特許第6013319号(P6013319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013319
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ポリロタキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20161011BHJP
   C08G 65/06 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 5/16 20060101ALI20161011BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20161011BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C08B37/16
   C08G65/06
   C08L71/02
   C08L5/16
   C08K5/1545
   C08K5/13
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-504518(P2013-504518)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2011078024
(87)【国際公開番号】WO2012124219
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-55503(P2011-55503)
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-55504(P2011-55504)
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239399(P2011-239399)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505136963
【氏名又は名称】アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智朗
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】濱本 茂生
(72)【発明者】
【氏名】趙 長明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 実
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−092024(JP,A)
【文献】 特開2005−154675(JP,A)
【文献】 特表2008−542436(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,2007年,VOL.105,NO.4,PP.2265-2270
【文献】 FOOD CHEMISTRY,2005年,VOL.89,NO.2,PP.191-198
【文献】 JOURNAL OF AGRICULTURAL AND FOOD CHEMISTRY,1996年,VOL.44,NO.1,PP.131-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/
C08G 65/
C08K 5/
C08L 5/
C08L 71/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンと、前記シクロデキストリンに串刺し状に包接されるポリエチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールの両末端に配置され前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサン、並びに、ポリフェノール系酸化防止剤を含有し、
前記ポリフェノール系酸化防止剤は、ロズマリン酸であり、
前記ポリフェノール系酸化防止剤の含有量が、前記ポリロタキサンに対して0.001〜1重量%である
ことを特徴とする乾燥した固体状のポリロタキサン組成物。
【請求項2】
ポリエチレングリコールの分子量が1000〜50万である請求項1記載のポリロタキサン組成物。
【請求項3】
シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、および、γ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のポリロタキサン組成物。
【請求項4】
ポリロタキサンの包接率が6〜60%である請求項1、2または3記載のポリロタキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物理ゲル、化学ゲルのいずれにも分類されない新しい種類のゲルとして、「環動ゲル」が提案されており、このような環動ゲルに用いられる化合物として、架橋ポリロタキサンが注目を集めている。
架橋ポリロタキサンは、擬ポリロタキサンの両末端に封鎖基を導入したポリロタキサンを複数架橋することで得られる。例えば、擬ポリロタキサンが、両末端に反応性基を有するポリエチレングリコール(以下、「PEG」ともいう)と該PEGを包接するシクロデキストリンとからなる場合、得られる架橋ポリロタキサンは、PEGの直鎖分子上に串刺し状に貫通されているシクロデキストリンが、当該直鎖分子に沿って移動可能(滑車効果)なために、張力が加わっても滑車効果によりその張力を均一に分散させることができる。そのため、架橋ポリロタキサンは、クラックや傷が生じにくいなど、従来の架橋ポリマーにない優れた特性を有する。
【0003】
架橋ポリロタキサンの製造に用いられるポリロタキサンには、通常、遊離したシクロデキストリン(以下、「遊離シクロデキストリン」ともいう)が含まれており、この遊離シクロデキストリンが架橋ポリロタキサンの特性を低下させるため、再沈殿法などにより精製し、遊離シクロデキストリンを除去する必要がある。
【0004】
特許文献1には、カルボキシル化ポリエチレングリコールとシクロデキストリン分子とを混合して、シクロデキストリン分子の開口部に前記カルボキシル化ポリエチレングリコールが串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両末端を封鎖基により封鎖したポリロタキサンの製造方法が開示されている。
特許文献1に開示されている製造方法では、得られたポリロタキサンをジメチルホルムアミド/メタノールの混合溶媒で洗浄した後、ジメチルスルホキシドに溶解し、この溶液を水中に滴下してポリロタキサンを析出させて、遠心分離により固液分離する方法により精製し、架橋ポリロタキサンの特性を低下させる遊離シクロデキストリンを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−154675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように精製され、遊離したシクロデキストリンが除去されたポリロタキサンは、製造された直後には架橋ポリロタキサンの原料として好適ではあるものの、ポリロタキサンが保存される過程で経時的に分解し、シクロデキストリンが遊離する場合がある。
【0007】
ポリロタキサンの製造において、遊離シクロデキストリンが除去されたとしても、保存の過程でシクロデキストリンが遊離したポリロタキサンを架橋ポリロタキサンの原料として使用した場合には、架橋ポリロタキサンの特性は低下する。そのため、架橋ポリロタキサンの特性を有効に発現しようとすれば、架橋ポリロタキサンの原料として使用する前に再精製が必要になるなど煩雑となるため、シクロデキストリンの遊離が抑制された保存安定性に優れたポリロタキサンが望まれている。
本発明の目的は、上記の課題を解決し、保存安定性に優れたポリロタキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シクロデキストリンと、前記シクロデキストリンに串刺し状に包接されるポリエチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールの両末端に配置され前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサン、並びに、ポリフェノール系酸化防止剤を含有し、前記ポリフェノール系酸化防止剤は、ロズマリン酸であり、前記ポリフェノール系酸化防止剤の含有量が、ポリロタキサンに対して0.001〜1重量%である乾燥した固体状のポリロタキサン組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、ポリロタキサンにポリフェノール系酸化防止剤を添加することにより、保存中のシクロデキストリンの遊離が少なく、優れた保存安定性を有するポリロタキサン組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明のポリロタキサン組成物は、シクロデキストリンと、前記シクロデキストリンに串刺し状に包接されるポリエチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールの両末端に配置され前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンを含有する。
【0011】
ポリロタキサンは通常、シクロデキストリンとPEGとを混合し、シクロデキストリン分子の開口部に前記PEGが串刺し状に包接された擬ポリロタキサンとし、前記擬ポリロタキサンの両末端を封鎖基で封鎖して、シクロデキストリンが串刺し状態から脱離しないように調製することにより得られる。
【0012】
本発明のポリロタキサン組成物において、前記PEGの重量平均分子量は、1000〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、1万〜10万であることがさらに好ましい。前記PEGの重量平均分子量が1000未満であると、得られる架橋ポリロタキサンが特性の低いものとなることがある。前記PEGの重量平均分子量が50万を超えると、ポリロタキサンの保存安定性が低下する場合がある。
なお、本明細書において、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、PEG換算により求められる値である。GPCによってPEG換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、TSKgel SuperAWM−H(東ソー社製)などが挙げられる。
【0013】
前記PEGは、好ましくは、両末端に反応性基を有する。前記PEGの両末端は、従来公知の方法により反応性基を導入することが出来る。
前記PEGの両末端に有する反応性基は、採用する封鎖基の種類により適宜変更することができ、特に限定されないが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられ、とりわけ、カルボキシル基が好ましい。前記PEGの両末端にカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)と次亜塩素酸ナトリウムとを用いてPEGの両末端を酸化させる方法などが挙げられる。
【0014】
前記シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。なかでも、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、および、γ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、包接性の観点より、α−シクロデキストリンであることがより好ましい。これらのシクロデキストリンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記ポリロタキサンの包接率は、用途や使用目的にもよるが、6〜60%であることが好ましい。前記ポリロタキサンの包接率が6%未満であると、得られる架橋ポリロタキサンに滑車効果が発現しないことがある。前記ポリロタキサンの包接率が60%を超えると、環状分子であるシクロデキストリンが密に配置され過ぎてシクロデキストリンの可動性が低下することがある。シクロデキストリンが適度な可動性を有し、得られる架橋ポリロタキサンに良好な滑車効果を発現させるためには、前記ポリロタキサンの包接率は15〜40%であることがより好ましく、20〜30%であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において前記包接率とは、PEGへのシクロデキストリンの最大包接量に対するPEGを包接しているシクロデキストリンの包接量の割合であり、PEGとシクロデキストリンの混合比、水性媒体の種類などを変化させることにより、任意に調整することが出来る。また、前記最大包接量とは、PEG鎖の繰り返し単位2つに対し、シクロデキストリンが1つ包接された最密包接状態とした場合のシクロデキストリンの個数をいう。
【0016】
前記ポリロタキサンの包接率は、H−NMRにより測定することが出来る。具体的には、前記包接率は、DMSO−dにポリロタキサンを溶解し、NMR測定装置(バリアン・テクノロジーズ・ジャパン社製、「VARIAN Mercury−400BB」)により測定し、4〜6ppmのシクロデキストリン由来の積分値と3〜4ppmのシクロデキストリンおよびPEGの積分値の比較で算出することができる。
【0017】
本発明のポリロタキサン組成物におけるポリフェノール系酸化防止剤としては、例えば、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ロズマリン酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニンなどが挙げられる。なかでも、長期の保存安定性において高い安定化効果を示すため、ロズマリン酸、没食子酸、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、および、エピガロカテキンガレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
これらのポリフェノール系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
さらに、前記ポリフェノール系酸化防止剤は、植物に広く含有されている天然化合物であるため、人体に対する安全性が高いという好ましい特徴を有する。このため、本発明のポリロタキサン組成物は、酸化防止剤としてポリフェノール系酸化防止剤を含有することにより、高い保存安定性を有するだけでなく、得られる架橋ポリロタキサンを、化粧料、バイオマテリアルなど人体に直接作用するような用途において、優れた品質安定性と安全性を備えた材料として使用することができる。また、ポリフェノール系酸化防止剤は抗菌効果にも優れており、架橋ポリロタキサンが応用された最終製品の抗菌効果にも期待することができる。
【0019】
本発明のポリロタキサン組成物において、前記ポリフェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリロタキサンに対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.005〜2重量%であることがより好ましく、0.01〜1重量%であることがさらに好ましい。前記ポリフェノール系酸化防止剤の含有量が0.001重量%未満であると、保存安定性の向上に効果が見られない場合がある。前記ポリフェノール系酸化防止剤の含有量が5重量%を超えても、それ以上の効果が得られず経済的でない。
【0020】
本発明のポリロタキサン組成物を調製する方法は特に限定されないが、乾燥した固体状のポリロタキサン組成物を得る場合、ポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤とを均一に混合するため、溶媒にポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤とを投入し、攪拌混合することによりポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤と溶媒とを含む混合液を調製し、該混合液を乾燥する方法が、保存安定性が優れるポリロタキサン組成物が得られるため好ましく、ポリロタキサン、ポリフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一方が溶媒に溶解している混合液を乾燥する方法がさらに保存安定性に優れるポリロタキサンが得られるためより好ましい。
【0021】
ポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤と溶媒とを含む混合液の調製において、PEGを包接するシクロデキストリンが修飾基などで修飾されていない場合、少なくともポリロタキサンを溶解させる場合に使用できる溶媒としては、DMSO、アルカリ水溶液などが挙げられる。
【0022】
また、ポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤と溶媒とを含む混合液の調製において、ポリフェノール系酸化防止剤が溶媒に溶解しない場合、事前にこれらを微細な粒子として混合することによって、より保存安定性に優れたポリロタキサン組成物を得ることができる。ポリフェノール系酸化防止剤を微細な粒子とする方法は、従来公知の方法を使用することができ、例えば、ボールミル、ピンミルなどの粉砕機による機械的粉砕、晶析などによる微細化などが挙げられる。
【0023】
前記ポリフェノール系酸化防止剤を微細な粒子とする場合、前記ポリフェノール系酸化防止剤の体積平均粒子径は、0.01〜100μmとすることが好ましく、0.1〜30μmとすることがより好ましく、0.1〜10μmとすることがさらに好ましい。前記ポリフェノール系酸化防止剤の体積平均粒子径を0.01μm未満にする場合、粉砕や晶析による調整が難しいだけで無く、それ以上の保存安定性の向上効果が無い。前記ポリフェノール系酸化防止剤の体積平均粒子径が100μmを超える場合は、得られるポリロタキサン組成物中に均一に分散せず、保存安定性の向上効果が低下する場合がある。
なお、前記ポリフェノール系酸化防止剤の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが出来る。
【0024】
ポリロタキサンとポリフェノール系酸化防止剤と溶媒とを含む混合液を乾燥する方法としては、減圧乾燥、凍結乾燥など従来公知の方法を用いることができる。
【0025】
前記乾燥における乾燥温度は、使用する乾燥装置などにより異なるが、たとえば棚段式減圧乾燥機を使用した場合、ポリロタキサンの分解を誘発するラジカルの発生を抑制するため、20〜100℃であることが好ましく、40〜90℃であることがより好ましく、40〜80℃であることがさらに好ましい。前記乾燥温度が20℃未満であると、乾燥が不充分となる場合がある。前記乾燥温度が100℃を超えると、ポリロタキサンが分解し、包接率が低下するおそれがある。
【0026】
前記乾燥における系の圧力は特に限定されないが、通常、大気圧に近い圧力で乾燥を行う。また、減圧下で乾燥することも可能であり、大気圧以下の圧力で乾燥を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、保存安定性に優れたポリロタキサン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。以下、PEGを酸化して両末端にカルボキシル基を有するPEGの製造方法について、国際公開第05/052026号パンフレットに記載された方法を参考にして行った。
【0029】
(実施例1)
(1)PEGのTEMPO酸化による両末端にカルボキシル基を有するPEGの調製
20L容の反応槽内に、水10Lを加え、PEG(分子量35000)1kg、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)10g、臭化ナトリウム100gを溶解させた。市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5重量%)500mLを添加し、室温で30分間撹拌した。余った次亜塩素酸ナトリウムを分解させるために、エタノールを500mL添加して反応を終了させた。5Lの塩化メチレンを用いた分液抽出を3回繰り返して無機塩以外の成分を抽出した後、減圧留去にて塩化メチレンを除去し、両末端にカルボキシル基を有するPEG1kgを得た。
【0030】
(2)両末端にカルボキシル基を有するPEGとα−シクロデキストリンとを用いた擬ポリロタキサン水性分散体の調製
調製した両末端にカルボキシル基を有するPEG1kgに水35Lを加え、さらにα−シクロデキストリン4kgを加え、70℃まで加熱し溶解させた。攪拌下、4℃まで冷却し、乳液状に析出した擬ポリロタキサン水性分散体を得た。
【0031】
(3)擬ポリロタキサン水性分散体の乾燥
調製した擬ポリロタキサン分散体40kgを、噴霧乾燥装置を用いて乾燥し、粉末状の乾燥体4.7kgを得た。なお、乾燥機気流入口温度は165℃、出口温度は90℃であった。
【0032】
(4)アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた擬ポリロタキサンの封鎖
50L容のフラスコ内で、室温でジメチルホルムアミド(DMF)17Lにアダマンタンアミン45gを溶解し、得られた擬ポリロタキサン4.7kgに添加した後、速やかによく振りまぜた。
続いて、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)130gをDMF8Lに溶解したものを添加し、速やかによく振りまぜた。
さらに、ジイソプロピルエチルアミン50mLをDMF8Lに溶解したものを添加し、得られた混合液を常温で一晩攪拌した。
得られた混合液をろ過後、得られた残渣に水30kgを加えて攪拌下で70℃まで昇温し、同温度で60分間攪拌して、再度ろ過した。
【0033】
(5)ポリロタキサン組成物の調製
得られた残渣にポリフェノール系酸化防止剤としてロズマリン酸(ローズマリー抽出物、三菱化学フーズ社製、「RM−21Aベース」)の0.1重量%水溶液300g(ポリロタキサンに対して、ロズマリン酸0.01重量%)を加えてよく混合し、ポリロタキサンとロズマリン酸と水とを含有する混合液とした。得られた混合液を、減圧乾燥機を使用して60℃にて16時間減圧乾燥して、ポリロタキサン組成物3kgを得た。高速液体クロマトグラフ(ウォーターズ社製、「アライアンス2695」)により、得られたポリロタキサンの遊離シクロデキストリンの含有率を測定したところ、8重量%であった。
【0034】
(実施例2)
「(5)ポリロタキサン組成物の調製」において、ロズマリン酸水溶液の濃度を0.5重量%(ポリロタキサンに対して、ロズマリン酸0.05重量%)としたこと以外は、実施例1と同様にポリロタキサン組成物3kgを得た。実施例1と同様にして測定したところ、得られたポリロタキサンの遊離シクロデキストリンの含有率は8重量%であった。
【0035】
参考例3
「(5)ポリロタキサン組成物の調製」において、ポリフェノール系酸化防止剤としてロズマリン酸の0.1重量%水溶液300gに代えて、没食子酸の1重量%水溶液300g(ポリロタキサンに対して、没食子酸0.1重量%)を加えたこと以外は、実施例1と同様にポリロタキサン組成物3kgを得た。実施例1と同様にして測定したところ、得られたポリロタキサンの遊離シクロデキストリンの含有率は8重量%であった。
【0036】
参考例4
「(5)ポリロタキサン組成物の調製」において、ポリフェノール系酸化防止剤としてロズマリン酸の0.1重量%水溶液300gに代えて、カテキン含有量が5%の茶抽出物(日本葉緑素社製、「カテキングS」)の1重量%水溶液300g(ポリロタキサンに対して、カテキン0.005重量%)を加えたこと以外は、実施例1と同様にポリロタキサン組成物3kgを得た。実施例1と同様にして測定したところ、得られたポリロタキサンの遊離シクロデキストリンの含有率は8重量%であった。
【0037】
(比較例1)
「(5)ポリロタキサン組成物の調製」において、ロズマリン酸の0.1重量%水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリロタキサンを得た。実施例1と同様にして測定したところ、得られたポリロタキサンの遊離シクロデキストリンの含有率は8重量%であった。
【0038】
<評価>
実施例及び参考例で得られたポリロタキサン組成物および比較例で得られたポリロタキサンを40℃の恒温槽に保管し、高速液体クロマトグラフ(ウォーターズ社製、「アライアンス2695」)により30日目、および、120日目の遊離シクロデキストリン含有率を測定した。結果を作製直後のものとともに表1に示した。
【0039】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、保存安定性に優れたポリロタキサン組成物を提供することができる。