(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属箔と板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上200gf/cm以下であり、
前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
前記加熱前における前記金属箔と前記板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上200gf/cm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリア付金属箔。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔の少なくとも一つの金属箔側に対して、樹脂を積層し、次いで樹脂又は金属箔を1回以上繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔の金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、または請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔、または金属箔を1回以上繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項8または9に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記キャリア付金属箔の板状キャリアと金属箔とを剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付き金属箔の少なくとも一つの金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔又は金属箔を1回以上繰り返して積層することを含むビルドアップ基板の製造方法。
配線形成された表面の上に、樹脂を積層し、当該樹脂に両面に金属箔を密着させた請求項1〜7の何れか一項に記載のキャリア付金属箔の一方の金属箔を接触させて積層する工程を更に含む請求項14〜16のいずれか一項に記載のビルドアップ基板の製造方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔を準備する工程、および、前記キャリア付金属箔から前記樹脂製の板状キャリアを剥離する工程、を含む樹脂製の板状キャリアの製造方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔を準備する工程、および、前記キャリア付金属箔から前記金属箔を剥離する工程、を含むビルドアップ基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキャリア付き銅箔は、プリント回路板の製造工程を簡素化及び歩留まりアップにより製造コスト削減に大きく貢献する画期的な発明であるが、キャリア付金属箔の特定用途における板状キャリアと金属箔の一時的な密着及びその後の剥離を考慮した構成については言及がなく、改良の余地が残されている。
【0006】
例えば、あまり多くの加熱加工の工程を経ずに利用される用途、例えばメッシュ加工を施して形成するシールド材などの用途では、密着している金属箔と合成樹脂とが剥離操作をする前に不用意に剥離せず、かつ、剥離操作を行う際に金属箔と合成樹脂との界面にて意図的に剥離できることが重要である。すなわち、不用意な剥離を避けるべく、両者の剥離強度を過度に上げすぎると、今度は金属箔と合成樹脂とを剥離させるときに、樹脂部分の破壊が起こり、金属箔の表面に樹脂分が残存する場合があり、好ましいことではない。
【0007】
そこで、本発明は板状キャリアと金属箔を剥離可能に密着させるのに有用な条件を探求し、更に金属箔と板状キャリアとの界面での意図的な剥離が可能なキャリア付き金属箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題について鋭意研究した結果、金属箔と板状キャリアとの間の剥離強度を一定の範囲とすることにより、金属箔と板状キャリアとの間において、不用意な剥離が生じることがなく、かつ、意図的な剥離が可能になることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)樹脂製の板状キャリアと、該キャリアの少なくとも一方の面に、剥離可能に密着させた金属箔からなるキャリア付金属箔であって、220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属箔と板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上200gf/cm以下であ
り、前記金属箔の前記板状キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が0.4μm以上10.0μm以下であるキャリア付金属箔。
(2)樹脂製の板状キャリアが熱硬化性樹脂を含む(1)に記載のキャリア付金属箔。
(3)前記樹脂製の板状キャリアは、プリプレグである(1)または(2)に記載のキャリア付金属箔。
(4)前記樹脂製の板状キャリアは、120〜320℃のガラス転移温度Tgを有する
(1)〜(3)
のいずれかに記載のキャリア付金属箔。
(5)前記金属箔の前記キャリアと接する側表面の十点平均粗さ(Rz jis)が、3.5μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のキャリア付金属箔。
(6)前記加熱前における前記金属箔と前記板状キャリアとの剥離強度が、10gf/cm以上200gf/cm以下である(1)〜(5)のいずれかに記載のキャリア付金属箔。
(7)キャリア付き金属箔を構成する板状キャリアと金属箔は次式:
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R
1はアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R
2はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立にハロゲン原子、またはアルコキシ基、またはアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基である。)
に示すシラン化合物、その加水分解生成物、該加水分解生成物の縮合体を単独で又は複数組み合わせて用いて貼り合わせてなる(1)〜(6)のいずれかに記載のキャリア付金属箔。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔の少なくとも一つの金属箔側に対して、樹脂を積層し、次いで樹脂又は金属箔を1回以上繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔の少なくとも一つの金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、または(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔、または金属箔を1回以上繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
(10)(8)または(9)に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記キャリア付金属箔の板状キャリアと金属箔とを剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
(11)(10)に記載の製造方法において、剥離して分離した金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を含む多層金属張積層板の製造方法。
(12)(8)〜(11)のいずれかに記載の製造方法により得られる多層金属張積層板。
(13)(1)〜(7)のいずれかに記載キャリア付金属箔の少なくとも一つの金属箔側に、ビルドアップ配線層を一層以上形成する工程を含むビルドアップ基板の製造方法。
(14)ビルドアップ配線層はサブトラクティブ法又はフルアディティブ法又はセミアディティブ法の少なくとも一つを用いて形成される(13)に記載のビルドアップ基板の製造方法。
(15)(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付き金属箔の少なくとも一つの金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔又は金属箔を1回以上繰り返して積層することを含むビルドアップ基板の製造方法。
(16)(15)に記載のビルドアップ基板の製造方法において、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、キャリア付金属箔の金属箔、キャリア付金属箔の板状キャリア、又は樹脂に穴を開け、当該穴の側面および底面に導通めっきをする工程を更に含むビルドアップ基板の製造方法。
(17)(15)または(16)に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属箔、片面あるいは両面金属張積層板を構成する金属箔、及びキャリア付金属箔を構成する金属箔の少なくとも一つに配線を形成する工程を1回以上行うことを更に含むビルドアップ基板の製造方法。
(18)配線形成された表面の上に、片面に金属箔を密着させた(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔の樹脂板側を接触させて積層する工程を含む(15)〜(17)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法。
(19)配線形成された表面の上に、樹脂を積層し、当該樹脂に両面に金属箔を密着させた(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリア付金属箔の一方の金属箔を接触させて積層する工程を更に含む(15)〜(17)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法。
(20)前記樹脂の少なくとも一つがプリプレグであることを特徴とする(15)〜(19)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法。
(21)(13)〜(20)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記キャリア付金属箔の板状キャリアと金属箔とを剥離して分離する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
(22)(21)に記載のビルドアップ配線板の製造方法において、板状キャリアと密着していた金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
(23)(21)または(22)に記載の製造方法により得られるビルドアップ配線板。
(24)(13)〜(20)のいずれかに記載の製造方法によりビルドアップ基板を製造する工程を含むプリント回路板の製造方法。
(25)(21)または(22)に記載の製造方法によりビルドアップ配線板を製造する工程を含むプリント回路板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属箔と板状キャリアとの間において、不用意な剥離が生じることがなく、かつ、意図的な剥離が可能となるキャリア付金属箔を提供することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るキャリア付金属箔の一実施形態においては、樹脂製の板状キャリアと該キャリアの片面又は両面、好ましくは両面に剥離可能に密着させた金属箔とからなるキャリア付金属箔を準備する。本発明に係るキャリア付金属箔の一構成例を
図2および
図3に示す。特に、
図3の最初のところには、樹脂製の板状キャリア11cの両面に、金属箔11aを剥離可能に密着させたキャリア付き金属箔11が示されている。板状キャリア11cと金属箔11aとは、後述するシラン化合物11bを用いて貼り合わせられている。
【0015】
構造的には、
図1に示したCCLと類似しているが、本発明のキャリア付金属箔では、金属箔と樹脂が最終的に分離されるもので、容易に剥離できる構造を有する。この点、CCLは剥離させるものではないので、構造と機能は、全く異なるものである。
【0016】
本発明で使用するキャリア付金属箔はいずれ剥がさなければならないので過度に密着性が高いのは不都合であるが、板状キャリアと金属箔とは、プリント回路板作製過程で行われるめっき等の薬液処理工程において剥離しない程度の密着性は必要である。
【0017】
また、多層プリント配線板の製造過程では、積層プレス工程やデスミア工程で加熱処理することが多い。そのため、キャリア付き金属箔が受ける熱履歴は、積層数が多くなるほど厳しくなる。従って、特に多層プリント配線板への適用を考える上では、所要の熱履歴を経た後にも、金属箔と板状キャリアとの剥離強度が先述した範囲にあることが望ましい。
【0018】
従って、本発明の一実施形態においては、多層プリント配線板の製造過程における加熱条件を想定した、例えば220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属箔と板状キャリアの剥離強度が、10gf/cm以上であることが好ましく、30gf/cm以上であることがより好ましく、50gf/cm以上であることが一層好ましい一方で、200gf/cm以下であることが好ましく、150gf/cm以下であることがより好ましく、80gf/cm以下であることが一層好ましい。
【0019】
220℃での加熱後の剥離強度については、多彩な積層数に対応可能であるという観点から、3時間後および6時間後の両方、または6時間および9時間後の両方において剥離強度が上述した範囲を満たすことが好ましく、3時間、6時間および9時間後の全ての剥離強度が上述した範囲を満たすことが更に好ましい。
【0020】
このように、多層プリント配線板の製造工程における加熱処理後に、金属箔と板状キャリアの剥離強度をこのような範囲とすることによって、当該製造工程における搬送時や加工時に剥離することない一方で、加熱処理後に人手で容易に剥がす、すなわち機械的に剥がすことができる。
【0021】
さらに、本発明のキャリア付銅箔は、あまり多くの加熱加工の工程を経ずに利用される用途、例えばメッシュ加工を施して形成するシールド材などの用途にも用いることが可能である。
【0022】
この観点から、上述した多層プリント配線板の製造過程における加熱処理の前のキャリア付金属箔において、金属箔と板状キャリアとの剥離強度は、10gf/cm以上であることが好ましく、30gf/cm以上であることがより好ましく、50gf/cm以上であることが一層好ましい一方で、200gf/cm以下であることが好ましく、150gf/cm以下であることがより好ましく、80gf/cm以下であることが一層好ましい。金属箔と板状キャリアの剥離強度をこのような範囲とすることによって、搬送時や加工時に剥離することない一方で、人手で容易に剥がすことができる。
【0023】
本発明において、剥離強度はJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定する。
【0024】
以下、このような剥離強度を実現するための各材料の具体的構成要件について説明する。
【0025】
板状キャリアとなる樹脂としては、特に制限はないが、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、松脂等を使用することができるが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。また、プリプレグを使用することもできる。金属箔と貼り合わせ前のプリプレグはBステージの状態にあるものがよい。プリプレグ(Cステージ)の線膨張係数は12〜18(×10
-6/℃)と、基板の構成材料である銅箔の16.5(×10
-6/℃)、またはSUSプレス板の17.3(×10
-6/℃)とほぼ等しいことから、プレス前後の基板サイズが設計時のそれとは異なる現象(スケーリング変化)による回路の位置ずれが発生し難い点で有利である。更に、これらのメリットの相乗効果として多層の極薄コアレス基板の生産も可能になる。ここで使用するプリプレグは、回路基板を構成するプリプレグと同じ物であっても異なる物であってもよい。
【0026】
この板状キャリアは、高いガラス転移温度Tgを有することが加熱後の剥離強度を最適な範囲に維持する観点で好ましく、例えば120〜320℃、好ましくは170〜240℃のガラス転移温度Tgである。なお、ガラス転移温度Tgは、DSC(示差走査熱量測定法)により測定される値とする。
【0027】
また、樹脂の熱膨張率が、金属箔の熱膨張率の+10%、−30%以内であることが望ましい。これによって、金属箔と樹脂との熱膨張差に起因する回路の位置ずれを効果的に防止することができ、不良品発生を減少させ、歩留りを向上させることができる。
【0028】
板状キャリアの厚みは特に制限はなく、リジッドでもフレキシブルでもよいが、厚すぎるとホットプレス中の熱分布に悪影響がでる一方で、薄すぎると撓んでしまいプリント配線板の製造工程を流れなくなることから、通常5μm以上1000μm以下であり、50μm以上900μm以下が好ましく、100μm以上400μm以下がより好ましい。
【0029】
金属箔としては、銅又は銅合金箔が代表的なものであるが、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用することもできる。銅又は銅合金箔の場合、電解箔又は圧延箔を使用することができる。金属箔は、限定的ではないが、プリント回路基板の配線としての使用を考えると、1μm以上、好ましくは5μm以上、および400μm以下、好ましくは120μm以下の厚みを有するのが一般的である。板状キャリアの両面に金属箔を貼り付ける場合、同じ厚みの金属箔を用いても良いし、異なる厚みの金属箔を用いても良い。
【0030】
使用する金属箔には各種の表面処理が施されていてもよい。例えば、耐熱性付与を目的とした金属めっき(Niめっき、Ni−Zn合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−Zn合金めっき、Znめっき、Cu−Ni−Zn合金めっき、Co−Ni合金めっきなど)、防錆性や耐変色性を付与するためのクロメート処理(クロメート処理液中にZn、P、Ni、Mo、Zr、Ti等の合金元素を1種以上含有させる場合を含む)、表面粗度調整のための粗化処理(例:銅電着粒やCu−Ni−Co合金めっき、Cu−Ni−P合金めっき、Cu−Co合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−Co合金めっき、Cu−As合金めっき、Cu−As−W合金めっき等の銅合金めっきによるもの)が挙げられる。粗化処理が金属箔と板状キャリアの剥離強度に影響を与えることはもちろん、クロメート処理も大きな影響を与える。クロメート処理は防錆性や耐変色性の観点から重要であるが、剥離強度を有意に上昇させる傾向が見られるので、剥離強度の調整手段としても意義がある。
【0031】
従来のCCLでは、樹脂と銅箔のピール強度が高いことが望まれるので、例えば、電解銅箔のマット面(M面)を樹脂との接着面とし、粗化処理等の表面処理を施すことによって化学的および物理的アンカー効果による接着力向上が図られている。また、樹脂側においても、金属箔との接着力をアップするために各種バインダーが添加される等している。前述したように、本発明においてはCCLとは異なり、金属箔と樹脂は最終的に剥離する必要があるので、過度に剥離強度が高いのは不利である。
【0032】
そこで、本発明に係るキャリア付金属箔の好ましい一実施形態においては、金属箔と板状キャリアの剥離強度を先述した好ましい範囲に調節するため、貼り合わせ面の表面粗度を、JIS B 0601:2001に準拠して測定した金属箔表面の十点平均粗さ(Rz jis)で表して、3.5μm以下、更に3.0μm以下とすることが好ましい。但し、表面粗度を際限なく小さくするのは手間がかかりコスト上昇の原因となるので、0.1μm以上とするのが好ましく、0.3μm以上とすることがより好ましい。金属箔として電解銅箔を使用する場合、このような表面粗度に調整すれば、光沢面(シャイニー面、S面)及び粗面(マット面、M面)の何れを使用することも可能であるが、S面を用いた方が上記表面粗度への調整が容易である。一方で、前記金属箔の前記キャリアと接しない側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)は、0.4mμ以上10.0μm以下であることが好ましい。
【0033】
また、本発明に係るキャリア付金属箔の好ましい一実施形態においては、金属箔の樹脂との貼り合わせ面に対しては、粗化処理等剥離強度向上のための表面処理は行わない。また、本発明に係るキャリア付金属箔の好ましい一実施形態においては、樹脂中には、金属箔との接着力をアップするためのバインダーは添加されていない。
【0034】
剥離強度の調節は、次式に示すシラン化合物、またはその加水分解生成物質、または該加水分解生成物質の縮合体(以下、単にシラン化合物と記述する)を単独でまたは複数混合して使用してもよい。当該シラン化合物を用いて板状キャリアと金属箔を貼り合わせることで、適度に密着性が低下し、剥離強度を上述した範囲に調節しやすくなるからである。
【0036】
(式中、R
1はアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R
2はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立にハロゲン原子、またはアルコキシ基、またはアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基である。)
【0037】
当該シラン化合物はアルコキシ基を少なくとも一つ有していることが必要である。アルコキシ基が存在せずに、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基のみで置換基が構成される場合、板状キャリアと金属箔表面の密着性が低下し過ぎる傾向がある。また、当該シラン化合物はアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される炭化水素基であるか、一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたこれら何れかの炭化水素基を少なくとも一つ有していることが必要である。当該炭化水素基が存在しない場合、板状キャリアと金属箔表面の密着性が上昇する傾向があるからである。なお、本願発明に係るアルコキシ基には一つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアルコキシ基も含まれるものとする。
【0038】
板状キャリアと金属箔の剥離強度を上述した範囲に調節する上では、当該シラン化合物はアルコキシ基を三つ、上記炭化水素基(一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基を含む)を一つ有していることが好ましい。これを上の式でいえば、R
3及びR
4の両方がアルコキシ基ということになる。
【0039】
アルコキシ基としては、限定的ではないが、メトキシ基、エトキシ基、n−又はiso−プロポキシ基、n−、iso−又はtert−ブトキシ基、n−、iso−又はneo−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキシソキシ基、n−ヘプトキシ基、及びn−オクトキシ基等の直鎖状、分岐状、又は環状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0040】
アルキル基としては、限定的ではないが、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
【0041】
シクロアルキル基としては、限定的ではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
【0042】
アリール基としては、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例:トリル基、キシリル基)、1−又は2−ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられる。
【0043】
これらの炭化水素基は一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されることができる。
【0044】
好ましいシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−又はiso−プロピルトリメトキシシラン、n−、iso−又はtert−ブチルトリメトキシシラン、n−、iso−又はneo−ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン;アルキル置換フェニルトリメトキシシラン(例えば、p−(メチル)フェニルトリメトキシシラン)、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−又はiso−プロピルトリエトキシシラン、n−、iso−又はtert−ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アルキル置換フェニルトリエトキシシラン(例えば、p−(メチル)フェニルトリエトキシシラン)、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリメチルフルオロシラン、ジメチルジブロモシラン、ジフェニルジブロモシラン、これらの加水分解生成物、及びこれらの加水分解生成物の縮合体などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点から、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランが好ましい。
【0045】
キャリア付金属箔は板状キャリアと金属箔をホットプレスで密着させて製造可能である。例えば、金属箔及び/又は板状キャリアの貼り合わせ面に必要に応じて前記シラン化合物を塗工した上で、金属箔の貼り合わせ面に対して、Bステージの樹脂製の板状キャリアをホットプレス積層することで製造可能である。
【0046】
シラン化合物は水溶液の形態で使用することができる。水への溶解性を高めるためにメタノールやエタノールなどのアルコールを添加することもできる。アルコールの添加は特に疎水性の高いシラン化合物を使用するときに有効である。シラン化合物の水溶液は、撹拌することでアルコキシ基の加水分解が促進され、撹拌時間が長いと加水分解生成物の縮合が促進される。一般には、十分な撹拌時間を経て加水分解および縮合が進んだシラン化合物を用いた方が金属箔と板状キャリアの剥離強度は低下する傾向にある。従って、撹拌時間の調整によって剥離強度を調整可能である。限定的ではないが、シラン化合物を水に溶解させた後の撹拌時間としては例えば1〜100時間とすることができ、典型的には1〜30時間とすることができる。当然ながら、撹拌せずに用いる方法もある。
【0047】
シラン化合物の水溶液中のシラン化合物の濃度は高い方が金属箔と板状キャリアの剥離強度は低下する傾向にあり、シラン化合物の濃度調整によって剥離強度を調整可能である。限定的ではないが、シラン化合物の水溶液中の濃度は0.01〜10.0体積%とすることができ、典型的には0.1〜5.0体積%とすることができる。
【0048】
シラン化合物の水溶液のpHは特に制限はなく、酸性側でもアルカリ性側でも利用できる。例えば3.0〜10.0の範囲のpHで使用できる。特段のpH調整が不要であるという観点から中性付近である5.0〜9.0の範囲のpHとするのが好ましく、7.0〜9.0の範囲のpHとするのがより好ましい。
【0049】
キャリア付金属箔を製造するためのホットプレスの条件としては、板状キャリアとしてプリプレグを使用する場合、圧力30〜40kg/cm
2、プリプレグのガラス転移温度よりも高い温度でホットプレスすることが好ましい。
【0050】
なお、金属箔または樹脂の表面をXPS(X線光電子分光装置)、EPMA(電子線マイクロアナライザ)、EDX(エネルギー分散型X線分析)を備えた走査電子顕微鏡等の機器で測定し、Siが検出されれば、金属箔または樹脂の表面にシラン化合物が存在すると推察することができる。
【0051】
さらに、別の観点から、本発明は、上述したキャリア付金属箔の用途を提供する。
第一に、上述したキャリア付金属箔の少なくとも一つの金属箔側に対して、樹脂を積層し、次いで樹脂又は金属箔を1回以上、例えば1〜10回繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法が提供される。
【0052】
第二に、上述したキャリア付金属箔の金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、または本発明のキャリア付金属箔、または金属箔を1回以上、例えば1〜10回繰り返して積層することを含む多層金属張積層板の製造方法が提供される。
【0053】
上記の多層金属張積層板の製造方法においては、前記キャリア付金属箔の板状キャリアと金属箔を剥離して分離する工程を更に含むことができる。
【0054】
さらに、前記板状キャリアと金属箔を剥離して分離した後、金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むことができる。
【0055】
第四に、上述したキャリア付金属箔の金属箔側に樹脂を積層し、次いで樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、または本発明のキャリア付金属箔、または金属箔を1回以上、例えば1〜10回繰り返して積層することを含むビルドアップ基板の製造方法が提供される。
【0056】
第五に、上述したキャリア付金属箔の金属箔側に、ビルドアップ配線層を一層以上積層する工程を含むビルドアップ基板の製造方法が提供される。この際、ビルドアップ配線層はサブトラクティブ法又フルアディティブ法又はセミアディティブ法の少なくとも一つを用いて形成することができる。
【0057】
サブトラクティブ法とは、金属張積層板や配線基板(プリント配線板、プリント回路板を含む)上の金属箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。フルアディティブ法とは、導体層に金属箔を使用せず、無電解めっき又は/および電解めっきにより導体パターンを形成する方法であり、セミアディティブ法は、例えば金属箔からなるシード層上に無電解金属析出と、電解めっき、エッチング、又はその両者を併用して導体パターンを形成した後、不要なシード層をエッチングして除去することで導体パターンを得る方法である。
【0058】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、キャリア付金属箔の金属箔、キャリア付金属箔の板状キャリア、又は樹脂に穴を開け、当該穴の側面および底面に導通めっきをする工程を更に含むことができる。また、前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属箔、片面あるいは両面金属張積層板を構成する金属箔、及びキャリア付金属箔を構成する金属箔の少なくとも一つに配線を形成する工程を1回以上行うことを更に含むこともできる。
【0059】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、配線形成された表面の上に、片面に金属箔を密着させ、更に本発明に係るキャリア付金属箔のキャリア側を積層する工程を更に含むこともできる。また、配線形成された表面の上に、樹脂を積層し、当該樹脂に両面に金属箔を密着させた本発明に係るキャリア付金属箔を積層する工程を更に含むこともできる。
なお、「配線形成された表面」とは、ビルドアップを行う過程で都度現れる表面に配線形成された部分を意味し、ビルドアップ基板としては最終製品のものも、その途中のものも包含する。
【0060】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、前記キャリア付金属箔の板状キャリアと金属箔とを剥離して分離する工程を更に含むこともできる。
【0061】
さらに、上記の板状キャリアと金属箔とを剥離して分離した後、金属箔の一部または全面をエッチングにより除去する工程を更に含むこともできる。
【0062】
なお、上述の多層金属張積層板の製造方法およびビルドアップ基板の製造方法において、各層同士は熱圧着を行うことにより積層させることができる。この熱圧着は、一層一層積層するごとに行ってもよいし、ある程度積層させてからまとめて行ってもよいし、最後に一度にまとめて行ってもよい。
【0063】
以下、上述した用途の具体例として、本発明に係る樹脂板の板状キャリア11cの両面に銅箔を密着させたキャリア付銅箔11を利用したコアレスビルドアップ基板の製法を例示的に説明する。この方法では、キャリア付き銅箔11の両側にビルドアップ層16を必要数積層した後、キャリア付銅箔11から両面の銅箔を剥離する(
図3参照)。
【0064】
例えば、本発明のキャリア付金属箔の金属箔側に、絶縁層としての樹脂、2層回路基板、絶縁層としての樹脂を順に重ね、その上に金属箔側が樹脂板と接触するようにして、更に本発明のキャリア付金属箔の金属箔を順に重ねることでビルドアップ基板を製造することができる。
【0065】
また、別の方法としては、樹脂製の板状キャリア11cの両面または片面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔の少なくともの一つの金属箔側に対して、絶縁層としての樹脂、導体層としての金属箔を順に積層する。次に、必要に応じて金属箔の全面を、ハーフエッチングして厚みを調整する工程を含めてもよい。次に、積層した金属箔の所定位置にレーザー加工を施して金属箔と樹脂を貫通するビアホールを形成し、ビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施した後、ビアホール底部、側面および金属箔の全面または一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行う。金属箔上の無電解めっきまたは電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成おいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと金属箔の密着性が不十分である場合には予め金属箔の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、金属箔および、無電解めっき部、電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。これによりビルドアップ基板が得られる。樹脂、銅箔の積層から回路形成までの工程を複数回繰り返し行ってさらに多層のビルドアップ基板としてもよい。
さらに、このビルドアップ基板の最表面には、本発明の片面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔の金属箔の樹脂側を接触させて積層してもよいし、一旦樹脂板を積層した後に、本発明の両面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔の一方の金属箔を接触させて積層してもよい。
【0066】
ここで、ビルドアップ基板作製に用いる樹脂板としては、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグを好適に用いることができる。
【0067】
また、別の方法としては、本発明の板状キャリアの片面または両面に金属箔、例えば銅箔を貼り合わせて得られる積層体の金属箔の露出表面に、絶縁層としての樹脂例えばプリプレグまたは感光性樹脂を積層する。その後、樹脂の所定位置にビアホールを形成する。樹脂として例えばプリプレグを用いる場合、ビアホールはレーザー加工により行うことができる。レーザー加工の後、このビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施すとよい。また、樹脂として感光性樹脂を用いた場合、フォトリソグラフィ法によりビアホールを形成部の樹脂を除去することができる。次に、ビアホール底部、側面および樹脂の全面または一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行う。樹脂上の無電解めっきまたは電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成おいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと樹脂の密着性が不十分である場合には予め樹脂の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、無電解めっき部または電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。これによりビルドアップ基板が得られる。樹脂の積層から回路形成までの工程を複数回繰り返し行ってさらに多層のビルドアップ基板としてもよい。
さらに、このビルドアップ基板の最表面には、本発明の片面に金属箔を密着させた積層体の樹脂側、または片面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔の樹脂側を接触させて積層してもよいし、一旦樹脂を積層した後に、本発明の両面に金属箔を密着させた積層体の一方の金属箔、または両面に金属箔を密着させたキャリア付金属箔の一方の金属箔を接触させて積層してもよい。
【0068】
このようにして作製されたコアレスビルドアップ基板に対しては、めっき工程及び/又はエッチング工程を経て表面に配線を形成し、更にキャリア樹脂と銅箔の間で、剥離分離させることでビルドアップ配線板が完成する。剥離分離後に金属箔の剥離面に対して、配線を形成してもよいし、金属箔全面をエッチングにより除去してビルドアップ配線板としてもよい。更に、ビルドアップ配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。また、樹脂剥離前のコアレスビルドアップ基板に直接、電子部品を搭載してもプリント回路板を得ることができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明の実施例および比較例として実験例を示すが、これらの実験例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0070】
<実験例1>
複数の電解銅箔(厚さ12μm)を準備し、それぞれの電解銅箔のシャイニー(S)面に対して、下記の条件によるニッケル−亜鉛(Ni−Zn)合金めっき処理およびクロメート(Cr−Znクロメート)処理を施し、貼り合わせ面(ここではS面)の十点平均粗さ(Rz jis:JIS B 0601:2001に準拠して測定)を1.5μmとした後、樹脂として三菱ガス化学株式会社製のプリプレグ(BTレジン)を当該電解銅箔のS面と貼り合わせ、190℃で100分ホットプレス加工を行って、キャリア付銅箔を作製した。
【0071】
(ニッケル−亜鉛合金めっき)
Ni濃度 17g/L(NiSO
4として添加)
Zn濃度 4g/L(ZnSO
4として添加)
pH 3.1
液温 40℃
電流密度 0.1〜10A/dm
2
めっき時間 0.1〜10秒
【0072】
(クロメート処理)
Cr濃度 1.4g/L(CrO
3またはK
2CrO
7として添加)
Zn濃度 0.01〜1.0g/L(ZnSO
4として添加)
Na
2SO
4濃度 10g/L
pH 4.8
液温 55℃
電流密度 0.1〜10A/dm
2
めっき時間 0.1〜10秒
【0073】
いくつかの電解銅箔については、当該S面にシラン化合物の水溶液を、スプレーコーターを用いて塗布してから、100℃の空気中で銅箔表面を乾燥させた後、プリプレグとの貼り合わせを行った。シラン化合物の使用条件について、シラン化合物の種類、シラン化合物を水中に溶解させてから塗布する前までの撹拌時間、水溶液中のシラン化合物の濃度、水溶液中のアルコール濃度、水溶液のpHを表1に示す。
【0074】
また、キャリア付銅箔のうちのいくつかを、当該キャリア付胴箔を対して回路形成などのさらなる加熱処理の際に熱履歴がかかることを想定して、表1に記載の条件(ここでは、220℃で3時間)の熱処理を行った。
【0075】
ホットプレスにより得られたキャリア付銅箔、および更に熱処理を行った後のキャリア付銅箔における、銅箔と板状キャリア(加熱後の樹脂)との剥離強度を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0076】
また、剥離作業性を評価するため、それぞれ単位個数当たりの人手による作業時間(時間/個)を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
<実験例2〜18>
表1に示す銅箔、樹脂(プリプレグ)および一部はシラン化合物を用いて、実験例1と同様の手順で、キャリア付銅箔を作製した。いくつかの実験例では更に表1に示した条件の熱処理を行った。それぞれについて実験例1と同様の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0078】
なお、銅箔の貼り合わせ面の種別、表面処理の条件および表面粗さRz jis、シラン化合物の使用条件、プリプレグの種類、ならびに銅箔とプリプレグとの積層条件は、表1に示したとおりである。
【0079】
銅箔の処理面の表面処理条件において、エポキシシラン(処理)及び粗化処理の具体的な条件は以下である。
【0080】
(エポキシシラン処理)
処理液:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.9体積%水溶液
pH5.0〜9.0
12時間常温で攪拌したもの
処理方法:スプレーコーターを用いて処理液を塗布後、100℃の空気中で5分間処理面を乾燥させる。
【0081】
(粗化処理)
Cu濃度 20g/L(CuSO
4として添加)
H
2SO
4濃度 50〜100g/L
As濃度 0.01〜2.0g/L(亜ヒ酸として添加)
液温 40℃
電流密度 40〜100A/dm
2
めっき時間 0.1〜30秒
【0082】
<実験例19〜20>
表3に示す銅箔、樹脂(プリプレグ)および一部はシラン化合物を用いて、実験例1と同様の手順で、キャリア付銅箔を作製した。更に表3に示した条件の熱処理を行った。こうして得られたキャリア付銅箔について実験例1と同様の評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0083】
なお、銅箔の貼り合わせ面としてS面を用いて、その表面を上述した条件でクロメート処理した。その他、銅箔の表面粗さRz jis、プリプレグの種類、プリプレグの表面処理のためのシラン化合物の使用条件、ならびに銅箔とプリプレグとの積層条件は、表3に示したとおりである。
【0084】
表によれば、シラン化合物は、銅箔の表面にて処理しても、プリプレグの表面に処理しても、その後の積層体の剥離強度、加熱後の剥離強度、剥離作業性において、同等の結果が得られたことがわかる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
【表10】
【0095】
(ビルドアップ配線板)
このようにして作製したキャリア付銅箔の両側に、FR−4プリプレグ(南亜プラスティック社製)、銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、JTC12μm(製品名))を順に重ね、3MPaの圧力で各表に示した加熱条件にてホットプレスを行い、4層銅張積層板を作製した。
【0096】
次に、前記4層銅張積層板表面の銅箔とその下の絶縁層(硬化したプリプレグ)を貫通する直径100μmの孔をレーザー加工機を用いて空けた。続いて、前記孔の底部に露出したキャリア付き銅箔上の銅箔表面と、前記孔の側面、前記4層銅張積層板表面の銅箔上に無電解銅めっき、電気銅めっきにより銅めっきを行い、キャリア付銅箔上の銅箔と、4層銅張積層板表面の銅箔との間に電気的接続を形成した。次に、4層銅張積層板表面の銅箔の一部を塩化第二鉄系のエッチング液を用いてエッチングし、回路を形成した。このようにして、4層ビルドアップ基板を得た。
【0097】
続いて、前記4層ビルドアップ基板において、前記キャリア付銅箔の板状キャリアと銅箔とを剥離して分離することにより、2組の2層ビルドアップ配線板を得た。
【0098】
続いて、前記の2組の2層ビルドアップ配線板上の、板状キャリアと密着していた方の銅箔をエッチングし配線を形成して、2組の2層ビルドアップ配線板を得た。
【0099】
各実験例とも複数の4層ビルドアップ基板を作製し、それぞれについて、ビルドアップ基板製作工程におけるキャリア付銅箔を構成するプリプレグと銅箔との密着具合を目視にて確認したところ、表1、表3において剥離強度および加熱後の剥離強度が「S」および「G」と評価された条件にて作製したキャリア付銅箔を用いたビルドアップ配線板では、ビルドアップに際してキャリア付銅箔の樹脂(板状キャリア)が破壊されずに剥離できた。ただし、「G」と評価された条件については、表1、3でも記されているようにビルドアップに際して剥離操作なしで銅箔が板状キャリアから剥がれるものもあった。
また、「N」と評価された条件については、ビルドアップに際してキャリア付銅箔における銅箔の剥離操作のときに樹脂が破壊されたか、あるいは剥がれず銅箔表面に樹脂が残った。
また、「−」と評価された条件については、ビルドアップに際してキャリア付銅箔における銅箔の剥離操作のときに樹脂が破壊されることなく剥がれたが、中には剥離操作なしで銅箔が剥がれることがあった。