【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、本目的は、直列に電気的に接触連結されたプロセス熱電脚をコーティングして電気絶縁性固体材料で覆うことを特徴とする熱電モジュールの製造方法により達成される。
【0014】
本目的はまた、上記方法で得られる熱電モジュールにより達成される。
【0015】
本目的はまた、直列に電気的に接触連結された熱電脚部をコーティングにより電気絶縁性固体材料で覆った熱電モジュールにより達成される。
【0016】
本発明は、モジュールの構造とデザインに関して複数の改良を提案するものであって、これらの提案により、熱的カップリングの適正化による熱流動の改善とこのモジュールまたはTEGの容易でいろいろな方法での封止が可能となる。
【0017】
本発明によれば、「コーティングにより覆う」は、電力の供給のためのまた熱電モジュールから電力を運搬するための電気接点連結部以外の、直列に接触連結された熱電脚部の全体の熱電モジュールを完全に覆うコーティングをいう。この熱電モジュールは、したがって、全ての側面が電気絶縁性固体材料で覆われている。特に、
図2に示すように電気接点で連結された熱電製のn型およびp型材料からなる構造は、本発明に方法でコーティングされて覆われる。したがってこのコーティングは、
図1に示す、熱電モジュールを形成する個々の脚部が交互に設けられた二枚のセラミック板の内部に存在していてもよい。
【0018】
本発明ではコーティングを行うため、本発明により非平面的な構造の熱電脚部をコーティングすることもできる。
【0019】
直列に接触連結された熱電脚部に、電気絶縁性固体材料の溶液または懸濁液または溶融物または蒸気または粉末を塗布して、熱電脚部を電気絶縁性固体材料でコーティングすることが好ましい。
【0020】
吹付法または浸漬法、ブラシ塗布法、蒸着法、スパッタリングまたはCVD法で固体材料を塗布することが好ましい。
【0021】
電気絶縁性固体材料は、酸化物、窒化物、ケイ酸塩、セラミックス、ガラス、無機または有機ポリマーから選ばれることが好ましい。例えば、セラミックスは酸化物であっても窒化物であってもよい。例えば、有機ポリマーは、ポリイミド(例えば、カプトンR)などの耐熱性有機ポリマーであってもよく、例えばフォルタフィックスRSP650ブラックのようなシリコーン樹脂系コーティング膜であってもよい。高温モジュール用には、例えばマイカが好ましく、低温モジュールには、例えばカプトンRなどのポリイミドが好ましい。
【0022】
したがって、この電気絶縁材料は、吹付法または浸漬法、またはこれらの方法の組合せで塗布できる。あるいはこの材料をブラシ塗布法で塗布することもできる。プロセス条件下で、例えば高温で熱電モジュールが損傷を受けないのなら他の物理的方法も可能であり、例えばスパッタリングやPVD、CVD法、あるいは当業界の熟練者には既知のこれらの変法も可能である。
【0023】
したがって、この電気絶縁性固体材料を、例えば、プラズマ溶射や粉末溶射、コールドスプレー、ワイアを用いるフレーム溶射などの吹付法で、あるいは蒸着法やスパッタリングなどの真空中での物理蒸着法(PVD)、化学蒸着(CVD)、または他のこれらの方法の変法で塗布することができる。
【0024】
この電気絶縁材料が、熱電モジュールをあるいは電気的に接触連結された脚部を完全に覆い、また電気絶縁に十分な厚みをもっていることが好ましい。このコーティング膜の厚みは、好ましくは5μm〜5mmであり、特に好ましくは20μm〜2mm、特に50μm〜1mmである。
【0025】
電気絶縁性固体材料のコーティングに、好ましい金属層コーティングを適用することもできる。この金属層は、熱電モジュールの電気的な接点、即ち電力を供給・輸送するラインが、この金属層と導電的に接触しないように塗布される。これは熱電モジュールのショートを避けるためである。したがって、これらの電力の供給・輸送用のラインは、被覆金属の層から除外される。
【0026】
この金属層も、いずれか所望の適当な方法を用いて塗布できる。この金属層は、吹付法、電解めっき法、スパッタリング法またはPVD、CVDまたはMOCVD法で形成されることが好ましい。一般に、全ての適当な熱的・化学的・物理的または電気化学的方法をこのコーティング膜形成に用いることができる。適当な金属吹付法は、例えばアークワイヤ溶射法とプラズマ溶射法である。
【0027】
この金属層は、昇華または気化による材料減量と酸化または他の汚染による破壊または損傷を防止できるように、全体の熱電モジュールを密封シールする。用いる金属は、使用条件下で安定ないずれかの金属であり、上記の方法で塗布される。好ましい金属は、モリブデンとタングステン、鉄、タンタル、ニッケル、コバルト、クロム、銅、これらの混合物または合金、例えばニッケルメッキした銅や銅メッキしたスチールである。アルミニウムや亜鉛も、低温モジュールには適当であろう。
【0028】
複数の金属の組合せも可能である。その場合、第一の金属層を非常に薄く溶射し、その周りを第二の金属層で電気メッキする。特に、第一の金属層が完全な密封効果を持たず空隙または浸透性を保持している場合に、これが有利である。
【0029】
この金属層は、上述の効果に対して保護するのに十分な厚みを有している。この金属層の厚みは、好ましくは5μm〜5mmであり、特に好ましくは50μm〜2mm、特に100μm〜1mmである。
【0030】
この熱電モジュールを、先ずあるコーティング法で電気絶縁材料で覆うように塗布し、続く第二の工程で同様に金属ケースで覆うように塗布することが好ましい。
【0031】
この金属コーティング膜中に残留する空隙は、セラミックでコーティングして除くことができ、あるいは空隙封鎖材を浸透させて除くことができる。したがって、この金属を、水ガラス、ゾルーゲル前駆体、シリコーンまたはシリコーン樹脂等により湿潤させることができ、その場合、この湿潤媒体を次いで空隙中で熱処理、放射線処理または化学処理で分解させて、空隙を閉鎖することができる。
【0032】
単一工程で、個々の熱電モジュールをこれらのコーティング膜(塗膜)で電気的に絶縁すると共に封止でき、または一連の熱電モジュールをまず電気的に絶縁し、次いで封止することができる。
【0033】
本発明の構造により、いずれの所望形状をもつ、例えば円形、方形、平面状、非平面状または非対称状をもつ、直列に電気的に接触連結された脚部をもつ熱電モジュールを電気的に絶縁し、次いで強固に封止することができる。これにより、熱電モジュールの全部品間に一体的で強い結合を形成することができる。例えば、熱電脚部を先ず溶接、はんだ付け、吹き付けまたは圧力下で相互に接触連結させ、電気絶縁体をこの電極または接点に噴射し、強封止剤をこの電気絶縁体上に噴射する。
【0034】
モジュールの電気接点は、モジュールから金属ケースを通して気密な状態で導き出される。本発明のモジュールにより、モジュールの高温側と低温側の移動表面を高圧下でプレスして平面状のモジュール表面として、モジュール内での電気的また熱的抵抗を最小におさえながら、モジュールの高温側と低温側の熱移動が良くなるようにすることが可能となる、
この熱電脚部と電極、電気絶縁体、モジュール封止材の間の一体構造により、熱的結合を最適化し、電気抵抗と熱抵抗を最小にすることができる。
【0035】
本発明の製造方法は、複雑でなく、経済的で、単純で大スケールでの工業生産を可能とする。使用時に、本発明で封止された熱電モジュールを結合することは、従来のプロセス、例えばはんだ付け、溶接または加圧によりこの封止物または金属コーティング物を接続するのみで可能である。
【0036】
一つの特に優れた長所は、幾何的柔軟性である。噴霧電気絶縁材料や噴霧金属による封止は、ある特定のモジュールデザインに限定されるのでなく、いずれの所望のモジュールにも使用可能である。
【0037】
この金属ケースは固体であり、同時に延びるものであってもよい。これにより、熱的ストレスや機械的ストレスに耐え、これを補償することができ、このため内部の熱電モジュールを保護することができる。
【0038】
電気絶縁体と続く金属封止膜をもつ熱電モジュールである本発明の構造により、短期間で安価に発電機が製造できるように、即ち、単一工程で、直列に電気的に接触連結された熱電脚部の「裸の」熱電材料が、ホルダーに取り付けられ、この複合物が電気的に絶縁され封止されて熱電発電機が製造されるようになる。このため、個々の熱電脚部を電気的な接触連結をすることなく処理することができる。
【0039】
本発明はまた、上記方法で得ることのできる熱電モジュールと、直列に電気的に接触連結された熱電脚部が電気絶縁性固体材料で覆われるようにコーティングされている熱電モジュールに関する。
【0040】
この場合、電気絶縁性固体材料のコーティング膜(塗膜)に、被覆金属の層を塗布することが好ましい。
【0041】
本発明の熱電モジュールは、用いる材料の熱安定性により、好ましくは-50℃〜2000℃の温度の範囲で作動する、特に好ましくは-30〜1500℃、特に-25〜1000℃の温度の範囲で作動するペルチェ素子と発電素子の両方として使用できる。
【0042】
本発明の熱電モジュールでは、いずれの所望で適当な熱電材料も使用できる。これらの材料の例は、方コバルト鉱や半ホイスラー材料、包接化合物、酸化物、珪化物、硼化物、Bi
2Te
3やこの誘導体、PbTeや誘導体、アンチモン化亜鉛などのアンチモン化物、ジントル相である。
【0043】
本発明を、以下の実施例を基により詳細に説明する。