特許第6013258号(P6013258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013258赤飯の素の製造方法、赤飯の製造方法、及び赤飯の素製造用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013258
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】赤飯の素の製造方法、赤飯の製造方法、及び赤飯の素製造用キット
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20160101AFI20161011BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20161011BHJP
   A23L 31/15 20160101ALI20161011BHJP
【FI】
   A23L11/00 F
   A23L7/10 Z
   A23L7/10 E
   A23L31/15
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-77649(P2013-77649)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-200183(P2014-200183A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 裕美
(72)【発明者】
【氏名】小土井 理恵
(72)【発明者】
【氏名】岡 治
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−254046(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/151042(WO,A1)
【文献】 特開2007−151443(JP,A)
【文献】 特開2008−295365(JP,A)
【文献】 特開2007−124912(JP,A)
【文献】 特開2007−209324(JP,A)
【文献】 特開平08−332083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40−7/104
11/00−11/10
11/30
31/00−33/29
WPIDS/WPIX/CAplus/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アズキ(Vigna angularis)及びササゲ(Vigna unguiculata)の少なくともいずれかを含有する豆含有組成物と、炭酸カリウム含有組成物と、鉄を含有する、酵母抽出物組成物とを含有する混合液を加熱する工程と、
前記混合液のpHを7〜9に調整する工程と、
前記混合液を酸化する工程とを含み、
前記鉄を含有する、酵母抽出物は、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離することにより得られ、
前記混合液における鉄の含有量は、前記豆を除いた混合液において、0.00006質量%〜0.0045質量%であり、
前記混合液における前記鉄を含有する、酵母抽出物の含有量は、前記豆を除いた混合液において、0.001質量%〜0.3質量%であることを特徴とする赤飯の素の製造方法。
【請求項2】
混合液を加熱する工程における豆含有組成物が、渋切り処理されていない請求項1に記載の赤飯の素の製造方法。
【請求項3】
混合液を加熱する工程における加熱温度が、70℃以上、100℃未満である請求項1から2のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法。
【請求項4】
混合液を酸化する工程が、希釈により行われる請求項1から3のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法。
【請求項5】
鉄を含有する、酵母抽出物が、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有する鉄高含有酵母抽出物であって、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmの吸光度(O.D.660)として、0.1以下である請求項1から4のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の製造方法により製造された赤飯の素を用いて炊飯することを特徴とする赤飯の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法に用いられるキットであって、炭酸カリウム含有組成物と、鉄を含有する、酵母抽出物組成物と、pH調整組成物とを含むことを特徴とする赤飯の素製造用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤飯の素及びその製造方法、前記赤飯の素を使用した赤飯及びその製造方法、並びに、前記赤飯の素の製造に用いる赤飯の素製造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
赤飯の製造には、煩雑な調理技術を要することが知られている。そこで、容易に赤飯を製造するための技術として、赤飯に用いられる豆(アズキやササゲ)の煮汁と煮豆を含む赤飯の素を用いる技術が提案されている。
【0003】
例えば、豆を、水、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムの少なくともいずれかと混合し、加熱した後、煮汁に空気を吹き込み酸化させ、次いで、前記煮汁にクエン酸等を添加してpHを調整した後、前記煮汁と前記煮豆とを容器に密封し、加圧加熱殺菌することにより、赤飯の素を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、前記提案では、赤飯として求められる色調が不十分であり、更なる改善が求められている。
【0004】
また、アズキの煮汁にキトサンを添加するなどの処理をして得られた上澄み液に、アルカリ性物質、鉄剤を加え、通気しながら加熱することにより、小豆色色付け剤を製造する方法が提案されている。しかしながら、前記提案では、金属味及び収斂味が強く、また、赤飯の風味に乏しいという問題がある。
【0005】
したがって、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制された赤飯の素は提供されておらず、その速やかな開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−151443号公報
【特許文献2】特開2007−124912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制された赤飯の素及びその製造方法、前記赤飯の素を使用した赤飯及びその製造方法、並びに、前記赤飯の素の製造に用いる赤飯の素製造用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アズキ(Vigna angularis)及びササゲ(Vigna unguiculata)の少なくともいずれかを含有する豆含有組成物と、炭酸カリウム含有組成物と、鉄含有酵母抽出物含有組成物とを含有する混合液を加熱する工程と、
前記混合液のpHを7〜9に調整する工程と、
前記混合液を酸化する工程とを含むことを特徴とする赤飯の素の製造方法である。
<2> 混合液を加熱する工程における豆含有組成物が、渋切り処理されていない前記<1>に記載の赤飯の素の製造方法である。
<3> 混合液を加熱する工程における加熱温度が、70℃以上、100℃未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法である。
<4> 混合液を酸化する工程が、希釈により行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法である。
<5> 鉄含有酵母抽出物が、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有する鉄高含有酵母抽出物であって、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmの吸光度(O.D.660)として、0.1以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法である。
<6> 鉄高含有酵母抽出物が、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離することにより製造される前記<5>に記載の赤飯の素の製造方法である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の赤飯の素の製造方法により製造されたことを特徴とする赤飯の素である。
<8> 前記<7>に記載の赤飯の素を用いて炊飯することを特徴とする赤飯の製造方法である。
<9> 前記<8>に記載の赤飯の製造方法により製造されたことを特徴とする赤飯である。
<10> 炭酸カリウム含有組成物と、鉄含有酵母抽出物含有組成物と、pH調整組成物とを含むことを特徴とする赤飯の素製造用キットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制された赤飯の素及びその製造方法、前記赤飯の素を使用した赤飯及びその製造方法、並びに、前記赤飯の素の製造に用いる赤飯の素製造用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、試験例1における純水、塩化ナトリウム、及び各カルボン酸塩による鉄抽出率を示すグラフである。
図2図2は、試験例2における各カルボン酸塩による鉄抽出率を示すグラフである。
図3図3は、試験例3における鉄抽出率に対する懸濁液の温度の影響を示すグラフである。
図4図4は、試験例4における鉄抽出率に対する懸濁液のpHの影響を示すグラフである。
図5図5は、試験例5におけるクエン酸三ナトリウム水溶液の濃度と鉄抽出率との関係を示すグラフである。
図6A図6Aは、試験例6における鉄高含有酵母抽出物の粉末、及びミネラル酵母Feの水への溶解性を示す写真の一例である。
図6B図6Bは、図6Aの水溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の写真である。
図6C図6Cは、試験例6における鉄高含有酵母抽出物の粉末、及びミネラル酵母Feのリンゴ果汁溶液への溶解性を示す写真の一例である。
図6D図6Dは、図6Cのリンゴ果汁溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(赤飯の素及びその製造方法)
本発明の赤飯の素は、本発明の赤飯の素の製造方法により製造される。
以下、本発明の赤飯の素の製造方法の説明と併せて本発明の赤飯の素についても説明する。
本発明の赤飯の素の製造方法は、混合液加熱工程と、pH調整工程と、酸化工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0012】
<混合液加熱工程>
前記混合液加熱工程は、アズキ(Vigna angularis)及びササゲ(Vigna unguiculata)の少なくともいずれかを含有する豆含有組成物と、炭酸カリウム含有組成物と、鉄含有酵母抽出物含有組成物とを含有する混合液を加熱する工程である。
【0013】
<<混合液>>
前記混合液は、豆含有組成物と、炭酸カリウム含有組成物と、鉄含有酵母抽出物含有組成物とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0014】
−豆含有組成物−
前記豆含有組成物は、アズキ(Vigna angularis)及びササゲ(Vigna unguiculata)の少なくともいずれか(以下、「豆」と称することがある)を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記豆含有組成物は、アズキ(Vigna angularis)及びササゲ(Vigna unguiculata)の少なくともいずれかからなるものであってもよい。
【0015】
前記アズキの品種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大納言、きたろまん、しゅまり、エリモショウズなどが挙げられる。
【0016】
前記ササゲの品種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、備中ササゲ、中国ササゲなどが挙げられる。
【0017】
前記混合液における前記豆の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記豆の含有量と、前記豆を除いた混合液の容量との比(豆の含有量(g):豆を除いた混合液の容量(mL)として、1:1〜1:10が好ましく、1:2〜1:5がより好ましい。
【0018】
−−その他の成分−−
前記豆含有組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記豆含有組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記豆含有組成物は、渋切り処理されたものであってもよいし、渋切り処理されていないものであってもよいが、渋切り処理されていないものであることが、赤飯の色調及び風味がより優れる点で、好ましい。
前記渋切り処理とは、製餡工程で行われている処理であり、前記豆を煮た後に水切りする処理である。前記渋切り処理により、前記豆に含まれるタンニン等の成分が除かれる。
前記渋切り処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90℃まで加温した水に前記豆を加え、10分間加熱した後、ザル切りする方法などが挙げられる。
【0020】
−炭酸カリウム含有組成物−
前記炭酸カリウム含有組成物は、炭酸カリウムを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記炭酸カリウム含有組成物は、炭酸カリウムからなるものであってもよい。
前記炭酸カリウム含有組成物は、後述する鉄含有酵母抽出物含有組成物と1つの組成物としてもよいし、別々の組成物としてもよい。
【0021】
前記混合液における前記炭酸カリウムの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記豆を除いた混合液において、10ミリモル/L〜200ミリモル/Lが好ましく、10ミリモル/L〜120ミリモル/Lがより好ましく、15ミリモル/L〜110ミリモル/Lが好ましい。
【0022】
−−その他の成分−−
前記炭酸カリウム含有組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記炭酸カリウム含有組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
−鉄含有酵母抽出物含有組成物−
前記鉄含有酵母抽出物含有組成物は、鉄含有酵母抽出物を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記鉄含有酵母抽出物含有組成物は、鉄含有酵母抽出物からなるものであってもよい。
【0024】
−−鉄含有酵母抽出物−−
前記鉄含有酵母抽出物としては、鉄を含有する酵母の抽出物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する鉄高含有酵母抽出物が好ましい。
【0025】
前記混合液における前記鉄含有酵母抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記豆を除いた混合液において、0.001質量%〜0.3質量%が好ましく、0.005質量%〜0.1質量%がより好ましく、0.008質量%〜0.07質量%が特に好ましい。
【0026】
前記混合液における鉄の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記豆を除いた混合液において、0.00006質量%〜0.0045質量%が好ましく、0.000075質量%〜0.0015質量%がより好ましく、0.00012質量%〜0.00105質量%が特に好ましい。
【0027】
[鉄高含有酵母抽出物]
前記鉄高含有酵母抽出物とは、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有する鉄高含有酵母抽出物であって、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)として、0.1以下である鉄含有酵母抽出物をいう。
前記鉄高含有酵母抽出物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液で抽出して製造することが好ましい。
【0028】
前記「鉄高含有」とは、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有することをいう。
前記鉄高含有酵母抽出物における鉄含有量としては、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上含有することが好ましく、0.7質量%以上含有することがより好ましい。
なお、前記鉄含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、原子吸光法、ICP発光分光分析法などにより測定することができる。
【0029】
本発明の鉄高含有酵母抽出物は、水に対する溶解性が高いため、水溶液とした場合の透明度が高く、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)として、0.1以下であり、0.08以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。
【0030】
前記鉄高含有酵母抽出物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記抽出工程によって得られた液体(ろ液、上清等の抽出液)であってもよいし、粉末(パウダー)、粒子状、シート状等の固形物であってもよいし、ゲル状、スラリー状等の半固形物であってもよい。ただし、前記濁度を測定する際の「鉄高含有酵母抽出物1g」は、乾燥させた固形物であり、前記固形物の水分含有量が7質量%以下であるものを指す。前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、上述の方法を用いることができ、その条件等は、特に制限はない。
なお、前記濁度は、分光光度計を使用して、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)を測定することができ、前記分光光度計としては、例えば、U−2000型(株式会社日立製作所製)などが挙げられる。
【0031】
前記鉄高含有酵母抽出物の使用形態としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、乾燥された粉末の状態(例えば、抽出物をスプレードライ等により乾燥したものなど)で使用してもよいし、溶媒に溶解された溶液の状態で使用してもよいし、半固形物の状態(例えば、ゲル状、クリーム状のものなど)で使用してもよい。なお、前記使用形態にするための鉄高含有酵母抽出物の調製方法としては、特に制限はなく、公知の装置等を用い公知の方法に従って行うことができる。
【0032】
前記鉄高含有酵母抽出物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、抽出工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、熱水処理工程、乾燥工程などのその他の工程を含む方法が好ましい。
【0033】
前記抽出工程は、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する工程である。前記抽出工程により、鉄を高含有する液体成分(抽出物)を得ることができる。
【0034】
前記酵母は、菌体内に鉄を含んでいる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記酵母における鉄含有量としては、酵母における鉄の取込みの限界、及び鉄高含有酵母抽出物を効率的に製造する観点からは、乾燥菌体質量当たり0.01質量%〜5質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
【0035】
ここで、前記酵母における鉄含有量とは、酵母菌体内における鉄含有量を指し、例えば、水等で洗浄した菌体であっても、洗浄後においても鉄含有量が高く維持されることが好ましい。このような酵母は、洗浄を行っても該鉄は除去されず菌体内部に保持されたままであるので、菌体由来の鉄であって安全性が高く、酵母特有の臭いや味を低減するための熱水処理(洗浄)を行った場合に、添加した食品の風味等を損なうことがなく、しかも前記鉄を高濃度含有しているので、食品素材等として好適である。
なお、前記酵母における鉄含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、原子吸光法、ICP発光分光分析法により測定することができる。
【0036】
前記鉄を含有する酵母は、培養液に鉄を添加して酵母を培養することにより、酵母菌体内に鉄を取り込ませて作製してもよいし、鉄を2,000質量ppm以上含有する溶液中で、酵母を懸濁状態でゆっくりと攪拌及び/又は振とうすることにより作製してもよいし(例えば、特開平8−332083号公報参照)、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母工業株式会社製)などが挙げられる。前記培養液に添加する鉄の量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、鉄利用率(鉄の菌体内取込率)と対糖収率(増殖率)とを良好なレベルで両立させることが好ましい。
なお、添加する鉄の種類、培地の種類、培養条件などは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
また、前記鉄を含有する酵母の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿菌体の態様、粉末の態様などが挙げられる。
【0038】
前記酵母は、鉄以外に、更にその他のミネラル成分を含有していてもよく、該ミネラル成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マンガン、銅、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。これらのミネラル成分は、酵母中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよく、また、含まれている濃度としては、目的に応じて異なり一概に規定することはできないが、一般に高濃度であることが好ましい。
【0039】
前記酵母としては、食用酵母であることが特に好ましい。
前記食用酵母としては、特に制限はなく、公知のものの中から選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母などが挙げられる。これらの中でも、パン酵母が特に好ましい。
【0040】
前記食用酵母の菌株としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などが挙げられる。
【0041】
前記食用酵母の菌株の具体例としては、Saccharomyces cerevisiaeSaccharomyces carlsbergensisSaccharomyces uvarumSaccharomyces rouxiiTorulopsis utilisTorulopsis candidaMycotorula japonicaMycotorula lipolyticaTorulaspora delbrueckiiTorulaspora fermentatiCandida sakeCandida tropicalisCandida utilisHansenula anomalaHansenula suaveolensSaccharomycopsis fibligeraSaccharomyces lipolyticaRhodotorula rubraPichia farinosaなどが挙げられる。
これらの中でも、Saccharomyces cerevisiaeSaccharomyces carlsbergensisが好ましく、Saccharomyces cerevisiaeが特に好ましい。
【0042】
前記カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率(鉄溶出率)の観点から、1価から3価のカルボン酸が好ましく、3価のカルボン酸がより好ましい。
【0043】
前記1価のカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ピルビン酸、グルコン酸などが挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、オキサロ酢酸、α−ケトグルタル酸などが挙げられる。
前記3価のカルボン酸としては、例えば、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、オキサロコハク酸などが挙げられる。
これらの中でも、食品添加及び鉄抽出率の観点から、酢酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
前記カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記カルボン酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率(鉄溶出率)の観点から、1価から3価のカルボン酸塩が好ましく、3価のカルボン酸塩がより好ましい。
これらのカルボン酸塩としては、例えば、上記カルボン酸の具体例の塩などが挙げられる。
これらの中でも、食品添加及び鉄抽出率の観点から、酢酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩が好ましく、クエン酸塩がより好ましい。前記クエン酸塩としては、クエン酸三ナトリウムが好適に挙げられる。
前記カルボン酸塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記カルボン酸及びカルボン酸塩は、どちらか一方を使用してもよいし、両者を使用してもよい。
【0046】
前記カルボン酸又は前記カルボン酸塩の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率の観点から、カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、酵母中の鉄1モルに対して、2.0モルから17.0モルが好ましく、2.0モルから15.0モルがより好ましく、2.5モルから11.0モルが特に好ましい。
【0047】
前記カルボン酸及び前記カルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液(以下、「カルボン酸緩衝液」と称することがある)に用いられる溶媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、通常水であり、該水とアルコール等の有機溶媒との混合溶液であってもよい。
前記カルボン酸緩衝液の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率の観点から、70ミリモル/Lから700ミリモル/Lが好ましく、80ミリモル/Lから500ミリモル/Lがより好ましく、90ミリモル/Lから450ミリモル/Lが特に好ましい。
【0048】
前記カルボン酸緩衝液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記pHは、前記カルボン酸及び前記カルボン酸塩の量比を変更することにより、調整することができる。
前記抽出工程における懸濁液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出効率の観点から、2.0から10.0が好ましく、4.0から9.5がより好ましく、5.0から8.0が特に好ましい。
【0049】
前記抽出工程における懸濁液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出効率の観点から、30℃から100℃が好ましく、50℃から100℃がより好ましく、70℃から100℃が特に好ましい。
【0050】
前記抽出工程における抽出時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
前記抽出工程における鉄の抽出率(「溶出率」と称することもある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高いほど好ましく、16%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。
前記鉄の抽出率は、下記式により求めることができる。
鉄の抽出率(%)={抽出物中の鉄全量(質量)/抽出に用いた酵母に含まれる鉄全量(質量)}×100
【0052】
前記酵母を前記カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させる方法としては、特に制限はなく、公知の攪拌方法や振とう方法を用いることができる。
また、前記抽出工程において、前記懸濁液を更に振とうしてもよい。前記振とうの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
前記懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過による分離、遠心による分離などが挙げられる。
前記濾過の方法としては、特に制限はなく、公知の濾過装置を適宜選択して行うことができ、例えば、フィルタープレス、ラインフィルターなどを用いることができる。なお、これらは併用してもよい。
前記遠心分離の方法としては、特に制限はなく、公知の遠心装置を適宜選択して行うことができる。また、前記遠心の条件としても、特に制限はなく、前記懸濁液の量に応じて適宜選択することができ、例えば、前記懸濁液の量が5mLの場合は、3,000rpmで5分間という条件とすることが挙げられる。
【0054】
前記カルボン酸緩衝液による抽出の痕跡として前記鉄高含有酵母抽出物中にカルボン酸が残るため、前記カルボン酸緩衝液による抽出が行われたか否かは、前記鉄高含有酵母抽出物中のカルボン酸を分析して判別することができる。前記分析の方法としては、特に制限はなく、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によってカルボン酸量を測定することにより行うことができる。
【0055】
前記鉄高含有酵母抽出物の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱水処理工程、乾燥工程、濃縮工程、希釈工程などが挙げられる。これらの中でも、熱水処理工程を含むことが好ましい。
【0056】
前記熱水処理工程は、前記抽出工程の前に、鉄を含有する前記酵母を60℃〜120℃の熱水に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する工程である。前記抽出工程の前に、前記熱水処理工程を行うことにより、酵母特有の臭い及び味(酵母臭、酵母味)を低減することができ、得られた鉄高含有酵母抽出物を食品等に添加した際に食品等の風味をより損なわない点で好ましい。
前記熱水の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酵母臭及び酵母味の低減効果が高い点で、80℃〜120℃が好ましく、95℃〜120℃がより好ましい。
なお、酵母を懸濁させる方法及び得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する方法としては、特に制限はなく、前述した抽出工程と同様の方法が挙げられる。
【0057】
前記熱水処理工程においては、酵母特有の臭い及び味を低減させるため、酵母臭や酵母味の抽出(除去)を促進する抽出促進剤を熱水に添加することが好ましい。前記抽出促進剤としては、次の抽出工程における鉄の抽出率に悪影響を与えない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボン酸塩以外の塩が挙げられる。これらの中でも、酵母臭を抽出する効果が高く、熱水工程において鉄が抽出され難い点で、リン酸塩が好ましい。
前記抽出促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥酵母菌体質量当たり、5質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜50質量%がより好ましい。
【0058】
前記乾燥工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を乾燥させる工程である。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤーL−8(大川原化工機株式会社製)を用いて行うことができる。これにより、鉄を高含有した酵母抽出固形物(粉体)を得ることができ、後述する種々の用途に用いることができる。なお、前記固形物とする際には、デキストリン等の賦形剤を適宜含有させてもよい。
前記濃縮工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を濃縮する工程であり、前記希釈工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を希釈する工程である。
前記濃縮及び希釈の方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0059】
−−その他の成分−−
前記鉄含有酵母抽出物含有組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記鉄含有酵母抽出物含有組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0060】
−その他の成分−
前記混合液におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記豆含有組成物、前記炭酸カリウム含有組成物、及び前記鉄含有酵母抽出物含有組成物で挙げたその他の成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記混合液におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0061】
<<混合液の調製>>
前記混合液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記豆含有組成物以外を含む混合液を90℃まで加温した後、渋切り処理していない前記豆含有組成物を加える方法、前記豆含有組成物以外を含む混合液を90℃まで加温した後、渋切り処理した前記豆含有組成物を加える方法などが挙げられる。
【0062】
<<加熱温度>>
前記混合加熱工程の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上が好ましく、90℃以上、100℃未満がより好ましい。前記加熱温度が、90℃未満であると、赤飯の色調が、緑がかった色調となることがある。一方、前記より好ましい範囲内であると、赤飯の色調がより優れる点で、有利である。
【0063】
<<加熱時間>>
前記混合加熱工程の加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間〜90分間が好ましく、15分間〜60分間がより好ましい。
【0064】
<pH調整工程>
前記pH調整工程は、前記混合液のpHを7〜9に調整する工程である。なお、前記その他の工程として、後述する固液分離工程を行う場合には、前記混合液は、該固液分離工程で得られる液体成分(以下、「抽出液」と称することがある)をいう。
前記pH調整工程では、pH調整組成物により、前記混合液のpHを調整する。
前記pH調整工程は、後述する酸化工程と同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
前記pH調整工程と、後述する酸化工程とを別々に行う場合、その順序としては特に制限はなく、pH調整工程を先に行ってもよいし、酸化工程を先に行ってもよい。
【0065】
−pH調整組成物−
前記pH調整組成物は、酸性のpH調整剤を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記pH調整組成物は、酸性のpH調整剤からなるものであってもよい。
前記pH調整組成物は、後述する乳酸カルシウム含有組成物と1つの組成物としてもよいし、別々の組成物としてもよい。
【0066】
−−酸性のpH調整剤−−
前記酸性のpH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リンゴ酸、グルコノデルタラクトン、クエン酸、リン酸2水素カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、赤飯の色調、及び風味がより優れる点で、リンゴ酸が好ましい。
【0067】
前記pH調整組成物における前記酸性のpH調整剤の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0068】
−−その他の成分−−
前記pH調整組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記pH調整組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
<酸化工程>
前記酸化工程は、前記混合液を酸化する工程である。
前記酸化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、希釈、通気などが挙げられる。これらの中でも、希釈が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
−希釈−
前記希釈としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記抽出液に対して、体積比(希釈液の体積/抽出液の体積)で、1以上が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0071】
前記希釈液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水などが挙げられる。
【0072】
−通気−
前記通気の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2vvm以上が好ましく、0.5vvm以上がより好ましい。
【0073】
−時間−
前記酸化工程の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記希釈により酸化させる場合の時間としては、10分間以上が好ましく、10分間〜30分間がより好ましい。
【0074】
<その他の工程>
前記赤飯の素の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固液分離工程、煮豆混合工程、乳酸カルシウム含有組成物添加工程、加圧加熱殺菌工程、などが挙げられる。
【0075】
<<固液分離工程>>
前記固液分離工程は、前記加熱工程で加熱された混合液の固体成分と液体成分とを分離する工程である。
前記固液分離の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過による分離、遠心による分離などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記濾過の方法としては、特に制限はなく、公知の濾過装置を適宜選択して行うことができ、例えば、フィルタープレス、ラインフィルターなどを用いることができる。なお、これらは併用してもよい。
前記遠心分離の方法としては、特に制限はなく、公知の遠心装置を適宜選択して行うことができる。また、前記遠心の条件としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0076】
<<煮豆混合工程>>
前記煮豆混合工程は、前記固液分離工程、前記pH調整工程、及び前記酸化工程を経て酸化された抽出液と、前記固液分離工程で分離された豆(固体成分、以下、「煮豆」と称することがある)とを混合し、煮豆混合液を得る工程である。
【0077】
<<乳酸カルシウム含有組成物添加工程>>
前記乳酸カルシウム含有組成物添加工程は、乳酸カルシウム含有組成物を添加する工程である。
前記乳酸カルシウム含有組成物を添加する対象は、前記混合液であってもよいし、前記pH調整された混合液であってもよいし、前記酸化された混合液であってもよいし、前記煮豆混合液であってもよい。これらの中でも、前記pH調整された混合液、前記酸化された混合液、前記煮豆混合液が好ましい。
前記乳酸カルシウム含有組成物添加工程は、前記pH調整工程、及び前記酸化工程の少なくともいずれかと同時に行ってもよい。
前記乳酸カルシウム含有組成物を添加することにより、アズキの腹割れを防止することができる。
【0078】
−乳酸カルシウム含有組成物−
前記乳酸カルシウム含有組成物は、乳酸カルシウムを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記乳酸カルシウム含有組成物は、乳酸カルシウムからなるものであってもよい。
【0079】
前記乳酸カルシウムの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記乳酸カルシウムを添加する液における前記豆を除いた容量に対して、0.2質量%〜5.0質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、後述するレトルト殺菌後に好ましい豆の硬さとすることができる点で、有利である。
【0080】
−−その他の成分−−
前記乳酸カルシウム含有組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記乳酸カルシウム含有組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0081】
<<加圧加熱殺菌工程>>
前記加圧加熱殺菌(以下、「レトルト殺菌」と称することがある)工程は、前記混合液、又は、煮豆混合液を殺菌する工程である。
前記レトルト殺菌工程の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、110℃〜130℃とすることができる。
前記レトルト殺菌工程の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10分間〜30分間とすることができる。
【0082】
<用途>
前記赤飯の素の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の赤飯の製造方法に好適に用いることができる。前記赤飯の素は、赤飯本来の好ましい色調や風味を付与したい食材に対して使用してもよい。
【0083】
(赤飯及びその製造方法)
本発明の赤飯は、本発明の赤飯の製造方法により製造される。
以下、本発明の赤飯の製造方法の説明と併せて本発明の赤飯についても説明する。
本発明の赤飯の製造方法は、炊飯工程を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0084】
<炊飯工程>
前記炊飯工程は、前記赤飯の素を用いて炊飯する工程である。
前記炊飯の方法としては、特に制限はなく、公知の炊飯器を適宜選択して行うことができる。
前記炊飯においては、前記赤飯の素のみを用いて炊飯してもよいし、水を追加して炊飯してもよい。
【0085】
<その他の工程>
前記赤飯の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
(赤飯の素製造用キット)
本発明の赤飯の素製造用キットは、炭酸カリウム含有組成物と、鉄含有酵母抽出物含有組成物と、pH調整組成物とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の組成物を含む。
前記炭酸カリウム含有組成物、前記鉄含有酵母抽出物含有組成物、及び前記pH調整組成物は、上述した本発明の赤飯の素の製造方法において挙げたものと同様のものを用いることができる。
前記赤飯の素製造用キットにおけるその他の組成物としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した本発明の赤飯の素の製造方法において挙げた乳酸カルシウム含有組成物などが挙げられる。
【0087】
前記赤飯の素製造用キットにおける各組成物は、それぞれ別個の組成物としてもよいし、複数を組み合わせた組成物として用いてもよい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の試験例を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0089】
(試験例1:鉄含有酵母抽出物の検討−1)
乾物質量5gの鉄高含有酵母粉末(ミネラル酵母Fe、鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)に、表1に示す200ミリモル/Lの各カルボン酸ナトリウム水溶液を50mL加えて攪拌し、100mLにメスアップした。なお、前記各カルボン酸ナトリウムの量は、抽出される酵母中の鉄1モルに対して、7.3モルであった。対照としては、水又は200ミリモル/Lの塩化ナトリウム(食塩)水溶液を用い、以下同様の試験を行った。ここで得られた各懸濁液のpHをpHメーターMP230(METTLER TOREDO社製)で測定した。
前記懸濁液をスターラーによって攪拌しながら、5mLを試験管に取り、沸騰水中で10分間加熱した。この懸濁液を3,000rpmで5分間遠心分離し、上清のみを試験管に採取し、酵母抽出物を得て、その質量を測定した。
前記鉄の抽出率は、酵母抽出物中の鉄含有量を、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により測定し、抽出液へ抽出された鉄の割合を計算した。結果を表1及び図1に示した。
【0090】
また、前記抽出物を乾燥粉末とし、前記乾燥粉末における鉄含有量(質量%)を以下のようにして測定した。即ち、鉄を抽出した抽出液にデキストリンを添加し、固形物含量を10質量%に調整後、スプレードライヤーL−8(大川原化工機株式会社製)を用いて乾燥させ、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により鉄を定量することにより行った。結果を表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1及び図1の結果から、鉄抽出率及び抽出物における鉄含有量は、カルボン酸塩を用いることで鉄抽出率が高くなり、鉄を高含有した抽出物が得られることがわかった。
なお、試験例1−3〜1−4で得られた鉄含有酵母抽出物は、前記鉄高含有酵母抽出物に該当する。
【0093】
(試験例2:鉄含有酵母抽出物の検討−2)
乾物質量1gの鉄高含有酵母粉末(ミネラル酵母Fe、鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)に、表2に示す200ミリモル/Lの各カルボン酸ナトリウム水溶液を10mL加えて攪拌し、各pHに調整後、20mLにメスアップした。なお、酵母中の鉄1モルに対する前記各カルボン酸ナトリウムの量は、表2のとおりであった。また、前記pHの調整は、pHメーターMP230(METTLER TOREDO社製)で測定しながら行った。
前記懸濁液を20℃で2時間、振とう(スターラーによって攪拌)した。
その後、前記懸濁液をスターラーによって攪拌しながら、5mLを試験管に取り、沸騰水中で10分間加熱した。この懸濁液を3,000rpmで5分間遠心分離し、上清のみを試験管に採取し、酵母抽出物を得て、その質量を測定した。
前記鉄の抽出率は、酵母抽出物中の鉄含有量を、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により測定し、抽出液へ抽出された鉄の割合を計算した。結果を表2及び図2に示した。
【0094】
また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を表2に示した。
【0095】
【表2】
【0096】
表2及び図2の結果から、鉄抽出率及び抽出物における鉄含有量は、カルボン酸塩として、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムを用いた場合にも高くなることがわかった。
なお、試験例2−1〜2−9で得られた鉄含有酵母抽出物は、前記鉄高含有酵母抽出物に該当する。
【0097】
(試験例3:鉄含有酵母抽出物の検討−3)
40質量%のクリームになるようミネラル酵母Fe(鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)の粉末を300mLの水に懸濁した。得られたクリームを沸騰水中で10分間加熱した後、洗浄し、沈殿を300mLにメスアップした。得られたクリーム10mLにクエン酸及びクエン酸三ナトリウム・2水和物を含む水溶液(クエン酸緩衝液)10mLを添加して懸濁させた。なお、前記クエン酸緩衝液の濃度は、200ミリモル/Lであり、前記クエン酸緩衝液のpHは、4.5とした。
前記懸濁液の温度を4℃、50℃、又は75℃としてから2時間後、遠心分離を行い、得られた上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表3及び図3に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
表3及び図3の結果から、懸濁液の温度が高いほど、鉄抽出率が高くなる傾向が見られるものの、幅広い温度範囲において、20%以上の高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。
なお、試験例3−1〜3−3で得られた鉄含有酵母抽出物は、前記鉄高含有酵母抽出物に該当する。
【0100】
(試験例4:鉄含有酵母抽出物の検討−4)
試験例3において、クエン酸緩衝液を下記表4に記載の各水溶液(クエン酸緩衝液)に代え、懸濁液の温度を75℃とした以外は、試験例3と同様にして、上清(酵母抽出物)を得た。なお、前記クエン酸緩衝液のpHは、クエン酸とクエン酸三ナトリウム・2水和物との量比を適宜変更することにより、調整した。
前記上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表4及び図4に示した。
【0101】
【表4】
【0102】
表4及び図4の結果から、抽出に用いる溶媒(カルボン酸緩衝液)のpHが中性付近であるほど、鉄抽出率は高くなる傾向が見られるものの、懸濁液のpHの広い範囲において、20%以上の高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。また、抽出に用いる溶媒として、カルボン酸のみ、カルボン酸及びカルボン酸塩、並びにカルボン酸塩のみを用いたいずれの場合にも高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。
なお、試験例4−1〜4−13で得られた鉄含有酵母抽出物は、前記鉄高含有酵母抽出物に該当する。
【0103】
(試験例5:鉄含有酵母抽出物の検討−5)
原料としてミネラル酵母Fe(鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いてカルボン酸及びカルボン酸塩の総量と鉄の抽出効率との関係を試験した。抽出溶媒に含まれるカルボン酸塩として、クエン酸三ナトリウムを用い、下記表5に示した濃度のクエン酸三ナトリウム水溶液を用意した。なお、クエン酸三ナトリウム水溶液のpHは、7.8とした。
下記表5に示した濃度の各クエン酸三ナトリウム水溶液を用い、懸濁液の温度を75℃とした以外は、試験例3と同様にして、上清(酵母抽出物)を得た。
前記上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表5及び図5に示した。なお、図5中、「◆」は鉄抽出率を示し、「■」は懸濁液のpHを示す。
【0104】
【表5】
【0105】
表5及び図5の結果から、カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、抽出される酵母中の鉄1モルに対して一定量以上であると、鉄抽出率が非常に高くなることがわかった。
なお、試験例5中、試験例5−2〜5−7で得られた鉄含有酵母抽出物は、前記鉄高含有酵母抽出物に該当する。
【0106】
(試験例6:鉄含有酵母抽出物の検討−6)
試験例4−10で得られた鉄高含有酵母抽出物の粉末1gを水又はリンゴ果汁(10体積%リンゴ果汁入り飲料、アサヒ飲料株式会社製)で100mLにメスアップして、鉄高含有酵母抽出物の1%(質量/体積)溶液を作製した。
そして、前記各溶液の濁度について、分光光度計(U−2000型、株式会社日立製作所製)を使用して、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)を測定することにより求めた。
また、前記各溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の沈殿の有無を観察した。
なお、対照として、ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母工業株式会社製;抽出を行っていない)について、鉄含量が同じになるように添加して、同様に溶液の濁度の測定、遠心後の沈殿の有無の評価を行った。結果を表6、図6A(遠心前の水溶液)、図6B(遠心後の水溶液)、図6C(遠心前のリンゴ果汁入り飲料)、及び図6D(遠心後のリンゴ果汁入り飲料)に示した。
【0107】
【表6】
【0108】
試験例6−1の水溶液の濁度は、試験例6−2の水溶液の濁度に比べ、有意に低い値を示した。また、図6Aから、試験例6−1の水溶液は、目視でも試験例6−2の水溶液に比べ、有意に清澄性が高かった。更に、図6Bから、水溶液を3,000rpmで5分間遠心したところ、試験例6−1では沈殿物が確認されず、清澄性の高い溶液だったのに対し、試験例6−2では沈殿物が確認された。
これらの結果は、水の代わりにリンゴ果汁入り飲料を用いた試験例6−3、及び試験例6−4でも同様であった。
【0109】
(試験例7−1:赤飯の素及び赤飯)
<赤飯の素の製造>
−混合液調製工程−
炭酸カリウムと、鉄含有酵母抽出物と、デキストリンとからなる組成物1−1(組成は、下記参照)を水に溶解させ、200mLの溶液を調製した。前記溶液における炭酸カリウムの濃度は、20ミリモル/Lとし、鉄含有酵母抽出物の量は、100mg(鉄量は、1.5質量%)とした。
前記溶液を90℃まで加温した後、アズキ(北海道産小豆)50gを投入し、90℃となるまで加熱し、混合液とした。
−−組成物1−1−−
炭酸カリウム ・・・ 27.8質量%
鉄含有酵母抽出物(試験例4−10で得られた鉄高含有酵母抽出物の粉末) ・・・ 1.0質量%
デキストリン ・・・ 71.2質量%
【0110】
−混合液加熱工程−
前記混合液を、90℃で20分間加熱した。
【0111】
−固液分離工程−
前記混合液を、ザルを用いて、固体成分(以下、「煮豆」と称することがある)と、液体成分(以下、「抽出液」と称することがある)とに分離した。
【0112】
−pH調整工程−
リンゴ酸と、デキストリンとからなる組成物2(組成は、下記参照)を前記抽出液に添加し、前記抽出液のpHを7とした。前記リンゴ酸の添加量は、前記抽出液に対して、1質量%であった。
−−組成物2−−
リンゴ酸 ・・・ 6.3質量%
デキストリン ・・・ 93.7質量%
【0113】
−酸化工程−
前記pH調整された抽出液に対し、該抽出液と同量の水を加えて希釈することにより、酸化した。希釈後、後述する加圧加熱殺菌工程までの時間は、20分間とした。
【0114】
−乳酸カルシウム含有組成物添加工程−
前記酸化された抽出液に対し、乳酸カルシウムと、デキストリンとからなる組成物3(組成は、下記参照)を添加した。前記乳酸カルシウムの添加量は、前記抽出液に対して、6質量%であった。
−−組成物3−−
乳酸カルシウム ・・・ 12.6質量%
デキストリン ・・・ 87.4質量%
【0115】
−煮豆混合工程−
前記乳酸カルシウムが添加された抽出液の全量と、前記固液分離工程で得られた煮豆の全量とを混合し、煮豆混合液を得た。
【0116】
−加圧加熱殺菌工程−
前記煮豆混合液の全量を耐熱耐圧袋に充填し、レトルト釜にて120℃で20分間レトルト殺菌し、赤飯の素とした。
【0117】
<赤飯の製造>
−炊飯工程−
前記赤飯の素の全量を3合の米に対して添加し、炊飯容器の3合目の目盛りまで加水し、炊飯器(パナソニック株式会社製、SR−MZ051)にて炊飯し、赤飯を得た。
【0118】
<評価>
前記赤飯の色調、風味、並びに、金属味及び収斂味について、下記基準に従って5人が評価し、その平均値に基づいて評価した。結果を表7に示した。
−赤飯の色調−
−−基準−−
5 ・・・ 通常の赤飯と比べて、赤みが非常に強い。
4 ・・・ 通常の赤飯と比べて、赤みがやや強い。
3 ・・・ 通常の赤飯の赤みと同等である。
2 ・・・ 通常の赤飯と比べて、赤みがやや弱いが、許容範囲内である。
1 ・・・ 通常の赤飯と比べて、赤みが非常に弱い。
−−評価−−
○ ・・・ 平均値が、4.0以上である。
△ ・・・ 平均値が、3.0以上4.0未満である。
× ・・・ 平均値が、3.0未満である。
【0119】
−赤飯の風味−
−−基準−−
5 ・・・ 通常の赤飯と同等である。
4 ・・・ 通常の赤飯と比べて、風味がやや弱いが、許容範囲内である。
3 ・・・ 通常の赤飯と比べて、風味が弱い。
2 ・・・ 通常の赤飯と比べて、風味が非常に弱い。
1 ・・・ 赤飯の風味が全くない。
−−評価−−
○ ・・・ 平均値が、4.0以上である。
△ ・・・ 平均値が、2.0以上4.0未満である。
× ・・・ 平均値が、2.0未満である。
【0120】
−金属味及び収斂味−
−−基準−−
5 ・・・ 金属味及び収斂味を感じない。
4 ・・・ 金属味及び収斂味がやや感じられる。
3 ・・・ 金属味及び収斂味が感じられるが、許容範囲内である。
2 ・・・ 金属味及び収斂味が強い。
1 ・・・ 金属味及び収斂味が非常に強い。
−−評価−−
○ ・・・ 平均値が、4.0以上である。
△ ・・・ 平均値が、3.0以上4.0未満である。
× ・・・ 平均値が、3.0未満である。
【0121】
(試験例7−2:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−1の混合液調製工程における組成物1−1を下記組成物1−2に代えた以外は、試験例7−1と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表7に示した。
なお、混合液調製工程における溶液中のミネラル酵母Feの量は、100mg(鉄量は、1.5質量%)とした。
−−組成物1−2−−
炭酸カリウム ・・・ 27.8質量%
ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母株式会社製) ・・・ 1.0質量%
デキストリン ・・・ 71.2質量%
【0122】
(試験例7−3:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−1の混合液調製工程における組成物1−1を下記組成物1−3に代えた以外は、試験例7−1と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表7に示した。
なお、混合液調製工程における溶液中のクエン酸鉄の量は、8.6mg(鉄量は、17.5質量%)とした。
−−組成物1−3−−
炭酸カリウム ・・・ 2.8質量%
クエン酸鉄 ・・・ 0.9質量%
デキストリン ・・・ 96.3質量%
【0123】
(試験例7−4:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−1の混合液調製工程における組成物1−1を下記組成物1−4に代えた以外は、試験例7−1と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表7に示した。
なお、混合液調製工程における溶液中の硫酸第一鉄の量は、7.5mg(鉄量は、20.1質量%)とした。
−−組成物1−4−−
炭酸カリウム ・・・ 2.8質量%
硫酸第一鉄 ・・・ 0.8質量%
デキストリン ・・・ 96.4質量%
【0124】
(試験例7−5:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−1の混合液調製工程における組成物1−1を下記組成物1−5に代えた以外は、試験例7−1と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表7に示した。
−−組成物1−5−−
炭酸カリウム ・・・ 27.8質量%
デキストリン ・・・ 72.2質量%
【0125】
【表7】
【0126】
表7の結果から、本発明の製造方法により得られた試験例7−1の赤飯の素を用いて製造した赤飯は、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制されていた。一方、試験例7−2〜7−5のいずれかの赤飯の素を用いて製造した赤飯では、赤飯の色調、風味、並びに金属味及び収斂味の少なくともいずれかの点で劣っていた。
また、試験例7−1の結果と、後述する試験例8−1の結果とを比較すると、渋切り処理をしていない試験例7−1では、色調、風味、並びに金属味及び収斂味の全ての点において、渋切り処理をした試験例8−1よりも優れていた。
【0127】
(試験例8−1:赤飯の素及び赤飯)
試験例7−1の混合液調製工程で用いたアズキを下記の渋切り処理を行ったアズキに代えた以外は、試験例7−1と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表8に示した。
−渋切り処理−
水を90℃まで加温した後、アズキ(北海道産小豆)50gを投入し、10分間沸騰させた後、ザル切りし、渋切り処理を行ったアズキとした。
【0128】
(試験例8−2:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−2の混合液調製工程で用いたアズキを、前記試験例8−1と同様にして渋切り処理したアズキに代えた以外は、試験例7−2と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表8に示した。
【0129】
(試験例8−3:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−3の混合液調製工程で用いたアズキを、前記試験例8−1と同様にして渋切り処理したアズキに代えた以外は、試験例7−3と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表8に示した。
【0130】
(試験例8−4:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−4の混合液調製工程で用いたアズキを、前記試験例8−1と同様にして渋切り処理したアズキに代えた以外は、試験例7−4と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表8に示した。
【0131】
(試験例8−5:赤飯の素及び赤飯)
前記試験例7−5の混合液調製工程で用いたアズキを、前記試験例8−1と同様にして渋切り処理したアズキに代えた以外は、試験例7−5と同様にして、赤飯の素、及び赤飯を製造し、評価した。結果を表8に示した。
【0132】
【表8】
【0133】
表8の結果から、本発明の製造方法により得られた試験例8−1の赤飯の素を用いて製造した赤飯は、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制されていた。一方、試験例8−2〜8−5のいずれかの赤飯の素を用いて製造した赤飯では、赤飯の色調、風味、並びに金属味及び収斂味の少なくともいずれかの点で劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の赤飯の素の製造方法によれば、赤飯として求められる色調を有し、風味に優れ、かつ、金属味及び収斂味が抑制された赤飯の素を製造することができる。
本発明の赤飯の素は、食材に赤飯本来の好ましい色調、風味を付与することができ、赤飯に好適に用いることができる。
本発明の赤飯の素製造用キットは、本発明の赤飯の素の製造方法に好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D