【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シクロデキストリンと、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に貫通して包接されたポリエチレングリコールと、該ポリエチレングリコールの両末端に配置され、シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンのシクロデキストリンに由来する水酸基の全部または一部を親水性の修飾基で修飾して得られる親水性修飾ポリロタキサン溶液を調製する親水性修飾工程と、調製した親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧し、加熱した気流中で乾燥する乾燥工程とを有する粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、減圧乾燥などの乾燥方法によっては、得られる親水性修飾ポリロタキサンが塊状となるだけでなく、得られた親水性修飾ポリロタキサンの保存安定性が必ずしも満足のいくものではないことを見出した。例えば、40〜100℃未満の温度で減圧乾燥する方法、水の沸点まで加熱し常圧乾燥する方法などにより得た親水性修飾ポリロタキサンは、極めて保存安定性が悪く、保存温度が30〜40℃まで上がると、分解が生じやすく水酸基の全部または一部が親水性の修飾基で修飾されたシクロデキストリン(以下、修飾シクロデキストリンともいう)が遊離することがわかった。親水性修飾ポリロタキサンの分解による修飾シクロデキストリンの遊離は、結果として得られる架橋ポリロタキサンの特性を減衰させ、各種用途への適応範囲に制限が生じる。
本発明者らは、鋭意検討した結果、親水性修飾ポリロタキサン溶液を乾燥させる方法として、親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧し、加熱した気流中で乾燥する方法を用いれば、保存安定性に優れた粉末状親水性修飾ポリロタキサンを工業的に優位な方法で得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法は、シクロデキストリンと、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に貫通して包接されたポリエチレングリコールと、該ポリエチレングリコールの両末端に配置され、シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンのシクロデキストリンに由来する水酸基の全部または一部を親水性の修飾基で修飾して得られる親水性修飾ポリロタキサン溶液を調製する親水性修飾工程を有する。前記親水性修飾工程により、ポリロタキサンを水や水系溶剤に可溶な親水性修飾ポリロタキサンとすることが出来る。
【0009】
前記ポリロタキサンは、通常、両末端に反応性基を有するポリエチレングリコールとシクロデキストリンとを水性媒体中で混合し、複数のシクロデキストリン分子の開口部に前記ポリエチレングリコールが串刺し状に包接された擬ポリロタキサン粒子を含有する擬ポリロタキサン水性分散体を得る包接工程と、前記擬ポリロタキサン水性分散体を乾燥して固体状の擬ポリロタキサンを得る擬ポリロタキサン水性分散体の乾燥工程と、得られた固体状の擬ポリロタキサンにおいて、前記反応性基と反応する基を有する封鎖基を有する化合物と前記擬ポリロタキサンとを反応させて、シクロデキストリンに包接されたポリエチレングリコールの両末端に封鎖基を導入する封鎖工程とを行うことにより、得ることができる。
【0010】
前記ポリエチレングリコール(以下、PEGともいう)の重量平均分子量は1000〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、1万〜10万であることがさらに好ましい。前記PEGの重量平均分子量が1000未満であると、得られる親水性修飾ポリロタキサンを架橋して得られる架橋ポリロタキサンが特性の低いものとなることがある。前記PEGの重量平均分子量が50万を超えると、親水性修飾工程において、ポリロタキサンを溶媒に溶解して得られる溶液の粘度が高くなりすぎ、均一に反応させることができない場合がある。
なお、本明細書において、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリエチレングリコール換算により求められる値である。GPCによってポリエチレングリコール換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、TSKgel SuperAWM−H(東ソー社製)等が挙げられる。
【0011】
前記PEGの両末端は、従来公知の方法により反応性基を導入することが出来る。
前記反応性基は、採用する封鎖基の種類により適宜変更することができ、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられ、とりわけ、カルボキシル基であることが好ましい。前記PEGの両末端にカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)と次亜塩素酸ナトリウムとを用いてPEGの両末端を酸化させる方法等が挙げられる。
【0012】
前記包接工程において、PEGとシクロデキストリンとの重量比は1:2〜1:5であることが好ましく、1:2.5〜1:4.5であることがより好ましく、1:3〜1:4であることがさらに好ましい。シクロデキストリンの重量がPEGの重量の2倍未満であると、PEGを包接するシクロデキストリンの個数(包接量)が低下する場合がある。シクロデキストリンの重量がPEGの重量の5倍を超えても、包接量は増加せず経済的でない。
【0013】
前記シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。とりわけ、包接性の観点より、α−シクロデキストリンが好ましい。これらのシクロデキストリンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
前記水性媒体としては、例えば、水、水とDMF、DMSOなどの水性有機溶媒との水性混合物などが挙げられ、とりわけ水が好ましく用いられる。
【0015】
前記包接工程におけるPEGとシクロデキストリンとの混合条件としては、両者を前記水性媒体中に添加して混合すればよいが、PEGとシクロデキストリンとを水性媒体に溶解させることが好ましい。具体的には、通常50〜100℃、好ましくは60〜90℃、より好ましくは70〜80℃に加熱、溶解することによりほぼ透明な混合溶液を得ることが出来る。
【0016】
得られたPEGとシクロデキストリンとの混合溶液を冷却することにより、PEGとシクロデキストリンからなる擬ポリロタキサン粒子が析出し、概ね白色状の擬ポリロタキサン水性分散体が得られる。
【0017】
前記混合溶液を冷却する際、冷却後の到達温度は、0〜30℃であることが好ましく、1〜20℃であることがより好ましく、1〜15℃であることがさらに好ましい。0℃未満まで冷却した場合、凍結などにより得られる擬ポリロタキサン水性分散体の流動性が低下することがある。30℃を超える場合、擬ポリロタキサン粒子が充分に析出しないことがある。
【0018】
前記混合溶液を冷却し、所望の温度に到達した後、得られた擬ポリロタキサン水性分散体の流動状態を保持する時間は、通常数秒〜1週間、好ましくは数時間〜3日である。
【0019】
擬ポリロタキサン水性分散体に占める擬ポリロタキサンの濃度(以下、擬ポリロタキサン水性分散体の固形分濃度ともいう)は、5〜25重量%であることが好ましく、5〜20重量%がより好ましく、10〜20重量%がさらに好ましい。前記擬ポリロタキサン水性分散体の固形分濃度が5重量%未満であると、経済的でない。前記擬ポリロタキサン水性分散体の固形分濃度が25重量%を超えると、擬ポリロタキサン水性分散体の流動性が低下するため、乾燥することが難しくなる場合がある。
【0020】
前記擬ポリロタキサン水性分散体の乾燥工程における乾燥温度は、70〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましく、70〜170℃であることがさらに好ましい。前記擬ポリロタキサン水性分散体の乾燥工程における乾燥温度が70℃未満であると、乾燥が不充分となる場合がある。前記擬ポリロタキサン水性分散体の乾燥工程における乾燥温度が200℃を超えると、擬ポリロタキサンが分解し、後述する包接率が低下するおそれがある。
【0021】
前記封鎖工程としては、従来公知の方法を用いることが出来、とりわけ反応性と化学結合の安定性という観点より、PEGの両末端をカルボキシル基とした擬ポリロタキサンに、封鎖剤としてアダマンタンアミンまたはその塩を反応させ封鎖する方法が好ましい。
【0022】
前記親水性修飾工程において、ポリロタキサンのシクロデキストリンに由来する水酸基を親水性の修飾基で修飾する方法としては、従来公知の方法を用いることが出来る。
【0023】
前記親水性の修飾基は特に限定されないが、具体的には例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、第1〜第3アミノ基、第四級アンモニウム塩基、ヒドロキシルアルキル基などを挙げることができ、架橋ポリロタキサンを合成する際の反応の多様性の観点から、プロピレンオキシドなどとの反応により、ヒドロキシルアルキル基とすることが好ましい。
【0024】
前記親水性修飾工程において、ポリロタキサンのシクロデキストリンに由来する水酸基を親水性の修飾基で修飾するには、反応を円滑に行うためポリロタキサンをDMSO、アルカリ水溶液などの溶媒に溶解し、前記親水性の修飾基を有する化合物と反応させる。前記親水性修飾工程において用いる溶媒としては、なかでも、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0025】
例えば、プロピレンオキシドを付加させ、親水性修飾ポリロタキサンを合成する場合、水酸化ナトリウム水溶液中にポリロタキサンを溶解し、プロピレンオキシドを添加して室温〜50℃の温度で、数時間〜1日攪拌、反応させることにより、プロピレンオキシドを付加した親水性修飾ポリロタキサンのほぼ透明な水溶液を得ることが出来る。
【0026】
前記親水性修飾ポリロタキサン溶液に占める親水性修飾ポリロタキサンの濃度(以下、親水性修飾ポリロタキサン溶液の固形分濃度ともいう)は、5〜25重量%であることが好ましく、5〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。前記親水性修飾ポリロタキサン溶液の固形分濃度が5重量%未満であると、経済的でない。前記親水性修飾ポリロタキサン溶液の固形分濃度が25重量%を超えると、親水性修飾ポリロタキサン溶液の粘度が上昇するため、乾燥工程で噴霧することが難しくなる場合がある。
【0027】
本発明者らは、親水性修飾ポリロタキサン溶液に金属キレート剤および/または酸化防止剤を添加した後、噴霧し、加熱した気流中で乾燥することにより、乾燥工程での親水性修飾ポリロタキサンの分解、または乾燥により得られた親水性修飾ポリロタキサンの保存時の経時的分解をさらに効果的に抑制できることを見出している。
具体的には、前記金属キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸、イミノジ酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸またはその塩などのアミノポリカルボン酸系金属キレート剤が好ましく、前記酸化防止剤としては、ロズマリン酸(ローズマリー抽出物)、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニンなどのポリフェノール類が好ましい。
【0028】
前記金属キレート剤の添加量は、親水性修飾ポリロタキサンに対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.005〜2重量%であることがより好ましく、0.01〜1重量%であることがさらに好ましい。また、前記酸化防止剤の添加量は、親水性修飾ポリロタキサンに対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.005〜2重量%であることがより好ましく、0.01〜1重量%であることがさらに好ましい。前記金属キレート剤または前記酸化防止剤の添加量が0.001重量%未満であると、保存安定性の向上に効果が見られない場合がある。金属キレート剤または酸化防止剤の添加量が5重量%を超えても、それ以上の効果が得られず経済的でない。
【0029】
得られた親水性修飾ポリロタキサン溶液を透析、再沈殿など従来公知の精製法にて、精製した後、乾燥させることにより固体状の親水性修飾ポリロタキサンを得ることが出来る。
【0030】
本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法は、調製した親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧し、加熱した気流中で乾燥する乾燥工程を有する。
従来の製造方法で作製した親水性修飾ポリロタキサンを保存する際に、経時的に分解が進行する機構は、加熱などにより発生した僅かなオキシラジカルが連鎖することによると推定される。本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法によれば、乾燥工程において親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧して微細な液滴とし、加熱した気流中で瞬時に乾燥させることにより、乾燥時の過度な品温上昇がなく、熱への暴露時間も短いため、乾燥過程でのラジカル発生が抑制され、保存安定性が大きく向上すると考えられる。
さらに、棚段式真空乾燥機などによる乾燥では、得られた親水性修飾ポリロタキサンが乾燥機内のトレイに固着し、極めて取り出しが困難であるばかりでなく、塊状物となる。そのため、水や水性溶剤にママコを生じず、効率よく溶解させるためには、粉砕により粉末状にし、分級などにより適切な粒子径に調整する必要があるなど、工程が煩雑となる問題があったが、本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法によれば、乾燥工程において粉末状の親水性修飾ポリロタキサンが直接得られるため、工程が煩雑とならない。
【0031】
前記乾燥工程において、親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧する方法としては、例えば、圧力ノズル、二流体ノズル、四流体ノズル、超音波ノズルなどを用いるノズル法や、回転ディスク法などが挙げられる。
【0032】
前記ノズル法は、親水性修飾ポリロタキサン溶液の粘度が低い場合に好適に用いることができる。
前記ノズル法に用いられる噴霧乾燥装置としては、例えば、ノズルアトマイザー式噴霧乾燥装置などが挙げられる。前記ノズルアトマイザー式噴霧乾燥装置では、熱風の吹き出し方向に対向して親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧する並向流式、熱風の吹出し方向と同一方向に親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧する並流式に大別され、並向流式では噴霧した親水性修飾ポリロタキサン溶液の滞留時間を長く、並流式では噴霧した親水性修飾ポリロタキサン溶液の滞留時間を短くすることが出来る。ノズルアトマイザー式噴霧乾燥装置では、ノズル径を変化させるなどにより、噴霧する液滴径を調整し、得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの粒子径を任意に調整することが出来る。
【0033】
前記回転ディスク法は、親水性修飾ポリロタキサン溶液の粘度が高い場合に好適に用いることができる。
前記回転ディスク法に用いられる噴霧乾燥装置としては、例えば、ロータリーアトマイザー式噴霧乾燥装置が挙げられる。前記ロータリーアトマイザー式噴霧乾燥装置では、ディスクの回転数を変化させることにより、噴霧する液滴径を調整し、得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの粒子径を任意に調整することが出来る。
【0034】
前記乾燥工程において、気流には空気、または窒素などのガスを使用することが出来る。
また、前記乾燥工程は、前記噴霧乾燥装置の入口温度を70〜200℃、出口温度を55〜105℃となるようにして行われることが好ましい。
前記噴霧乾燥装置の入口温度が70℃未満であると、乾燥が不充分となる場合がある。前記噴霧乾燥装置の入口温度が200℃を超えると、乾燥の過程で親水性修飾ポリロタキサンが分解し、包接率が低下する場合があり、分解せずに粉末状親水性修飾ポリロタキサンが得られたとしても、保存中に経時的に分解し、修飾シクロデキストリンが遊離するおそれがある。前記噴霧乾燥装置における入口温度は70〜180℃であることがより好ましく、70〜170℃であることがさらに好ましい。
前記噴霧乾燥装置の出口温度が55℃未満であると、乾燥が不充分となる場合がある。前記噴霧乾燥装置の出口温度が105℃を超えると、親水性修飾ポリロタキサンが分解し、包接率が低下する場合があり、分解せずに粉末状親水性修飾ポリロタキサンが得られたとしても、保存中に経時的に分解し、修飾シクロデキストリンが遊離するおそれがある。前記噴霧乾燥装置における出口温度は60〜100℃であることがより好ましく、70〜100℃であることがさらに好ましい。
【0035】
前記乾燥工程において、噴霧乾燥装置の入口より、少なくとも2種の温度の異なる熱風を吹き込み、入口温度を制御することもできる。例えば、2種の温度の異なる熱風を吹き込む場合、噴霧乾燥装置の入口温度は、2種の温度の異なる熱風の流量比率を変化させることにより、制御することができる。
入口温度は、以下の計算式により便宜上算出することができる。
入口温度=(高温側熱風温度×(高温側熱風の流量/総熱風流量))+(低温側熱風温度×(低温側熱風の流量/総熱風流量))
【0036】
前記乾燥工程において、親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧する際、第1の高温側熱風中に噴霧され、概ね乾燥された親水性修飾ポリロタキサン粒子が、引き続き第2の低温側熱風に接触し乾燥されることが好ましい。
本発明における乾燥工程において、噴霧乾燥装置の入口より、少なくとも2種の温度の異なる熱風を吹き込む場合の一例を
図1に示す。
図1(a)は、噴霧乾燥装置の入口上面の模式図であり、
図1(b)は噴霧乾燥装置の入口側面の模式図である。
図1に示すように、噴霧乾燥装置の入口部10は円柱状であり、円柱上部の円の中心に噴霧ノズル1を有する。親水性修飾ポリロタキサン溶液6は噴霧ノズル1により円錐状に噴霧される。このとき、高温側熱風を入口円柱部の中央部(高温側熱風吹き込み部3)から高温側熱風の吹き込み方向5の方向に吹き込み、低温側熱風を外周部(低温側熱風吹き込み部2)から低温側熱風の吹き込み方向4の方向に吹き込んで乾燥する。
【0037】
前記乾燥工程における系の圧力は特に限定されないが、通常、大気圧に近い圧力で乾燥を行う。また、減圧下で乾燥することも可能であり、大気圧以下の圧力で乾燥を行うことが好ましい。
【0038】
噴霧した親水性修飾ポリロタキサン溶液の滞留時間は、通常数秒から数分であり、修飾シクロデキストリンの遊離を抑制するため、3分以下であることが好ましく、2分以下であることがより好ましい。また、噴霧した親水性修飾ポリロタキサン溶液の滞留時間が短すぎると、乾燥が不充分となる。
【0039】
親水性修飾ポリロタキサン溶液を噴霧する際の液滴の直径は、1〜2000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましい。上記液滴の直径が1μm未満であると、気流との同伴により乾燥収率が低下する場合がある。上記液滴の直径が2000μmを超えると、全液滴の総表面積が小さくなり、乾燥速度が遅くなることがある。
【0040】
本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法により得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの体積平均粒子径は1〜1000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの体積平均粒子径が1μm未満であると、気流との同伴により乾燥収率が低下する場合がある。得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの体積平均粒子径が1000μmを超えると、乾燥が不充分となりやすく、乾燥装置内に付着が生じるおそれがあり、かつ、粉末状親水性修飾ポリロタキサンを溶解する際に長時間を要する場合がある。
なお、本明細書において前記体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により分析することが出来る。
【0041】
本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法によれば、得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの包接率を6〜60%とすることができる。前記包接率が6%未満であると、得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンを架橋して得られる架橋親水性修飾ポリロタキサンに滑車効果が発現しないことがある。前記包接率が60%を超えると、環状分子である修飾シクロデキストリンが密に配置され過ぎて修飾シクロデキストリンの可動性が低下することがある。修飾シクロデキストリンが適度な可動性を有し、より高い包接率とするためには、包接率は15〜40%が好ましく、20〜30%がより好ましい。
なお、本明細書において前記包接率とは、PEGへのシクロデキストリンの最大包接量に対するPEGを包接しているシクロデキストリンの包接量の割合であり、PEGとシクロデキストリンの混合比、水性媒体の種類などを変化させることにより、任意に調整することが出来る。また、前記最大包接量とは、PEG鎖の繰り返し単位2つに対し、シクロデキストリンが1つ包接された最密包接状態とした場合のシクロデキストリンの個数をいう。
【0042】
前記包接率は、
1H−NMRにより測定することが出来る。具体的には、包接率は、DMSO−d
6に得られたポリロタキサンを溶解し、NMR測定装置(バリアン・テクノロジーズ・ジャパン社製、「VARIAN Mercury−400BB」)により測定し、4〜6ppmのシクロデキストリン由来の積分値と3〜4ppmのシクロデキストリンおよびPEGの積分値の比較で算出することができる。親水性修飾ポリロタキサンは、ポリロタキサンのシクロデキストリンに由来する水酸基を親水性の修飾基で修飾したものであるため、その包接率はポリロタキサンの包接率と同じである。
【0043】
本発明の粉末状親水性修飾ポリロタキサンの製造方法により得られる粉末状親水性修飾ポリロタキサンの修飾度は、ポリロタキサンにおけるシクロデキストリン由来の水酸基が修飾され得る最大数を1とすると、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.4以上であることが更に好ましい。前記粉末状親水性修飾ポリロタキサンの修飾度が0.1未満であると、水や水系溶剤への溶解性が充分なものとならず、微細な不溶物が生成するおそれがある。
なお、本明細書においてシクロデキストリン由来の水酸基が修飾され得る最大数とは、修飾する前にポリロタキサンが有していた全水酸基数を意味し、修飾度とは、修飾された水酸基数の全水酸基数に対する比を意味する。前記粉末状親水性修飾ポリロタキサンの修飾度は、DMSO−d
6に粉末状親水性修飾ポリロタキサンを溶解し、NMR測定装置(バリアン・テクノロジーズ・ジャパン社製、「VARIAN Mercury−400BB」)により測定し、0.7〜1.3ppmのヒドロキシプロピル基由来の積分値と4.2〜6.2ppmのシクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル基由来の積分値の比較で算出することができる。