(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013997
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】動的波長帯域割当方法、親ノード及び子ノード
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L12/44 B
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-180280(P2013-180280)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-50576(P2015-50576A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年12月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年3月19日〜22日に行われた「電子情報通信学会2013年総合大会(一般社団法人 電子情報通信学会)」において、「波長可変型WDM/TDM−PONにおける動的波長切替方式の提案」(電子情報通信学会2013年総合大会講演論文集 B−8−38)と題して発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智暁
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊二
【審査官】
安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−19237(JP,A)
【文献】
特開2015−50500(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/115429(WO,A1)
【文献】
特開2014−197748(JP,A)
【文献】
特開2012−186588(JP,A)
【文献】
特開2011−135280(JP,A)
【文献】
吉田 智暁、他4名,波長可変型WDM/TDM−PONにおける動的波長切替方式の提案,電子情報通信学会2013年総合大会講演論文集 B−8−38,社団法人電子情報通信学会,2013年 3月 5日,通信2,p..273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親ノード及び複数の子ノードが光ファイバ伝送路を介して接続される光通信システムにおいて、前記複数の子ノードから前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードから前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当方法であって、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知することを特徴とする動的波長帯域割当方法。
【請求項2】
前記波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、前記波長変更対象子ノード内の波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻を通知することを特徴とする請求項1に記載の動的波長帯域割当方法。
【請求項3】
前記波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期内に、前記波長変更対象子ノード内の波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻を通知することを特徴とする請求項1に記載の動的波長帯域割当方法。
【請求項4】
前記波長変更対象子ノードは、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の動的波長帯域割当方法。
【請求項5】
前記波長変更対象子ノードは、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内は、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の動的波長帯域割当方法。
【請求項6】
光ファイバ伝送路を介して接続されている複数の子ノードからの上り方向通信及び前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当手段を備える親ノードであって、
前記動的波長帯域割当手段は、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知することを特徴とする親ノード。
【請求項7】
光ファイバ伝送路を介して接続されている親ノードからの割り当てに基づいて、前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードからの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を設定する動的波長帯域設定手段を備える子ノードであって、
前記動的波長帯域設定手段は、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、上り信号光の送信許可時間を設定し、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、上り通信波長及び下り通信波長を設定し、
波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に新たな割当波長が通知され、前記割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始することを特徴とする子ノード。
【請求項8】
前記動的波長帯域設定手段は、
波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内では、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続することを特徴とする請求項7に記載の子ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変型WDM/TDM−PONにおける動的波長帯域割当方法、及び当該方法を実現する親ノードと子ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
アクセスサービスの高速化に対するニーズの高まりにより、FTTH(Fiber To The Home)の普及が世界的に進んでいる。FTTHサービスの大部分は、1個の収容局側装置(OSU: Optical Subscriber Unit)20が時分割多重(TDM: Time Division Multiplexing)により複数の加入者側装置(ONU: Optical Network Unit)10を収容し、経済性に優れたPON(Passive Optical Network)方式により提供されている。TDM−PONの上り方向通信では、OSUにおける動的帯域割当計算に基づいてONU間でシステム帯域を共有しており、
図1に示すように各ONU10がOSU20より通知された送信許可時間内のみに間欠的に信号光を送信することにより、信号光同士の衝突を防いでいる。本明細書ではOSUを親ノード、ONUを子ノードと記載することがある。
【0003】
現在の主力システムは伝送速度がギガビット級であるGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標) PON)、G−PON(Gigabit−capable PON)であるが、映像配信サービスの進展に加え、大容量ファイルをアップロード/ダウンロードするアプリケーションの登場などにより、PONシステムの更なる大容量化が求められている。しかしながら、TDM−PONでは、ラインレートの高速化によりシステム帯域を拡張するため、高速化や波長分散の影響により受信特性が大幅に劣化することに加え、バースト送受信器の経済性が課題となるため、10ギガを超える大容量化は難しい。
【0004】
10ギガ超の大容量化に向けて、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)技術の適用が検討されている。
図2は、TDM−PONにWDM技術を組み合わせたWDM/TDM−PONの一例である。波長ルーティング手段31のONU側の各端子と波長ルーティング手段32のOSU側の各端子とは1:1で対応している。各々のONU10は、光ファイバ伝送路40を介して波長ルーティング手段31のいずれの端子と接続するかに応じて固定的に下り波長および上り波長を割り当てられ、全ONU間で信号の時間的重なりが、OSUの数まで許される。そのため、OSUの増設により、1波長あたりのラインレートを高速化することなく、システム帯域を拡張できる。
【0005】
波長ルーティング手段31の同一の端子に接続する各ONU10は、光ファイバ伝送路40を介して同一のOSU20と論理的に接続し、上り帯域および下り帯域を共有する。ここで、各ONU10とOSU20との論理接続は不変であり、各OSU20のトラフィック負荷の状態によらず、異なるOSU20間でトラフィック負荷を分散することはできない。
【0006】
これに対して、非特許文献1では、ONUに搭載する光送信器および光受信器に波長可変機能を備えた波長可変型WDM/TDM−PONが提案されている(
図3)。この構成では、ONUにおける送受信波長の切替により論理接続するOSUをONU単位で変更できる。この機能を用いることにより、高負荷状態であるOSUがある時には、低負荷状態であるOSUへトラフィック負荷が分散するようにONU−OSU間の論理接続を変更し、高負荷状態であったOSUの通信品質の劣化を防ぐことができる。また、OSUの高負荷状態が定常的に発生する場合、
図2のWDM/TDM−PON構成では一定の通信品質を確保するためにはシステム帯域の増設が必要となるが、
図3の波長可変型WDM/TDM−PON構成ではOSU間でトラフィック負荷の分散を図ってシステム全体の帯域を有効に活用することにより一定の通信品質を確保でき、システム帯域の増設のための設備投資を抑えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Kimura,“WDM/TDM−PON technologies for future flexible optical access networks”, OECC2010, 6A1−1, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
波長可変型WDM/TDM−PONにおいてONU−OSU間の論理接続を変更する際には、OLTからONUへ送受信波長の切替を指示する必要がある。ONUの波長切替方式として、IEEE Std 802.3avにて規定されている10G−EPONのMPCP(Multipoint Control Protocol)を拡張した方式が考えられる(
図4)。
図4の方式は、複数DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)周期と同期するDWA(Dynamic Wavelength Allocation)周期内でONU−OSU論理接続が固定となるように各ONUへ下り波長および上り波長を割り当て、同一DWA周期内ではDBA周期ごとに実行されるDBA計算により各ONUへ上りバースト信号光の送信を許可する時間を決定し、決定した送信許可時間を論理接続先のOSUから各ONUへ通知する動的波長帯域割当に基づくシステムを想定している。ONU−OSU論理接続は上り方向通信の送信要求帯域量や下り方向通信のトラフィック量等に応じてDWA計算により決定され、DWA周期内の最初のDBA周期において、波長切替対象のONU宛に波長切替を指示するGateフレームが送信される。波長切替対象ONUは、送受信波長を、Gateフレーム中に記載された波長切替開始時刻T1から、同じくGateフレーム中に記載された割当波長に切り替え始め、波長切替完了後に受信する新たな論理接続先のOSUからのGateフレームに対して、波長切替完了を報告するReportフレームを送信する。
図4は、ONU#1の論理接続先をOSU#1からOSU#2へ切り替える場合を例示している。
【0009】
OLTは、複数のOSUとMAC(Media Access Control)部を搭載しており、MAC部で生成された波長切替指示をOSUを通じてONUへ送信する。
波長切替対象ONUは、波長切替指示に従って波長制御回路(不図示)が波長制御パラメータを決定した上で、決定された波長制御パラメータに基づく波長制御信号を波長可変デバイスへ入力して波長可変デバイスの設定波長を切り替える。なお、
図3において波長可変デバイスとは、波長可変フィルタ12及び波長可変光送信器14である。
【0010】
図4中の波長切替開始時刻T1が、波長制御回路が波長制御パラメータの算出を開始する時刻にあたる場合、波長切替時間には、MAC部からの波長切替指示に従って波長制御回路が波長制御パラメータを決定する時間と、決定された波長制御信号に従って波長可変デバイスの設定波長が切り替わる時間が含まれる。そのため、波長制御が複雑で波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替時間が長くなり、波長切替完了時刻が遅くなる。
【0011】
一方、
図4中の波長切替開始時刻T1が、波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻にあたる場合、波長切替時間には、MAC部からの波長切替指示に従って波長制御回路が波長制御パラメータを決定する時間が含まれない。よって、波長切替開始時刻T1は、波長切替指示を含むGateフレームが波長切替対象ONUに到着する時刻から、波長制御回路が波長制御パラメータを決定するのに要する時間以上経った時刻とする必要がある。そのため、波長制御が複雑で波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替開始時刻T1が、波長切替指示を含むGateフレームが波長切替対象ONUに到着する時刻から長時間経った時刻となり、波長切替完了時刻が遅くなる。
【0012】
つまり、
図4に示す波長切替方式では、波長切替開始時刻T1が、波長制御回路が波長制御パラメータの算出を開始する時刻と、波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻のいずれにあたる場合であっても、波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替完了時刻が遅くなるため、波長切替指示を含むGateフレームがOSUから送出されてから、波長切替の完了を報告するReportフレームがOSUに到着するまでの時間が長くなる。
【0013】
ここで、波長制御回路にて波長制御パラメータを決定する時間とは、例えば、波長可変デバイスの設定波長が電流/電圧により制御される場合、波長制御回路が、通知された割当波長に対応する電流値/電圧値を決定し、決定した値の波長制御信号を波長可変デバイスへ注入/印加するまでに要する時間に相当する。例えば、波長可変光送信器14として分布ブラッグ反射型(DBR: Distributed Bragg Reflector)レーザをONUに搭載する場合、送信波長を切り替えるためには、DBRレーザの利得領域、位相制御領域、DBR領域の各領域への注入電流を変更する必要があり、注入電流値の算出に時間を要する。
【0014】
波長切替指示を含むGateフレームがOSUから送出されるDBA周期から、波長切替の完了を報告するReportフレームがOSUに到着するDBA周期の次のDBA周期までは、波長切替対象ONUへは、上りDataフレームの送信許可帯域量が割り当てられず、上りDataフレームはONU内でバッファリングされる。ここで、波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替対象ONUへ上りDataフレームの送信許可帯域量が割り当てられないDBA周期の数が多くなるため、ONU内でのバッファリングによる上り方向通信の遅延時間が拡大する。また、波長切替中の上りDataフレーム損失を回避するために、ONUに搭載するバッファのサイズを拡大する必要があり、装置コストの上昇に加え、消費電力の増大が課題となる。
【0015】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、波長可変型WDM/TDM−PONにおいて子ノードでのバッファリングによる上り方向通信の遅延時間を縮小でき、子ノードに搭載するバッファサイズを縮小してコスト及び消費電力の低減を可能とする動的波長帯域割当方法、親ノード及び子ノードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る動的波長帯域割当方法は、波長制御パラメータ決定に要する時間を加味して子ノードに波長切替指示を出すこととした。
【0017】
具体的には、本発明に係る動的波長帯域割当方法は、
親ノード及び複数の子ノードが光ファイバ伝送路を介して接続される光通信システムにおいて、前記複数の子ノードから前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードから前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当方法であって、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る親ノードは、
光ファイバ伝送路を介して接続されている複数の子ノードからの上り方向通信及び前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当手段を備える親ノードであって、
前記動的波長帯域割当手段は、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る子ノードは、
光ファイバ伝送路を介して接続されている親ノードからの割り当てに基づいて、前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードからの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を設定する動的波長帯域設定手段を備える子ノードであって、
前記動的波長帯域設定手段は、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、上り信号光の送信許可時間を設定し、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、上り通信波長及び下り通信波長を設定し、
波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に新たな割当波長が通知され、前記割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始することを特徴とする。
【0020】
本発明は、波長切替前の波長割当周期内に波長変更対象子ノードへ割当波長を予め通知しておくこととした。割当波長を予め通知することで子ノードは新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを波長切替前に決定することができる。このため、子ノードは、波長切替時刻ですぐに波長切替作業を開始することができ、波長切替時刻から波長切替作業完了までの時間を
図4の方式より短縮することができる。従って、本発明は、波長可変型WDM/TDM−PONにおいて子ノードでのバッファリングによる上り方向通信の遅延時間を縮小でき、子ノードに搭載するバッファサイズを縮小してコスト及び消費電力の低減を可能とする動的波長帯域割当方法、親ノード及び子ノードを提供することができる。
【0021】
本発明に係る動的波長帯域割当方法は、前記波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、前記波長変更対象子ノード内の波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻を通知するとしてもよい。
【0022】
本発明に係る動的波長帯域割当方法は、前記波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期内に、前記波長変更対象子ノード内の波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻を通知するとしてもよい。
【0023】
本発明に係る動的波長帯域割当方法は、前記波長変更対象子ノードが、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始する。
【0024】
子ノードは新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを波長切替前に決定することができる。このため、本発明は、波長切替時刻ですぐに波長切替作業を開始することができ、波長切替時刻から波長切替作業完了までの時間を
図4の方式より短縮することができる。
【0025】
本発明に係る動的波長帯域割当方法は、前記波長変更対象子ノードが、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内は、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続する。
【0026】
本発明に係る子ノードは、前記動的波長帯域設定手段が、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内では、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続する。
【0027】
子ノードは、割当波長の通知後も従来の波長で通信を継続することで、さらに上り方向通信の遅延時間を縮小でき、子ノードのバッファ量を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、波長可変型WDM/TDM−PONにおいて子ノードでのバッファリングによる上り方向通信の遅延時間を縮小でき、子ノードに搭載するバッファサイズを縮小してコスト及び消費電力の低減を可能とする動的波長帯域割当方法、親ノード及び子ノードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】WDM/TDM−PONを説明する図である。
【
図3】波長可変型WDM/TDM−PONを説明する図である。
【
図4】波長可変型WDM/TDM−PONにおける波長切替方式を説明する図である。
【
図5】本発明に係るOSU及びONUを備える波長可変型WDM/TDM−PONを説明する図である。
【
図6】波長ルーティング手段の下り方向の入出力特性を説明する図である。
【
図7】波長ルーティング手段の上り方向の入出力特性を説明する図である。
【
図8】本発明に係るOSU及びONUを備える波長可変型WDM/TDM−PONを説明する図である。
【
図9】本発明に係る動的波長帯域割当方法を説明する図である。
【
図10】本発明に係る動的波長帯域割当方法を説明する図である。
【
図11】本発明に係る動的波長帯域割当方法を説明する図である。
【
図12】本発明に係る動的波長帯域割当方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0031】
[実施形態1]
第1の実施形態は、ONUに搭載する光送信器と光受信器のうち少なくとも一方に波長可変機能を備える波長可変型WDM/TDM−PONにおいて、波長切替前の波長割当周期内に波長切替対象ONU内の波長制御回路が新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを予め決定する一方で、波長切替対象ONU10が波長切替前の波長割当周期内は波長切替前の論理接続先のOSUとの間で通信を継続することにより、上り方向通信の遅延時間を短縮する動的波長帯域割当方法である。
【0032】
具体的には、本動的波長帯域割当方法は、
親ノード及び複数の子ノードが光ファイバ伝送路を介して接続される光通信システムにおいて、前記複数の子ノードから前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードから前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当方法であって、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知する。
【0033】
そして、前記波長変更対象子ノードは、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始する。さらに、前記波長変更対象子ノードは、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内は、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続する。
【0034】
本動的波長帯域割当方法は、
光ファイバ伝送路を介して接続されている複数の子ノードからの上り方向通信及び前記複数の子ノードへの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を、前記複数の子ノードに割り当てる動的波長帯域割当手段を備える親ノードであって、
前記動的波長帯域割当手段が、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り信号光の送信許可時間を割り当て、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、前記複数の子ノードに上り通信波長及び下り通信波長を割り当て、
割り当てられる前記上り通信波長及び前記下り通信波長が変更される波長変更対象子ノードに対して、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に、新たな割当波長を通知することを特徴とする親ノードで実現できる。
【0035】
また、本動的波長帯域割当方法は、光ファイバ伝送路を介して接続されている親ノードからの割り当てに基づいて、前記親ノードへの上り方向通信及び前記親ノードからの下り方向通信に対する上り通信波長及び下り通信波長と、前記上り方向通信に対する上り通信帯域を設定する動的波長帯域設定手段を備える子ノードであって、
前記動的波長帯域設定手段が、
前記上り方向通信に対して、帯域割当周期ごとに、上り信号光の送信許可時間を設定し、
前記上り方向通信及び前記下り方向通信に対して、複数の前記帯域割当周期に相当する波長割当周期ごとに、上り通信波長及び下り通信波長を設定し、
波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内に新たな割当波長が通知され、前記割当波長に対応する波長制御パラメータの算出を開始することを特徴とする子ノードで実現できる。さらに、前記動的波長帯域設定手段は、波長切替が実行される前記波長割当周期の前の前記波長割当周期内では、新たな割当波長を通知された後も、波長切替前の前記上り通信波長及び前記下り通信波長にて、前記親ノードとの通信を継続する。
【0036】
本実施形態における動的波長帯域割当方法は
図3の波長可変型WDM/TDM―PON構成に適用される。なお、本実施形態における動的波長帯域割当方法が適用される波長可変型WDM/TDM―PON構成は
図3に限らず、OSU側端子#1〜#M(Mは2以上の整数)および光ファイバ伝送路側端子#1〜#N(Nは2以上の整数)を有し、入力光を波長に応じて決定される1個の端子から出力する波長振り分け機能を備えた波長ルーティング手段34をONU10とOSU20との間に配置した
図5のような構成などへの適用も可能である。波長ルーティング手段34としては、波長周回性を有し入出力特性が
図6および
図7で表わされるN×M AWGなどがこれにあたる。なお、
図5において、波長可変デバイスとは波長可変光送信器14である。
【0037】
図3の波長可変型WDM/TDM−PONは、OSU20#1〜#M(Mは1以上の整数)を有し、波長λ
D_1〜λ
D_Mである下り信号光を送出し、波長λ
U_1〜λ
U_Mである上りバースト信号光が入力されるOLT50(Optical Line Terminal)と、λ
D_1〜λ
D_M、λ
U_1〜λ
U_Mから1つずつの波長をそれぞれ下り波長と上り波長としてOLT50から割り当てられる複数のONU10と、ONU10とOLT50とを接続する光ファイバ伝送路40と、を備える。OLT50内の各OSU20は、OSU20ごとに相異なる波長である下り信号光を送出し、各OSU20からの下り信号光は、光合分波手段35により波長多重された後、光ファイバ伝送路40へ出力される。光合分波手段35としては、光ファイバまたはPLC(Planar Lightwave Circuit)等により作成された光カプラなどがこれにあたる。
【0038】
ONU10は、入力される波長多重信号光の中から、OLT50から割り当てられている下り波長である下り信号光を選択的に受信する。
図3のように、PIN−PD(Photo−Diode)やAPD(Avalanche Photo−Diode)などの受光器16の前段に波長可変フィルタ12を配置し、波長可変フィルタ12の透過波長を割り当てられた下り波長に応じて変化させることにより、所望の波長の下り信号光を選択的に受信することができる。各ONU10は、LLID等のONU10識別子を用いて、受信したフレームが自分宛であるかを判断し、受信フレームの取捨選択を行う。
【0039】
一方、上り方向通信用に、ONU10は、波長λ
U_1〜λ
U_Mの信号光を間欠的に送信可能な波長可変光送信器14を備え、OLT50から割り当てられている上り波長で、OLT50から通知された送信許可時間内に上りバースト信号光を送信する。OLT50から通知される送信許可時間は、同じ上り波長を割り当てられている異なるONU10からのバースト信号光同士が衝突しないように、OLT50が記憶している各ONU10との間でのフレーム往復伝搬時間(RTT: Round Trip Time)を考慮して決定される。波長可変光送信器14としては、分布帰還型(DFB: Distributed Feedback)レーザなどの直接変調レーザの出力光波長を温度制御により変化させる構成や、出力光波長が異なる直接変調レーザをアレイ状に配置し外部からの制御信号により発光するレーザを切り替える構成がこれにあたる。波長可変光源からの出力光を、半導体や二オブ酸リチウム(LiNbO3)を材料とするマッハツェンダー型変調器、電界吸収型(EA: Electroabsorption)変調器、半導体光増幅器(SOA: Semiconductor Optical Amplifier)変調器などを用いて外部変調する構成も可能である。波長可変光源としては、出力光波長が異なる連続光(CW: Continuous Wave)レーザをアレイ状に配置し、外部からの制御信号により出力光波長を切り替える構成がこれにあたる。また、DBRレーザや外部共振器型レーザなどを波長可変光源として用いることも可能である。
【0040】
光ファイバ伝送路40を伝送された上りバースト信号光は、光合分波手段35で分岐された後、各々異なる波長の上りバースト信号光を選択的に受信するOSU20#1〜#Mへ入力される。
図3のように、バースト信号対応のPIN―PDやAPDなどの受光器23の前段に透過波長が光受信器24ごとに相異なる波長フィルタ22を配置することにより、各OSU20で相異なる波長の上りバースト信号光を選択的に受信することができる。ここで、各ONU10が自分に付与されたLLID等のONU10識別子を送信フレーム内に含めた上りバースト信号光を送出することで、OLT50は受信フレーム内のONU10識別子によりフレームの送信元であるONU10を特定することができる。
【0041】
ONU10内およびOLT50内の光受信器として、
図8のように、コヒーレント受信器(19、29)を用いることも可能である。この場合、ONU10内の局発光源18の出力光波長は、割り当てられている下り信号光の波長近傍に設定される。一方、OLT50内の局発光源28の出力光波長は、OSU20ごとに相異なるように、λ
U_1〜λ
U_Mのいずれか1つの波長の近傍に設定される。高受信感度を特徴とするコヒーレント受信を適用することで、光ファイバ伝送路40中での許容損失や各OSU20と接続する光合分波手段35における許容損失を増大できる。光ファイバ伝送路40中で許容される伝送損失や分岐損失の増大により、伝送距離の長延化や収容するONU10数の拡大を図れる。また、各OSU20と接続する光合分波手段35において許容される分岐損失の増大によりOSU20数を拡大できるため、システム総帯域を拡張できる。更には、コヒーレント受信の適用により波長フィルタが不要となるため、波長フィルタの特性に制限されずに隣接波長間隔を狭窄化することも可能である。
【0042】
以下に、本実施形態における動的波長帯域割当方法を説明する。
【0043】
本実施形態における動的波長帯域割当方法では、
図9に示すように、複数の帯域割当周期と同期する波長割当周期内でONU−OSU論理接続が固定となるように、下り波長および上り波長を各ONUへ割り当てる。波長割当周期に含まれる帯域割当周期の数は固定としても、トラフィック状況等に応じて可変としてもよい。同一の波長割当周期内では、帯域割当周期ごとに上りDataフレームの送信許可帯域量を各ONUへ割り当て、割り当て結果に基づいて決定される上りバースト信号光の送信許可時間を論理接続先のOSUから各ONUへ通知する。
図9は、各ONUからReportフレームにて通知される送信要求帯域量を用いて、OLTにて動的帯域割当(DBA: Dynamic Bandwidth Assignment)計算を帯域割当周期ごとに実行し、上りDataフレームの送信許可帯域量を各ONUへ動的に割り当てる場合である。上りDataフレームの送信許可帯域量を各ONUへ固定的に割り当てることも可能である。
【0044】
上り方向通信において、ONUは、送信要求帯域量を通知するフレームと上りDataフレームを、各々異なる上りバースト信号光で送信してもよいし、同一の上りバースト信号光で送信してもよい。
図9は、送信要求帯域量を通知するReportフレームを、上りDataフレームと異なる上りバースト信号光で送信する場合である。送信要求帯域量を通知するフレームと上りDataフレームを異なる上りバースト信号光で送信する場合は、各々の上りバースト信号光の送信許可時間がONUへ通知される。送信要求帯域量を通知するフレームと上りDataフレームを同一の上りバースト信号光で送信する場合は、1個の上りバースト信号光の送信許可時間がONUへ通知される。
【0045】
波長割当周期内では、次の波長割当周期におけるONU−OSU論理接続が、上り方向通信の送信要求帯域量や下り方向通信のトラフィック量等に基づいて動的波長割当(DWA: Dynamic Wavelength Assignment)計算により決定され、新たな割当波長を通知する波長切替指示が、波長切替対象ONU宛に送出される。波長切替指示には、新たな割当波長に加え、次の波長割当周期内の最初の帯域割当周期において、ONU内の波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻T1が含まれる。波長切替指示が送出される帯域割当周期では、波長切替対象ONU宛に、上りバースト信号光の送信許可時間の通知と、波長切替指示とが送出される。波長切替指示は、上りバースト信号光の送信許可時間の通知と、同一の制御フレームにて通知されてもよいし、異なる制御フレームにて通知されてもよい。
【0046】
波長切替対象ONU内の波長可変デバイスの設定波長の切替を時刻T1に開始するためには、波長切替指示を含む制御フレームは、波長切替開始時刻T1から、ONU内の波長制御回路にて波長制御パラメータを決定するのに要する時間以上遡った時刻に波長切替対象ONUに到着している必要がある。そのため、波長切替指示を含む制御フレームは、波長切替開始時刻T1から、ONU内の波長制御回路にて波長制御パラメータを決定するのに要する時間以上遡った時刻に当該ONUに到着するように、OLTから波長切替対象ONU宛に送出される。DWA計算は、波長切替指示を含む制御フレームの送出時刻までに終了していればよい。ここで、ONU内の波長制御回路にて波長制御パラメータを決定するのに要する時間とは、例えば、ONU内の波長可変デバイスの設定波長が電流/電圧により制御される場合、波長制御回路が、通知された割当波長に対応する電流値/電圧値を決定し、決定した値の波長制御信号を波長可変デバイスへ注入/印加するまでに要する時間に相当する。
図9は、波長割当周期#L(L=1,2,・・・)内の最後の帯域割当周期である帯域割当周期#L_H(Hは2以上の整数)に、波長切替指示を含む制御フレームが送出される場合であるが、ONU内の波長制御回路が波長制御パラメータを決定するのに帯域割当周期1周期分より長い時間を要する場合は、帯域割当周期#L_H−1以前に波長切替指示が送出される。
【0047】
波長切替指示を受信した波長切替対象ONUでは、MAC部からの波長切替指示に従って、波長制御回路が新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを決定する。その一方で、波長制御回路は、波長切替前の波長割当周期における波長制御パラメータを保持し、時刻T1までは、波長切替前の波長割当周期における波長制御パラメータに基づく波長制御信号を出力する。時刻T1には、波長制御回路内またはONU内の他の機能ブロックからのトリガーにより、波長制御回路は、出力する波長制御信号を、新たな割当波長に対応する波長制御パラメータに基づく波長制御信号に切り替える。つまり、波長切替対象ONUは、波長制御回路にて波長制御パラメータを決定するのに要する時間の長短に関わらず、波長切替前の波長割当周期内は、波長切替前の波長割当周期における論理接続先のOSUとの間で通信を継続する。
【0048】
本実施形態に記載の動的波長帯域割当方式では、波長切替開始時刻T1には波長制御パラメータの決定が完了しており、時刻T1から直ぐに波長可変デバイスの設定波長の切替が開始されるため、
図4に示す波長切替方式と比べて、波長切替が早く完了する。その上、波長切替前の波長割当周期において新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを決定する間も、波長切替対象ONUは波長切替前の論理接続先のOSUとの間で通信を継続する。そのため、波長制御パラメータの決定に長い時間を要したとしても、波長切替対象ONUへ上りDataフレームの送信許可帯域量が割り当てられない帯域割当周期の数を、
図4に示す波長切替方式より減少できる。
【0049】
図10は、設定波長が高速に切り替わる波長可変デバイスを用いる場合の動的波長帯域割当方式を説明する図である。
図9では、上りDataフレームの送信許可帯域量を波長切替対象ONUへ割り当てることができない帯域割当周期が#L+1_1から#L+1_hであったが、
図10では、上りDataフレームの送信許可帯域量を波長切替対象ONUへ割り当てることができない帯域割当周期を波長割当周期内の1番目と2番目の帯域割当周期のみ(#L+1_1と#L+1_2)とすることができる。
図10の動的波長帯域割当方式も
図9の説明同様に、上りDataフレームの送信許可帯域量を波長切替対象ONUへ割り当てることができない帯域割当周期の数は、波長制御パラメータの決定に要する時間の長短に影響しない。
【0050】
以上より、本実施形態に記載の動的波長帯域割当方式により、波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替中のONU内での上りDataフレームのバッファリングに起因する上り方向通信の遅延時間を短縮できることが分かる。また、これに伴って、ONUに搭載するバッファのサイズを縮小できるため、装置コストの抑制に加え、省電力化が図れる。
【0051】
[実施形態2]
第2の実施形態は、ONUに搭載する光送信器と光受信器のうち少なくとも一方に波長可変機能を備える波長可変型WDM/TDM−PONにおいて、第1の実施形態と同様に、波長切替前の波長割当周期内に波長切替対象ONU内の波長制御回路が新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを予め決定する一方で、波長切替対象ONUが波長切替前の波長割当周期内は波長切替前の論理接続先のOSUとの間で通信を継続することにより、上り方向通信の遅延時間を短縮する動的波長帯域割当方法である。
【0052】
第1の実施形態では、新たな割当波長と、波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻T1とが、波長切替対象ONUへ、波長切替前の波長割当周期内に通知されるのに対して、第2の実施形態では、
図11に示すように、新たな割当波長のみが波長切替前の波長割当周期内に通知され、波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻T1は、波長割当周期内の最初の帯域割当周期に通知される。
【0053】
新たな割当波長を通知する波長切替指示を受信した波長切替対象ONUでは、MAC部からの波長切替指示に従って、波長制御回路が新たな割当波長に対応する波長制御パラメータを決定する。その一方で、波長制御回路は、波長切替前の波長割当周期における波長制御パラメータを保持し、時刻T1までは、波長切替前の波長割当周期における波長制御パラメータに基づく波長制御信号を出力する。波長切替対象ONUは、波長割当周期内の最初の帯域割当周期に、波長可変デバイスの設定波長の切替を開始する時刻T1を通知され、波長制御回路は、通知に従って、時刻T1に、出力する波長制御信号を、新たな割当波長に対応する波長制御パラメータに基づく波長制御信号に切り替える。つまり、波長切替対象ONUは、波長制御回路にて波長制御パラメータを決定するのに要する時間の長短に関わらず、波長切替前の波長割当周期内は、波長切替前の波長割当周期における論理接続先のOSUとの間で通信を継続する。
【0054】
本実施形態に記載の動的波長帯域割当方式では、波長切替開始時刻T1には波長制御パラメータの決定が完了しており、時刻T1から直ぐに波長可変デバイスの設定波長の切替が開始されるため、
図4に示す波長切替方式と比べて、波長切替が早く完了する。その上、波長切替前の波長割当周期において波長制御パラメータを決定する間も、波長切替対象ONUは波長切替前の論理接続先のOSUとの間で通信を継続する。そのため、波長制御パラメータの決定に長い時間を要したとしても、波長切替対象ONUへ上りDataフレームの送信許可帯域量が割り当てられない帯域割当周期の数を、
図4に示す波長切替方式より減少できる。
【0055】
図12は、設定波長が高速に切り替わる波長可変デバイスを用いる場合の動的波長帯域割当方式を説明する図である。
図10での説明と同様に、
図12も上りDataフレームの送信許可帯域量を波長切替対象ONUへ割り当てることができない帯域割当周期を波長割当周期内の1番目と2番目の帯域割当周期のみ(#L+1_1と#L+1_2)とすることができる。また、
図12の動的波長帯域割当方式も、上りDataフレームの送信許可帯域量を波長切替対象ONUへ割り当てることができない帯域割当周期の数は、波長制御パラメータの決定に要する時間の長短に影響しない。
【0056】
以上より、本実施形態に記載の動的波長帯域割当方式により、波長制御パラメータの決定に長い時間を要する場合、波長切替中のONU内での上りDataフレームのバッファリングに起因する上り方向通信の遅延時間を短縮できることが分かる。また、これに伴って、ONUに搭載するバッファのサイズを縮小できるため、装置コストの抑制に加え、省電力化が図れる。
【符号の説明】
【0057】
10:ONU
11:波長合分波手段
12:波長可変フィルタ
13:波長可変光受信器
14:波長可変光送信器
16:受光器
17:光受信器
18:局発光源
19:コヒーレント受信器
20:OSU
21:波長合分波手段
22:波長フィルタ
23:受光器
24:光受信器
25:光送信器
26:光受信器
27:波長可変光送信器
28:局発光源
29:コヒーレント受信器
30:光合分波手段
31:波長ルーティング手段
32:波長ルーティング手段
33:光合分波手段
34:波長ルーティング手段
35:光合分波手段
40:光ファイバ伝送路
50:OLT