(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定時間は前記チャック電極にオンした電圧をオフした後に前記チャック電極から流れる電流のピークの大きさが20%〜80%になるまでの時間の範囲から選ばれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の離脱制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<はじめに>
プラズマ処理においては、直流電圧源からチャック電極に電圧をオンすることにより生じるクーロン力によって被処理体を静電チャックに吸着させてからプラズマ処理を行う。その際にはウエハ裏面と静電チャック表面の間に伝熱ガスを供給する。プラズマ処理後に、伝熱ガスの供給をオフし、処理室内にN
2やArなどの不活性ガスを導入し、処理室内を所定の圧力(100mTorr〜400mTorr)に維持しながら、プラズマ処理中にチャック電極にオンしていた電圧とは正負が逆の電圧をオンした後に電圧をオフする。この処理により静電チャック表面及びウエハの除電を行っている。上記正負が逆の電圧をオンしているときに高周波電源から高周波電力を処理室内に供給してプラズマを発生させる除電処理もある。このように通常の除電処理では、除電処理後チャック電極への電圧はオフになっている。その除電処理後の状態で、支持ピンを上昇させて被処理体を静電チャックから持ち上げ、被処理体を静電チャックから離脱させる。
【0023】
ところが、静電チャックの表面は経時変化する。たとえば、静電チャックの表面には、徐々にプラズマ処理時に生成された反応生成物等の物質が付着し、堆積して絶縁膜となる。堆積した物質は、帯電しやすく電荷を保持してしまうため静電チャック表面の電位が変化してしまう。よって、これらの物質により静電チャックの吸着力が変化してしまう。具体的には、静電チャック表面に形成された絶縁膜に電荷が蓄積され、チャック電極への電圧をオフしても静電チャック表層に残留電荷が残る。この残留電荷は上述の除電処理を行っても除電することができない。その結果、残留電荷による静電吸着力が残った状態で支持ピンを上昇させてしまい、被処理体の破損や正常な搬送の妨げとなる場合があった。
【0024】
これに対して、静電チャックの表層を研磨したり、処理容器内をクリーニングしたりして静電チャック表層に堆積した物質を取り除くことが考えられる。しかしながら、これでは、堆積した物質自体を完全に除去できない場合もあるし、除去できたとしても処理容器を大気開放して静電チャックを取り出す必要があり装置の稼働率が著しく低下してしまう。よって、被処理体に割れ等が生じる前に残留電荷により静電チャックに吸着している被処理体を静電チャックから電気的に離脱する方法が望まれる。
【0025】
特に、体積抵抗率が1×10
12〜14Ωcmの誘電部材を溶射により形成した静電チャックでは、除電処理によりウエハを離脱させる従来の方法でもウエハの離脱が可能な場合もある。しかしながら、体積抵抗率が1×10
14Ωcm以上のクーロン型の静電チャックでは、より静電チャックの表層に電荷が逃げにくいため残留し易く、除電処理だけではウエハを静電チャックから離脱させることはより困難になる。
【0026】
また、近年、静電チャックの表面温度をヒータにて高速に温度調整する機構(以下、ヒータ内蔵静電チャック機構と称呼する)が利用されている。ヒータ内蔵静電チャック機構では、静電チャックに例えば体積抵抗率が1×10
14Ωcm以上の体積抵抗率が高い部材が採用されている。よって、ヒータ内蔵静電チャック機構では、クーロン型の、つまり静電吸着力が支配的な静電チャックが用いられ、より表層に電荷が残留し易く、逆電圧をオンする除電処理では残留電荷により吸着してしまったウエハを静電チャックから離脱させることは困難になってきている。そのため、近年、ヒータ内蔵静電チャック機構の利用が高まるとともに静電チャック表面に反応生成物が堆積して残留電荷が残り、残留電荷による残留吸着によって被処理体の離脱ができなくなるという課題がより顕著になっている。
【0027】
そこで、以下の本発明の一実施形態では、ヒータ内蔵静電チャック機構の利用時においても、被処理体を静電チャックから離脱することが可能な離脱制御方法及びその離脱制御方法を実行する制御装置を備えたプラズマ処理装置について説明する。
【0028】
[プラズマ処理装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示したプラズマ処理装置1は、RIE型のプラズマ処理装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器10)を有している。処理容器10は接地されている。処理容器10内では、被処理体にエッチング処理等のプラズマ処理が施される。
【0030】
処理容器10内には、被処理体としての半導体ウエハW(以下、ウエハWと称呼する)を載置する載置台12が設けられている。載置台12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、載置台12の上面を環状に囲むたとえばシリコンからなるフォーカスリング18が配置されている。
【0031】
処理容器10の内側壁と筒状支持部16の外側壁との間には排気路20が形成されている。排気路20には環状のバッフル板22が取り付けられている。排気路20の底部には排気口24が設けられ、排気管26を介して排気装置28に接続されている。排気装置28は図示しない真空ポンプを有しており、処理容器10内を所定の真空度まで減圧する。処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入又は搬出時に開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0032】
載置台12には、給電棒36および整合器34を介してプラズマ生成用の高周波電源32が電気的に接続されている。高周波電源32は、たとえば60MHzの高周波電力を載置台12に印加する。このようにして載置台12は下部電極としても機能する。処理容器10の天井部には、シャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。高周波電源32からのプラズマ生成用の高周波電力は載置台12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0033】
載置台12の上面にはウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。静電チャック40は導電膜からなるチャック電極40aを一対の絶縁層又は絶縁シートの間に挟み込んだものである。直流電圧源42は、スイッチ43を介してチャック電極40aに接続されている。静電チャック40は、直流電圧源42から電圧をオンされることにより、クーロン力でウエハWをチャック上に吸着保持する。
【0034】
また、チャック電極40aへの電圧をオフする場合にはスイッチ43によって接地部44へ接続された状態となっている。以下、チャック電極40aへの電圧のオフはチャック電極40aが接地された状態を意味する。
【0035】
チャック電極40aと直流電圧源42との間には電流計45が設けられている。電流計45は、プラズマ処理中にウエハWを吸着させるためにチャック電極40aに電圧がオンされたときに流れる電流値及びその電流の時間積分値を測定する。又は、プラズマ処理後に電圧がオフしたときに流れる電流値及びその電流値の時間積分値を測定する。
【0036】
伝熱ガス供給源52は、HeガスやArガス等の伝熱ガスをガス供給ライン54に通して静電チャック40上のウエハW裏面に供給する。天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する電極板56と、この電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部にはバッファ室60が設けられている。バッファ室60のガス導入口60aにはガス供給配管64を介してガス供給源62が連結されている。係る構成により、シャワーヘッド38から処理容器10内に所望のガスが供給される。
【0037】
載置台12の内部には、外部の図示しない搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行うためにウエハWを昇降させる支持ピン81が複数(例えば3本)設けられている。複数の支持ピン81は、連結部材82を介して伝えられるモータ84の動力により上下動する。処理容器10の外部へ向けて貫通する支持ピン81の貫通孔には底部ベローズ83が設けられ、処理容器10内の真空側と大気側との間の気密を保持する。
【0038】
処理容器10の周囲には、環状または同心状に延在する磁石66が上下2段に配置されている。処理容器10内において、シャワーヘッド38と載置台12との間のプラズマ生成空間には、高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成され、ウエハWの表面近傍に所望のガスによる高密度のプラズマが生成される。
【0039】
載置台12の内部には冷媒管70が設けられている。この冷媒管70には、配管72,73を介してチラーユニット71から所定温度の冷媒が循環供給される。また、静電チャック40の内部にはヒータ75が埋設されている。ヒータ75には図示しない交流電源から所望の交流電圧が印加される。かかる構成により、チラーユニット71による冷却とヒータ75による加熱によって静電チャック40上のウエハWの処理温度は所望の温度に調整される。なお、ヒータ75は設けられなくてもよい。また、ヒータ75は、静電チャック40の下側の表面に接着剤層と共に貼り付けてもよい。
【0040】
制御装置100は、プラズマ処理装置1に取り付けられた各部、たとえばガス供給源62、排気装置28、ヒータ75、直流電圧源42、スイッチ43、整合器34、高周波電源32、伝熱ガス供給源52、モータ84、およびチラーユニット71を制御する。また、制御装置100は、随時、電流計45により検出された電流値及び電流値の時間積分値を取得する。制御装置100は、ホストコンピュータ(図示せず)等とも接続されている。
【0041】
制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUはこれらの記憶領域に格納された各種レシピに従ってプラズマ処理を実行する。レシピにはプロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、処理室内温度(上部電極温度、処理室の側壁温度、ESC温度など)、圧力(ガスの排気)、高周波電力やチャック電極40aにオン、オフする電圧値、各種プロセスガス流量、伝熱ガス流量などが記載されている。
【0042】
かかる構成のプラズマ処理装置1において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ30を開口して搬送アーム上に保持されたウエハWを処理容器10内に搬入する。次に、静電チャック40の表面から突出した支持ピン81により搬送アームからウエハWが持ち上げられ、支持ピン81上にウエハWが保持される。次いで、その搬送アームが処理容器10外へ出た後に、支持ピン81が静電チャック40内に下ろされることでウエハWが静電チャック40上に載置される。
【0043】
ウエハW搬入後、ゲートバルブ30が閉じられ、ガス供給源62からエッチングガスを所定の流量で処理容器10内に導入し、排気装置28により処理容器10内の圧力を設定値まで減圧し、安定させる。さらに、高周波電源32から所定の高周波電力を載置台12に印加する。また、直流電圧源42からチャック電極40aに電圧をオンして、ウエハWを静電チャック40上に固定する。伝熱ガス供給源52は、HeガスやArガス等の伝熱ガスをガス供給ライン54を通して静電チャック40上のウエハW裏面に供給する。シャワーヘッド38からシャワー状に導入されたエッチングガスは、高周波電源32からの高周波電力によりプラズマ化される。これにより、上部電極(シャワーヘッド38)と下部電極(載置台12)との間のプラズマ生成空間にてプラズマが生成され、生成されたプラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWの主面がエッチングされる。
【0044】
プラズマエッチング終了後、静電チャック40からウエハを離脱させる際には、伝熱ガスの供給をオフし、チャック電極40aへの電圧をオフする。その状態で、不活性ガスを処理室内へ導入し処理室内を所定の圧力に維持しながら、プラズマ処理中にチャック電極40aへオンしていた電圧とは正負が逆の電圧を、チャック電極40aへオンした後に電圧をオフする。この処理により静電チャック40及びウエハWに存在する電荷を除電する除電処理が行われる。その状態で、支持ピン81を上昇させてウエハWを静電チャック40から持ち上げ、ウエハWを静電チャック40から離脱させる。ゲートバルブ30を開口して搬送アームが処理室内10内に搬入された後、支持ピン81が下げられウエハWが搬送アーム上に保持される。次いで、その搬送アームが処理室外へ出て、次のウエハWが搬送アームにより処理室内へ搬入される。この処理を繰り返すことで連続してウエハWが処理される。以上、本実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成について説明した。
【0045】
[カウンタ電圧の原理]
次に、一実施形態に係るウエハの離脱制御に用いるカウンタ電圧の原理を、
図2を参照しながら説明する。
図2(a)は絶縁膜が形成される前の静電チャックの状態を示し、
図2(b)は絶縁膜が形成された後の静電チャックの残留吸着状態を示し、
図2(c)はカウンタ電圧をオンしたときの静電チャックの状態を示す。
【0046】
例えば、直流電圧源42から2.5kwの電圧をオンすると、チャック電極40aに電荷(ここではプラスの電荷)が溜まる。
図2(a)に示したように、チャック電極40a表層に堆積した物質がなく、絶縁膜が形成されていないとき、ウエハWには処理室内のガスとの間のガス放電によりチャック電極40aに溜まったプラスの電荷に対応するマイナスの電荷が溜まる。これにより、ウエハWは静電チャックに静電吸着される。ウエハWをデチャックする際には、まず直流電圧源42の出力を0kwにし、かつ、
図1のスイッチ43によりチャック電極40aを接地部44に接続する。これにより、チャック電極40aに溜まっている電荷はなくなる。また、ウエハWに溜まった電荷は、処理室内のガスとの間のガス放電によりなくなる。これにより、ウエハWと静電チャックに電位差がなくなりウエハWが静電チャック40から剥がれる。
【0047】
ところが、静電チャック40の表層には、徐々にプラズマ処理により発生する反応生成物やプラズマのダメージ等により付着物が堆積し、絶縁膜が形成される。
図2(b)及び
図2(c)に示したように、絶縁膜41aが厚くなると、絶縁膜41a内に電荷が溜まる。例えば、
図2(b)は、絶縁膜41aにマイナスの電荷が溜まっている状態を示す。
【0048】
この状態では、絶縁膜41aの電荷の一部はウエハWのプラスの電荷と引き合い、絶縁膜41aの電荷の他の一部はチャック電極40aのプラスの電荷と引き合い、全体としてつり合った状態となっている。このときウエハWは残留電荷により吸着された状態になっている。また、チャック電極40aにもプラスの電荷が残った状態となるが、これはチャック電極40aに電圧をオンしたときにチャック電極40aにチャージされた電荷が残留電荷の一部とつり合うために逃げずに残った状態である。このチャック電極40aの電荷は残留電荷の総量に比例して増加していく。この状態では、ウエハWの裏面側と表面側で分極が生じている。
【0049】
このため、ウエハWと静電チャック40表面との間に残留吸着力が発生し、支持ピン81を上昇させても静電チャック40からウエハWが離脱せず、場合によっては支持ピン81によりウエハWが破損する。そして、通常の除電処理では、静電チャック40表面の帯電は除電できない。
【0050】
そこで、本実施形態では、ウエハWと静電チャック40表面との間に残留吸着力が生じないようにチャック電極40aにカウンタ電圧をオンする。
図2(c)に示したように、カウンタ電圧とは、ウエハWをガス放電させながら残留電荷の総量としてのマイナスの電荷とチャック電極40aのプラスの電荷とがつり合い、静電チャック40表面の電荷が0になるように直流電圧源42からチャック電極40aにオンされる電圧である。この状態では、ウエハWの裏面側と表面側で分極は生じていない。これにより、ウエハWと静電チャック40表面の残留吸着力が0となり、ウエハWと静電チャック40に電位差がなくなってウエハWを静電チャック40から離脱することができる。
【0051】
なお、上記説明では絶縁膜41aにマイナスの電荷が溜まっていると仮定したが、これはあくまで説明を簡略化するものであり、絶縁膜41aに溜まった電荷はプラスであってもよく、プラスとマイナスの電荷が混在していてもよい。
【0052】
[カウンタ電圧の決定方法]
次に、一実施形態に係るウエハWの離脱制御に用いるカウンタ電圧の決定方法について説明する。上述のカウンタ電圧の原理で説明したように絶縁膜41aに溜まったマイナスの残留電荷の総量に比例してそれとつり合うようにチャック電極40aにプラスの電荷が蓄積される。
【0053】
残留電荷がない状態の静電チャック40の場合、ウエハWを載置し、チャック電極40aへウエハWを吸着する所定の電圧V
1をオンにしたときに所定の時間流れる電流の時間積分値Qonは、電圧V
1をオフにしたときに所定の時間流れる電流の時間積分値Qoffと式(1)のように等しくなる。
【0054】
Qon=Qoff・・・(1)
ここでV
1の値がわかっているのでウエハWとチャック電極40aとの間の静電容量Coは式(2)のように求めることができる。
【0055】
Co=Qon/V
1・・・(2)
残留電荷がある状態の静電チャック40の場合、チャック電極40aの電圧をオフしても残留電荷とつり合うための電荷がチャック電極40aに残る。よって、その分だけ電圧をオフにしたときに所定の時間流れる電流の時間積分値Q'offが減少するので時間積分値Qoffとの差分を式(3)を計算することにより求める。求めた値が残留電荷の影響によりチャック電極40aにチャージされる差分の電荷ΔQとなる。
【0056】
ΔQ=Qon−Q'off・・・(3)
この差分の電荷ΔQは残留電荷量に比例するのでこの差分の電荷ΔQから残留電荷の総量Qとの相関関係を後述のカウンタ電圧の実験で予め求めておけば式(2)で求めた静電容量Coを用いてカウンタ電圧V
cを式(4)のように決定することができる。つまり、差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cとの相関関係を求めることができる。
【0057】
V
c=残留電荷の総量Q/Co=αΔQ/Co(α:定数)・・・(4)
[カウンタ電圧の実験]
次に、一実施形態に係るウエハの離脱制御に用いる残留電荷によりチャック電極40aにチャージされる差分の電荷ΔQと残留電荷の総量Qとの相関関係からカウンタ電圧V
cを求める実験を、
図3を参照しながら説明する。
図3は一実施形態に係る測定装置を示す。
【0058】
測定装置200は、イオナイザー202、電流計204、表面電位計206、モータ208、排気装置212、静電チャック40、直流電圧源42を有している。
【0059】
ここでは、イオナイザー202は、静電チャック40表面に電荷をチャージさせ擬似的に残留電荷を生成する。この状態で、モータ208を駆動させ、ウエハWを静電チャック40直上まで降下させ載置する。また、直流電圧源42からの電圧を静電チャック40のチャック電極40aにオン又はオフする。チャック電極40aに電圧をオンした状態でモータ208でウエハWを引き上げ、ウエハWが静電チャック40から剥がれた際の電圧をモニタする。また、チャック電極40aに電圧をオン又はオフしたときに所定の時間チャック電極40aから流れる電流の時間積分値を、チャック電極40aと直流電圧源42との間の電流計204にてモニタする。測定装置200内は、排気装置212により減圧可能である。
【0060】
残留電荷のない静電チャック40の状態でチャック電極40aへ電圧V
1をオンした後にオフし、電流の時間積分値をモニタする。これによって、式(1)、式(2)によりQon、Coを求める。その後、イオナイザー202により静電チャック40の表面に所定の残留電荷の総量Qを擬似的に生成させた後にウエハWを載置し、チャック電極40aに電圧をオンした後にオフし、オフした後の所定時間に流れる電流の時間積分値Q'offをモニタし、式(3)によりΔQを求める。また、チャック電極40aにかかる電圧を少しずつ段階的に大きな値に変更しながらオンにし、それに対応してウエハWを引き上げる動作を繰り返す。ウエハWがチャック電極40aから剥がれた際の電圧を所定の残留電荷の総量Qに対するカウンタ電圧V
cとする。これを値の異なる所定の残留電荷の総量Qによって求めて差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cとの相関関係(αの値)を求め、式(4)の関係を求めることができる。以上から差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cの相関関係を求めることができる。
【0061】
以上、カウンタ電圧の原理、カウンタ電圧の決定方法、カウンタ電圧の実験を用いたカウンタ電圧によるウエハWの離脱制御について説明した。以下では、カウンタ電圧を用いて静電チャック40からウエハWを離脱させる離脱制御方法について具体的に説明する。説明に当たっては、まず、本実施形態に係る離脱制御方法を実行する制御装置100の機能構成について、
図4を参照しながら説明し、次に、本実施形態に係る離脱制御方法について、
図5を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成図であり、
図5は、一実施形態に係る離脱制御方法を実行するためのフローチャートである。
【0062】
[制御装置の機能構成]
制御装置100は、プラズマ処理装置1を制御する。ここでは、静電チャック40からウエハWを離脱させるための制御方法を実行する制御装置100の機能を中心に説明する。
図4に示した制御装置100は、プロセス実行部105、取得部110、制御部115及び記憶部120を有する。
【0063】
プロセス実行部105は、記憶部120に記憶された複数のレシピのうち、所望のプロセスレシピを選択してそのプロセスレシピに従いプロセス処理を実行する。ここでは、エッチング処理が行われる。また、プロセス実行部105は、記憶部120に記憶されたクリーニングレシピに従いクリーニング処理を実行してもよい。
【0064】
取得部110は、プラズマ処理後にチャック電極40aにオンしていた電圧をオフした後にチャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offを所定時間測定し、測定結果として電流の時間積分値を取得する。
【0065】
制御部115は、予め定められた、残留吸着のない状態で計測したチャック電極40aへの電圧をオンしたときの電流の時間積分値Qonと、取得部110により取得された電流の時間積分値Q'offとの差分の電荷ΔQに対応するカウンタ電圧V
cを算出する。制御部115は、処理室内に不活性ガスを導入し、カウンタ電圧V
cをチャック電極40aにオンする。制御部115は、後述する離脱制御において直流電圧源42からの電圧制御(HV電圧制御)、カウンタ電圧の算出、支持ピン81の昇降制御、カウンタ電圧処理の開始条件の判定等を実行する。
【0066】
記憶部120には、エッチング処理を実行するための複数のプロセスレシピや、クリーニング処理を実行するためクリーニングレシピ等のレシピが記憶されている。また、記憶部120には、残留吸着のない状態で計測したチャック電極40aへの電圧をオンしたときの電流の時間積分値Qon、ウエハWとチャック電極40aとの間の静電容量Co、残留電荷によりチャック電極40aにチャージされる差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cとの相関関係が記憶されている。記憶部120は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いてRAM、ROMとして実現されうる。レシピは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部120に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部120に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。
【0067】
なお、制御装置100の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
【0068】
以上、本実施形態に係る離脱制御方法を実行する制御装置100の機能構成について説明した。次に、以上に説明した制御装置100の各部の機能を用いて、制御装置100により制御される離脱制御方法について、
図5を参照しながら説明する。
【0069】
[制御装置の動作:離脱制御方法]
まず、ウエハWが処理室内へ搬入され、プラズマ処理が開始されると、プロセスガスが導入され、処理室内が所定の圧力に維持される(S100)。次に、高周波電力を処理室内に導入しプラズマを発生させる(S101)。プラズマ発生後、チャック電極40aに電圧をオンしウエハを静電吸着させる(S102)。その後、ウエハ裏面と静電チャック40表面との間に伝熱ガスを供給し、その状態で所定時間プラズマ処理を行う(S103)。プラズマ処理が終了したら、プロセスガス及び高周波電力をオフし(S104)、伝熱ガスの供給をオフし(S105)、処理室内に不活性ガスを導入し、所定の第1の圧力(100mTorr〜400mTorr)に維持する(S106)。次に、チャック電極40aの電圧をオフした後、チャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offを所定時間測定する(S107)。
【0070】
次に、プラズマ処理中にオンしていたチャック電極40aの電圧とは正負が逆の電圧をチャック電極40aにオンし(S108)、その後、チャック電極40の電圧をオフする(S109)。次に、カウンタ電圧処理(S110)を行う。
【0071】
なお、ステップS108、S109は一般的な除電処理であって、以下に説明する
図6は本実施形態に係るカウンタ電圧を用いた除電処理である。また、電流の時間積分値Q'offを求めるための所定時間については後述する。
【0072】
図6は、カウンタ電圧処理を示したフローチャートである。
図6のカウンタ電圧処理が開始されると、ステップS107にて算出された、チャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offと、記憶部120に記憶された、残留電荷のない状態の電流の時間積分値Qonとから、式(3)を用いて、残留電荷によりチャック電極40aにチャージされる差分の電荷ΔQを算出する(S200)。
【0073】
次に、ステップS200にて算出された差分の電荷ΔQと、記憶部120に記憶された、ウエハとチャック電極間の静電容量Coと、同様に記憶部120に記憶された、差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cとの相関関係(定数α)とから、式(4)を用いて、カウンダ電圧V
cを算出する(S202)。
【0074】
例えば、
図7(a)は電流計45に流れる電流の波形であり、
図7(b)はそのときのチャック電極40aへのオン、オフの電圧の値を示す。
図7(a)に示した電流の波形では、時刻T
0に、直流電圧源42からチャック電極40aにオンしていた電圧がオフされている。この直後に電流計45は一つ目の電流のピークを検出する。時刻T
1に、直流電圧源42からチャック電極40aに逆電圧がオンされる。このとき、電流計45には、二つ目の電流のピークが現れる。時刻T
2に、直流電圧源42からチャック電極40aにオンしていた逆電圧がオフされる。このとき、電流計45には、三つ目の電流のピークが現れる。
【0075】
時刻T
3は、逆電圧をオフした時刻T
2後の任意の時刻である。このように、除電処理後のチャック電極40aへの電圧オフ(時刻T
0)のときに流れる時間T
0−T
1の間の所定時間における電流の時間積分値を、チャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offとしてもよい。逆電圧オフ(時刻T
2)のときに流れる時間T
2−T
3の間の所定時間における電流の時間積分値をチャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offとしてもよい。このとき電流の時間積分値Q'offを求めるための所定時間は、一つ目の電流のピーク若しくは三つ目の電流のピークの大きさが20%〜80%程度に小さくなるまでの時間の範囲から選ばれた時間である。本実施形態では、少なくとも時間T
0−T
1の間の所定時間における電流の時間積分値若しくは時間T
2−T
3の間の電流の所定時間における時間積分値を電流の時間積分値Q'offとしているが、差分の電荷ΔQとカウンタ電圧V
cとの相関関係が良い方を使用すればよい。
【0076】
図7(b)では、次のウエハのプラズマ処理においてチャック電極40aに再び電圧がオンされ(時刻T
4)、プラズマ処理後チャック電極40aにオンしていた電圧をオフし(時刻T
5)、時刻T
5から時刻T
8までの所定時間再び電流計45によりチャック電極40aから流れる電流の時間積分値Q'offが測定される。このようにしてウエハごとに電流の時間積分値Q'offが測定され、測定結果に基づき後述するカウンタ電圧のフィードバック制御が繰り返される。
【0077】
ステップS202にてカウンダ電圧V
cを算出した後、処理室内にガスを導入し、プラズマを生成し(S204)、チャック電極40aにカウンタ電圧V
cをオンする(S206)。これにより、静電チャック40表面の電荷が0になり、ウエハWと静電チャック40表面の残留吸着力が0となるため、ウエハWを静電チャック40から離脱させることができる。
【0078】
よって、静電チャック40上のウエハWを支持する支持ピン81を上昇させ(S208)、カウンタ電圧をオフする(S210)。以上によりカウンタ電圧処理を終了する。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態に係る離脱制御方法では、プロセス処理後、除電処理を行い、その後にカウンタ電圧処理を行う。これにより、ウエハWを静電チャック40から離脱させることができる。
【0080】
ここで、直流電圧源42の電圧をフィードバック制御してウエハWを静電チャック40から離脱する際、このフィードバック制御に費やされる時間は1秒程度である。よって、カウンタ電圧処理を実行することによりスループットを低下させる懸念はない。また、残留電荷によりウエハWが逆印加等による除電方法によっても離脱されなくなった非常時においても、ウエハWを静電チャック40から離脱させることができる。さらに、本実施形態に係る離脱制御方法では、ウエハWを支持ピン81により持ち上げる前に、電気的にどれだけの吸着力をもった電圧が発生するかがわかるため、ウエハWを破損させるリスクを回避することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、算出されたカウンタ電圧の大小に関わらずカウンタ電圧処理を実行し、フィードバック制御を実行してウエハWを離脱させたが、カウンタ電圧が所定の閾値を超える場合には異常と判定してプラズマ処理装置1の稼動を停止するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、カウンタ電圧をオンする際、処理室内にガスを導入し、プラズマを生成したが、導入するガスは不活性ガスが好ましい。また、プラズマを生成する替わりに又はプラズマの生成とともにDC放電させてもよい。
【0083】
[制御装置の動作:変形例]
以上の実施形態では、無条件にすべてのウエハWについて、カウンタ電圧処理にてフィードバック制御を行ったが、開始条件を満たした場合にカウンタ電圧処理を行い、開始条件を満たさない場合にはカウンタ電圧処理を行わないようにしてもよい。
【0084】
図8に示した変形例に係るカウンタ電圧処理では、
図6のカウンタ電圧処理にステップS212が追加され、ステップS212にてカウンタ電圧処理の開始条件に関する判定処理を行っている。それ以外のステップはすべて
図6と同じである。
【0085】
つまり、本変形例に係るカウンタ電圧処理では、ステップS200を実行することにより差分の電荷ΔQを算出した後、ステップS212にて、差分の電荷ΔQが予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。そして、差分の電荷ΔQが閾値を超えたと判定された場合には、カウンタ電圧V
cを算出し、算出されたカウンタ電圧V
cをチャック電極40aにオンする処理を実行し(S202〜S210)、差分が閾値以下であると判定された場合には、カウンタ電圧をチャック電極40aにオンすることなく、本処理を終了する。
【0086】
本変形例によれば、差分が閾値を超えたと判定された場合には、残留吸着力によってウエハWが離脱しにくい状態であり、カウンタ電圧による除電処理が必要であると判定する。一方、差分が閾値以下と判定された場合には、残留吸着力はさほど大きくなく、カウンタ電圧による除電処理が不要であると判定する。
【0087】
このようにステップS212は、本実施形態のカウンタ電圧処理の開始条件となる。例えば、ウエハレスクリーニング処理後、静電チャック表面が洗浄されたことにより、この開始条件を満たさなくなった場合、カウンタ電圧処理は行われない。このようにカウンタ電圧処理は、静電チャック40表面が変化し絶縁膜41aが所定の厚さ以上になる前は開始されず、絶縁膜41aが所定の厚さ以上になって初めて自動開始される。これにより、無駄な処理を省き省エネルギーを図ることができる。
【0088】
なお、ステップS212の電流の時間積分値が予め定められた閾値を超えるか否かの判定は、本変形例のようにウエハ単位(所定の被処理体の処理枚数単位)で行ってもよいし、ロット単位で行ってもよい。
【0089】
以上、一実施形態及び変形例に係る離脱制御方法によれば、直流電圧源のカウンタ電圧の制御によりウエハWを静電チャック40から容易に離脱させることができる。これにより、静電チャック表面の変質が起こって徐々にウエハWが離脱しにくくなっても、ウエハWが離脱できないというエラー発生までの時間を伸ばすことができる。これにより、顧客のウエハの損失軽減や装置稼働率の向上を図ることができる。
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、本発明に係るプラズマ処理装置は、
図9に示したように、3つ以上のゾーンに分割されたヒータ75を有し、ヒータ75の分割ゾーンに対応してチャック電極40aが分割されてもよい。ヒ−タ75は、静電チャック40内またはその近傍に設けられてもよい。
図9ではヒ−タ75は、静電チャック40内に埋設されている。ヒータ75は、中心のセンタゾーン75a1、センタゾーン75a1の外周側に同心円状に設けられたミドルゾーン75a2、最外周のエッジゾーン75a3に分割されている。チャック電極40aは、ヒータ75の各分割ゾーンに対応して、センタチャック電極40a1、ミドルチャック電極40a2、エッジチャック電極40a3に分割されている。センタチャック電極40a1、ミドルチャック電極40a2、エッジチャック電極40a3には、直流電圧源42a1、直流電圧源42a2、直流電圧源42a3がそれぞれ接続されている。
【0091】
これにより、センタチャック電極40a1、ミドルチャック電極40a2、エッジチャック電極40a3からなるゾーン毎にカウンタ電圧V
cが算出される。これにより、ゾーン毎の静電チャック40の残留電荷状態に応じてカウンタ電圧V
cを調整することができる。例えば、最外周のエッジゾーン領域だけ残留電荷による残留吸着が大きい場合には、最外周のエッジゾーン領域だけカウンタ電圧をオンするように制御してもよい。このようにすることで残留電荷が面内で異なる分布であってもウエハWが割れたりずれたりせずに静電チャック40から離脱させることができる。
【0092】
また、例えば、本発明に係るプラズマ処理装置は、双電極構造を有してもよい。
図10を参照しながら、双電極とカウンタ電圧について説明すると、静電チャック40は、双極チャック電極40a4、40a5を有する。つまり、静電チャック40内又は表面には、2枚の同一形状の電極が設けられている。双極チャック電極40a4、40a5には正負が逆の電圧がオンされることにより異なる極性の電荷が溜まっている。双電極構造では、通常、各チャック電極40a4、40a5にオンする電圧値は小さい。このため、ウエハWに対する電気的なダメージが少ない。
【0093】
双極チャック電極40a4、40a5には、直流電圧源78,直流電圧源79が接続されている。これにより、双電極のチャック電極40a4、40a5毎にカウンタ電圧V
cが算出される。これによりチャック電極40a4、40a5毎の静電チャック40の残留電荷状態に応じてカウンタ電圧V
cを調整することができる。
【0094】
以上ではプラズマ処理装置で実行されるプラズマ処理としてプラズマエッチングを例に挙げて説明したが、本発明はプラズマエッチングに限られず、例えば、化学気相蒸着(CVD: Chemical Vapor Deposition)によりウエハ上に薄膜を形成するプラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリング、アッシング等を行うプラズマ処理装置にも適用可能である。
【0095】
また、本発明に係るプラズマ処理装置は、チャンバ内の平行平板電極間に生じる高周波の放電により容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を生成する容量結合型プラズマ処理装置に限られず、例えば、チャンバの上面または周囲にアンテナを配置して高周波の誘導電磁界の下で誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を生成する誘導結合型プラズマ処理装置、マイクロ波のパワーを用いてプラズマ波を生成するマイクロ波プラズマ処理装置等にも適用可能である。
【0096】
本発明においてプラズマ処理を施される被処理体は、半導体ウエハに限られず、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)用の大型基板、EL素子又は太陽電池用の基板であってもよい。