(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽極、陰極及び発光層を含む有機発光素子であって、前記発光層は、前記陽極と前記陰極との間に配置されるとともに、該発光層は、ホスト材料及び燐光発光材料を含み、
(a)前記ホスト材料は、以下の式(1)によって示される化学構造を有する置換又は非置換炭化水素化合物を備え
、
式中、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは、以下の式(2)によって示され
、
式中、X1はCR2であり、X2は窒素であり、X3は窒素であり、
R1は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜50個の環炭素原子を有するアリール基、5〜50個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、
R2は、水素原子又はR1によって示される基であり、
aは、1〜2の整数であり、nは、0
又は1であり、
L1は、
6個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であり、
L2は、
6個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であるか、
5個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリーレン基であり、
式(2)の基ではないAr1〜Ar3のたかだか二つは、独立して、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリール基であり、
L1,L2及び/又は式(2)の基ではないAr1〜Ar3のたかだか二つが置換基である場合、該置換基は、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜14個の環炭素原子を有するアリール基、5〜20個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、
二以上のAr1〜Ar3が式(2)の基である場合、該式(2)の基は、同じであっても、異なっていてもよく、
aが2である場合、R1は、同じであっても、異なっていてもよく
、
(b)前記燐光発光材料は、以下の式によって示される以下の部分化学構造の一つによって示される置換化学構造を有する燐光有機金属錯体を含み
、
式中、Rは、独立して、水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル置換基であり、前記式の少なくとも一つの環は、一以上の前記アルキル置換基を有する、有機発光素子。
前記燐光発光材料は、金属錯体を含み、該金属錯体は、Ir、Pt、Os、Au、Cu、Re、Ru及び配位子から選択される金属原子を含む、請求項1〜6の何れかに記載の有機発光素子。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に配置された発光層を含む有機薄膜層を備えるOLEDは、当技術分野で公知である。そのような素子において、光放出は、発光層内に注入される正孔と電子との再結合によって生成される、励起子エネルギーから得られ得る。
【0003】
一般的に、OLEDは、素子を通して電圧を印加することによって、少なくとも一層が電界発光を示すことができる幾つかの有機層で構成される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照のこと)。電圧が素子を通して印加されると、陰極は、隣接する有機層を効果的に還元する(すなわち、電子を注入する)とともに、陽極は、隣接する有機層を効果的に酸化する(すなわち、正孔を注入する)。正孔及び電子は、それぞれに逆帯電した電極に向かって、素子を通して移動する。正孔及び電子が同じ分子上で出会うと、再結合が生じると言われており、励起子が形成される。発光化合物中の正孔及び電子の再結合は、放射放出を伴い、それによって、電界発光を生成する。
【0004】
正孔及び電子のスピン状態に依存して、正孔及び電子の再結合から生じる励起子は、三重項又は一重項のスピン状態を有することができる。一重項励起子からの発光によって蛍光発光が生じる一方で、三重項励起子からの発光によって燐光が生じる。統計学的に、OLEDにおいて一般的に使用される有機材料に対して、励起子の4分の1は、一重項であり、残りの4分の3は、三重項である(例えば、非特許文献3を参照のこと)。実用的な電子燐光性(electro‐phosphorescent)OLEDを製造するために使用可能な特定の燐光材料が存在するという発見(特許文献1)、及びそれに続いて、そのような電子燐光性(electro‐phosphorescent)のOLEDは、理論上の100%までの量子効率を有する(すなわち、三重項及び一重項の全てを収穫する)ことが可能であるという実証まで、最も効率的なOLEDは、蛍光発光する材料に一般的に基づいていた。燐光性発光の三重項から基底状態までの遷移は、形式的にスピン禁制工程であるため、蛍光体は、たった25%の最大理論量子効率(OLEDの量子効率は、正孔及び電子が発光するために再結合する効率をいう)で発光する。電子燐光性(electro‐phosphorescent)OLEDは、電子蛍光OLEDに比し、優れた全体的なデバイス効率を有することが示されてきた(例えば、非特許文献4及び非特許文献5を参照のこと)。
【0005】
一重項‐三重項状態混合に通じる強固なスピン軌道結合に起因して、重金属錯体は、しばしば、室温でそのような三重項から効率の良い燐光性発光を示す。従って、そのような錯体を含むOLEDは、75%より多い内部量子効率を有することが示されてきた(非特許文献6)。特定の有機金属イリジウム錯体は、強い燐光性を有するものとして報告されてきており(非特許文献7)、緑から赤のスペクトルにおいて発光する高効率OLEDは、これらの錯体で調製されてきた(非特許文献8)。燐光性重金属有機金属錯体及びそれらの個々の素子は、特許文献2及び特許文献3、特許文献4及び特許文献5、並びに、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9の主題であった。
【0006】
上述のように、OLEDは、一般的に、優れた発光効率、画質、電力消費及びフラットスクリーン等の薄いデザイン製品内に組み込まれる能力を提供し、それによって、陰極線装置等の従来技術に対して多くの利点を有する。
【0007】
しかしながら、例えば、より高い電力効率を有するOLEDの調製を含めた、改良されたOLEDが望まれている。この点に関して、発光が、内部量子効率を向上させるために、三重項励起子から得られる発光材料(燐光材料)が、開発されてきた。
【0008】
上述のように、そのようなOLEDは、発光層(燐光層)内にそのような燐光材料を使用することによって、理論的に100%までの内部量子効率を有することができ、得られるOLEDは、高効率及び低電力消費を有するであろう。そのような燐光材料は、そのような発光層を備えるホスト材料中のドーパントとして使用され得る。
【0009】
燐光材料等の発光材料を添加することによって形成された発光層において、励起子は、ホスト材料中に注入された電荷から効率的に生成されることができる。生成される励起子の励起子エネルギーは、ドーパントに移動され得、発光は、高効率でドーパントから得られ得る。励起子は、ホスト材料上又は直接ドーパント上に形成され得る。
【0010】
ホスト材料から高いデバイス効率を有する燐光ドーパントへの分子間エネルギー移動を達成するために、ホスト材料の励起三重項エネルギーEgHは、燐光ドーパントの励起三重項エネルギーEgDより高くなければならない。
【0011】
ホスト材料から燐光ドーパントへの分子間エネルギー移動を実行するために、ホスト材料の励起三重項エネルギーEg(T)は、燐光ドーパントの励起三重項エネルギーEg(S)より高くなければならない。
【0012】
CBP(4,4’‐ビス(N‐カルバゾリル)ビフェニル)は、効率的かつ高い励起三重項エネルギーを有する材料の代表例として知られている。例えば、特許文献8を参照されたい。CBPがホスト材料として使用されると、エネルギーは、赤色等の所定の発光波長を有する燐光ドーパントに移動されることができ、高い効率を有するOLEDが得られることができる。CBPがホスト材料として使用されると、発光効率は、燐光性発光によって顕著に向上される。しかしながら、CBPは、極めて短い寿命を有することを知られており、それ故に、OLED等のエレクトロルミネセント(EL)素子における実用に適さない。科学理論に縛られないが、これは、CBPが、分子構造の観点から、高くないその酸化安定性に起因して、正孔によって大いに劣化され得るためであると考えられている。
【0013】
特許文献10は、カルバゾール等の窒素含有環を有する縮合環誘導体等が、赤色燐光性を示す燐光性層のためのホスト材料として使用される技術を開示している。電流効率及び寿命は、上記技術によって改良されているが、実用に対するある場合において満足できるものではない。
【0014】
他方、蛍光発光を示す蛍光ドーパントのための様々なホスト材料(蛍光ホスト)が公知であり、蛍光ドーパントと組み合わせて、優れた発光効率及び寿命を示す蛍光層を形成し得る種々のホスト材料が、提案されることができる。
【0015】
蛍光ホストにおいて、励起一重項エネルギーEg(S)は、蛍光ドーパントにおけるエネルギーより高いが、そのようなホストの励起三重項エネルギーEg(T)は、必ずしも高くない。従って、蛍光ホストは、燐光性発光層を提供するためのホスト材料として、燐光ホストの代わりに単に使用されることができない。
【0016】
例えば、アントラセン誘導体は、蛍光ホストとして周知である。しかしながら、アントラセン誘導体の励起状態三重項エネルギーEg(T)は、約1.9エレクトロンボルト(eV)ほどであり得る。従って、励起状態三重項エネルギーは、そのような低三重項状態エネルギーを有するホストによって消光されるため、500ナノメートル(nm)から720ナノメートル(nm)の可視光領域における発光波長を有する燐光ドーパントへのエネルギー移動は、そのようなホストを用いて達成されることができない。従って、アントラセン誘導体は、燐光ホストとして適切ではない。
【0017】
ペリレン誘導体、ピレン誘導体及びナフタセン誘導体は、同様の理由で、燐光ホストとして好ましくない。
【0018】
燐光ホストとしての芳香族炭化水素化合物の使用は、特許文献11に開示されている。この出願は、ベンゼン骨格コア及びメタ位に結合された二つの芳香族置換基を有する燐光ホスト化合物を開示している。
【0019】
しかしながら、特許文献11に記載の芳香族炭化水素化合物は、良好な対称性を有するとともに、分子が中央のベンゼン骨格に向けて左右相称に配列されている五つの芳香環を備える剛体分子構造を想定している。そのような配列は、発光層の結晶化の尤度の欠点を有する。
【0020】
他方、種々の芳香族炭化水素化合物が使用されるOLEDは、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16及び特許文献17に開示されている。しかしながら、燐光ホストとしてのこれらの材料の効率は、開示されていない。
【0021】
また、種々のフルオレン化合物を用いることによって調製されるOLEDは、特許文献18、特許文献19及び特許文献20に開示されている。
【0022】
さらに、特許文献20は、縮合多環芳香環がフルオレン環に直接結合される炭化水素化合物を開示している。しかしながら、そのような材料と燐光材料とを組み合わせることによって調製されるOLEDの効率は、開示されておらず、本出願は、縮合多環芳香環として少ない三重項エネルギー準位を有することが知られているとともに、燐光素子のための発光層としての使用に好ましくないペリレン環及びピレン環を開示しており、燐光素子にとって効果的な材料は選択されていない。
【0023】
最近の効率的な重金属燐光体の発見及びその結果得られるOLED技術における進歩にも拘らず、さらに高温の素子安定性に対する必要性が残る。また高い効率を有するとともに延長された寿命を有する燐光材料にエネルギーを移動させることができるホスト材料に対する必要性が、依然として残る。より長い高温寿命を有する素子の製造は、新たなディスプレイ技術の発展に寄与するとともに、平面上のフルカラー電子ディスプレイに対する現在の目標を実現するのに役立つであろう。本明細書中に記載されるOLED並びにそのようなOLEDに備えられるホスト材料及び燐光発光材料は、この目的を実現するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のOLEDは、陽極と陰極との間に配置された複数の層を含み得る。本発明に係る代表的なOLEDは、以下に記載される構成層を有する構造を含むが、これらに限定されるものではない;
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子遮断層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/接着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入・輸送層/発光層/絶縁層/陰極、及び
(13)陽極/絶縁層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極。
【0053】
上述のOLED構成素構造の中で、構成素構造番号8が、好ましい構造であるが、本発明は、これらの開示された構成素構造に限定されない。
【0054】
本発明の一実施形態におけるOLEDの一例の概略構成を、
図1に示す。本発明の代表例として、OLED1は、透明基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に設けられた有機薄膜層10と、を備える。
【0055】
有機薄膜層10は、燐光ホスト及び燐光ドーパントを含む燐光発光層5を含み、該燐光発光層5と陽極3との間の正孔注入・輸送層6等、及び燐光発光層5と陰極4との間の電子注入・輸送層7等を、それぞれ提供することができる。
【0056】
さらに、陽極3と燐光発光層5との間に設けられた電子遮断層、及び陰極4と燐光発光層5との間に設けられた正孔遮断層が、それぞれ提供されてもよい。これによって、燐光発光層5内の励起子の生成率を向上させるために、燐光発光層5内に電子及び正孔を含むことが可能となる。
【0057】
本明細書中、用語「蛍光ホスト」及び「燐光ホスト」は、それぞれ、蛍光ドーパントと組み合された場合に蛍光ホストとして、そして、燐光ドーパントと組み合された場合に燐光ホストとして言われ、分子構造のみに基づいたホスト材料の分類に限定されるべきではない。
【0058】
従って、本明細書中の蛍光ホストは、蛍光ドーパントを含む蛍光発光層を構成する材料を意味し、蛍光材料のホストのためのみに使用されることができる材料を意味しない。
【0059】
同様に、燐光ホストは、燐光ドーパントを含む燐光発光層を構成する材料を意味し、燐光材料のホストのためのみに使用されることができる材料を意味しない。
【0060】
本明細書中、「正孔注入・輸送層」は、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも何れか一つを意味し、「電子注入・輸送層」は、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも何れか一つを意味する。
(
基板)
【0061】
本発明のOLEDは、基板上に調製されてもよい。この場合における基板は、OLEDを支持するための基板であり、基板は、約400〜約700nmの可視領域における光が、少なくとも約50%の透過率を有する平坦基板であるのが好ましい。
【0062】
基板は、ガラス板、高分子板等を含んでもよい。特に、ガラス板は、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を含んでもよい。高分子板は、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、硫化ポリエーテル、ポリスルホン等を含んでもよい。
(
陽極及び陰極)
【0063】
本発明のOLEDにおける陽極は、正孔注入層、正孔輸送層又は発光層中に正孔を注入する役割を想定している。一般的に、陽極は、4.5eV以上の仕事関数を有する。陽極として使用するのに適する材料の具体例として、インジウムスズ酸化物合金(ITO)、酸化スズ(NESA)、インジウム酸化亜鉛、金、銀、白金、銅等が挙げられる。陽極は、蒸着法、スパッタリング法等の方法によって、上述のような電極物質から薄膜を形成することによって調製されることができる。
【0064】
光が発光層から発光される場合、陽極内の可視光領域における光の透過率は、10%より高いことが好ましい。陽極のシート抵抗は、数百Ω/スクエア以下であることが好ましい。陽極の膜厚は、材料に依存して選択され、一般的には、約10nm〜約1μm、及び好ましくは、約10nm〜約200nmの範囲内である。
【0065】
陰極は、電子注入層、電子輸送層又は発光層中に電子を注入する目的で、小さい仕事関数を有する材料を備えることが好ましい。陰極として使用されるのに適した材料として、インジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム‐インジウム合金、マグネシウム‐アルミニウム合金、アルミニウム‐リチウム合金、アルミニウム‐スカンジウム‐リチウム合金、マグネシウム‐銀合金等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。透明又はトップエミット(top‐emitting)素子のために、特許文献21に開示されるようなTOLED陰極が好ましい。
【0066】
陰極は、陽極と同様に、蒸着法、スパッタリング法等の方法によって薄膜を形成することによって調製されることができる。さらに、発光が陰極側から得られる実施形態が、同様に利用されることができる。
(
発光層)
【0067】
OLEDにおける発光層は、以下の機能を単独で又は組み合わせて実行することが可能である;
(1)注入機能:正孔が、電界を印加する際に陽極又は正孔注入層から注入されることができるとともに、電子が、陰極又は電子注入層から注入されることができる機能。
(2)輸送機能:注入された電荷(電子及び正孔)が、電界の力によって移動され得る機能。
(3)発光機能:電子及び正孔の再結合のための領域が提供され、その結果、光の発光がもたらされる機能。
【0068】
正孔の注入の容易さと、電子の注入の容易さとの間に、差異が存在し得、正孔及び電子の運動性によって示される輸送能力における差異が存在し得る。
【0069】
例えば、蒸着、スピンコーティング、ラングミュアブロジェット法等を含む既知の方法が、発光層を調製するために使用されることができる。発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。この点に関して、用語「分子堆積膜」は、気相から化合物を堆積させることによって形成される薄膜、及び溶液状態又は液相状態における材料化合物を凝固させることによって形成される膜を意味し、通常、上記の分子堆積膜は、凝集構造及び高次構造における差異、並びに、それに由来する機能的相違によって、ラングミュアブロジェット(LB)法によって形成される薄膜(分子累積膜)と区別されることができる。
【0070】
好ましい実施形態において、発光層の膜厚は、好ましくは、約5〜約50nmであり、より好ましくは、約7〜約50nmであり、最も好ましくは、約10〜約50nmである。膜厚が5nm未満である場合、発光層を形成するとともに、色度を制御することが難しい傾向にある。他方、膜厚が約50nmを越えると、駆動電圧が高くなる傾向にある。
(
OLED)
【0071】
本発明のOLEDにおいて、単層又は複層を含む有機薄膜層は、陰極と陽極との間に提供される。該有機薄膜層は、少なくとも一つの発光層を含む。有機薄膜層の少なくとも一つは、少なくとも一つの燐光材料及び以下に記載される少なくとも一つのホスト材料を含む。さらに、発光層の少なくとも一つは、有機エレクトロルミネセンス素子のための本発明の少なくとも一つのホスト材料及び少なくとも一つの燐光材料を含むことが好ましい。
【0072】
本発明において、発光層は、燐光発光可能な少なくとも一つの燐光材料と、以下の式(1)によって示される芳香族アミン誘導体ホスト材料と、を含み、
【0074】
式中、Ar
1〜Ar
3の少なくとも一つは、以下の式(2)によって示され、
【0076】
式中、X
1〜X
3の二つが窒素原子であるという条件で、少なくともX
1〜X
3は、独立して、窒素原子又はCR
2であり、
R
1は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜50個の環炭素原子を有するアリール基、5〜50個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、
R
2は、水素原子又はR
1によって示される基であり、
aは、1〜2の整数であり、nは、0〜3の整数であり、
L
1は、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であり、
L
2は、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であるか、5〜50個の環原子を有する置換又は非置換ヘテロアリーレン基であり、
式(2)の基ではないAr
1〜Ar
3のたかだか二つは、独立して、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリール基であり、
L
1,L
2及び/又は式(2)の基ではないAr
1〜Ar
3のたかだか二つが置換基である場合、該置換基は、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜14個の環炭素原子を有するアリール基、5〜20個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、
二以上のAr
1〜Ar
3が式(2)の基である場合、該式(2)の基は、同じであっても、異なっていてもよく、
aが2である場合、R
1は、同じであっても、異なっていてもよく、
nが2以上である場合、L
2は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0077】
上述のように、高効率かつ長寿命、特に、高い作動温度における高い安定性を有する燐光発光層は、本発明の教示に従って調製されることができる。
【0078】
この点に関して、本発明のOLEDを構成する材料の励起三重項エネルギーギャップEg(T)は、その燐光発光スペクトルに基づいて規定され得、それは、エネルギーギャップが、一般的に使用されるような、以下のような方法で規定され得る本発明における一例として示されている。
【0079】
それぞれの材料は、燐光を測定するためのサンプルを調製するために、10μモル/L(μmol/L)濃度で、EPA溶媒(容積比で、ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2)中に溶解される。この燐光測定用サンプルは、石英セル中に置かれ、77Kまで冷却されて、次に、発光された燐光の波長を測定するために励起光で照射される。
【0080】
短波長側で得られる燐光発光スペクトルの増加に基づいて、接線が引かれ、上記接線と基線の交点の波長値は、エネルギー値に変換され、励起三重項エネルギーギャップEg(T)として設定される。市販の測定装置F‐4500(株式会社日立製)は、測定のために使用されることができる。しかしながら、三重項エネルギーギャップとして定義されることができる値は、それが、本発明の範囲から逸脱しない限り、上記手順に依存することなく使用されることができる。
【0081】
好ましいホスト材料は、以下の式(RH‐1)によって示される化学構造を有する。
【0083】
有機エレクトロルミネセンス素子のための本発明の材料は、大きな三重項エネルギーギャップEg(T)(励起三重項エネルギー)を有し、それにより、燐光は、燐光ドーパントにエネルギ―を移動することによって発光されることができる。
【0084】
本発明において、上述のホスト材料の励起三重項エネルギーは、好ましくは、約2.0eV〜約2.8eVである。約2.0eV以上の励起三重項エネルギーによって、500nm以上及び720nm以下の波長で光を発光する燐光ドーパント材料にエネルギーを移動することが可能となる。約2.8eV以下の励起三重項エネルギーによって、発光が、エネルギーギャップにおける大きな差のために赤色燐光ドーパントにおいて効率的に実行されないという問題を回避することが可能となる。ホスト材料の励起三重項エネルギーは、より好ましくは、約2.1eV〜約2.7eVである。
【0085】
以下の式によって示される、本発明に係るホスト材料に適した化合物の幾つかの具体例として、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本発明のOLEDにおいて使用可能な燐光発光材料に関して、イル(2‐フェニルキノリン)及びイル(1‐フェニルイソキノリン)型の燐光材料が合成されるとともに、それらをドーパント発光材料として組み込むOLEDが、製造されてきた。そのような素子は、高電流効率、高安定性、狭い発光領域、(高溶解度及び低蒸発温度等の)高加工性、高発光効率、及び/又は高発光効率を、有利に示し得る。
【0088】
イル(3‐Meppy)
3の基底構造を用いて、異なるアルキル及びフルオロ置換パターンが、イル(2‐フェニルキノリン)及びイル(1‐フェニルイソキノリン)型の燐光材料の材料加工性(蒸発温度、蒸発安定性、溶解度等)及び素子特性に関して構造‐物性関係を確立するために研究されてきた。アルキル及びフルオロ置換は、それらが、蒸発温度、溶解度、エネルギー準位、素子効率等の観点から広範囲の維持可能性を提供するために、特に重要である。さらに、アルキル及びフルオロ置換は、適切に適用される場合、化学的官能基として及び素子動作において安定的である。
【0089】
本発明の一実施形態において、燐光発光材料は、以下の式(B‐1)、(B‐2)及び(B‐3)によって示される以下の部分的化学構造の一つによって示される置換化学構造を有する燐光有機金属錯体を備える。
【0091】
式中、Rは、独立して、水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル置換基であり、式中の少なくとも一つの環は、一以上のアルキル置換基を有する。特に、「置換」構造は、環の何れか一つの上に置換され得る、少なくとも一つのメチル置換基を含む。上記構造に係る燐光有機金属錯体は、任意の適切な数のメチル基で置換され得る。好ましくは、上記構造に係る燐光有機金属錯体は、少なくとも二つのメチル基で置換されている。
【0092】
好ましくは、上記構造に係る燐光有機金属錯体は、少なくとも二つのメチル基で置換されている。最も好ましい実施形態において、燐光発光材料は、以下の部分的化学構造(3)によって示される置換化学構造を有する燐光有機金属錯体を含む。
【0094】
他の実施形態において、燐光発光材料は、金属錯体を含み、該金属錯体は、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、金(Au)、銅(Cu)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)から選択される金属原子、並びに配位子を含む。さらに他の実施形態において、金属錯体は、オルト‐メタル結合を有する。金属原子は、イリジウムであるのが好ましい。
【0095】
他の実施形態において、燐光発光材料は、以下の化学構造(4)によって示される置換化学構造を有する燐光有機金属化合物を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、本発明は、ホスト材料が以下の式(RH‐1)によって示される化学構造を有する非置換芳香族炭化水素化合物を含むOLEDに関し、
【0099】
燐光発光材料は、以下の化学構造(4)によって示される置換化学構造を有する燐光有機金属化合物を含む。
【0101】
他の好ましい実施形態において、本発明は、ホスト材料が以下の式(RH‐1)によって示される化学構造を有する非置換芳香族炭化水素化合物を含むOLEDに関し、
【0103】
燐光発光材料は、以下の化学構造(RD‐1)によって示される置換化学構造を有する燐光有機金属化合物を含む。
【0105】
本発明のOLEDは、正孔輸送層(正孔注入層)を含んでいてもよく、該正孔輸送層(正孔注入層)は、本発明の材料を含んでいるのが好ましい。また、本発明のOLEDは、電子輸送層及び/又は正孔遮断層を含んでいてもよく、該電子輸送層及び/又は正孔遮断層は、本発明の材料を含んでいるのが好ましい。
【0106】
本発明のOLEDは、陰極と有機薄膜層との間の中間層領域内に、還元性ドーパントを含んでいてもよい。記載される構造的構成を有するそのようなOLEDは、改良された発光輝度及び延長された寿命を示し得る。
【0107】
還元性ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、希土類金属化合物等から選択される少なくとも一つのドーパントを含む。
【0108】
適切なアルカリ金属として、ナトリウム(仕事関数:2.36eV)、カリウム(仕事関数:2.28eV)、ルビジウム(仕事関数:2.16eV)、セシウム(仕事関数:1.95eV)が挙げられる。2.9eV以下の仕事関数を有する化合物が、特に好ましい。それらの中で、カリウム、ルビジウム及びセシウムが好ましく、より好ましくは、ルビジウム又はセシウムであり、さらにより好ましくは、セシウムである。
【0109】
アルカリ土類金属として、カルシウム(仕事関数:2.9eV)、ストロンチウム(仕事関数:2.0〜2.5eV)、バリウム(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、2.9eV以下の仕事関数を有する化合物が、特に好ましい。
【0110】
希土類金属として、スカンジウム、イットリウム、セリウム、テルビウム、イッテルビウム等が挙げられ、2.9eV以下の仕事関数を有する化合物が、特に好ましい。
【0111】
上述の金属の中で、高い還元能力を有する金属を選択することが好ましく、電子注入領域に比較的少量の金属を添加することによって、発光輝度を向上させるとともに、OLEDの寿命を延長させることが可能となる。
【0112】
アルカリ金属化合物として、酸化リチウム(Li
2O)、酸化セシウム(Cs
2O)、酸化カリウム(K
2O)等のアルカリ金属酸化物、及びフッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)等のアルカリ金属ハロゲン化物が挙げられる。好ましい化合物として、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(Li
2O)及びフッ化ナトリウム(NaF)が挙げられる。
【0113】
アルカリ土類金属化合物として、上記化合物を混合することによって得られる酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、及びBa
xSr
1−xO(0<x<1)、Ba
xCa
1−xO(0<x<1)等が挙げられ、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)及び酸化カルシウム(CaO)が好ましい。
【0114】
希土類金属化合物として、フッ化イッテルビウム(YbF
3)、フッ化スカンジウム(ScF
3)、酸化スカンジウム(ScO
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化セリウム(Ce
2O
3)、フッ化ガドリニウム(GdF
3)、フッ化テルビウム(TbF
3)等が挙げられ、フッ化イッテルビウム(YbF
3)、フッ化スカンジウム(ScF
3)及びフッ化テルビウム(TbF
3)が好ましい。
【0115】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体は、それらがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンの少なくとも一つの金属イオンを含んでいる限り、特に限定されるべきではない。配位子は、キノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体であるのが好ましい。しかしながら、適切な材料は、これら上述の化合物に限定されるものではない。
【0116】
還元性ドーパントは、界面領域において形成されてもよく、層状又は島状であるのが好ましい。形成方法は、抵抗加熱蒸着法によって還元性ドーパントを堆積させている間、界面領域を形成する発光材料及び電子注入材料に対応する有機物が、同時に堆積され、それによって、有機物内に還元性ドーパントを分散させる方法であり得る。分散濃度は、モル比で、有機物:還元性ドーパント=約100:1〜1:100、好ましくは、約5:1〜1:5の割合を有する。
【0117】
還元性ドーパントが層状に形成される場合、界面領域内の有機層である発光材料及び電子注入材料は、層状に形成され、それから、還元性ドーパントは、好ましくは、0.1〜15nmの厚みの層を形成するために、抵抗加熱蒸着法によって単独で堆積され得る。
【0118】
還元性ドーパントが島状に形成される場合、界面領域内の有機層である発光材料及び電子注入材料は、島状に形成され、それから、還元性ドーパントは、好ましくは、0.05〜1nmの厚みの島を形成するために、抵抗加熱蒸着発光法によって単独で堆積され得る。
【0119】
本発明のOLEDにおける主成分の還元性ドーパントに対するモル比は、好ましくは、モル比で、主成分:還元性ドーパント=5:1〜1:5、より好ましくは、2:1〜1:2である。
【0120】
本発明のOLEDは、好ましくは、発光層と陰極との間に電子注入層を有する。この点に関して、電子注入層は、電子輸送層として作用する層であり得る。電子注入層又は電子輸送層は、発光層中への電子の注入を補助するための層であり、大きな電子移動度を有する。電子注入層は、エネルギー準位における急変の緩和を含めてエネルギー準位を制御するために提供される。
【0121】
本発明のOLEDにおける各層の形成方法は、特に限定されるものではなく、これまでに公知であった真空蒸着法、スピンコート法等によって実行される形成方法が使用されることができる。本発明のOLEDのために使用される上記式(1‐1)〜(1‐132)によって示されるホスト材料化合物を含む有機薄膜層は、それぞれ、溶媒中に化合物を溶解させることによって調製される溶液を用いて、真空蒸着、分子線蒸着法(MBE法)、及び浸漬、スピンコート、鋳造、バーコーティング及びロールコーティング等のコーティング法等による公知の方法によって形成されることができる。
【0122】
本発明のOLEDにおける各有機層の膜厚は、特に限定されるものではない。一般的に、膜厚が小さすぎると、ピンホール等の欠陥に関連するのに対して、膜厚が大きすぎると、高電圧の印加を必要とし、OLEDの効率を低下させ得る。従って、膜厚は、一般的に、1乃至数nmから1μmの範囲である。
【0123】
本発明の組み合わせによって、燐光ドーパントの三重項エネルギー準位及びホストの三重項エネルギー準位は、高効率及び延長された寿命を有する有機EL素子を得るために調整され得る。
【0124】
本発明のホスト材料の中で、ビフェニル誘導体は、特に長い寿命を有する。ビフェニル誘導体は、ビフェニルの三重項エネルギーより低い三重項エネルギーを有し、本発明のビフェニル誘導体及び燐光ドーパントの組み合わせは、上述の利点を生じることが見出された。
【0125】
式(2)の基ではないL
1,L
2及びAr
1〜Ar
3が置換基を有する場合、該置換基は、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜14個の環炭素原子を有するアリール基、5〜20個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基を有する。二以上のAr
1〜Ar
3が式(2)の基である場合、該式(2)の基は、同じであっても、異なっていてもよい。aが2の場合、R
1は、同じであっても、異なっていてもよい。nが2以上の場合、L
2は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0126】
L
1は、好ましくは、6〜30個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であり、より好ましくは、6〜20個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基であり、特に好ましくは、置換又は非置換フェニレン基、ビフェニレン基及びフルオレニレン基の何れか一つである。
【0127】
L
1の具体例として、以下の構造式によって示される基が挙げられるが、L
1は、これらに限定されるものではない。
【0129】
L
2は、好ましくは、6〜30個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基、或いは、5〜30個の環原子を有する置換又は非置換の二価ヘテロアリーレン基であり、より好ましくは、6〜20個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリーレン基、或いは、5〜20個の環原子を有する置換又は非置換のヘテロアリーレン基であり、特に好ましくは、置換又は非置換フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基の何れか一つである。L
2の具体例として、L
1の具体例として例示される基と同じ基を示すことができるが、L
2は、これらに限定されるものではない。
【0130】
本発明の式(1)を有する芳香族アミン誘導体において、X
1〜X
3を含む式(2)の六員環は、電子輸送部として作用し、トリアリルアミン部は、正孔輸送部として作用する。そのような構造を有しているため、式(1)を有する芳香族アミン誘導体は、正孔及び電子の両方を輸送することができる。
【0131】
式(2)の六員環は、二つの窒素原子を有するため、化合物は、電子求引効果が高く、電子を過度に求引せず、その効果は弱すぎることなく、好ましいものである。
【0132】
式(2)の六員環として、以下の化合物(左からピラジン、ピリダジン及びピリミジン)を挙げることができる。
【0134】
一般的に、化合物は、それが有機EL材料として使用される場合、キャリア抵抗性(carrier-resistant)であることが必要である。従って、本発明の化合物において、X
1〜X
3を含む六員環は、置換基を有することが好ましい。
【0135】
例えば、式(2)の六員環が上述のピリダジンである場合、該ピリダジンは、3位及び6位の一以上に置換基を有することが好ましい。式(2)の六員環が上述のピリミジンである場合、該ピリミジンは、2位、4位及び6位の一以上に置換基を有することが好ましい。R
1及びR
2は、電子化学的に安定な置換基であることが好ましく、その例として、6〜50個の環炭素原子を有するアリール基、5〜50個の環原子を有する複素環基、フッ素原子及びシアノ基が挙げられる。これらの好ましい置換基は、アミン化合物の電子化学的安定性及び電荷抵抗を向上させる傾向にあり、長寿命に通じる。
【0136】
さらに、本発明の芳香族アミン誘導体は、以下の式(6)〜(9)の何れか一つによって示される。
【0138】
Ar
4〜Ar
7の少なくとも一つ、Ar
8〜Ar
12の少なくとも一つ、Ar
13〜Ar
18の少なくとも一つ及びAr
19〜Ar
24の少なくとも一つは、上述の式(2)によって示される。その「少なくとも一つ」は、好ましくは、一つ又は二つである。式(2)の基ではないAr
4〜Ar
24は、独立して、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリール基である。好ましくは、Ar
4〜Ar
24は、独立して、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基及び9,9‐ジメチルフルオレニル基の何れか一つである。
【0139】
L
11〜L
19は、独立して、6〜50個の環炭素原子を有する置換又は非置換アリレーン基である。好ましくは、L
11〜L
19は、独立して、置換又は非置換フェニレン基、ビフェニレン基及びフルオレニレン基の何れか一つである。式(1)のL
1の基と同じ基が、例示されることができる。それらは、二つの窒素原子間にヘテロ環(ヘテロアリーレン基)を有さないため、その正孔移動度は増加せず、その駆動電圧は過度に増加しないことが好ましい。
【0140】
式(2)の基ではないAr
4〜Ar
24及びL
11〜L
19が置換基を有する場合(これは、上述の「置換又は非置換」の「置換基」を意味する)、置換基は、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、3〜10個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換シリル基、6〜14個の環炭素原子を有するアリール基、5〜20個の環原子を有するヘテロアリール基、ハロゲン原子又はシアノ基である。
【0141】
明細書中、「環炭素原子」は、飽和環、不飽和環又は芳香環を形成する炭素原子を意味する。「環原子」は、炭素原子、及び飽和環、不飽和環又は芳香環を含む環を形成するヘテロ原子を意味する。「非置換」は、基が水素原子で置換されていることを意味し、本発明の水素原子は、軽水素、重水素及びトリチウムを含む。
【0142】
式(1),(2)及び(6)〜(9)中のR
1,R
2,L
1,L
2,L
11〜L
19及びAr
1〜Ar
24、並びにその置換基によって示される基について、以下に説明する。
【0143】
アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s‐ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、n‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基及びn‐オクチル基が挙げられる。アルキル基は、好ましくは、1〜10個の炭素原子、及びより好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する。特に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s‐ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、n‐ペンチル基及びn‐ヘキシル基が好ましい。
【0144】
シクロアルキル基の例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基及びノルボルニル基が挙げられる。シクロアルキル基は、好ましくは、3〜10個の環炭素原子、及びより好ましくは、3〜8個の環炭素原子を有する。
【0145】
置換シリル基の例として、3〜30個の炭素原子を有するアルキルシリル基(例えば、3〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル基)、8〜30個の環炭素原子を有するアリールシリル基(例えば、18〜30個の環炭素原子を有するトリアリールシリル基)、及び8〜15個の炭素原子を有するアルキルアリールシリル基(アリール部分は、6〜14個の環炭素原子を有する)が挙げられる。具体例として、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t‐ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基及びトリフェニルシリル基が挙げられる。
【0146】
アリール基の例として、フェニル基、1‐ナフチル基、2‐ナフチル基、1‐アントリル基、2‐アントリル基、9‐アントリル基、1‐フェナントリル基、2‐フェナントリル基、3‐フェナントリル基、4‐フェナントリル基、9‐フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、トリフェニレニル基、1‐フルオレニル基、2‐フルオレニル基、3‐フルオレニル基、4‐フルオレニル基、9‐フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、2‐ビフェニリル基、3‐ビフェニリル基、4‐ビフェニリル基、ターフェニル基、フルオランテニル基が挙げられる。アリーレン基の例として、上記アリール基に対応する二価基を挙げることができる
【0147】
上記アリール基は、好ましくは、6〜20個の環炭素原子、及びより好ましくは、6〜12個の環炭素原子を有する。上記アリール基の中で、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基及び1‐ナフチル基が、特に好ましい。
【0148】
ヘテロアリール基の例として、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、1‐ジベンゾフラニル基、2‐ジベンゾフラニル基、3‐ジベンゾフラニル基、4‐ジベンゾフラニル基、1‐ジベンゾチオフェニル基、2‐ジベンゾチオフェニル基、3‐ジベンゾチオフェニル基、4‐ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、1‐カルバゾリル基、2‐カルバゾリル基、3‐カルバゾリル基、4‐カルバゾリル基、9‐カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基及びベンゾチオフェニル基が挙げられる。
【0149】
上記ヘテロアリール基は、好ましくは、5〜20個の環原子、及びより好ましくは、5〜14個の環原子を有する。1‐ジベンゾフラニル基、2‐ジベンゾフラニル基、3‐ジベンゾフラニル基、4‐ジベンゾフラニル基、1‐ジベンゾチオフェニル基、2‐ジベンゾチオフェニル基、3‐ジベンゾチオフェニル基、4‐ジベンゾチオフェニル基、1‐カルバゾリル基、2‐カルバゾリル基、3‐カルバゾリル基、4‐カルバゾリル基及び9‐カルバゾリル基が好ましい。
【0150】
ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を挙げることができる。フッ素が好ましい。
【0151】
上記式(6)〜(9)の芳香族アミン誘導体は、また、式(1)の芳香族アミン誘導体のように、電子輸送位及び正孔輸送位を有し、好ましくは、キャリア抵抗(carrier-resistant)特性及び同様の利点を有する。
【実施例】
【0152】
合成例1において生成された中間体の構造を以下に示す。
【0153】
【化25】
【0154】
【化26】
(合成例2:中間体2の合成)
【0155】
中間体1(20g,69.7mmol)及びベンズアミジン塩酸塩(10.8g,69.7mmol)を、エタノール(300mL)に添加し、水酸化ナトリウム(5.6g,140mmol)をさらに添加した。混合物を、8時間の間、還流下で加熱した。沈殿物を、濾過によって分離し、ヘキサンを用いて洗浄し、白色固体(10.3g,収率38%)を得た。白色固体を、FD(電界脱離)質量分析によって、中間体2として同定した。
(合成例8:中間体8の合成)
【0156】
6.6gの白色粉末を得るために、N‐フェニル‐1‐ナフチルアミンの代わりに、8.6gのジフェニルアミンを使用したこと以外は、合成例7と同様に反応を行った。
【0157】
実施例1において調製した本発明に係る芳香族アミン誘導体の構造を以下に示す。
【0158】
【化27】
(実施例1:芳香族アミン誘導体(RH‐1)の調製)
【0159】
中間体8(2.9g,10.0mmol)、中間体2(3.9g,10.0mmol),PD(PPH
3)
4(0.21g,0.2mmol)、トルエン(30mL)及び水酸化カリウムの2M水溶液(15mL)を、アルゴン雰囲気下で混合した。混合物を、7時間の間、80℃で撹拌した。固形物を沈殿させるために、反応液に水を添加した。固形物を、メタノールを用いて洗浄した。得られた固形物を濾過し、加熱したトルエンを用いて洗浄し、乾燥後、3.8gの淡黄色粉末を得た。該淡黄色粉末を、FD質量分析によって、芳香族アミン誘導体(H1)として同定した。
【0160】
次に、本発明について、実施例及び比較例を参照して、さらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、例の記載によって限定されるものではない。
【0161】
(有機EL素子の製造)
(実施例1)
【0162】
インジウムスズ酸化物(ITO)の透明電極(ジオマテック株式会社製)を有するガラス基板(サイズ:25mm×75mm×1.1mm)を、5分間、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、30分間、UV(紫外線)/オゾン洗浄した。
【0163】
透明電極を有するガラス基板を洗浄した後、該ガラス基板を、真空蒸着装置の基板ホルダ上に実装した。透明電極線が提供されるガラス基板の表面を覆うために、50nmの厚みで、HT‐1を蒸着することによって、正孔輸送層をまず形成した。
【0164】
赤色燐光ホストとしてRH-1及び赤色燐光ドーパントとしてRD-1を、40nmの厚みの正孔輸送層上に共堆積させることによって、赤色燐光発光層を得た。RD-1の濃度は、8重量%であった。
【0165】
次に、陰極を得るために、40nm厚のET-1層、1nm厚のフッ化リチウム(LiF)層及び80nm厚の金属アルミニウム層を、順に形成した。LiF層は、電子注入可能電極であり、1Å(オングストローム)/秒の速度で形成した。HT‐1及びET‐1の構造を以下に示す。
【0166】
【化28】
(比較例1)
【0167】
赤色燐光ホストとしてRH‐1の代わりにCBP(4,4’‐ビス(N‐カルバゾリル)ビフェニル)を、赤色燐光ドーパントとしてRD-1の代わりにIr(piq)
3を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を調製した。
(比較例2)
【0168】
赤色燐光ドーパントとしてRD-1の代わりにIr(piq)
3を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を調製した。
(比較例3)
【0169】
赤色燐光ホストとしてRH‐1の代わりにCBPを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を調製した。
【0170】
実施例1及び比較例1〜3に係る素子の構造を、表1に示す。
【0171】
【表1】
(有機EL素子の評価)
【0172】
実施例1及び比較例1〜3において製造された有機EL素子を、それぞれ、1mA/cm
2の直流電流によって発光させ、発光色度、発光(L)及び電圧を測定した。測定値をに基づいて、電流効率(L/J)及び発光効率η(lm/W)を得た。結果を表2に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
表2から明らかなように、実施例1に係る有機EL素子は、比較例1〜3に係る有機EL素子に比し、優れた発光効率及び寿命を示した。