(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタの周波数特性が、外部からRF信号が入力された場合の受信モードと、校正信号源から入力されたRF信号を用いて前記補正回路で前記復調信号の振幅及び位相を補正する補正モードと、で独立している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の受信機。
前記校正信号源は、発振器、前記発振器の出力が入力される、自乗積回路の多段従属接続段、前記自乗積回路の多段従属接続段の任意の段の出力を選択する選択回路、及び前記選択回路の出力の後段に設けられた可変分周器を有している、請求項6に記載の受信機。
前記フィルタ群及び前記加算部は、単位キャパシタと単位キャパシタの2倍のキャパシタを用いたラダーネットワークによって、入力電圧をサンプリングし、前記入力電圧に比例した電荷を2のべき乗で分割した電荷を転送するスイッチトキャパシタ回路からなる、請求項10に記載の受信機。
【背景技術】
【0002】
送信するデータを同相(I)成分と直交(Q)成分とに分けた後、これらに互いに90度位相が異なる搬送波を変調して無線周波数(以下「RF(Radio Frequency)」と略記する)帯の直交変調信号を生成する無線システムが携帯電話等で採用されている。
【0003】
このような無線システムにおいて、近年では、従来のスーパーヘテロダイン方式に代わり、RF受信信号をDC付近の低い、例えば100kHz〜200kHzの、中間周波数(以下「IF(Intermediate Frequency)」という)に周波数変換した後に、ベースバンド信号を得る低IF方式が広く用いられるようになっている。この方式は、スーパーヘテロダイン方式に比べて外付け部品点数を減らすことでき、無線機を低コストで製造することが出来る。
【0004】
低IF方式では、周波数f
LOのローカル信号を発生させる局部発振器(以下「LO(Local Oscillator)という」)を用いて信号周波数がf
LO+f
IFのRF希望信号をf
IFに周波数変換する際に、LO周波数に対して受信信号と対称の関係にある周波数がf
LO−f
IFの妨害波(以下、「イメージ信号」という)も同様に周波数f
IFに周波数変換され、受信信号に重畳するという問題が生じ、受信信号のみを取り出すことが出来ない。
【0005】
この問題を解決するために、
図28に示す複素ダウンコンバータ2800を用いた周波数変換が用いられている。
【0006】
図28の複素乗算器2801への入力RF信号は、下記(1)式のように表現できる。
【0007】
【数1】
・・・(1)
【0008】
図29Aに上記(1)式に示したRF信号の正の周波数のみの周波数スペクトルを示す。
図29Aにおいて、希望信号(Desired Signal)成分は、f
LO+f
IFに、イメージ信号(Image Signal)成分は、f
LO−f
IFに位置している。
【0009】
ここで、
図28の複素ダウンコンバータ2800を用いた周波数変換の動作を説明する。
【0010】
ローカル信号として下記(2)式で表される複素正弦波発生器2802で発生させた複素正弦波を上記(1)式のRF信号と乗算する。
【0011】
【数2】
・・・(2)
【0012】
ここで、kは任意のゼロ以外の実数であり、ローカル信号の振幅だけではなく、複素乗算器2801の利得を正規化し、その利得の分もkに含めている。θは、RF信号の搬送波の位相と複素ダウンミキサ内のローカル信号の位相との差を表すものとする。
【0013】
複素乗算器2801の出力を2組の実数LPF2803で処理することにより、RF信号をIF帯に周波数変換することができる。ここで、{RF_I, RF_Q}
と{IF_I, IF_Q}の関係に着目した等価低域表現を用いると、複素ダウンコンバータ2800の入出力関係は、下記(3)式のように表現することができる。
【0014】
【数3】
・・・(3)
【0015】
さらに、下記(4)式のように定義し、下記(5)式の対応関係で複素伝達関数Hの伝達行列表現Hを得る。伝達行列表現を用いると、上記(3)式は、下記(6)式のように表現することができる。
【0016】
【数4】
・・・(4)
【0017】
【数5】
・・・(5)
【0018】
【数6】
・・・(6)
【0019】
複素ダウンコンバータ2800の入出力関係を表す伝達行列Hは上記(5)式で表され、対角要素が等しく、非対角要素が符号違いで等しい形式の行列である。この形式の行列による一次変換において、入出力のベクトル間の関係は、相似回転に他ならず、希望信号とイメージ信号の相互乗り移りが発生しないのは容易に理解できる。
図29Bに、複素ダウンコンバータ2800の出力の周波数スペクトルを示す。
図29Bに示したように、希望信号は、+f
IFに周波数変換され、イメージ信号は、−f
IFに周波数変換される。そして、希望信号とイメージ信号との間に相互乗り移りが無いので、希望信号とイメージ信号を完全に分別することが出来る。このように周波数変換された複素IF信号を、+f
IFの希望信号を通し、−f
IFのイメージ信号を減衰させる複素BPF2804のようなイメージ除去回路で処理することで、イメージ信号を減衰させ、
図29Cに示すように、希望信号のみを取り出すことができる。
【0020】
上記(3)式あるいは、上記(5)式からわかるように、複素ダウンコンバータ2800において、θ≠0では単に、入出力のベクトル間の回転を表すだけで、希望信号とイメージ信号の相互乗り移りは発生させない。そのため、以降では、数式の簡略化のため、θ=0とする。
【0021】
複素ダウンコンバータ2800の等価低域表現による入出力関係が、上記(5)式のように、対角要素が等しく、非対角要素が符号違いで等しい形式の行列(以降、理想I/Q伝達特性行列)による一次変換で表される場合は、希望信号とイメージ信号の相互乗り移りが発生しない。しかしながら、ここで、当該条件が成り立たない下記(7)式のような行列(以降、非理想I/Q伝達特性行列)で入出力関係が表される場合を考えてみる。
【0022】
【数7】
・・・(7)
【0023】
複素ダウンコンバータ2800の等価低域表現による入出力関係が、上記(7)式のような非理想I/Q伝達特性行列による一次変換で表される場合、入出力関係は、行列表現として下記(8)式あるいは等価なスカラー表現として下記(9)式で表される。
【0024】
【数8】
・・・(8)
【0025】
【数9】
・・・(9)
【0026】
上記(8)式及び上記(9)式からわかるように、H
I,1とH
I,2が等しくないか、H
Q,1とH
Q,2が等しくないと、H
IdiffあるいはH
Qdiffが≠0となり、複素ダウンコンバータ100の出力IF_I+j*IF_QにRF_I−j*RF_Q、すなわち、RF_I+j*RF_Qをゼロ周波数で反転した成分が現れる。このRF_I−j*RF_Qに比例した成分が希望信号とイメージ信号の相互乗り移りである。
【0027】
図30Aに、上記(1)式で表される複素ダウンコンバータ2800へのRF受信信号の正の周波数のみの周波数スペクトルを示す。
図30Bは、上記(7)式の非理想I/Q伝達特性行列で表される複素ダウンコンバータの出力の周波数スペクトルであり、希望信号とイメージ信号との相互乗り移りが発生している。この場合、
図30Cに示すように、+f
IFの希望信号を通し、−f
IFのイメージ信号を減衰させる複素BPF2804のようなイメージ除去回路で処理しても、希望信号のみを取り出すことは不可能となる。
【0028】
複素ダウンコンバータ2800は、
図31のような90度位相が異なる2つの実数正弦波による直交ダウンミキサで実現される。
図31のような理想系の場合、伝達特性行列H
idealは、下記(10)式のように単位行列で表される。ただし、数式を簡略化するため、上記(2)式において、k=2、θ=0としている。
【0029】
【数10】
・・・(10)
【0030】
しかしながら、実際には
図31のような理想系は実現できない。
図32に、非理想的な直交ダウンミキサの構成図を示す。非理想的な直交ダウンミキサ3200は、
図32に示すように、ローカル信号3203、乗算器3201、VGA3205、LPF3207からのI信号成分、及びローカル信号3204、乗算器3202、VGA3206、LPF3208からのQ信号成分について各々の系統の間の振幅偏差、及びローカル信号3203とローカル信号3204との位相差90度からのずれによる同相及び直交の各々の系統の間の位相偏差が存在する。I信号経路とQ信号経路との相対利得ミスマッチをε
eとし、I信号経路とQ信号経路との位相ミスマッチをφ
eとして、それぞれをI信号経路とQ信号経路に等量で割り当てると、下記(11)式の伝達特性行列H
e(ε
e,φ
e)が得られる。
【0031】
【数11】
・・・(11)
【0032】
ここで、ε
eとφ
eが小さく、それらの高次項を無視すると、上記(11)式の2項目の近似が得られる。現実的に、この近似が十分成り立つ位にε
eとφ
eは小さいので、以降では、非理想複素ダウンコンバータの伝達特性行列として、上記(11)式の2項目の近似式を用いることにする。上記(11)式の伝達特性行列H
e(ε
e,φ
e)は、明らかに、上記(5)式の形式を満たしておらず、前記したように、希望信号とイメージ信号の相互乗り移りの発生を定量的に理解することができる。
【0033】
ε
eとφ
eが既知であれば、
図33に示すように、非理想複素ダウンコンバータの出力に、下記(12)式のH
e(ε
e,φ
e)の逆行列による一次変換を施せば、希望信号とイメージ信号との相互乗り移りを除去できることが容易にわかる。
【0034】
【数12】
・・・(12)
【0035】
しかしながら、ε
e及びφ
eは未知なので、
図33は直接的には実現できないが、反復計算手法により、ε
e及びφ
eを推定することが可能である。
【0036】
未知のε
e及びφ
eを持つ非理想複素周波数変換システムとその補正回路の従属接続を用いて、未知のε
e及びφ
eを推定する数式モデルが開示されている。(例えば、James K. Cavers:"New Methods for Adapatation of Quadrature Modulators and Demodulators in Amplifier Linearization Circuis", IEEE Transactions on Vehicular Technology, Vol.46, No.3, pp.707-716, Aug. 1997.を参照。)これは、
図34に示すように、未知のε
e及びφ
eを持つ非理想I/Q伝達特性行列H
e(ε
e, φ
e)の後段に補正回路として、下記(13)式のH
c(ε
c, φ
c)を設け、反復手法により、(ε
c,φ
c)を(ε
e, φ
e)に一致させる定式化である。
【0037】
【数13】
・・・(13)
【0038】
ε
e及びφ
eを推定する手法の説明の都合上、
図34の信号の名称を
図35Aのように変更する。
【0039】
図35Aにおいて、H
e(ε
e,φ
e)は、未知のε
e及びφ
eを持つ非理想I/Q伝達特性行列で、H
c(ε
c, φ
c)は、補正回路の伝達特性行列であり、それぞれ、上記(11)式及び上記(13)式が与えられている。
図35AのH
c(ε
c, φ
c)は、
図35Bのように実現される。
図35Bにおいて、3501、3502、3503、3504は利得器で、3505、3506は加算器である。
【0040】
図35Aの総合伝達特性行列は、下記(14)式のH(ε
c, φ
c ; ε
e, φ
e)で与えられる。当該伝達特性行列も上記(5)式の形式を満たしていない。
【0041】
【数14】
・・・(14)
【0042】
図35Aの出力Y=Y
I+j*Y
Qは、下記(15)式のように表され、入力Wの複素共役に比例した成分を下記(15)式の第2項目として含んでおり、これが、希望信号とイメージ信号の相互乗り移り成分である。
【0043】
【数15】
・・・(15)
【0044】
上記(15)式からわかるように、Δε=ε
e−ε
c=0、Δφ=φ
e−φ
c=0となるように、(ε
c, φ
c)を調節すれば、希望信号とイメージ信号の相互乗り移りが発生しないことがわかる。
【0045】
ここで、
図35Aの出力Y=Y
I+j*Y
Qの自乗を考えてみる。下記(16)式に、Y=Y
I+j*Y
Qの自乗と、それを2*f
IFの周波数成分を除去する理想LPFで処理した結果を示す。
【0046】
【数16】
・・・(16)
【0047】
上記(16)式からわかるように、Y=Y
I+j*Y
Qの自乗を2*f
IFの周波数成分を除去する理想LPFで処理した結果の実数部は、Δε=ε
e−ε
cに比例し、虚数部は、Δφ=φ
e−φ
cに比例することがわかる。また、下記(17)式に示されるように、Y=Y
I+j*Y
Qの絶対値の自乗を2*f
IFの周波数成分を除去する理想LPFで処理した結果は、Δε=ε
e−ε
cとΔφ=φ
e−φ
cが小さければ、W=W
I+j*W
Qの絶対値の自乗に近似的に等しいことがわかる。
【0048】
【数17】
・・・(17)
【0049】
従って、Δε+j*Δφは、下記(18)式のように、Y=Y
I+j*Y
Qの自乗を2*f
IFの周波数成分を除去する理想LPFで処理した結果を、Y=YI+j*YQの絶対値の自乗を2*f
IFの周波数成分を除去する理想LPFで処理した結果で割り算した結果で近似的に求められる。
【0050】
【数18】
・・・(18)
【0051】
このように、Δε+j*Δφに比例するLPF[(Y
I*Y
I−Y
Q*Y
Q)+j*(2*Y
I*Y
Q)]を用いて、(ε
c, φ
c)を反復処理により調節すれば、(Δε, Δφ)は、(0, 0)に収束することがわかる。
【0052】
例えば、(ε
c, φ
c)の更新時間間隔をTとした場合、(ε
c, φ
c)は、下記(19)式で更新すると良い。
【0053】
【数19】
・・・(19)
【0054】
ここで、μ
εとμ
φは、ステップサイズパラメータと呼ばれるもので、その値が小さいと安定性が良くなる代わりに収束性が悪くなり、値が大きいと収束が速くなる代わりに安定性が悪くなるという性質があり、安定性と収束性の兼ね合いで、その値を決めるものである。また、上記(19)式の更新式を実行するためには、初期値ε
c|t=0, φ
c|t=0が必要である。この値は、ε
c|t=0=0、φ
c|t=0=0や、前回決定した値を初期値とするなどすれば良い。なお、電源電圧、温度、LO周波数設定値等の諸条件に応じて、初期値を調整するようにしてもよい。
【0055】
図35Aと上記(19)式の原理に基づくI/Qミスマッチ補正システムの実現ブロック図を
図36に示す。
図36に示したI/Qミスマッチ補正システムの動作を説明する。
【0056】
アンテナ3601で受信されたRF信号はLNA(Low Noise Amplifier:低雑音アンプ)3602で増幅され、非理想的な直交ダウンミキサ3605で、IF周波数に周波数変換され、I/Qミスマッチ補正回路3606で処理されて、2組の実数ADC3607でデジタル化され、複素乗算器3608で、複素正弦波発生器3609で発生させたexp(−j*2*π*f
IF*t)の複素正弦波と複素乗算され、2組の実数LPF3611で処理されて、ベースバンドの復調信号が得られる。ここで、非理想的な直交ダウンミキサ3605とI/Qミスマッチ補正回路3606は、ぞれぞれ、
図35AのH
e(ε
e,φ
e)とH
c(ε
c, φ
c)に対応するものである。I/Qミスマッチ検出回路3600が、上記(19)式を実現する実現ブロック図である。
【0057】
ただし、非理想的な直交ダウンミキサ3605の出力には、
図32のミキサ3201、ミキサ3202、VGA3205、VGA3206の非線形性による、IF周波数の高調波成分が含まれているので、+f
IF成分と−f
IF成分以外を減衰させなければ、上記(16)式の関係を正しく実現することはできない。2組の実数BPF3611は、その目的である。2組の実数BPF3611で不要な成分を減衰させた信号の自乗を複素乗算器3612で算出し、それを2*f
IFの周波数成分を除去する2組の実数LPF3613で処理し、上記(19)式における、ステップサイズパラメータμ
εとμ
φに対応する利得を、2組の実数PGA(Prorgrammable Gain Amplifier)3614で乗じて積分し、(ε
c, φ
c)の推定値を得て、それをI/Qミスマッチ補正回路3606に入力する。この動作を反復的に繰り返すことで、(Δε, Δφ)を、(0, 0)に近づけることができる。
【0058】
なお、
図36において、アンテナ3601で受信されたRF信号をLNA3602で増幅した信号を入力信号Wとして使うのではなく、テストRF信号発生器3603で例えば、無変調のRF信号を生成して、SW3604で、それを非理想的な直交ダウンミキサ3605への入力Wとしても良い。
【0059】
特許文献1には、低IF受信機において高精度のイメージ除去を行う為に、直交複調信号の位相及び振幅ミスマッチを検出し、その検出結果を用いてミスマッチを校正する技術について記載されている。そのミスマッチを検出技術は、
図36、すなわち、
図35A、上記(14)式、上記(16)式、上記(19)式の原理に基づいている。ただし、特許文献1では、I/Qミスマッチ補正回路3606は、2組の実数ADC3607の前ではなく、2組の実数ADC3607の直後に置かれている。2組の実数ADC3607が理想的な場合、I/Qミスマッチ補正回路3606を、2組の実数ADC3607の前に置いても後ろに置いても、差はまったく無い。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本発明に係わる受信機、及び受信方法について、図面に示した幾つかの実施の形態を参照して詳細に説明する。
【0079】
次に、本回路の各部について説明するが、従来及び課題で説明した構成と同様の構成については、説明を省略する。
【0080】
尚、以下で説明する機能実現手段は、当該機能を実現できる手段であれば、どのような回路又は装置であっても構わず、また機能の一部又は全部をソフトウェアで実現することも可能である。更に、機能実現手段を複数の回路によって実現してもよく、複数の機能実現手段を単一の回路で実現してもよい。
[第1の実施形態]
図1に本発明の第1の実施形態による受信機の構成例を示す。
図1に示した低IF受信機100は、アンテナ101、LNA102、テストRF信号発生器103、SW104、直交ダウンミキサ105、I/Qミスマッチ補正回路106、2組の実数型デルタシグマADC107、複素乗算器108、110、117、119、極性反転器109、116、118、2組の実数デシメーションフィルタ112、113、2組の実数LPF114、115、複素正弦波発生器111、2組の2倍利得器124、1組の実数平均化器120、2組の実数平均化器122、2組の実数割算器121、及び2組の実数積分器123から構成されている。
【0081】
また、I/Qミスマッチ検出回路130は、複素乗算器110、117、119、極性反転器109、116、118、2組の実数デシメーションフィルタ113、2組の実数LPF115、複素正弦波発生器111、2組の2倍利得器124、1組の実数平均化器120、2組の実数平均化器122、2組の実数割算器121、及び2組の実数積分器123から構成されている。
【0082】
ADC107が
図38のような2組の実数型デルタシグマADCの場合、その出力の量子化雑音スペクトルは、
図39のようになり、上記(15)式のYをADC107でデジタル化した出力スペクトルは、
図2のようになる。ただし、非理想的な直交ダウンミキサ105は
図32のように構成されるので、ミキサ3201、ミキサ3202、VGA3205、VGA3206の非線形性による、IF周波数の高調波成分が、非理想的な直交ダウンミキサ105の出力に含まれ、
図2における、DC成分、HD2[]、HD3[]成分などがこれを表している。
図3は、極性反転器109により、ADC107のQ信号を反転させた、I−j*Qのスペクトルである。このスペクトルにも、DC成分、HD2[]、HD3[]成分などの不要な成分が含まれている。
【0083】
ADC107の出力と、複素正弦波発生器111で発生させた複素正弦波exp(−j*2*π*f
IF*t)を複素乗算器108で複素乗算させた結果のスペクトルが
図4である。ADC107の複素共役出力と、複素正弦波発生器111で発生させた複素正弦波exp(−j*2*π*f
IF*t)を複素乗算器1510で複素乗算させた結果のスペクトルが
図5である。
【0084】
ここで、exp(−j*2*π*f
IF*t)の複素正弦波と複素乗算器108、110の代わりに、COS、SINをあらかじめ計算したテーブルを参照しても良い。
【0085】
2組の実数デシメーションフィルタ112、113の構成例を
図6に示す。これは、積分器と微分器(Comb Filterとも呼ばれる)を従属接続したもので、量子化雑音の低減と間引きによるダウンサンプリングが効率良くできるものであり、CIC(Cascaded Integrator Comb) Filterと呼ばれている。詳細については、例えば、Eugene B. Hogenauer:"An Economical Class of Digital Filters for Decimation and Interpolation", IEEE Transactions on Acoustics, Speech and Signal Processing, Vol.29, No.2, pp.155-162, Apr. 1981.、に記載されている。
図6において、Mは、微分器内の遅延数を意味し、通常は1が適用される。また、
図6において、Rは、ダウンサンプリング比であり、入力 X(z)のレートをf
clkとした場合、出力Y(z)のレートは、f
clk/Rとなる。積分器の伝達関数は、下記(20)式で与えられ、微分器(Comb Filterとも呼ばれる)の伝達関数は、下記(21)式で与えられる。
【0088】
図6の伝達関数は下記(22)式となり、周波数特性は、R*Mの値でヌル点の位置が変わるSINCの4乗特性となる。
【0090】
図6は、積分器と微分器(Comb Filterとも呼ばれる)の個数がそれぞれ、4個の場合であるが、これらがそれぞれ、L個の場合は、SINCのL乗の周波数特性となる。
【0091】
2組の実数デシメーションフィルタ112、113はそれぞれ、
図6の実数デシメーションフィルタ2個から構成されている。
【0092】
図4に複素乗算器108の出力を2組の実数デシメーションフィルタ112で処理した出力のスペクトルを示す。
【0093】
ここで、ADC107のサンプリングレートをf
clk、
図6のデシメーションフィルタは、微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるようにする。これにより、デシメーションフィルタのSINC伝達特性のヌル周波数点がf
IF/Nのゼロ以外の整数倍の位置となり、量子化雑音のみならず、イメージ信号成分、DC成分、高調波成分を減衰させてほぼ、希望信号成分のみを抽出することができる。実際には、M=1として、ダウンサンプリング比Rの値でヌル周波数点の位置を設定するのであるが、
図4では、スペクトルを見やすくするために、等価的に、R=1として、Mの値でヌル周波数点の位置を設定しており、ここでは、N=2としている。さらなる量子化雑音の低減やチャネル選択の目的で、2組の実数LPF114が必要になる場合もある。
【0094】
図5に複素乗算器110の出力を2組の実数デシメーションフィルタ113で処理した出力のスペクトルを示す。
【0095】
ここで、ADC107のサンプリングレートをf
clk、
図6のデシメーションフィルタは、微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるようにすると、デシメーションフィルタのSINC伝達特性のヌル周波数点がf
IF/Nのゼロ以外の整数倍の位置となり、量子化雑音のみならず、希望信号成分、DC成分、高調波成分を減衰させてほぼ、イメージ信号成分のみを抽出することができる。実際には、M=1として、ダウンサンプリング比Rの値でヌル周波数点の位置を設定するのであるが、
図5では、スペクトルを見やすくするために、等価的に、R=1として、Mの値でヌル周波数点の位置を設定しており、ここでは、N=2としている。さらなる量子化雑音の低減の目的で、2組の実数LPF1515が必要になる場合もある。
【0096】
2組の実数LPF115の出力の複素共役値を極性反転器116で生成し、その値と2組の実数LPF114の出力を、複素乗算器117で複素乗算する。
【0097】
2組の実数LPF114の出力の絶対値の自乗を極性反転器118、複素乗算器119で生成し、それをLPF120で平均化処理をした結果で、複素乗算器117の出力を2組の2倍利得器124で利得調節した値を2組の実数割算器121で割り算し、2組の実数平均化器122で不要な雑音を除去する。
【0098】
以上を数式で表現すると、下記(23)式、及び下記(24)式となる。
【0101】
2組の実数割算器121の出力あるいは2組の実数平均器122の出力は、上記(24)式で与えられ、その実数部は近似的に、Δε=ε
e−ε
cとなり、その虚数部は近似的に、Δφ=φ
e−φ
cとなることがわかる。
【0102】
(ε
c, φ
c)の更新時間間隔をTとした場合、(ε
c, φ
c)は、下記(25)式で更新すると良い。
【0104】
上記(25)式の更新式を実行するためには、初期値ε
c|t=0, φ
c|t=0が必要である。この値は、ε
c|t=0=0、φ
c|t=0=0や、前回決定した値を初期値とするなどすれば良い。上記(25)式は、2組の実数積分器123によって実現される。
【0105】
上記(24)式は、ステップサイズパラメータを用いないので、
図37に示した従来例と比べ、(Δε, Δφ)を、(0, 0)に近づけるための反復処理回数(演算回数)が大幅に少なくて済む。
【0106】
2組の実数LPF114、115の出力には、
図32に示したミキサ3201、ミキサ3202、VGA3205、VGA3206の非線形性による、IF周波数の等価高調波成分が含まれている。そのため、等価的に+f
IF成分と−f
IF成分以外の成分を減衰させなければ、上記(23)式の関係を正しく実現することはできない。しかしながら、本発明の第1の実施形態によると、2組の実数デシメーションフィルタ112、113として、ADC107のサンプリングレートをf
clk、デシメーションフィルタの微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるような、デシメーションフィルタを用いることで、等価的に+f
IF成分と−f
IF成分以外の成分を減衰させることができ、
図37に示した従来例で必要となる規模の大きな2組の実数BPF3711は不要となる。
【0107】
なお、複素乗算器108、複素正弦波発生器111、2組の実数デシメーションフィルタ112、2組の実数LPF114からなる部分は、元々、ベースバンド復調部へ渡す主信号経路として必要なものであり、ハードウェアの増加にはならない。複素乗算器110、117、119、2組の実数デシメーションフィルタ113、2組の実数LPF115、2組の2倍利得器124、平均化器120、2組の実数割算器121が、追加ハードウェアとして必要になる。しかしながら、本発明の第1の実施形態では、従来例と比べ、(Δε, Δφ)を、(0, 0)に近づけるための反復処理回数が大幅に少なくて済む。なお、exp(−j*2*π*f
IF*t)の複素正弦波と複素乗算器108、110の代わりに、COS、SINのあらかじめ計算したテーブルを参照する方式であれば、複素乗算器110の部分は、ハードウェアの増加にはならない。
【0108】
なお、
図1において、アンテナ101で受信されたRF信号をLNA102で増幅した信号を非理想的な直交ダウンミキサ105へ入力して、I/Qミスマッチを検出するのではなく、テストRF信号発生器103で例えば、無変調のRF信号を生成して、SW104で、それを非理想的な直交ダウンミキサ105への入力としても良い。
【0109】
本発明の第1の実施形態による受信機では、RF信号を外部から受信してベースバンド信号に変換する「受信モード」で、ミスマッチ補正が可能であるが、テストRF信号を用いてミスマッチ補正を行う「I/Qミスマッチ補正モード」を「受信モード」と別に設けることで、「I/Qミスマッチ補正モード」時に、2組の実数デシメーションフィルタ112、113のR*Mを任意に大きくすることができるので、I/Qミスマッチ検出の精度を高くすることが可能である。
【0110】
なお、I/Qミスマッチ補正回路106は、ADC107の後ろに配置しても良い。
【0111】
なお、I/Qミスマッチ補正回路106に対応する
図35BのI/Qミスマッチ補正回路を、IFの(I/Q)経路に設置する代わりに、
図32の(LO_I, LO_Q)経路に設置して、(LO_I, LO_Q)で、I/Qミスマッチ補正を行っても良い。
【0112】
[第2の実施形態]
図7Aに本発明の第2の実施形態による受信機の構成例を示す。
図7に示す低IF受信機700は、アンテナ701、LNA702、テストRF信号発生器703、SW704、708、直交ダウンミキサ705、I/Qミスマッチ補正回路706、2組の実数型デルタシグマADCあるいは1組の複素型デルタシグマADCであるADC709a、複素乗算器710、717、719、極性反転器707、716、718、2組の実数デシメーションフィルタ712、2組の実数LPF713、複素正弦波発生器711、2組の2倍利得器723、2組の実数平均化器715、721、2組の実数割算器720、2組の実数積分器722、制御信号発生器724、2組の実数ラッチ725、726、714から構成されている。
【0113】
また、I/Qミスマッチ検出回路730は、複素乗算器717、719、極性反転器716、718、2組の2倍利得器723、2組の実数平均化器715、721、2組の実数割算器720、2組の実数積分器722、2組の実数ラッチ714、726から構成されている。
【0114】
本発明の第2の実施形態による受信機では、
図7Aにおいて、アンテナ701で受信されたRF信号をLNA702で増幅した信号を非理想的な直交ダウンミキサ705へ入力して、I/Qミスマッチを検出するのではなく、テストRF信号発生器703で無変調のRF信号を生成して、SW704で、それを非理想的な直交ダウンミキサ705への入力として用いることになり、「I/Qミスマッチ補正モード」完了後に、「受信モード」に復帰することになる。
【0115】
本発明の第2の実施形態による受信機700は、I/Qミスマッチ補正モードの際に、テストRF信号発生器703で無変調のRF信号を生成して、SW704で、それを非理想的な直交ダウンミキサ705への入力として用いることによるI/Qミスマッチ検出補正技術である。
【0116】
ADC709aが
図40のような複素型デルタシグマADCの場合、その出力の量子化雑音スペクトルは、
図41のようになる。量子化雑音が所定のレベル以下になる帯域は、+f
IFを中心とする正の帯域のみであり、アナログ信号をデジタル化することができる帯域は、この+f
IFを中心とする正の帯域のみとなる。
【0117】
ADC709が
図40のような複素型デルタシグマADCの場合、上記(15)式のYをADC709aでデジタル化した出力スペクトルは、
図8のようになる。ただし、非理想的な直交ダウンミキサ705は、上記の
図32のように構成されるので、ミキサ3201、ミキサ3202、VGA3205、VGA3206の非線形性による、IF周波数の高調波成分が、非理想的な直交ダウンミキサ105の出力に含まれ、
図8における、DC成分、HD2[]、HD3[]成分などがこれを表している。極性反転器707により、I/Qミスマッチ補正回路706のQ信号を反転させ、それをSW708により、ADC709aに入力した場合のADC709aの出力スペクトルを
図9に示す。このスペクトルにも、DC成分、HD2[]、HD3[]成分などの不要な成分が含まれている。
【0118】
以降では、
図8の状態を標準モード、SW708により極性反転器707が有効になっている
図9の状態を複素共役モードと呼ぶことにする。
【0119】
標準モードにおけるADC709aの出力と複素正弦波発生器711で発生させた複素正弦波を複素乗算器710により複素乗算した結果を本発明の第1の実施形態による受信機と同様の2組の実数デシメーションフィルタ712で処理した結果を、
図10に示す。
【0120】
ここで、ADC709aのサンプリングレートをf
clk、
図6のデシメーションフィルタは、微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるようにすると、デシメーションフィルタのSINC伝達特性のヌル周波数点がf
IF/Nのゼロ以外の整数倍の位置となり、量子化雑音のみならず、イメージ信号成分、DC成分、高調波成分を減衰させてほぼ、希望信号成分のみを抽出することができる。実際には、M=1として、ダウンサンプリング比Rの値でヌル周波数点の位置を設定するのであるが、
図10では、スペクトルを見やすくするために、等価的に、R=1として、Mの値でヌル周波数点の位置を設定しており、ここでは、N=2としている。さらなる量子化雑音の低減やチャネル選択の目的で、2組の実数LPF713が必要になる場合もある。
【0121】
図11に、複素共役モードにおける複素乗算器710の出力を2組の実数デシメーションフィルタ712で処理した出力のスペクトルを示す。
【0122】
ここで、ADC709aのサンプリングレートをf
clk、
図6のデシメーションフィルタは、微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるようにすると、デシメーションフィルタのSINC伝達特性のヌル周波数点がf
IF/Nのゼロ以外の整数倍の位置となり、量子化雑音のみならず、希望信号成分、DC成分、高調波成分を減衰させてほぼ、イメージ信号成分のみを抽出することができる。実際には、M=1として、ダウンサンプリング比Rの値でヌル周波数点の位置を設定するのであるが、
図11では、スペクトルを見やすくするために、等価的に、R=1として、Mの値でヌル周波数点の位置を設定しており、ここでは、N=2としている。さらなる量子化雑音の低減の目的で、2組の実数LPF713が必要になる場合もある。
【0123】
ここで、複素正弦波発生器711で発生させたexp(−j*2*π*f
IF*t)の複素正弦波と複素乗算器710の代わりに、COS、SINをあらかじめ計算したテーブルを参照しても良い。
【0124】
図7AのSW708、2組の実数ラッチ725、726、714は、制御信号発生器724からの
図12に示したようなタイミングチャートの制御信号により制御される。
【0125】
図12の制御信号と
図7AのSW708、2組の実数ラッチ725、726、714の動作を説明する。
【0126】
図12のEnable_Conj信号がLowの期間が標準モードで、Enable_Conj信号がHighになると、SW708によって、極性反転器707が有効になって、複素共役モードに移行する。
【0127】
T
1dの標準モード期間中に、Latch_Posにより2組の実数ラッチ714を制御して、2組の実数LPF713の出力値をラッチして、2組の実数平均化器715により平均化処理を行う。
図12の例では、標準モード期間中の値を、連続3回、ラッチして、その3サンプル平均値を、2組の実数平均化器715が出力保持している。その3サンプル平均値の絶対値の自乗を極性反転器718、複素乗算器719で計算する。
【0128】
なお、
図12において、T
2dは、Latch_Pos発生の遅延であり、電源投入などの初期変動期間を避けるためである。
【0129】
Latch_Posの発生間隔T
3pは、R*M*T
clkで与えられる。ここで、f
clkは、ADC709aのサンプリングレート、Mは、2組の実数デシメーションフィルタ712の微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数、Rは、2組の実数デシメーションフィルタ712のダウンサンプリング比である。
【0130】
なお、標準モード時の2組の実数LPF713の出力値は比較的大きく安定しているで、Latch_Posは多くの場合、1回で十分である。
【0131】
時刻T
1dで、複素共役モードに移行する。
【0132】
モード変更の変動の影響を避けるため、時刻T
1dからT
3d遅らせて、Latch_Negを発生させて、それにより2組の実数ラッチ726を制御して2組の実数LPF713の出力値をラッチして、極性反転器716により、複素共役化し複素共役値を得る。複素共役モード時の2組の実数LPF713の出力をラッチした複素共役値と、標準モード時の2組の実数LPF713の出力の2組の実数平均化器715による平均値と、を複素乗算器717により複素乗算する。複素乗算した結果を2組の2倍利得器723で利得調整した結果と、標準モード時の2組の実数LPF713の出力値の平均値の絶対値の自乗と、の割り算を、2組の実数割算器720で算出し、2組の実数平均化器721で不要な雑音を除去する。なお、
図12では、Latch_Negは、T
3p=R*M*T
clkの間隔でRX=4で、5回発生している。従って、2組の実数平均化器721は、5個のサンプルの平均値を出力している。
【0133】
なお、ここでは、一例として、RX=4とし、RX+1=5個のサンプルの平均値を用いるように構成しているが、サンプリング数は、これに限らない。サンプリング数は、RX+1で与えられ、サンプリング数により、検出精度が変わるため、所望の検出精度に応じたサンプリング数とすることが好ましい。
【0134】
本発明の第2の実施形態による受信機では、テストRF信号発生器703で無変調のRF信号を生成して、SW704で、それを非理想的な直交ダウンミキサ705への入力として用いるので、2組の実数LPF713の出力は、標準モード時、複素共役モード時それぞれで、ラッチ時刻によらず一定となる。
【0135】
以上を数式で表現すると、上述した本発明の第1の実施形態による受信機と同様に、上記(23)式、及び上記(24)式となる。
【0136】
2組の実数割算器720の出力あるいは2組の実数平均器721の出力は、上記(24)式で与えられ、その実数部は近似的に、Δε=ε
e−ε
cとなり、その虚数部は近似的に、Δφ=φ
e−φ
cとなることがわかる。
【0137】
(ε
c, φ
c)の更新時間間隔をTとした場合、(ε
c, φ
c)は、上記(25)式で更新すると良い。なお、この更新時間間隔Tは、
図12では、T
4pで与えられており、Update_Coeff信号で2組の実数ラッチを制御して、(ε
c, φ
c)を更新する。上記(25)式の更新式を実行するためには、初期値ε
c|t=0, φ
c|t=0が必要である。この値は、ε
c|t=0=0、φ
c|t=0=0や、前回決定した値を初期値とするなどすれば良い。上記(25)式は、2組の実数積分器722によって実現される。
図12において、ΔTは、上記(25)式の演算に要する時間である。
【0138】
上記(24)式は、ステップサイズパラメータを用いないので、
図37に示した従来例と比べ、(Δε, Δφ)を、(0, 0)に近づけるための反復処理回数(演算回数)が大幅に少なくて済む。
【0139】
なお、反復処理回数は、予め上限値を定めておき、上限値内とすることが好ましい。また、(Δε, Δφ)が所定値以下になった場合に反復処理を終了するようにしてもよい。
【0140】
2組の実数LPF713の出力には、上記
図32に示したミキサ3201、ミキサ3202、VGA3205、VGA3206の非線形性による、IF周波数の等価高調波成分が含まれているので、等価的に+f
IF成分と−f
IF成分以外の成分を減衰させなければ、上記(23)式の関係を正しく実現することはできない。しかしながら、本第2の実施形態によると、2組の実数デシメーションフィルタ712として、ADC709aのサンプリングレートをf
clk、デシメーションフィルタの微分器(Comb Filterとも呼ばれる)内の遅延数をM、ダウンサンプリング比をR、f
clk/(R*M)=f
IF/N、Nは任意の自然数となるような、デシメーションフィルタ712を用いることで、等価的に+f
IF成分と−f
IF成分以外の成分を減衰させることができ、上記
図37に示した従来例で必要となる規模の大きな2組の実数BPF3711は不要となる。
【0141】
なお、複素乗算器710、複素正弦波発生器711、2組の実数デシメーションフィルタ712、2組の実数LPF713からなる部分は、元々、ベースバンド復調部へ渡す主信号経路として必要なものであり、ハードウェアの増加にはならない。
【0142】
本発明の第2の実施形態による受信機では、「I/Qミスマッチ補正モード」は、「受信モード」と兼用しないので、2組の実数デシメーションフィルタ712の特性、すなわち、R*Mの値を、「受信モード」と独立に、「I/Qミスマッチ補正モード」に最適な値に設定することができる。従って、I/Qミスマッチ検出の精度を高くすることが可能である。
【0143】
以上のように、本発明の第2の実施形態による受信機では、低IF受信機において、必要なハードウェアの規模が小さく、演算処理回数も少ない、高SNRが得られる複素型デルタシグマADCにも適用できるI/Qミスマッチ検出法により、複素ダウンコンバータを構成するミキサや、90°移相器等のアナログ素子に起因して発生する位相誤差、振幅誤差を補正して、高性能なイメージ抑圧受信機を提供することが可能となる。
【0144】
なお、SW708、極性反転器707は、
図7Bのように、直交ダウンミキサ705とI/Qミスマッチ補正回路706との間に配置しても良い。
【0145】
また、上記、本発明の第2の実施形態による受信機の説明は、ADC709aが
図40のような1組の複素型デルタシグマADCであるとして説明したが、本発明の第2の実施形態による受信機は、ADC709aが
図38のような2組の実数型デルタシグマADCである場合に対してもそのまま適用できる。
【0146】
また、ADC709aが
図38のような2組の実数型デルタシグマADCの場合、
図7Cのように、I/Qミスマッチ補正回路706は、ADC709cの後ろに配置しても良い。
【0147】
また、ADC709aが
図38のような2組の実数型デルタシグマADCの場合、
図7Dのように、SW708、極性反転器707、I/Qミスマッチ補正回路706の順序で、ADC709dの後ろに配置しても良い。
【0148】
また、ADC709aが
図38のような2組の実数型デルタシグマADCの場合、
図7Eのように、I/Qミスマッチ補正回路706、SW708、極性反転器707の順序で、ADC709eの後ろに配置しても良い。
【0149】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、I信号を反転させても良い。
【0150】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、I信号とQ信号とを入れ替えても良い。
【0151】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、上記
図32のLO_I信号を反転させても良い。
【0152】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、上記
図32のLO_Q信号を反転させても良い。
【0153】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、上記
図32のLO_I信号とLO_Q信号とを入れ替えても良い。
【0154】
なお、SW708、極性反転器707によって、Q信号を反転させる代わりに、これら上記の方法を用いる場合は、上記(24)式において、ε
c,とφ
cが入れ替わるか、符号が変わるか、それらの両方になる。
【0155】
なお、I/Qミスマッチ補正回路706に対応する
図35BのI/Qミスマッチ補正回路を、IFの(I/Q)経路に設置する代わりに、
図32の(LO_I, LO_Q)経路に設置して、(LO_I, LO_Q)で、I/Qミスマッチ補正を行っても良い。
【0156】
[第3の実施形態]
図7Fに本発明の第3の実施形態による受信機の構成例を示す。
図7Fに示す低IF受信機700は、アンテナ701、LNA702、テストRF信号発生器703、SW704、708、直交ダウンミキサ705、I/Qミスマッチ補正回路706、複素BPF723、1組の実数型デルタシグマADC709f、複素乗算器710、717、719、極性反転器707、716、718、2組の実数デシメーションフィルタ712、2組の実数LPF713、複素正弦波発生器711、2組の2倍利得器723、2組の実数平均化器715、721、2組の実数割算器720、2組の実数積分器722、制御信号発生器724、及び2組の実数ラッチ725、726、714から構成されている。
【0157】
本発明の第3の実施形態による受信機では、正あるいは負の周波数のみを通過させる複素BPF723が、イメージ信号を抑圧する構成になっており、複素BPF723のI信号のみ、あるいはQ信号のみ、あるいはI信号とQ信号との和を1組の実数型デルタシグマADC709fでデジタル化する方式だが、複素乗算器710以降の処理は、上述した本発明の第2の実施形態による受信機700と同じである。
【0158】
また、本発明の第3の実施形態による受信機は、
図7Gに示すように、極性反転器707、716、718をI/Qミスマッチ補正回路706の後ろに配置した構成でも構わない。
【0159】
上述した各実施の形態に用いられるテストRF信号発生器(校正信号源)103、703の構成例を
図13に示す。同図に示す校正信号源は、水晶発振器1301、N段の自己ミキサ群1302、ミキサ1303、選択器1304、可変分周器1305を含んで構成される。
図13に示した構成において、水晶発振器1301により生成された基準信号の周波数をf
refとする。
【0160】
水晶発振器1301の出力は、N段の自己ミキサ群1302に入力され、M段目の自己ミキサの出力周波数は、2
M*f
refとなる。ここで、0≦M≦Nである。
【0161】
M段目の自己ミキサ出力を選択器1304で選択し、それを、可変分周器1305でP分周した出力と、N段の自己ミキサ群1302の出力をミキサ1303で掛け合わせて校正信号を得る。
【0162】
ミキサ1303の出力周波数f
outは、下記(26)式で与えられ、f
out0を中心に、Δf上側の成分(USB ; Upper Side Band)とΔf下側の成分(LSB ; Lower Side Band)の2成分からなる。USBあるいはLSBの一方のみをテストRF信号として用いることになる。
【0164】
テストRF信号として用いる成分の周波数を、f
testとすると、Local周波数 f
LOは、f
test−f
IFあるいは、f
test+f
IFに設定すれば良い。
【0165】
N、M、Pの設定および、USBあるいはLSBのどちらかを選択することで、f
testを所望の周波数帯に渡って細かく設定することが可能となる
図14は、テストRF信号として、USBであるf
out0+Δfを採用し、f
LOを、f
test−f
IFに設定した場合の周波数関係を示す図である。
【0166】
テストRF信号として用いない不要なLSBの周波数f
out0−Δf=f
test−2*Δfが、f
LO−f
IF=f
test−2*f
IFの近傍に位置すれば、I/Q誤差検出の妨げになる可能性があるが、Δfがf
IFより十分大きければ、I/Q誤差検出の妨げにはならない。
【0167】
次に、上述した各実施の形態に用いられるデルタシグマADCについて詳細に説明する。
【0168】
まず、従来、一般的に用いられているデルタシグマADCについて説明する。
図15に、直交信号ADC(以下、I/Q−ADC)を有する無線受信機の構成を示す。
図15に示した無線受信機1500は、アンテナ1501、LNA1502、複素ダウンコンバータ1503、及びI/Q−ADC1504から構成されている。また、複素ダウンコンバータ1503は、複素乗算器1506、複素正弦波発生器1507、及び2組の実数LPF1508を含んでいる。
【0169】
複素ダウンコンバータ1503は、入力信号を複素正弦波発生器1507で発生した複素正弦波信号でミキシングしてI信号とQ信号を生成する。I信号及びQ信号は、相互に直交する信号である。I/Q−ADC1504は、2組の実数型ADCあるいは1組の複素型ADCにより構成され、入力直交信号をアナログ形式からデジタル形式に変換する。
【0170】
ここで、複素ダウンコンバータ1503を構成するミキサや、90°移相器等のアナログ素子に起因して発生する位相誤差、振幅誤差は避けられず、複素ダウンコンバータ1503が低IF方式の場合は、IF−イメージ妨害が、ゼロIF方式の場合は、自己イメージ妨害が発生し、受信機の性能が劣化する。イメージ 妨害特性を改善するためには、RF-Front-End部で引き起こされるI/Qエラーの補正機能が必要となる。
【0171】
上記、直交信号における同相(I)成分と直交(Q)成分との振幅ミスマッチ及び位相ミスマッチを補正するには、
図33及び
図16に示すように、(I/Q)信号にI/Q誤差補正行列演算を施せば良い。なお、
図16は、低IF方式の場合である。I/Q誤差補正行列演算は、
図35Bに示したもので、Supisa Lerstaveesin, et al. : "A Complex Image Rejection Circuit With Sign Detection Only", IEEE JSSC, Vol.41, No.12, pp.2693-2702, Dec. 2006.のFig.13(a)に記載されている回路で実現される。
【0172】
また、I/Q-ADC1504としては、高精度なADCが実現できるデルタシグマADCが広く採用されており、特に、低歪、低電圧動作を実現するデルタシグマADCとして、例えば、J. Silva, U. Moon, J. Steensgaard and G.C. Temes:"Wideband low-distortion delta-sigma ADC topology", Electronics Letters, Vol.37, No.12, pp.737-738, June 2001.において提案されている構造が用いられている。
【0173】
上記デルタシグマADCは、量子化器に入力信号が直接入力される信号経路を設けたことを特徴としている。この技術を用いて4次のデルタシグマADCを構成した例を
図17に示す。
図17のデルタシグマADCは、実数型デルタシグマADCであっても、複素型デルタシグマADCであっても構わない。
【0174】
図17に示すデルタシグマADCは、単位フィルタH
1、H
2、H
3、H
4の直列接続から構成されるループフィルタ、加算器1701、1702、量子化器1703、DA変換器1704を備えて構成されている。
【0175】
加算器1701には、デルタシグマADCへの入力信号UをA
1倍したものと、デルタシグマADCの出力信号VをDA変換器によってDA変換した信号を−C
1倍したものとが入力される。加算器1701は、上記入力信号UをA
1倍したものから上記出力信号VをC
1倍したものを減算し、その差信号W
1を単位フィルタH
1に出力する。
【0176】
ループフィルタは、4つのフィルタを直列に接続してなり、各フィルタからの出力はそれぞれB
1倍、B
2倍、B
3倍、B
4倍されて加算器1702に入力される。
【0177】
また、加算器1702には、デルタシグマADCへの入力信号UをA
1/C
1倍したものも入力される。加算器1702は、入力された全信号を加算し、量子化器へと出力する。
【0178】
量子化器1703は、加算器1702から入力された信号を量子化し、その量子化信号をデルタシグマADCの出力信号Vとして出力する。また、上述したように、量子化器の出力は、DA変換器によってDA変換された後、符号反転されて、加算器1701にフィードバックされる。
【0179】
図17のデルタシグマADCが、実数型デルタシグマADC変換器である場合、フィルタH
1、H
2、H
3、H
4はすべて実数型である。係数A
1、C
1、C
2、C
3、C
4、B
1、B
2、B
3、B
4もすべて実数であるが、フィルタH
1、H
2、H
3、H
4が複素型で、係数A
1、B
1、B
2、B
3、B
4も複素数である複素型デルタシグマADC変換器あっても構わない。
【0180】
A
5=A
1/C
1が成り立つ場合、デルタシグマADCの出力信号Vは、信号伝達関数をSTF(z)、雑音伝達関数をNTF(z)、量子化器で発生する量子化誤差をE(z)とすると、下記(27)式で与えられる。
【0182】
この場合、単位フィルタH
1への入力信号W
1は、下記(28)式で与えられる。
【0184】
すなわち、ループフィルタが扱う信号は、フィルタリングされた量子化誤差のみとなり、デルタシグマADCへの入力信号Uを扱わず、入力信号Uに起因する歪成分が生じない。
【0185】
このように、
図17のデルタシグマADCは、入力フィードフォワード係数がA
1、A
5の2つのみになるだけでなく、低歪・低消費電力のデルタシグマADCを実現できる。
【0186】
しかしながら、従来のI/Q誤差補正回路では、独立したオペアンプが必要となり、消費電力とチップ面積の増大を招く。
【0187】
図17のデルタシグマADCが、2組の実数型デルタシグマADCでも、1組の複素型デルタシグマADCでも以下の理論はどちらにも適用できるが、1組の複素型デルタシグマADCの場合の方がより一般的なので、1組の複素型デルタシグマADCの場合を考える。
【0188】
入力フィードフォワード係数A
1、A
5を複素数として、これら複素数を等価な2×2の実要素行列表現で考えると、I/Q誤差補正行列演算を入力フィードフォワード係数A
1、A
5の行列表現に含めてしまえば、独立したオペアンプが必要にならない。しかしながら、複素スカラー倍演算を実要素行列演算に拡張するのが、入力フィードフォワード係数A
1、A
5のように2箇所あると回路の構成が複雑になり、実現が極めて困難になってしまう。
【0189】
そこで、本発明者は、本実施の形態に用いるのに最適なデルタシグマADCを実現することを試みた。すなわち、直交信号における同相(I)成分と直交(Q)成分との振幅ミスマッチ及び位相ミスマッチを補正する機能を有する直交信号デルタシグマADCを実現した。以下に、本実施の形態に係るデルタシグマADCについてさらに詳細に説明する。
【0190】
図17において、信号フィルタ伝達関数L
0(z)と帰還フィルタ伝達関数L
1(z)は、下記(29)式で与えられる。
【0192】
また、STF(z)は、下記(30)式で与えられる。
【0194】
従って、A
5=A
1/C
1とすると、厳密にSTF=A
1/C
1となる。
ただし、A
5が厳密にA
1/C
1に一致していなくても、デルタシグマADCの性質から、通過域において、NTF(z)は十分に小さいので、STF≒A
1/C
1となり、上記(30)式の最後の近似が成り立ち、A
5が厳密にA
1/C
1に一致していなくても低歪の特性は近似的に維持される。
【0195】
以下では、STF≒1とするために、A
1≒C
1とし、A
5は1とする。
【0196】
次に、入力フィードフォワード係数A
1、A
5による複素スカラー倍演算を、I/Q誤差補正行列演算を含めた実要素行列演算に拡張する理論を説明する。
【0197】
図17において、C
1は実際には正の実数だが、ここではC
1を複素数として、複素数C
1と同じ値とした複素数A
1による積分器係数演算を下記(31)式のように行列演算表現にする。
【0199】
ここで、積分器係数行列A
1の独立要素は2個(a
1,e
1)である。
【0200】
上記(13)式で与えられるI/Q 誤差補正行列H
c(ε
c, φ
c)と積分器係数行列A
1を合わせた新たな積分器係数行列A
1’を下記(32)式のように定義する。
【0202】
上記(32)式の最後の等号は、e
1=g
1=0の場合であるが、ほとんどの場合でこれが成立する。
【0203】
新しい積分器係数行列A
1’の独立要素は4個(a
1i, e
1i, a
1q, e
1q)であり、積分器係数演算は、スカラー倍演算ではなく、行列倍演算となる。
厳密には、行列A
5も、H
c(ε
c, φ
c)を乗じたものにすべきだが、積分器係数行列A
1のみをこのような行列A
1’に置き換えても、上記(30)式の最後の近似で示したように、低歪の特性を近似的に維持しつつ、I/Q 誤差補正も可能となる。
【0204】
図18は、
図17におけるA
1、C
1、加算器、H
1から構成されるフィルタを、スイッチトキャパシタ回路で実現した従来の直交信号デルタシグマADCのフィルタの構成を示している。複素係数A
1は、その実数部a
1が、サンプリング容量C
a1と積分容量C
i1との比で実現され、虚数部e
1が、サンプリング容量C
e1と積分容量C
i1との比で実現されている。係数C
1は、サンプリング容量C
x1と積分容量C
i1との比で実現されている。
【0205】
図19は、
図17におけるA
1に、I/Q誤差補正機能をスイッチトキャパシタ回路で組み込んだ本発明の実施形態のフィルタ構成を示す図である。
【0206】
上記(32)式における、実行列要素a
1iが、サンプリング容量C
a1iと積分容量C
i1との比で実現され、実行列要素a
1qが、サンプリング容量C
a1qと積分容量C
i1との比で実現され、実行列要素e
1iが、サンプリング容量C
e1iと積分容量C
i1との比で実現され、実行列要素e
1qが、サンプリング容量C
e1qと積分容量C
i1との比で実現されている。I/Q誤差補正するには、C
a1i、C
a1q、C
e1i、C
e1qを可変することになり、これら係数容量個々の動作は、
図20に示すように、スイッチトキャパシタ積分器となっている。
【0207】
ここで、さらに、本実施の形態のデルタシグマADCで用いるのに最適なスイッチトキャパシタについて説明する。まず、一般的なスイッチトキャパシタについて説明する。
【0208】
一般に、スイッチトキャパシタ回路は、主にスイッチトキャパシタと演算増幅器により構成され、クロック信号φ
1が、High時に短絡するスイッチおよびクロック信号φ
2が、High時に短絡するスイッチは、
図21に示すように周期Tが互いに逆相であり、非オーバーラップ期間T
nov1およびT
nov2を持つクロック信号φ
1及びφ
2で開閉制御され、入力信号を各キャパシタにて充放電サンプリングし、等価的に抵抗を作ることにより多種類の回路を構成することができる。このようにして構成されたスイッチトキャパシタ回路の伝達関数の係数は、キャパシタの絶対容量ではなく相対的な容量比で決まり、この容量比を可変制御することにより、可変フィルタなどの可変係数スイッチトキャパシタ回路が構成される。
【0209】
このような回路の基本要素の一例として、可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路の原理を
図22に示す。ここで、2201、2203、2205は
図21のクロック信号φ
1がHighの期間に短絡するSW(スイッチ)で、2202、2204は
図21のクロック信号φ
2がHighの期間に短絡するスイッチである。
【0210】
図22の可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路の入出力伝達関数は、下記(33)式で示したHで表され、利得は、K=C
s/C
iに比例する。
【0212】
利得を可変にするには、
図22のように、サンプリングキャパシタC
sをその中心値を決めるC
s02206と可変部のΔC
s2207の並列接続で実現すると良い。
【0213】
具体的には、可変部は、
図23のキャパシタ群2307a、スイッチ群2307b、及びスイッチ群2307cで構成される。
図23において、2307aは、N個の2進加重されたキャパシタアレイ(Binary Weighted Capacitor) Arrayで、{2
0*C
u0, 2
1*C
u0, 2
2*C
u0, ..., 2
(N-2)*C
u0, 2
(N-1)*C
u0}のキャパシタ群で構成される。ここで、C
u0は、単位キャパシタである。
【0214】
2307bは、利得設定ビット{d
0, d
1, d
2, …, d
N-2, d
N-1}がLowでオンとなるスイッチ群で、2307cは、利得設定ビット{d
0, d
1, d
2, …, d
N-2, d
N-1}がHighでオンとなるスイッチ群である。
【0215】
ここで、δ=ΔC
s/C
s0と置くことにする。δの最小分解能をlsbとすると、
図23に示した構成では、下記(34)式に示すように、ΔC
sとして、{0, C
u0, ..., 2
N-1*C
u0}の2N階調の可変範囲を設定できる。ここで、単位キャパシタC
u0は、C
u0=lsb*C
s0で定義される。
【0217】
可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、上記(34)式に示すように、C
Total=(2
N−1)*C
u0となる。
【0218】
一般に、スイッチトキャパシタ回路は、複数のキャパシタの容量比が特性に大きく影響を与えることは周知である。キャパシタは寸法の変動や、酸化膜厚のチップ内の変動がある。そのため、各キャパシタは、一般に複数個の単位キャパシタをマトリクス状に並べて構成し、各キャパシタの容量比を設定する際に、単位キャパシタの個数について整数比をとり、容量の比率の誤差が少なくなるようにしているが、それでも容量比が大きいと、容量比の精度が悪くなることは避けられない。
【0219】
図23に示した構成では、Nが大きい場合、非常に大きな容量比を必要とし、その結果、多数の単位キャパシタが必要となるだけでなく、容量比の精度も悪くなる。例えば、C
s0=2pFとして、lsb=1%の最小分解能で、N=5の可変容量を考えると、最小容量はC
u0=20fFで、最大容量は31*C
u0=620fFとなり、必要な容量値の比が大きく、容量比の精度の劣化は避けられない。
【0220】
また、
図23に示した構成では、δの最小分解能を非常に小さくしなければならない場合、C
u0が実現不可能なほど小さくなってしまい実用的ではない。
例えば、C
s0=2pFとして、lsb=0.1%の最小分解能の可変容量を考えると、C
u0=2fFとなり、単位容量C
u0が小さ過ぎて、
図23の回路構成は、実現困難である。
【0221】
これらの問題の一部を解決するための手段として、Capacitor T−Networkによる電圧分圧を2進加重されたキャパシタアレイに適用する方法が知られており、例えば、特公平8−8465号公報の
図1に示されている。
【0222】
ここで、Capacitor T−Networkによる電圧分圧により、等価的に小さな容量を実現する概念を説明する。
【0223】
図22において、スイッチトキャパシタ回路における情報伝達は、電荷によって行われるので、積分キャパシタC
iに注入される電荷ΔQが同じであれば、伝達関数Hは変わらない。
【0224】
そこで、入力容量に着目するのではなく、積分キャパシタC
iに注入される電荷ΔQに着目すると、ΔQが変わらない限り、等価な変換が可能である。
【0225】
上述した特公平8−8465号公報の
図1では、可変利得設定型スイッチトキャパシタ増幅回路を例としているが、ここでは、可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路を例とし、Capacitor T−Networkによる電圧分圧を2進加重されたキャパシタアレイに適用して実現した可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路を
図24に示す。なお、
図24は、
図23と同様に、2
N階調の可変範囲を実現するものである。
【0226】
図24において、2406は、サンプリングキャパシタC
sの中心値を決めるキャパシタC
s0である。2407bは、C
uを単位キャパシタとしたn個の2進加重されたキャパシタアレイであり、下位nビットを構成する。2407cは、C
uを単位キャパシタとしたN−n個の2進加重されたキャパシタアレイであり、上位N−nビットを構成する。2407aは、電圧分圧用キャパシタである。スイッチ群の動作は、
図23と同様である。
【0227】
まず、n=Nの場合を考える。この場合、2407cは存在しない。
図24のノ−ドV
xの電位は、V
in=1Vとすれば、数4のように、V
x=1/2
Nで与えられ、積分キャパシタ C
iに注入される電荷ΔQは、下記(35)式のように与えられ、
図23に比べて、単位キャパシタを、2
N倍に大きくすることができる。以降では、これを単位容量のスケ−リングと呼ぶことにする。
【0229】
従って、
図23の単位キャパシタをC
u0とすると、
図23と同じ可変分解能を得るためには、
図24の単位キャパシタC
uを上記(35)式に示すように、C
u=2
N*C
u0とすれば良い。この場合、可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、上記(35)式に示すように、C
Total=2
(2*N)*C
u0となる。なお、n=Nの場合、必要な最小容量と最大容量との比は、
図23変わらず、2
(N−1)のままである。
【0230】
次に、1≦n≦N−1の場合を考える。この場合、
図24のノ−ドV
xの電位は、V
in=1Vとすれば、下記(36)式のように、V
x=1/2
nで与えられ、積分キャパシタ C
iに注入される電荷ΔQは、下記(36)式のように与えられ、
図23に比べて、単位キャパシタを、2
n倍にスケ−リングできる。
【0232】
従って、
図23の単位キャパシタをC
u0とすると、
図23と同じ可変分解能を得るためには、
図24の単位キャパシタC
uを上記(36)式に示すように、C
u=2
n*C
u0とすれば良い。この場合、可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、上記(36)式に示すように、C
Total={2
N+2
n*(2
n−1)}*C
u0となる。なお、この場合、必要な最小容量と最大容量との比は、2
(n−1)と2
(N−1−n)の大きい方になり、n=N/2の場合、2
(N/2−1)となり、必要な最小容量と最大容量との比を
図23より小さくすることができる。
【0233】
図24の従来の可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路について、N、n、C
u/C
u0、C
Total/C
u0、Capacitor比の関係を下記の表1に示す。
【0235】
例えば、C
s0=2pFとして、lsb=0.1%の最小分解能の可変容量を考えると、C
u0=2fFとなる。実現可能な単位キャパシタとして、20fF以上を想定すると、スケ−リング比C
u/C
u0としては、16以上の値が必要になる。
【0236】
例えば、N=6の場合、n=4が最適で、C
u=32fFで、最小容量と最大容量との比(=容量比)は8となり、n=0、すなわち、
図23の電圧分圧無しの構成で実現した場合の容量比の32の1/4になっている。
【0237】
しかしながら、lsb=0.05%の最小分解能の可変容量の場合、C
u0=1fFとなり、n=5が最適で、最小容量と最大容量との比(=容量比)は16となり、最小容量と最大容量との比は比較的大きくなってしまう。
【0238】
そこで、本発明者は、本実施の形態に用いるのに最適なスイッチトキャパシタを実現することを試みた。すなわち、高分解能の可変容量設定回路を、小さい容量値のキャパシタを用いることなく、必要なキャパシタ値の比を大きくすることもなく、かつ少数の単位キャパシタで構成し、チップのレイアウト面積を小さくすることができるスイッチトキャパシタを実現した。以下に、本実施の形態に係るスイッチトキャパシタについてさらに詳細に説明する。
【0239】
(実施例1)
図25は、本実施例1による回路構成を示す図である。
図25において、2506は、サンプリングキャパシタC
sの中心値を決めるキャパシタC
s0である。2507は、可変部のΔC
sを等価的に実現するC−2Cラダーネットワークである。
【0240】
図26は本実施例1における主要部分であるC−2Cラダーネットワークの動作を示す図である。
図26において、2601は、単位キャパシタで、N+1個あり、2602は、単位キャパシタの2倍のキャパシタで、N−1個ある。
【0241】
一番下の単位キャパシタ2601と単位キャパシタの2倍のキャパシタ2602の接続点の電位を、V
inとすると、単位キャパシタ2601と単位キャパシタの2倍のキャパシタ2602の接続点の電位は、下から上への順で半分づつになって行き、
図26に示すように、一番上の単位キャパシタ2601と単位キャパシタの2倍のキャパシタ2602の接続点の電位は、V
in/2
(N−1)となる。
【0242】
従って、単位キャパシタ2601に蓄えられる電荷は、下から上への順に、{C
u*V
in, C
u*V
in/2, C
u*V
in/4, ..., C
u*V
in/2
(N-1)}となる。
【0243】
図25において、スイッチ群の動作は、
図23と同様である。従って、φ
1=Highの期間において、
図25のC−2Cラダーネットワーク2507の状態は、
図26と同一となる。φ
1=Low、φ
2=Highになると、単位キャパシタ2601に蓄えられた電荷は、利得設定ビット{d
0, d
1, d
2, …, d
N-2, d
N-1}の内、Highに対応するものは、積分キャパシタ2508に注入され、Lowに対応するものはGNDに捨てられる。
【0244】
これを数式で表現すると、下記(37)式になり、スケ−リング比C
u/C
u0は、2
(N−1)となり、可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、C
Total=2
(N-1)*(3*N−1)*C
u0となる。
【0246】
なお、本実施例1による可変容量設定回路では、必要なキャパシタは、単位キャパシタC
uと単位キャパシタの2倍のキャパシタ2*C
uのみで、最小容量と最大容量との比は、2で済み、従来の可変容量設定回路に比べて大幅に小さくできる。
(実施例2)
図27は、本実施例2による回路構成を示す図である。
図27において、2707aは、C
uと2*C
uのみから構成されるC−2Cラダーネットワークで、動作は
図25と同じである。ただし、
図27においては、Nビット中下位nビットが、C−2Cラダーネットワーク2707aで構成されている。ここで、2≦n≦N−1である。
【0247】
2707bは、C
uを単位キャパシタとしたN−n個の2進加重されたキャパシタアレイである。
【0248】
スイッチ群の動作は、
図23と同様である。
【0249】
本実施例2による可変容量設定回路では、C
uと2*C
uのみから構成されるC−2Cラダーネットワークと2進加重されたキャパシタアレイの組み合わせで、可変部のΔC
sを等価的に実現する。
【0250】
動作は、
図23の従来の可変容量設定回路と
図25の本実施例1による可変容量設定回路で説明され、2≦n≦N−1に対して、下記(38)式に示すように、スケ−リング比C
u/C
u0は、2
(n−1)となり、可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、C
Total={2
N+3*(n−1)*2
(n-1)}*C
u0となる。
【0252】
図24に示した従来の可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路について、N、n、C
u/C
u0、C
Total/C
u0、C
u/C
u0、容量比の関係は、上記表1に示したようになっている。一方、本実施例1あるいは本実施例2の可変利得設定型スイッチトキャパシタ積分回路について、N、n、C
u/C
u0、C
Total/C
u0、容量比の関係を表2に示す。
【0254】
例えば、C
s0=2pFとして、lsb=0.1%の最小分解能の可変容量を考えると、C
u0=2fFとなり、実現可能な単位キャパシタとして、20fF以上を想定すると、スケ−リング比C
u/C
u0としては、16以上の値が必要になる。
【0255】
例えば、スケ−リング比C
u/C
u0として、16を実現するとして、N=6の場合、本実施例2の可変容量設定回路では、最小容量と最大容量との比(=容量比)は2となり、
図24に示した従来の可変容量設定回路の容量=8より大幅に小さくて済む。
【0256】
また、本実施例2の可変容量設定回路の可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、256*C
u0であり、
図24の従来の可変容量設定回路のC
Total=304*C
u0より小さくて済む。
【0257】
また、lsb=0.05%の最小分解能の可変容量の場合、C
u0=1fFとなり、スケ−リング比C
u/C
u0として、32を実現しなければならない。N=6の場合、
図24に示した従来の可変容量設定回路では、容量比=16と比較的大きくなってしまうが、本実施例2の可変容量設定回路では、容量比は2で済み、小さな容量比で済む。
【0258】
この場合、可変容量設定回路の可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、
図24の従来の可変容量設定回路の場合、C
Total=1056*C
u0となるのに対し、本発明の第2の実施形態の可変容量設定回路の可変部のΔC
sに必要とされる全容量値は、544*C
u0であり圧倒的に少ない単位キャパシタで済むため、チップのレイアウト面積を小さくすることができる。
【0259】
ほとんどの場合、回路は差動で構成されるので、上記で説明した場合に比べて、2倍の数のキャパシタが必要となるので、本実施例2による可変容量設定回路は、チップのレイアウト面積を小さくすることに極めて効果的である。
【0260】
本発明にかかる実施例1のスイッチトキャパシタ回路は、単位キャパシタと単位キャパシタの2倍のキャパシタを用いたC−2Cラダーネットワークによって、電荷を転送することを特徴とする。
【0261】
また、本発明にかかる実施例2のスイッチトキャパシタ回路は、単位キャパシタと単位キャパシタの2倍のキャパシタを用いたC−2Cラダーネットワークと2進加重されたキャパシタアレイの組み合わせで、電荷を転送することを特徴とする。
【0262】
このように、実施例1及び実施例2に示したスイッチトキャパシタによれば、高分解能の可変容量設定回路を、小さい容量値のキャパシタを用いることなく、必要なキャパシタ値の比を大きくすることもなく、かつ少数の単位キャパシタで構成することができる。従って、チップのレイアウト面積が小さなスイッチトキャパシタ回路を提供することができる。そのため、本実施の形態の受信機に用いるのに好ましい。
【0263】
以上説明したように、本発明によれば、必要なハードウェアの規模が小さく、演算処理回数も少ない、高SNRが得られる複素型デルタシグマADCにも適用できるI/Qミスマッチ検出法により、複素ダウンコンバータを構成するミキサや、90°移相器等のアナログ素子に起因して発生する位相誤差、振幅誤差を補正して、高性能な受信機及び受信方法を得ることができる。
【0264】
なお、上記各実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0265】
例えば、上記実施の形態のI/Qミスマッチ検出回路730では、複素共役モード時の2組の実数LPF713の出力をラッチした複素共役値と、標準モード時の2組の実数LPF713の出力の2組の実数平均化器715による平均値と、を複素乗算器717により複素乗算した後、2組の実数平均化器721で平均値を演算しているが、先に平均値を演算した後に、複素乗算するように構成してもよい。
【0266】
また例えば、デルタシグマADCは、実数型であっても複素数型であっても良い。さらに、デルタシグマADCを構成するフィルタについて、スイッチトキャパシタ回路について詳細に説明したがこれに限らず、連続時間型のフィルタを用いても良い。
【0267】
また、ADCは、ノイズシェーピング技術を用いるデルタシグマ型ではなく、普通のADC、例えば、パイプラインADCであっても良い。
【0268】
すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。