特許第6013504号(P6013504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013504CMP組成物、半導体装置の製造方法及びCMP組成物の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013504
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】CMP組成物、半導体装置の製造方法及びCMP組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20161011BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20161011BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20161011BHJP
【FI】
   C09K3/14 550Z
   C09K3/14 550D
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-548233(P2014-548233)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-506386(P2015-506386A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】IB2011055864
(87)【国際公開番号】WO2013093557
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ラマン,ヴィジャイ イマヌエル
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユーチュオ
(72)【発明者】
【氏名】シャーデ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン,シャム スンダール
(72)【発明者】
【氏名】スー,エアソン ユー−シェン
(72)【発明者】
【氏名】ウスマン イブラヒム,シェイク アンサール
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064681(JP,A)
【文献】 特開2001−064685(JP,A)
【文献】 特開2001−107089(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102108260(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セリア粒子、
(B)分散剤又は電荷反転剤としての、少なくとも1種類の式(I)のポリビニルホスホン酸又はその塩(nは5以上1000以下の整数)であって、CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量含まれるポリビニルホスホン酸又はその塩、
【化1】
(C)水性媒体、及び、
(D)SiN抑制剤としての糖アルコールを含有する、化学機械研磨(CMP)組成物。
【請求項2】
前記CMP組成物は、当該CMP組成物の全質量に対し、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を含有しない、若しくは、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を0.5ppm未満含有する請求項1に記載のCMP組成物。
【請求項3】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される(B)の重量平均分子量が、1000ダルトン以上20000ダルトン以下の範囲にある請求項1又は2に記載のCMP組成物。
【請求項4】
動的光散乱により測定される前記粒子(A)の平均粒子径が、50nm以上250nm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項5】
前記CMP組成物のpH値が5.5以上9以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項6】
(A)CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量の、動的光散乱により測定される平均粒子径が50nm以上250nm以下のセリア粒子、
(B)CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量の、分散剤又は電荷反転剤としての式(I)のポリビニルホスホン酸若しくはその塩(nは5以上1000以下の整数)、及び、
(C)水性媒体、
を含む請求項1又は請求項2に記載のCMP組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のCMP組成物の存在下で、基板を化学−機械研磨する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のCMP組成物を、シリコン窒化物及び/又はポリシリコンを含む基板の化学−機械研磨に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本的に、化学機械研磨(CMP)組成物と、半導体産業の基板研磨におけるその使用に関する。本発明に係るCMP組成物は、ポリビニルホスホン酸とその誘導体を含む。
【背景技術】
【0002】
半導体産業において、化学機械研磨(CMPと略す)は、半導体ウェハのような、最新のフォトニック、マイクロ電気機械、そしてマイクロ電子の材料及び機器の製造に使用される公知の技術である。
【0003】
半導体産業で使用される材料及び機器の製造の間、CMPは、金属及び/又は酸化物表面平坦化のために行われる。CMPは、研磨すべき表面の平面性を得るために、化学的及び機械的作用の相互作用を利用する。化学的作用は、CMP組成物又はCMPスラリーとも称する化学組成物により提供される。機械的作用は、一般的に研磨すべき表面に押圧され、可動盤に搭載される研磨パッドにより、通常行われる。その盤の移動は、通常、直線的、回転的又は環状的である。
【0004】
典型的なCMP処理工程では、回転ウェハ保持手段が、研磨すべきウェハを研磨パッドに接触させる。CMP組成物は、通常、研磨すべきウェハと研磨パッドの間に供給される。
【0005】
最先端技術では、フィルム−形成剤として、ポリビニルホスホン酸塩を含有する研磨組成物が、例えば下記文献により公知になっている。
【0006】
米国特許公開第2007/0077865号明細書には、研磨剤と、HLBが約15以下のポリエチレンオキシド/ポリプロプロピレンオキシド共重合体界面活性剤と、液状担体と、研磨パッドを含む研磨システムが開示されている。米国特許公開第2007/0077865号明細書によれば、いかなる好適なフィルム−形成剤(腐食防止剤等)をも、研磨システムと併せて使用可能であり、これら好適なフィルム−形成剤は、例えば、アルキルアミン、アルカノアミン、ヒドロキシルアミン、リン酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルホスホン酸塩、ポリりんご酸、ポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2007/0077865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、シリコン窒化物及び/又はポリシリコンを含む基板の化学−機械研磨に適したCMP組成物及びCMP方法を提供することであって、改善された研磨性能、特に、シリコン酸化物の高い材料除去速度(以下、MRRと称する)と、MRRについての、シリコン酸化物のシリコン窒化物又はポリシリコンに対する高い選択性との組み合わせを示す。更に、可能な限り少ない工程数を必要とし、適用が容易であるCMP方法を求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(A)無機粒子、有機粒子、又はそれらの混合物若しくは複合物と、
(B)少なくとも1種類の、分散剤又は電荷反転剤(charge reversal agent)としての有機高分子化合物であって、ホスホン酸塩(-P(=O)(OR)(OR))又はホスホン酸(-P(=O)(OH))部分、又はそれらの脱プロトン化体をペンダント基として有し、
は、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル、
は、H、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル、
である有機高分子化合物と、
(C)水性媒体と、
を含むCMP組成物を発見した。このCMP組成物は、以下、(Q)又はCMP組成物(Q)と称する。
【0010】
更に、CMP組成物(Q)の存在下で化学−機械研磨する工程を含む半導体装置の製造方法も発見した。
【0011】
更に、シリコン窒化物及び/又はポリシリコンを含む基板の化学−機械研磨のためのCMP組成物(Q)の使用方法も発見した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態は、特許請求の範囲及び明細書で説明される。好ましい実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0013】
半導体装置は、本発明のCMP組成物の存在下で、基板のCMP工程を含む方法により製造可能である。好ましくは、前記方法は、誘電率が6未満の基板である誘電体基板のCMPを含む。前記方法は、より好ましくは、二酸化ケイ素を含む基板のCMPを含み、最も好ましくは、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物又はポリシリコンを含む基板のCMPであり、特に、浅溝分離(shallow−trench isolation、STI)装置又はその一部である基板の二酸化ケイ素層のCMPであり、例えば、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物又はポリシリコンを含む基板の二酸化ケイ素層のCMPである。
【0014】
前記方法が、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物を含む基板のCMP工程を有する場合、MRRについての、二酸化ケイ素のシリコン窒化物に対する選択性は、好ましくは3:1より高く、より好ましくは7:1より高く、最も好ましくは12:1より高く、特に、18:1より高く、例えば24:1より高い。この選択性は、有機高分子化合物(B)の濃度及び種類により、そして、pH値のような他のパラメータにより、調整可能である。
【0015】
前記方法が、二酸化ケイ素とポリシリコンを含む基板のCMPを含む場合、MRRについての、二酸化ケイ素のポリシリコンに対する選択性は、好ましくは1.45:1より高く、より好ましくは7:1より高く、最も好ましくは12:1より高く、特に25:1より高く、例えば50:1よりも高い。この選択性は、有機高分子化合物(B)の濃度及び種類により、そして、pH値のような他のパラメータにより、調整可能である。
【0016】
本発明のCMP組成物は、半導体産業で使用されるいかなる基板の研磨にも使用される。前記CMP組成物は、好ましくは、誘電率が6未満の基板である誘電体基板の研磨に使用され、より好ましくは、二酸化ケイ素を含む基板の研磨に使用され、最も好ましくは、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物又はポリシリコンを含む基板の研磨に使用され、特に、浅溝分離(shallow−trench isolation、STI)装置又はその一部である基板の二酸化ケイ素層の研磨に使用され、そして、例えば、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物又はポリシリコンを含む基板の二酸化ケイ素層の研磨に使用される。
【0017】
本発明のCMP組成物が、二酸化ケイ素及びシリコン窒化物を含む基板の研磨に使用される場合、MRRについての、二酸化ケイ素のシリコン窒化物に対する選択性は、好ましくは、3:1より高く、より好ましくは、7:1より高く、最も好ましくは、12:1より高く、特に18:1より高く、例えば、24:1より高い。
【0018】
本発明のCMP組成物が、二酸化ケイ素及びポリシリコンを含む基板の研磨に使用される場合、 MRRについての、二酸化ケイ素のポリシリコンに対する選択性は、好ましくは、1.45:1より高く、より好ましくは、7:1より高く、最も好ましくは、12:1より高く、特に25:1より高く、例えば、50:1より高い。
【0019】
CMP組成物(Q)は、下記成分(A)、(B)、(C)を含有する。
【0020】
CMP組成物(Q)は、無機粒子、有機粒子、又はこれらの混合物若しくは複合物(A)を有する。(A)は、
・1種類の無機粒子、
・異なる種類の無機粒子の混合物若しくは複合物、
・1種類の有機粒子、
・異なる種類の有機粒子の混合物若しくは複合物、又は、
・1種以上の無機粒子及び1種以上の有機粒子の混合物若しくは複合物と、することができる。
【0021】
複合物は、機械的、化学的又は他の方法で互いに結合した、2種以上の粒子を含む複合粒子である。複合物の例は、外側球体(シェル)の1種類の粒子と、内側球体(コア)の他の種類の粒子を有するコア−シェル粒子である。
【0022】
通常、粒子(A)は、CMP組成物(Q)中に多様な量で含有可能である。好ましくは、(A)の量は、組成物(Q)の全質量に対し、8wt%以下(wt%は質量%を意味する)、より好ましくは4wt%以下、最も好ましくは1.5wt%以下、特には0.9wt%以下、例えば0.6wt%以下である。好ましくは、(A)の量は、組成物(Q)の全質量に対し、少なくとも0.002wt%、より好ましくは少なくとも0.01wt%、最も好ましくは少なくとも0.05wt%、特には少なくとも0.2wt%、例えば、少なくとも0.4wt%である。
【0023】
通常、粒子(A)は、多様な粒径(particle size)分布で含有される。粒子(A)の粒径分布は、モノモーダル(単頂性)又はマルチモーダル(多頂性)になることができる。マルチモーダル粒径分布の場合、バイモーダル(二頂性)がしばしば好ましい。本発明のCMP方法の間、容易に再現可能な状態と容易に再現可能な特性プロファイルを得るためには、(A)に関し、モノモーダル粒径分布が好ましい。最も好ましいのは、(A)がモノモーダル粒径分布を具備することである。
【0024】
粒子(A)の平均粒子径は、広い範囲で変更可能である。その平均粒子径は、水性媒体(D)中の(A)の粒径分布のd50値であり、動的光散乱技術を使用して測定することができる。d50値は、粒子が原則球体であるとの仮定の下で計算される。平均粒子径分布の幅は、2つの交点間の距離(x−軸の単位で付与される)であり、それら交点は、粒径分布曲線極大粒子カウントが100%高さとして標準化した場合の、相対的粒子カウントの50%高さと、粒子分布曲線とが交差するところである。
【0025】
好ましくは、粒子(A)の平均粒子径が好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、最も好ましくは300nm以下であり、特には250nm以下であり、例えば、220nm以下であり、そして、粒子(A)の平均粒子径は、好ましくは少なくとも5nmであり、より好ましくは少なくとも25nmであり、最も好ましくは少なくとも50nmであり、特には少なくとも65nmであり、例えば、少なくとも80nmである(Horiba LB550又はマルバーンインスツールメンツ社の高パフォーマンス粒子径測定器(HPPS)のような機器を用い、動的光散乱技術を用いて測定する粒径)。
【0026】
粒子(A)は多様な形状のものとすることができる。従って、粒子(A)を、形状が1種類又は実質1種類のみのとすることできるが、異なる形状を持つ粒子(A)とすることも可能である。例えば、異なる形状にした2種類の粒子(a)を存在させることもある。例えば、(A)は、立方体、角が面取りされた立方体、正八面体、二十面体、小塊、球体等の形状とすることもできるし、それらの形状に更に突起やギザギザがあってもなくてもよい。好ましくは、それらは、突起やぎざぎざが無い(あっても非常に少ない)球体である。
【0027】
粒子(A)の化学的特徴は特に限定されない。(A)は、同一の化学的特徴のもの、又は異なる化学的特徴が複合又は混合されたものでもよい。概して、同一の化学的特徴の粒子(A)が好まれる。通常、(A)は;
・金属、金属酸化物又は炭化物のような無機粒子(メタロイド、メタロイド酸化物又は炭化物を含む)、
・ポリマー粒子のような有機粒子、又は、
・無機及び有機粒子の複合物又は混合物
とすることができる。
【0028】
粒子(A)は、好ましくは無機粒子である。それらの中でも、金属又はメタロイドの酸化物及び炭化物が好ましい。より好ましくは、粒子(A)は、アルミナ、セリア、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化マンガン、シリカ、シリコン窒化物、シリコン炭化物、酸化錫、チタニア、炭化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、ジルコニア、又はそれらの混合物若しくは複合物である。最も好ましくは、粒子(A)は、アルミナ、セリア、シリカ、チタニア、ジルコニア、又はそれらの混合物若しくは複合物である。特に、(A)は、セリア粒子である。例えば、(A)は、コロイダルセリア粒子である。典型的には、コロイダルセリア粒子は、湿式沈殿法により製造される。
【0029】
(A)が有機粒子、又は、無機及び有機粒子の混合物若しくはその複合体である他の実施例では、有機粒子としてポリマー粒子が好ましい。ポリマー粒子は、単独−又は共重合体とすることができる。後者は、例えば、ブロック−共重合体、統計コポリマーである。単独−又は共重合体は、例えば、直鎖、分岐、櫛型状、樹枝状、絡み合い又は架橋等の多様な構造を持つことができる。ポリマー粒子は、アニオン性、カチオン性、調整ラジカル、フリーラジカル機構に基づき、懸濁又は乳化重合法で製造することができる。好ましくは、ポリマー粒子は、ポリスチレン、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)、又は共重合体(モノマー単位として、ビニル芳香族化合物、アクリレート、メタクリレート、マレイン酸無水物アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、又はメタクリル酸、又は、それらの混合物若しくは複合物を少なくとも1種類含む)のうちの、少なくとも1種類である。これらの中でも、架橋構造を持つポリマー粒子が好ましい。
【0030】
CMP組成物(Q)は、分散剤又は電荷反転剤(B)として、少なくとも1種類の有機高分子化合物を有し、当該高分子化合物は、ホスホン酸塩(-P(=O)(OR)(OR))又はホスホン酸(-P(=O)(OH))部分、又はそれらの脱プロトン化体をペンダント基として有する(Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルであり、Rは、H、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルである)。好ましくは、(Q)は、1〜2種類の機高分子化合物(B)を含有し、より好ましくは1種類の有機高分子化合物(B)を含有する。通常、CMP組成物で使用する分散剤は、懸濁液に添加すると、粒子の分離を改善し、沈降又は凝集を防止する表面−活性化合物である。通常、CMP組成物中の電荷反転剤は、CMP組成物中に存在する研磨粒子の電荷を反転させる能力を持つ化合物である。通常、分散剤は、フィルム−形成剤又は腐食防止剤を兼ねない(not at the same time)。また、電荷反転剤もフィルム−形成剤又は腐食防止剤を兼ねない。
【0031】
有機高分子化合物(B)は、CMP組成物(Q)中で多様な量を含有させることができる。好ましくは、(B)の量は、組成物(Q)の全質量に対し、4000ppm以下(“ppm”は百万分の一を意味する)、より好ましくは1600ppm以下、最も好ましくは800ppm以下、特に350ppm以下、例えば220以下である。好ましくは、(B)の量は、組成物(Q)の全質量に対し、少なくとも0.1ppm、より好ましくは少なくとも1ppm、最も好ましくは少なくとも10ppm、特に少なくとも50ppm、例えば少なくとも80ppmである。
【0032】
組成物(Q)の全質量に対する粒子(A)の質量%と、組成物(Q)の全質量に対する有機高分子化合物(B)との比は、広い範囲で変更することができる。この比を、以下“(A/B)”比と称する。好ましくは、(A/B)比は、3000:1以下、より好ましくは1000:1以下、最も好ましくは500:1以下、特に100:1以下、例えば、60:1以下である。好ましくは、(A/B)比は、少なくとも1:1、より好ましくは、少なくとも5:1、最も好ましくは少なくとも10:1、特に少なくとも15:1、例えば少なくとも20:1である。
【0033】
(B)が、分散剤又は電荷反転剤としての、ホスホン酸塩(−P(=O)(OR)(OR))部分又はそれらの脱プロトン化体をペンダント基として有する有機高分子化合物である場合、Rは通常、いかなる置換又は非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルでもよく、好ましくは、いかなる非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルでもよく、より好ましくは、いかなる非置換のアルキル基でもよい。そして、Rは、H、又は、いかなる置換又は非置換の、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルでもよく、好ましくは、H、又は非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルであり、より好ましくは、H又はいかなる非置換アルキルでもよく、特にHである。
【0034】
好ましくは、有機高分子化合物(B)は、分散剤又は電荷反転剤としての、少なくとも1種類の有機高分子化合物を含み、当該高分子化合物は、ホスホン酸(−P(=O)(OH))部分、又はそれらの脱プロトン化体をペンダント基として有する。より好ましくは、有機高分子化合物(B)は;
(B1)分散剤又は電荷反転剤としての、少なくとも1種類の式(I)のポリビニルホスホン酸(nは5以上1000以下の整数)又はその塩、及び/又は、
(B2)分散剤又は電荷反転剤としての、(M1)ビニルホスホン酸及び(M2)少なくとも1種類の他のモノマーをモノマー単位として含む少なくとも1種類の共重合体又はこの共重合体の塩、
を含有する。
【0035】
【化1】
【0036】
最も好ましくは、有機高分子化合物(B)は(B2)である。特に、有機高分子化合物(B)は;
(B2A)分散剤又は電荷判定剤として、少なくとも1種類の共重合体又はその塩を含有し、当該共重合体は、下記(M1)、(M2)をモノマー単位として含む。
【0037】
(M1)ビニルホスホン酸、及び、
(M2)ビニル芳香族化合物、ビニル基により置換されたヘテロ環式化合物、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルエーテル、ビニル基により置換された糖化合物からなる群より選択されるモノマーの少なくとも1種類。
【0038】
特に好ましくは、有機高分子化合物(B)は下記(B2a)である。
【0039】
(B2a)分散剤又は電荷判定剤として、少なくとも1種類の共重合体又はその塩を含有し、当該共重合体は、モノマー単位としてビニルホスホン酸及びアクリル酸を含む。
【0040】
例えば、有機高分子化合物(B)は、非置換のビニルホスホン酸と非置換のアクリル酸の共重合により得られる、ポリ(ビニルホスホン酸―アクリル酸)共重合体である(以下、PVPA−PAA共重合体とも称する)。
【0041】
(B)が含有するビニルホスホン酸モノマー(M1)は置換又は非置換とすることが可能であり、好ましくは非置換である。(B)が含有するモノマー(M2)は、置換又は非置換とすることが可能であり、好ましくは非置換である。(B2a)が含有するアクリル酸モノマーは、置換又は非置換とすることが可能であり、好ましくは非置換である。
【0042】
有機高分子化合物(B)が式(I)のポリビニルホスホン酸又はその塩である場合、式(I)の数nは、5以上1000以下のいかなる整数とすることができ、好ましくは900以下、より好ましくは750以下、最も好ましくは、600以下、特に500以下、例えば400以下であって、好ましくは少なくとも10、より好ましくは、少なくとも30、最も好ましくは、少なくとも60、特に少なくとも100、例えば少なくとも200である。
【0043】
通常、有機高分子化合物(B)は、いかなる重量平均分子量を持つことが可能である。(B)の重量平均分子量は、好ましくは、120000ダルトン以下、より好ましくは70000ダルトン以下、最も好ましくは40000ダルトン以下、特に20000ダルトン以下、例えば13000ダルトン以下であって、その重量平均分子量は、好ましくは、少なくとも500ダルトン、より好ましくは少なくとも1500ダルトン、最も好ましくは、少なくとも4000ダルトン、特に少なくとも7000ダルトン、例えば少なくとも9000ダルトンである(それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定)。
【0044】
本発明によれば、CMP組成物(Q)は、水性媒体(C)を含む。(C)は1種類の水性媒体、又は、異なる種類の水性媒体の混合物とすることができる。
【0045】
通常、水性媒体(C)は、水を含むものであればどのような媒体でもよい。好ましくは、水性媒体(C)は、水と、水に対し混和可能な有機溶媒の混合物であり、有機溶媒は、アルコール、好ましくはC〜Cアルコール、又は、アルキレングリコール誘導体等である。より好ましくは、水性媒体(C)は水である。最も好ましくは、水性媒体(C)は脱イオン化水である。
【0046】
(C)以外の成分の量を、全体でCMP組成物のy質量%とすると、(C)の量は、CMP組成物の(100−y)質量%である。
【0047】
CMP組成物(Q)は、更に、少なくとも1種類のSiN抑制剤(SiN suppressor)(D1)、例えば、1種類のSiN抑制剤(D1)を任意に含有する。通常、SiN抑制剤とは、CMP組成物に添加されると、シリコン窒化物層の化学−機械研磨を阻害する化合物であって、阻害の結果、シリコン酸化物のような他の基板と比較してシリコン窒化物の低MRR等、他の基板(例:シリコン酸化物)のシリコン窒化物に対する高い選択性を生じるものである。 好ましくは、(D1)は、糖アルコールである。より好ましくは、(D1)は、少なくとも4つのヒドロキシル(−OH)基を有する糖アルコールである。最も好ましくは、(D1)は、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニット、ソルビット、ダルシトール、イジトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ポリグリシトール、イノシトール、又は、それらの立体異性体又はそれらの混合物である。例えば、(D1)はイノシトールである。
【0048】
存在するのであれば、SiN抑制剤(D1)は、多様な量で含有されることが可能である。存在するのであれば、(D1)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以下、特に1.5質量%以下、例えば1.1質量%以下である。存在するのであれば、(D1)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは、少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、最も好ましくは少なくとも0.025質量%、特に少なくとも0.1質量%、例えば少なくとも0.5質量%である。
【0049】
CMP組成物(Q)は、更に、少なくとも1種類のポリシリコン抑制剤(D2)、例えば1種類のポリシリコン抑制剤(D2)を任意に含有することが可能である。通常、ポリシリコン抑制剤は、CMP組成物に添加した場合に、ポリシリコン層の化学−機械研磨を阻害する化合物であって、その阻害の結果、シリコン酸化物等の他の基板と比較してポリシリコンの低MRR等、他の基板(例:シリコン酸化物)のポリシリコンに対する高選択性を生ずるものである。好ましくは、(D2)は、ポリエーテル化合物である。より好ましくは、(D2)は、脂肪族ポリエーテル化合物である。最も好ましくは、(D2)は、パラホルムアルデヒド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はそれらの混合物である。例えば、(D2)はポリエチレングリコールである。
【0050】
存在するのであれば、ポリシリコン抑制剤(D2)は、多様な量で含有されることが可能である。存在するのであれば、(D2)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは、0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以下、特に0.02質量%以下、例えば0.012質量%以下である。存在するのであれば、(D2)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは、少なくとも0.0001質量%、より好ましくは少なくとも0.0005質量%、最も好ましくは少なくとも0.001質量%、特に少なくとも0.004質量% 、例えば少なくとも0.008質量%である。
【0051】
CMP組成物(Q)は、更に、少なくとも1種類の殺生物剤(E)、例えば1種類の殺生物剤を任意に含有可能である。通常、殺生物剤は、化学的又は生物的手段により、いかなる有害生物をも阻止し、無害にし、その制御効果を実行する物質である。好ましくは、(E)は、四級アンモニウム化合物、イソチアゾリノンをベースにした化合物、N−置換二酸化ジアゼニウム(N−substituted diazenium dioxide)、又は、N‘−ヒドロキシ−酸化ジアゼニウム塩(N’−hydroxy−diazenium oxide salt)である。より好ましくは、(E)は、N−置換二酸化ジアゼニウム又はN‘−ヒドロキシ−酸化ジアゼニウム塩である。特に、(E)は、N‘−ヒドロキシ−N−シクロヘキシル−酸化ジアゼニウムのカリウム塩である。
【0052】
存在するのであれば、殺生物剤(E)は、多様な量で含有させることができる。存在するのであれば、(E)の量は、対応する組成物の全質量に対し、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以下、特に0.02質量%以下、例えば0.008質量%以下である。また、存在するのであれば(E)の量は、対応する組成物の全質量に対し、好ましくは、少なくとも0.00001質量%、より好ましくは、少なくとも0.0001質量%、最も好ましくは少なくとも0.0005質量%、特に少なくとも0.0008質量%、例えば少なくとも0.001質量%である。
【0053】
CMP組成物(Q)は、更に、少なくとも1種類の腐食防止剤(F)、例えば2種類の腐食防止剤を任意に含有することが可能である。通常、Ge及び/又は酸化ゲルマニウムの表面上の保護分子層を形成する全ての化合物が腐食防止剤として使用可能である。好ましい腐食防止剤は、チオール、フィルム形成ポリマー、ポリオール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール並びにそれらの誘導体(例:ベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾール)である。
【0054】
存在するのであれば、腐食防止剤(F)は、多様な量で含有可能である。存在するのであれば、(F)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下であり、特に0.1質量%以下であり、例えば0.05質量%以下である。存在するのであれば、(F)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは少なくとも0.0005質量%であり、より好ましくは少なくとも0.005質量%であり、最も好ましくは少なくとも0.025質量%であり、特に少なくとも0.1質量%であり、例えば少なくとも0.4質量%である。
【0055】
安定性、研磨性能等の、CMP組成物(Q)、並びに(Q)の存在下での方法の特徴は、対応するCMP組成物のpHに影響される。組成物(Q)のpH値は、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも5.5、特に少なくとも6、例えば少なくとも6.5である。組成物(Q)のpH値は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、最も好ましくは8以下、特に7.5以下、例えば7.0以下である。
【0056】
CMP組成物(Q)は、更に、少なくとも1種類のpH調整剤(G)を任意に含むことが可能である。通常、pH調整剤(G)は、CMP組成物(Q)に、そのpH値を所望の値に調整する目的で添加される化合物である。好ましくは、CMP組成物(Q)は、少なくとも1種のpH調整剤(G)を含む。好ましいpH調整剤は、無機酸、カルボン酸、アミン塩基、アルカリ水酸化物、水酸化アンモニウム(水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む)である。例えば、pH調整剤(G)は、硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムである。
【0057】
存在するのであれば、pH調整剤(G)は、多様な量で含有させることができる。存在するのであれば、(G)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば、0.05質量%以下である。存在するのであれば、(G)の量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、好ましくは少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、最も好ましくは少なくとも0.025質量%、特に少なくとも0.1質量%、例えば少なくとも0.4質量%である。
【0058】
CMP組成物(Q)は、必要であれば、多様な他の添加剤をも含むことがあり、他の添加剤はそれらに限定さないが、例えば、安定剤、界面活性剤、摩擦減少剤等を含む。前記他の添加剤は、例えば、CMP組成物で一般に使用されるものであり、当業者に知られたものである。このような添加剤は、例えば分散を安定化させ、又は、研磨性能や異なる層間の選択性を向上させることが可能である。
【0059】
存在するのであれば、前記他の添加剤は、多様な量で含有されることが可能である。好ましくは、前記他の添加剤の全量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、10質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下である。好ましくは、前記他の添加剤の全量は、対応するCMP組成物の全質量に対し、少なくとも0.0001質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.008質量%、特に少なくとも 0.05質量%、例えば、少なくとも0.3質量%である。
【0060】
好ましくは、CMP組成物(Q)は、当該CMP組成物の全質量に対し、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドを全く含有しないか、0.5ppm未満の量を含有する。(Q)は、より好ましくは、当該CMP組成物の全質量に対し、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、特に0.01ppm未満、特に好ましくは0.001ppm未満含有する。例えば、(A)は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を含有しない。
【0061】
一実施形態によれば、CMP組成物(Q)は、下記(A)〜(C)を含有する。
【0062】
(A)動的光散乱により測定される平均粒子径が、50nm以上250nm以下のセリア粒子を、CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量、
(B)分散剤又は電荷反転剤としての、式(1)のポリビニルホスホン酸又はその塩(nは5以上1000以下の整数)を、CMP組成物中に10ppm以上800ppm以下の量、及び、
(C)水性媒体。
【0063】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、CMP組成物(Q)は、下記(A)〜(C)を含有する。
【0064】
(A)動的光散乱により測定される平均粒子径が、50nm以上250nm以下のセリア粒子を、CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量、
(B)分散剤又は電荷反転剤としての、式(1)のポリビニルホスホン酸又はその塩(nは5以上1000以下の整数)を、CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量、及び、
(C)水性媒体。
【0065】
ここで、CMP組成物は、当該CMP組成物の全質量に対し、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を全く含まないか、0.5ppm未満含む。
【0066】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、CMP組成物(Q)は、下記(A)〜(D)を含有する。
【0067】
(A)セリア粒子を、CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量、
(B)分散剤又は電荷反転剤として、式(1)のポリビニルホスホン酸(nは5以上1000以下の整数)、及び/又は、モノマー単位としてビニルホスホン酸及びアクリル酸を含む共重合体又はそれらの塩を、CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量、
(C)水性媒体、及び、
(D)(D1)シリコン窒化物抑制剤及び/又は(D2)ポリシリコン抑制剤。
【0068】
ここで、CMP組成物は、当該CMP組成物の全質量に対し、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を全く含まないか、0.5ppm未満含む。ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体。
【0069】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、CMP組成物(Q)は、下記(A)〜(D)を含有する。
【0070】
(A)セリア粒子を、CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量、
(B)分散剤又は電荷反転剤として、モノマー単位としてビニルホスホン酸及びアクリル酸を含有する共重合体又はその共重合体の塩を、CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量、
(C)水性媒体、及び、
(D)(D1)シリコン窒化物抑制剤としての糖アルコール及び/又は(D2)ポリシリコン抑制剤としての、パラホルムアルデヒド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はそれらの混合物。
【0071】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、CMP組成物(Q)は、下記(A)〜(C)、(E)を含有する。
【0072】
(A)セリア粒子を、CMP組成物中に0.05質量%以上4質量%以下の量、
(B)分散剤又は電荷反転剤としての、モノマー単位としてビニルホスホン酸並びにアクリル酸を含有する共重合体又はその共重合体の塩を、CMP組成物中に10質量ppm以上800質量ppm以下の量、
(C)水性媒体、及び、
(E)殺生物剤として、四級アンモニウム化合物、イソチアゾリノンをベースにした化合物、N−置換二酸化ジアゼニウム、又は、N‘−ヒドロキシ−酸化ジアゼニウム塩。
【0073】
CMP組成物の調整方法は、通常公知のものでよい。それらの製法は、CMP組成物(Q)の製造にも適用可能である。これは、上記成分(A)、(B)を、水性媒体(C)、好ましくは水に、分散又は溶解させ、任意にpH調整剤(G)を添加してpHを調整し、行うことができる。この目的のためには、通常の、標準的な、混合方法及び混合装置(撹拌層、高せん断撹拌羽、超音波ミキサー、ホモジナイザーノズル又は向流ミキサー等)を用いることができる。
【0074】
CMP組成物(Q)は、好ましくは、粒子(A)の分散、少なくとも1種類の有機高分子化合物(B)、及び任意に他の添加剤を水性媒体(C)中に分散/溶解させて製造される。
【0075】
研磨方法は通常公知であって、集積回路を備えたウェハの製造におけるCMP用に、通常使用される方法、機器、条件により行われる。研磨方法を実行可能な機器に関し、制限はない。
【0076】
当該技術において公知のように、CMP工程用の典型的な機器は、研磨パッドで被覆された回転盤からなる。また、環状研磨機も使用されている。ウェハは、キャリア又はチャックに搭載される。処理されるウェハ面は、研磨パッドと対面する(シングルサイド研磨処理)。止め輪が、ウェハの水平位置を保持する。
【0077】
キャリア下方では、より大径の盤も通常水平に配置され、研磨対象のウェハに対し、水平な面を提供する。盤上の研磨パッドは、平坦化処理の間、ウェハ表面と接触する。
【0078】
材料を除去するため、ウェハは研磨パッドに押し付けられる。キャリア及び盤の両方が、通常、キャリア及び盤から垂直に伸びるそれらの各軸の周囲を回転する。回転キャリア軸は、その位置が、回転盤と相対的に固定されるか、盤に対して水平に振動する。キャリアの回転方向は、通常、必須ではないが盤の回転方向と同じである。キャリアと盤の回転速度は、通常、必須ではないが異なる値に設定される。本発明のCMP方法の間、CMP組成物(Q)は、通常、連続流又は液滴の様式で、研磨パッドに塗布される。慣習上、盤の温度は10℃以上70℃に設定される。
【0079】
ウェハ上の荷重は、例えば、バッキングフィルムとしばしば呼ばれるソフトパッドで覆われた鋼製平板により付与可能である。より発展した機器が使用される場合は、空気又は窒素圧で荷重されるフレキシブル膜で、ウェハをパッド上に押し付けてもよい。硬盤設計を備えたキャリアの場合と比べて、ウェハ上のダウン圧力分布がより均一になるので、上記のような膜キャリアは、硬研磨パッドを使用するときには、小さいダウンフォース圧力が好ましい。ウェハ上の圧力分布を制御するオプションを備えたキャリアも、本発明に用いることができる。それらは、通常、互いに独立して、一定程度迄荷重可能な多数の異なるチャンバーと共に設計される。
【0080】
更なる詳細は、国際公開第2004/063301号明細書の、特に、図2に関連し、16頁、段落0036から18頁段落0040を参照のこと。
【0081】
本発明のCMP方法によれば、集積回路を備え、誘電体層を含むウェハが得られ、そのウェハは優れた機能を持つ。
【0082】
CMP組成物(Q)は、CMP方法において、長い貯蔵寿命を持ち、長期間安定した粒子径分布を示す、使用準備済みのスラリーとして使用することができる。従って、それらは、貯蔵、取扱いが容易である。それらは、特に、シリコン酸化物の高材料除去速度(以下、MRRと称する)と、MRRについてのシリコン酸化物のシリコン窒化物又はポリシリコンに対する高い選択性の組み合わせに関し、優れた研磨性能を示す。
【実施例】
【0083】
<実施例及び比較例>
pH電極を用いてpH値を測定した(スコット、ブルーライン、PH0−14/−5 100℃/3mol/L、塩化ナトリウム)。
【0084】
粒径分布(d50値)は、Horiba LA−920を用いて測定した。
【0085】
ゼータ電位は、Malvern zeta sizerを用いて測定した。
【0086】
・実施例で使用した無機粒子
これら実施例で粒子(A)として使用するセリア粒子は、一次粒子が60nm、平均粒子径が100nm以上200nmのコロイダルセリア粒子である(マルバーンインスツールメンツ社の高パフォーマンス粒子径測定器(HPPS)又はHoriba LB550のような機器を使用し、動的光散乱により測定)。これらセリア粒子は、下記ではセリア粒子(A1)とする。
【0087】
・実施例で使用した有機高分子化合物(B)
これら実施例では、ポリ(ビニルホスホン酸―アクリル酸)共重合体を有機高分子化合物(B)として使用した。「Progress in Polymer Science」(2010年)、35(8)、1078〜1092頁、Lavinia Macarie、Gheorghe Ilia著、Progress in Polymer Science「ポリ(ビニルホスホン酸)及びその誘導体」のセクション3.1.1に記載されたように、ポリビニルホスホン酸は、ラジカル開始剤(アゾ型過酸化物)の存在下、水性媒体中でビニルホスホン酸の(共)重合により合成した。
【0088】
ポリ(ビニルホスホン酸―アクリル酸)共重合体は、下記のように合成した。320gの水中に、ビニルホスホン酸130g、アクリル酸9.6g、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム1gを加えた溶液を、窒素雰囲気で加熱し、99℃迄撹拌した。その温度で、183gのアクリル酸を、5時間に亘って添加し、水100gにペルオキソ二硫酸ナトリウム18gを加えた溶液を6時間添加した。反応混合物を99℃で更に2時間維持した。固形分45%の澄んだ重合体溶液を得た。
【0089】
ポリビニルホスホン酸又はポリ(ビニルホスホン酸−アクリル酸)共重合体の重量平均分子量を、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、0.15mol/NaCl及び0.01mol/l NaN存在下の蒸留水中、0.08mol/lの2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール緩衝剤(pH=7.0)で、3本のSUPREMA−Gel(HEMA)カラム上で、260nmでのUV検出器を用い、測定した。目盛補正は、M.J.R.Cantow et al.,J.Polym.Sci A−1,5,1391〜1394(1967年)の方法論に従い、ポリアクリル酸ナトリウム塩に対して行った。
【0090】
フィーケンチャーのK値は、H.フィーケンチャー著の「Cellulose−Chemie」、13巻、58〜64頁及び71〜74頁(1932年)に従い、pH補整なしに1質量%水性溶液中25℃で測定した。
【0091】
・CMP実験用の通常の手順
CMP方法:
研磨機器:AMAT Mirr(200mmウェハを研磨可能)
研磨基板:高密度プラズマ(HDP)シリコン酸化物、又は、テトラエトキシシラン(TEOS)シリコン酸化物、LPCVDシリコン窒化物(SiN)及び非晶質ポリシリコンウェハ(poly−Si)を含む多層基板
この基板を、以下、基板(S1)とする。
【0092】
流量:160ml/分
研磨パッド:IC1010−kグローブパッド
コンディショナー:3M A166;インサイチュコンディショニング 5lbs
盤rpm:93rpm
キャリアrpm:87rpm
ダウンフォース:2psi又は3.5psi
研磨時間:60秒
研磨する基板の膜厚を、CMPの前と後で、Thermawave Optiprobe 2600を用いて測定した。これにより、材料除去速度が得られた。
【0093】
・スラリー作製の手順
水性研磨組成物Q1〜Q7の作製のため;
セリア粒子(A1)、
ポリビニルホスホン酸(重量平均分子量〜10,000;;pH〜1.0;nが約82の式(I)のポリビニルホスホン酸)、又は、
ポリ(ビニルホスホン酸−アクリル酸)共重合体(重量平均分子量〜30,000−40,000ダルトン、フィーケンチャーのK値が約18)、及び、
任意に更なる添加剤、
を、下記表1に挙げたように、超純水に分散又は溶解させた。通常、pH調整のため、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)のようなpH調整剤が使用される。水性研磨組成物Q1〜Q7作製のためには、pH調整剤として、水酸化カリウムを使用した。
【0094】
表1:CMP組成物Q1〜Q7
実施例Q1〜Q7(参考例Q1〜Q4、Q7、実施例Q5、Q6)のCMP組成物と、それらのpH特性を下記表1に示す。ここでは、CMP組成物の水性媒体(C)は、脱イオン化水である。成分(A)、(B)、(D1)、(D2)及び(E)の量は、対応するCMP組成物の、質量%(wt%)又は百万分の一(ppm)で特定される。又は(C)以外の成分の量が、全体でCMP組成物のy質量%である場合、(C)の量は、CMP組成物の(100−y)質量%である。
【0095】
【表1】
【0096】
表2は、CMP組成物Q1〜Q4中の、ポリビニルホスホン酸(重量平均分子量〜10,000;pH〜1.0;nが約82の式(1)のポリビニルホスホン酸)又は、ポリ(ビニルホスホン酸−アクリル酸)共重合体(重量平均分子量〜30,000−40,000ダルトン、フィーケンチャーのK値が約18)に分散したセリア粒子の粒径分布とゼータ電位である。d50値は、Horiba LA−920を用いて測定し、粒子が原則球形と過程して算出した[平均粒子径分布の幅は、2つの交点間の距離(x−軸の単位で付与される)であり、それら交点は、粒径分布曲線極大粒子カウントが100%高さとして標準化した場合の、相対的粒子カウントの50%高さと、粒子分布曲線とが交差するところである]。ゼータ電位は、Malvern zeta sizerを用いて測定した。
【0097】
【表2】
【0098】
その結果から、ポリビニルホスホン酸とポリ(ビニルホスホン酸−アクリル酸)共重合体が、良好な分散性を有することが確認された。
【0099】
表3:CMP組成物Q1〜Q7の研磨性能
表3は、異なるダウンフォース(2psi、3.5psi)で、CMP組成物Q1〜Q7を用いて基板(S1)の化学−機械研磨を行った場合の研磨性能を示し、HDP/SiN選択性は、MRRについての、高密度プラズマシリコン酸化物(HDP)のシリコン窒化物(SiN)に対する選択性であり、HDP/PolySi選択性は、MRRについての高密度プラズマシリコン酸化物(HDP)のポリシリコン((PolySi)に対する選択性である。
【0100】
【表3】
【0101】
CMP組成物のこれら実施例を用いた本発明のCMP方法は、改善された研磨性能を示した。