(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013396
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】基板テーブルを備えるリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20161011BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/68 F
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-93766(P2014-93766)
(22)【出願日】2014年4月30日
(62)【分割の表示】特願2012-113908(P2012-113908)の分割
【原出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2014-170957(P2014-170957A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/489,850
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】バトラー,ハンズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エイク,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホル,スヴェン,アントワン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】フェルメーレン,ヨハネス,ペトラス,マルティヌス,ベルナルドス
(72)【発明者】
【氏名】ホァン,ヤン−シャン
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−046520(JP,A)
【文献】
特開2010−267144(JP,A)
【文献】
特開2011−035392(JP,A)
【文献】
特開2008−160155(JP,A)
【文献】
特開2005−297109(JP,A)
【文献】
特開2008−072139(JP,A)
【文献】
特開2007−005363(JP,A)
【文献】
特開2012−009858(JP,A)
【文献】
特開2013−120933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30 、21/67 −21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板テーブルを位置決めするポジショナと、
前記基板のターゲット部分にパターン付放射ビームを投影する投影システムと、
前記投影システムに対向する前記基板の表面の一部に対向して、前記投影システムの焦点面内に保持される前記基板の表面の前記一部に力を至らせる基板表面アクチュエータと、を備え、
前記基板表面アクチュエータは、前記基板の表面の前記一部に係合する流体静力学的ベアリングを備える、リソグラフィ装置。
【請求項2】
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板テーブルを位置決めするポジショナと、
前記基板のターゲット部分にパターン付放射ビームを投影する投影システムと、
前記投影システムに対向する前記基板の表面の一部に対向して、前記投影システムの焦点面内に保持される前記基板の表面の前記一部に力を至らせる基板表面アクチュエータと、
前記基板表面アクチュエータと前記基板の表面の前記一部との間の距離を測定する距離センサと、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項3】
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板テーブルを位置決めするポジショナと、
前記基板のターゲット部分にパターン付放射ビームを投影する投影システムと、
前記投影システムに対向する前記基板の表面の一部に対向して、前記投影システムの焦点面内に保持される前記基板の表面の前記一部に力を至らせる基板表面アクチュエータと、を備え、
前記基板表面アクチュエータは、前記投影システムの下流側レンズと前記基板の照射される部分との間に液体を注入する液体供給システム内に含まれる、リソグラフィ装置。
【請求項4】
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板テーブルを位置決めするポジショナと、
前記基板のターゲット部分にパターン付放射ビームを投影する投影システムと、
前記投影システムに対向する前記基板の表面の一部に対向して、前記投影システムの焦点面内に保持される前記基板の表面の前記一部に力を至らせる基板表面アクチュエータと、を備え、
前記基板表面アクチュエータは、前記基板の表面の前記一部に隣接するギャップ内に流体を注入し、前記ギャップから流体を取り除く流体循環デバイスを備える、リソグラフィ装置。
【請求項5】
リソグラフィ装置であって、
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板テーブルを位置決めするポジショナと、
前記基板のターゲット部分にパターン付放射ビームを投影する投影システムと、
前記投影システムに対向する前記基板の表面の一部に対向して、前記投影システムの焦点面内に保持される前記基板の表面の前記一部に力を至らせる基板表面アクチュエータと、
前記リソグラフィ装置のメトロロジフレーム又はベースフレームに前記基板表面アクチュエータを接続するバランスマスと、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記基板テーブルの位置を制御し、前記ポジショナ及び前記基板表面アクチュエータに動作可能に接続されて前記ポジショナ及び前記基板表面アクチュエータを駆動する位置コントローラを備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記位置コントローラは、コントローラ出力信号を提供するコントローラと、前記コントローラ出力信号を前記ポジショナ及び前記基板表面アクチュエータに分配する分配装置と、を備える、請求項6に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記分配装置は、フィルタを含む周波数ドメイン選択装置を備える、請求項7に記載のリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記分配装置は、基板テーブル共振モード又は基板テーブルねじりモードの周波数帯域内で、実質的に前記基板表面アクチュエータに前記コントローラ出力信号を選択的に提供する、請求項7又は8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記分配装置は、前記基板テーブルと前記ポジショナのショートストロークアクチュエータとの間の弾性の共振の周波数帯域内で、実質的に前記基板表面アクチュエータに前記コントローラ出力信号を選択的に提供する、請求項7〜9のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記分配装置は、前記基板テーブルの位置に応じて前記コントローラ出力信号の分配を決定する、請求項7〜10のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記基板表面アクチュエータは、前記投影システムの下流側レンズの光軸の方向に沿って見て、前記投影システムの前記下流側レンズを取り囲む前記基板の表面の区域の少なくとも一部に係合する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項13】
前記基板表面アクチュエータは、2以上の別個のアクチュエータによって形成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
前記2以上の基板表面アクチュエータは、前記投影システムを取り囲む円形区域内に等間隔に配置される、請求項13に記載のリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、基板を保持するように構築された基板テーブルを備えるリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ分野では、基板テーブルが大きい直径を有することが必要なより大きい直径を有する基板を求める傾向がある。同時に、基板テーブルが軽量であることが必要なより速いスキャン速度及びスキャン加速度を求める傾向がある。所望の加速度を達成できるためには、比較的軽量の基板テーブル構造が望まれる。そのような軽量の構造は、それが受ける加速度が大きい場合、曲げモード励振、ねじりモード励振、又はその他の効果を示す傾向がある。その結果、基板上にパターンを投影する際に合焦エラーが発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004] 基板の正確な合焦位置決めを可能にするリソグラフィ装置を提供することが望ま
しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本発明のある実施形態によれば、
放射ビームを調節するように構成された照明システムと、
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成できるパターニングデバイスを支持するように構築された支持体と、
基板を保持するように構築された基板テーブルと、
基板テーブルを位置決めするように構築された位置決めデバイスと、
パターン付放射ビームを基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、
投影システムに対向する基板の表面の一部分に係合して基板表面の該部分に力を加えるように構成された基板表面アクチュエータと、
基板テーブルの位置を制御するように構成され、位置決めデバイス及び基板表面アクチュエータに動作可能に接続されて位置決めデバイス及び基板表面アクチュエータを駆動するコントローラと
を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[0006] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【
図1】[0007]本発明のある実施形態が提供できるリソグラフィ装置を示す。
【
図2】[0008]本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置の一部の概略側面図を示す。
【
図3】[0009]
図2に示すリソグラフィ装置が作用する基板表面の一部の上面図を示す。
【
図4】[0010]本発明の別の実施形態によるリソグラフィ装置の一部の概略側面図を示す。
【
図5】[0011](A)及び(B)は、本発明のある実施形態による基板表面アクチュエータのエアベアリングの上面図及び底面図を示す。
【
図6】[0012]本発明のある実施形態による基板表面アクチュエータの制御を説明する制御方式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0013]
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又は任意の他の適切な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたパターニングデバイス支持体又はマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTとを含む。この装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。この装置は、基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ又は複数のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBへ付与されたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSをされに含む。
【0008】
[0014] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでもよい。
【0009】
[0015] パターニングデバイス支持体は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法でパターニングデバイスを保持する。このパターニングデバイス支持体は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電式等のクランプ技術を使用することができる。パターニングデバイス支持体は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。パターニングデバイス支持体は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0010】
[0016] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0011】
[0017] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0012】
[0018] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム及び静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0013】
[0019] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用するか、又は反射マスクを使用する)。
【0014】
[0020] リソグラフィ装置は2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、又は1つ又は複数の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ又は複数のテーブル又は支持体で予備工程を実行することができる。
【0015】
[0021] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために使用することができる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0016】
[0022]
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0017】
[0023] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように設定されたアジャスタADを含んでもよい。通常、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを含んでもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面に所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0018】
[0024] 放射ビームBは、パターニングデバイス支持体(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。パターニングデバイス(例えばマスク)MAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイス又はポジショナPMと別の位置センサ(
図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めできる。一般に、パターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MTの移動は、第1の位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイス(例えばマスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に配置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0019】
[0025] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、パターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWT又は「基板支持体」がX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、パターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMT又は「マスク支持体」に対する基板テーブルWT又は「基板支持体」の速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、パターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MT又は「マスク支持体」はプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0020】
[0026] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも使用できる。
【0021】
[0027]
図2は、投影システムPSの下流側部分と、基板Wを保持する基板テーブルWTと、投影システムPSの最終(下流側)レンズと基板Wとの間に液浸液を供給する液浸フードなどの液体供給システムIHの概略側面図を示す。投影システムは、リソグラフィ装置のメトロロジーフレームMFによって支持体(
図2に図示せず)を用いて保持されている。基板テーブルWTは、位置決めデバイス又はポジショナPD(
図1に示す位置決めデバイスPWなど)によって位置決めされている。位置決めデバイス又はポジショナは、基板テーブルWTを運動の大きい領域の上方に粗位置決めするように構成されたロングストロークアクチュエータ(
図2に図示せず)と、基板テーブルWTの微細位置決めを提供し、ロングストロークアクチュエータに対して移動するように構成されたショートストロークアクチュエータSSMとを備えてもよい。液体供給システムIHは、メトロロジーフレームに対して液体供給システムを位置決めする液体供給システムの1つ又は複数のアクチュエータ(
図2に図示せず)によって位置決めされる。
【0022】
[0028] 基板テーブル及び基板のサイズが大きいため、高速スキャン速度とその結果としての基板テーブルが受ける加速力と相俟って、基板テーブルのねじりモード、曲げモードなどの内部モードの励振が発生することがある。これらの励振の結果として、投影システムの最終(下流側)レンズの下方にあって、照射される基板表面の一部分は特に基板Wの表面に対して垂直方向に位置の不正確さを示す可能性がある。したがって、干渉計などの手段による投影レンズPS又はメトロロジーフレームMFに対するウェーハテーブルWTの従来の位置測定は、投影レンズPSに対するウェーハWの垂直位置の十分に正確な尺度ではない。
【0023】
[0029] この効果は、基板表面に力を提供する基板表面アクチュエータによって少なくとも部分的に、例えば垂直方向に打ち消される。その結果、投影システムの焦点面に対する基板表面の位置決めの不正確さが低減される。基板テーブルの位置を制御する制御デバイス又は位置コントローラを提供してもよい。本発明の一態様によれば、位置コントローラは、基板表面アクチュエータとポジショナ(基板ステージのショートストローク及び/又はロングストロークモータ)の両方を駆動するように配置できる。
【0024】
[0030]
図2を再度参照すると、本発明の一態様によれば、基板表面アクチュエータが液体供給システム内に含まれる。基板表面アクチュエータ及びポジショナ(この例では、ショートストロークアクチュエータSSM、及び場合によっては、ロングストロークアクチュエータ)は、コントローラCONによって駆動される。基板表面アクチュエータは液体供給システム内に含まれるので、別のアクチュエータは必要ない。
図3に示すように、液体供給システムは、液体供給システムの構造と基板Wの表面との間に強い結合が存在する領域内の基板Wの表面に力を加えることができる。そのような強い結合は、液体供給システムの構造が基板の近くにあり、液体供給システムの構造と基板との間に狭いギャップが提供される円形の領域WSP内に存在する。円形の領域WSPは投影システムによって基板の特定の位置で照射される基板の表面の一部分の外側にあるため、結像への影響は回避できる。
【0025】
[0031] したがって、アクチュエータは、投影システムの下流側レンズの光軸の方向に沿って見える投影システムの下流側レンズを取り囲む基板の表面の区域に係合する。
【0026】
[0032] 液体供給システムの構造と基板との間のギャップ内の液浸液は、基板表面に係合するように、基板に対して垂直方向に下向き及び上向きに特定の最小周期で力を加えることができる流体静力学的又は流体動力学的結合(ベアリング)を提供する。
【0027】
[0033] 基板表面との優れた係合を提供するには、液体供給システムの狭いギャップ構造と基板表面との間に強い結合が提供されるように、水平方向に広く、高さが低いギャップが望ましい。これは、基板表面と液体供給システムの構造との間の狭い通路が液浸液の流出を抑制するからである。
【0028】
[0034] 多くの代替実施形態が可能である。基板表面アクチュエータは、例えば1つ又は複数の別個のアクチュエータによって形成されてもよい。
図4に示すような一例では、基板表面アクチュエータSSAは、投影システムPSの周囲の両側又は円形領域内に提供されている。基板表面アクチュエータは垂直(z)方向に力を働かせるように、各々、ローレンツアクチュエータを備えてもよい。以下に詳述するように、流体(すなわち、液体又はガス)ベアリングなどの結合を提供して基板の表面に接触することができる。アクチュエータは、ローレンツアクチュエータを備えてもよい。ローレンツアクチュエータによってベアリングは、ローレンツアクチュエータによって生成されたアクチュエータの力のアクチュエータステータの垂直方向の変位への最小限の影響で基板表面に追随できる(力は実質的にアクチュエータ駆動電流にのみ依存する)。アクチュエータ内にゼロ電流が流れると、ベアリングは基板表面に力を加え、ベアリングは基板表面に力を加えずに基板表面に追随する。力はアクチュエータ電流のみに依存し、基板表面の高さの変動又はメトロロジーフレームMFに伝わるアクチュエータステータの振動には依存しない。一般には、流体静力学的、空気静力学的、流体動力学的又はその他の任意の好適なベアリングが適用可能であることに留意されたい。
図4に示すように、2つの基板表面アクチュエータSSAが提供される。あるいは、例えば、投影システムを取り囲む円形区域内に等間隔に配置された(投影システムの光軸方向から見て)3つ以上の基板表面アクチュエータを提供してもよい。
【0029】
[0035] 基板Wの表面に接触する流体ベアリングの一例について
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
図5Aには、基板Wの表面に対向する基板表面アクチュエータの端部の概略側面図が示されている。これに対応する底面図が
図5Bに示されている。アクチュエータは、加圧空気又はその他の任意の流体(すなわち、液体又はガス)が基板へ向けて案内される中央の出口開口PRAを備える。中央の出口開口PRAの周囲には、真空引きを行うための複数の入口開口VACが提供されている。基板表面アクチュエータと基板表面との間のギャップに供給される加圧空気又はその他の流体は、開口VACを介して放出される。空気(又は基板テーブルを取り囲むガスと同様の別のガス混合物)が付与されると、その後の乾燥、洗浄などは不要となり、基板表面の汚染を回避できる。
【0030】
[0036] 上記の例では、基板表面アクチュエータSSAが基板表面アクチュエータの起動時にメトロロジーフレームを反力にさらすことを防止するため、基板表面アクチュエータを周知のバランスマスに接続し、次に、弾性によってバランスマスをメトロロジーフレーム又はベースフレームに接続してもよい。
【0031】
[0037]
図2及び
図4の実施形態の両方で、基板表面アクチュエータは、投影システムの光軸の方向から見て、投影システムを取り囲む基板表面の一部分に作用する。それによって、基板表面アクチュエータは、投影システムの下流側レンズの下の焦点面内に保持される基板表面の上記部分に有効に作用する。
【0032】
[0038] 基板表面アクチュエータを制御する制御システムのある実施形態について
図6を参照しながら説明する。制御システムは、基板テーブルの測定位置、この例では、z方向の基板テーブルの測定位置Zwsと設定点(図示せず)によって表される所望の位置からの基板ステージ力信号Fwsなどのコントローラ出力信号を生成する基板ステージコントローラCwsなどのコントローラを備える。本発明の一態様の制御システムは、コントローラのコントローラ出力信号Fwsを基板表面アクチュエータIHへ分配する分配装置DSTと、位置決めデバイス又はポジショナPDとをさらに備える。ステージの力学は、力学伝達関数MCHによって制御図内に示される。
【0033】
[0039] コントローラ出力信号は、x、y及びz方向の成分及び/又はこれらの軸周りの回転方向を含む3次元出力信号などの多次元コントローラ出力信号を含んでもよい。基板表面アクチュエータは、いくつかの実施形態では基板表面に対して垂直(Z)方向にのみ力を加えるので、分配装置は基板表面アクチュエータ及び位置決めデバイス又はポジショナにコントローラ出力信号のz成分を分配しながら、コントローラ出力信号の残りの成分を位置決めデバイス又はポジショナにのみ提供することができる。Z方向に作用する複数の基板表面アクチュエータがある場合、X及びY軸周りの回転をさらに制御できる。位置決めデバイス又はポジショナは、基板テーブルを正確に位置決めするショートストロークアクチュエータとより大きい運動範囲内で基板テーブルを粗位置決めするロングストロークアクチュエータとの組み合わせなどの複数のアクチュエータを備えてもよい。
【0034】
[0040] 基板表面アクチュエータが基板テーブルのねじりモード、共振モードなどが発生する特定の周波数帯域内で起動できるようにするため、分配装置は周波数ドメイン内にフィルタなどの選択装置を備えてもよい。それによって、分配装置は、特にそのような周波数帯域で基板表面アクチュエータを起動できるように、基板テーブル共振モード又は基板テーブルねじりモードの周波数帯域内で特に基板表面アクチュエータにコントローラ出力信号を選択的に提供できる。ある実施形態では、基板表面アクチュエータへのコントローラ出力信号は低域通過フィルタをかけられ、投影レンズシステムPSの不要な励振を防止している。
【0035】
[0041] また、基板表面アクチュエータを適用して基板テーブルとショートストロークアクチュエータとの間の弾性の共振を打ち消すことができる。そのため、ある実施形態では、基板テーブルと位置決めデバイス又はポジショナのショートストロークアクチュエータとの間の弾性の共振の周波数帯域内でコントローラ出力信号を実質的に基板表面アクチュエータに選択的に提供するように分配装置を構成してもよい。
【0036】
[0042] 基板テーブルの挙動における位置依存を考慮するために、分配装置は基板テーブルの位置、例えば、(X,Y)平面内に応じてコントローラ出力信号の分配を決定するように構成してもよい。
【0037】
[0043] ねじりモード、共振モードなどの励振に関する情報を得るために、基板テーブルの位置のセンシングのための過剰決定位置センシング装置などの好適なセンシングを提供できる。あるいは、コントローラは、基板テーブルの位置とある期間の時間との関係を表す位置測定データからねじりモード又は共振モード(基板テーブルのねじりモード又は共振モード及び/又は基板テーブルとショートストロークアクチュエータとの間の弾性など)の励振を推定する推定器を備えてもよい。
【0038】
[0044] 基板表面アクチュエータと基板との間の結合は、基板表面アクチュエータと基板表面(又はそれを取り囲む構造)との間の距離に依存してもよい。結合の大きな変動を回避するために、高さのばらつきを20〜30マイクロメートル以内に制限するといった実質的に平坦な構造を提供してもよい。そのために、基板と基板テーブルとの間の側溝をいわゆるMES(メカニカルエッジシール)(US2011/0013169号)によって閉止でき、上面に好適なステッカーを貼付したセンサを提供してもよく、デュアルステージリソグラフィ装置で第1の基板テーブルから第2の基板テーブルへの液体供給システムの移送の架橋のためのブリッジを提供してもよい。あるいは、結合(又は距離)を基板テーブル位置に応じて定量化してそれを適用し、起動経路を補正することもできる。
【0039】
[0045] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0040】
[0046] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0041】
[0047] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0042】
[0048] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁及び静電光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0043】
[0049] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に格納したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0044】
[0050] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。