特許第6014004号(P6014004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014004
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】信号光取得構造
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   G01M11/00 G
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-223490(P2013-223490)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-87122(P2015-87122A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 知巳
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃
(72)【発明者】
【氏名】川野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】真保 誠
(72)【発明者】
【氏名】廣田 栄伸
(72)【発明者】
【氏名】清倉 孝規
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−258205(JP,A)
【文献】 特開平11−304644(JP,A)
【文献】 実開平02−131707(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0192241(US,A1)
【文献】 特開2005−250221(JP,A)
【文献】 特開平01−246512(JP,A)
【文献】 米国特許第05040866(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
G02B 6/00
G02B 6/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を伝搬する被測定ファイバの側面から一部の前記信号光を漏洩させて取り出すための信号光取得構造であって、
曲面を有し、前記被測定ファイバの接触部分において前記曲面が前記被測定ファイバと接触することにより前記被測定ファイバに曲げを付与する曲げ付与部材と、
前記被測定ファイバの側面に対向する光入射面を有し、前記曲げ付与部材による前記被測定ファイバの曲げにより前記被測定ファイバの側面から漏洩して前記光入射面に入射する前記一部の信号光を伝搬する受光部と、
前記接触部分に対する前記信号光の伝搬方向の前方及び後方であって前記曲げ付与部材との間に前記被測定ファイバを挟む位置にそれぞれ配置され、前記被測定ファイバと接触し、前記被測定ファイバが前記曲げ付与部材の前記曲面に沿って湾曲するように前記被測定ファイバを押さえる第1及び第2のガイド部材と
前記第1及び第2のガイド部材のうち少なくとも一方のガイド部材を移動させることにより、前記被測定ファイバの曲げ角度を変更するガイド可動機構と
を備える、信号光取得構造。
【請求項2】
前記曲げ付与部材の前記曲面が円柱面であり、
前記ガイド可動機構による前記少なくとも一方のガイド部材の移動が、前記曲げ付与部材の前記曲面に沿った回転移動であり、該回転移動の中心が前記円柱面の中心軸と一致する、請求項に記載の信号光取得構造。
【請求項3】
前記曲げ付与部材の前記曲面が円柱面であり、
前記円柱面の中心軸と前記接触部分の中央部とを通る直線と、前記第1及び第2のガイド部材との距離が、0より大きく前記円柱面の半径の3倍以下である、請求項1または2に記載の信号光取得構造。
【請求項4】
前記距離が前記円柱面の半径以下である、請求項に記載の信号光取得構造。
【請求項5】
前記第1及び第2のガイド部材が、前記被測定ファイバに当接する第1の面と、前記受光部に対向する第2の面とを有し、
前記第1の面と前記第2の面との距離が、前記接触部分の中央部に近づくに従って狭まっており、
前記第1の面と前記第2の面との交差部分が平坦に面取りされている、請求項1〜のいずれか一項に記載の信号光取得構造。
【請求項6】
前記第1及び第2のガイド部材が、前記被測定ファイバの中心軸線を含む平面の法線方向における前記被測定ファイバの変位を規制する位置決め構造を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の信号光取得構造。
【請求項7】
前記被測定ファイバが前記受光部の前記光入射面に押し付けられる、請求項1〜のいずれか一項に記載の信号光取得構造。
【請求項8】
前記受光部は、前記一部の信号光を一端面に受けて伝搬する測定用ファイバと、
前記測定用ファイバの前記一端面と前記被測定ファイバとの間に配置され、前記光入射面を構成し、前記被測定ファイバの被覆の屈折率と略等しい屈折率を有する部材と
を有する、請求項に記載の信号光取得構造。
【請求項9】
前記第1のガイド部材における前記受光部に対向する側の一端、及び前記第2のガイド部材における前記受光部に対向する側の一端を結ぶ平面と、前記曲げ付与部材との間隔が、前記被測定ファイバの外径よりも小さい、請求項またはに記載の信号光取得構造。
【請求項10】
前記間隔をh(μm)、前記被測定ファイバの外径をd(μm)としたとき、次の数式h≦d−50μmを満たす、請求項に記載の信号光取得構造。
【請求項11】
前記被測定ファイバと前記受光部の前記光入射面とが空隙を隔てて対向する、請求項1〜のいずれか一項に記載の信号光取得構造。
【請求項12】
前記接触部分に対し前記信号光の伝搬方向の前方及び後方それぞれにおいて前記被測定ファイバを保持する第1及び第2の保持部を更に備え、
前記第1の保持部が、前記被測定ファイバの光軸方向と交差する方向に移動可能であることにより前記被測定ファイバの曲げ角度を制御する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の信号光取得構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号光取得構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の光ファイバの中から特定の光ファイバを識別する方法が開示されている。この方法では、光ファイバを伝搬する光信号に含まれるファイバ識別データ信号を検出することによって特定の光ファイバを識別する。そのために、この方法では、光ファイバを屈折させて該光ファイバの側面から光信号を取り出し、該光信号をフォトダイオードによって検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−529466号公報
【特許文献2】特開平9−127362号公報
【特許文献3】特開2012−042455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号光を伝搬する光ファイバの側面から一部の信号光を漏洩させて取り出し、測定するための技術が研究されている。このような信号光の取り出しのために、特許文献1に記載された構成では、曲面を有する光ファイバ案内部材を用いて光ファイバに曲げを付与し、その曲げ部分からの漏洩光を検出している。しかしながら、光ファイバの被覆が固い場合、特許文献1に記載された方式では、光ファイバが光ファイバ案内部材に沿わずに離れてしまい、曲げ径が大きくなってしまう。そして、光ファイバの曲げ径がばらつくと、信号光の漏洩量が安定せず、測定精度が低下する一因となる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、光ファイバ(被測定ファイバ)の曲げ径のばらつきを抑えて測定精度を高めることができる信号光取得構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による信号光取得構造は、信号光を伝搬する被測定ファイバの側面から一部の信号光を漏洩させて取り出すための信号光取得構造である。この信号光取得構造は、曲面を有し、被測定ファイバの接触部分において曲面が被測定ファイバと接触することにより被測定ファイバに曲げを付与する曲げ付与部材と、被測定ファイバの側面に対向する光入射面を有し、曲げ付与部材による被測定ファイバの曲げにより被測定ファイバの側面から漏洩して光入射面に入射する一部の信号光を伝搬する受光部と、接触部分に対する信号光の伝搬方向の前方及び後方であって曲げ付与部材との間に被測定ファイバを挟む位置にそれぞれ配置され、被測定ファイバと接触し、被測定ファイバが曲げ付与部材の曲面に沿って湾曲するように被測定ファイバを押さえる第1及び第2のガイド部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明による信号光取得構造によれば、光ファイバ(被測定ファイバ)の曲げ径のばらつきを抑えて測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る信号光測定装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】信号光取得構造の主要部を拡大して示す斜視図である。
図3】信号光取得構造の主要部を拡大して示す斜視図である。
図4図2に示された信号光取得構造の正面図である。
図5図3に示された信号光取得構造の正面図である。
図6】第1のガイド部材が移動する様子を示す正面図である。
図7】曲げ支柱と第1及び第2のガイド部材との相対位置関係を説明するための図である。
図8】被測定ファイバの接触部分付近を拡大して示す図である。
図9】一変形例の構成を示す正面図である。
図10】被測定ファイバと光入射面との間隔が50μmである場合に、曲げ角度を様々な値に設定したときの信号光の光軸と交差する面内における光強度分布を示す図である。
図11】被測定ファイバと光入射面との間隔が0μmである場合に、曲げ角度を様々な値に設定したときの信号光の光軸と交差する面内における光強度分布を示す図である。
図12】被測定ファイバと光入射面との間隔が−50μmである場合に、曲げ角度を様々な値に設定したときの信号光の光軸と交差する面内における光強度分布を示す図である。
図13】被測定ファイバと光入射面との間隔が−100μmである場合に、曲げ角度を様々な値に設定したときの信号光の光軸と交差する面内における光強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明による信号光取得構造は、信号光を伝搬する被測定ファイバの側面から一部の信号光を漏洩させて取り出すための信号光取得構造である。この信号光取得構造は、曲面を有し、被測定ファイバの接触部分において曲面が被測定ファイバと接触することにより被測定ファイバに曲げを付与する曲げ付与部材と、被測定ファイバの側面に対向する光入射面を有し、曲げ付与部材による被測定ファイバの曲げにより被測定ファイバの側面から漏洩して光入射面に入射する一部の信号光を伝搬する受光部と、接触部分に対する信号光の伝搬方向の前方及び後方であって曲げ付与部材との間に被測定ファイバを挟む位置にそれぞれ配置され、被測定ファイバと接触し、被測定ファイバが曲げ付与部材の曲面に沿って湾曲するように被測定ファイバを押さえる第1及び第2のガイド部材と、を備える。
【0010】
この信号光取得構造では、曲げ付与部材の曲面が被測定ファイバに接触することによって被測定ファイバに曲げが付与される。このとき、第1及び第2のガイド部材が、曲げ付与部材の反対側から被測定ファイバに接触し、被測定ファイバを押さえる。これにより、被測定ファイバの被覆が固い場合であっても、被測定ファイバが曲げ付与部材の曲面に沿って湾曲する。従って、上記の信号光取得構造によれば、被測定ファイバの曲げ径のばらつきを抑えて測定精度を高めることができる。
【0011】
(2)上記の信号光取得構造は、第1及び第2のガイド部材のうち少なくとも一方のガイド部材を移動させることにより、被測定ファイバの曲げ角度を変更するガイド可動機構を更に備えるとよい。これにより、例えば被測定ファイバの曲げ損失が比較的大きい(すなわち漏洩光量が大きい)場合には曲げ角度を小さくして曲げ損失の過度の増加を抑え、また、被測定ファイバの曲げ損失が比較的小さい(すなわち漏洩光量が小さい)場合には曲げ角度を大きくして必要な漏洩光強度を得ることができる。従って、被測定ファイバの種類や製造ばらつき等に起因する、信号光の漏洩光量及び曲げ損失のばらつきによる影響を低減し、必要な大きさの信号光を漏洩させつつ被測定ファイバ内部における光損失の過度の増加を防ぐことができる。
【0012】
(3)また、上記の信号光取得構造では、曲げ付与部材の曲面が円柱面であり、ガイド可動機構による少なくとも一方のガイド部材の移動が、曲げ付与部材の曲面に沿った回転移動であり、該回転移動の中心が円柱面の中心軸と一致するとよい。これにより、被測定ファイバを曲げ付与部材の曲面に沿わせつつ被測定ファイバの曲げ角度を好適に変更することができる。
【0013】
(4)また、上記の信号光取得構造では、曲げ付与部材の曲面が円柱面であり、円柱面の中心軸と接触部分の中央部とを通る直線と、第1及び第2のガイド部材との距離が、0より大きく円柱面の半径の3倍以下であるとよい。第1及び第2のガイド部材が曲面から離れ過ぎると、被測定ファイバが曲面に沿うことが次第に難しくなる。本発明者の知見によれば、上記距離が0より大きく円柱面の半径の3倍以下であるときに、被測定ファイバがより効果的に曲面に沿うことができる。(5)この場合、距離は円柱面の半径以下であると尚よい。
【0014】
(6)また、上記の信号光取得構造では、第1及び第2のガイド部材が、被測定ファイバに当接する第1の面と、受光部に対向する第2の面とを有し、第1の面と第2の面との距離が、接触部分の中央部に近づくに従って狭まっており、第1の面と第2の面との交差部分が平坦に面取りされているとよい。これにより、第1及び第2のガイド部材の上記交差部分(換言すると、先端部)の割れや欠けを低減することができる。
【0015】
(7)また、上記の信号光取得構造では、第1及び第2のガイド部材が、被測定ファイバの中心軸線を含む平面の法線方向における被測定ファイバの変位を規制する位置決め構造を有するとよい。これにより、被測定ファイバの上記法線方向(例えば曲げ付与部材の曲面の曲率半径を表すベクトルに垂直な方向)における被測定ファイバの位置を安定させ、被測定ファイバと受光部との高い結合効率を維持することができる。
【0016】
(8)また、上記の信号光取得構造では、被測定ファイバが受光部の光入射面に押し付けられるとよい。これにより、被測定ファイバと受光部との結合効率を一層高め、より大きな信号光を取り出すことができる。
【0017】
(9)また、上記の信号光取得構造では、受光部が、一部の信号光を一端面に受けて伝搬する測定用ファイバと、測定用ファイバの一端面と被測定ファイバとの間に配置され、光入射面を構成し、被測定ファイバの被覆の屈折率と略等しい屈折率を有する部材とを有するとよい。このような部材が測定用ファイバと被測定ファイバとの間に設けられることにより、測定用ファイバの一端面の汚れを防ぎ、測定用ファイバと被測定ファイバとの高い結合効率を維持することができる。
【0018】
(10)また、上記の信号光取得構造では、第1のガイド部材における受光部に対向する側の一端、及び第2のガイド部材における受光部に対向する側の一端を結ぶ平面と、曲げ付与部材との間隔が、被測定ファイバの外径よりも小さいとよい。これにより、被測定ファイバが第1及び第2のガイド部材の各一端から突出し、被測定ファイバが受光部の光入射面に好適に押し付けられることができる。(11)この場合、例えば、間隔をh(μm)、被測定ファイバの外径をd(μm)としたとき、次の数式
h≦d−50μm
を満たすとよい。
【0019】
(12)また、上記の信号光取得構造では、被測定ファイバと受光部の光入射面とが空隙を隔てて対向してもよい。これに対し、例えば被測定ファイバと受光部の光入射面との間に屈折率整合剤(グリース)を塗布する方式も考えられるが、作業現場において屈折率整合剤を安定的に塗布及び管理するためには個々の作業員に高い技術が要求される。また、信号光を測定した後に屈折率整合剤を拭き取る作業が必要となるが、完全に拭き取ることは極めて困難である。上記の信号光取得構造のように被測定ファイバと受光部の光入射面とを空隙を隔てて対向させることにより、上記のような問題を回避することができる。
【0020】
(13)また、上記の信号光取得構造は、接触部分に対し信号光の伝搬方向の前方及び後方それぞれにおいて被測定ファイバを保持する第1及び第2の保持部を更に備え、第1の保持部が、被測定ファイバの光軸方向と交差する方向に移動可能であることにより被測定ファイバの曲げ角度を制御してもよい。これにより、被測定ファイバの曲げ角度をより精度良く設定することができる。
【0021】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら本発明による信号光取得構造の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る信号光測定装置1Aの全体構成を概略的に示す図である。本実施形態の信号光測定装置1Aは、信号光Laを伝搬する測定対象の光ファイバ心線(以下、被測定ファイバという)F1の側面から信号光Laの一部(以下、信号光Lbとする)を漏洩させ、その信号光Lbを検出する装置である。図1に示されるように、この信号光測定装置1Aは、被測定ファイバF1の側面から信号光Lbを漏洩させて取り出すための信号光取得構造10を備えている。信号光取得構造10は、曲げ支柱11と、把持部12及び13と、第1のガイド部材14と、第2のガイド部材15と、受光部16とを備えている。
【0023】
曲げ支柱11は、本実施形態における曲げ付与部材である。曲げ支柱11は、曲面11aを有しており、被測定ファイバF1の所定の接触部分P1において曲面11aが被測定ファイバF1と接触することにより被測定ファイバF1に曲げを付与する。曲面11aは例えば円柱面である。具体的には、曲げ支柱11は被測定ファイバF1の光軸方向と交差する方向を中心軸方向とする円柱状部材であって、曲面11aはその円柱状部材の表面の一部によって好適に実現される。曲げ支柱11の断面形状は、被測定ファイバF1との接触部分において曲面11aを有していればよく、それ以外の領域は例えば平坦形状等であっても良い。即ち曲げ支柱11の断面形状は、例えばD字状であっても良い。
【0024】
被測定ファイバF1は、このような曲げ支柱11の曲面11aに沿って配設されることにより、円弧状に変形する。このとき被測定ファイバF1の曲率は曲面11aの曲率により決定される。このような曲げ支柱11による被測定ファイバF1の曲げによって、信号光Laのうち一部の信号光Lbが被測定ファイバF1の側面から漏洩する。
【0025】
把持部12は、本実施形態の第1の保持部であり、接触部分P1に対し信号光Laの伝搬方向後方に位置する第1の把持位置P2において、被測定ファイバF1を把持(クランプ)することにより保持する。このような把持部12は、例えば互いに対向する面を有する一対の部材により被測定ファイバF1の第1の把持位置P2を挟持することによって好適に実現される。また、把持部12は、被測定ファイバF1の光軸方向と交差する方向B1,B2(好ましくは、被測定ファイバF1の光軸方向と直交し、且つ曲げ支柱11の中心軸方向と直交する方向)に移動可能なように構成されている。把持部12を方向B1,B2に移動させることによって、曲げ支柱11における被測定ファイバF1の曲げ角度を制御することができる。
【0026】
把持部13は、本実施形態の第2の保持部であり、接触部分P1に対し信号光Laの伝搬方向前方に位置する第2の把持位置P3において、被測定ファイバF1を把持(クランプ)することにより保持する。このような把持部13は、例えば互いに対向する面を有する一対の部材により被測定ファイバF1の第2の把持位置P3を挟持することによって好適に実現される。
【0027】
第1のガイド部材14は、接触部分P1に対する信号光Laの伝搬方向前方であって曲げ支柱11との間に被測定ファイバF1を挟む位置に配置されている。第1のガイド部材14は、曲げ支柱11とは反対側から被測定ファイバF1の接触部分P1若しくはその前方の部分と接触し、被測定ファイバF1の接触部分P1のうち前方寄りの部分が曲げ支柱11の曲面11aに沿って湾曲するように、被測定ファイバF1を押さえて支持する。
【0028】
第2のガイド部材15は、接触部分P1に対する信号光Laの伝搬方向後方であって曲げ支柱11との間に被測定ファイバF1を挟む位置に配置されている。第1のガイド部材14は、曲げ支柱11とは反対側から被測定ファイバF1の接触部分P1若しくはその後方の部分と接触し、被測定ファイバF1の接触部分P1のうち後方寄りの部分が曲げ支柱11の曲面11aに沿って湾曲するように、被測定ファイバF1を押さえて支持する。
【0029】
第1のガイド部材14は、曲げ支柱11の曲面11aに沿って移動可能なように構成されている。第1のガイド部材14の移動は、例えば曲げ支柱11の曲面11aに沿った回転移動であり、該回転移動の中心は曲面11aの中心軸と一致する。このように、第1のガイド部材14が移動可能であることによって、曲げ支柱11における被測定ファイバF1の曲げ角度を、把持部12と共に、若しくは第1のガイド部材14単独で制御することができる。
【0030】
受光部16は、被測定ファイバF1の側面に対向する光入射面16aを有し、曲げ支柱11による被測定ファイバF1の曲げにより被測定ファイバF1の側面から漏洩して光入射面16aに入射する信号光Lbを伝搬する。本実施形態の受光部16は、測定用の光ファイバ(以下、測定用ファイバという)17と、光透過部材18とを含んで構成されている。測定用ファイバ17は、信号光Lbを一端面17aに受け、その信号光Lbを他端面17bへ伝搬する。光透過部材18は、測定用ファイバ17の一端面17aと被測定ファイバF1との間に配置されている。光透過部材18は、光入射面16aを構成する第一面18aと、測定用ファイバ17の一端面17aに光学的に結合される第二面18bとを有する。光透過部材18は、被測定ファイバF1の被覆の屈折率と略等しい屈折率を有する材料によって構成されている。
【0031】
被測定ファイバF1に曲げが付与されている状態において、被測定ファイバF1は受光部16の光入射面16aに押し付けられる。被測定ファイバF1から漏洩した信号光Lbは、光入射面16aから光透過部材18に入射し、光透過部材18の内部を通過して測定用ファイバ17の一端面17aに入射する。測定用ファイバ17は、こうして入射した信号光Lbを伝搬する。本実施形態では、一端面17aへの信号光Lbの入射効率を高めるために、端面17a付近の測定用ファイバ17の光軸が、光入射面16aに対して傾斜している。また、信号光Lbの入射効率を高めるためには、測定用ファイバ17は通常のシングルモードファイバよりもコア径の大きなマルチモードファイバ等であることが好ましく、GI(Graded Index)ファイバまたは、SI(Step Index)ファイバであることが更に好ましい。
【0032】
本実施形態の信号光測定装置1Aは、上述した信号光取得構造10に加えて、集光レンズ28と、受光素子29とを更に備えている。受光素子29は例えばフォトダイオード(PD)であり、アバランシェフォトダイオード(APD)であることが好ましい(以下では、APDを例示して説明する)。集光レンズ28は、測定用ファイバ17の他端面17bと光学的に結合されており、他端面17bから出射された信号光LbをAPD29に向けて集光する。APD29は、集光レンズ28を介して測定用ファイバ17の他端面17bと光学的に結合されている。APD29は、測定用ファイバ17を伝搬した信号光Lbを受け、信号光Lbの光強度に応じた電気信号を生成する。なお、APD29は、信号光Lbに含まれる信号成分(MACアドレス信号など)を識別可能な程度に高速動作が可能なものであることが好ましい。また、前述のコア径の大きな光ファイバを測定用ファイバ17として用い、集光レンズ28等の集光光学系を介してAPD29に漏洩光を結合させることで、十分に信号光LbをAPD29に結合し、信号成分を識別可能となる。
【0033】
図2及び図3は、信号光取得構造10の主要部を拡大して示す斜視図であって、具体的な構成例を示している。図4及び図5は、それぞれ図2及び図3に示された信号光取得構造10の正面図である。図2及び図4は、曲げ支柱11が被測定ファイバF1と接触していない状態(すなわち、測定前若しくは測定後の状態)を表している。図3及び図5は、曲げ支柱11が被測定ファイバF1と接触し、被測定ファイバF1に曲げが付与されている状態(すなわち、測定中の状態)を表している。なお、図2図5では、理解の容易のため、受光部16の図示を省略している。
【0034】
信号光取得構造10は、前述した第1及び第2のガイド部材14,15が半円形且つ板状のベース部材31の主面31a上に搭載されて成る。曲げ支柱11は、ベース部材31に対して、主面31aに沿った方向(矢印A1)に平行移動が可能なように取り付けられている。被測定ファイバF1は、矢印A1と交差する方向に延伸して配置され、且つ、曲げ支柱11と第1及び第2のガイド部材14,15との間に配置される。
【0035】
第1のガイド部材14は、被測定ファイバF1の接触部分P1寄りの第1の部分14aと、第1の部分14aに対して信号光Laの伝搬方向前方に並ぶ第2の部分14bとを含む。同様に、第2のガイド部材15は、被測定ファイバF1の接触部分P1寄りの第1の部分15aと、第1の部分15aに対して信号光Laの伝搬方向後方に並ぶ第2の部分15bとを含む。第1の部分14a,15aは、被測定ファイバF1に当接する第1の面14c,15cと、受光部16に対向する第2の面14d,15dとを各々有する略三角柱状を呈している。そして、第1の面14cと第2の面14dとの距離、及び第1の面15cと第2の面15dとの距離は、接触部分P1の中央部に近づくに従って狭まっている。
【0036】
また、第1の面14cと第2の面14dとの交差部分(すなわち第1の部分14aの尖鋭部)、及び第1の面15cと第2の面15dとの交差部分(すなわち第1の部分15aの尖鋭部)はそれぞれ平坦に面取りされている。これにより、第1及び第2のガイド部材14,15の上記交差部分(尖鋭部)の割れや欠けを低減することができる。
【0037】
第2の部分14b,15bは、被測定ファイバF1に当接する第1の面14e,15eと、受光部16に対向する第2の面14f,15fとを各々有する略台形柱状を呈している。そして、第1の面14eと第2の面14fとの距離、及び第1の面15eと第2の面15fとの距離は、接触部分P1の中央部に近づくに従って狭まっている。
【0038】
第1及び第2のガイド部材14,15は、曲げが付与された状態での被測定ファイバF1の中心軸線を含む平面(換言すれば、曲面11aの曲率半径を表すベクトルを含む平面)の法線方向、すなわち曲げ支柱11の中心軸方向における、被測定ファイバF1の変位を規制するための位置決め構造を有する。具体的には、第1のガイド部材14の第2の部分14bの第1の面14e、及び第2のガイド部材15の第2の部分15bの第1の面15eそれぞれには、被測定ファイバF1を収容して位置決めするためのV溝14g,15gそれぞれが形成されている。V溝14g,15gは、被測定ファイバF1の変位を規制するための位置決め構造であって、曲げが付与される際、作業者によって被測定ファイバF1がV溝14g,15gに収容される。これにより、被測定ファイバF1の上記法線方向における被測定ファイバF1の位置を安定させ、被測定ファイバF1と受光部16との高い結合効率を維持することができる。また、より好ましくは、曲げ支柱11の曲面11aにも被測定ファイバF1を収容して位置決めするための溝11bが形成されているとよい。
【0039】
前述したように、第1のガイド部材14は、曲げ支柱11の曲面11aに沿って移動可能なように構成されている。この為に、信号光取得構造10は、第1のガイド部材14を移動させることにより被測定ファイバF1の曲げ角度を変更するガイド可動機構を更に備えている。
【0040】
具体的には、第1のガイド部材14の第1の部分14a及び第2の部分14bはベース部材31の主面31aに対して摺動可能となっており、ベース部材31に固定された回転軸32によって回動可能に支持されている。この回転軸32の中心軸線は、被測定ファイバF1に曲げを付与した状態での曲げ支柱11の中心軸線と略一致する。このため、第1のガイド部材14の移動は、曲げ支柱11の曲面11aに沿った回転移動となり、該回転移動の中心は、曲面11aの曲率中心(円柱面の中心軸線)と一致することとなる。
【0041】
また、ベース部材31の裏面側には、第1のガイド部材14の移動操作を行うための角度調整ツマミ33が設けられている。角度調整ツマミ33は回転軸32を中心として回動可能に支持され、且つ第1のガイド部材14に固定されている。作業者は、この角度調整ツマミ33を掴んで動かすことにより、第1のガイド部材14の位置を任意に設定することができる。第1のガイド部材14の位置が設定されたのち、ベース部材31のスリットに挿通されたボルト34が締結されることによって、角度調整ツマミ33及び第1のガイド部材14の位置決めがなされる。
【0042】
図6は、第1のガイド部材14が移動する様子を示す正面図であって、曲げ支柱11及び接触部分P1付近を拡大して示している。図6(a)は、第1のガイド部材14の初期位置を示している。図6(b)は第1のガイド部材14が初期位置から少し移動した状態を示し、図6(c)は第1のガイド部材14が図6(b)から更に移動した状態を示している。これらの図に示されるように、第1のガイド部材14が曲げ支柱11の曲面11aに沿って移動すると、被測定ファイバF1と曲げ支柱11との接触長さが次第に長くなり、被測定ファイバF1の曲げ角度θが次第に大きくなる。そして、被測定ファイバF1の曲げ角度θが大きくなるほど、信号光Lbの漏洩量が大きくなり、APD29における信号光Lbの検出精度が高まるが、被測定ファイバF1における信号光Laの伝送損失は大きくなる。
【0043】
信号光測定装置1Aが使用される際には、まず、図6(a)に示された状態で信号光Lbの測定を行う。そして、信号光Lbを識別できない場合には、図6(b)に示される状態まで第1のガイド部材14を移動させ、被測定ファイバF1の曲げ角度θを大きくする。この状態でも信号光Lbを識別できない場合には、図6(c)に示される状態まで第1のガイド部材14を移動させ、被測定ファイバF1の曲げ角度θを更に大きくするとよい。
【0044】
図7は、曲げ支柱11と第1及び第2のガイド部材14,15との相対位置関係を説明するための図である。図7(a)には、曲げ支柱11の曲面11a(円柱面)の曲率中心(中心軸線)と、被測定ファイバF1の接触部分P1の中央部とを通る直線A2が示されている。また、直線A2と第1のガイド部材14との距離D1、及び直線A2と第2のガイド部材15との距離D2が示されている。
【0045】
第1及び第2のガイド部材14,15が曲面11aから離れ過ぎると、被測定ファイバF1が曲面11aに沿うことが次第に難しくなる。本発明者の知見によれば、本発明者の知見によれば、望ましい距離D1,D2の長さは、0より大きく、曲げ支柱11の曲面11a(円柱面)の半径の3倍以下である(図7(b))。言い換えれば、直線A2に平行な曲げ支柱11の接線A3と第1及び第2のガイド部材14,15との距離D3,D4が、曲げ支柱11の直径よりも短いことが望ましい。このような場合に、被測定ファイバF1がより効果的に曲面11aに沿うことができる。
【0046】
また、距離D1,D2が曲げ支柱11の曲面11a(円柱面)の半径以下であれば尚好適である(図7(c))。この場合、第1及び第2のガイド部材14,15が曲面11aに更に近づくので、被測定ファイバF1が曲面11aに対してより精度良く沿うことができる。
【0047】
図8は、被測定ファイバF1の接触部分P1付近を拡大して示す図である。図8に示されるように、第1のガイド部材14における受光部16に対向する側の一端面14d、及び第2のガイド部材15における受光部16に対向する側の一端面15dを結ぶ平面Hと、曲げ支柱11との間隔hは、被測定ファイバF1の外径dよりも小さいことが望ましい。これにより、被測定ファイバF1が第1及び第2のガイド部材14,15の各一端面14d、15dから突出するので、被測定ファイバF1が受光部16の光入射面16aに好適に押し付けられることができる。一例では、平面Hと曲げ支柱11との間隔をh(μm)、被測定ファイバF1の外径をd(μm)としたとき、次の数式
h≦d−50μm
を満たすとよい。
【0048】
以上の構成を備える本実施形態の信号光取得構造10によって得られる効果について説明する。この信号光取得構造10では、曲げ支柱11の曲面11aが被測定ファイバF1に接触することによって被測定ファイバF1に曲げが付与される。このとき、第1及び第2のガイド部材14,15が、曲げ支柱11の反対側から被測定ファイバF1に接触し、被測定ファイバF1を押さえる。これにより、被測定ファイバF1の被覆が固い場合であっても、被測定ファイバF1が曲げ支柱11の曲面11aに沿って精度良く湾曲する。従って、本実施形態の信号光取得構造10によれば、被測定ファイバF1の曲げ径のばらつきを抑えて測定精度を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態のように、第1のガイド部材14を移動させることにより、被測定ファイバF1の曲げ角度θを変更するガイド可動機構を備えるとよい。これにより、例えば被測定ファイバF1の曲げ損失が比較的大きい(すなわち漏洩光量が大きい)場合には曲げ角度θを小さくして曲げ損失の過度の増加を抑え、また、被測定ファイバF1の曲げ損失が比較的小さい(すなわち漏洩光量が小さい)場合には曲げ角度θを大きくして必要な漏洩光強度を得ることができる。従って、被測定ファイバF1の種類や製造ばらつき等に起因する、信号光Lbの漏洩光量及び曲げ損失のばらつきによる影響を低減し、必要な大きさの信号光Lbを漏洩させつつ被測定ファイバF1内部における光損失の過度の増加を防ぐことができる。
【0050】
なお、本実施形態のガイド可動機構は、第1及び第2のガイド部材14,15のうち第1のガイド部材14のみを移動させることによって、被測定ファイバF1の曲げ角度θを変更している。ガイド可動機構の構成はこれに限らず、第1及び第2のガイド部材14,15の双方を移動可能としても良いし、第2のガイド部材15のみを移動可能としても良い。
【0051】
また、本実施形態のように、ガイド可動機構による第1のガイド部材14(若しくは第2のガイド部材15、又はその両方)の移動が曲げ支柱11の曲面11aに沿った回転移動であり、該回転移動の中心が曲面11a(円柱面)の中心軸と一致するとよい。これにより、被測定ファイバF1を曲げ支柱11の曲面11aに沿わせつつ、被測定ファイバF1の曲げ角度θを好適に変更することができる。
【0052】
また、本実施形態のように、被測定ファイバF1は、受光部16の光入射面16aに押し付けられるとよい。これにより、後述する実施例に示されるように、被測定ファイバF1と受光部16との結合効率を一層高め、より大きな信号光Lbを取り出すことができる。
【0053】
また、本実施形態のように、受光部16は、信号光Lbを端面17aに受けて伝搬する測定用ファイバ17と、測定用ファイバ17の端面17aと被測定ファイバF1との間に配置され、光入射面16aを構成し、被測定ファイバF1の被覆の屈折率と略等しい屈折率を有する光透過部材18とを有するとよい。測定用ファイバ17の端面17aが被測定ファイバF1の被覆に直接接触して端面17aに汚れが付着すると、微小な端面17aの清掃に手間を要することとなる。本実施形態のように、光透過部材18が測定用ファイバ17と被測定ファイバF1との間に設けられることにより、測定用ファイバ17の端面17aの汚れを防ぎつつ、光透過部材18の清掃を容易に行うことで測定用ファイバ17と被測定ファイバF1との高い結合効率を維持することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、信号光取得構造10は、接触部分P1に対し信号光Lbの伝搬方向の前方及び後方それぞれにおいて被測定ファイバF1を保持する把持部12,13を備え、把持部12が、被測定ファイバF1の光軸方向と交差する方向に移動可能であることにより被測定ファイバF1の曲げ角度θを制御してもよい。これにより、被測定ファイバF1の曲げ角度θをより精度良く設定することができる。なお、本実施形態では、把持部12,13のうち把持部12のみが移動可能となっているが、第2のガイド部材15が移動可能である場合には、把持部13も移動可能とされるとよい。
【0055】
(変形例)
図9は、上記実施形態の一変形例に係る信号光測定装置1Bの構成を示す正面図である。本変形例では、被測定ファイバF1に曲げが付与された状態において被測定ファイバF1が受光部16の光入射面16aに接触しておらず、被測定ファイバF1と光入射面16aとが空隙を隔てて対向している。
【0056】
このように、被測定ファイバF1と受光部16の光入射面16aとは、空隙を隔てて対向してもよい。このような構成であっても、上記実施形態の第1及び第2のガイド部材14,15による効果を好適に奏することができる。なお、例えば被測定ファイバF1と受光部16の光入射面16aとの間に屈折率整合剤(グリース)を塗布する方式も考えられるが、作業現場において屈折率整合剤を安定的に塗布及び管理するためには個々の作業員に高い技術が要求される。また、信号光Lbを測定した後に屈折率整合剤を拭き取る作業が必要となるが、完全に拭き取ることは極めて困難である。本変形例のように被測定ファイバF1と光入射面16aとを空隙を隔てて対向させることにより、これらの問題を回避することができる。
【0057】
(実施例)
図10図13は、上記実施形態及び変形例の構成において、被測定ファイバF1と光入射面16aとの間隔、及び曲げ角度θを様々な値に設定した場合における、信号光Lbの光軸と交差する面内における光強度分布を示す図である。図10図13において、色の濃淡は光強度を表し、淡い箇所ほど光強度が強い。但し、図10及び図11では減衰量を0dBとして測定しているが、図12では減衰率を(a)−17dB、(b)−21dB、(c)−23dBとして測定し、図13では減衰率を(a)−42dB、(b)−42dB、(c)−40dBとして測定した。また、本実施例では、被測定ファイバF1として許容曲げ半径が30mmであるR30ファイバを用い、そのファイバ径は0.25mm、MFDは8.80であった。曲げ支柱11の直径は8mmであった。
【0058】
図10は、被測定ファイバF1と光入射面16aとの間隔が50μmである(すなわち被測定ファイバF1と光入射面16aとが空隙を隔てて対向している)場合を示している。図11は、同間隔が0μmである(すなわち被測定ファイバF1と光入射面16aとが接触している)場合を示している。図12は、同間隔が−50μmである(すなわち被測定ファイバF1が光入射面16aに押し付けられている)場合を示している。図13は、同間隔が−100μmである(すなわち被測定ファイバF1が光入射面16aに更に強く押し付けられている)場合を示している。また、図10図13において、(a)は曲げ角度θが20°である場合を示し、(b)は曲げ角度θが30°である場合を示し、(c)は曲げ角度θが40°である場合を示している。各図中の実線の円の直径は200μmであり、破線の円の直径は100μm(測定用ファイバのコア径)である。
【0059】
図10図13に示されるように、曲げ角度θが20°、30°、及び40°のいずれであっても、被測定ファイバF1が光入射面16aに押し付けられている場合(図12図13)には、他の場合(図10図11)と比較して、信号光Lbの拡がりが狭く、散乱が抑制されつつ測定用ファイバのコア径内に効率良く入射していることがわかる。本実施例の結果から、曲げ角度θにかかわらず、信号光Lbを効率良く取得するために、被測定ファイバF1が光入射面16aに押し付けられることが好ましいことが示された。また、図12図13に示されるように、被測定ファイバF1と光入射面16aとの間隔が50μm以上であれば、信号光Lbをより効率良く取得することができる。すなわち、図8に示された図において、平面Hと曲げ支柱11との間隔をh(μm)、被測定ファイバF1の外径をd(μm)としたときに、次の数式
h≦d−50μm
を満たすことが望ましいことがわかる。
【0060】
本発明による信号光取得構造は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では受光部が測定用光ファイバ及び光透過部材を含んで構成されているが、漏洩した信号光が測定用ファイバに直接入射するように受光部を構成してもよい。また、第1及び第2のガイド部材は、必ずしも被測定ファイバに対して面で当接しなくてもよく、被測定ファイバ上の一点で当接してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B…信号光測定装置、10…信号光取得構造、11…曲げ支柱、11a…曲面、11b…溝、12,13…把持部、14…第1のガイド部材、14a…第1の部分、14b…第2の部分、14c,14e…第1の面、14d,14f…第2の面、14g,15g…V溝、15…第2のガイド部材、15a…第1の部分、15b…第2の部分、15c,15e…第1の面、15d,15f…第2の面、16…受光部、16a…光入射面、17…測定用ファイバ、18…光透過部材、28…集光レンズ、29…受光素子、31…ベース部材、32…回転軸、33…角度調整ツマミ、34…ボルト、F1…被測定ファイバ、La,Lb…信号光、P1…接触部分。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
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図13