(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における移動通信システム10の構成の一例を示すシステム構成図である。移動通信システム10は、複数の基地局20および複数の移動端末30を備える。それぞれの基地局20は、通信回線11に接続されており、通信回線11を介してデータの送受信が可能である。
【0016】
ここで、本発明の動作の概要を
図1を参照して説明する。移動通信システム10では、各基地局20からの電波が移動端末30において通信可能な程度の強度で届く領域(以下、通信エリア12と呼ぶ)をある程度重畳させて、複数の基地局20の通信エリア12により全体として移動通信サービスの提供が可能なエリアが設定される。
【0017】
しかし、地球上の全ての領域で移動通信サービスの提供を可能とすることは費用対効果の点で現実的ではなく、山間部やトンネル内のように、いずれの基地局20からの電波も届かない領域(以下、圏外エリア13と呼ぶ)が存在する。
【0018】
本発明における各基地局20は、自局の通信エリア12に圏外エリア13が隣接している場合に、その旨を圏外情報として、所定のタイミング毎に自局の通信エリア12内へ送信する。移動端末30は、基地局20から圏外情報を受信した場合に、自端末の位置等の情報を含む移動情報を基地局20へ送信する。
【0019】
なお、本実施形態において、移動端末30は、電車や自動車等の移動体14に乗って移動することを想定している。ただし、移動端末30を乗せる移動体14は、電車や自動車には限定されず、バイクやバス等であってもよい。
【0020】
各基地局20は、自局の通信エリア12内を通る道路や線路等の経路のうち、その経路の先が圏外エリア13を通っている経路について、その圏外エリア13を通過することで圏外となる期間を示す圏外期間と、その圏外エリア13を抜けた先にある他の基地局20の通信エリア12の情報(例えば、その基地局20のスクランブリングコード等)とを予め保持している。
【0021】
そして、基地局20は、移動端末30から受信した移動情報に基づいて、当該移動端末30が、その先に圏外エリア13が存在する経路を移動中であるか否かを判定し、当該移動端末30が、そのような経路を移動中であれば、当該経路に対応する圏外期間(例えばx秒間)と、当該経路を通って圏外エリア13を抜けた先にある基地局20の情報(以下、復帰情報と呼ぶ)とを当該移動端末30へ送信する。
【0022】
移動端末30は、基地局20から圏外期間と復帰情報とを受信し、その後に圏外を検出した場合、受信した圏外期間に相当する期間(例えばx秒間)、セルサーチを停止する。そして、圏外を検出してから圏外期間に相当する期間(例えばx秒間)が経過した場合、移動端末30は、圏外移行前に受信していた復帰情報を用いてセルサーチを再開する。これにより、圏外期間中の無駄なセルサーチを抑制できると共に、圏内復帰後に迅速に基地局20に帰属することができる。
【0023】
なお、本発明は、圏外エリア13であって、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号等が届かないことにより自己の現在位置を特定することができない領域(例えば、トンネル等)におけるセルサーチにおいて特に有効である。
【0024】
以下、各基地局20および各移動端末30の詳細な機能構成について説明する。
【0025】
図2は、第1の実施形態における基地局20の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態における基地局20は、経路情報格納部200、基地局情報格納部201、圏外情報報知部202、圏外情報格納部203、圏外期間特定部204、および送信部205を有する。
【0026】
図3は、経路情報格納部200に格納されるデータの構造の一例を示す図である。経路情報格納部200には、例えば
図3に示すように、経路ID2000に対応付けて、座標群2001および速度範囲2003が予め格納されている。
【0027】
経路ID2000は、当該基地局20の通信エリア12内を通るそれぞれの経路を識別する情報である。座標群2001は、対応する経路ID2000の経路上のノードを規定する情報である。速度範囲2003は、対応する経路ID2000の経路を移動体14が移動する場合に考えられる速度の範囲を示す情報である。本実施形態において、それぞれの経路は、例えば、座標群2001に含まれる各座標のノードを結ぶリンクの集合として設定される。
【0028】
図3に例示した経路情報格納部200には、例えば、「R001」の経路ID2000に対応付けて、「(x
11,y
11),(x
12,y
12),・・・」からなる座標群2001と、「30〜90km/h」の速度範囲2003とが予め格納されている。
【0029】
図4は、基地局情報格納部201に格納されるデータの構造の一例を示す図である。基地局情報格納部201には、例えば
図4に示すように、経路ID2010に対応付けて、基地局ID2011およびスクランブリングコード2012等の情報が予め格納されている。
【0030】
経路ID2010は、当該基地局20の通信エリア12内を通るそれぞれの経路を識別する情報である。基地局ID2011は、対応する経路ID2010の経路の先にある圏外エリア13を通過して、移動端末30が進入する通信エリア12に対応する他の基地局20を識別する情報である。スクランブリングコード2012は、当該他の基地局20が使用しているスクランブリングコードを示す。
【0031】
図4に例示した基地局情報格納部201には、例えば、「R001」の経路ID2010に対応付けて、「B101」の基地局ID2011と、「*******」のスクランブリングコード2012とが予め格納されている。
【0032】
図5は、第1の実施形態において圏外情報格納部203に格納されるデータの構造の一例を示す図である。本実施形態における圏外情報格納部203には、例えば
図5に示すように、経路ID2030に対応付けて、圏外期間テーブル2031が予め格納されている。経路ID2030は、当該基地局20の通信エリア12内を通るそれぞれの経路を識別する情報である。
【0033】
それぞれの圏外期間テーブル2031には、位置の範囲2032および移動速度の範囲2033に対応付けて、圏外期間2034が予め格納されている。位置の範囲2032は、例えばトンネルの入口からその手前所定距離(例えば100m)の範囲など、圏外エリア13を走行する速度である可能性が高い速度で通過する領域が設定される。
【0034】
圏外期間2034は、移動端末30が、当該位置の範囲2032を当該移動速度の範囲2033で走行した場合に予想される圏外エリア13の走行期間を示す情報である。なお、圏外期間2034には、移動速度に応じた関数が設定されてもよい。例えば、移動速度vが30〜40km/hの場合には、(3000/v+60)秒、移動速度vが40〜50km/hの場合には、(3800/v+40)秒、というような関数が圏外期間2034に設定されていてもよい。
【0035】
図5に例示した圏外情報格納部203には、例えば、「R001」の経路ID2030に対応付けて、圏外期間テーブル2031が格納されている。そして、その圏外期間テーブル2031には、例えば、中心座標(x
1,y
1)とそこからの距離Δrで表された位置の範囲2032に対応付けて、「30〜40km/h」の移動速度の範囲2033と、「154秒」の圏外期間2034が予め格納されている。
【0036】
図2に戻って説明を続ける。圏外情報報知部202は、圏外情報格納部203内に圏外期間の情報が登録されている場合、すなわち、当該基地局20の通信エリア12に圏外エリア13が隣接している場合に、圏外情報を、予め定められたタイミング毎(例えば定期的)に、自局の通信エリア12内へ送信する。
【0037】
圏外期間特定部204は、自局の通信エリア12内の移動端末30から、当該移動端末30の位置の履歴を含む移動情報を受信した場合に、当該移動端末30を乗せた移動体14が走行している経路と、経路情報格納部200内に登録されている経路とのマッチングを判定する。
【0038】
ここで、圏外期間特定部204によるマッチング手順の一例について説明する。
図6は、経路の特定方法を説明するための概念図である。例えば、経路情報格納部200には、
図6に示すように、経路43および経路44の経路IDが登録されているものと仮定する。それぞれの経路には走行方向が対応付けられており、経路43の走行方向前方には、圏外エリア13となるトンネル45が存在し、経路44の走行方向前方には、圏外エリア13となるトンネル46が存在しているものと仮定する。
【0039】
圏外期間特定部204は、移動端末30の移動情報に含まれている位置の情報(例えば、
図6に示した位置40〜位置42)を測定時刻の順に並べて移動端末30の移動軌跡を算出する。また、移動端末30の移動情報に含まれている位置の履歴から移動速度を算出する。例えば、位置の履歴に含まれる直近所定数の位置と測定時刻の情報をもとに、各区間の移動速度を計算し、その平均値を移動速度として算出する。
【0040】
そして、圏外期間特定部204は、例えば、算出した移動軌跡が経路から所定距離ΔL(例えば数m)の範囲に含まれ、かつ、算出した移動速度が経路に対応付けられている速度範囲に含まれる経路を経路情報格納部200内で検索する。
【0041】
図6の例では、圏外期間特定部204は、算出した移動軌跡を用いて、移動端末30を乗せた移動体14が走行している可能性の高い経路として、経路44ではなく経路43を経路情報格納部200内で特定する。
【0042】
そのような経路が経路情報格納部200内に存在する場合、圏外期間特定部204は、圏外情報格納部203を参照して、経路情報格納部200内で特定した経路の経路ID2030に対応付けられている圏外期間テーブル2031(
図5参照)を特定する。そして、圏外期間特定部204は、特定した圏外期間テーブル2031を参照して、移動端末30から受信した移動情報に含まれている位置の中で、位置の範囲2032に含まれる位置を特定する。
【0043】
次に、圏外期間特定部204は、位置の範囲2032に対応付けられている移動速度の範囲2033を参照して、位置の履歴から算出した移動速度が含まれる移動速度の範囲2033を特定する。そして、圏外期間特定部204は、特定した移動速度の範囲2033に対応付けられている圏外期間2034を抽出する。
【0044】
次に、圏外期間特定部204は、基地局情報格納部201を参照して、経路情報格納部200内で特定した経路の経路IDに対応付けられている基地局IDおよびスクランブリングコード等の情報を復帰情報として抽出する。そして、圏外期間特定部204は、抽出した圏外期間および復帰情報を送信部205へ送る。送信部205は、圏外期間特定部204から受け取った圏外期間および復帰情報を、移動情報の送信元の移動端末30へ送信する。
【0045】
図7は、第1の実施形態における移動端末30の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態における移動端末30は、送信部31、受信部32、測定情報格納部33、測定部34、セルサーチ部35、およびセルサーチ制御部36を有する。
【0046】
図8は、測定情報格納部33に格納されるデータの構造の一例を示す図である。測定情報格納部33には、例えば
図8に示すように、複数のレコード334が格納される。それぞれのレコード334には、位置330および測定時刻333が格納される。位置330は、当該移動端末30の位置を示す情報である。測定時刻333は、同一のレコード334内の位置330が測定された時刻を示す情報である。
図8に例示した測定情報格納部33内のレコード334には、例えば、「(x
1,y
1)」の位置330と、「14:56:30」の測定時刻333とが格納される。
【0047】
測定部34は、定期的(例えば数秒毎)に、当該移動端末30の位置を測定し、測定した時刻と共に、測定情報格納部33内のレコードに登録する。測定情報格納部33内の全てのレコードにデータが登録されている場合、測定部34は、最も古い情報が登録されているレコードに上書きすることで、新たに測定した情報を測定情報格納部33内に登録する。
【0048】
受信部32は、基地局20から圏外情報を受信した場合に、その旨を送信部31に通知する。また、受信部32は、基地局20から圏外期間および復帰情報を受信した場合に、受信したこれらの情報をセルサーチ制御部36へ送る。
【0049】
送信部31は、受信部32から圏外情報を受け取った場合に、測定情報格納部33内に格納されている位置の履歴から移動速度を求め、当該移動端末30が所定速度(例えば、30km/h)以上で移動しているか否かを判定する。送信部31は、例えば、最新の測定時刻に対応付けられている位置から所定数前までの位置の履歴から求められた移動速度を用いて当該移動端末30が所定速度以上で移動しているか否かを判定する。
【0050】
当該移動端末30が所定速度以上で走行している場合、送信部31は、測定情報格納部33に格納されている位置および測定時刻の情報を移動情報として基地局20へ送信する。このように、移動端末30は、所定速度以上で走行している場合に、移動情報を基地局20へ送信するので、基地局20の周辺に住んでいる人が携帯している移動端末30のように、ほとんど移動せずに基地局20の周辺に存在し続ける移動端末30がある場合に、そのような移動端末30による無駄な情報送信を抑制することができる。
【0051】
セルサーチ部35は、基地局20から送信される電波の受信強度を測定し、当該受信強度が予め定められた強度未満となった場合に、セルサーチを開始する。そして、セルサーチ部35は、いずれの基地局20からも所定の強度以上の電波を受信していないことを検出した場合に圏外と判定し、その旨をセルサーチ制御部36に通知する。
【0052】
また、セルサーチ部35は、セルサーチ制御部36からセルサーチの停止を指示されていない場合、所定時間(例えば数秒)毎にセルサーチを再開する。これは、基地局20の通信エリア12内であっても、障害物の影響で一時的にいずれの基地局20からの電波も所定強度未満となる場合があるためである。
【0053】
一方、セルサーチ部35は、セルサーチの停止を指示された場合に、セルサーチ制御部36からセルサーチの再開を指示されるまで、セルサーチの再開を停止する。このとき、セルサーチ部35は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の復帰情報をセルサーチ制御部36から受け取り、受け取ったスクランブリングコード等の情報を優先的に用いてセルサーチを再開する。
【0054】
セルサーチ制御部36は、受信部32から圏外期間および復帰情報を受け取った場合、セルサーチ部35によって圏外が検出されたか否かを監視する。セルサーチ部35によって圏外が検出された場合、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止をセルサーチ部35に指示すると共に、セルサーチの停止期間の計測を開始する。
【0055】
そして、計測しているセルサーチの停止期間が、受信部32から受け取った圏外期間に達した場合、セルサーチ制御部36は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の復帰情報をセルサーチ部35へ送る。
【0056】
図9は、第1の実施形態における移動通信システム10の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0057】
自局の通信エリア12に圏外エリア13が隣接している基地局20は、圏外情報格納部203内に圏外期間の情報が登録されているので、圏外情報報知部202は、その旨を示す圏外情報を、所定のタイミング毎に、自局の通信エリア12内へ送信する(S100)。
【0058】
また、移動端末30の測定部34は、定期的に位置を測定して、測定時刻に対応づけて測定情報格納部33内に記録している(S101)。そして、基地局20から圏外情報を受信した場合、移動端末30の受信部32は、受信した圏外情報を送信部31へ送る。
【0059】
送信部31は、測定情報格納部33を参照して、位置の履歴から移動端末30の移動速度が所定値以上であるか否かを判定する。移動速度が所定値未満である場合、送信部31は、測定情報格納部33内の情報を送信しない。一方、移動速度が所定値以上であると判定した場合(S102)、送信部31は、測定情報格納部33内の情報を移動情報として基地局20へ送信する(S103)。
【0060】
基地局20の圏外期間特定部204は、移動端末30から移動情報を受信した場合に、受信した移動情報に含まれる位置の履歴から移動軌跡および移動速度をそれぞれ算出し、算出したこれらの情報で特定される経路を経路情報格納部200内で検索する(S104)。そのような経路が経路情報格納部200内に存在しない場合(S104:No)、圏外期間特定部204は、圏外領域に進入しない旨を移動情報の送信元の移動端末30へ送信する(S105)。
【0061】
一方、算出した移動軌跡および移動速度で特定される経路が経路情報格納部200内に存在する場合(S104:Yes)、圏外期間特定部204は、特定した経路の経路IDに対応付けられている圏外期間テーブル2031を圏外情報格納部203内で特定する。
【0062】
そして、圏外期間特定部204は、特定した圏外期間テーブル2031を参照して、移動端末30から受信した移動情報に含まれている位置における移動速度が含まれる移動速度の範囲を特定する。そして、圏外期間特定部204は、特定した移動速度の範囲に対応付けられている圏外期間を抽出する(S106)。
【0063】
次に、圏外期間特定部204は、基地局情報格納部201を参照して、経路情報格納部200内で特定した経路の経路IDに対応付けられている基地局IDおよびスクランブリングコード等の情報を復帰情報として抽出する(S107)。そして、送信部205は、圏外期間特定部204が抽出した圏外期間および復帰情報を、移動情報の送信元の移動端末30へ送信する(S108)。
【0064】
移動端末30の受信部32は、受信した圏外期間および復帰情報をセルサーチ制御部36へ送る。そして、セルサーチ制御部36は、セルサーチ部35によって圏外が検出されたか否かを判定する(S109)。圏外が検出された場合(S109:Yes)、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止をセルサーチ部35に指示し(S110)、セルサーチの停止期間の計測を開始する(S111)。
【0065】
そして、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止期間が、基地局20から受信した圏外期間に達したか否かを判定する(S112)。セルサーチの停止期間が、受信した圏外期間に達した場合(S112:Yes)、セルサーチ制御部36は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の情報をセルサーチ部35へ送る。
【0066】
セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等をセルサーチ制御部36から受け取った場合、セルサーチ部35は、受け取ったスクランブリングコード等を優先的に用いてセルサーチを再開する(S113)。
【0067】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0068】
上記説明から明らかなように、本実施形態の移動通信システム10によれば、圏外領域での無駄なセルサーチを減らして、移動端末30の電池残量の低下を抑制することができる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0070】
図10は、第2の実施形態における基地局20の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態における基地局20は、経路情報格納部200、基地局情報格納部201、圏外情報報知部202、圏外情報格納部203、圏外期間特定部204、送信部205、更新部206、実測値格納部207、転送部208、および実測値受信部209を有する。なお、以下に説明する点を除き、
図10において、
図2と同じ符号を付した構成は、
図2における構成と同一または同様の機能を有するためその詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施形態における移動通信システム10では、圏外期間および復帰情報を受信した移動端末30が、圏外期間を実測し、圏外期間の実測値を、圏外エリア13を抜けた先の通信エリア12の基地局20へ送信し、当該基地局20が、受信した圏外期間の実測値を、圏外期間および復帰情報の送信元の基地局20へ通信回線11を介して転送する。圏外期間の実測値の転送を受けた基地局20は、その情報を蓄積し、一定数たまった時点で、圏外期間の実測値に基づいて、圏外情報格納部203内の圏外期間を更新する。
【0072】
これにより、本実施形態における移動通信システム10は、初期設定された圏外期間で即座に運用を開始することができると共に、運用を続ける中で、実際の交通事情の変化や電波環境の経時的な変化などに応じて、実際の環境により近い圏外期間に随時修正することができる。
【0073】
図11は、第2の実施形態において圏外情報格納部203に格納されるデータの構造の一例を示す図である。本実施形態における圏外情報格納部203には、例えば
図11に示すように、経路ID2030に対応付けて、圏外期間テーブル2031が予め格納されている。
【0074】
それぞれの圏外期間テーブル2031には、位置の範囲2032、移動速度の範囲2033、および圏外期間2034に対応付けて、圏外期間ID2035が予め格納されている。圏外期間ID2035は、それぞれの圏外期間を識別する情報である。
【0075】
図11に例示した圏外情報格納部203には、例えば、「R001」の経路ID2030に対応付けて、圏外期間テーブル2031が格納されている。そして、その圏外期間テーブル2031には、例えば、中心座標(x
1,y
1)とそこからの距離Δrで表された位置の範囲2032に対応付けて、「30〜40km/h」の移動速度の範囲2033と、「154秒」の圏外期間2034と、「T001」の圏外期間ID2035が予め格納されている。
【0076】
図12は、実測値格納部207に格納されるデータの構造の一例を示す図である。実測値格納部207には、例えば
図12に示すように、経路ID2070に対応付けて、実測値テーブル2071が格納される。経路ID2070は、当該基地局20の通信エリア12内を通るそれぞれの経路を識別する情報である。
【0077】
それぞれの実測値テーブル2071には、圏外期間ID2072に対応付けて、実測値2073が格納される。圏外期間ID2072は、それぞれの圏外期間を識別する情報である。実測値2073は、対応する圏外期間ID2072の圏外期間を移動端末30において測定した実測値を示す情報である。
【0078】
図12に例示した実測値格納部207には、例えば、「R001」の経路ID2070に対応付けて、実測値テーブル2071が格納されている。そして、その実測値テーブル2071には、例えば、「T002」の圏外期間ID2072に対応付けて、「114秒」の実測値2073が格納されている。
【0079】
図10に戻って説明を続ける。圏外期間特定部204は、自局の通信エリア12内の移動端末30から移動情報を受信した場合に、当該移動情報に基づいて、経路情報格納部200および圏外情報格納部203を参照して、圏外期間を抽出する。このとき、圏外期間特定部204は、当該圏外期間に対応付けられている圏外期間IDと、当該圏外期間が格納されている圏外期間テーブルに対応付けられている経路IDとを併せて圏外情報格納部203から抽出する。
【0080】
そして、圏外期間特定部204は、経路情報格納部200および基地局情報格納部201を参照して、復帰情報を抽出する。そして、圏外期間特定部204は、抽出した圏外期間、圏外期間ID、経路ID、および復帰情報を送信部205へ送る。送信部205は、これらの情報に、自局の基地局IDを加えて、移動情報の送信元の移動端末30へ送信する。
【0081】
転送部208は、自局の周辺に配置されている他の基地局20の基地局IDとアドレス情報とを対応付けて予め保持している。そして、転送部208は、新たに帰属した移動端末30から、圏外期間ID、経路ID、基地局ID、および圏外期間の実測値の情報を受信した場合に、受信した基地局IDに対応するアドレスの基地局20へ、受信した圏外期間ID、経路ID、および圏外期間の実測値の情報を通信回線11を介して転送する。
【0082】
実測値受信部209は、通信回線11を介して他の基地局20から、圏外期間ID、経路ID、および圏外期間の実測値の情報を受信した場合に、実測値格納部207を参照して、受信した経路IDに対応付けられている実測値テーブル2071に、受信した圏外期間IDと圏外期間の実測値とを対応付けて登録する。
【0083】
更新部206は、実測値格納部207内の実測値テーブル2071毎に、同一の圏外期間IDに対応付けられている圏外期間の実測値の数を監視する。そして、更新部206は、同一の圏外期間IDに対応付けられている圏外期間の実測値の数が、所定数(例えば、数百個)以上となった場合に、これらの圏外期間の実測値を統計処理(例えば平均)して新たな圏外期間を算出する。
【0084】
そして、更新部206は、当該新たな圏外期間の算出で参照した実測値テーブル2071に対応付けられている経路IDに基づいて経路ID2030を参照し、同一の経路IDに対応付けられている圏外期間テーブル2031を特定する。そして、更新部206は、特定した圏外期間テーブル2031において、当該新たな圏外期間の算出で用いた圏外期間IDと同一の圏外期間IDを特定し、特定した圏外期間IDに対応付けられている圏外期間を、算出した新たな圏外期間で更新する。
【0085】
図13は、第2の実施形態における移動端末30の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態における移動端末30は、送信部31、受信部32、測定情報格納部33、測定部34、セルサーチ部35、およびセルサーチ制御部36を有する。なお、以下に説明する点を除き、
図13において、
図7と同じ符号を付した構成は、
図7における構成と同一または同様の機能を有するためその詳細な説明を省略する。
【0086】
受信部32は、圏外期間、圏外期間ID、経路ID、復帰情報、および基地局IDを基地局20から受信した場合に、受信したこれらの情報を、セルサーチ制御部36へ送る。
【0087】
セルサーチ部35は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の復帰情報をセルサーチ制御部36から受け取った場合に、受け取ったスクランブリングコード等の情報を優先的に用いてセルサーチを再開する。そして、セルサーチに成功した場合、セルサーチ部35はセルサーチの成功をセルサーチ制御部36に通知する。
【0088】
セルサーチ制御部36は、受信部32から、圏外期間、圏外期間ID、経路ID、復帰情報、および基地局IDを受け取った場合、セルサーチ部35によって圏外が検出されたか否かを監視する。セルサーチ部35によって圏外が検出された場合、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止をセルサーチ部35に指示すると共に、セルサーチの停止期間および圏外期間の計測を開始する。
【0089】
そして、計測しているセルサーチの停止期間が、受信部32から受け取った圏外期間から所定期間(例えば、数秒)を引いた期間に達した場合、セルサーチ制御部36は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の復帰情報をセルサーチ部35へ送る。
【0090】
そして、セルサーチ部35からセルサーチの成功が通知された場合、セルサーチ制御部36は、圏外期間の計測を終了する。そして、セルサーチ制御部36は、計測した圏外期間を圏外期間の実測値として、当該圏外期間の実測値の情報を、受信部32から受け取った圏外期間ID、経路ID、および基地局IDの情報と共に、送信部31へ送る。送信部31は、セルサーチ制御部36から受け取ったこれらの情報を、新たに帰属した基地局20へ送信する。
【0091】
このように、セルサーチの停止期間を、基地局20から受信した圏外期間よりも所定期間短くすることで、基地局20から通知された圏外期間よりもセルサーチを早めに再開することができる。例えば、障害物の変化や基地局20の設備の更新等により、圏外エリア13の範囲が小さくなり、基地局20の圏外情報格納部203内に初期値として登録された圏外期間よりも短い期間でセルサーチを再開した方がより圏外期間を短くできる場合がある。
【0092】
セルサーチ制御部36は、受信した圏外期間よりもセルサーチの停止期間を短く設定することで、圏外エリア13の範囲が小さくなったような状況に応じた圏外期間に更新させることができる。なお、これとは逆に、圏外エリア13が拡大した場合、セルサーチ制御部36による実測値は、基地局20から通知された圏外期間よりも長くなる。そのため、セルサーチ制御部36は、圏外エリア13の範囲が拡大したような場合であっても、それに応じた圏外期間に更新させることができる。
【0093】
図14は、第2の実施形態における移動通信システム10の動作の一例を示すシーケンス図である。なお、以下に説明する点を除き、
図14において、
図9と同じ符号を付した処理は、
図9における処理と同一または同様の処理であるためその詳細な説明を省略する。また、
図14のシーケンス図では、
図1に示した図に従って、移動端末30が基地局20−1の通信エリア12−1から、圏外エリア13を通って、基地局20−2の通信エリア12−2へ進入する場合を想定している。
【0094】
まず、基地局20−1および移動端末30は、
図9で説明したステップS100〜S107までの処理を実行する。ただし、ステップS106において、基地局20−1の圏外期間特定部204は、圏外期間と共に、圏外期間IDと経路IDを抽出する。
【0095】
そして、基地局20−1の送信部205は、圏外期間特定部204によって抽出された圏外期間、圏外期間ID、経路ID、および復帰情報に、自局の基地局IDを加えて、移動情報の送信元の移動端末30へ送信する(S108)。
【0096】
移動端末30の受信部32は、受信した圏外期間、圏外期間ID、経路ID、復帰情報、および基地局IDの情報をセルサーチ制御部36へ送る。そして、セルサーチ制御部36は、セルサーチ部35によって圏外が検出されたか否かを判定する(S109)。圏外が検出された場合(S109:Yes)、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止をセルサーチ部35に指示し(S110)、セルサーチの停止期間および圏外期間の計測を開始する(S111、S120)。
【0097】
そして、セルサーチ制御部36は、セルサーチの停止期間が、受信した圏外期間から所定期間Δtを引いた期間に達したか否かを判定する(S121)。セルサーチの停止期間が、圏外期間から所定期間Δtを引いた期間に達した場合(S121:Yes)、セルサーチ制御部36は、セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等の情報をセルサーチ部35へ送る。
【0098】
セルサーチの再開の指示と共に、スクランブリングコード等をセルサーチ制御部36から受け取った場合、セルサーチ部35は、受け取ったスクランブリングコード等を優先的に用いてセルサーチを再開する(S122)。そして、セルサーチに成功した場合(S123:Yes)、セルサーチ部35は、その旨をセルサーチ制御部36に通知する。
【0099】
セルサーチ部35からセルサーチの成功が通知された場合、セルサーチ制御部36は、圏外期間の計測を終了し(S124)、計測した圏外期間の実測値を、受信部32から受け取った圏外期間ID、経路ID、および基地局IDの情報と共に、送信部31へ送る。送信部31は、セルサーチ制御部36から受け取ったこれらの情報を、新たに帰属した基地局20−2へ送信する(S125)。
【0100】
基地局20−2の転送部208は、新たに帰属した移動端末30から、受信した圏外期間ID、経路ID、基地局ID、および圏外期間の実測値の情報を、受信した基地局IDに対応するアドレスの基地局20−1へ、通信回線11を介して転送する(S126)。
【0101】
基地局20−1の実測値受信部209は、基地局20−2から、圏外期間ID、経路ID、および圏外期間の実測値の情報を受信した場合に、実測値格納部207を参照して、受信した経路IDに対応付けられている実測値テーブル2071に、受信した圏外期間IDと圏外期間の実測値とを対応付けて登録する(S127)。
【0102】
そして、更新部206は、実測値格納部207内の実測値テーブル2071毎に、同一の圏外期間IDに対応付けられている圏外期間の実測値の数が、所定数以上となったか否かを判定する(S128)。同一の圏外期間IDに対応付けられている圏外期間の実測値の数が所定数以上となった場合(S128:Yes)、更新部206は、これらの圏外期間の実測値を統計処理して新たな圏外期間を算出し、算出した新たな圏外期間で、圏外情報格納部203内の対応する圏外期間の情報を更新する(S129)。
【0103】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0104】
なお、上記第1または第2の実施形態における基地局20は、例えば
図15に示すような構成のコンピュータ50によって実現される。
図15は、基地局20の機能を実現するコンピュータ50の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、HDD(Hard Disk Drive)54、通信インターフェイス(I/F)55、入出力インターフェイス(I/F)56、およびメディアインターフェイス(I/F)57を備える。
【0105】
第1の実施形態にかかる基地局20において、当該基地局20が有する経路情報格納部200、基地局情報格納部201、圏外情報報知部202、圏外情報格納部203、圏外期間特定部204、および送信部205の各機能は、コンピュータ50内のCPU51が、ROM53、HDD54、または記録媒体58から、RAM52上にロードした所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0106】
また、第2の実施形態にかかる基地局20において、当該基地局20が有する経路情報格納部200、基地局情報格納部201、圏外情報報知部202、圏外情報格納部203、圏外期間特定部204、送信部205、更新部206、実測値格納部207、転送部208、および実測値受信部209の各機能は、コンピュータ50内のCPU51が、ROM53、HDD54、または記録媒体58から、RAM52上にロードした所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0107】
CPU51は、これらのプログラムを、記録媒体58等から読み取って実行するが、他の例として、通信回線11や無線通信機59を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得して実行してもよい。
【0108】
また、上記第1または第2の実施形態における移動端末30は、例えば
図16に示すような構成のコンピュータ60によって実現される。
図16は、移動端末30の機能を実現するコンピュータ60の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ60は、CPU61、RAM62、ROM63、通信インターフェイス(I/F)64、入出力インターフェイス(I/F)65、およびメディアインターフェイス(I/F)66を備える。
【0109】
第1または第2の実施形態にかかる移動端末30において、当該移動端末30が有する送信部31、受信部32、測定情報格納部33、測定部34、セルサーチ部35、およびセルサーチ制御部36の各機能は、コンピュータ60内のCPU61が、ROM63または記録媒体67から、RAM62上にロードした所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0110】
CPU61は、これらのプログラムを、記録媒体67等から読み取って実行するが、他の例として、無線通信機68を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得して実行してもよい。
【0111】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。