特許第6013825号(P6013825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013825
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20161011BHJP
   H04N 1/403 20060101ALI20161011BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H04N1/40 104
   H04N1/40 103A
   B41J2/01
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-167031(P2012-167031)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-27527(P2014-27527A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】福井 一希
(72)【発明者】
【氏名】野村 星也
(72)【発明者】
【氏名】連 国男
【審査官】 松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−196885(JP,A)
【文献】 特開2001−105632(JP,A)
【文献】 特開2004−106248(JP,A)
【文献】 特開2009−255381(JP,A)
【文献】 特開平7−125338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/405
H04N 1/403
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続階調画像データに対して網点化を行うためのスクリーニング処理を施すことにより、網点化画像データを生成する画像処理装置において、
前記スクリーニング処理のための網パターンデータを複数種類格納するスクリーニングデータ格納手段と、
前記複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行うスクリーニング出力濃度補正手段と、
前記出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、前記連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施し、前記連続階調画像データから出力濃度補正済網点化画像データを作成する網点化画像データ作成手段と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記スクリーニング出力濃度補正手段は、網パターンデータに設定されている各画素の閾値に対してノズルシェーディング係数を乗じることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記スクリーニング出力濃度補正手段は、連続階調画像データのうちの一部領域だけに対応する網パターンデータに対して補正を行いつつ、前記網パターンデータを連続階調画像データの全領域にわたって移動させるようにして補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
連続階調データに対して網点化を行うためのスクリーニング処理を施すことにより、網点化画像データを生成する画像処理方法において、
前記スクリーニング処理を行うための複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行うスクリーニング出力濃度補正工程と、
前記出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、前記連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施し、前記連続階調画像データから出力濃度補正済網点化画像データを作成する網点化画像データ作成工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理方法において、
前記スクリーニング出力濃度補正工程は、網パターンデータに設定されている各画素の閾値に対してノズルシェーディング係数を乗じることを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像処理方法において、
前記スクリーニング出力濃度補正工程は、連続階調画像データのうちの一部領域だけに対応する網パターンデータに対して補正を行いつつ、前記網パターンデータを連続階調画像データの全領域にわたって移動させるようにして補正を行うことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続階調画像データに対して所定の網パターンに基づいてスクリーニング処理を行って網点化画像データを作成する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェット印刷装置では、インクジェットノズルの形状や撥水処理のバラツキに起因して、印刷画像に濃度ムラやスジムラ等のムラが発生することがある。そのため、実際に画像を印刷するのに先立って、濃度レベルが異なる複数の網パターンに基づくスクリーニング処理を行った網点化画像データをテスト的に印刷し、このテスト的に印刷した網点化画像パターンの濃度を測定して、複数のインクジェットノズルに対するノズルシェーディング補正を行っている。なお、インク濃度の変化等は、画像の印刷中も生じるので、ムラの発生を抑制できないことがある。そこで、そのような場合であってもムラの発生を確実に防止するインクジェット印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、インクジェットノズルの印刷領域外にテストパターンを記録するパターン記録部と、網パターン記録部によって記録されテストパターンの濃度を測定する濃度測定部と、濃度測定部で測定された濃度の測定値に基づいて、各インクジェットノズルからのインクの吐出量を補正する吐出量補正部とを備えている。
【0004】
このように構成された装置は、実際に画像を印刷する前にテストパターンを印刷し、その濃度を読み取ってから、画像データに対してシェーディング補正を行って各インクジェットノズルの吐出量を補正しつつ実際の印刷を行うようになっている。つまり、印刷直前の濃度に基づき補正を行うので、確実に印刷画像におけるムラを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−106248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、複数種類の網パターンに基づくスクリーニング処理を行った印刷の場合に、異なる網パターンによって印刷された境界においてムラが生じることが避けられないという問題がある。例えば、文字用の網パターンとして大きなドットを用い、絵柄用の網パターンとして小さなドットを用いた場合には、それらの境界部分においてムラが生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、網パターンを補正することにより、複数種類の網パターンに基づくスクリーニング処理を行った印刷を実施してもムラの発生を防止することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、連続階調画像データに対して網点化を行うためのスクリーニング処理を施すことにより、網点化画像データを生成する画像処理装置において、前記スクリーニング処理のための網パターンデータを複数種類格納するスクリーニングデータ格納手段と、前記複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行うスクリーニング出力濃度補正手段と、前記出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、前記連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施し、前記連続階調画像データから出力濃度補正済網点化画像データを作成する網点化画像データ作成手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、スクリーニング出力濃度補正手段は、スクリーニングデータ格納手段に格納されている複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行う。網点化画像データ作成手段は、出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施して出力濃度補正済網点化画像データを作成する。連続階調画像データに対して出力濃度補正を行うのではなく、網パターンデータに対して出力濃度補正を行うので、異なる種類の網パターンデータによる印刷時に吐出特性(単位面積当たりの打滴数)を揃えることができ、複数種類の網パターンデータに基づくスクリーニング処理を行った印刷を実施してもムラの発生を防止することができる。
【0010】
また、本発明において、前記スクリーニング出力濃度補正手段は、網パターンデータに設定されている各画素の閾値に対してノズルシェーディング係数を乗じることが好ましい(請求項2)。
【0011】
網パターンデータの各画素の閾値に対してノズルシェーディング係数を乗じることで、網パターンデータの出力濃度を補正できる。
【0012】
また、本発明において、前記スクリーニング出力濃度補正手段は、連続階調画像データのうちの一部領域だけに対応する網パターンデータに対して補正を行いつつ、前記網パターンデータを連続階調画像データの全領域にわたって移動させるようにして補正を行うことが好ましい(請求項3)。
【0013】
連続階調画像データの一部領域に対応する網パターンデータに対して補正を行い、順次に連続階調画像データの全領域に移動させるように補正するので、処理負荷を軽減して高速に処理を行うことができる。また、一度に使用する記憶領域を小さくできるので、コストを抑制できる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、連続階調データに対して網点化を行うためのスクリーニング処理を施すことにより、網点化画像データを生成する画像処理方法において、前記スクリーニング処理を行うための複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行うスクリーニング出力濃度補正工程と、前記出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、前記連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施し、前記連続階調画像データから出力濃度補正済網点化画像データを作成する網点化画像データ作成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、スクリーニング出力濃度補正工程では、複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行う。網点化画像データ作成構成では、出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施して出力濃度補正済網点化画像データを作成する。連続階調画像データに対して出力濃度補正を行うのではなく、網パターンデータに対して出力濃度補正を行うので、異なる種類の網パターンデータによる印刷時に吐出特性(単位面積当たりの打滴数)を揃えることができ、複数種類の網パターンデータに基づくスクリーニング処理を行った印刷を実施してもムラの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像処理装置によれば、スクリーニング出力濃度補正手段は、スクリーニングデータ格納手段に格納されている複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行う。網点化画像データ作成手段は、出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施して出力濃度補正済網点化画像データを作成する。連続階調画像データに対して出力濃度補正を行うのではなく、網パターンデータに対して出力濃度補正を行うので、異なる種類の網パターンデータによる印刷時に吐出特性(単位面積当たりの打滴数)を揃えることができ、複数種類の網パターンデータに基づくスクリーニング処理を行った印刷を実施してもムラの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例に係る画像処理装置を備えたインクジェット印刷システムの全体構成を示す図である。
図2】(a)及び(b)は、ノズルシェーディング補正を説明する模式図である。
図3】入力網に対する出力濃度の関係と補正について説明する模式図である。
図4】網パターンデータによる印刷結果の模式図であり、(a)は30%を示し、(b)は18%を示す。
図5】異なる網パターンデータを用いて印刷した理想的な結果を拡大して示した模式図である。
図6】異なる網パターンデータを用いて印刷した実際の結果を拡大して示した模式図である。
図7】ノズルシェーディング補正を行い、異なる網パターンデータを用いて印刷した結果を拡大して示した模式図である。
図8図7の結果を隣接して配置した状態を示し、問題が生じることを説明する模式図である。
図9】網パターンデータを示す模式図であり、(a)は網マスクパターンデータを、(b)は30%網パターンデータを、(c)は18%網パターンデータを示す。
図10】網パターンデータに対して行う出力濃度補正を説明する模式図である。
図11】網パターンデータを示す模式図であり、(a)は出力濃度補正を行った網パターンデータを示し、(b)は30%網パターンデータを示す。
図12】印刷時の説明に供する模式図である。
図13】画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係る画像処理装置を備えたインクジェット印刷システムの全体構成を示す図である。
【0019】
インクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。
【0020】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。インクジェット印刷装置3は、連続紙WPに対して印刷を行う。排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0021】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。
【0022】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、表面印刷ユニット13と、表面乾燥部15と、表面検査部17と、反転ユニット19と、裏面印刷ユニット21と、裏面乾燥部23と、裏面検査部25とをその順に設けられている。なお、本実施例における「表面」、「裏面」とは、最初に印刷される連続紙WPの印刷面を「表面」といい、次に印刷される連続紙WPの印刷面を「裏面」という。
【0023】
表面印刷ユニット13は、インク滴を吐出する印刷ヘッド27を備えている。印刷ヘッド27は、連続紙WPの搬送方向と直交する方向に複数個のノズルを備えている。表面印刷ユニット13は、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個設けられているのが一般的である。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)について個別に4個の印刷ユニット13を備えている。しかし、本実施例では、発明の理解を容易にするために、1個の印刷ユニット13だけを備えているものとして説明する。なお、これは、後述する裏面印刷ユニット21についても同様である。
【0024】
表面乾燥部15は、インク滴が吐出されて画像が印刷された連続紙WPの表面を乾燥させる。表面乾燥部15は、例えば、図示しないヒートドラムを備え、連続紙WPの裏面をヒートドラムに接触させることにより、連続紙WPの表面に打滴されたインク滴を乾燥させる。
【0025】
表面検査部17は、連続紙WPの表面に印刷された画像について汚れや抜け等がないかを検査する。この表面検査部17は、カメラや光学系を備え、表面検査部17の直下を搬送される連続紙WPを撮影して、表面検査画像として出力する。
【0026】
反転ユニット19は、表面を上向きの状態で搬送されてきた連増資WPを反転させる。つまり、連続紙WPの裏面が上向きの状態となるように連続紙WPを裏返す。
【0027】
裏面印刷ユニット21は、表面印刷ユニット13と同様に印刷ヘッド29を備えている。印刷ヘッド29は、表面印刷ユニット13の印刷ヘッド27と同一のものである。
【0028】
裏面乾燥部23は、表面乾燥部15と同様の構成であり、連続紙WPの裏面を乾燥させる。裏面検査部25は、表面検査部17と同様の構成であり、連続紙WPの裏面に汚れや抜け等がないかを検査する。具体的には、裏面検査部25は、カメラや光学系を備え、裏面検査部25の直下を搬送される連続紙WPを撮影して、裏面検査画像として出力する。
【0029】
また、インクジェット印刷装置3は、印刷制御部31と、画像処理装置33とを備えている。印刷制御部31は、画像処理装置33から画像データ(後述する出力濃度補正済網点化画像データ)を受信して、画像データに含まれている表面印刷画像データと裏面印刷画像データとの印刷に応じた操作を駆動ローラ7,11、表面印刷ユニット13、裏面印刷ユニット21に対して行う。画像処理装置33は、外部のコンピュータ等から表面印刷画像データと裏面印刷画像データとを含む印刷データ(連続階調画像データ)を受信して、印刷データを後述する出力濃度補正済網点化画像データに処理し、印刷制御部31へ出力する。画像処理装置33は、スクリーニングデータ格納部35と、ノズルシェーディング係数格納部37と、スクリーニング出力濃度補正部39と、網点化画像データ作成部41とを備えている。
【0030】
なお、スクリーニングデータ格納部35が本発明における「スクリーニングデータ格納手段」に相当し、スクリーニング出力濃度補正部39が本発明における「スクリーニング出力濃度補正手段」に相当し、網点化画像データ作成部41が本発明における「網点化画像データ作成手段」に相当する。
【0031】
スクリーニングデータ格納部35は、網点化を行うための網パターンデータを複数種類格納している。複数種類の網パターンデータとしては、例えば、「絵柄」を網点化するための網パターンデータや、「文字」を網点化するための網パターンデータなどがある。ここでは、絵柄用と文字用の二種類の網パターンデータが格納されているものとする。また、二種類の網パターンデータは、必要最小限のタイル単位で格納されており、以下の処理において網パターンデータを使用する際は、タイル単位の網パターンデータを随時読み出して処理に用いることが好ましい。
【0032】
ノズルシェーディング係数格納部37は、詳細を後述するように、複数個のノズルの吐出特性のバラツキを解消するためのノズルシェーディング係数を格納する。
【0033】
スクリーニング出力濃度補正部39は、スクリーニングデータ格納部35に格納されている二種類の網パターンデータに対して、インクジェット印刷装置3による印刷時の出力濃度補正を行う。
【0034】
網点化画像データ作成部41は、出力濃度の補正がされた二種類の網パターンデータにより、印刷データによって表現される複数種類の画像(例えば、絵柄や文字などの図柄)の各々にスクリーニング処理を施す。これにより、連続階調画像データである印刷データから出力濃度補正済網点化画像データを作成する。作成された出力濃度補正済網点化画像データは、印刷制御部31に送信される。
【0035】
ここで図2図4を参照する。なお、図2(a)及び図2(b)は、ノズルシェーディング補正を説明する模式図であり、図3は、入力網に対する出力濃度の関係と補正について説明する模式図であり、図4は、網パターンデータによる印刷結果の模式図であり、(a)は30%を示し、(b)は18%を示す。
【0036】
上述した印刷ヘッド27(及び印刷ヘッド29)は、連続紙WPの搬送方向と直交する主走査方向に複数個のノズルを備えている。複数個のノズルの吐出特性が全て同じであれば、同じ信号を与えることにより印刷時に同じインク濃度を得ることができる。しかし、実際には、複数個のノズルの吐出特性にバラツキがあるので、図2(a)に示すように、複数個のノズルには濃度値のバラツキが生じる。そこで、複数種類の濃度が異なる網パターンデータによるテストパターン(例えば、100%、80%、60%、40%、20%、5%の6種類)を連続紙WPに印刷させた後、表面検査部17(または裏面検査部25)でテストパターンを撮影し、その撮影されたテストパターンから各ノズルの濃度値を読み取る。そして、濃度値が全ノズルで同一となるように補正を行うためのノズルシェーディング係数を求める。
【0037】
図3は、あるノズルによりテストパターンの濃度が30%で出力濃度0.5を得るようにするために、入力網%に対して出力の網%を生成する例を示している。図3中の実線で示した特性線は、目標濃度であるが、実際には二点鎖線で示すように入力と出力の関係が非線形の特性線となる。そのため、30%のテストパターンを印刷すると、二点鎖線で描いた特性線との交点から左に延長した濃度値になる。つまり、目標濃度0.5よりも高い濃度値となってしまう。図3から明らかなように目標濃度0.5を得るには、18%の網パターンを与えればよい。このような特性線の関係を図3に示すテーブル形式や3次関数で記憶しているのが、上述したノズルシェーディング係数格納部37である。因みに、図4(a)は、30%の網パターンデータで印刷したときの結果を示し、図4(b)は、18%の網パターンデータで印刷したときの結果を示す。30%の網パターンデータでは、3画素ごとに1個の打滴が行われ、18%の網パターンデータでは、5画素ごとに1個の打滴が行われることになる。したがって、上述したノズルシェーディング補正を行うには、30%の網パターンデータ(図4(a))で印刷を行う際には、実際には18%の網パターンデータ(図4(b))で印刷を行うことになる。また、実際には、同じ濃度の網パターンデータであっても、絵柄と文字とでは異なる打滴の配置とするのが一般的である。
【0038】
次に、図5図8を参照し、異なる種類の網パターンデータを用いて印刷した場合に生じる問題について説明する。
【0039】
なお、図5は、異なる網パターンデータを用いて印刷した理想的な結果を拡大して示した模式図であり、図6は、異なる網パターンデータを用いて印刷した実際の結果を拡大して示した模式図であり、図7は、ノズルシェーディング補正を行い、異なる網パターンデータを用いて印刷した結果を拡大して示した模式図であり、図8は、図7の結果を隣接して配置した状態を示し、問題が生じることを説明する模式図である。
【0040】
絵柄に対して適用する網パターンデータによって印刷を行った場合には、図5左側に示すように、ノズルAとノズルBとでそれぞれに2ドット打滴するが、上下に互い違いに配置されたとする。また、文字に対して適用する網パターンデータによる場合には、図5右側に示すように、ノズルAとノズルBとでそれぞれ2ドット打滴するが、上下左右ともに隣接する位置に配置されたとする。この理想的な印刷結果では、絵柄の網パターンデータと文字の網パターンデータともに、8個の打滴位置に対してノズルAの位置で2ドット、ノズルBの位置で2ドットの合計4ドットの打滴が行われる。
【0041】
図5は、理想的な結果であるが、ここでは例えば、ノズルBの吐出特性がノズルAに比べてよく、大きな液滴を吐出する特性を有するものとする。すると、絵柄用の網パターンデータ(図6左側)では、ノズルBの影響により、ノズルAの位置で約3.4ドットの面積相当となり、ノズルBの位置で約4.6ドットの面積相当になる。また、文字用の網パターンデータ(図6右側)では、ノズルBの影響により、ノズルAの位置で約2.5ドットの面積相当となり、ノズルBの位置で約3.2ドットの面積相当となる。
【0042】
ここで、上述したようなノズルシェーディング係数を「画像データ」に対して乗じて、吐出特性を揃えるように補正を行う。その補正は、例えば、ノズルBの一つのノズルからの打滴を行わないというものであり、その場合の結果は、図7に示すようなものとなる。この場合には、絵柄用の網パターンデータ(図7左側)では、ノズルAの位置で約2.7ドットの面積相当となり、ノズルBの位置で約2.3ドットの面積相当になる。また、文字用の網パターンデータ(図7右側)では、ノズルAの位置で約2.3ドットの面積相当となり、ノズルBの位置では約2ドットの面積相当となる。このようにノズルシェーディング補正により、理想的な印刷時におけるノズルAとノズルBのそれぞれ2ドットに近いものとすることができる。
【0043】
ここで、これらの絵柄用と文字用の網パターンデータによる印刷が隣接していた場合について説明する。例えば、絵柄用の網パターンデータによる印刷の下部に、隣接して文字用の網パターンデータによる印刷が行われたとする。この状態を示すのが図8である。すると、絵柄用の網パターンデータで印刷した領域と、文字用の網パターンデータで印字した領域とにおいて、ノズルAでは2.7ドットの面積相当と2.3ドットの面積相当となり、ノズルBでは2.3ドットの面積相当と2ドットの面積相当となる。その結果、これらの境界においてムラとなって視認されることになる。本発明は、このようにして生じるムラを防止するものである。
【0044】
ここで図9図11を参照して、上述した網パターンデータ及び網パターンデータに対する出力濃度補正について詳細に説明する。なお、図9は、網パターンデータを示す模式図であり、(a)は網マスクパターンデータを、(b)は30%網パターンデータを、(c)は18%網パターンデータを示し、図10は、網パターンデータに対して行う出力濃度補正を説明する模式図であり、図11は、網パターンデータを示す模式図であり、(a)は出力濃度補正を行った網パターンデータを示し、(b)は30%網パターンデータを示す。
【0045】
本実施例における網パターンデータとは、例えば、図9(a)に示すように、画像データに比較して充分に小さな必要最小限のタイル単位で構成されている。ここでは、一例として、網パターンデータが6×7画素で構成されているとする。そして、各種の画像(絵柄や文字)ごとに網パターンデータが用意されているが、各網パターンデータの各画素には予め各種の画像(絵柄や文字)ごとに適切な閾値が設定されている。例えば、画像データの印刷対象となっている領域の階調が30%の網パターンデータで得られる濃度である場合には、網パターンデータの各画素値と30(%)とを比較し、それ以下の画素値である画素の位置に打滴される。これを模式的に示したのが図9(b)であり、18%の例が図9(c)である。
【0046】
上述したスクリーニング出力濃度補正部39は、二種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行うが、具体的には網パターンデータに対してノズルシェーディング係数を乗じる。つまり、網パターンデータの各画素の閾値を変更することを意味する。例えば、30%の入力網%に対して出力網を18%としたい場合には、図3の特性線をy=xの直線で反転させるように処理することになる。具体的には、図10に示すように、入出力を入れ替えることになる。その場合の網パターンデータの一例を図11(a)に示し、その網パターンデータにおける30%の網パターンデータの一例を図11(b)に示す。
【0047】
このように網パターンデータに対してノズルシェーディング係数を乗じて出力濃度補正を行うことにより、異なる種類の網パターンデータによる印刷時に吐出特性(単位面積当たりの打滴数)を揃えることができる。したがって、異なる画像の境界においてムラを防止できる。
【0048】
次に、図12及び図13を参照して、連続階調画像データの印刷時における画像処理装置動作について説明する。図12は、印刷時の説明に供する模式図であり、図13は、画像処理装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、表面印刷ユニット13により表面にのみ印刷する場合を例にとって説明する。また、画像データは、木の絵柄の上にTREEという文字が一部重なっているものであるとする。
【0049】
ステップS1(スクリーニング出力濃度補正工程)
画像処理装置33は、連続階調画像データである印刷データを受信し、スクリーニング出力補正部39がスクリーニング出力濃度補正処理を行う。スクリーニング出力補正部39は、スクリーニングデータ格納部35に格納されている二種類の網パターンデータのうち、印刷対象領域の画像(図柄や文字)に応じた、タイル単位の網パターンデータSPに対して印刷時の出力濃度補正を行う。印刷対象領域は、図12に矢付二点鎖線で示すように、主走査方向に向かって行い、順次紙送り方向の上流側に向かって移動させてゆく。
【0050】
ステップS2(網点化画像データ作成工程)
網点化画像データ作成部41は、スクリーニング出力濃度補正部39が作成したタイル単位の出力濃度補正が行われた網パターンデータSPを用いて、印刷データの画像に応じたスクリーニング処理を施し、出力濃度補正済網点化画像データを作成する。網点化画像データ作成部41は、作成した出力濃度補正済網点化画像データを印刷制御部31に送信する。
【0051】
ステップS3
画像の全面にわたって出力濃度補正網点化画像データの作成が完了したか否かで処理を分岐する。全面にわたって作成が完了した場合には、処理を終了する。一方、全面にわたって作成が完了していない場合には、ステップS1に戻って次の印刷対象領域におけるタイル単位の網パターンデータについて印刷時の出力濃度補正を行う。
【0052】
本実施例によると、スクリーニング出力濃度補正部39は、スクリーニングデータ格納35に格納されている複数種類の網パターンデータに対して印刷時の出力濃度補正を行う。網点化画像データ作成部41は、出力濃度補正が行われた複数種類の網パターンデータにより、連続階調画像データによって表現される複数種類の画像の各々にスクリーニング処理を施して出力濃度補正済網点化画像データを作成する。連続階調画像データに対して出力濃度補正を行うのではなく、網パターンデータに対して出力濃度補正を行うので、異なる種類の網パターンデータによる印刷時に吐出特性を揃えることができ、複数種類の網パターンデータを用いてもムラの発生を防止することができる。
【0053】
また、連続階調画像データの一部領域に対応する網パターンデータSPに対して補正を行い、順次に連続階調画像データの全領域に移動させるように補正するので、処理負荷を軽減して高速に処理を行うことができる。また、一度に使用する記憶領域を小さくできるので、コストを抑制できる。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0055】
(1)上述した実施例では、印刷データのうち一部領域に相当する必要最小限のタイル単位の網パターンデータSPを移動させつつ印刷を行っている。しかし、本発明は、印刷ヘッド27(印刷ヘッド29)の主走査方向にわたって配置されている全ノズル数に相当する領域を網パターンデータの単位としてもよい。
【0056】
(2)上述した実施例では、連続階調画像データに含まれる各種の画像として絵柄と文字を例にとって説明したが、他の種類の画像が含まれていても同様に効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0057】
3 … インクジェット印刷装置
WP … 連続紙
27 … 印刷ヘッド
31 … 印刷制御部
33 … 画像処理装置
35 … スクリーニングデータ格納部
37 … ノズルシェーディング係数格納部
39 … スクリーニング出力濃度補正部
41 … 網点化画像データ作成部
SP … タイル単位の網パターンデータ
図1
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図13