【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年3月19〜22日(社)電子情報通信学会主催の2013年電子情報通信学会総合大会(B−10−30)において文書をもって発表
【文献】
S.W.Harun, et al.,"Effect of recycling a backward ASE in performance of double pass L-band EDFA",Journal of Optics,2004年 7月 9日,Vol.33, No.3,p.181-186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
急増する通信トラフィックを効率的に伝送するため、ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)のC/D/C−less(Color-less/Direction-less/Contention-less)化などの光ノードの高機能化が求められている。このROADMのC/D/C‐less化を行った場合、ノード内損失が増大するため、損失補償用の光ファイバ増幅器が必要となる。ノード内損失補償用の光ファイバ増幅器は、方路毎に配備されることから、多数必要となるため、その構成や制御方式がシンプルで、安価に実現できることが重要である。また、このようなROADM等においては、リング内の信号波長配置変化にともなう波長数の変動や光ファイバ伝送路の伝送路断による高速な信号光パワーの変化への追随が必要である。そのため、上記のようなノード内損失補償用の光ファイバ増幅器として、高速フィードフォワード制御による高速な自動利得制御(以下、AGC(Automatic Gain Control)という)が可能な前方向励起構成の光ファイバ増幅器が有効となる。
【0003】
図20に、フィードフォワード制御によるAGCを適用した前方向励起の光ファイバ増幅器100の構成の例を示す。光ファイバ増幅器100は、励起光源94を増幅用光ファイバの入力側のみに一ケ所備え、光カプラ96を介して増幅用光ファイバであるエルビウム添加光ファイバ97(以下、EDF(Erbium Doped Fiber)という)に励起光が入射されるシンプルな構成を有している。フィードフォワード制御によるAGCの方法は、光ファイバ増幅器100に入射される信号光を、増幅用光ファイバの入力側でタップ用の光カプラ91を用いて分岐し、その信号光のパワーをPD(Photo Detector)92によってモニタする。このモニタによって、信号利得を一定にするために必要な励起光のパワーを求め、信号入力パワーに応じて励起光のパワーを制御することで、高速な利得制御が可能となる。
【0004】
光ファイバ増幅器100のような前方向励起の構成によるL帯増幅用のエルビウム添加光ファイバ増幅器(以下、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)という)は、同じ構成のC帯増幅用のEDFAと比較して励起効率が低い。その理由は、信号を増幅する際の動作原理に起因する。
図21は、前方向励起のL帯増幅用のEDFAの動作を示した図である。前方向励起のL帯増幅用のEDFAでは、励起光が吸収されると、EDF97の長手方向の前半、すなわち入力側でC帯のASE(Amplified Spontaneous Emission)光が大量に発生する。このASE光は、EDF97の長手方向の後半で再度吸収されることにより、L帯信号光の増幅に寄与する。一方、長手方向の前半で発生したC帯のASE光の一部が、信号光と逆方向に伝搬する。この逆方向に伝搬するASE光は、L帯の信号増幅に寄与しない無駄なエネルギーとなるため、L帯増幅用のEDFAはC帯増幅用のEDFAと比較して励起効率が低くなる。
【0005】
また、前方向励起によるL帯増幅用のEDFAでは、同一の信号利得を得るための励起光パワーが信号光の波長によって異なるために制御が困難であるという問題がある。
図22は、
図20の構成を有するL帯増幅用のEDFAにおいて、目標の信号利得を16.58dBとした場合に、この信号利得を実現するために必要な励起光パワーの信号光入力パワー依存性を示したグラフである。ここで、目標の信号利得とは、測定に使用するL帯増幅用のEDFAにおいて、WDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の信号利得が平坦となる条件下でのWDM信号の中心波長の信号利得のことである。WDM信号の信号利得が平坦となる条件とは、WDM信号の両端の波長の信号光において、短波長の信号光の利得と長波長の信号光の利得が等しいか、または、ほぼ等しくなる条件のことである。
図23は、
図22に示すグラフが得られた際のWDM信号に含まれる波長ごとの信号利得を示したグラフである。具体的には、L帯増幅用EDFAの波長帯である1573.71nmから1606.60nmの範囲で等間隔の14波のWDM信号を生成し、生成したWDM信号の合波後の入射パワーを−5dBmに設定してL帯増幅用のEDFAで信号増幅を行った際の各WDM信号の信号利得を測定した結果である。
図23において、WDM信号の短波長端である波長1573.71nmの信号の信号利得が15.14dBであり、長波長端である波長1606.60nmの信号の信号利得が15.15dBとなっている。すなわち、両端の波長の信号利得が、ほぼ等しい状態となっており、信号利得平坦の条件を満たしている。また、
図23において、WDM信号の中心波長1588.73nmの信号利得は、16.5dB程度となっており、これが前述の目標の信号利得となる。
【0006】
図22では、入射する一波の信号光として、信号光の波長をそれぞれ1573.71nm、1588.73nm、1604.03nmの3つの波長とし、 0.01mW(−20dBm)から1mW(0dBm)までの信号光パワーの範囲において、信号利得16.5dBを実現するために必要となる励起光パワーの値を測定している。
図22に示す測定結果より、信号光入力パワー0.5mW(−3dBm)での1573.71nmと1604.03nmの信号波長における励起光パワーの差は318.5mWと非常に大きな値となる。すなわち、励起光パワーと信号光入力パワーとの関係が波長によって大きく変わるという信号利得の波長依存性がある。そのため、L帯増幅用のEDFAにおいて励起光源に設定する励起光のパワーを特定する場合、EDFAに入射される信号光のパワーだけでなく、その波長もモニタしなければ増幅に必要な励起光のパワーを特定することができない。一般に、EDFAに入射される信号光をモニタする方法は複雑であり、特に、上述したAGCを行う場合、L帯増幅用のEDFAは、C帯増幅用のEDFAと比較して制御が困難になるという問題がある。
【0007】
これまでに、上述した励起効率が低くなるという問題については、L帯増幅用のEDFAへC帯の光を入射し、励起効率を改善する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、L帯増幅用のEDFAにおいて、信号利得の波長依存性を改善する手法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の光増幅器及び光増幅方法は、エルビウム添加光ファイバ(EDF)、またはエルビウムイオンを添加した平面光導波路を増幅媒体として用いるものであり、以下の実施形態では、EDFを用いた例について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ増幅器1の構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器1は、前方向励起構成のL帯光を増幅する増幅器であり、EDF13にC帯光を入射する構成を備え、L帯の入力信号光及び励起光をEDF13に入射して、EDF13で増幅したL帯の信号光を出射する。光ファイバ増幅器1は、例えば、以下の参考文献に示されるノード内損失補償用の光アンプに適用されるものである。当該参考文献に記載の技術において、ノード内部のパッシブ光部品の損失と波長・ポートによるロスインバランスを考慮すると、最大20dB程度のノード内損失を補償する必要がある。WDM用受信アンプの出力が0dBm/ch程度であるとすると、ノード内損失補償用のアンプに入力される光パワーは1波長あたり、−20dBm〜−15dBm程度であると想定される。また、当該参考文献に記載のノード構成の場合、ノード内損失補償用のアンプにおいては、10波長程度のWDM入力となる場合があるため、ノード内損失補償用アンプの入力パワーとしては、−20dBm(1波長の場合)〜−5dBm(10波長の場合)が同一の特性でカバーできることが望ましい。したがって、光ファイバ増幅器1に入射されるL帯の信号光のパワーは、−20dBm(1波長)〜−5dBm(10波長)とする。
【0023】
参考文献:Y. Sakamaki, T. Kawai, M. Fukutoku, T. Kataoka and K. Suzuki, “Experimental demonstration of arrayed optical amplifiers with a shared pump laser for realizing colorless, directionless, contentionless ROADM,” Optics Express, Vol. 20, No. 26, pp. B131-B140, 2012.
【0024】
光ファイバ増幅器1は、光アイソレータ10、C帯光入射部20、光カプラ11、励起光源12、EDF13、光アイソレータ14を備える。光アイソレータ10、及び光アイソレータ14は、ファイバ端反射による発振を防止する。励起光源12は、0.98umまたは1.48umの励起光を出射する。以下で説明する各実施形態の構成において、0.98umまたは1.48umのいずれの波長であっても同様の特性、効果が得られるが、測定の際には、0.98um(すなわち、980nm)の励起光を用いている。EDF13は、L帯増幅用のエルビウム添加光ファイバであり、説明のために、増幅対象のL帯の号光が入射される側を入力側と呼び、増幅されたL帯の信号光を出射する側を出力側と呼ぶ。また、EDF13は、入力側から入射される励起光に基づいて、入力側から入射されたL帯の光を増幅して出力側から出射する。C帯光入射部20は、EDF13の入力側に配置され、C帯光を出射する。光カプラ11は、入射される増幅対象のL帯の信号光、C帯光入射部20が出射するC帯光、及び励起光源12が出射する励起光を合波してEDF13に入射する。
【0025】
光ファイバ増幅器1の動作について説明する。前提として、光ファイバ増幅器1の図示しない信号入力部から入射されるL帯の信号光のパワーは、上述したように−20dBmから−5dBmの範囲である。また、C帯光入射部20は、EDF13に入射されるC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるように、出射するC帯光のパワーを設定する。
まず、光ファイバ増幅器1に信号光が入射され、光アイソレータ10を通過する。C帯光入射部20は、C帯光を出射する。励起光源12は、励起光を出射する。光カプラ11は、信号光、C帯光、励起光を合波してEDF13に入射する。EDF13は、入射された励起光に基づいて、信号光を増幅する。この際、EDF13に入射されたC帯光は、EDF13の長手方向で吸収され、信号光と同方向のC帯光が増加することになり、当該C帯光がL帯の信号光の増幅に用いられる。EDF13は、増幅した信号光を出射し、出射された信号光は光アイソレータ14を通過して、光ファイバ増幅器1の図示しない信号出力部から外部に出射される。
上記の構成により、L帯の入力信号光のパワーが、−20dBmから−5dBmの範囲において、EDF13に入射するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるパワーのC帯光をC帯光入射部20がEDF13に入射する。これにより、第1実施形態の構成を具体化した後述する第2及び第3実施形態の構成で示すように、C帯光をEDF13に入射することでL帯の信号増幅の励起効率が改善し、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することが可能となる。
【0026】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態による光ファイバ増幅器2の構成を示すブロック図である。第2実施形態による光ファイバ増幅器2は、第1実施形態による光ファイバ増幅器1におけるC帯光入射部20の代わりに、以下に説明するC帯光入射部20を具体化した構成を有するC帯光入射部20aを備える。第2実施形態の光ファイバ増幅器2において、第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。C帯光入射部20aは、C/L分離カプラ21、光減衰器22、ミラー23を備える。C/L分離カプラ21は、C帯光とL帯光を分離するカプラであり、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光を分離して光減衰器22側に出射する。また、C/L分離カプラ21は、ミラー23によって反射され、光減衰器22を通過して出射されるC帯光を、L帯の信号光と合波してEDF13側に出射する。光減衰器22は、ミラー23によって反射されるC帯のASE光のパワーを減衰させて出射する。また、光減衰器22は、ユーザの操作を受けて、反射されたC帯のASE光のパワーを任意の値に減衰させることができる。光減衰器22をCL分離カプラ21とミラー23の間に配置する理由は、C帯のASE光のパワーを設定する際に、EDF13へ入射されるL帯の信号光のパワーを減衰させないようにするためである。ミラー23は、入射されるC帯のASE光を反射して出射する。なお、
図2に示す破線は、EDF13の入力側から逆伝搬して、C帯光入射部20aによって反射されて減衰され、EDF13に戻される(以下、EDF13に帰還するともいう)C帯のASE光が通過する経路を示す。
【0027】
第2実施形態におけるC帯光入射部20aの動作について説明する。第1実施形態と同様に、光ファイバ増幅器2に入射されるL帯の信号光のパワーは、−20dBmから−5dBmの範囲である。C/L分離カプラ21は、
図2の破線で示される経路でEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光をL帯の光と分離する。分離されたC帯のASE光は、光減衰器22を通過してミラー23で反射される。ミラー23によって反射されたC帯のASE光は、光減衰器22によりパワーが減衰させられる。光減衰器22は、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となる減衰量でミラー23によって反射されたC帯のASE光を減衰させる。C/L分離カプラ21は、光減衰器22によって減衰されたC帯のASE光と入射されるL帯の信号光と合波し、EDF13の入力側に出射する。
このように、EDF13の入力側から逆伝搬する信号光の増幅に寄与しないC帯のASE光をC帯光入射部20aによって反射及び減衰させて、EDF13に帰還させることで、信号光と同じ方向に伝搬するC帯のASE光が増えることになり、C帯光を直接入射して増加させる場合と等価的にL帯の信号増幅の励起効率を高めることが可能となる。
【0028】
(1波長信号を増幅する場合)
図3は、光ファイバ増幅器2の構成を有するL帯増幅用のEDFAを用い、ASE反射率をパラメータとして、L帯の1波信号光を増幅した場合における、利得平坦性(以下、ΔGともいう)の信号光入力パワー依存性を測定した結果を示すグラフである。ここで、ASE反射率とは、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比で定義される比率である。また、
図4は、光ファイバ増幅器2の構成を有するL帯増幅用のEDFAを用い、ASE反射率をパラメータとして、L帯の1波の信号光を増幅した場合における、EDF13に帰還するC帯のASE光パワーの信号光入力パワー依存性を測定した結果を示すグラフである。
図3及び
図4の結果を得る際に行った信号利得の測定において、測定の対象とした信号の波長は、1573.71nm、1588.73nm、1604.03nmの3波長である。また、測定に使用した光ファイバ増幅器2の構成を有するL帯増幅用のEDFAでは、上述した
図23に示すような利得平坦となる条件において、中心波長である波長1588.73nmの信号利得が、16.5dB程度となる。1588.73nmの波長の信号利得を16.5dBの状態にする励起状態のまま、入射する1波長の信号波長を変化させて、
図5に示すように、1573.71nm、1588.73nm、1604.03nmの3波長の信号利得を測定してグラフ上にプロットした。
【0029】
図5において、測定した両端の1573.71nmと1604.03nmの信号利得の差をΔGと定義し、このΔGを利得の波長依存性の指標として、信号利得の波長依存性を評価した。ΔGは、短波長側の波長である1573.71nmの信号利得の方が大きい場合は正の値を取り、長波長側の波長である1604.03nmの信号利得の方が大きい場合は負の値を取る。
図3より、ASE反射率が−30.27dBの場合、信号光入力パワーが−20dBmから−5dBmの範囲において、ΔGの絶対値が3dB以下に抑えられていることが分かる。また、ASE反射率が−10.65dBの場合、信号光入力パワーが−20dBmから−5dBmの範囲において、ΔGの絶対値が1dB以下となり、利得平坦性が達成されていることが分かる。また、ΔGは、ASE反射率が−10.65dBで信号光入力パワーが−15dBmの場合に0dBとなることが分かる。また、
図4からASE反射率が−10.65dBの場合、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーは、信号光入力パワーに応じて増加し、−7.26dBmから−5.94dBmとなっていることが分かる。
【0030】
ここで、
図6及び
図7を参照しつつ利得平坦を達成するために必要なASE反射率の値に関して説明する。上述したように、測定に使用した光ファイバ増幅器2の構成を有するL帯増幅用のEDFAでは、上述した
図23に示すような利得平坦となる条件において、波長が1588.73nmの信号利得が、16.5dB程度となる。そこで、1588.73nmの波長の信号利得を16.5dBとする励起状態のまま、ASE反射率を変化させつつ、上記した
図5の測定と同じく、1573.71nm、1588.73nm、1604.03nmの3波長について、信号利得を測定した。さらに、また、波長が1573.71nmと1604.03nmの信号光の1波長を入射した場合の信号利得の差であるΔGを測定した。L帯増幅用のEDFAに入射される信号光のパワーは、−20dBmと−5dBmの2つパワーで測定した。
図6及び
図7は、L帯の1波信号光を入射した場合における、利得平坦性(ΔG)とASE反射率の関係を示したグラフであり、
図6は、信号光入力パワーが−20dBmの場合であり、
図7は、信号光入力パワーが−5dBmの場合である。
図6及び
図7より、ASE反射率が大きくなるほどΔGは単調減少となることが分かる。また、ASE反射率が−30.27dBとなる場合、信号光入力パワーが−20dBm及び−5dBmのいずれの条件においても、ΔGの絶対値は、3dB以下に抑えられている。つまり、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるようにすることで、利得の波長依存性を3dB以内に抑えることが可能となる。また、ASE反射率が−10.65dBとなる場合、信号光入力パワーが−20dBmおよび−5dBmのいずれの条件においても、ΔGの絶対値が1dB以下となり、利得平坦が達成されていることが分かる。波長数が変化して、光アンプへの信号光入力パワーが変化した場合に、ROADM等のシステムでは、利得が一定であることが重要であり、これらの測定の結果は、本実施形態の構成をROADM等のシステムに適用した場合に好適であることを示している。一般的に、C/D/C‐lessのROADMのDrop側では、3dB以内の利得差であれば、光受信器のダイナミックレンジの範囲内になるため、利得の波長依存性を3dB以内に抑えておくことで、光ファイバ増幅器2を、このようなDrop側の光受信器の光アンプとして適用することが可能となる。
【0031】
利得の波長依存性を3dB以内に抑える場合、
図2に示す光ファイバ増幅器2の場合、励起光パワーは、L帯のWDM信号の利得が平坦となる際の信号利得と等しくなるように設定した。また、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となる任意の比率が予め選択される。光減衰器22には、選択された任意の比率に応じた減衰量が設定されることになる。
【0032】
(WDM信号を増幅する場合)
次に、
図2のL帯増幅用のEDFAである光ファイバ増幅器2に対して、
図8から
図10に示す波長配置のWDM信号を入射した場合について説明する。
図8から
図10のいずれの波長の配置においても、WDM信号は1573.71nmおよび1606.60nmを両端の波長チャネルとし、その間に12波を配置し、合計で14波のWDM信号を生成した。
図8は、12波の波長チャネルをWDM信号の波長帯に均等に配置した場合である。
図9は、12波の波長チャネルをWDM信号の波長帯の短波長側に集中させて配置した場合である。
図10は、12波の波長チャネルをWDM信号の波長帯の長波長側に集中させて配置した場合である。測定に使用したL帯増幅用のEDFAは、光ファイバ増幅器2の構成を有しており、
図23に示すように利得平坦となる条件では、上述したように、波長が1588.73nmの信号の信号利得が16.5dB程度となる。1588.73nmの波長の信号利得を16.5dBとする励起状態において、信号光入力パワーを−20dBmから−5dBmまで変化させつつ、WDM信号の波長帯の両端の波長チャネルである1573.71nm と1606.60nmの信号利得の差であるΔGを測定した。
【0033】
図11は、利得平坦性(ΔG)の信号光入力パワー依存性を測定したグラフであり、当該測定において、ASE反射率は−10.65dBとしている。
図11より、WDM信号の波長配置の偏りに依らず、合波後の信号光入力パワーが−20dBmから−5dBmの範囲において、ΔGの絶対値が1dB以下となり、利得平坦が達成されていることがわかる。
同じ信号光入力パワーの場合、WDM信号の場合の方が1波長の場合よりも信号波長帯におけるパワー偏差が小さいため、WDM信号でのΔGは、1波長でのΔGよりも小さくなる。したがって、
図6および
図7に記載された、ASE反射率が−30.27dBとなる場合のΔGの値より、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるように光減衰器22の減衰量を設定することで、波長配置が均等なWDM信号、及び波長配置に偏りのあるWDM信号の双方に対して、利得の波長依存性を改善することが可能となる。
【0034】
上記の第2実施形態の光ファイバ増幅器2の構成により、入射されるL帯の信号光のパワーが−20dBmから−5dBmの範囲において、L帯の信号が利得平坦となる条件の下、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるように光減衰器22における減衰量を設定する。これにより、L帯の信号増幅の励起効率を改善するとともに、1波長の信号光、波長配置が均等なWDM信号、及び波長配置に偏りのあるWDM信号を入射する場合について、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することができる。
【0035】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態による光ファイバ増幅器3の構成を示すブロック図である。第3実施形態による光ファイバ増幅器3は、第1実施形態による光ファイバ増幅器1におけるC帯光入射部20の代わりに、以下に説明するC帯光入射部20を具体化した構成を有するC帯光入射部20bを備える。第3実施形態の光ファイバ増幅器3において、第1及び第2実施形態と同じ構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。なお、第1実施形態と同様に、光ファイバ増幅器3に入射されるL帯の信号光のパワーは、−20dBmから−5dBmの範囲である。C帯光入射部20bは、C/L分離カプラ21、C帯光源24を備えている。C帯光入射部20bのC帯光源24は、内部に備えるC帯のLD(Laser Diode)光源を有しており、当該LD光源によって出射するC帯光を生成する。また、C帯光源24は、ユーザの操作を受けて、内部のLD光源の出力パワーを調整することにより出射するC帯光のパワーの変更を行うことができる。EDF13に入射するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となる任意の比率が予め選択され、C帯光源24に、選択された比率にしたがうC帯光のパワーが設定される。また、C帯光源24は、設定されたパワーのC帯光を出射する。C/L分離カプラ21は、C帯光源24から出射されたC帯光と、L帯の信号光とを合波してEDF13に入射する。
【0036】
第2実施形態では、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光を利用し、このC帯のASE光を反射させることで、EDF13に入射されるC帯のASE光を生成していた。これに対し、第3実施形態では、C帯光源24を用いることでC帯光を生成してEDF13に入射させて励起効率の改善を図っている。
【0037】
図13は、第3実施形態の光ファイバ増幅器3の変形例である光ファイバ増幅器3aの構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器3aは、第1実施形態による光ファイバ増幅器1におけるC帯光入射部20の代わりに、以下に説明するC帯光入射部20を具体化した構成を有するC帯光入射部20cを備える。光ファイバ増幅器3aにおいて、光ファイバ増幅器3と同じ構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。上述した光ファイバ増幅器3では、EDF13に入射するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるように設定するためには、予めEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーが予め分かっている必要がある。そのため、予め励起光パワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係を示す情報を求めておき、当該関係を示す情報と、励起光源12に設定する励起光パワーとに基づいて、C帯のASE光のパワーを推定により算出する必要がある。そして、算出したC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるようにEDF13に入射するC帯光のパワーを予め設定することになる。これに対して、光ファイバ増幅器3aでは、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーをモニタし、そのモニタしたC帯のASE光のパワーに基づいてC帯光のパワーを設定する構成を備えている。C帯光入射部20cは、C/L分離カプラ21、光カプラ25、PD26、C帯光源制御部27、C帯光源28を備える。光カプラ25は、C/L分離カプラ21によって分離されたC帯光の一部を分岐、すなわちタップしてPD26側に出射する。また、光カプラ25は、C帯光源28から出射されたC帯光をC/L分離カプラ21側に出射する。光検波器、または光検出器であるPD26は、光カプラ25により分岐されたC帯のASE光のパワーを測定する。C帯光源制御部27は、PD26が測定したC帯のASE光のパワーに基づいてC帯光源28が出射するC帯光のパワー値を算出して出力する。C帯光源28は、C帯光源制御部27が出力したパワー値のC帯光を出射する。
【0038】
C帯光入射部20cの動作について説明する。第1実施形態と同様に、光ファイバ増幅器3aに入射されるL帯の信号光のパワーは、−20dBmから−5dBmの範囲である。また、EDF13に入射するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となる任意の比率が予め選択され、C帯光源制御部27の内部に記憶されているものとする。まず、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光が、C/L分離カプラ21により分離され、C帯のASE光が光カプラ25に達する。光カプラ25は、C帯のASE光の一部をタップしてPD26側に出射する。PD26は、C帯のASE光のパワーを測定し、測定結果をC帯光源制御部27に出力する。C帯光源制御部27は、内部に記憶している予め定められたEDF13に入射するC帯光のパワーと、PD26によって測定されたC帯のASE光のパワーとの比率にしたがってEDF13に入射するC帯光のパワーを算出し、算出したC帯光のパワー値をC帯光源28に出力する。C帯光源28は、C帯光源制御部27が出力したC帯光のパワー値にしたがってC帯光を生成して出射する。
【0039】
上記の第3実施形態の光ファイバ増幅器3及び光ファイバ増幅器3aの構成により、入射されるL帯の信号光のパワーが−20dBmから−5dBmの範囲において、EDF13に入射するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるようにC帯光源24、28から出射するC帯光のパワーを設定する。これにより、C帯光源24、28からC帯光をEDF13に入射することでL帯の信号増幅の励起効率が改善し、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することが可能となる。
【0040】
第2実施形態の光ファイバ増幅器2は、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光を利用することから、自らC帯光を出射するC帯光源を備える必要はないが、C/L分離カプラ21及び光減衰器22の挿入損失、並びにミラー23の反射率が影響するため、EDF13に入射するC帯光のパワーは、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーよりも小さくなり、また、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光の状態に依存することになる。これに対し、第3実施形態の光ファイバ増幅器3及び3aでは、C帯光源24、28を用いて、自らC帯光を入射することから、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーよりも高くて安定したパワーのC帯光を入射することができる。したがって、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーの大きさや状態に依存せず、安定してEDF13に入射するC帯光のパワーを設定することが可能となる。
【0041】
また、第3実施形態の光ファイバ増幅器3aでは、更に、PD26によるEDF13から逆伝搬するC帯のASE光のパワーをモニタしてC帯光源28から出射するC帯光のパワーをC帯光源制御部27により算出する。そのため、励起光パワーとEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係を示す情報を予め求めることなく、直接、EDF13から逆伝搬するC帯のASE光のパワーを測定し、測定したパワーとの比が1000分の1以上となるパワーのC帯光を出射することができる。したがって、その時点でのEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーに基づく、より正確なパワー値のC帯光をEDF13に入射することが可能となり、更に効率の良い増幅を行うことが可能となる。
【0042】
(第4実施形態)
図14は、本発明の第4実施形態による光ファイバ増幅器4の構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器4は、第1実施形態による光ファイバ増幅器1の構成に加えて、L帯の入力信号光のパワーをモニタし、励起光のパワーをフィードフォワード制御する、前述したAGCの構成を備えている。第4実施形態の光ファイバ増幅器4において、第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。光カプラ30は、L帯の入力信号光の一部をタップしてPD31側に出射する。PD31は、光カプラ30によりタップされたL帯の入力信号光のパワーを測定する。フィードフォワード制御部(以下、FF制御部という)32は、PD31が測定したL帯の入力信号光のパワーに基づいて、予め定められる信号光の入力パワーと励起光パワーとの関係から、励起光源12aから出射させる励起光のパワー値を求める。励起光源12aは、FF制御部32が求めたパワー値で励起光を出射する。
【0043】
光ファイバ増幅器4の動作について説明する。第1実施形態と同様に、−20dBmから−5dBmの範囲のパワー値のL帯の信号光が入射されると、光カプラ30は、入射された信号光の一部をタップしてPD31に出射する。一方、残りの信号光は、光アイソレータ10、C帯光入射部20、光カプラ11を通じてEDF13に達する。PD31は、光カプラ30によってタップされたL帯の入力信号光のパワーを測定し、測定したパワーの値をFF制御部32に出力する。FF制御部32は、PD31が測定したL帯の入力信号光のパワーに基づいて、予め定められる信号光の入力パワーと励起光パワーとの関係から、励起光のパワー値を求めて、励起光源12aに出力する。励起光源12aは、FF制御部32が求めたパワー値で励起光を出射する。一方、C帯光入射部20は、EDF13に入射されるC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるように、C帯光のパワーを設定して出射する。光カプラ11は、L帯の信号光、C帯光入射部20が出射するC帯光、励起光源12aから出射される励起光を合波してEDF13に入射する。EDF13は、励起光に基づいてL帯の信号光を増幅して出射する。このとき、EDF13に入射されるC帯光は、EDF13の長手方向で吸収され、L帯の信号光の増幅に用いられる。増幅後の信号光は光アイソレータ14を通過して光ファイバ増幅器4の外部に出射される。
【0044】
上記の第4実施形態の構成により、−20dBmから−5dBmの範囲のパワーで入射されるL帯の入力信号光のパワーをPD31が測定し、FF制御部32が、PD31が測定したL帯の入力信号光のパワーに基づいて、励起光のパワー値を選択して、励起光源12aに出力する。励起光源12aは、FF制御部32が選択したパワー値で励起光を出射する。また、C帯光入射部20が、EDF13に入射されるC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるように、C帯光のパワーを設定して出射する。これにより、第4実施形態の構成を具体化した後述する第5及び第6実施形態の構成で示すように、L帯の信号光の波長をモニタすることなく、L帯の入力信号光のパワー変動を検出し、検出したL帯の信号光の変動に応じて、励起光のパワーを変えるという、励起光のパワー値に対するフィードフォワード制御を行うことが可能となる。また、C帯光入射部20からC帯光をEDF13に入射することでL帯の信号増幅の励起効率が改善し、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することが可能となる。また、第4実施形態の構成は、リング内の信号波長配置変化にともなう波長数変動や光ファイバ伝送路の伝送路断等による高速な信号光パワーの変化に追随して信号利得を一定とすることが可能となる。
【0045】
(第5実施形態)
図15は、本発明の第5実施形態による光ファイバ増幅器5の構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器5は、第4実施形態の光ファイバ増幅器4においてC帯光入射部20の構成を、第2実施形態の光ファイバ増幅器2が備えるC帯光入射部20aに置き換えた構成となっており、上述した第2及び第4実施形態と同一の符号の構成については、上述した説明と同一の動作を行う。また、
図15に示す破線は、EDF13の入力側から逆伝搬して、C帯光入射部20aによって反射され、減衰されてEDF13に戻されるC帯のASE光が通過する経路を示す。
【0046】
図16は、
図15の光ファイバ増幅器5の構成において、目標の信号利得を実現するために必要な励起光パワーの信号光入力パワー依存性を示すグラフの一例である。上述した
図23に示すように、信号利得が平坦となる条件での1588.73nmでの信号利得は、16.5dB程度となることから、
図16に示す測定においても目標の信号利得は16.5dBとした。また、ASE反射率は、−10.65dBとなるようにC帯光入射部20aの光減衰器22の減衰量を設定した。入射する1波の入力信号光において、その波長を1573.71nm、1588.73nm、1604.03nmの3波長とし、0.01mWから1mWまでの信号光パワーの範囲に対して、信号利得16.5dBを実現するために必要な励起光パワーの値を測定した。この測定条件は、上述した
図22と同じ測定条件となる。
図22と
図16の違いは、光ファイバ増幅器100と光ファイバ増幅器5の構成上の違いであり、逆伝搬するASE光を反射させて減衰させてEDF13に戻す構成を有しているかいないかということである。その観点で、
図22及び
図16の測定結果を比較すると、C帯光入射部20aによって、EDF13から逆伝搬するC帯のASE光を帰還させることにより、
図16に示すように信号光入力パワーと必要とされる励起光パワーの関係が線形になることがわかる。また、信号光入力パワー0.5mWにおける、各信号波長における励起光パワーの差が
図22においては318.5mWであるのに対して、
図16では23.0mWになっており、大幅に減少していることが分かる。したがって、C帯光をEDF13に入射させることで入力信号光の波長に関わらず、同一の信号利得を実現するための励起光の条件がほぼ同じになる。実際に、同一の励起光の条件においては、上記の
図3で説明したように、ASE反射率が−10.65dBの場合、信号波長による利得差は1dB以下となるため、L帯の入力信号光の波長をモニタする必要がなくなり、AGCを行う場合の励起光の制御の困難性を低減させることができる。
【0047】
なお、FF制御部32には、
図16に示される利得一定の条件でのL帯光の入力パワーと励起光パワーの関係を示したグラフを内部に予め記憶し、PD31によって測定されたL帯の信号光入力パワーに基づいて設定する励起光パワーを選択する。
また、上記の例では、ASE反射率が−10.65dBとされているが、EDF13に帰還するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比率は、1000分の1以上の範囲から任意に選択されることから、C帯光入射部20aの光減衰器22に設定する減衰量は、選択された比率に応じた値となる。
【0048】
上記の第5実施形態の構成により、−20dBmから−5dBmの範囲のパワーで入射されるL帯の入力信号光のパワーをPD31が測定し、FF制御部32が、PD31が測定したL帯の入力信号光のパワーに基づいて、励起光のパワー値を選択して、励起光源12aに出力する。励起光源12aは、FF制御部32が選択したパワー値で励起光を出射する。また、C帯光入射部20aが、EDF13に帰還するC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるように、逆伝搬するC帯のASE光をミラー23で反射させ光減衰器22で減衰させてEDF13に帰還するC帯光のパワーを設定する。したがって、L帯の入力信号光のパワー変動を検出し、検出したL帯の信号光の変動に応じて、励起光のパワーを変えるという、励起光のパワー値に対するフィードフォワード制御をL帯の入力信号光の波長をモニタすることなく行うことが可能となる。また、C帯光入射部20aからC帯光をEDF13に帰還させることでL帯の信号増幅の励起効率が改善し、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することが可能となる。また、第5実施形態の構成は、リング内の信号波長配置変化にともなう波長数変動や光ファイバ伝送路の伝送路断等による高速な信号光パワーの変化に追随して信号利得を一定とすることが可能となる。
【0049】
(第6実施形態)
図17は、本発明の第6実施形態による光ファイバ増幅器6の構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器6は、第4実施形態の光ファイバ増幅器4においてC帯光入射部20の構成を、第3実施形態の光ファイバ増幅器3のC帯光入射部20bに置き換えた構成となっており、上述した第3及び第4実施形態と同一の符号の構成については、上述した説明と同一の動作を行う。
【0050】
また、
図18は、本発明の第6実施形態による光ファイバ増幅器6の変形例である光ファイバ増幅器6aの構成を示すブロック図である。光ファイバ増幅器6aは、第4実施形態の光ファイバ増幅器4においてC帯光入射部20の構成を、第3実施形態の変形例である光ファイバ増幅器3aのC帯光入射部20cに置き換えた構成となっており、上述した第3実施形態の変形例及び第4実施形態と同一の符号の構成については、上述した説明と同一の動作を行う。
【0051】
また、
図19に示すブロック図のように第6実施形態による光ファイバ増幅器6の変形例として光ファイバ増幅器6bのような構成としてもよい。第3実施形態の光ファイバ増幅器3において説明したように、C帯光源24に予め設定するC帯光のパワーは、予め求めておく励起光パワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係から算出しておく必要がある。これに対して光ファイバ増幅器6bでは、例えば、予め求めておく励起光パワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係を示す情報をFF制御部32aの内部に記憶させておく。そして、FF制御部32aが、励起光源12aに設定する励起光のパワーを選択した際に、選択した励起光パワーと、内部に記憶しているEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係を示す情報から、選択した励起光のパワーに対応するEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーを検出する。1000分の1以上の値で予め定められる、C帯光源24aから入射するパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比率の値は、予めFF制御部32aの内部に記憶させる。FF制御部32aは、C帯光源24aに設定するC帯光のパワーと、検出したC帯のASE光のパワーとの比率が、内部に記憶している比率になるようにC帯光源24aに設定するC帯光のパワーを算出し、算出したC帯光のパワーの値をC帯光源24に出力する。C帯光源24aは、FF制御部32から出力されたパワーの値を設定し、当該パワーのC帯光を出射する。なお、あらかじめC帯光のパワーが十分高ければ、信号光入力パワーの変動に応じてC帯光のパワーを調整する必要はないため、FF制御部32aからC帯光源24aの制御を行う構成は必須ではない。
【0052】
なお、第6実施形態において、FF制御部32及びFF制御部32aは、第5実施形態で説明した
図16に示されるような励起光パワーと信号光入力パワーとの関係を示す情報を参照して、励起光パワーを選択する構成となっている。そのため、第6実施形態においても
図16に示されるような励起光パワーと信号光入力パワーとの関係を示す情報を予め求めてFF制御部32及びFF制御部32aに記憶されるものとする。なお、C帯光入射部20b、20c、及び20dは、いずれもEDF13に対してC帯光を入射する構成であり、
図16に示すグラフと同様に励起光パワーと信号光入力パワーとの関係は線形で示され、信号波長に関わらず、同一の信号利得を実現するための励起光の条件がほぼ同じになる。
【0053】
上記の第6実施形態の構成により、−20dBmから−5dBmの範囲のパワーで入射されるL帯の入力信号光のパワーをPD31が測定し、FF制御部32及びFF制御部32aが、PD31が測定したL帯の入力信号光のパワーに基づいて、励起光のパワー値を選択して、励起光源12aに出力する。励起光源12aは、FF制御部32及びFF制御部32aが求めたパワー値で励起光を出射する。また、C帯光入射部20b、20c、及び20dが、EDF13に入射されるC帯光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上となるパワーのC帯光を出射する。したがって、L帯の入力信号光のパワー変動を検出し、検出したL帯の信号光の変動に応じて、励起光のパワーを変えるという、励起光のパワー値に対するフィードフォワード制御をL帯の入力信号光の波長をモニタすることなく行うことが可能となる。また、C帯光入射部20b、20c、20dがC帯光をEDF13に入射することでL帯の信号増幅の励起効率が改善し、波長数の変化に伴う信号光の入力パワーの変化を許容し、かつ信号利得の波長依存性を抑制することが可能となる。また、第6実施形態の構成は、リング内の信号波長配置変化にともなう波長数変動や光ファイバ伝送路の伝送路断等による高速な信号光パワーの変化に追随して信号利得を一定とすることが可能となる。
【0054】
第5実施形態の光ファイバ増幅器5は、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光を利用することから、自らC帯光を出射するC帯光源を備える必要はないが、C/L分離カプラ21及び光減衰器22の挿入損失、並びにミラー23の反射率が影響するため、EDF13に入射するC帯光のパワーは、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーよりも小さくなり、また、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光の状態に依存することになる。これに対し、第6実施形態の光ファイバ増幅器6及び6aでは、C帯光源24、28を用いて、自らC帯光を入射することから、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーよりも高くて安定したパワーのC帯光を入射することができる。したがって、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーや状態に依存せず、安定してEDF13に入射するC帯光のパワーを設定することが可能となる。
【0055】
また、第6実施形態における変形例である光ファイバ増幅器6aでは、更に、PD26によるEDF13から逆伝搬するC帯のASE光のパワーをモニタしてC帯光源28から出射するC帯光のパワーをC帯光源制御部27により算出する。そのため、励起光パワーとEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの関係を示す情報を予め求めることなく、直接、EDF13から逆伝搬するC帯のASE光のパワーを測定し、測定したパワーとの比が1000分の1以上となるパワーのC帯光を出射することができる。したがって、その時点でのEDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーに基づく、より正確なパワー値のC帯光をEDF13に入射することが可能となり、更に効率の良い増幅を行うことが可能となる。
【0056】
また、第6実施形態における変形例である光ファイバ増幅器6bでは、光ファイバ増幅器6と同様に、フィードフォワード制御により、L帯の信号光の入射に伴って、励起光のパワーの設定をすることができ、更に、設定した励起光のパワーの値を用いて、C帯光源24aが出射するC帯光のパワーの設定を行うことが可能となる。励起光のパワーは、信号光パワーの変化に伴って変化し、励起光のパワーが変化するとEDF13から逆伝搬するASE光のパワーも変化する。したがって、光ファイバ増幅器6bの構成により、EDF13から逆伝搬するASE光のパワーの変化に追随してC帯光源24aから出射するC帯光のパワーを変化させることができるためC帯光源24aから入射するC帯光のパワーと、EDF13から逆伝搬するASE光のパワーとの比を1000分の1以上に維持することが可能となる。
【0057】
また、上記の本発明による各実施形態の構成と、非特許文献1に記載のL帯のEDFAの構成とを比較した場合、非特許文献1に記載のL帯のEDFAでは、EDFAの入力側および出力側の両方に光カプラを配置しなければならず、回路構成が複雑となる上に、EDFA内でC帯の光が発振する可能性がある。これに対して、本発明による各実施形態の構成では、C帯光をEDFの入力側から入射しているため、出力側の光カプラは必要でなく、回路構成が単純である上にC帯光が発振することはない。
【0058】
なお、上記の各実施形態において、ファイバ端等による不要な反射がない場合、光アイソレータ10、及び光アイソレータ14はなくてもよい。
また、光カプラ11、C/L分離カプラ21、光カプラ25、光カプラ30は、それぞれの用途に応じて光を分離(または、分岐)、及び合波する分離・合波の機能部であればよく、カプラに限られるものではない。
【0059】
また、光ファイバ増幅器2及び光ファイバ増幅器5において、光減衰器22を備えない構成とし、EDF13に帰還するC帯のASE光のパワーと、EDF13の入力側から逆伝搬するC帯のASE光のパワーとの比が1000分の1以上になるようにミラー23の反射率を設定するようにしてもよい。
【0060】
上述した実施形態におけるFF制御部32、32aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0061】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
以上、説明したように、本発明による各実施形態は、L帯増幅用EDFAの制御性の改善を実現するものであり、光通信システムの運用に有用である。