3〜5では、本発明の熱線遮蔽材の両表面に中間膜22がそれぞれ積層されて、本発明の合わせガラス用中間膜を構成している。さらに、2枚のガラス21で中に得られた本発明の合わせガラス用中間膜が挿入されている。
【0097】
<構成>
(中間膜)
本発明の合わせガラス用中間膜は、中間膜を含む。本発明の合わせガラス用中間膜はさらに第二の中間膜を含むことが好ましい。また、前記第一および第二の中間膜の組成についても、同じであっても異なっていてもよい。
【0098】
前記第一および第二の中間膜の厚みは、100〜1000μmであることが好ましく、200〜800μmであることがより好ましい。また、前記第一および第二の中間膜は複数のシートを重ねることによって厚膜化してもよい。
また、前記第一および第二の前記中間膜の脆性の基準としては、引張り試験による破断伸びが100〜800%であることが好ましく、100〜600%であることがより好ましく、200〜500%であることが特に好ましい。
【0099】
前記第一および第二の中間膜は、樹脂中間膜であることが好ましい。前記樹脂中間膜は、主成分がポリビニルアセタール系の樹脂フィルムであることが好ましい。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムとしては特に制限はなく、例えば特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報などに記載のものを好ましく用いることができる。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムの中でも、本発明ではポリビニルブチラール樹脂フィルムを用いることが好ましい。前記ポリビニルブチラール樹脂フィルムは、それぞれ、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂フィルムであれば、特に定めるものは無く、広く公知の合わせガラス用中間膜としてのポリビニルブチラール樹脂フィルムを採用できる。その中でも、本発明では、前記中間膜は、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂中間膜またはエチレンビニルアセテートを主成分とする樹脂中間膜であることが好ましく、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂中間膜であることが特に好ましい。なお、主成分である樹脂とは、前記樹脂中間膜の50質量%以上の割合を占める樹脂のことをいう。
【0100】
(ガラス)
合わせガラスに用いられるガラスとしては特に制限はないが、外光側(入射光側)となる側のガラスとしてクリアガラスを用い、内側(入射光とは反対側)となる側のガラスとしてクリアガラス、もしくは、グリーンガラスを用いることが好ましい。
ここで、本明細書中において合わせガラスというときのガラスには、一般的にガラス代替樹脂が含まれる。すなわち、本発明の合わせガラス用中間膜を合わせはさむガラスのかわりに、ガラス代替樹脂形成体、もしくはガラス代替樹脂形成体とガラスの組み合わせたものを用いることができる。ガラス代替樹脂の例としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂などがあげられる。こうしたガラス代替樹脂上にハードコート層をコーティングしたものを用いることもできる。ハードコート層の例としては、アクリル系ハードコート材、シリコーン系ハードコート材、メラミン系ハードコート材や、これらのハードコート材の中にシリカやチタニア、アルミナ、ジルコニアなどの無機微粒子を分散させたものがあげられる。
【0101】
<合わせガラス用中間膜・合わせガラスの製造方法>
本発明の合わせガラス用中間膜および合わせガラスの製造方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0102】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法としては、例えば、前記第一および第二の中間膜の間に、本発明の熱線遮蔽材を重ね合わせ、熱圧着することが好ましい。
【0103】
本発明の合わせガラスの製造方法は、前記ガラス板に挟持された本発明の合わせガラス用中間膜を加熱しながら圧着する工程を含むことが好ましい。
前記ガラス板に挟持された本発明の合わせガラス用中間膜とガラス板との貼りあわせは、例えば、真空バッグなどで減圧下において、温度80〜120℃、時間30〜60分で予備圧着した後、オートクレーブ中、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で貼り合せ、2枚のガラスに積層体が挟まれた合わせガラスとすることができる。また、粘着材等を用いて貼り合わせてもよい。
このとき、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度での加熱圧着の時間は、20〜90分であることが好ましい。
加熱圧着終了後、放冷の仕方については特に制限はなく、適宜圧力を開放しながら放冷して、合わせガラス体を得てもよい。本発明では、加熱圧着終了後、圧力を保持した状態で降温を行うことが、得られる合わせガラス体のシワや割れをさらに改善する観点から好ましい。ここで、圧力を保持した状態で降温するとは、加熱圧着時(好ましくは130℃)の装置内部圧力から、40℃のときの装置内部圧力が加熱圧着時の75%〜100%となるように降温することを意味する。圧力を保持した状態で降温する方法としては、40℃まで降温したときの圧力が上記範囲内であれば特に制限はないが、圧力装置内部圧力が温度減少に伴って自然と低下していくように装置内部から圧力を漏らさずに降温する態様や、装置内部圧力が温度減少に伴って減少しないように外部からさらに加圧しながら降温する態様が好ましい。圧力を保持した状態で降温する場合、120〜150℃で加熱圧着した後、40℃まで1〜5時間かけて放冷することが好ましい。
本発明では、圧力を保持した状態で降温を行った後、次いで圧力を開放する工程を含むことが好ましい。具体的には、圧力を保持した状態で降温を行った後、オートクレーブ内の温度が40℃以下になった後に圧力を開放して降温することが好ましい。
以上より、本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を、少なくとも2枚のガラス板で挟持する工程と、その後1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で加熱圧着する工程と、圧力を保持した状態で降温を行う工程と、圧力を開放する工程を含むことが好ましい。
【0104】
前記ガラス板と本発明の合わせガラス用中間膜とを熱圧着させる範囲は、前記ガラス板の全面積にわたる範囲でもよいが、前記ガラス板の周縁部のみでもよく、周縁部の熱圧着はシワの発生をより抑制することもできる。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
実施例1〜5、9および10は参考例である。
【0106】
支持体として、両面易接着処理されたPETフィルムである、コスモシャインA4300(東洋紡社製、38μm)を用いた。
【0107】
<アンダーコート層の作製>
下記に示す組成のアンダーコート層用の塗布液を調製した。
アンダーコート層用の塗布液の組成:
ポリウレタン水溶液:ハイドランHW−350
(DIC(株)製、固形分濃度30質量%) 3.23質量部
界面活性剤A:リパール8780P
(ライオン(株)製、固形分1質量%) 0.96質量部
界面活性剤B:ナロアクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 1.18質量部
水 64.63質量部
メタノール 30質量部
【0108】
支持体の上に、アンダーコート層用の塗布液をワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが180nmになるように塗布した。その後、130℃で1分間加熱し、乾燥、固化し、アンダーコート層を形成した。
【0109】
<熱線反射層の作製>
(銀平板粒子含有分散液B1の調製)
―銀平板粒子の合成―
2.5mmol/L(2.5mM)のクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mmol/Lの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
反応釜中に2.5mmol/Lのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。反応釜中の上記溶液に、10mmol/Lのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。30分間攪拌した後、0.35mol/Lのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液71.1mLを反応釜に添加し、7質量%ゼラチン水溶液200gを反応釜に添加した。反応釜中の上記溶液に、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと、0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを反応釜に添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、銀平板粒子分散液Aを得た。
【0110】
この銀平板粒子分散液中には、平均円相当径200nmの銀の六角平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。銀平板粒子分散液A1中の粒子400個についてSEM画像を観察し、六角形状を主とする平板状粒子をA、それ以外の不定形粒子をBとして画像解析を行ったところ、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)は96%であった。また、得られた銀平板粒子分散液A1を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、Aに該当する金属平板粒子個々の厚みを、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で測定したところ、平均12nmであり、アスペクト比が16.7の平板粒子が生成していることが分かった。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0111】
前記銀平板粒子分散液A 800mLを40℃に保ち、1NのNaOHおよび/または1Nの硫酸を用いてpH=10に調整した。分散剤として非水溶性のフェニルメルカプトテトラゾール(和光純薬工業社製、商品名5−メルカプト−1−フェニルメルカプトテトラゾール)をさらに添加して、10分間撹拌を継続した。添加量は、銀に対するモル比率で1.0%とした。これを遠心分離器(日立工機社製himac CR−GIII、アングルローター)で、9000rpmで60分の遠心分離を行い、上澄みを760mL捨てた。沈殿した銀平板粒子を卓上型ホモジナイザー(三井電気精機社製、SpinMix08)の容器に移し、0.2mmol/LのNaOH水溶液を160mL加えて、12000rpmで20分間分散した。得られた分散液に0.2mmol/LのNaOH水溶液を200mL加え、これを銀平板粒子分散液B1とした。
【0112】
(銀平板粒子含有塗布液の調製)
下記に示す組成の熱線反射層用の塗布液を調製した。
熱線反射層用の塗布液の組成:
ポリウレタン水溶液:ハイドランHW−350
(DIC(株)製、固形分濃度30質量%) 0.27質量部
界面活性剤A:リパール8780P
(ライオン(株)製、固形分1質量%) 0.96質量部
界面活性剤B:ナロアクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 1.19質量部
銀平板粒子分散液B1 32.74質量部
1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(和光純薬(株)製、固形分2質量%) 0.61質量部
水 34.23質量部
メタノール 30質量部
【0113】
<熱線反射層(銀平板粒子含有層の作製)>
支持体の上に形成されたアンダーコート層上に、銀平板粒子含有層用の塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが20nmになるように塗布した。
【0114】
<オーバーコート層用の塗布液>
下記に示す組成のオーバーコート層用の塗布液を調製した。
オーバーコート層用の塗布液の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0115】
支持体上にアンダーコート層を介して形成された熱線反射層(銀平板粒子含有層)の上に、オーバーコート層用の塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が30nmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、オーバーコート層を形成した。
【0116】
<熱線吸収層用の塗布液>
熱線吸収層用の塗布液として、下記表1に記載のIR−1〜IR−7(固形分換算)を調製した。下記表1中、ITO分散液はPI(三菱マテリアル(株)社製 20質量%)を表し、CWO分散液はセシウム含有酸化タングステンCs
0.33WO
3分散液(商品名 YMF−02 18.5質量%、住友金属鉱山社製)を表し、光重合開始剤はIrgacure819(BASF社製)を表し、MIBKはメチルイソブチルケトン(和光純薬社製)を表す。
【0117】
【表1】
【0118】
上記支持体、アンダーコート層、銀平板粒子含有層およびオーバーコート層が積層されたフィルムのオーバーコート層とは反対側の支持体面に、熱線吸収層用の塗布液IR−1を#8バーを用いて塗布した。その後、膜面温度90℃で1分間乾燥した後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射し、金属酸化物含有層を形成した。UV−A照射量は、200mJ/cm
2であった。
以上により得られた、熱線吸収層、支持体、アンダーコート層、銀平板粒子含有層およびオーバーコート層(外光側)がこの順で積層された熱線遮蔽材を、実施例1の熱線遮蔽材とした。
【0119】
[実施例2〜5、比較例1〜2、4〜5]
熱線反射層の塗布量、及び、熱線吸収層の種類と塗布量を調製し、下記表2に記載の組成の実施例2〜5、比較例1〜2、4〜5の熱線遮蔽材を作製した。
【0120】
<熱線遮蔽材の評価>
(熱線反射層中の銀平板粒子の存在範囲の確認)
各実施例および比較例の熱線遮蔽材について、前記熱線反射層の厚みをdとしたとき、前記六角形状乃至円形状の銀平板粒子の80個数%以上が存在する範囲を多層構造の垂直方向断面試料をSEM観察した画像から算出した。
その結果、各実施例および比較例の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の銀平板粒子の80個数%以上がd/2の範囲に存在することを確認した。
【0121】
(熱線反射層の粒子傾き角の確認)
エポキシ樹脂で各実施例および比較例の熱線遮蔽材の熱線反射層を包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で、剃刀で割断し、多層構造の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板粒子の主平面について、基板の水平面に対する傾角(
図6Aにおいて±θに相当)を平均値として算出した。
(評価基準)
A:傾角が±10°以下
B:傾角が±10°を超える
その結果、各実施例および比較例の熱線遮蔽材はA評価であった。
【0122】
<合わせガラスの作製>
厚さ2mmクリアガラスの上に、合わせガラス用ポリビニルブチラール中間膜シート(厚み:380μm)、上記で作製した実施例1〜5、比較例1〜2、4〜5の熱線遮蔽材を重ねた。更に、その上に、合わせガラス用ポリビニルブチラール中間膜シート(厚み:380μm)、厚さ2mmのクリアガラスを順に重ねた。この積層体を真空下、95℃で30分予備圧着を行い、その後、オートクレーブ内で1.3MPa、120℃の条件で加熱しながら圧着処理し、実施例1〜5、比較例1〜2、4〜5の合わせガラスを作製した。
【0123】
<合わせガラスの評価>
(可視光透過率、及び、TTS)
各実施例および比較例の合わせガラスについて、外光側(熱線反射層側)から測定した透過、及び反射スペクトル(波長300〜2500nm)を、積分球ユニットISN−723を付属した紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて測定した。
ISO13837に記載の可視光透過率、及び、TTSの計算方法に基づき、可視光透過率、及び、TTSを算出した結果を下記表2に記載した。
【0124】
(総合評価)
熱線反射層の銀量、あるいは、熱線吸収層のITO/CWOの塗布量を増やすと、可視光透過率、TTSとも低下する。従って、光学性能を比較するためには、可視光透過率、または、TTSをそろえて比較する必要がある。熱線反射層の銀量の微調整により、可視光透過率を72%に換算した場合に、
TTS 55%以上、もしくは、熱線反射層の銀量の微調整では可視光透過率を72%に調整できない:D
TTS 53%以上55%未満:C
TTS 51%以上53%未満:B
TTS 51%未満:A
とした。実用上、AまたはB評価であることが必要である。
得られた結果を下記表2に記載した。
【0125】
【表2】
【0126】
上記表2より、本発明の合わせガラスは、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができることがわかった。
一方、比較例1より、熱線吸収層としてITO粒子のみを単独で用いた場合は、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができないことがわかった。比較例2より、熱線吸収層としてCWO粒子のみを単独で用いた場合も、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができないことがわかった。
また、比較例4、5より銀平板粒子の含有量が15〜45mg/m
2の範囲外であると、熱線反射層の銀量の微調整によって、可視光透過率を72%に調整できないことがわかった。
【0127】
[実施例6]
実施例3の条件でIR−3を用いて製造した熱線反射層を用いて、更に以下の干渉層を付与し、映り込み量の評価を検討した。
【0128】
<高屈折率層(アンダーコート層A)>
下記に示す組成のアンダーコート層A(層A)用の塗布液を調製した。
アンダーコート層A(層A)用の塗布液の組成:
ポリウレタン水溶液:ハイドランHW−350
(DIC(株)製、固形分濃度30質量%) 3.23質量部
界面活性剤A:リパール8780P
(ライオン(株)製、固形分1質量%) 0.96質量部
界面活性剤B:ナロアクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 1.18質量部
水 64.63質量部
メタノール 30質量部
【0129】
<低屈折率層(アンダーコート層B)>
下記に示す組成のアンダーコート層B(層B)用の塗布液B2を調製した。
アンダーコート層B(層B)用の塗布液B2の組成:
ポリウレタン水溶液:ハイドランHW−350
(DIC(株)製、固形分濃度30質量%) 1.83質量部
シリカ粒子IPA分散液:スルーリア4110
(日揮触媒化成(株)製、固形分濃度20.5%) 4.06質量部
界面活性剤B:ナロアクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 1.18質量部
水 64.63質量部
IPA 25.94質量部
【0130】
実施例6では、支持体として用いるコスモシャインA4300(屈折率1.66のPET)の上に、下記表3に記載の屈折率1.4の低屈折率層(層B)、及び、下記表1に記載の屈折率1.6の高屈折率層(層A)を、それぞれ乾燥膜厚が、105nm(層B)、55nm(層A)となるように塗布した。その上に、実施例3と同様に熱線反射層(銀平板粒子含有層)を塗布により形成した。ただし、オーバーコート層は塗布しなかった。更に、支持体の裏面に、実施例3と同様にIR−3を用いて熱線吸収層を設けた。得られたフィルムを実施例6の熱線反射材とした。
この実施例6の熱線反射材を用いて実施例3と同様にして、合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスを実施例6の合わせガラスとした。層Bに隣接する層は、支持体であり(層Cに相当)、その屈折率nCは1.66であった。
実施例6の合わせガラスは、
図4に示したような構成であった。
【0131】
[実施例7]
実施例7では、アンダーコート層Aの乾燥膜厚が220nmとなるようにアンダーコート層A(層A)用の塗布液の塗布厚みを変更した以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材および
図4に示したような構成の合わせガラスを製造した。
ここで、実施例7の合わせガラスは、層Aと層Bの関係が前記式(1)においてm=1の場合に相当する。
【0132】
[実施例8]
実施例8では、熱線反射層を形成した上にさらに塗布液A2を用いてオーバーコート層A’を乾燥膜厚が55nmとなるように塗布するように変更した以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材および
図5に示したような構成の合わせガラスを製造した。
【0133】
[実施例9]
実施例9では、支持体の上に、アンダーコート層Bもアンダーコート層Aも塗布せずに、支持体上に直接、熱線反射層(銀平板粒子含有層)を形成した以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材および
図1に示したような構成の合わせガラスを製造した。
【0134】
[実施例10]
実施例10では、支持体の上に、アンダーコート層Bを塗布せずに、屈折率1.4のアンダーコート層Aを乾燥膜厚が155nmとなるように塗布するように変更した以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材及び
図3に示したような構成の合わせガラスを製造した。この層構成では、支持体が層Bを兼ねている。
【0135】
[実施例11]
実施例11では、支持体の上に、順に屈折率1.4の低屈折率層(層B"3)、屈折率1.6の高屈折率層(層B"2)、屈折率1.4の低屈折率層(層B"1)、及び屈折率1.6の高屈折率層(層A)を、それぞれ乾燥膜厚が105nm(層B"3)、95nm(層B"2)、105nm(層B"1)、55nm(層A)となるように塗布するように変更した以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材及び
図4(ただし、層Bが3層構造であることは不図示)に示したような構成の合わせガラスを製造した。
【0136】
[比較例3]
比較例3では、熱線吸収層を設けなかった以外は実施例6と同様にして、熱線遮蔽材および
図2に示したような構成の合わせガラスを製造した。
【0137】
[評価]
(可視光透過率、TTS、総合評価)
実施例6〜11および比較例5の合わせガラスについて、実施例1と同様にして、可視光透過率およびTTSを測定し、総合評価を行った。
得られた結果を下記表3、表4に記載した。
【0138】
(映り込み量)
各実施例および比較例の合わせガラスについて、外光側(熱線反射層側)、斜め60°から測定した透過、及び反射スペクトル(波長300〜2500nm)を、絶対反射率ユニットARV−474Sを付属した紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて測定した。ISO13837に記載の可視光反射率を、映り込み量と定義した。
得られた結果を下記表3、表4に記載した。
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
上記表より、本発明の合わせガラスは、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することができており、さらに実施例6のように、熱線吸収層に特定の条件を満たすアンダーコート層を干渉層として設けることではじめて、高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSに加え、映り込み抑制も同時に達成することが可能であることがわかった。さらに、実施例8のように、両側に特定の条件を満たす干渉層(反射防止層)を設けるとさらに映り込み抑制の効果を高めることができることがわかった。ただし、実施例9のように、熱線吸収層のみだと高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することはできるものの、映り込みが大きいことがわかった。実施例7のように、隣接層の膜厚が大きく、式(1)におけるm=1であると高い可視光透過率と低い全日射透過率TTSを両立することはできるものの、式(1)におけるm=0である実施例6および8と比較すると映り込みを抑制できないことがわかった。
一方、熱線吸収層を用いない構成の比較例9の合わせガラスのように、干渉層のみだと全日射透過率TTSが大きくなり、性能に劣ることがわかった。