特許第6013498号(P6013498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013498リンパ増殖性悪性疾患の治療のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤としてのN−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド
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  • 特許6013498-リンパ増殖性悪性疾患の治療のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤としてのN−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド 図000054
  • 特許6013498-リンパ増殖性悪性疾患の治療のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤としてのN−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド 図000055
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013498
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】リンパ増殖性悪性疾患の治療のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤としてのN−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20161011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61K31/498
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
【請求項の数】7
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-540068(P2014-540068)
(86)(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公表番号】特表2014-532709(P2014-532709A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】US2012062999
(87)【国際公開番号】WO2013067141
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】61/568,189
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/553,990
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504408797
【氏名又は名称】エクセリクシス, インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】デシリス, アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ラジェ, ジョアン
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/017838(WO,A1)
【文献】 特表2010−523669(JP,A)
【文献】 Curr Oncol Rep,2011年 7月14日,Vol.13,p.398-406
【文献】 A phase I dose-escalation study of XL147 (SAR245408), a PI3K inhibitor administered orally to patients (pts) with advanced malignancies.,J Clin Oncol,2010年,Vol.28,No.15s,suppl; abstr 3004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/498
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ増殖性悪性疾患の治療を必要とするヒト患者においてリンパ増殖性悪性疾患を治療するための医薬であって、有効量の化合物A
または互変異性体、双性イオンもしくはそれらの薬剤的塩を含み、化合物Aまたはその薬剤的に許容可能な塩は継続的に1日1回の投与をされる、医薬
【請求項2】
前記化合物Aまたはその薬剤的に許容可能な塩は、約600mgのカプセル型で継続的に1日1回の投与をされる、請求項1に記載の医薬
【請求項3】
前記化合物Aまたはその薬剤的に許容可能な塩は、約200〜約600mgの錠剤型で継続的に1日1回の投与をされる、請求項1に記載の医薬
【請求項4】
前記化合物Aまたはその薬剤的に許容可能な塩は、約400mgの錠剤型で継続的に1日1回の投与をされる、請求項1に記載の医薬
【請求項5】
前記リンパ増殖性悪性疾患は、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、もしくはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および形質転換リンパ腫である、請求項1〜のいずれかに記載の医薬
【請求項6】
前記リンパ増殖性悪性疾患は、再発性または抵抗性である、請求項1〜のいずれかに記載の医薬
【請求項7】
前記有効量は、腫瘍の縮小、転移の減少、完全寛解、部分寛解、安定性疾患、全奏効率の上昇または組織学的完全奏効からなる群から選択される、少なくとも1つの治療効果を引き起こす、請求項1〜のいずれかに記載の医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月1日に出願の米国仮特許出願第61/553,990号および2011年12月8日に出願の米国仮特許出願第61/568,189号に基づく優先権を主張するものであり、その内容の全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リンパ腫およびリンパ性白血病を含むリンパ増殖性悪性疾患は、米国において1年につき約93,000の新規の症例が発生する一般的な悪性腫瘍である。
【0003】
これらの悪性腫瘍を治療するために開発されている治療法は、成功水準のばらつきに直面している。例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)の30超の亜種の中で、マントル細胞リンパ腫(MCL)は症例の3%〜10%を占める。MCLは診断時または再発時に種々の化学療法レジメンを用いて治療することができる。予後は治療におけるこれらの進歩により改善しているものの、全生存期間中央値は4.8年に留まる。
【0004】
濾胞性リンパ腫(FL)は一般的な緩慢性B細胞NHLであり、新たにリンパ腫と診断された症例の全体の約20%を成し、緩慢性NHL全体の約70%を成す。多くのリンパ腫の様に、FLの発生数は増加しており、毎年24,000例以上の新規の症例が診断されている。放射免疫療法単独または化学療法との併用、ならびに骨髄移植を含むFLに有効な治療法の数は増加している一方で、多くのFL患者は分子逃避機構のために難治性疾患の発症または再発をしている。
【0005】
B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)は、米国において成人の白血病として最も一般的な種類であり、毎年約15,000例の新規症例がある。世界保健機関(WHO)の分類によれば、成熟末梢B細胞腫瘍である小リンパ球性リンパ腫(SLL)とCLLは同一である(すなわち、1つの疾患の異なる病期)。種々の治療の選択肢があるにも関わらず、CLL/進行型SLLは進行性疾患であり、一度症状を示すと患者の全生存期間は18ヶ月から6年の範囲と比較的短く、10年間の生存予想は22.5%である。
【0006】
結果として、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫もしくはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫または形質転換リンパ腫を含む、リンパ増殖性悪性疾患を治療する臨床的に有効な薬剤が継続して必要である。
【発明の概要】
【0007】
従って、1つの様態では、リンパ球増殖性疾患を治療する方法であって、治療効果のある用量の式Ia
の化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を、そのような治療が必要な患者に投与することを含む、リンパ球増殖性疾患を治療する方法を提供し、式中、
50が水素であり;
51がメチルであり;
52が水素であり;
53が水素またはアルコキシであり;ならびに
54が水素、アルキル、アルコキシ、またはハロであり;またはR53およびR54が、それらが結合している炭素と共に、6員環ヘテロアリールを形成し;ならびに
がハロまたはメチルであり;ならびに
3aが−N(R)C(O)−C−C−アルキレン−N(R7a)(R7b)であって、Rが水素であり、R7aおよびR7bが独立して水素、アルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキル;である。
【0008】
別の実施形態では、方法は、患者に有効量の化合物A:
または互変異性体、双性イオンもしくはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0009】
別の実施形態では、化合物Aは医薬組成物として投与される。
【0010】
その他の目的、特徴および利点を以下の詳細な説明で明らかにする。詳細な説明および具体例は、この詳細な説明から当業者に本発明の趣旨および範囲内での種々の変更および修正が明らかとなるため、例示のみを目的としてなされる。さらに、実施例は本発明の原則を示し、この発明の出願を、先行技術の当該業者にとって明らかに有用である全ての実施例に対して、具体的に例示することは期待し得ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】化合物Aについて観測した血漿薬物動態を示す。
図2】リンパ腫に罹患した患者における臨床試験の結果を概説する。
【0012】
略語および定義
以下の略語および用語は本明細書において次の意味で使用される:
【0013】
記号「−」は単結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、「≡」は三重結合を意味し、
は単結合または二重結合を意味する。記号
は二重結合上の基が、記号が付された二重結合のいずれかの末端を占めることを指し;すなわち、二重結合の幾何学配置E−またはZ−が、曖昧ということである。元の式から基が除かれて示される場合、記号
は、基を元の構造式から分離するために、理論上切断された結合の末端で使用される。
【0014】
化学構造が示されるまたは説明される場合、別途明確に言及されない限り、全ての炭素は水素置換したと見なされ、4価の原子価と合致する。例えば、下記の図における左側の構造体には、9個の水素が黙示してある。9個の水素は右側の構造体に示す。構造体中の特定の原子は、例えば−CHCH−のように、1つの水素または複数の水素(明確に定義された水素)を置換として有しているとして、時折文中の式で説明されることがある。前述の描写的手法が化学技術において、さもなければ複雑な構造体の説明を簡潔かつ簡単にするために一般的であることは、当業者によって理解されよう。
【0015】
「R」基が、例えば式:
のように、環構造上で「浮遊して」いるように示される場合、別途定義されない限り、置換基「R」は環構造のいかなる原子にも存在し得、安定構造体が形成される限り、環原子の1つからの、示される、黙示される、または明確に定義される水素の置換と見なされる。
【0016】
「R」基が、例えばこれらの式:
のように、縮合環構造上に浮遊していると示される場合、他に限定されない限り、置換基「R」は縮合環構造のいかなる原子にも存在し得、安定構造体が形成される限り、環原子の1つからの、示される水素(例えば上記の式における−NH−)、黙示される水素(例えば上記の式における様に、水素は示されていないが、存在すると理解される)、または明確に定義される水素(例えば上記の式において、=CH−は「Z」と同等である)の置換と考えられる。示されている例において、縮合環構造の5員または6員環上のいずれにも「R」基は存在し得る。上記の式において、例えばyが2の場合、2つの「R’」は環構造のいずれの2つの原子上にも存在し得、この場合も、それぞれが、環上の、示される、黙示される、または明確に定義される水素を、置換すると見なされる。
【0017】
「R」基が、例えば以下の式:
のように、飽和炭素を含む環構造上に存在していると示された場合(この例において、「y」は1超であり得、それぞれが、環上の、目下示されている、黙示されている、または明確に定義されている水素を置換すると見なされる);他に限定されない限り、2つの「R’」は同一の炭素上に存在し得、得られた構造体は安定している。簡単な例は、Rがメチル基である場合であり;そこには、示されている環の炭素(「環状」炭素)上において、一対の原子が同一の原子に結合したジメチルが存在し得る。別の実施例において、その炭素を含む同一炭素上の2つのR’、は環を形成し得、従って例として式の様に描かれる環を伴うスピロ環(「スピロ環状」基)構造体を生成し得る:
【0018】
本発明の化合物に関して、「投与」およびその異形(例えば、化合物を「投与すること」)は、化合物または化合物のプロドラッグを、治療を必要とする動物の器官に導入することを意味する。本発明の化合物またはそのプロドラッグが1つ以上の他の活性薬剤と併用して与えられた場合、「投与」およびその異形は化合物またはそのプロドラッグおよび他の薬剤の同時および逐次導入を含むと、それぞれ理解される。
【0019】
「アルコキシ」は、Rが本明細書で定義されるアルキル基である−OR基を意味する。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、および同類のものが挙げられる。
【0020】
「アルキル」は、1〜6の炭素原子の一価の直鎖飽和炭化水素基または3〜6の炭素原子の一価の分枝鎖飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル(全ての異性体を含む)、またはペンチル(全ての異性体を含む)、ならびに同類のものが挙げられる。
【0021】
「アルキルアミノ」は、Rが本明細書で定義されるアルキルである−NHR基を意味する。
【0022】
「アルキルアミノアルキル」は、1つまたは2つのアルキルアミノ基と置換される、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。
【0023】
「アミノ」は、−NHを意味する。
【0024】
「アミノアルキル」は、少なくとも1つ、具体的には1つ、2つまたは3つのアミノ基と置換される、アルキル基を意味する。
【0025】
「アリール」は、一価の6〜14員、単環または二重環状炭素を意味し、単環式環は芳香族であり、また二環式環の少なくとも1つの環は芳香族である。他に言及されない限り、原子価規則が許容すれば、基の原子価は遊離基内のあらゆる環のあらゆる原子上に位置し得る。代表的な例として、フェニル、ナフチル、およびインダニル、ならびに同類のものが挙げられる。
【0026】
「ジアルキルアミノ」は、RおよびR’が本明細書で定義されるアルキルである、−NRR’遊離基、またはN−オキシド誘導体、またはその保護誘導体を意味し、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N,N−メチルプロピルアミノまたはN,N−メチルエチルアミノ、および同類のものが挙げられる。
【0027】
「ジアルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義される1つまたは2つのジアルキルアミノ基と置換される、アルキル基を意味する。
【0028】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0029】
「ハロアルコキシ」は、R’が本明細書で定義されるハロアルキルである−OR’基を意味し、例えば、トリフルオロメトキシまたは2,2,2−トリフルオロエトキシ、および同類のものが挙げられる。
【0030】
「ヘテロアリール」は、5〜14の環原子であって、1つ以上、具体的に1つ、2つ、3つまたは4つの、−O−、−S(O)−(nは0、1、または2)、−N−、−N(R)−から独立して選択されたヘテロ環原子を含み、残りの環原子は炭素である、環原子の、一価の単環式、縮合二環式、または縮合三環式遊離基を意味し、環は、単環式遊離基が芳香族を含み、また二環式または三環式遊離基を含む縮合環のうちの少なくとも1つが芳香族である。二環式または三環式遊離基を含む、あらゆる非芳香族環の1つまたは2つの炭素環原子は、−C(O)−、−C(S)−、または−C(=NH)−基と換えられ得る。Rは水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、またはアルキルスルホニルである。縮合二環式遊離基は架橋環構造を含む。他に言及されない限り、原子価規則が許容すれば、原子価はヘテロアリール基のあらゆる環のあらゆる原子上に存在し得る。原子価の点が窒素に位置する場合、Rは欠如している。より具体的には、用語ヘテロアリールは、これに限定されないが、1,2,4−トリアゾリル、1,3,5−トリアゾリル、フタルイミジル、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、インドリル、2,3ジヒドロ−1H−インドリル(例えば、2,3ジヒドロ−1H−インドール−2−イルまたは2,3ジヒドロ−1H−インドール−5−イル、および同類のものを含む)、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾジオキソール−4−イル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インドリジニル、ナフチリジン−3−イル、フタラジン−3−イル、フタラジン−4−イル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、テトラゾイル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル(例えば、テトラヒドロイソキノリン−4−イルまたはテトラヒドロイソキノリン−6−イル、および同類のものを含む)、ピロロ[3,2−c]ピリジニル(例えば、ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−イルまたはピロロ[3,2−c]ピリジン−7−イル、および同類のものを含む)、ベンゾピラニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、およびそれらの誘導体、またはN−オキシドまたはその保護誘導体を含む。
【0031】
「ヘテロ原子」は、O、S、N、またはPを指す。
【0032】
「随意の」または「随意に」は、次に記載される現象または状況が生じ得るまたは生じ得ないことならびに、当該現象または状況が生じる実例および当該現象または状況が生じない実例を含む記述を意味する。当業者は、1つ以上の随意の置換基を含むと記載されるあらゆる分子に関して、立体的に実用的なおよび/または合成的に利用可能な化合物のみを含むことが意図されることを理解するであろう。「随意に置換された」は、用語における全ての続きの変更を言う。すなわち例えば、用語「随意に置換されたアリールCアルキル」において、随意の置換は、置換され得る、または置換され得ない分子の「Cアルキル」部分および「アリール」部分の両方に生じ得る。典型的な随意の置換の一覧は下記の「置換された」の定義において示される。
【0033】
「医薬組成物」は、1)化合物が随意の薬剤的に許容可能な塩として、さらに随意の水和物として、さらに随意のその溶媒化合物としての、式Iの化合物またはその単一異性体;および2)薬剤的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤を含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、式Iの化合物および式Iaの化合物である「化合物A」は、以下の構造体を有する。
化合物Aは、化学名N−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミドとして知られる。後ほどより詳細に考察する様に、複数の互変異性型または双性イオン性型で化合物は存在しうる。従って、本明細書において使用する場合、用語「化合物A」および「N−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド」は、化合物の全ての可能な互変異性型および双性イオン性型化合物を包括する。
【0035】
本明細書に記載される反応のそれぞれに対する「収量」は、理論収量の割合で表される。
【0036】
本発明の目的における「患者」は、ヒトおよび他の動物、特にほ乳類、ならびに他の生物を含む。従って方法は、ヒト治療および獣医学的応用の両方に適用することができる。好適な実施形態において、患者はほ乳類であり、最も好適な実施形態において、患者はヒトである。
【0037】
用語「有効量」または「薬剤的有効量」または「治療的有効量」は、所望の生物学的、治療的、および/または予防的結果を得るために十分な量の薬剤を指す。その結果は、疾患の兆候、症状、または原因の1つ以上の減少、回復、寛解、軽減、遅延、および/もしくは緩和、または生命システムのその他のあらゆる所望の変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍の縮小を引き起こすため、および/または腫瘍の増殖率を低下(腫瘍増殖の抑制など)させるため、またはその他の望まれない細胞増殖を予防または遅延させるために、十分な量を含む。いくつかの実施形態において、有効量は発生を遅延させるために十分な量を含む。いくつかの実施形態において、有効量は再発を予防または遅延させるために十分な量を含む。有効量は1回以上の投与によって投薬される。薬剤または組成物の有効量は:(i)がん細胞の数を減少し得;(ii)腫瘍の大きさを縮小し得;(iii)がん細胞が抹消器官に浸潤することを抑制し得、遅延し得、ある程度遅らせ得、好ましくは阻止し得;(iv)腫瘍転移を抑制し得(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは阻止する);(v)腫瘍増殖を抑制し得;(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発を予防または遅延し得;ならびに/または(vii)がんに関係した1つ以上の症状を、ある程度軽減し得る。1つの実施例において、「有効量」は、リンパ増殖性悪性疾患の進行の大幅な減少または遅延への効果が臨床的に証明された、化合物Aまたはその薬剤的に許容可能な塩の量である。
【0038】
化合物の「薬剤的に許容可能な塩」は、薬剤的に許容可能な塩を意味し、元の化合物の望ましい薬理活性を有する。薬剤的に許容可能な塩は非毒性であることが理解される。適当な薬剤的に許容可能な塩についてのさらなる情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985、または参照により本明細書にその両方が組み込まれる、S. M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977;66:1-19でみることができる。
【0039】
薬剤的に許容可能な酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、および同類のものなど;ならびに有機酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、p−トルエンスルホン酸、およびサリチル酸ならびに同類のものなどによって生成されたものを含む。
【0040】
薬剤的に許容可能な塩基添加塩の例は、元の化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩および同様のもので換えられる際に生成されるものが挙げられる。好ましい塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩である。薬剤的に許容可能な有機非毒性塩基由来の塩は、これらに限定されないが、第1級、第2級、および第3級アミン類の塩、天然の置換アミンを含む置換アミン類、環状アミン類および塩基イオン交換樹脂を含む。有機塩基の例は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ポリアミン樹脂、および同類のものが挙げられる。典型的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
【0041】
「プロドラッグ」は、生体内において、例えば血中の加水分解によって転換(一般的には迅速に)されて上記式の親化合物を産生する化合物を指す。通常の例は、これらに限定されないが、カルボン酸部分を有する活性型を持つ、化合物のエステルおよびアミド形態が挙げられる。本発明の化合物の薬剤的に許容可能なエステル類の例は、これに限定されないが、アルキル基が直鎖または分岐鎖である、アルキルエステル類(例えば、約1〜約6個の炭素を有する)が挙げられる。許容可能なエステル類はまた、シクロアルキルエステル類およびアリールアルキルエステル類、例えば、これに限定されないが、ベンジルなども含む。この発明の化合物の薬剤的に許容可能なアミド類の例は、これらに限定されないが、第1級アミド、ならびに第2級および第3級アルキルアミド類(例えば、約1〜約6個の炭素を有する)が挙げられる。本発明の化合物のアミド類およびエステル類は、従来の方法によって調整され得る。プロドラッグについて、あらゆる目的のためにその両方が参照により本明細書に組み込まれる、T. Higuchi and V. Stella, “Pro-drugs as Novel Delivery Systems,” Vol 14 of the A.C.S. Symposium Series、およびBioreversibleCarriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987において、深く考察がなされている。
【0042】
「代謝産物」は、動物体または人体において代謝または生体内変換によって生成された化合物もしくはその塩の分解または最終産物を指し、例えば、酸化、還元、もしくは加水分解による、より極性の大きな分子への、または複合体への生体内変換(生体内変換の考察に関する、Goodman and Gilman, "The Pharmacological Basis of Therapeutics" 8.sup.th Ed., Pergamon Press, Gilman et al. (eds), 1990を参照のこと)が挙げられる。本明細書で使用する場合、本発明の化合物の代謝産物またはその塩は、体内の化合物の生物学的活性型であり得る。1つの実施例において、プロドラッグは、生物学的活性型である代謝産物がin vivoで放出される様に使用されうる。別の実施例において、生物学的活性代謝物が偶然にも発見され、すなわち、プロドラッグデザインそれ自体が行われなかった。本開示に照らして、本発明の化合物代謝産物の活性に関するアッセイは、当業者に既知である。
【0043】
他に示されない限り、疾患、障害、または症候群を「治療すること」または「治療」は、本明細書で使用する場合、疾患、障害、または症候群を抑制すること、すなわち、その発生を阻止することを意味し;ならびに疾患、障害、または症候群を軽減すること、すなわち、疾患、障害、または症候群の後退を引き起こすことを意味する。当該技術分野において既知の通り、治療の際に、全身的対局所的輸送、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与期間、薬物相互作用および状態の重症度に合わせて調整が必要であり得、当業者による日常実験で確認することができるであろう。
【0044】
「予防」は、疾患、障害、または症候群のヒトにおける発生を防止すること、すなわち、疾患、障害、または症候群に暴露されうるまたは罹患し易いが、疾患、障害、または症候群の症状をまだ経験または示していない動物において、疾患、障害、または症候群の臨床症状の発生させないことを意味する。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「約」は通常、値の10%、5%、または1%を超えない、起こりうる変動を示す。例えば、「約25mg/kg」は通常、最も広い意味で、22.5〜27.5mg/kgの値、すなわち、25±10mg/kgを示す。
【0046】
実施形態
以下の段落で、本発明の実施に使用され得るいくつかの実施形態を提示する。いずれの例においても、実施形態は記載した化合物ならびに個々の異性体および異性体の混合物の両方を含む。加えて、いずれの例においても、実施形態は薬剤的に許容可能な塩、水和物、および/または記載した化合物の溶媒化合物ならびにあらゆる個々の異性体またはその異性体の混合物を含む。
【0047】
1つの実施形態において、方法が、リンパ増殖性悪性疾患の治療のために提供され、これは、患者に有効量の式Iの化合物または式Iaの化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。これらおよび他の実施形態において、リンパ増殖性悪性疾患は慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫または形質転換リンパ腫を含む。
【0048】
下記の代表的化合物を含む、あらゆる以下の実施形態は、本明細書に開示されるあらゆる方法の実施に使用され得る。
【0049】
式Iaにおける化合物
本発明は式Iの化合物を用いた乳がん治療の方法を提供し、式Ia:
の化合物またはその薬剤的に許容可能な塩である。
【0050】
式Iaの化合物の1つの実施形態において、R51はメチル;ならびにR50、R52、およびR53は水素ならびにR54はハロもしくはアルコキシ、またはR50、R52、およびR54は水素ならびにR53はアルコキシ;または単一立体異性体またはその立体異性体の混合物である。
【0051】
別の実施形態では、R3aは−NHC(O)CHNH(CH)、−NHC(O)CH(CH)NH、−NHC(O)C(CHNH、−NHC(O)−CH1N(CH、−NHC(O)CHN(CH)CHCHN(CH、−NHC(O)CH(NH)CHCH、−NHC(O)CHN(CH)CHCHN(CH、または−NHC(O)CH(CH)NH(CH)である。
【0052】
別の実施形態において、式Iaの化合物は:
またはその薬剤的に許容可能な塩である。
【0053】
別の実施形態において、式Iaの化合物は化合物A:
もしくは互変異性体、双性イオンまたはその薬剤的に許容可能な塩である。
【0054】
更なる実施形態
1つの実施形態において、本発明は、リンパ増殖性悪性疾患を治療する方法であって、有効量の化合物Aをその様な治療が必要な患者に投与することを含む、リンパ増殖性悪性疾患を治療する方法を提供する。
【0055】
別の実施形態では、化合物Aを100、150、または200mgのカプセルとして投与する。
通常の投与
【0056】
1つの様態において、本発明は式IaのPI3Kの阻害剤および薬剤的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。特定のその他の具体的な実施形態において、投与は経口経路によって行われる。式Iaの化合物またはそれらの薬剤的に許容可能な塩の投与は、その物質のみまたは適当な医薬組成物で行われ、投与のあらゆる一般的な方法または同様の役割を務める薬剤によって実施され得る。従って、式Iaの化合物は同一のまたは別々の賦形剤で投与され得る。投与は、例えば、経口で、経鼻で、非経口(静脈、筋肉内、または皮下)で、局所的に、経皮的に、膣内に、膀胱内に、大槽内に、または直腸に、固形で、半固形で、凍結乾燥粉末で、または液体剤形で、例えば、錠剤、座剤、丸剤、軟弾性カプセルおよび硬ゼラチンカプセル、散剤、液剤、懸濁剤、またはエアロゾル、ならびに同類のものなど、具体的には適切な用量の単一投与に適した単位剤形によって、実施され得る。
【0057】
組成物は、従来の医薬担体または賦形剤および、その/1つの活性薬剤としての式Iaの化合物を含むであろう。
【0058】
補助剤は、保持、湿潤、懸濁、甘味、矯味矯臭、着香、乳化、および調剤用の薬剤を含む。微生物の活動の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、および同類のものによって保証されうる。また、当張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム、および同類のものを含む方が望ましい。注射用医薬品形態の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの使用により、もたらされ得る。
【0059】
必要に応じて、本発明の医薬組成物はまた少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤、および同類のものなど、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエン、などを含み得る。
【0060】
製剤の選択は種々の要因、例えば薬剤投与の方法(例えば、経口投与の場合、錠剤、丸剤またはカプセルの形態による処方)および原体の生物学的利用能に依拠する。近年、製剤処方は特に乏しい生物学的利用能を示す薬剤に関して発展してきており、これは、薬剤は、表面積を増加させること、すなわち粒径を縮小させることによって強化することができるという原理に基づいている。例えば、米国特許第4,107,288号には、活物質が高分子の架橋マトリックスに支持される、粒径範囲10〜1,000nmの粒子を有する医薬製剤が記載されている。米国特許第5,145,684号には、原体が表面改質剤の存在下でナノ粒子(平均粒径400nm)まで粉砕され、その後栄基体培地に放散されて非常に高い生物学的利用能を示す医薬製剤を得た、医薬製剤の生成が記載されている。
【0061】
非経口注射に適当な組成は、生理的に許容可能な無菌水または非水溶液、分散剤、懸濁または乳剤、ならびに無菌注射剤または分散剤に再構成するための無菌粉末を含み得る。水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤の適当な例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、および同類のもの)、それらの適当な混合物、植物油(例えばオリーブ油など)および、例えばオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル類が挙げられる。適した流動性は、例えば、レシチンなどによるコーティングを用いて、分散剤の場合は所望の粒径を維持することによって、および界面活性剤を用いて、維持し得る。
【0062】
特定の投与経路の1つは経口であり、治療する病態の重症度に合わせられ得る簡便な毎日の投与計画を用いる。
【0063】
経口投与のための固形の剤形は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。その様な固形の剤形において、活性化合物は少なくとも1つの不活性常用賦形剤(または担体)と混合され、不活性常用賦形剤は例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸ジカルシウムなど、または(a)充填剤もしくは増量剤、例としてデンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸、(b)結合剤、例としてセルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖,およびアカシアゴム、(c)湿潤剤、例としてグリセロール、(d)崩壊剤、例として寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、ケイ酸複合体、および炭酸ナトリウム、(e)溶液凝固遅延剤、例としてパラフィン、(f)吸収促進剤、例として4級アンモニウム化合物、(g)浸潤剤、例としてセチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムおよび同類のもの、(h)吸着剤、例としてカオリンおよびベントナイト、ならびに(i)潤滑剤、例として滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物である。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0064】
上記のような固形の剤形は、例えば腸溶コーティングおよびその他の当該技術分野で周知のような、コーティングおよびシェルを用いて調製され得る。これらは鎮静剤を含み得、また遅効性の様式により、腸管の特定の部位において活性化合物または化合物を放出するような組成物となり得る。使用できる包理した組成物の例は、高分子物質およびワックスである。適切であれば、活性化合物はまた1つ以上の上記の賦形剤と共に、マイクロカプセル化形態をとり得る。
【0065】
経口投与のための液状剤形は、薬剤的に許容可能な乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。その様な剤形は、例えば、本発明の化合物(複数可)またはその薬剤的に許容可能な塩、ならびに担体の随意の補助薬、例えば、水、生理食塩水、水性ブドウ糖、グリセロール、エタノールおよび同類のもの;可溶化剤および乳化剤、例としてエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド;油剤、特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル類;またはこれらの物質の混合物、ならびに同類のものを溶解、分散するなどによって調製され、それによって溶剤または懸濁剤を生成する。
【0066】
活性化合物に加えて懸濁剤は、懸濁化剤を含み得、懸濁化剤は例えば、エトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物、および同類のものである。
【0067】
直腸投与のための組成物は、本発明の化合物を、例えば、常温では固体だが体温では液体であり、そのため適当な体腔内で融解し、中の有効成分を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは座剤型ワックスなどの適当な非刺激性の賦形剤または担体と混合することで調整され得る座剤である。
【0068】
この発明の化合物の局所投与のための剤形は、軟膏、散剤、噴霧剤、および吸入剤を含む。有効成分は、生理的に許容可能な担体およびあらゆる保存剤、緩衝剤、または噴射剤と、必要に応じて無菌状態下で混合される。眼科用製剤、眼軟膏、散剤、および溶剤もまたこの発明の範囲内であると企図される。
【0069】
圧縮ガスはエアロゾル形態でこの発明の化合物を分散するために使用され得る。この目的に適当な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素などである。
【0070】
一般的に、意図された投与方法によって、薬剤的に許容可能な組成物は約1重量%〜約99重量%の本発明の化合物(複数可)またはその薬剤的に許容可能な塩、および99重量%〜1重量%の適当な薬学的賦形剤を含有するであろう。1つの実施形態において、組成物は約5重量%〜約75重量%の本発明の化合物(複数可)またはその薬剤的に許容可能な塩となり、残りは適当な薬剤的賦形剤となるであろう。
【0071】
その様な剤形を調製する実際の方法は、当業者に既知である、または明らかとなる;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.,(Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)を参照のこと。投与される組成物は、いずれにせよ、この発明の教示に応じた病態の治療のために、有効量の本発明の化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を含有する。
【0072】
本明細書において開示される医薬組成物において、式IもしくはIaの化合物、またはそれらの薬剤的に許容可能な塩もしくは溶媒化合物は、種々の要因に応じて変化する有効量で投与され、要因は、使用した特定の化合物の活性、代謝的安定性および化合物の作用の長さ、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与期間と方法、排泄率、薬剤の併用、特定の病態の重病度および治療を受けるホストを含む。式IまたはIaの化合物は、1日あたり約0.1〜約1,000mgの範囲、または1日あたり50〜400mgの範囲、1日あたり100mg〜800mg、または1日あたり100mg〜350mgの範囲、または1日あたり200〜700mgの範囲、または1日あたり150mg〜400mgの範囲、または1日あたり300〜600mgの範囲の投与量レベルで患者に投与され得る。
【0073】
体重が約70キログラムである正常なヒト成体において、投与量の例は体重1キログラムにつき1日あたり約0.01〜約100mgの範囲である。使用される特定の用量は、しかしながら、変化し得る。例えば、用量は患者の要件、治療される状態の重症度、および使用される化合物の薬理活性を含むいくつかの要因に依拠し得る。特定の患者に対する最適用量の決定は、当業者に既知である。一定用量として処方する場合、その様な併用製品は、上記の用量域内の本発明の化合物、および適切な用量域内のその他の薬剤的活性薬剤(複数可)を使用する。式Iaの化合物は、複合製剤が不適切な場合、代替として公知の薬剤的に許容可能な薬剤(複数可)と共に連続的に使用され得る。
【0074】
体重が約70キログラムである正常なヒト成体において、投与量の例は体重1キログラムにつき1日あたり約0.01〜約100mgの範囲である。子供に使用される特定の用量は、一般的に子供の小さなサイズと体重のために低くなり、付加的要因ならびにサイズおよび体重の要因によって、用量は調節し得る。例えば、用量は子供の要件、治療される状態の重症度、および使用される化合物の薬理活性を含む付加的要因に依拠し得る。特定の子供に対する最適用量の決定は、当業者に既知である。一定用量として処方する場合、その様な併用製品は、上記の用量域内のこの発明の化合物、および適切な用量域内のその他の薬剤的活性薬剤(複数可)を使用する。式Ia化合物は、複合製剤が不適切な場合、代替として公知の薬剤的に許容可能な薬剤(複数可)と共に連続的に使用され得る。
【0075】
一般的な合成
式Iの化合物の合成
これらの化合物の調製に使用する出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Co.(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、またはBache(カリフォルニア州トーランス)などの商業的な供給者のいずれからも入手可能であり、または当業者に既知である以下の手法、例えば、Fisher and Fisher’s Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991);Rod’s Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplemental (Elsevier Science Publishers, 1989);Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991)、March’s Advanced Organic Chemistry, (John Wiley and Sons, 4thEdition)およびLarch’s Comprehensive Organic Transformations (VICHY Publishers Inc., 1989)などの参照において記載される方法で、調製される。これらのスキームは、この発明の化合物が合成され得るいくつかの方法の単なる例示に過ぎず、これらのスキームに対する種々の変更がなされ得、またこの開示を参照する当業者に対して示唆されるであろう。反応の出発物質および中間体は、これに限定されないが、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーおよび同類のものを含む従来の技術を用いて、必要であれば単離され、生成され得る。このような材料は、物理定数およびスペクトルデータを含む従来の手段を用いて特徴付けられ得る。
【0076】
特に記載されない限り、本明細書に記載の反応は、大気圧および約−78co〜約150coの温度範囲で、別の実施形態では約0co〜約125coで、最も具体的には大体室温(または外気温)、例えば約20coで発生する。特に言及されない限り(水素付加の場合の様に)、全ての反応は窒素雰囲気下で実施される。
【0077】
プロドラッグは、当業者に既知の技術で調製され得る。これらの技術は一般的に所与の化合物の適当な官能基を修飾する。これらの修飾された官能基は、通常の操作またはin vivoによって元の官能基を再生する。本発明の化合物のアミド類およびエステル類は、従来の方法に従って調製され得る。プロドラッグの詳細な考察は、全ての目的のためにその両方が参照により本明細書に組み込まれる、T. Higuchi and V. Stella, “Pro-drugs as Novel Delivery Systems,” Vol 14 of the A.C.S. Symposium Series、およびBioreversibleCarriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に示されている。
【0078】
本発明の化合物またはその薬剤的に許容可能な塩は、不斉性炭素原子または4級化窒素原子をその構造体中に有し得る。本明細書に記載の合成により調整し得る式Iの化合物は単一の立体異性体、ラセミ化合物として、ならびにエナンチオマーおよびジアステレオマーの混合物として存在し得る。化合物はまた、幾何異性体としても存在し得る。全てのその様な単一の立体異性体、ラセミ化合物およびその混合物、および幾何異性体はこの発明の範囲内にあることが意図される。
【0079】
いくつかの本発明の化合物は、互変異性体として存在し得る。例えば、ケトンまたはアルデヒドが存在する場合、分子はエノール形で存在し得る;アミドが存在する場合、分子はイミド酸として存在し得る;そしてエナミンが存在する場合、分子はイミンとして存在し得る。全てのその様な互変異性体は本発明の範囲内であり、1つの構造体が化合物を示すために用いられる程度まで、全てのその様な互変異性型を含む。
【0080】
従って、式I
の化合物は、互変異性体として存在し得る。特に、式Iの化合物またはBにおける環Bは2−ヒドロキシ−ピリジニルであり得、またその構造体:
としても記載される。
2−ヒドロキシ−ピリジニルおよび上記の構造体14のどちらも、ピリジン−2(1H)−オンまたはその構造体15:
を含み、これらと同等である。
いずれの構造体またはいずれの用語が用いられるかに関わらず、それぞれの互変異性体は本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
例えば、化合物Aの1つの互変異性体は化合物A−1である:
【0082】
化合物Aの別の互変異性体は化合物A−2である:
化合物A−2の名前はN−(3−{[(2Z)−3−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−2(1H)−イリデン]スルファモイル}フェニル)−2−メチルアラニンアミドである。
【0083】
当業者によって理解される様に、互変異性型は相互変換し得る。
【0084】
その上、式Iの化合物ならびに式Iの化合物それ自体となる中間体は、B環上の置換基および反応条件に応じて、非荷電性もしくは双性イオン分子、またはナトリウムもしくはカリウムなどのカチオン性塩として回収され得る。全てのその様な双性イオン形態は本発明の範囲内であり、1つの構造体が双性イオン化合物を示すために使用される程度まで、全てのその様な双性イオン形態を含む。
【0085】
例えば、化合物Aの1つの双性イオン形態は化合物A−3である。
【0086】
化合物Aの別の双性イオンの記述は化合物A−4である。
【0087】
化合物Aの別の双性イオンの記述は化合物A−5である。
【0088】
当業者によって理解される様に、互変異性型は相互変換し得る。
【0089】
その上、相互変換は非荷電性互変異性型および双性イオン形態の間にもまた存在し得る。
【0090】
いずれの構造体またはいずれの用語が用いられるかに関わらず、それぞれの互変異性体または双性イオンは本発明の範囲内に含まれる。従って、本明細書で使用する場合、構造体
および関連用語「化合物A」および「N−(3−{[(3−{[2−クロロ−5−(メトキシ)フェニル]アミノ}キノキサリン−2−イル)アミノ]スルホニル}フェニル)−2−メチルアラニンアミド」は、化合物の全ての可能な互変異性型および双性イオン形態を包含する。
【0091】
本発明はまた、N−オキシド誘導体および式Iの化合物の保護誘導体も含む。例えば、式Iの化合物が易酸化性窒素原子を含有する場合、窒素原子は当業者に既知の方法によってN−オキシドに変換され得る。式Iの化合物がヒドロキシ、カルボキシ、チオールまたは窒素原子(複数可)を含むあらゆる基などの基を含む場合、これらの基は適当な「保護基」(protecting group)または「保護基」(protective group)によって保護され得る。適当な保護基の総覧は、その開示が全体の参照により本明細書に組み込まれる、T.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. 1991において見ることができる。式Iの化合物の保護誘導体は当業者に既知の方法で調製され得る。
【0092】
立体異性体のラセミ混合物または非ラセミ混合物から単一の立体異性体の調製および/または分離ならびに単離をする方法は、当業者に既知である。例えば、光学活性の(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製し得、または従来の技術を用いて分離し得る。エナンチオマー(R−およびS−異性体)は当業者に既知の方法で分離し得、例えば:例えば結晶化により分離され得るジアステレオマー塩または複合体の形成によって;例えば結晶化、1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異試薬の選択的な反応、例えば酵素的酸化もしくは還元、及びその後の修飾および非修飾エナンチオマーの分離によって分離され得るジアステレオマー誘導体の形成を介して;または例えばキラル担体上において結合したキラルリガンドを有するシリカもしくはキラル溶媒の存在下における、キラルな環境でのガス液体もしくは液体クロマトグラフィーなどによって、分離し得る。所望のエナンチオマーが上記の分離法の1つによって別の化学成分に変換される場合、さらなる工程が所望のエナンチオマー形態を遊離させるために必要であり得ることが理解されよう。代わりに、特定のエナンチオマーが光学活性の試薬、基質、触媒または溶媒を用いる不斉合成によって、または不斉転換によりエナンチオマーを他のエナンチオマーに変換することによって、合成されうる。特定のエナンチオマー中に濃縮されるエナンチオマーの混合物の場合、主要成分のエナンチオマーは再結晶によってさらに濃縮され得る(収量に付随する損失を伴う)。
【0093】
加えて、本発明の化合物は非溶媒和形態ならびに水、エタノール、および同類のものなどの薬剤的に許容可能な溶媒を有する溶媒和形態中に存在し得る。一般的に、溶媒和形態は本発明の目的のための非溶媒化合物と同等であると考えられる。
【0094】
以下の実施例において、特に規定されない限り、化合物の最終形態は他の方法で規定される分析法の非存在下において、非荷電性分子であると見なされた。式Iの化合物は、当業者に既知の方法を用いて調製され得るか、または以下のスキーム1に示されるような式1の化合物から出発され得る。式Iの化合物は、KCOなどの塩基の存在に下において、180℃で適切な試薬との融合により化合物1から出発し調整され得、金属銅は式1の中間体を提供することで知られる(S. H. Dandegaonker and C. K. Mesta, J. Med. Chem. 1965, 8, 884を参照のこと)。
【0095】
スキーム1を再び参照すると、式3の中間体はDMFまたはDMSOなどの溶媒中において、適切に置換されたキノキサリン(例えば、市販の2,3−ジクロロキノキサリン)および適切に置換された式2
のスルホンアミド(市販のまたは当業者によって調製され得る)、KCOなどの塩基を短時間加熱することで調製し得る。完了後(約2時間)、反応混合物を続いて水に注ぎ、その後2NのHClに注いだ。生成物を次いでエチルアセテートなどの溶媒に抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウムなどの乾燥剤上で乾燥し、ろ過し、真空化で濃縮して式3の化合物を得た。
【0096】
式3の中間体をその後、DMFまたはp−キシレンなどの溶媒中において環流温度で式4の中間体を用いて処理した。反応の完了次第(約16時間以下)、反応を冷却させ、DCM中に抽出し、2NのHClおよびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥し、ろ過し、濃縮して式Iの化合物を得た。
【0097】
代わりとして、キノキサリン誘導体を調製するその他の方法は当業者に既知であり、これらに限定されないが、S. V. Litvinenko, V. I. Savich, D. D. Bobrovnik, Chem. Heterocycl. Compd. (Engl. Transl), 1994, 30, 340およびW. C. Lumma, R. D. Hartman, J. Med. Chem. 1981, 24, 93が挙げられる。
【0098】
BはR3aと置換されたフェニルであって、R3aはアルキルアミノもしくはジアルキルアミノ、またはBはRと置換されたヘテロアリールであって、Rはアミノ、アルキルアミノ、もしくはジアルキルアミノである式Iの化合物、およびその他の全ての基は、本発明の概要により定義される通りでありスキーム2に従って調製され得る。
スキーム2において、LGは塩素などの脱離基である。化合物5は、RおよびRが独立した水素またはアルキルである、NHRまたはHO−C−C−アルキレン−NHRと反応する。反応はKHCOなどの塩基の存在下において、DMFなどの溶媒中で実施される。
【0099】
BはR3aと置換されたフェニルであって、R3aはアミノアルキルオキシ、アルキルアミノアルキルオキシもしくはジアルキルアミノアルキルオキシ、またはBはRと置換されたヘテロアリールであって、Rはアミノアルキルオキシ、アルキルアミノアルキルオキシ、もしくはジアルキルアミノアルキルオキシである式Iの化合物およびその他全ての基は、本発明の概要により定義される通りでありスキーム3に従って調製され得る。
【0100】
反応はNaHなどの塩基の存在下において、DMFなどの溶媒中で実施される。
【0101】
BはR3aと置換されたフェニルまたはBはRと置換されたヘテロアリールであって、R3aおよびR
i. R、R7a、およびR7bが本発明の概要に定義される、−N(R)C(O)−C−C−アルキレン−N(R7a)(R7b);
ii. Rが本発明の概要に定義される、−NRC(O)R9a
iii. R11a、R11a、およびR11bが本発明の概要に定義される、−NR11C(O)NR11a11b
iv. R13がR13a本発明の概要に定義される、−NR13C(O)OR13a
v. R18、R18a、およびR18bが本発明の概要に定義される、−N(R18)C(O)−C−C−アルキレン−N(R18b)C(O)R18a
vi. R20およびR20aが本発明の概要に定義される、−N(R20)C(O)−C−C−アルキレン−C(O)R20a
vii. R21、R21a、およびR21bが本発明の概要に定義される、−NR21S(O)−C−C−アルキレン−N(R21b)R21a
viii. R22、R22a、およびR22bが本発明の概要に定義される、−N(R22)C(O)−C−C−アルキレン−N(R22b)−N(R22c)(R22a);
ix. R24およびR24aが本発明の概要に定義される、−NR24C(O)−C1−−アルキレン−OR24a;であって、
ならびにRおよびR3aにおけるアルキレンは、本発明の概要に記載の通りに独立して随意に置換される、式Iの化合物は式9(a)、9(b)、9(c)、9(d)、9(e)、9(f)、または9(g)の中間体との反応を用いてスキーム4に従って調製され得る:
1. 9(a) RがR7aまたはBocまたはFmocなどのN−保護基である、HOC(O)−C−C−アルキレン−N(R7a)(R7b);
2. 9(b) HOC(O)R9a
3. 9(c) HOC(O)NR11a11b
4. 9(d) HOC(O)OR13a
5. 9(e) HOC(O)−C−C−アルキレン−N(R18b)C(O)R18a
6. 9(f) HOC(O)−C−C−アルキレン−C(O)R20a
7. 9(g) RがR21aまたはBocまたはFmocなどのN−保護基である、LG−S(O)−C1−−アルキレン−N(R21b)R
【0102】
スキーム4において、スキーム4のR100は−C(O)R9a、−C(O)NR11a11b、−C(O)OR13a、−C(O)−C−C−アルキレン−N(R18b)C(O)R18a、−C(O)−C−C−アルキレン−C(O)R20a、または−S(O)−C1−−アルキレン−N(R21b)Rである。反応は、当業者に既知の正常なアミド結合条件下で実施される。特に、反応はHATUなどのカップリング剤、DIEAなどの塩基、およびDMFなどの溶媒中の存在下において実施される。適用可能な場合、N−保護基はその後当業者に既知の、PGがBocである酸の処理などの手法を用いて除去される。
【0103】
スキーム4に記載の手法の様に、BがR3aと置換されたフェニル、またはBがRと置換されたヘテロアリールであり、R3aおよびR
i. −C(O)NR8a
ii. −C(O)N(R10)−C−C−アルキレン−N(R10a)R10b
iii. R12がN−置換ヘテロシクロアルキルである、−C(O)R12
iv. −C(O)N(R14)N(R14a)(R14b);
v. −C(O)N(R16)−C−C−アルキレン−C(O)OR16a;または
vi. −C(O)N(R19)−C−C−アルキレン−C(O)R19a;または
である、本発明の化合物は必要に応じて出発物質を交換することで調製され得る。特に式11:
の中間体は、式8の代わりに用いられる。
【0104】
BがR3aと置換されたフェニル、またはBがRと置換されたヘテロアリールであり、R3aおよびRが、−NHC(O)CHNR7a7bであって、R7aおよびR7bが本発明の概要に定義される通りである、式Iの化合物はスキーム5に従って調製され得る。
LGは臭素または塩素などの脱離基である。式12はNH(R7b)R7aとDIEAなどの塩基の存在下で、ACNなどの溶媒中において反応する。
【0105】
式Iの化合物はスキーム6に従って調製され得る。
スキーム6におけるLGは塩素などの脱離基である。反応はDMAなどの溶媒における照射で実施され得る。代わりとして、反応は酢酸の存在下において、DMAなどの溶媒中で加熱することによって実施され得る。
【0106】
一般的なアルキル化手法1
2つのドラムバイアル中に、実施例171と同様の手法を用いて調整した、2−ブロモ−N−(3−(N−(3−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)キノキサリン−2−イル)スルファモイル)フェニル)アセトアミド(86mg、0.15mmol)を、2mLのアセトニトリルと共に入れた。8当量(1.2mmol)の所望のアミン、アニリン、ヒドラジンまたはアルコキシアミンを加えた後にヒューニッヒ塩基(41μL、0.25mmol)を加えた。反応をその後50oCで1時間(アニリン試薬は一晩)攪拌した。逆相分取HPLCを用いて、所望の生成物を粗反応混合物から直接単離した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。
【0107】
一般的なライブラリのアシル化手法1
2つのドラムバイアル中に、実施例15と同様の手法を用いて調整した、3−アミノ−N−(3−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)キノキサリン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(54mg、0.12mmol)、DMA(2mL)および所望のカルボン酸(0.17mmol)を加えた。バイアルにDIEA(70μL、0.4mmol)を加え、その後HATU(53mg,0.14mmol)を加えて、反応混合物を50oCで一晩攪拌した。逆相分取HPLCを用いて、所望の生成物を直接粗反応混合物から単離した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。
【0108】
一般的なアミノ化手法1a
CEMマイクロ波反応器に、実施例374と同様の手法を用いて調製した、N−(3−(N−(3−クロロキノキサリン−2−イル)スルファモイル)フェニル)−2−(ジメチルアミノ)アセトアミド(30mg、0.071mmol)、所望のアニリン(16mg、0.14mmol、2当量)および0.5mLのジメチルアセトアミドを充填した。反応器を密封し、反応混合物をマイクロ波照射下で70分間、140℃でCEM Discoverマイクロ波装置中において熱した。溶媒をその後回転蒸発により除去した。25mMの水性NHOAc/ACN溶離剤での逆相分取HPLCにより、所望の生成物に対する最終精製物の精製を実施した。
【0109】
一般的なアミノ化手法1b
CEMマイクロ波反応器を、実施例374と同様の手法を用いて調製した、N−(3−(N−(3−クロロキノキサリン−2−イル)スルファモイル)フェニル)−2−(ジメチルアミノ)アセトアミド(62mg、0.147mmol)、所望のアニリン(0.567mmol、4当量)および1.0mLのトルエンで充填した。反応器を密封し、反応混合物をマイクロ波照射下で60分間、180℃でCEM Discoverマイクロ波装置中において加熱した。溶媒を回転蒸発器で除去した。溶離剤としてNHOAc/ACNを用いた分取HPLCにより最終精製物の精製を実施し、収量所望の生成物を得た。
【0110】
一般的なアシル化手法2
10mL丸底フラスコ中の5mL DCEに、実施例372と同様の手法を用いて調製した、N−(3−(N−(3−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)キノキサリン−2−イル)−スルファモイル)フェニル)アゼチジン−3−カルボキサミド(125mg、0.23mmol)を溶解した。DIEA(1.17mmol、5.0当量)をその後攪拌しながら加え、次に酸塩化物(0.47mmol、2.0当量)を加えた。続いて反応を、室温で1時間またはLCMSが示された様に完了するまで攪拌した。続いて溶媒を減圧下で回転蒸発器により除去した。その後粗材料をメタノール中で再溶解した。25mMの水性NHOAc/CAN溶離剤での逆相分取HPLCにより、最終精製物の精製を実施した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。
【0111】
一般的な還元的アミノ化手法1
3mLのDCEおよび200μLのDMF中で、実施例372と同様の手法を用いて調製した、N−(3−(N−(3−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)キノキサリン−2−イル)スルファモイル)フェニル)アゼチジン−3−カルボキサミド(110mg、0.19mmol)の溶液に、アルデヒド(0.77mmol、4.0当量)をゆっくりと加え、次いでテトラメチルアンモニウムトリアセトキシ水素化ホウ素(1.16mmol、6.0当量)を加えた。反応を室温で一晩攪拌した。LC/MSは反応が完了したことを示した。続いて溶媒を、減圧下で回転蒸発器により除去した。粗材料をその後メタノール中で再溶解した。25mM水性NHOAc/CAN溶離剤での逆相分取HPLCにより、最終精製物の精製を実施した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。
【0112】
一般的なアミド生成手法1a
1つの小型ドラムバイアル中に、実施例100の手法を用いて調製した、3−(N−(3−(2−クロロ−5−メトキシ−フェニルアミノ)−キノキサリン−2−イル)スルファモイル)安息香酸(61mg、0.13mmol、1.1当量)を加えた。DMA(1mL)中に酸を加えて溶解し、次いでDIEA(42μL、0.24mmol、2当量)を溶液に加えた。アミン試薬(DMA中0.12M溶液の1mL)を溶液に攪拌しながら加え、次いでHATU(64mg、0.17mMol、1.4当量)を加えた。反応を一晩、室温で攪拌した。完了がLCMS分析によって示され次第、2mLのメタノールを溶液に加えた。逆相分取HPLCを用いて、所望の生成物を単離した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。
【0113】
一般的なアミド生成手法1b
概説した手法において一般的なアミド生成手法1aを用いて、tert−ブチルカルバミン酸として保護された第2級アミン基(すなわち、R’の場合、Boc−保護アミン基を含有するNHR’R,”に含まれる)を含有するいくつかのアミン類を組み込んだ。脱保護をBoc−保護前駆体のHPLC精製後に実施した。
【0114】
1つの小型ドラムバイアル中に、3−(N−(3−(2−クロロ−5−メトキシ−フェニルアミノ)キノキサリン−2−イル)スルファモイル)安息香酸(61mg、0.13mmol、1.1当量)を加えた。酸を1mLのDMAに溶解し、DIEA(42μL、0.24mmol、2当量)をその後溶液に加えた。モノ−Boc−保護ジアミン試薬(DMA中0.12Mの溶液の1mL、1当量)を溶液に攪拌しながら加え、次いでHATU(64mg、0.17mmol、1.4当量)を加えた。反応を一晩、室温で攪拌した。LCMS分析によって完了が示され次第、2mLのメタノールを溶液に加えた。逆相分取HPLCを用いて、所望の生成物を直接この粗反応液から単離した。Waters Fractionlynxの逆相分取HPLC(Waters SunFire Prep C18、5μMのOCD、30X70mmのカラムを装備し、水/アセトニトリル中25mM酢酸アンモニウムの二成分溶媒系で5〜100%の勾配を実行する)を用いて精製を行った。生成物画分を結合し、乾燥するまで減圧下で回転蒸発fにより濃縮した。ジオキサン(2mL)中4NのHClの溶液を加えた。溶液をその後室温で、出発材料が検出されなくなるまで攪拌した。脱保護した生成物をHCl塩として溶液から凝結し、ろ過によって回収し、エーテルで洗浄し、真空下で乾燥した。
【0115】
化合物Aの合成
粗化合物Aは以下に説明する様に、また以下のスキーム7に示す様に、調整され得る。
【0116】
(N−(3−クロロキノキサリン−2−イル)−3−ニトロベンゼンスルホンアミド)の合成:
1kgの2,3ジクロロキノキサリンおよび1kgの3−ニトロベンゼンスルホンアミドを、5容量のアセトニトリルに混合した。反応混合物を加熱還流した。2.3kgのDBUおよび1容量のアセトニトリルを加えた。反応の完了後、混合物を5℃まで冷却した。12容量のメタノールおよび1.53kgのHClを加え、反応混合物をろ過した。ろ過ケーキを6容量のメタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。
【0117】
(N−(3−((2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ)キノキサリン−2−イル)−3−ニトロベンゼンスルホンアミド)の合成:
溶液を0.585kgの2−クロロ−5−メトキシアニリン−HCl、3.5容量のアセトニトリルおよび0.46kgのDBU(溶液A)で調製した。別々に、1kgのN−(3−クロロキノキサリン−2−イル)−3−ニトロベンゼンスルホンアミドおよび5.5容量のアセトニトリルを結合し過熱還流した。溶液Aおよび1容量のアセトニトリルをその後反応混合物に加え、得られた混合物を加熱還流した。反応の完了後、混合物を20℃で冷却し、10容量のメタノールで希釈し、ろ過した。得られたろ過ケーキを3回、5容量のメタノールで洗浄し、その後真空下で乾燥した。
【0118】
3−アミノ−N−{3−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−2−イル}ベンゼンスルホンアミド塩酸塩の合成:
1kgのN−{3−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−2−イル}−3−ニトロベンゼンスルホンアミドに、炭素(Pt(S)C)上の白金硫化物の触媒量、6容量のTHF、0.16容量の水、および2容量のエタノールを加えた。得られた反応混合物を攪拌し、加熱還流した。含水ギ酸カリウム溶液(1.4容量の水+0.69kgのギ酸カリウム)を加えた。反応混合物反応が完了するまで還流で攪拌し、その後50℃で冷却した。10容量のメタノールを加え、1時間の攪拌の後、触媒をろ別し、3.4容量のメタノールで洗浄した。ろ過した溶液を20℃で冷却し、0.62kgのHClを加えた。反応混合物を20℃で攪拌し、5℃まで冷却し、ろ過した。ろ過ケーキをメタノール(6容量)で洗浄し、真空下で乾燥した。
【0119】
N−[3−({3−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−2−イル}スルファモイル)フェニル]−2−メチルアラニンアミド(未精製)の合成:
2−塩化メチルアラニル塩酸塩の合成
0.42kgの2−アミノ−2−メチルプロパン酸に、3.7容量のアセトニトリル、0.04容量のジメチルホルムアミド、および0.62kgの塩化オキサルを加えた。反応混合物を20℃で反応が完了するまで攪拌した。混合物をその後ろ過し、ろ過ケーキを2回1容量のアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥した。
【0120】
1kgの3−アミノ−N−{3−[(2−クロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]キノキサリン−2−イル}ベンゼンスルホンアミド塩酸塩に、8容量のジメチルホルムアミドおよび0.385kgの2−塩化メチルアラニル塩酸塩を5℃で加えた。反応が完了した後、混合物を50℃で加熱し、K2HPO4(1.4kg)、水(16.5容量)およびエタノール(7.1容量)の溶液を加えた。混合物を10℃まで冷却し、2時間10℃で攪拌し、その後ろ過した。ケーキを3回10容量の水で洗浄し、真空下で乾燥した。
【実施例】
【0121】
実施例1
慢性リンパ性白血病(CLL)およびリンパ腫患者における、汎ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤である化合物Aの第1相試験
クラスIホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)の調節不全は多くの細胞型におけるがんの発生に関係し、PI3K経路はCLLにおいて、またしばしば他の非ホジキンリンパ腫において、構成的に活性化する。
【0122】
化合物Aは、4つのクラスIPI3Kアイソフォーム全てに対する強力かつ選択的阻害剤であり、IC50(nM)は、mTOR:>15000と比較して、α:39、β:383、γ:36およびδ:23である。前臨床異種移植モデル試験において、化合物AはPI3Kの下流エフェクターのリン酸化を抑制し、十分許容できる用量で腫瘍増殖を抑制した。in vitroおよびin vivoで、化合物1はpAKTおよびpEBP1を含むPI3Kの下流標的のリン酸化を抑制する。
【0123】
固形腫瘍における第1相単剤試験の一環として、我々は化合物Aを、再発性/抵抗性リンパ腫およびCLLに罹患した患者の専用の拡大コホートに、投与した。薬剤は経口により毎日、1ヶ月の周期で持続投与した。総計15人の患者を3つのセンターで登録した。3人の患者の初期コホートが登録され、その後、安全性評価を行い、残り12人の対象を引き続き登録した。患者の年齢中央値は66歳(28歳〜81歳の範囲)で、40%は男性であり60%は女性であった。
【0124】
15人の患者の中で、33%(n=5)は抵抗性CLLに罹患し、67%(n=10)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(n=4)、濾胞性リンパ腫(n=2)、ホジキンリンパ腫(n=2)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(n=1)およびB細胞性前リンパ球性白血病(n=1)を含む様々な再発性リンパ腫に、罹患していた。93%(n=14)が3〜4の病期であった。データの入手が可能な12人の患者の中で、6人(50%)は3回以上の先行治療を受けており、10人(83%)はリツキシマブに暴露しており、11人(92%)はアルキル化剤に暴露していた。全体で、ヘモグロビン中央値は11.3g/dL(9.2〜14.1の範囲)、血小板数中央値は113x10/μl(31〜470の範囲)であった。CLLに罹患していた5人の患者に関して、リンパ球の絶対数(ALC)の開始中央値は1.9x10/μl(0.9〜22.8の範囲);ヘモグロビンの開始中央値は10.8g/dL(9.2〜14.1の範囲)、および血小板数の中央値は83x10/μl(66〜143の範囲);であった。2人のCLL患者には11qの欠失があり、1人には17pの欠失があった。IgVH状態を検査した4人のCLL患者のうち2人は未変異であり、ZAP70を検査した2人のうち2人は陽性であった。CLLに罹患した5人の患者のうち4人は、フルダラビン併用化学療法による治療を受けていた。
【0125】
試験で投与した化合物Aの治療周期の中央値は4で、8人の患者は現在も治療を受けている最中である。試験中断の原因は、疾患進行(n=6)および重篤な有害事象(n=1、肺炎による再入院における)を包括した。有害事象は希であり、>10%の患者に発生したあらゆる段階の有害事象は、下痢、高血糖、頭痛およびリンパ球減少を包括した。血液学的毒性はまれであり、4/15(26.7%)で段階3〜4の好中球減少、および1/15(6.7%)で段階3〜4の血小板減少がみられた。高血糖は重大な臨床問題ではなく、段階3〜4が1名(6.7%)、段階1〜2が1名(6.7%)であった。その後患者の応答をフォローし、更新データが提供されるであろう。薬物動態学的及び薬力学的なデータならびに潜在的予測バイオマーカーの分析が進行中である。
【0126】
1日1回投与した化合物Aは、代用組織(PBMC、毛のう、皮膚)および固形腫瘍を有する患者の腫瘍組織において、PI3K経路の活性化を抑制した。化合物Aは、十分許容できる用量で強力なPI3KおよびERK経路抑制を引き起こし、単剤療法の効果としてはアポトーシス促進性ではなく、主に抗増殖性であった。最大許容投与量(MTD)は、21/7(連続した21日間の投与の後に、7日間の休薬)または継続的な日用量のスケジュールにおいて、600mg(カプセル)を1日1回(QD)として規定した。用量制限毒性は段階3の発疹および段階3の過敏症であった。錠剤処方の用量漸増試験は進行中である。さらに10人の患者を拡大コホートに登録することで化合物Aの活性をよりよく限定し、さらなる試験を保証する。
【0127】
再発性/抵抗性リンパ腫および慢性リンパ球性白血病(CLL)に罹患した患者における第1相試験の専用拡大コホートに対して、継続した毎日投与計画を行った600mgの化合物Aの安全性および薬物動態を、本明細書に記載する。
【0128】
患者および方法
試験デザイン
これは、リンパ腫に罹患した対象に単剤で経口投与された化合物Aの、第1相、非盲検、非無作為化試験であった。
【0129】
目的
主目的は、リンパ腫に罹患した対象に600mgカプセルで経口投与した、化合物Aの安全性および耐用性を確認することであった。
【0130】
副次目的は、(a)化合物Aの血漿薬物動態的;および(b)腫瘍組織に対する化合物Aの薬力学的作用を確認することであった。
【0131】
探索的目的は、リンパ腫に罹患した対象における化合物Aの薬力学的作用を確認することであった。
【0132】
主要適格基準
主要な適格性は以下の通りである:
再発性または抵抗性リンパ腫の組織学的な確定診断
・測定可能な病変
・以下の通りに定義される、適当な骨髄機能:
・ANC≧1000/mm(ALC≧100,000/mmを伴うCLLであり、ANC≧500/mmが求められる)
・血小板≧30,000/mm
・ヘモグロビン≧8g/dL
・保存用または新鮮な腫瘍組織
・選択的PI3K阻害剤を使用した事前療法を受けていない
・書面によるインフォームドコンセント
【0133】
結果
25人の患者全員をリンパ腫コホートに登録した。予備データは締切日である2011年11月1日に提出されている。患者のベースライン特性を表1に示す。
【0134】
19人の被験者の間で最も多くみられた有害事象を、表2に概説する。
【0135】
19人の対象に関する試験治療の詳細を、表3に概説する。
【0136】
表4は、有効性(N=11)を評価した患者における良好な反応を概説する。
【0137】
図1は、化合物Aを観測した血漿薬物動態について示す。平均(第1周期における化合物AのSD血漿濃度、第1日目および第28日目の時点で600mgの化合物Aの経口投与後に観測。)図1は、試験に登録したリンパ腫患者において薬剤への暴露が、日用量600mg投与後に固形腫瘍を有していた患者で先にみられていたものと、同様であったことを示している。第28日目の時点での平均(CV%)蓄積(AUC)は、8人の患者において約11.2倍(88.1%)であった。患者間の変動がみられ、幾何平均は7.6倍であった。
【0138】
結果は、化合物Aがリンパ腫およびCLLに罹患した患者において良好な耐用性を示し、CLLおよび低悪性度リンパ腫に対して有効であることを、示している。観測した薬物動態プロファイルは、同様固形腫瘍を有する患者にみられるものと同様である。
【0139】
上記の発明は明確性と理解のために、図および実施例として詳細に記載される。本発明は種々の具体的な実施形態および技術を参照し、記載される。しかしながら、多くの変異および修正が本発明の趣旨および範囲内で行われ得ることを理解されたい。変更および修正は添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは、当業者には明らかである。従って、上記の明細書は説明を意図するものであって、制限するためのものではないことが理解されよう。従って、本発明の範囲は上記の明細書の参照によってではなく、このような請求項に題される全ての同等物と共に、以下に添付した特許請求の範囲の参照によって決定されるべきである。全ての特許、特許出願および本出願において引用した出版物は、個々の特許、特許出願または出版物のそれぞれが個別に示されるような同一の範囲のための全ての目的に関して、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
図1
図2