特許第6013906号(P6013906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6013906-液状エポキシ樹脂組成物 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013906
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】液状エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20161011BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161011BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20161011BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20161011BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01L21/60 311S
   C09J163/00
   H01L23/30 R
   C08L63/00 C
   C08K5/55
   C08L61/10
   C08K3/36
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-286122(P2012-286122)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125631(P2014-125631A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】細野 洋平
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−302507(JP,A)
【文献】 特開2009−084384(JP,A)
【文献】 特開2007−246713(JP,A)
【文献】 特開2011−016967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08L 63/00
C09J163/00
H01L 21/00
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂、(B)アミン化合物のエポキシアダクト硬化剤またはマイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤、(C)無機フィラー、(D)ホウ酸トリイソプロピルおよび(E)フェノール樹脂を含み、
液状エポキシ樹脂組成物:100質量部に対して、(C)成分が20〜65質量部であり、(D)成分が0.02〜0.30質量部であり、(E)成分が0.3〜15.0質量部である液状エポキシ樹脂組成物を含む、アンダーフィル材
【請求項2】
(A)液状エポキシ樹脂、(B)アミン化合物のエポキシアダクト硬化剤またはマイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤、(C)コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ、ナノシリカ、ガラスビーズ、またはベントナイトを含む無機フィラー、(D)ホウ酸トリイソプロピルおよび(E)フェノール樹脂を含み、はんだ粒子を含まず、
液状エポキシ樹脂組成物:100質量部に対して、(C)成分に含まれるコロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ、ナノシリカ、ガラスビーズ、またはベントナイトが20〜65質量部であり、(D)成分が0.02〜0.30質量部であり、(E)成分が0.3〜15.0質量部である液状エポキシ樹脂組成物を含む、接着剤。
【請求項3】
請求項記載のアンダーフィル材の硬化物、または請求項記載の接着剤の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状エポキシ樹脂組成物に関し、特に、流動性に優れ、かつ低線膨張係数であることを特徴としたアンダーフィル材や電子部品用接着剤として使用可能な液状エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のさらなる配線等の高密度化、高周波化に対応可能な半導体チップの実装方式として、フリップチップボンディングが利用されている。フリップチップ実装では、半導体チップと基板を直接接続するため、シリコンチップと基板の線膨張係数の違いに起因する応力により、接続部にクラックが発生するおそれがあり、接続信頼性不良の原因となる。その対策として、アンダーフィル材と呼ばれる液状封止材を半導体チップと配線基板の間に充填する技術が用いられている。アンダーフィル材を用いることにより、ヒートサイクル等の熱的応力に対する接続信頼性、及び、衝撃や折り曲げ等の物理的応力に対する接続信頼性を向上することが可能となる。
【0003】
ここで、シリコンチップの線膨張係数は4ppm/℃であり、基板、例えば、ガラスエポキシ基板の線膨張係数は20ppm/℃である。アンダーフィル材は、一般に、この線膨張係数の差を吸収するために無機フィラーを混合しており、無機フィラーとしては、シリカフィラーが、通常用いられている。
【0004】
また、アンダーフィル材には、低温硬化可能な樹脂として、エポキシ−イミダゾール硬化系が使用されているが、この樹脂系に、上述のアンダーフィル材の線膨張係数を下げる目的でシリカフィラーを添加した際に、アンダーフィル材の流動性が劣化する、という問題がある。この流動性劣化の原因としては、アンダーフィル材中での樹脂成分とシリカフィラーとの分散状態が不均一であることが考えられる。
【0005】
このシリカフィラーを添加した際のアンダーフィル材の流動性の劣化改善を目的として、リン酸エステルを含有する封止用エポキシ樹脂組成物が報告されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−289123号公報
【特許文献2】特開2011−246545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エポキシ樹脂組成物にリン酸エステルを含有させると、エポキシ樹脂組成物の保存中での粘度上昇が大きくなり、ポットライフが短くなる、という問題がある。このシリカフィラーを添加したエポキシ樹脂組成物でのポットライフに関する問題は、アンダーフィル材用途以外の光半導体等の電子部品用の接着剤として使用するときにも問題となる。
【0008】
本発明は、無機フィラーを含有していてもエポキシ樹脂組成物の流動性が良く、また、保存中での増粘抑制によりポットライフが長い液状エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した液状エポキシ樹脂組成物に関する。
〔1〕(A)液状エポキシ樹脂、(B)アミン化合物のエポキシアダクト硬化剤またはマイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤、(C)無機フィラー、(D)ホウ酸トリイソプロピルおよび(E)フェノール樹脂を含み、
液状エポキシ樹脂組成物:100質量部に対して、(C)成分が20〜65質量部であり、(D)成分が0.02〜0.30質量部であり、(E)成分が0.3〜15.0であることを特徴とする、液状エポキシ樹脂組成物。
〔2〕上記〔1〕記載の液状エポキシ樹脂組成物を含む、アンダーフィル材。
〔3〕上記〔1〕記載の液状エポキシ樹脂組成物を含む、接着剤。
〔4〕上記〔2〕記載のアンダーフィル材の硬化物、または請求項3記載の接着剤の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明〔1〕によれば、無機フィラーを含有していても流動性が良く、かつ保存中の増粘の抑制によりポットライフが長い液状エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
本発明〔4〕によれば、無機フィラーを含有する硬化したエポキシ樹脂組成物の適度な熱膨張係数により、高信頼性の半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液状エポキシ樹脂組成物の注入性の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物(以下、樹脂組成物という)は、(A)液状エポキシ樹脂、(B)アミン化合物のエポキシアダクト硬化剤またはマイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤、(C)無機フィラー、(D)ホウ酸トリイソプロピルおよび(E)フェノール樹脂を含み、
液状エポキシ樹脂組成物:100質量部に対して、(C)成分が20〜65質量部であり、(D)成分が0.02〜0.15質量部であり、(E)成分が0.3〜15.0であることを特徴とする。
【0014】
(A)成分は、樹脂組成物に、接着性、硬化性を付与し、硬化後の樹脂組成物に、耐久性、耐熱性を付与する。(A)成分としては、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、液状水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状脂環式エポキシ樹脂、液状アルコールエーテル型エポキシ樹脂、液状環状脂肪族型エポキシ樹脂、液状フルオレン型エポキシ樹脂、液状シロキサン系エポキシ樹脂等が挙げられ、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂が、接着性、硬化性、耐久性、耐熱性の観点から好ましい。また、エポキシ当量は、粘度調整の観点から、80〜250g/eqが好ましい。市販品としては、新日鐵化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF8170)、DIC製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:EXA−850CRP)、新日鐵化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF870GS)、DIC製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP4032D)、三菱化学製アミノフェノール型エポキシ樹脂(グレード:JER630、JER630LSD)、モメンティブ・パフォーマンス製シロキサン系エポキシ樹脂(品名:TSL9906)、新日鐵化学株式会社製1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(品名:ZX1658GS)等が挙げられる。(A)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0015】
(B)成分は、80〜100℃程度の低温での硬化を可能にする。(B)成分のアミン化合物のエポキシアダクトは、アミン化合物とエポキシ樹脂との反応により合成されるアミノ基を有する化合物である。
【0016】
アミン化合物としては、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1個以上有するものであればよく、特に限定されない。アミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4'−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物;4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリン等の芳香族アミン化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物等が挙げられる。
【0017】
エポキシ化合物としては、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、スチレンオキシド、n−ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアセタート等が挙げられる。
【0018】
(B)成分のマイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤としては、ウレタン樹脂などでマイクロカプセル化されたイミダゾール化合物硬化促進剤が、保存安定性の観点から好ましく、液状ビスフェノールA型等の液状エポキシ樹脂中に分散され、マスターバッチ化された、マイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化促進剤が、作業性、硬化速度、保存安定性の点からより好ましい。イミダゾール硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等を挙げることができ、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等が、硬化速度、作業性、耐湿性の観点から好ましい。
【0019】
(B)成分の市販品としては、味の素ファインテクノ製アミンアダクト系潜在性硬化剤(品名:アミキュアPN−23、アミキュアPN−40)、T&K TOKA製潜在性硬化剤(品名:フジキュアーFX−1000)、旭化成イーマテリアルズ製マイクロカプセル化イミダゾール化合物潜在性硬化剤(製品名:ノバキュアHX3941HP、ノバキュアHX3088、ノバキュアHX3722)が挙げられる。(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0020】
(C)成分により、樹脂組成物の線膨張係数を制御することができる。(C)成分としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ、ナノシリカ等のシリカフィラー、アクリルビーズ、ガラスビーズ、ウレタンビーズ、ベントナイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。また、(C)成分の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、特に限定されないが、0.01〜50μmであることが、樹脂組成物中に充填剤を均一に分散させるうえで好ましく、また、樹脂組成物をアンダーフィル材として使用した際の注入性に優れる等の理由から好ましい。0.01μm未満だと、樹脂組成物の粘度が上昇して、アンダーフィル材として使用した際に注入性が悪化するおそれがある。50μm超だと、樹脂組成物中に充填剤を均一に分散させることが困難になるおそれがある。また、硬化後の樹脂組成物の熱ストレスから、銅製ワイヤーを保護する観点から、(C)成分の平均粒径は、0.6〜10μmであると、より好ましい。市販品としては、アドマテックス製高純度合成球状シリカ(品名:SO−E5、平均粒径:2μm;品名:SE−2300、平均粒径:0.6μm)、龍森製シリカ(品名:FB7SDX、平均粒径:10μm)、マイクロン製シリカ(品名:TS−10−034P、平均粒径:20μm)等が挙げられる。ここで、充填剤の平均粒径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計により測定する。(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0021】
(D)成分は、化学式(1):
【0022】
【化1】
【0023】
で表されるホウ酸トリイソプロピルであり、樹脂組成物中の樹脂成分とシリカフィラーとの濡れ性を高くし、樹脂成分とシリカフィラーとの分散状態を改善させ、かつ、液状エポキシ樹脂組成物の保存中の増粘を抑制し、ポットライフを長くすることができる。(D)成分は、例えば、和光純薬工業から市販されている試薬を使用すればよい。
【0024】
(E)成分は、エポキシ樹脂組成物の保存中での増粘を抑制する。(E)成分として使用されるフェノール樹脂は、樹脂組成物中で特定量含有されることにより、硬化遅延剤として作用する。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アリルフェノール等が挙げられる。20℃で液状であるので、フェノールノボラックが好ましい。市販品としては、明和化成製フェノールノボラック(品名:MEH8005)が挙げられる。
【0025】
(B)成分は、良好な反応性、信頼性の観点から、樹脂組成物:100質量部に対して、5〜35質量部であると好ましく、7〜30質量部であると、より好ましい。
【0026】
(C)成分は、樹脂組成物:100質量部に対して、20〜65質量部であり、好ましくは30〜60質量部、より好ましくは、30〜40質量部含有される。30〜40質量部であると、線膨張係数を下げられ、かつ注入性の悪化をさけることができる。
【0027】
また、(C)成分は、樹脂組成物の硬化物:100質量部に対して、20〜65質量部であり、好ましくは30〜60質量部、より好ましくは、30〜40質量部含有される。ここで、樹脂組成物は、硬化時の質量減少が約1〜2質量%と少ないため、硬化物中での好ましい(C)成分の含有量は、樹脂組成物中での含有量と同様である。ここで、(C)成分の定量分析は、質量分析法で行う。
【0028】
(D)成分は、樹脂組成物:100質量部に対して、0.02〜0.30質量部であり、0.02〜0.15質量部であると好ましく、0.02〜0.06質量部であると、より好ましい。0.02質量部以上であると、注入性が良好であり、0.30質量部以下であると、硬化後の樹脂組成物の強度が十分である。
【0029】
また、(D)成分は、樹脂組成物の硬化物:100質量部に対して、0.02〜0.30質量部であり、0.02〜0.15質量部であると好ましく、0.02〜0.06質量部であると、より好ましい。ここで、(D)成分の定量分析は、質量分析法で行う。
【0030】
(E)成分は、樹脂組成物:100質量部に対して、0.3〜15.0質量部であると好ましい。(E)成分が0.3質量部未満では、硬化後の樹脂組成物に色むら等の外観不良が発生し、15質量部を超えると、硬化性が低下してしまい、所要時間で硬化が不十分のため、硬化後の樹脂組成物の強度が低下してしまう。
【0031】
また、(E)成分は、樹脂組成物の硬化物:100質量部に対して、0.3〜15.0質量部であると好ましい。ここで、(E)成分の定量分析は、質量分析法で行う。
【0032】
樹脂組成物は、さらに、(F)成分であるカップリング剤を含有すると、密着性の観点から好ましく、(F)成分としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが、密着性の観点から好ましい。市販品としては、信越化学工業製KBM403、KBE903、KBE9103等が挙げられる。(F)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
(F)成分は、樹脂組成物:100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部含有される。0.05質量部以上であると、密着性が向上し、15質量部以下であると、樹脂組成物の発泡が抑制される。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤、その他の添加剤等を配合することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、例えば、(A)成分〜(E)成分およびその他添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、温度:25℃での粘度が1000〜80000mPa・sであると、注入性の観点から好ましい。ここで、粘度は、東機産業社製E型粘度計(型番:TVE−22H)で測定する。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、ディスペンサー、印刷等で、基板や光半導体等の電子部品の所望の位置に形成・塗布される。ここで、樹脂組成物がアンダーフィル材として使用される場合には、フレキシブル配線基板等の基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が基板の配線上に接するように形成する。
【0038】
本発明の樹脂組成物の硬化は、80〜300℃が好ましく、また、200秒以内で硬化させると、生産性向上の観点から好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、アンダーフィル材や、光半導体等の電子部品用の接着剤として適している。また、アンダーフィル材の硬化物、または接着剤の硬化物を含む、半導体装置は、無機フィラーが均一に分散されているので、高信頼性である。
【実施例】
【0040】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0041】
〔実施例1〜17、比較例1〜20〕
表1〜表4に示す配合で、樹脂組成物を作製した。作製した樹脂組成物は、すべて液状であった。
【0042】
〔粘度の評価〕
作製した直後の樹脂組成物の粘度(以下、初期粘度という。単位:mPa・s)を、東機産業社製E型粘度計(型番:TVE−22H)を用い、毎分10回転の条件で測定した。初期粘度は、1000〜80000mPa・sであると好ましく、1000〜8000mPa・sであると、より好ましい。また、樹脂組成物を25℃で48時間保持した後の粘度も同様に測定し、粘度増加率(単位:%)を算出した。ここで、粘度増加率は、下記式:
粘度増加率=〔(48時間後の粘度)−(初期粘度)〕/(初期粘度)×100
で算出した。表1〜表4に、測定結果を示す。
【0043】
〔揺変指数の評価〕
樹脂組成物の揺変指数を、東機産業社製E型粘度計(型番:TVE−22H)を用いて測定した。揺変指数は、毎分1回転の条件で求められた測定値を、毎分10回転の条件で求められた測定値で除した比率、すなわち、(毎分1回転での粘度)/(毎分10回転での粘度)がから求めた。揺変指数の適正範囲は、0.8〜1.0である。表1〜表4に、測定結果を示す。
【0044】
〔樹脂組成物の注入性の評価〕
図1に、樹脂組成物の注入性の評価方法を説明する模式図を示す。まず、図1(A)に示すように、基板20上に50μmのギャップ40を設けて、半導体素子の代わりにガラス板30を固定した試験片を作製した。但し、基板20としては、FR4基板を使用した。次に、この試験片を50℃に設定したホットプレート上に置き、図1(B)に示すように、ガラス板30の一端側に、作製した樹脂組成物10を塗布し、図1(C)に示すように、ギャップ40が樹脂組成物11で満たされるまでの時間を測定した。注入時間の適性範囲は、1000秒以内である。表1〜表4に、注入性の評価結果を示す。
【0045】
〔硬化物外観〕
樹脂組成物の注入性の評価した試験片をオーブンへ入れ、120℃で3分間加熱し、エポキシ樹脂組成物を硬化させた。加熱後の硬化物外観を目視観察した。硬化物にしわ・柚子肌等の外観不良や色むらが認められなかった場合を○とし、硬化物にしわ・柚子肌等の外観不良や色むらが認められた場合を×とした。表1〜表4に、硬化物外観の評価結果を示す。
【0046】
〔硬化した樹脂組成物の強度評価〕
ガラスエポキシ基板に評価用試料を印刷し、該試料上に2mm×2mmのシリコンチップを載置した。これを、80±2℃の熱風乾燥機で90分間加熱硬化、または100±2℃の熱風乾燥機で90分間加熱硬化させた。これを試験片とし、dage社製万能型ボンドテスター(型番:DAGE4000)を用いてシリコンチップに荷重をかけ、チップが剥離した時の強度(剥離強度)を測定した。n=10とし、その平均値を強度とした。なお、100N未満の場合は、未硬化とした。表1〜表4に、強度の評価結果を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表1〜表3からわかるように、実施例1〜17の全てで、初期粘度が使用可能範囲内であり、48時間後の粘度増加率も4.3%以下であった。揺片指数も所望範囲内であり、注入時間も所望範囲内であった。また、100℃で硬化し、硬化後の樹脂組成物の強度も良好であった。特に、(D)成分が0.02〜0.12質量部の実施例1〜4、7〜17は、80℃の低温でも硬化した。これに対して、(D)成分を含まない比較例1は、揺変指数が高く、注入試験が途中で終了してしまった。(D)成分が少なすぎる比較例2は、揺変指数が高かった。さらに、(D)成分が多すぎる比較例3は、100℃、90分でも硬化しなかった。(C)成分が多すぎる比較例4は、粘度が高すぎて測定できなかった。(B)成分を含まない比較例5は、増粘試験中に固化した。(E)成分が少なすぎる比較例6は、色むらによる外観不良が発生した。(E)成分が多すぎる比較例7は、初期粘度が高めで、粘度増加率が高く、80℃、90分で未硬化であった。(D)成分とは炭素数が異なるホウ酸トリ−n−ヘキサデシルを使用した比較例8〜12は、いずれも揺変指数が高く、注入試験が途中で終了してしまった。表4からわかるように、(D)成分の代わりにテトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレートを使用した比較例13〜17は、いずれも粘度増加率が高過ぎた。さらに、比較例13は、揺変指数が高く、注入試験が途中で終了してしまった。(B)成分の代わりの硬化剤を使用した比較例18、20は、粘度増加率が高過ぎ、かつ100℃×90分でも硬化しなかった。(E)成分が多すぎる比較例19も、粘度増加率が高過ぎ、かつ100℃×90分でも硬化しなかった。
【0052】
上記のように、本発明の樹脂組成物は、無機フィラーを含有していても流動性が良く、かつ樹脂組成物の保存時の増粘を抑制し、ポットライフを長くすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 樹脂組成物
20 基板
30 ガラス板
40 ギャップ
図1