(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
導体層と絶縁層とが交互に積層された多層配線基板において、入力された高周波信号を、最上層から最下層まで垂直方向に伝搬させる高周波伝送線路では、高周波信号の通過損失や反射損失をできるだけ少なくする必要がある。
【0003】
従来、このような高周波伝送線路として、高周波信号ビアを多層配線基板の最上層から最下層まで階段状に形成して伝搬させる技術が提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。
図8は、従来の高周波伝送線路の構成を示す説明図であり、
図8(a)は上面図、
図8(b)は
図8(a)のb−b断面図、
図8(c)は底面図、
図8(d)は、
図8(b)のd−d断面図である。
【0004】
この高周波伝送線路50は、全体として導体層51Mと絶縁体層51Pとが交互に積層された多層配線基板51において、階層ごとに導体層51M間を接続する高周波信号ビア52を階段状に形成し、この高周波信号ビア52を介して、最上層の上部導体パッド53Aと最下層の下部導体パッド53Bとを接続する構造を有している。
【0005】
最上層において、上部導体パッド53Aには線状の高周波信号線路54Aが接続されており、これら上部導体パッド53Aと上部高周波信号線路54Aとの周囲には、上部アンチパッド領域55Aを挟んで、上部グランドプレーン56Aが形成されている。
また、最下層において、下部導体パッド53Bには線状の下部高周波信号線路54Bが接続されており、これら下部導体パッド53Bと下部高周波信号線路54Bとの周囲には、下部アンチパッド領域55Bを挟んで、下部グランドプレーン56Bが形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術によれば、多層配線基板51において、最上層から最下層まで高周波信号ビア52が階段状に形成されるため、高周波信号線路が小さな領域で垂直に折り曲げられることになる。しかしながら、このような高周波信号線路の屈曲部では、不要な放射が発生しやすく、屈曲部での実効的な曲げ半径を大きくすることにより、ある程度の放射を抑圧することは可能であるが、高周波信号の放射成分を完全には除去できず、通過損失や反射損失が増加するといった問題点があった。
また、高周波信号ビア52を、多層配線基板51の最上層から最下層まで階段状に形成するには、精密な加工が必要であるとともに、多層配線基板の体積拡大にも繋がるため、コストアップの原因となるという課題があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬させることができる高周波伝送線路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる高周波伝送線路は、導体層と絶縁層とが交互に積層された多層配線基板と、前記多層配線基板内を最上層から最下層まで垂直に貫通して形成された高周波信号ビアと、前記最上層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの上端と接続された上部導体パッドと、前記最上層に線状に形成されて、先端が前記上部導体パッドと接続された上部高周波信号線路と、前記最上層に形成されて、接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された上部アンチパッド領域を挟んで、前記上部導体パッドおよび前記上部高周波信号線路の周囲に形成された上部グランドプレーンと、前記最下層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの下端と接続された下部導体パッドと、前記最下層に線状に形成されて、先端が前記下部導体パッドと接続された下部高周波信号線路と、前記最下層に形成されて、前記接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された下部アンチパッド領域を挟んで、前記下部導体パッドおよび前記下部高周波信号線路の周囲に形成された下部グランドプレーンと、前記多層配線基板内に形成されて、前記上部グランドプレーンおよび前記下部グランドプレーンと、これらグランドプレーン間に積層されている前記各導体層とを接続するグランドビアと、前記接地電位に接続された厚肉の導体からなり、前記上部グランドプレーンの表面のうち前記上部アンチパッド領域と隣接して配置された上部導体ブロックとを備え、前記上部導体ブロックは、前記上部導体パッドを挟む両側位置であって、かつ、前記上部高周波信号線路の伸延方向と直交する直交方向の一方と他方の位置に配置されている。
【0010】
また、本発明にかかる高周波伝送線路の他の構成例は、導体層と絶縁層とが交互に積層された多層配線基板と、前記多層配線基板内を最上層から最下層まで垂直に貫通して形成された高周波信号ビアと、前記最上層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの上端と接続された上部導体パッドと、前記最上層に線状に形成されて、先端が前記上部導体パッドと接続された上部高周波信号線路と、前記最上層に形成されて、接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された上部アンチパッド領域を挟んで、前記上部導体パッドおよび前記上部高周波信号線路の周囲に形成された上部グランドプレーンと、前記最下層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの下端と接続された下部導体パッドと、前記最下層に線状に形成されて、先端が前記下部導体パッドと接続された下部高周波信号線路と、前記最下層に形成されて、前記接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された下部アンチパッド領域を挟んで、前記下部導体パッドおよび前記下部高周波信号線路の周囲に形成された下部グランドプレーンと、前記多層配線基板内に形成されて、前記上部グランドプレーンおよび前記下部グランドプレーンと、これらグランドプレーン間に積層されている前記各導体層とを接続するグランドビアと、前記接地電位に接続された厚肉の導体からなり、前記上部グランドプレーンの表面のうち前記上部アンチパッド領域と隣接して配置された上部導体ブロックと、前記接地電位に接続された厚肉の導体からなり、前記下部グランドプレーンの表面のうち前記下部アンチパッド領域と隣接して配置された下部導体ブロックとを備え、前記上部導体ブロックは、前記上部導体パッドを挟む両側位置であって、かつ、前記上部高周波信号線路の伸延方向と直交する方向の一方と他方の位置に配置されており、前記下部導体ブロックは、前記下部導体パッドを挟む両側位置であって、かつ、前記下部高周波信号線路の伸延方向と直交する方向の一方と他方の位置に配置されている。
【0011】
また、本発明にかかる上記高周波伝送線路の一構成例は、前記上部導体ブロックが、前記上部導体パッドと対向する一端部が、当該上部導体パッドへ向けて前記上部グランドプレーンから前記上部アンチパッド領域上方へ突出するよう配置されている。
【0012】
また、本発明にかかる上記高周波伝送線路の一構成例は、前記下部導体ブロックが、前記下部導体パッドと対向する一端部が、当該下部導体パッドへ向けて前記下部グランドプレーンから前記下部アンチパッド領域下方へ突出するよう配置されている。
【0013】
また、本発明にかかる高周波伝送線路の他の構成例は、導体層と絶縁層とが交互に積層された多層配線基板と、前記多層配線基板内を最上層から最下層まで垂直に貫通して形成された高周波信号ビアと、前記最上層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの上端と接続された上部導体パッドと、前記最上層に線状に形成されて、先端が前記上部導体パッドと接続された上部高周波信号線路と、前記最上層に形成されて、接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された上部アンチパッド領域を挟んで、前記上部導体パッドおよび前記上部高周波信号線路の周囲に形成された上部グランドプレーンと、前記最下層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの下端と接続された下部導体パッドと、前記多層配線基板内に形成されて、前記上部グランドプレーンと前記各導体層とを接続するグランドビアと、前記接地電位に接続された厚肉の導体からなり、前記上部グランドプレーンの表面のうち前記上部アンチパッド領域と隣接して配置された上部導体ブロックとを備え、前記上部導体ブロックは、前記上部導体パッドを挟む両側位置であって、かつ、前記上部高周波信号線路の伸延方向と直交する直交方向の一方と他方の位置に配置されている。
【0014】
また、本発明にかかる高周波伝送線路の他の構成例は、導体層と絶縁層とが交互に積層された多層配線基板と、前記多層配線基板内を最上層から最下層まで垂直に貫通して形成された高周波信号ビアと、前記最上層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの上端と接続された上部導体パッドと、前記最下層に平面視略円形状に形成されて、前記高周波信号ビアの下端と接続された下部導体パッドと、前記最下層に線状に形成されて、先端が前記下部導体パッドと接続された下部高周波信号線路と、前記最下層に形成されて、接地電位に接続された導体層からなり、当該導体層が選択的に除去された下部アンチパッド領域を挟んで、前記下部導体パッドおよび前記下部高周波信号線路の周囲に形成された下部グランドプレーンと、前記多層配線基板内に形成されて、前記下部グランドプレーンと前記各導体層とを接続するグランドビアと、前記接地電位に接続された厚肉の導体からなり、前記下部グランドプレーンの表面のうち前記下部アンチパッド領域と隣接して配置された下部導体ブロックを備え、前記下部導体ブロックは、前記下部導体パッドを挟む両側位置であって、かつ、前記下部高周波信号線路の伸延方向と直交する直交方向の一方と他方の位置に配置されている。
【0015】
また、本発明にかかる上記高周波伝送線路の一構成例は、前記グランドビアが、前記高周波信号ビアを囲うように並べて形成された複数のグランドビアからなり、前記高周波信号ビアに対して擬似同軸線路構造を形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上部アンチパッド領域を挟んで上部導体パッドと接地電位との間に発生する電気容量成分のうち、上部高周波信号線路の伸延方向に沿って発生する伸延電気容量成分に比較して、当該伸延方向と直交する直交方向に沿って発生する直交電気容量成分が大きくなる。したがって、上部導体パッドにおける電界密度に異方性が発生して、伸延方向に比較して直交方向の電気力線が集中して電界密度が高くなる。これにより、不要放射が抑制されるため、不要放射の発生が抑制された状態で、伸延方向に伝搬する高周波信号と、垂直方向に伝搬する高周波信号との電磁界を効率よく結合することができ、屈曲部において少ない通過損失や反射損失で高周波信号を多層配線基板の最上層から最下層まで伝搬させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1〜
図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図2は、
図1のII−II断面図である。
図3は、
図1のIII−III断面図である。
図4は、
図2および
図3のIV−IV断面図である。
【0019】
本実施の形態にかかる高周波伝送線路10は、導体層11Mと絶縁層11Pとが交互に積層された多層配線基板11において、入力された高周波信号を、最上層(基板上面)から最下層(基板底面)まで垂直方向に伝搬させるための高周波伝送線路である。この高周波伝送線路10は、例えば、10GHz〜100GHz以下の高速電気信号が多層配線基板11内を伝搬する電子機器や電子部品などに好適である。
【0020】
図1〜
図4に示すように、高周波伝送線路10は、主に、多層配線基板11、高周波信号ビア12、上部導体パッド13A、上部高周波信号線路14A、上部グランドプレーン16A、下部導体パッド13B、下部高周波信号線路14B、下部グランドプレーン16B、グランドビア17、および上部導体ブロック18A,18Bから構成されている。
【0021】
高周波信号ビア12は、金属などの導体からなり、多層配線基板11内を最上層から最下層まで垂直に貫通して形成されたビアである。
上部導体パッド13Aは、金属などの導体からなり、最上層に平面視略円形状に形成されて、高周波信号ビア12の上端と接続された導体パッドである。
【0022】
上部高周波信号線路14Aは、金属などの導体からなり、最上層に線状に形成されて、先端が上部導体パッド13Aと接続された高周波信号用線路である。
上部グランドプレーン16Aは、最上層に形成されて、接地電位に接続された金属などの導体層からなり、当該導体層が上部導体パッド13Aを中心とする平面視略円環状に選択除去されてなる上部アンチパッド領域15Aを挟んで、上部導体パッド13Aおよび上部高周波信号線路14Aの周囲に形成された接地導体である。
【0023】
下部導体パッド13Bは、金属などの導体からなり、最下層に平面視略円形状に形成されて、高周波信号ビア12の下端と接続された導体パッドである。
下部高周波信号線路14Bは、金属などの導体からなり、最下層に線状に形成されて、先端が下部導体パッド13Bと接続された高周波信号線路である。
【0024】
下部グランドプレーン16Bは、最下層に形成されて、接地電位に接続された金属などの導体層からなり、当該導体層が下部導体パッド13Bを中心とする平面視略円環状に選択除去されてなる下部アンチパッド領域15Bを挟んで、下部導体パッド13Bおよび下部高周波信号線路14Bの周囲に形成された接地導体である。
グランドビア17は、金属などの導体からなり、多層配線基板11内に形成されて、上部グランドプレーン16Aおよび下部グランドプレーン16Bと、これらグランドプレーン16A,16B間に積層されている各導体層11Mとを接続するビアである。
【0025】
上部導体ブロック18A,18Bは、接地電位に接続された金属などの厚肉(略直方体)の導体からなり、上部グランドプレーン16Aの表面のうち上部アンチパッド領域15Aと隣接して配置されている。この上部導体ブロック18A,18Bは、上部アンチパッド領域15Aを挟んで上部導体パッド13Aと接地電位との間に発生する電気容量成分のうち、上部高周波信号線路14Aの伸延方向Xに沿って発生する伸延電気容量成分CXAに比較して、当該伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って発生する直交電気容量成分CA(上部導体ブロック18A側)および直交電気容量成分CB(上部導体ブロック18B側)を大きくするために、上部導体パッド13Aを挟む両側位置であって、かつ、直交方向Yの一方と他方の位置に配置されている。
【0026】
図2に示すように、基板平面に沿って伸延方向Xに形成された上部高周波信号線路14Aを、基板平面に垂直な垂直方向Zに形成された高周波信号ビア12と、上部導体パッド13Aで接続した高周波伝送線路では、高周波信号の伝搬方向が、伸延方向Xから垂直方向Zへ折り曲げられる。したがって、この高周波伝送線路の屈曲部において、高周波信号の不要な放射が発生し、通過損失や反射損失が増大する。
【0027】
本発明は、このような不要放射を、上部導体パッド13Aにおける電界密度の異方性により抑制でき、これにより、伸延方向Xに伝搬する高周波信号と、垂直方向Zに伝搬する高周波信号との電磁界を効率よく結合させることができることに着目したものである。
そして、このような電界密度の異方性を発生させる具体的方法として、上部導体パッド13Aを挟む両側位置であって、かつ、直交方向Yの一方と他方の位置に、上部導体ブロック18A,18Bを配置したものである。
【0028】
これにより、上部導体パッド13Aから上部グランドプレーン16Aへ延びる電気力線の密度が増加して、上部アンチパッド領域15Aを挟んで上部導体パッド13Aと接地電位である上部グランドプレーン16Aとの間に発生する電気容量成分のうち、上部高周波信号線路14Aの伸延方向Xに沿って発生する伸延電気容量成分CXAに比較して、当該伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って発生する直交電気容量成分CA,CBが大きくなる。したがって、上部導体パッド13Aにおける電界密度に異方性が発生して、伸延方向Xに比較して直交方向Yの電気力線が集中して電界密度が高くなる。
【0029】
図2において、電界強度分布20は、上部導体ブロック18A,18Bを配置した場合の上部導体パッド13Aにおける電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、電界強度分布21は、上部導体ブロック18A,18Bを配置していない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
このようにして、上部導体ブロック18A,18Bを配置したことにより、不要放射が抑制されるため、不要放射の発生が抑制された状態で、伸延方向Xに伝搬する高周波信号と、垂直方向Zに伝搬する高周波信号との電磁界を効率よく結合することができ、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0030】
また、本実施の形態では、上部導体パッド13Aにおける電界密度の異方性を与えるための上部導体ブロック18A,18Bとして、接地電位に接続された厚肉の導体、例えば略直方体をなす接地導体により実現したので、上部導体ブロック18A,18Bを、上部グランドプレーン16Aの表面に導体を形成するという、極めて簡素な工程で形成することができ、高周波伝送線路の低コスト化を実現することができる。
【0031】
この際、上部導体ブロック18A,18Bを肉厚とすることで、上部導体パッド13Aとの対向面積を増加させることができ、これにより直交電気容量成分CA,CBが増大して、より効果的に電界密度の異方性を与えることができる。
【0032】
また、上部導体ブロック18A,18Bを、上部導体パッド13Aと対向する一端部が、当該上部導体パッド13Aへ向けて上部グランドプレーン16Aから上部アンチパッド領域15Aの上方へ突出するよう配置するようにしてもよい。これにより、伸延方向Xに対向する上部導体パッド13Aと上部グランドプレーン16Aとの距離に比較して、上部導体パッド13Aと上部導体ブロック18A,18Bとの距離が短くなるため、直交電気容量成分CA,CBが増大して、より効果的に電界密度の異方性を与えることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、上部導体ブロック18A,18Bが、接地電位に接続された厚肉の導体、例えば略直方体をなす接地導体からなる場合を例として説明したが、形状、数量、配置パターンなどの構成に限定されるものではない。例えば、上部導体ブロック18A,18Bについて、略直方体ではなく他の形状を用いてもよく、それぞれ複数の導体ブロックから構成してもよく、これら複数の導体ブロックを上部導体パッド13Aを挟む両側位置であって、かつ、直交方向Yの一方と他方の位置に、直線状あるいは円弧状に並べて配置してもよい。
【0034】
また、上部導体パッド13Aを挟む両側位置であって、かつ、直交方向Yの一方と他方の位置において、上部グランドプレーン16Aの一端部の形状を変更することにより、上部導体ブロック18A,18Bを形成してもよい。例えば、上部グランドプレーン16Aの一端部に、上部導体パッド13A側に突出する突出部や、櫛形形状をなす櫛形部を形成することにより、上部導体パッド13Aにおける電界密度の異方性を与えることができる。
【0035】
また、上部グランドプレーン16Aに代えて、あるいは上部グランドプレーン16Aに加えて、上部導体パッド13Aの一端部の形状を、上記と同様にして変更するようにしてもよい。
さらには、上部グランドプレーン16Aや上部導体パッド13Aのうち、上部アンチパッド領域15Aを挟んで直交方向Yに対向する一端部ではなく、伸延方向Xに対向する一端部の形状を変化させることにより、伸延電気容量成分CXAを小さくするようにしてもよい。
【0036】
また、本実施の形態では、高周波信号ビア12を囲うように並べて複数のグランドビア17を形成し、高周波信号ビア12に対して擬似同軸線路構造を形成するようにしてもよい。これにより、擬似同軸線路構造における電界強度分布が、
図4に示すように、楕円等の歪みを生じることなく、基板平面において、高周波信号ビア12を中心とした円形状となり、高周波信号ビア12を伝搬する高周波信号の電界分布強度とほぼ等しくなる。これは、擬似同軸線路構造の基本モードのみを励振させ伝搬させること、すなわち基本モードと良好に結合していることを意味している。
【0037】
基本モードと良好に結合していない場合、
図4に示した擬似同軸線路構造における電界強度分布が、円形状ではなく、上部高周波信号線路14Aの伸延方向Xに対して中心が前後にぶれながら、高周波信号ビア12の垂直方向Zに蛇行するように伝搬することとなる。この際、電界が多層配線基板11内層のグランドプレーンに重なると、その重なった量に応じて、高周波信号のエネルギーが接地電位に吸収されてしまうため、安定した伝搬が得られない。
【0038】
一方、本実施の形態によれば、前述したように、擬似同軸線路構造の基本モードと良好に結合していることから、擬似同軸線路構造の線路長、すなわち上部導体パッド13Aや下部導体パッド13Bと接続される高周波信号ビア12の線路長にかかわらず、高周波信号を低損失かつ低反射で安定して伝搬させることができる。
【0039】
また、本実施の形態において、多層配線基板11の層数を増やすことにより、電源層や定速度信号層も同時に形成することができるため、高周波信号線路専用ではなく、多機能な多層配線基板を提供することも可能となる。
【0040】
次に、
図5を参照して、本実施の形態にかかる他の高周波伝送線路10について説明する。
図5は、第1の実施の形態にかかる他の高周波伝送線路の構成を示す底面図である。
前述した
図1−4では、上部グランドプレーン16Aの表面に上部導体ブロック18A,18Bを配置した場合を例として説明したが、
図5の例は、下部グランドプレーン16Bの表面にも上部導体ブロック18A,18Bと同様にして、下部導体ブロック18C,18Dを配置したものである。
【0041】
図5において、下部導体ブロック18C,18Dは、接地電位に接続された金属などの厚肉(略直方体)の導体からなり、下部グランドプレーン16Bの表面のうち下部アンチパッド領域15Bと隣接して配置されている。この下部導体ブロック18C,18Dは、下部アンチパッド領域15Bを挟んで下部導体パッド13Bと接地電位との間に発生する電気容量成分のうち、下部高周波信号線路14Bの伸延方向Xに沿って発生する伸延電気容量成分CXBに比較して、当該伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って発生する直交電気容量成分CC(下部導体ブロック18C側)および直交電気容量成分CD(下部導体ブロック18D側)を大きくするために、下部導体パッド13Bを挟む両側位置であって、かつ、直交方向Yの一方と他方の位置に、下部アンチパッド領域15B下方へ突出するよう配置されている。
【0042】
これにより、下部アンチパッド領域15Bを挟んで下部導体パッド13Bと接地電位との間に発生する電気容量成分のうち、下部高周波信号線路14Bの伸延方向Xに沿って発生する伸延電気容量成分CXBに比較して、当該伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って発生する直交電気容量成分CC,CDが大きくなる。このため、下部導体パッド13Bにおける電界密度に異方性が発生して、伸延方向Xに比較して直交方向Yの電気力線が集中して電界密度が高くなる。
【0043】
したがって、下部導体ブロック18C,18Dを配置したことにより、不要放射が抑制されるため、不要放射の発生が抑制された状態で、伸延方向Xに伝搬する高周波信号と、垂直方向Zに伝搬する高周波信号との電磁界を効率よく結合することができ、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0044】
[第2の実施例の形態]
次に、
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図6は、第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す断面図である。この
図6は、本実施の形態にかかる高周波伝送線路10のうち、
図2と同じ位置における断面、すなわち
図1のII−II断面図に相当している。
【0045】
図1−4の構成と比較して、
図6の構成は、最下層において、下部高周波信号線路14B、下部アンチパッド領域15B、下部グランドプレーン16Bを形成せずに、下部導体パッド13Bだけ残したものである。この際、最上層に関する構成は、
図1−4と同様である。
これにより、高周波信号ビア12の最下端まで伝搬してきた高周波信号を、最下層で垂直方向Zから基板平面方向に直角に折り曲げることなく、下部導体パッド13Bに対して電気的に接続したコネクタ(図示せず)から出力することができ、最下層の屈曲部における、高周波信号の通過損失や反射損失の発生を回避することができる。
【0046】
[第3の実施例の形態]
次に、
図7を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図7は、第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す断面図である。この
図7は、本実施の形態にかかる高周波伝送線路10のうち、
図2と同じ位置における断面、すなわち
図1のII−II断面図に相当している。
【0047】
図1−4の構成と比較して、
図7の構成は、最上層において、上部高周波信号線路14A、上部アンチパッド領域15A、上部グランドプレーン16Aを形成せずに、上部導体パッド13Aだけ残したものである。この際、最下層における構成は、
図5と同様である。
これにより、高周波信号ビア12の最上端から入力する高周波信号を、最上層で基板平面方向から垂直方向Zに直角に折り曲げることなく、上部導体パッド13Aに対して電気的に接続したコネクタ(図示せず)から入力することができ、最上層の屈曲部における、高周波信号の通過損失や反射損失の発生を回避することができる。
【0048】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。