特許第6013850号(P6013850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013850
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20161011BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   H01L21/68 N
   H01L21/78 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-214302(P2012-214302)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-67982(P2014-67982A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】下谷 誠
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009-132867(JP,A)
【文献】 特開2003-324142(JP,A)
【文献】 特開2005-300972(JP,A)
【文献】 特開平9-211437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの裏面を研削して薄化するウェーハの加工方法であって、
基材シートの両面に紫外線硬化型粘着剤からなる粘着層が形成された両面粘着テープの一方の粘着層を剛性支持部材に貼着する第1貼着工程と、
該第1貼着工程を実施した後に、該両面テープの他方の粘着層を上面に露呈して該剛性支持部材を保持テーブルに保持し、ウェーハの表面を該他方の該粘着層に対向させウェーハの外径方向一端を該両面粘着テープの該粘着層の外径方向一端側に当接させるとともにウェーハの外径方向他端を上方に向けた状態から、ウェーハの該外径方向他端を該両面粘着テープの該他方の粘着層の外径方向他端側へ向けて倒すことでウェーハの表面全面を該粘着層に載置するウェーハ載置工程と、
ウェーハ載置工程を実施した後に、ウェーハ側から押圧しウェーハを該剛性支持部材に貼着された該両面テープの他方の粘着層に貼着する第2貼着工程と、
該第2貼着工程を実施した後に、該剛性支持部材を保持テーブルに保持してウェーハの裏面を研削し所定厚みへと薄化する研削工程と、
ウェーハ又は該剛性支持部材と該両面粘着テープの該基材シートとは紫外線を透過する材質で形成されており、該研削工程を実施した後に、該両面テープの粘着層に紫外線を照射し粘着層を硬化させ粘着力を低下させる粘着層硬化工程と、
該粘着層硬化工程を実施した後に、該剛性支持部材及び該両面粘着テープをウェーハから剥離する除去工程と、
を備えるウェーハの加工方法。
【請求項2】
ウェーハに結晶方位を示すオリフラが形成されている場合には、該ウェーハ載置工程の際に、オリフラを該両面粘着テープの該粘着層の外径方向一端側に当接させるとともにウェーハのオリフラと反対側の他端を上方に向けた状態から、ウェーハの該オリフラと反対側の他端を該両面粘着テープの該他方の粘着層の外径方向他端側へ向けて倒すこと、を特徴とする請求項1記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関し、特に、支持部材に貼着されたウェーハを研削して所定の厚みへと薄化するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型軽量なデバイスを実現するために、ウェーハを薄化することが求められている。ウェーハは、表面の分割予定ラインで区画される各領域にデバイスを形成された後、裏面を研削されることで薄化される。この薄化の際には、デバイスを保護するために、ウェーハの表面に保護テープを貼着させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ウェーハの剛性は、薄化されるにつれて著しく低下する。このため、ウェーハは、研削処理の進行に伴い大きく反らされてしまい、割れやクラックなどの発生する可能性が高くなる。また、ウェーハの外周部がナイフエッジ化されて薄くなると、外周部においてクラックや割れ、欠けなどを生じる恐れもある。
【0004】
研削に伴う上述の問題を解消するため、剛体の支持部材に被加工物であるウェーハを貼着して研削する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、剛体でなる支持部材でウェーハを支持することによりウェーハは補強されるので、研削時におけるウェーハの反りなどを抑制して破損を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−198542号公報
【特許文献2】特開2006−346836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載される方法において、被加工物であるウェーハは、ワックスによって支持部材の表面に固定される。しかしながら、この方法では、ウェーハを支持部材に貼着させる際に、ワックスを加熱溶融する必要がある。また、ウェーハから支持部材を剥離するには、ワックスを400℃以上に加熱して酸化させる必要がある。このため、ウェーハの貼着及び支持部材の剥離に長時間を要し、作業効率が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、上述したワックスの粘着力は、加熱によって完全に失われるわけではない。このため、ウェーハから支持部材を剥離させる際に、ワックスの粘着力でウェーハには局所的な応力が生じてしまう。薄化後のウェーハの剛性は極めて低くなっているので、このような局所的な応力が生じると、ウェーハは破損される恐れがある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、作業効率が高く、薄く研削されたウェーハから支持部材を剥離させる際のウェーハの破損を防止可能なウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウェーハの加工方法は、ウェーハの裏面を研削して薄化するウェーハの加工方法であって、基材シートの両面に紫外線硬化型粘着剤からなる粘着層が形成された両面粘着テープの一方の粘着層を剛性支持部材に貼着する第1貼着工程と、該第1貼着工程を実施した後に、該両面テープの他方の粘着層を上面に露呈して該剛性支持部材を保持テーブルに保持し、ウェーハの表面を該他方の該粘着層に対向させウェーハの外径方向一端を該両面粘着テープの該粘着層の外径方向一端側に当接させるとともにウェーハの外径方向他端を上方に向けた状態から、ウェーハの該外径方向他端を該両面粘着テープの該他方の粘着層の外径方向他端側へ向けて倒すことでウェーハの表面全面を該粘着層に載置するウェーハ載置工程と、ウェーハ載置工程を実施した後に、ウェーハ側から押圧しウェーハを該剛性支持部材に貼着された該両面テープの他方の粘着層に貼着する第2貼着工程と、該第2貼着工程を実施した後に、該剛性支持部材を保持テーブルに保持してウェーハの裏面を研削し所定厚みへと薄化する研削工程と、ウェーハ又は該剛性支持部材と該両面粘着テープの該基材シートとは紫外線を透過する材質で形成されており、該研削工程を実施した後に、該両面テープの粘着層に紫外線を照射し粘着層を硬化させ粘着力を低下させる粘着層硬化工程と、該粘着層硬化工程を実施した後に、該剛性支持部材及び該両面粘着テープをウェーハから剥離する除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、両面粘着テープを用いて剛性支持部材にウェーハを貼着するので、ウェーハの貼着に係る作業効率を高めることができる。また、紫外線硬化型粘着剤からなる粘着層に紫外線を照射して粘着力を低下させるので、両面粘着テープ及び剛性支持部材の剥離に係る作業効率を高め、ウェーハを破損させることなく両面粘着テープ及び剛性支持部材を剥離できる。
【0011】
本発明のウェーハの加工方法において、ウェーハに結晶方位を示すオリフラが形成されている場合には、該ウェーハ載置工程の際に、オリフラを該両面粘着テープの該粘着層の外径方向一端側に当接させるとともにウェーハのオリフラと反対側の他端を上方に向けた状態から、ウェーハの該オリフラと反対側の他端を該両面粘着テープの該他方の粘着層の外径方向他端側へ向けて倒しても良い。この構成によれば、ウェーハの倒れる方向はオリフラを基準に決定されるので、ウェーハと両面粘着テープとを容易に位置合わせできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業効率が高く、薄く研削されたウェーハから支持部材を剥離させる際のウェーハの破損を防止可能なウェーハの加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態の第1貼着工程において剛性支持部材に両面粘着テープが貼着される様子を示す図である。
図2】本実施の形態のウェーハ載置工程において両面粘着テープ上にウェーハが載置される様子を示す図である。
図3】本実施の形態の第2貼着工程においてウェーハが押圧される様子を示す図である。
図4】本実施の形態の研削工程においてウェーハが研削される様子を示す図である。
図5】本実施の形態の粘着層硬化工程において粘着層が硬化される様子を示す図である。
図6】本実施の形態の除去工程においてウェーハから剛性支持部材及び両面粘着テープが除去される様子を示す図である。
図7】ウェーハにオリエンテーションフラットが形成されている場合のウェーハ載置工程について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下においては、シリコンウェーハを加工対象とするウェーハの加工方法について説明するが、本発明の加工対象となるウェーハは、シリコンウェーハに限定されるものではない。
【0015】
本実施の形態のウェーハの加工方法は、第1貼着工程、ウェーハ載置工程、第2貼着工程、研削工程、粘着層硬化工程、及び除去工程を含む。第1貼着工程では、粘着層A1,A2を備える両面粘着テープDTの一方の粘着層A1を剛性支持部材Sの表面S1に接触させて、剛性支持部材Sに両面粘着テープDTを貼着する(図1参照)。ウェーハ載置工程では、両面粘着テープDTの他方の粘着層A2にウェーハWの表面W1側の外周の一部を接触させて、ウェーハWを粘着層A2に向けて倒すように両面粘着テープDT上に載置する(図2参照)。
【0016】
第2貼着工程では、剛性支持部材S上に両面粘着テープDTを介して載置されたウェーハWの裏面W2側を押圧し、ウェーハWを剛性支持部材Sに貼着する(図3参照)。研削工程では、ウェーハWの裏面W2側を研削し、ウェーハWを所定の仕上げ厚みtに薄化する(図4参照)。粘着層硬化工程では、剛性支持部材S(又はウェーハW)を通じて両面粘着テープDTの粘着層A1,A2に紫外線UVを照射し、粘着層A1,A2を硬化させて粘着力を低下させる(図5参照)。除去工程では、ウェーハWから剛性支持部材S及び両面粘着テープDTを除去する(図6参照)。
【0017】
本実施の形態では、両面粘着テープDTを用いて剛性支持部材SにウェーハWを貼着するので、ウェーハWの貼着に係る作業効率を高めることができる。また、両面粘着テープDTの粘着層A2に紫外線UVを照射して粘着力を低下させるので、両面粘着テープDT及び剛性支持部材Sの剥離に係る作業効率を高め、ウェーハWを破損させることなく剛性支持部材S及び両面粘着テープDTを剥離できる。以下、本実施の形態に係るウェーハの加工方法の詳細について説明する。
【0018】
本実施の形態の加工方法の対象となるウェーハWは、円板形状のシリコンウェーハに各種の機能膜が形成されている(図2参照)。ウェーハWの表面W1には、格子状の分割予定ライン(不図示)が設けられており、この分割予定ラインで区画された各領域にはデバイス(不図示)が形成されている。
【0019】
本実施の形態に係るウェーハの加工方法では、まず、剛性支持部材Sの表面S1側に両面粘着テープDTを貼着させる第1貼着工程が実施される。図1は、第1貼着工程において剛性支持部材Sに両面粘着テープDTが貼着される様子を示す図である。図1に示すように、両面粘着テープDTは、PET(ポリエチレンテレフタラート)で構成される基材シートBの両主面に粘着層A1,A2を備えており、ウェーハW(図2)と同程度の径を有する円板形状に形成されている。粘着層A1,A2は、紫外線UV(図5)で硬化する紫外線硬化型の粘着剤により形成されている。このため、両面粘着テープDTに紫外線UVを照射すれば、両面粘着テープDTの粘着力を大幅に低下させることが可能である。
【0020】
剛性支持部材Sは、円板形状のガラス基板であり、ウェーハWの全体を支持できるようにウェーハWより大径になっている。また、剛性支持部材Sの表面S1は、ウェーハWの表面W1より粗くなっている。第1貼着工程では、まず、この剛性支持部材Sの表面S1が上を向くように、剛性支持部材Sの裏面S2側を貼着装置1の保持テーブル11に保持させる。そして、剛性支持部材Sの外周の一部において、剛性支持部材Sの表面S1と両面粘着テープDTの粘着層A1とを接触させ、この接触部の近傍を貼着装置1のローラー12で粘着層A2側から押圧する。
【0021】
ローラー12による押圧力を一定に保ちつつ、ローラー12を剛性支持部材Sの中心を挟む反対方向(図1の矢印a1で示す方向)に移動させることで、両面粘着テープDTは剛性支持部材Sの表面S1に貼着される。なお、第1貼着工程において、両面粘着テープDTの粘着層A2には剥離紙RPが貼着されており、粘着層A2とローラー12とは接触しないようになっている。剥離紙RPは、第1貼着工程が終了すると粘着層A2から剥離される。
【0022】
第1貼着工程の後には、ウェーハ載置工程が実施される。図2は、ウェーハ載置工程において両面粘着テープDT上にウェーハWが載置される様子を示す図である。ウェーハ載置工程では、第1貼着工程と同様、剛性支持部材Sの裏面S2側を保持テーブル21に保持させる。すなわち、剛性支持部材Sは、貼着された両面粘着テープDTの粘着層A2が上を向くように配置される。
【0023】
次に、両面粘着テープDTの粘着層A2とウェーハWの表面W1とが対向するように、剛性支持部材Sの上方にウェーハWを位置合わせする。そして、ウェーハWの外周の一部(端部W3)を保持テーブル21の上方に位置する保持部(不図示)で保持させる。また、中心を挟んで端部W3の反対側に位置するウェーハWの別の一部(端部W4)を、両面粘着テープDTの外周の一部(端部DT1)に上方から接触させる。つまり、ウェーハWの表面W1と両面粘着テープDTの粘着層A2とは、外周の一部において接触される。
【0024】
その後、端部W3の保持を解除すると、ウェーハWは、端部W4を支点に重力で回転され(図2の矢印a2)、両面粘着テープDT上に載置される。つまり、ウェーハWの端部W3は、中心を挟んで端部DT1の反対側に位置する両面粘着テープDTの別の一部(端部DT2)に向けて倒される。このように、端部W3側を上方に向けた状態から粘着層A2に向けて倒すようにウェーハWを載置することで、ウェーハWと粘着層A2との間に気泡などが混入せずに済み、ウェーハWと両面粘着テープDTとの密着性を高めることができる。
【0025】
ウェーハ載置工程の後には、第2貼着工程が実施される。図3は、第2貼着工程においてウェーハが押圧される様子を示す図である。第2貼着工程では、図3に示すように、プレス装置3を用いてウェーハWを裏面W2側から押圧する。プレス装置3は、ポーラスセラミック材による吸着面を有する保持テーブル31を備えている。保持テーブル31に剛性支持部材Sの裏面S2を吸着させることで、ウェーハWは、剛性支持部材Sを介して保持テーブル31上に保持される。保持テーブル31の上方には、ウェーハWの裏面W2を押圧する押圧部32が上下動可能に設けられている。
【0026】
押圧部32を下降させてウェーハWに下向きの力を加えると、ウェーハWの表面W1は粘着層A2に押し付けられて、ウェーハWは両面粘着テープDTに貼着される。押圧部32による押圧力は、ウェーハWを支持させるために必要な粘着力が得られるように調整される。このように、両面粘着テープDTを用いて剛性支持部材SにウェーハWを貼着することで、ウェーハWの貼着の際に加熱の必要がなくなり、作業効率を高めることができる。また、上述のように、ウェーハWを粘着層A2に向けて倒すように両面粘着テープDT上に載置し、その後に押圧することで、気泡などの混入を防止してウェーハWと両面粘着テープDTとの密着性を高め、接着力を向上させることができる。なお、本実施の形態では、プレス装置3の押圧部32でウェーハWの裏面W2全面を押圧しているが、第2貼着工程はこれに限られない。第1貼着工程のように、ローラーで押圧しても良い。
【0027】
上述のように、剛性支持部材Sの表面S1はウェーハWの表面W1より粗くなっているので、剛性支持部材Sと粘着層A1との接触面積は、ウェーハWと粘着層A2との接触面積より広くなる。これにより、両面粘着テープDTは剛性支持部材S側により強固に接着され、後の除去工程において、剛性支持部材S及び両面粘着テープDTを容易に剥離できる。剛性支持部材Sの表面粗さは、例えば、サンドブラストや粗い研削処理などで調節できる。
【0028】
第2貼着工程の後には、研削工程が実施される。図4は、研削工程においてウェーハWが研削される様子を示す図である。研削工程では、図4に示すように、研削装置4でウェーハWの裏面W2側が研削される。研削装置4は、ポーラスセラミック材による吸着面を有する保持テーブル41を備えている。保持テーブル41の下方には回転機構(不図示)が設けられており、保持テーブル41は回転軸C1の周りに回転される。ウェーハWは、剛性支持部材Sを介して保持テーブル41に保持される。
【0029】
保持テーブル41の上方には、研削ホイール42が上下動可能に設けられている。研削ホイール42は回転機構(不図示)と連結されており、回転軸C2の周りに回転される。研削ホイール42の下部には研削砥石43が配置されている。研削砥石43をウェーハWの裏面W2に接触させた状態で保持テーブル41と研削ホイール42とを相対回転させることで、ウェーハWの裏面W2側は研削される。なお、研削ホイール42は、保持テーブル41より高速に回転される。
【0030】
保持テーブル41の近傍にはハイトゲージ(不図示)が設けられており、ウェーハWの厚みを測定できるようになっている。このハイトゲージでウェーハWの厚みを測定しながら研削することで、ウェーハWは仕上げ厚みtへと薄化される。本実施の形態の加工方法では、ウェーハWは両面粘着テープDTを介して剛性支持部材Sに支持されている。剛性支持部材Sは、ウェーハWを適切に保持可能な高い剛性を有している。また、両面粘着テープDTには、液状の樹脂などと比べて変形され難いPETによる基材シートBが用いられている。このため、両面粘着テープDTを介してウェーハWを剛性支持部材Sに支持させることで、ウェーハWの固定力は増し、研削工程におけるウェーハWの反りや外周部の欠けなどを抑制できる。
【0031】
研削工程の後には、粘着層硬化工程が実施される。図5は、粘着層硬化工程において粘着層A1,A2が硬化される様子を示す図である。粘着層硬化工程では、図5に示すように、紫外線照射装置5で両面粘着テープDTの粘着層A1,A2に紫外線(紫外光)UVを照射する。紫外線照射装置5は、剛性支持部材Sを保持する保持テーブル51と、保持テーブル51の下方の紫外線源52とを備えている。保持テーブル51は、紫外線源52からの紫外線UVを透過するガラスなどの材質で構成されている。このため、紫外線源52からの紫外線UVは、保持テーブル51を透過して、保持テーブル51に保持される剛性支持部材Sの裏面S2側に照射される。
【0032】
剛性支持部材Sは、所定波長の紫外線UVを透過させるガラス基板で構成されている。また、両面粘着テープDTの基材シートBは、所定波長の紫外線UVを透過させるPETで構成されている。このため、剛性支持部材Sの裏面S2側に照射された紫外線UVは、剛性支持部材S及び基材シートBを透過して粘着層A1,A2に到達する。紫外線UVの照射された粘着層A1,A2は、化学反応により硬化され、粘着力は低下する。なお、粘着層硬化工程の前又は後には、環状のフレームFに張られた保護テープTがウェーハWの裏面W2に貼着される(図6参照)。
【0033】
粘着層硬化工程の後には、除去工程が実施される。図6は、除去工程においてウェーハWから剛性支持部材S及び両面粘着テープDTが除去される様子を示す図である。除去工程では、ウェーハWの裏面W2側を保持テーブル61に保持させて剛性支持部材Sを上方に引き上げる。粘着層A2の粘着力は、粘着層硬化工程により低下されているので、剛性支持部材S及び両面粘着テープDTは、共にウェーハWから剥離される。なお、粘着層硬化工程により粘着層A1の粘着力も低下されるが、両面粘着テープDTは剛性支持部材S側により強固に接着されているので、剛性支持部材S及び両面粘着テープDTは一体に剥離される。また、除去工程において加熱の必要がないので、保護テープTをウェーハWの裏面W2に貼着させた状態で除去工程を行うことができる。
【0034】
このように、紫外線UVで両面粘着テープDTの粘着力を低下させることで、両面粘着テープDT及び剛性支持部材Sの剥離の際に加熱の必要がなくなり、両面粘着テープDT及び剛性支持部材Sの剥離に係る作業効率を高めることができる。また、紫外線UVで両面粘着テープDTの粘着力を低下させるので、ウェーハWを破損させることなく両面粘着テープDT及び支持部材Sを剥離できる。除去工程は、例えば、剥離装置(不図示)によって行われるが、オペレータの手作業で行われても良い。また、剥離後の剛性支持部材Sを再利用すれば、ウェーハWの加工に係るコストを抑制できる。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係るウェーハの加工方法によれば、両面粘着テープDTを用いて剛性支持部材SにウェーハWを貼着するので、ウェーハWの貼着に係る作業効率を高めることができる。また、両面粘着テープDTの粘着層A2に紫外線UVを照射して粘着力を低下させるので、両面粘着テープDT及び剛性支持部材Sの剥離に係る作業効率を高め、ウェーハWを破損させることなく両面粘着テープDT及び剛性支持部材Sを剥離できる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、ウェーハWに結晶方位を示すオリフラ(オリエンテーションフラット)が形成されている場合には、オリフラを基準にウェーハ載置工程を実施できる。図7は、ウェーハWにオリフラOFが形成されている場合のウェーハ載置工程について示す図である。
【0037】
この場合にも、両面粘着テープDTの粘着層A2が上を向くように、保持テーブル11上に剛性支持部材Sを配置する(図2参照)。また、粘着層A2とウェーハWの表面W1とが対向するように位置合わせして、ウェーハWの外周の一部を保持テーブル11の上方に保持させる。ここでは、図7に示すように、中心を挟んでオリフラOFの反対側に位置するウェーハWの一部(端部W3a)を上方に保持させる。そして、オリフラOFを、両面粘着テープDTの外周の一部(端部DT1a)に上方から接触させる。
【0038】
その後、端部W3aの保持を解除すると、ウェーハWは、オリフラOFを支点に重力で回転され(図7の矢印a3)、両面粘着テープDT上に載置される。つまり、ウェーハWの端部W3aは、中心を挟んで端部DT1aの反対側に位置する両面粘着テープDTの別の一部(端部DT2a)に向けて倒される。このように、端部W3a側を上方に向けた状態から粘着層A2に向けて倒すようにウェーハWを載置することで、ウェーハWと粘着層A2との間に気泡などが混入せずに済み、ウェーハWと両面粘着テープDTとの密着性を高めることができる。また、ウェーハWの倒れる方向は、オリフラOFの形状を基準に決定されるので、ウェーハWと両面粘着テープDTとを容易に位置合わせできる。
【0039】
なお、上記実施の形態では、加工対象としてシリコンウェーハを用いる場合を示しているが、加工対象はこれに限られない。例えば、ガリウム砒素(GaAs)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板などの各種半導体基板、セラミック基板、ガラス基板、サファイア基板などの各種絶縁体基板などを加工対象として用いても良い。
【0040】
また、上記実施の形態では、剛性支持部材としてガラス基板を用いる場合を示しているが、剛性支持部材はこれに限られない。研削工程における高い支持性を備えていれば、どのような材質の剛性支持部材を用いても良い。例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、サファイア、シリコンなどで構成された剛性支持部材を用いても良い。また、剛性支持部材の形状も円板形状であることに限定されず、任意の形状とすることができる。
【0041】
なお、粘着層硬化工程では粘着層に紫外線を照射するので、剛性支持部材又はウェーハの少なくとも一方は紫外線を透過する必要がある。例えば、加工対象となるウェーハが紫外線を透過しない場合には、剛性支持部材は紫外線を透過する必要がある。この場合、紫外線は剛性支持部材側から照射される。また、剛性支持部材が紫外線を透過しない場合には、加工対象となるウェーハは紫外線を透過する必要がある。この場合、紫外線はウェーハ側から照射される。
【0042】
また、上記実施の形態では、ウェーハ載置工程においてウェーハの保持を解除し、ウェーハを粘着層に向けて倒すようにしているが、ウェーハ載置工程はこれに限られない。ウェーハ載置工程においては、少なくとも、ウェーハの外周の一部を両面粘着テープに接触させた後に、中心を挟んで反対側の一部を両面粘着テープに接触させれば良い。例えば、図2に示す端部W3側を徐々に下降させるようにウェーハを載置しても良い。
【0043】
また、上記実施の形態では、PETを両面粘着テープの基材シートとして使用しているが、基材シートは他の材料で構成されても良い。少なくとも、粘着層硬化工程において紫外線を透過可能であり、液状の樹脂などと比べて変形され難い材料であれば、基材シートに用いることができる。
【0044】
また、上記実施の形態では、剛性支持部材の表面をウェーハの表面より粗くしているが、剛性支持部材の表面は滑らかでも良い。上述の除去工程で両面粘着テープを除去しきれない場合には、剛性支持基板の除去後に両面粘着テープを除去する工程を追加すればよい。
【0045】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ウェーハなどを研削して所定の厚みへと加工する際に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 貼着装置
3 プレス装置
4 研削装置
5 紫外線照射装置
11 保持テーブル
12 ローラー
21 保持テーブル
31 保持テーブル
32 押圧部
41 保持テーブル
42 研削ホイール
43 研削砥石
51 保持テーブル
52 紫外線源
61 保持テーブル
A1,A2 粘着層
B 基材シート
DT 両面粘着テープ
DT1,DT2,DT1a,DT2a,W3,W4,W3a 端部
F フレーム
OF オリフラ(オリエンテーションフラット)
S 支持部材
S1,W1 表面
S2,W2 裏面
T 保護テープ
UV 紫外線
W ウェーハ
a1,a2,a3 矢印
t 仕上げ厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7