(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図2A】第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図2B】
図2AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図2C】
図2AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図2D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図2E】
図2DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図2F】
図2DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図3A】第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図3C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図4A】第1の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図4B】第1の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図5A】第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図6A】第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図6B】
図6AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図6C】
図6AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図6D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図6E】
図6DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図6F】
図6DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【
図7A】第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図7C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図8A】第2の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図8B】第2の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図9A】第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図10A】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
【
図10B】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
【
図11A】第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図11D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図12A】第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図12C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図13A】第3の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図13B】第3の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図14A】第4の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図15A】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
【
図15B】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
【
図16A】第4の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図16D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図17A】第4の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図17C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図18A】第4の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図18B】第4の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図19A】第5の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図20A】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
【
図20B】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
【
図21A】第5の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図21D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図22A】第5の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図22C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図23A】第5の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図23B】第5の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである
【
図24A】第6の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図25A】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
【
図25B】高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
【
図26A】第6の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図26D】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【
図27A】第6の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図27C】直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
【
図28A】第6の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図28B】第6実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
【
図29A】従来の高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明にかかる各実施の形態においては、導体層やビアを銅箔、絶縁体を代表的なFR4を使用して図示しているが、決してこれに限ることはない。例えば、導体層やビアを金、絶縁体をセラミックやガラス、あるいは絶縁体の代替として半導体であるSiやSiGe、GaAs、InP等の材料にも適用可能であり、決してこれらに限るこがないことは言うまでもない。
【0018】
[第1の実施の形態]
まず、
図1A〜
図1Eを参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図1Aは、第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図1Bは、
図1AのI−I断面図である。
図1Cは、
図1Aの左側面図である。
図1Dは、
図1BのII−II断面図である。
図1Eは、
図1BのIII−III断面図である。
【0019】
本実施の形態にかかる高周波伝送線路10は、接地電位に接続された導体層である接地導体からなるグランドプレーン11Gと絶縁体あるいは半導体からなる絶縁層11Pとが交互に積層された多層配線基板11において、基板平面に沿って入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げて、最上層(基板上面)から最下層(基板底面)まで垂直方向に伝搬させるための高周波伝送線路である。この高周波伝送線路10は、例えば、10GHz〜100GHz以下の高速電気信号が多層配線基板11内を伝搬する電子機器や電子部品などに好適である。
【0020】
図1A〜
図1Eに示すように、高周波伝送線路10は、主に、多層配線基板11、高周波信号線路12、高周波信号ビア14、グランドビア15から構成されている。
【0021】
高周波信号線路12は、金属などの導体からなり、多層配線基板11の最上層に線状に形成されて、先端が高周波信号ビア14の上端と接続されたマイクロストリップ線路である。
高周波信号ビア14は、金属などの導体からなり、多層配線基板11のうち、接地導体からなるグランドプレーン11Gが平面視略円形状に選択的に除去されたアンチパッド領域16の略中央を、多層配線基板11の最上層から最下層まで垂直方向に貫通して形成されたビアである。
【0022】
グランドビア15は、金属などの導体からなり、多層配線基板11のうち、アンチパッド領域16の外側に高周波信号ビア14を囲うように略円周状に複数点在配置されて、各グランドプレーン11Gと接続するとともに、多層配線基板11の最上層から最下層まで垂直方向に貫通して形成されたビアである。
これら高周波信号ビア14、グランドビア15、グランドプレーン11Gにより、擬似同軸線路構造が構成されている。
【0023】
本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち、高周波信号線路12の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
【0024】
具体的には、
図1Aに示したように、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁が、高周波信号線路12の伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って、平面視略直線状に形成されている。
この拡張部13により、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0025】
図2Aは、第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図2Bは、
図2AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図2Cは、
図2AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図2Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図2Eは、
図2DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図2Fは、
図2DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0026】
図2Cと
図2Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン11Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図2Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図2Fの方が小さいことも分かる。
【0027】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図2Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0028】
図3Aは、第1の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図3Bは、
図3AのI−I断面図である。
図3Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図3Dは、
図3CのII−II断面図である。
図3Aおよび
図3Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図3Cおよび
図3Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0029】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図3Aおよび
図3Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0030】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図3Cおよび
図3Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0031】
図4Aは、第1の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図4Bは、第1の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図4A,4Bにおいて、特性L1は、
図3Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図3Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0032】
したがって、
図4A,
図4Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0033】
[第1の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
具体的には、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁を、高周波信号線路12の伸延方向Xと直交する直交方向Yに沿って、平面視略直線状に形成したものである。
【0034】
これにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22では電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0035】
[第2の実施の形態]
次に、
図5A〜
図5Eを参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図5Aは、第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図5Bは、
図5AのI−I断面図である。
図5Cは、
図5Aの左側面図である。
図5Dは、
図5BのII−II断面図である。
図5Eは、
図5BのIII−III断面図である。
【0036】
第1の実施の形態では、高周波信号線路12がマイクロストリップ線路からなる場合を例として説明した。本実施の形態では、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合について説明する。
【0037】
本実施の形態において、高周波信号線路12は、多層配線基板11の最上層に線状に形成された金属などの導体と、絶縁層11Pを介して最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gからなる底面グランドとを有する、特性インピーダンスZ0のグランデッドコプレーナ線路から構成されている。
また、多層配線基板11の最上層には、上部グランドプレーン17が形成されている。この上部グランドプレーン17は、接地電位に接続された金属などの導体層からなり、当該導体層が高周波信号ビア14を中心として平面視略円環状に選択除去されてなる上部アンチパッド領域16を挟んで、高周波信号ビア14および高周波信号線路12の周囲に形成された接地導体である。
【0038】
本実施の形態にかかるその他の構造については、第1の実施の形態と同様であり、本実施の形態においても、最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
この拡張部13により、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0039】
図6Aは、第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図6Bは、
図6AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図6Cは、
図6AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図6Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図6Eは、
図6DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図6Fは、
図6DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0040】
図6Cと
図6Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン11Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図6Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図6Fの方が小さいことも分かる。
【0041】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図6Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0042】
図7Aは、第2の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図7Bは、
図7AのI−I断面図である。
図7Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図7Dは、
図7CのII−II断面図である。
図7Aおよび
図7Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図7Cおよび
図7Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0043】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図7Aおよび
図7Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0044】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図7Cおよび
図7Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0045】
図8Aは、第2の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図8Bは、第2の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図8A,
図8Bにおいて、特性L1は、
図7Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図7Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0046】
したがって、
図8A,
図8Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0047】
[第2の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
【0048】
これにより、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合であっても、入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22の電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0049】
[第3の実施の形態]
次に、
図9A〜
図9Eを参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路10について説明する。
図9Aは、第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図9Bは、
図9AのI−I断面図である。
図9Cは、
図9Aの左側面図である。
図9Dは、
図9BのII−II断面図である。
図9Eは、
図9BのIII−III断面図である。
【0050】
本実施の形態では、第1の実施の形態において、多層配線基板11の最上層に接する絶縁層11Pの厚さが、多層配線基板11の内層に位置する絶縁層11Pより小さい場合について説明する。
すなわち、
図9Bに示すように、本実施の形態において、多層配線基板11の最上層の直下に位置する直下絶縁層11Pの厚さH1が、多層配線基板11の内層に位置する内層絶縁層11Pの厚さH2より小さくなるよう形成されている。
【0051】
一般的には、高周波信号線路12とグランドプレーン11Gとの間で形成される電気容量Cは、直下絶縁層11Pの厚さが薄くなるほど上昇する傾向がある。したがって、高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現されるため、電気容量Cの上昇によって特性インピーダンスが低下してしまうことになる。この一連の現象を避けるため、本実施の形態では高周波信号線路12の線幅を狭くすることで、電気容量Cの上昇を抑制させ、高周波信号線路12の特性インピーダンスを擬似同軸線路構造の特性インピーダンスZ0に整合させている。
【0052】
図10Aは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
図10Bは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
両者を比較して明らかなように、本実施の形態のように絶縁層が薄い場合には電界分布の広がりが狭く、電界密度が比較的高くなる。よって、高周波信号線路12の直下に位置する直下グランドプレーン11Gの面積を小さく形成することが可能であることが容易にわかる。
【0053】
この際、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域では、高周波信号線路12とグランドプレーン11Gとの間の距離が離れて、電気容量Cが小さくなる。このため、特性インピーダンスが許容範囲を超えて上昇する場合がある。
本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち、高周波信号線路12の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
【0054】
また、拡張部13に与える形状として、
図9Aに示したように、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号線路12の伸延方向Xに向けて凸となる凸形状、具体的には放物線状に形成したものである。
この拡張部13により、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0055】
図11Aは、第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図11Bは、
図11AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図11Cは、
図11AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図11Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図11Eは、
図11DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図11Fは、
図11DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0056】
図11Cと
図11Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン11Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図11Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図11Fの方が小さいことも分かる。
【0057】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図11Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0058】
図12Aは、第3の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図12Bは、
図12AのI−I断面図である。
図12Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図12Dは、
図12CのII−II断面図である。
図12Aおよび
図12Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図12Cおよび
図12Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0059】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図12Aおよび
図12Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0060】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図12Cおよび
図12Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0061】
図13Aは、第3の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図13Bは、第3の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図4A,4Bにおいて、特性L1は、
図12Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図12Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0062】
したがって、
図13A,
図13Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0063】
[第3の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
具体的には、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁を、高周波信号ビア14に向けて凸となる凸形状に形成したものである。
【0064】
これにより、多層配線基板11の最上層に接する絶縁層11Pの厚さが、多層配線基板11の内層に位置する絶縁層11Pより小さい場合であっても、入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22の電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0066】
本実施の形態では、第3の実施の形態において、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合について説明する。
本実施の形態において、高周波信号線路12は、第2の実施の形態と同様、多層配線基板11の最上層に線状に形成された金属などの導体と、絶縁層11Pを介して最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gからなる底面グランドとを有する、特性インピーダンスZ0のグランデッドコプレーナ線路から構成されている。
【0067】
本実施の形態にかかるその他の構造については、第3の実施の形態と同様であり、本実施の形態においても、
図14Bに示すように、多層配線基板11の最上層の直下に位置する直下絶縁層11Pの厚さH1が、多層配線基板11の内層に位置する内層絶縁層11Pの厚さH2より小さくなるよう形成されている。
【0068】
一般的には、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間で形成される電気容量Cは、直下絶縁層11Pの厚さが薄くなるほど上昇する傾向がある。したがって、高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現されるため、電気容量Cの上昇によって特性インピーダンスが低下してしまうことになる。この一連の現象を避けるため、本実施の形態では高周波信号線路の線幅を狭くすることで、電気容量Cの上昇を抑制させ、高周波信号線路12の特性インピーダンスを擬似同軸線路構造の特性インピーダンスZ0に整合させている。
【0069】
図15Aは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
図15Bは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
両者を比較して明らかなように、本実施の形態のように絶縁層が薄い場合には電界分布の広がりが狭く、電界密度が比較的高くなる。よって、高周波信号線路12の直下に位置する直下グランドプレーン11Gの面積を小さく形成することが可能であることが容易にわかる。
【0070】
この際、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域では、高周波信号線路12とグランドプレーン11Gとの間の距離が離れて、電気容量Cが小さくなる。このため、特性インピーダンスが許容範囲を超えて上昇する場合がある。
本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち、高周波信号線路12の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
【0071】
また、拡張部13に与える形状として、
図14Aに示したように、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁を、高周波信号線路12の伸延方向Xに向けて凸となる放物線状に形成したものである。
この拡張部13により、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0072】
図16Aは、第4の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図16Bは、
図16AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図16Cは、
図16AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図16Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図16Eは、
図16DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図16Fは、
図16DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0073】
図16Cと
図16Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン16Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図16Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図16Fの方が小さいことも分かる。
【0074】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図16Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0075】
図17Aは、第4の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図17Bは、
図17AのI−I断面図である。
図17Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図17Dは、
図17CのII−II断面図である。
図17Aおよび
図17Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図17Cおよび
図17Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0076】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図17Aおよび
図17Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0077】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図17Cおよび
図17Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0078】
図18Aは、第4の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図18Bは、第4の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図18A,
図18Bにおいて、特性L1は、
図17Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図17Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0079】
したがって、
図18A,
図18Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0080】
[第4の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
具体的には、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁を、高周波信号線路12の伸延方向Xに向けて凸となる放物線状に形成したものである。
【0081】
これにより、第3の実施の形態において、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合であっても、入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22の電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0083】
本実施の形態では、第3の実施の形態において、直下グランドプレーン11Gに形成した拡張部13の具体的形状として、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号ビア14と距離をおいて離間する凹部13Aを形成した場合について説明する。
本実施の形態にかかるその他の構造については、第3の実施の形態と同様であり、本実施の形態においても、
図19Bに示すように、多層配線基板11の最上層の直下に位置する直下絶縁層11Pの厚さH1が、多層配線基板11の内層に位置する内層絶縁層11Pの厚さH2より小さくなるよう形成されている。
【0084】
一般的には、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間で形成される電気容量Cは、直下絶縁層11Pの厚さが薄くなるほど上昇する傾向がある。したがって、高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現されるため、電気容量Cの上昇によって特性インピーダンスが低下してしまうことになる。この一連の現象を避けるため、本実施の形態では高周波信号線路の線幅を狭くすることで、電気容量Cの上昇を抑制させ、高周波信号線路12の特性インピーダンスを擬似同軸線路構造の特性インピーダンスZ0に整合させている。
【0085】
図20Aは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
図20Bは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
両者を比較して明らかなように、本実施の形態のように絶縁層が薄い場合には電界分布の広がりが狭く、電界密度が比較的高くなる。よって、高周波信号線路12の直下に位置する直下グランドプレーン11Gの面積を小さく形成することが可能であることが容易にわかる。
【0086】
この際、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域では、高周波信号線路12とグランドプレーン11Gとの間の距離が離れて、電気容量Cが小さくなる。このため、特性インピーダンスが許容範囲を超えて上昇する場合がある。
本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち、高周波信号線路12の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
【0087】
また、
図19Aに示すように、直下グランドプレーン11Gに形成した拡張部13の具体的形状として、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号ビア14と距離をおいて離間する凹部13Aを形成したものである。
この凹部13Aにより、アンチパッド領域16のうち直交方向Yに高周波信号ビア14を挟んで位置する領域まで、拡張部13の端縁を拡張することができ、効率よく拡張部13の面積を増大させることができる。これにより、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0088】
なお、本実施の形態では、拡張部13の端縁が、高周波信号線路12の伸延方向Xにおける先端位置まで、拡張されている場合を例として説明するが、これに限定されるものではない。実際には、伸延方向Xにおいて、拡張部13の端縁が、高周波信号ビア14との間に電気的特性を維持するための一定の距離だけ離間した位置から、上記先端位置よりもさらに伸延方向Xに突出しない範囲内であれば、いずれの位置の拡張部13の端縁があってもよく、端縁の形状が直線形状のほか、放物線形状など、他の形状であってもよい。
【0089】
図21Aは、第5の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図21Bは、
図21AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図21Cは、
図21AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図21Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図21Eは、
図21DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図21Fは、
図21DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0090】
図21Cと
図21Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン16Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図21Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図21Fの方が小さいことも分かる。
【0091】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図21Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0092】
図22Aは、第5の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図22Bは、
図22AのI−I断面図である。
図22Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図22Dは、
図22CのII−II断面図である。
図22Aおよび
図22Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図22Cおよび
図22Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0093】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図22Aおよび
図22Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0094】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図22Cおよび
図22Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0095】
図23Aは、第5の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図23Bは、第5の実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図23A,
図23Bにおいて、特性L1は、
図22Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図22Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0096】
したがって、
図23A,
図23Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0097】
[第5の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
具体的には、拡張部13の具体的形状として、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号ビア14と距離をおいて離間する凹部13Aを形成したものである。
【0098】
これにより、第1の実施の形態において、多層配線基板11の最上層に接する絶縁層11Pの厚さが、多層配線基板11の内層に位置する絶縁層11Pより小さい場合であっても、入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22の電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0100】
本実施の形態では、第5の実施の形態において、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合について説明する。
本実施の形態において、高周波信号線路12は、第2の実施の形態と同様、多層配線基板11の最上層に線状に形成された金属などの導体と、絶縁層11Pを介して最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gからなる底面グランドとを有する、特性インピーダンスZ0のグランデッドコプレーナ線路から構成されている。
【0101】
本実施の形態にかかるその他の構造については、第5の実施の形態と同様であり、本実施の形態においても、
図24Bに示すように、多層配線基板11の最上層の直下に位置する直下絶縁層11Pの厚さH1が、多層配線基板11の内層に位置する内層絶縁層11Pの厚さH2より小さくなるよう形成されている。
【0102】
一般的には、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間で形成される電気容量Cは、直下絶縁層11Pの厚さが薄くなるほど上昇する傾向がある。したがって、高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現されるため、電気容量Cの上昇によって特性インピーダンスが低下してしまうことになる。この一連の現象を避けるため、本実施の形態では高周波信号線路の線幅を狭くすることで、電気容量Cの上昇を抑制させ、高周波信号線路12の特性インピーダンスを擬似同軸線路構造の特性インピーダンスZ0に整合させている。
【0103】
図25Aは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が薄い場合)を示す説明図である。
図25Bは、高周波信号線路とグランドプレーンとの間で形成される電気力線分布(絶縁層が厚い場合)を示す説明図である。
両者を比較して明らかなように、本実施の形態のように絶縁層が薄い場合には電界分布の広がりが狭く、電界密度が比較的高くなる。よって、高周波信号線路12の直下に位置する直下グランドプレーン11Gの面積を小さく形成することが可能であることが容易にわかる。
【0104】
この際、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域では、高周波信号線路12とグランドプレーン11Gとの間の距離が離れて、電気容量Cが小さくなる。このため、特性インピーダンスが許容範囲を超えて上昇する場合がある。
本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち、高周波信号線路12の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を形成したものである。
【0105】
また、
図24Aに示すように、直下グランドプレーン11Gに形成した拡張部13の具体的形状として、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号ビア14と距離をおいて離間する凹部13Aを形成したものである。
この凹部13Aにより、アンチパッド領域16のうち直交方向Yに高周波信号ビア14を挟んで位置する領域まで、拡張部13の端縁を拡張することができ、効率よく拡張部13の面積を増大させることができる。これにより、アンチパッド領域16のうち高周波信号線路12が高周波信号ビア14に接続されるまでの接続領域において、高周波信号線路12と接地電位との間の電気容量を高くさせ、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間での電界密度を上昇させている。
【0106】
なお、本実施の形態では、拡張部13の端縁が、高周波信号線路12の伸延方向Xにおける先端位置まで、拡張されている場合を例として説明するが、これに限定されるものではない。実際には、伸延方向Xにおいて、拡張部13の端縁が、高周波信号ビア14との間に電気的特性を維持するための一定の距離だけ離間した位置から、上記先端位置よりもさらに伸延方向Xに突出しない範囲内であれば、いずれの位置の拡張部13の端縁があってもよく、端縁の形状が直線形状のほか、放物線形状など、他の形状であってもよい。
【0107】
図26Aは、第6の実施の形態にかかる高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図26Bは、
図26AのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図26Cは、
図26AのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図26Dは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の構成を示す上面図である。
図26Eは、
図26DのI−I断面図における電界強度分布を示す説明図である。
図26Fは、
図26DのII−II断面図における電界強度分布を示す説明図である。
【0108】
図26Cと
図26Fとを比較して明らかなように、直下グランドプレーン16Gの拡張部13の有無によって電界強度分布の広がりが大きく異なり、
図26Fの電界強度分布の方が広く、電界密度が低いことが分かる。
よって、高周波信号線路12と直下グランドプレーン11Gとの間における電気容量の大小も
図26Fの方が小さいことも分かる。
【0109】
高周波信号線路の特性インピーダンスZは、Z=√(L/C)として一般的に表現される。ここで、Lは高周波信号線路のインダクタンス、Cは電気容量である。今、電気容量について注目すると、
図26Fの電気容量が小さいことから、高周波伝送線路の特性インピーダンスが上昇することが分かる。
本実施の形態では、高周波信号線路12と擬似同軸線路構造とのそれぞれの特性インピーダンスはZ0で等しくなっていることから、互いの接続部の近傍においても特性インピーダンスをZ0にすることが望ましいことは言うまでもない。これは、接続部における電界強度分布の安定性の有無として現れる。
【0110】
図27Aは、第6の実施の形態にかかる高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図27Bは、
図27AのI−I断面図である。
図27Cは、直下グランドプレーンに拡張部を持たない高周波伝送線路の電界強度分布を示す上面図である。
図27Dは、
図27CのII−II断面図である。
図27Aおよび
図27Bにおける電界強度分布31は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けた場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示しており、
図27Cおよび
図27Dにおける電界強度分布32は、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合の電界強度分布(シミュレーション結果)を示している。
【0111】
本実施の形態は、拡張部13を設けたことにより、高周波信号線路12に入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ内側領域21と折り曲げ外側領域22とでは電気容量が異なり、折り曲げ内側領域21の電気容量の方が大きくなるという特徴を備えている。これにより、高周波信号線路12で生じる電界強度分布と同様に、折り曲げ内側領域21で電界強度分布の閉じ込めが比較的強くなる。
よって、
図27Aおよび
図27Bの電界強度分布31に示されているように、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、高周波信号線路12から高周波信号ビア14に向かう高周波信号の反射や放射が比較的低くなり、安定した伝搬特性が得られる。
【0112】
一方、直下グランドプレーン11Gに拡張部13を設けていない場合、高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続部の近傍では特性インピーダンスの上昇が生じており、さらに基板平面方向から垂直方向への屈曲構造を備えている。このため、
図27Cおよび
図27Dの電界強度分布32に示されているように、高周波信号は高周波信号ビア14方向に伝搬し難くなり、屈曲部において大きな放射や反射が生じる。
【0113】
図28Aは、第6の実施の形態で得られる反射損失の周波数特性を示すグラフである。
図28Bは、第6実施の形態で得られる通過損失の周波数特性を示すグラフである。
図28A,
図28Bにおいて、特性L1は、
図27Cに示した拡張部を持たない高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示し、特性L2は、
図27Aに示した拡張部を持つ本実施の形態にかかる高周波伝送線路構造による3次元電磁界シミュレーション結果を示している。
【0114】
したがって、
図28A,
図28Bから明らかなように、信号周波数10GHz以上において、反射損失および通過損失のいずれにおいても損失が改善されており、基板平面方向から垂直方向への屈曲部において、少なくとも信号周波数が10GHz〜60GHzの範囲の高周波信号を少ない通過損失および反射損失で伝搬できていることが分かる。
【0115】
[第6の実施形態の効果]
このように、本実施の形態は、多層配線基板11を構成するグランドプレーン11Gのうち最上層の直下に形成された直下グランドプレーン11Gに、アンチパッド領域16のうち高周波信号ビア14と接触しない範囲で、高周波信号線路12がアンチパッド領域16の外周縁と平面視において交差する交点Pから高周波信号ビア14に向けて、直下グランドプレーン11Gの端部が拡張された拡張部13を設けたものである。
具体的には、拡張部13の具体的形状として、拡張部13のうちアンチパッド領域16との境界となる端縁に、高周波信号ビア14と距離をおいて離間する凹部13Aを形成したものである。
【0116】
これにより、第5の実施の形態において、高周波信号線路12がグランデッドコプレーナ線路からなる場合であっても、入力された高周波信号を、基板平面方向から垂直方向に折り曲げる際、折り曲げ外側領域22の電気容量が低減されて電界密度分布が低くなり、折り曲げ内側領域21では電気容量が高くなって電界密度分布が上昇する。したがって、高周波信号が折り曲がる高周波信号線路12と高周波信号ビア14との接続点において、より効果的に、高周波信号の反射や空間中への放射を抑制することができ、10GHz以上の高周波信号を、少ない通過損失および反射損失で伝搬させることが可能となる。
【0117】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。