特許第6014270号(P6014270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6014270-軟性金属積層体およびその製造方法 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014270
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】軟性金属積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/088 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   B32B15/088
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-542986(P2015-542986)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公表番号】特表2015-534920(P2015-534920A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】KR2014009200
(87)【国際公開番号】WO2015047028
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0116766
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0130849
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、シ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、セ−ミョン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−146243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む多孔性ポリイミド樹脂層を含み、
前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布し、
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、前記微細気孔0.1〜5体積%を含むことを特徴とする、軟性金属積層体。
【請求項2】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、1.2g/cm2〜1.9g/cm2の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載の軟性金属積層体。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂粒子は、0.05〜9.5μmの平均粒径(D50)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の軟性金属積層体。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂は、1,000〜500,000の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項5】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、0.1μm〜200μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項6】
前記フッ素系樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)からなる群より選択された1種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項7】
前記多孔性ポリイミド樹脂層が5GHzで2.7以下の誘電率を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項8】
前記多孔性ポリイミド樹脂層を1以上含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項9】
0.1μm〜200μmの厚さを有する熱可塑性ポリイミド樹脂層を1以上さらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項10】
銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含む金属薄膜を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の軟性金属積層体。
【請求項11】
前記金属薄膜は、0.1μm〜50μmの厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の軟性金属積層体。
【請求項12】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜が積層されることを特徴とする、請求項10または11に記載の軟性金属積層体。
【請求項13】
ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせて熱硬化する多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階と、
前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階とを含むことを特徴とする、軟性金属積層体の製造方法。
【請求項14】
前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記樹脂組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温する段階を含むことを特徴とする、請求項13に記載の軟性金属積層体の製造方法。
【請求項15】
前記昇温は、340℃〜370℃で完了することを特徴とする、請求項14に記載の軟性金属積層体の製造方法。
【請求項16】
前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記熱硬化前に、前記樹脂組成物を基材上に0.1μm〜200μm塗布する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の軟性金属積層体の製造方法。
【請求項17】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階は、
250℃〜450℃の温度で、500Kgf〜3000Kgfの圧力を加えて、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含む金属薄膜を積層する段階を含むことを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一項に記載の軟性金属積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性金属積層体およびその製造方法に関するものであって、より詳細には、低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度を有する軟性金属積層体および前記軟性金属積層体を提供可能な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化と高速化および多様な機能が結合する傾向に合わせて、電子機器の内部での信号伝達速度または電子機器の外部との信号伝達速度が速くなっている。これに伴い、既存の絶縁体より誘電率と誘電損失係数がより低い絶縁体を用いた印刷回路基板が必要になっている。
【0003】
このような傾向を反映するように、最近、軟性印刷回路基板においても、従来のポリイミドよりも誘電率が低くかつ吸湿による影響をより受けない絶縁体の液晶ポリマー(LCP、Liquid Crystalline Polymer)を適用しようとする動きが生じている。しかし、LCPを適用しても、実質的にLCPの誘電率(Dk=2.9)がポリイミド(Dk=3.2)と大きく差がないことから、適用による改善の程度がわずかで、また、LCPの耐熱性がはんだ付け工程で問題とされる程度に低く、LCPが熱可塑性を有するため、レーザを用いたVia hole加工において、既存のポリイミドを用いていたPCB製造工程との互換性に劣る問題がある。
【0004】
したがって、これに対する解決策として、既存の軟性回路基板の絶縁体として用いられているポリイミドの誘電率を低下させる努力が行われてきた。例えば、米国登録特許第4816516号によれば、ポリイミドとフッ素系高分子とを混合してモールド成形品を作る内容を示した。しかし、前記特許は、低誘電率が必要な電子機器用製品に関するものではなく、モールド成形品に関するもので、実際に熱膨張率が大きくガラス転移温度が低いポリイミドを使用した。また、印刷回路基板に使用するためには、薄い薄膜形態にポリイミド樹脂を加工しなければならないが、前記米国特許には、薄い薄膜形態で製造された銅箔積層板に関する内容が示されていない。
【0005】
また、米国登録特許第7026032号によれば、フッ素系高分子の微細粉末をポリイミドに分散させて、製造される製品の誘電率を低下させる方法が開示されている。前記米国特許には、フッ素系高分子微細粉末が絶縁体の内部コアに比べて外部表面により多く分布する内容が示されている。しかし、前記米国特許に記載されたように、絶縁体の最外層にフッ素系高分子の含有量が多いため、外部表面のフッ素系高分子によって水分透過および吸収が低くなって全体的な水分吸収率を低下させることができるが、既存のポリイミドからなる軟性銅箔積層板が有していなかった問題が発生することがある。例えば、前記米国特許に記載されたポリイミド樹脂は、カバーレイとの接着力やプリプレグとの接着力が弱くなり、ACFとの接着力も低下することがあり、前記米国特許に記載されたポリイミド樹脂の熱膨張係数(CTE)は、軟性銅箔積層板に適用されるには大きすぎるだけでなく、前記ポリイミド樹脂の表面にはフッ素樹脂が外部に過剰存在するため、PCB製造工程中の収納工程に適用される380℃前後の温度でフッ素樹脂が溶けることがあり、銅箔回路が絶縁体から剥離される危険がある。
【0006】
これによって、低誘電率の印刷回路基板を作るためには、低い誘電率を示しながらも、低い熱膨張係数の特性を有しており、弾性係数が高いだけでなく、水分吸収率が低い材料の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国登録特許第4816516号
【特許文献2】米国登録特許第7026032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度を有する軟性金属積層体を提供する。
【0009】
また、本発明は、低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度を有する軟性金属積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書には、ポリイミド樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む多孔性ポリイミド樹脂層を含み、前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する、軟性金属積層体が提供される。
【0011】
本明細書には、ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせて熱硬化する多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階と、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階とを含む、軟性金属積層体の製造方法が提供される。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態に係る軟性金属積層体および軟性金属積層体の製造方法に関してより詳細に説明する。
【0013】
発明の一実施形態によれば、ポリイミド樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む多孔性ポリイミド樹脂層を含み、前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する、軟性金属積層体が提供できる。
【0014】
従来は、軟性金属積層体に適用されるポリイミドなどの高分子樹脂の誘電率を低下させるために、フッ素系高分子樹脂を添加する方法が知られているが、代表的なフッ素系樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、およびパーフルオロアルコキシ(PFA)の熱膨張係数がそれぞれ135ppm、150ppm、および230ppmに達していて、通常のポリイミドが有する熱膨張係数の10〜30ppmに比べて非常に大きく、ポリイミドの誘電率を十分に低下させるために、前記フッ素樹脂を10〜60wt%程度入れなければならないため、全体的な熱膨張係数が大きくなるしかないという限界があった。
【0015】
これに対し、前記一実施形態の軟性金属積層体は、所定の大きさの気孔が多数分布する多孔性ポリイミド樹脂層を含むことにより、誘電率を大きく低下させながらも、高い弾性度を確保することができ、熱膨張係数を軟性金属積層体としての使用に最適化された範囲に容易に調整することができる。
【0016】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程では、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂とを混合し、高温で熱処理される過程を経ることができるが、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂との間の熱膨張係数の差によって、最終製造される結果物が、所定大きさの気孔が多数分布する多孔性ポリイミド樹脂層または多孔性高分子樹脂フィルムになる。
【0017】
具体的には、前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程で、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせることにより、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0018】
より具体的には、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温して、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0019】
前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布することにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、1.2g/cm2〜1.9g/cm2、または1.3g/cm2〜1.5g/cm2の密度を有することができる。
【0020】
前記多孔性ポリイミド樹脂層中の前記微細気孔は、0.1〜5体積%、または0.2〜1体積%を占めることができる。
【0021】
前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれる前記フッ素系樹脂粒子は、0.05〜9.5μm、または1.0〜5.0μmの平均粒径(D50)を有することができる。前記フッ素系樹脂粒子が前記平均粒径を有することにより、前記熱硬化または化学的硬化過程で合成されるポリイミド樹脂と前記フッ素系樹脂粒子との間の熱膨張程度の差および硬化時の収縮程度の差によって、前記形成されるポリイミド樹脂層は、微細な気孔が均一に分布する多孔性樹脂層に形成可能である。
【0022】
具体的には、前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径(D50)は、レーザ粒度分析器(Laser Particle Size Analyzer)によって測定されたD50値であってよく、前記フッ素系樹脂粒子の粒度分布が正規分布をなすため、粒度分布上において最も大きい値を基準として50%累積大きさ(正規分布グラフの下面積の大きさ)の値のD50を、前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径に設定することができる。
【0023】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂30〜95重量%;および前記ポリイミド樹脂を含む基材層に分散したフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含み、前記ポリイミド樹脂を含む基材層は、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する多孔性ポリイミド樹脂層であってよい。
【0024】
前記フッ素系樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)からなる群より選択された1種以上を含むフッ素系高分子を含むことができる。
【0025】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれるポリイミド樹脂の具体的な特徴が限定されるのではなく、軟性金属積層体に使用可能と知られたポリイミド樹脂を大きな制限なく使用可能である。
【0026】
例えば、前記ポリイミド樹脂は、1,000〜500,000、または10,000〜300,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、軟性金属積層体などへの適用時に要求される機械的物性などを十分に確保することができない。また、前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、前記一実施形態のポリイミド樹脂フィルムの弾性度や機械的物性が低下することがある。
【0027】
具体的には、前記ポリイミド樹脂は、下記化学式1の繰り返し単位を含むことができる。
【0028】
【化1】
【0029】
前記化学式1において、Y1は4価の芳香族有機官能基であり、Xは2価の芳香族有機官能基であり、前記nは1〜300の整数である。
【0030】
前記Y1は下記化学式21〜27からなる群より選択された4価の官能基を含むことができる。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
前記化学式22において、Y1は単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0034】
【化4】
【0035】
前記化学式23において、Y2およびY3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0036】
【化5】
【0037】
前記化学式24において、Y4、Y5およびY6は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
前記化学式21〜27において、「*」は結合点(bonding point)を意味する。
【0042】
そして、前記多孔性ポリイミド樹脂層がより低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度と共に最適化された熱膨張係数を確保するために、前記化学式1のY1が下記化学式28〜30からなる群より選択された4価の官能基であることが好ましい。前記Y1は前記化学式1の繰り返し単位それぞれにおいて同一または異なっていてもよい。
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
前記化学式28〜30において、「*」は結合点(bonding point)を意味する。
【0047】
一方、前記化学式1において、前記Xは下記化学式31〜34からなる群より選択された2価の官能基であってよい。
【0048】
【化12】
【0049】
前記化学式31において、R1は水素、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH2CH3、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、または−CF2CF2CF2CF3であってよい。
【0050】
【化13】
【0051】
前記化学式32において、L1は単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、−OCH2−C(CH32−CH2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R1およびR2は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH2CH3、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、または−CF2CF2CF2CF3であってよい。
【0052】
【化14】
【0053】
前記化学式33において、L2およびL3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、−OCH2−C(CH32−CH2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R1、R2およびR3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH2CH3、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、または−CF2CF2CF2CF3であってよい。
【0054】
【化15】
【0055】
前記化学式34において、L4、L5およびL6は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−CONH−、−COO−、−(CH2n1−、−O(CH2n2O−、−OCH2−C(CH32−CH2O−、または−OCO(CH2n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH2CH3、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、または−CF2CF2CF2CF3であってよい。
【0056】
特に、前記化学式1のXが下記化学式35の2価の官能基の場合、前記多孔性ポリイミド樹脂層がより低い誘電率および低い水分吸収率を有することができ、また、高い弾性度と共に最適化された熱膨張係数を確保することができる。前記Xは前記化学式1の繰り返し単位それぞれにおいて同一または異なっていてもよい。
【0057】
【化16】
【0058】
前記化学式35において、R1およびR2は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH2CH3、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、または−CF2CF2CF2CF3であってよい。
【0059】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、前記化学式1の繰り返し単位を含むポリイミド樹脂30〜95重量%、または40〜90重量%;および残量のフッ素系樹脂粒子を含むことができる。前記フッ素系樹脂粒子の含有量が小さすぎると、最終製造される多孔性ポリイミド樹脂層が十分に低い誘電率または水分吸収率を確保できないことがある。また、前記フッ素系樹脂粒子の含有量が大きすぎると、前記軟性金属積層体の機械的物性が低下して簡単に破れたりつぶれるなどの問題を有することがあり、前記軟性金属積層体に含まれる多孔性ポリイミド樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。
【0060】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、0.1μm〜100μm、または1μm〜50μmの厚さを有することができる。
【0061】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、5GHzでの乾燥状態において2.7以下の誘電率(Dk)、または2.2〜2.7の誘電率(Dk)、または2.3〜2.6の誘電率(Dk)を示すことができる。通常のポリイミド樹脂は、5GHzでの乾燥状態において3.0以上の誘電率を有することが一般的であったのに対し、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、相対的に低い誘電率を有することができる。
【0062】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、100℃〜200℃で1ppm〜28ppmの熱膨張係数を有することができる。
【0063】
通常、軟性金属積層体に使用される金属箔である銅箔の熱膨張係数が約18ppm前後であるため、前記一実施形態のポリイミド樹脂フィルムの熱膨張係数を上述した範囲にしてはじめて、金属箔との熱膨張係数の差から現れる撓み現象を最小化することができ、印刷回路基板をなすその他資材との伸縮の差が発生する現象を最小化することができる。
【0064】
前記一実施形態の軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムと金属薄膜とを含むことができ、前記金属薄膜は、銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含むことができる。
【0065】
そして、前記金属薄膜は、前記ポリイミド樹脂フィルムの少なくとも一面上に積層されてもよい。
【0066】
具体的には、前記軟性金属積層体は、前記金属薄膜を1つ含んでもよく、前記軟性金属積層体は、互いに対向する前記金属薄膜2つを含んでもよく、この場合、前記ポリイミド樹脂フィルムは、前記互いに対向する金属薄膜2つの間に位置してもよい。
【0067】
前記金属薄膜表面の十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜2.5μmであってよい。前記金属薄膜表面の十点平均粗さが小さすぎると、前記高分子樹脂層との接着力が低下することがあり、前記金属薄膜表面の十点平均粗さが大きすぎると、表面粗さが増加して、高周波領域における伝送損失が大きくなり得る。
【0068】
前記金属薄膜は、0.1μm〜50μmの厚さを有することができる。
【0069】
上述した軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムの少なくとも一面に形成されたポリイミド樹脂層をさらに含むことができる。
【0070】
具体的には、前記軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムの両面に結合された第2および第3のポリイミド樹脂フィルムまたはポリイミド樹脂層をさらに含むことができる。前記第2および第3のポリイミド樹脂フィルムは、それぞれ上述したポリイミド樹脂と同一または異なる組成を有することができる。
【0071】
また、前記第2および第3のポリイミド樹脂フィルムは、前記ポリイミド樹脂フィルムと同一または異なる厚さを有することができ、0.1μm〜100μm、または1μm〜50μmの範囲内の厚さを有することができる。
【0072】
一方、発明の他の実施形態によれば、ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせて熱硬化する多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階と、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階とを含む、軟性金属積層体の製造方法が提供できる。
【0073】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程で、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせることにより、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0074】
具体的には、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温して、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。つまり、前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記樹脂組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温する段階を含むことができる。
【0075】
前記樹脂組成物の熱処理または昇温は、340℃〜370℃、または350℃〜360℃の温度で完了することができる。
【0076】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度以下、または300℃以下での昇温速度が高すぎると、前記多孔性ポリイミド樹脂層内に気泡が発生したり、前記軟性金属積層体に含まれる個別層の間の剥離が発生することがあり、前記多孔性ポリイミド樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。
【0077】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度超過、または300℃超過の温度範囲での昇温速度が低すぎると、前記形成されるポリイミド樹脂層の内部に気孔の形成が容易でなくて十分な多孔度を確保しにくく、前記形成されるポリイミド樹脂層の密度や誘電率が十分に低下しにくいことがある。
【0078】
また、前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度超過、または300℃超過の温度範囲での昇温速度が高すぎると、前記多孔性ポリイミド樹脂層内に気泡が発生したり、前記多孔性ポリイミド樹脂層が軟性金属積層体の他の薄膜または層、例えば、金属薄膜などと強固に結合または接着されにくいことがある。
【0079】
前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布することにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、1.2g/cm2〜1.9g/cm2、または1.3g/cm2〜1.5g/cm2の密度を有することができる。
【0080】
前記多孔性ポリイミド樹脂層中の前記微細気孔は、0.1〜5体積%、または0.2〜1体積%を占めることができる。
【0081】
前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれる前記フッ素系樹脂粒子は、0.05〜9.5μm、または1.0〜5.0μmの平均粒径(D50)を有することができる。
【0082】
前記ポリアミック酸樹脂およびフッ素系樹脂粒子に関するより具体的な内容は、前記一実施形態の軟性金属積層体に関して上述した内容を含む。また、前記ポリアミック酸樹脂から製造されるポリイミド樹脂に関する内容も、前記一実施形態の軟性金属積層体に関して上述した内容を含む。
【0083】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物は、分散剤をさらに含むことができ、前記分散剤の具体例としては、前記分散剤は、ポリエステル系高分子、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、およびポリエステル/ポリアミン重合体からなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0084】
従来は、ポリアミック酸またはポリイミドにフッ素系樹脂を分散させるために、フッ素系分散剤やフッ素系界面活性剤を使用する方法が知られているが、このような従来の方法によれば、製造される高分子樹脂層の誘電率はやや低下させることができるが、前記フッ素系分散剤やフッ素系界面活性剤の使用によって製造される高分子樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。これに対し、前記多孔性ポリイミド樹脂層を製造するのに使用される樹脂組成物が分散剤を含むことにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、低い誘電率を有しながらも、過度に高い熱膨張係数を有することなく、金属積層体または印刷回路基板の製造過程においても、前記ポリイミド樹脂に含まれるフッ素系樹脂が溶けてしまうなどの現象を防止することができる。
【0085】
前記樹脂組成物は、前記フッ素系樹脂粒子全体100重量部対比、前記分散剤0.1重量部〜25重量部、または0.5重量部〜10重量部を含むことができる。
【0086】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記熱硬化前に、前記樹脂組成物を基材上に0.1μm〜200μm塗布する段階をさらに含むことができる。
【0087】
また、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階は、250℃〜450℃の温度で、500Kgf〜3000Kgfの圧力を加えて、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含む金属薄膜を積層する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0088】
本発明によれば、低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度と共に最適化された熱膨張係数を確保可能な軟性金属積層体と前記軟性金属積層体を提供する製造方法が提供できる。
【0089】
これによって、本発明は、最近、ノートパソコン、コンピュータ、携帯電話などの機器がデータ伝送速度の増加からもたらされるデータの損失率の増加や印刷回路基板の厚膜化、印刷回路基板における回路の狭幅化に対する解決策として、低誘電率を有しながらも、既存のポリイミド絶縁体が有する高耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などの特性を有している低誘電率のポリイミド樹脂フィルムを提供する。
【0090】
また、前記低誘電率のポリイミドを用いて低誘電率の銅箔積層板を提供する。これによって、インピーダンスをマッチングしながらも、印刷回路基板をより薄くすることにより、携帯用電子機器をより薄くすることができ、印刷回路基板の線幅を広くすることができるため、PCBメーカーの不良率を画期的に低減可能で、製造費用の低減に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】実施例1におけるポリイミド樹脂の断面SEM写真を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0092】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0093】
[製造例:ポリアミック酸溶液の製造]
製造例1:フッ素系樹脂を含むポリアミック酸溶液の製造(P1)
1Lのポリエチレン容器(PE bottle)に窒素を充填し、ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamide、DMAc)765g、ポリテトラフルオロエチレンマイクロ粉末(PTFE micro powder、粒子サイズ:約1.0〜5.0μm)219g、および直径2mmのビーズ(bead)765gを入れて、高速ボールミリング(ball milling)機器で撹拌した。
【0094】
500mLの丸底フラスコに、前記PTFEマイクロ粉末が分散した溶液16g、ジメチルアセトアミド107g、ピロメリット酸無水物(Pyromellitic Dianhydride)13g、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル20gを入れて、50℃で10時間窒素を流しながら、撹拌機を用いて撹拌しながら反応させて、粘度25,000cps程度のポリアミック酸溶液(P1)を得た。
【0095】
製造例2:フッ素系樹脂を含むポリアミック酸溶液の製造(P2)
1Lのポリエチレン容器(PE bottle)に窒素を充填し、ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamide、DMAc)765g、ポリテトラフルオロエチレンマイクロ粉末(PTFE micro powder、粒子サイズ:約1.0〜5.0μm)219g、および直径2mmのビーズ(bead)765gを入れて、高速ボールミリング(ball milling)機器で撹拌した。
【0096】
500mLの丸底フラスコに、前記PTFEマイクロ粉末が分散した溶液73g、ジメチルアセトアミド115g、ピロメリット酸無水物11.609g、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル17.391gを入れて、50℃で10時間窒素を流しながら、撹拌機を用いて撹拌しながら反応させて、粘度100,000cps程度のポリアミック酸溶液(P2)を得た。
【0097】
製造例3:フッ素系樹脂を含むポリアミック酸溶液の製造(P3)
500mLの丸底フラスコに、ジメチルアセトアミド107g、ピロメリット酸無水物(Pyromellitic Dianhydride)13g、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル20gを入れて、50℃で10時間窒素を流しながら、撹拌機を用いて撹拌しながら反応させて、粘度25,000cps程度のポリアミック酸溶液(P3)を得た。
【0098】
[実施例1〜2および比較例1〜2:軟性金属積層体用ポリイミド樹脂フィルムおよび軟性金属積層体の製造]
実施例1〜2
(1)ポリイミド樹脂フィルムの製造
前記製造例1〜2でそれぞれ製造したポリアミック酸溶液を、最終厚さが25umとなるように、銅箔(厚さ:12μm)のMatte面にコーティングした後、80℃で10分間乾燥した。前記乾燥製品を窒素オーブンで常温から昇温を開始して、300℃以下の温度範囲で5℃/分の速度で昇温し、300℃超過〜350℃の温度範囲では1℃/分の速度で硬化を進行させた。前記硬化が完了した後、前記銅箔をエッチングして、25umの厚さのポリイミド樹脂フィルムを製造した。
【0099】
(2)軟性金属積層体の製造
380℃の温度で、前記実施例1および実施例2でそれぞれ得られたポリイミド樹脂フィルムと12μmの厚さの銅箔に1700Kgfの圧力を加えてラミネーションすることにより、金属積層体を製造した。
【0100】
比較例1
(1)ポリイミド樹脂フィルムの製造
前記製造例1で製造されたポリアミック酸溶液の代わりに、前記製造例3で得られたポリアミック酸溶液を用いた点を除いて、前記実施例1と同様の方法で25umの厚さのポリイミド樹脂フィルムを製造した。
【0101】
(2)軟性金属積層体の製造
380℃の温度で、前記得られたポリイミド樹脂フィルムと12μmの厚さの銅箔に1700Kgfの圧力を加えてラミネーションすることにより、金属積層体を製造した。
【0102】
比較例2
(1)ポリイミド樹脂フィルムの製造
前記製造例2のポリアミック酸溶液を、最終厚さが25umとなるように、銅箔(厚さ:12μm)のMatte面にコーティングした後、80℃で10分間乾燥した。前記乾燥製品を窒素オーブンで常温から昇温を開始して、350℃で30分間硬化を進行させた。
【0103】
前記硬化が完了した後、前記銅箔をエッチングして、25umの厚さのポリイミド樹脂フィルムを製造した。
【0104】
(2)軟性金属積層体の製造
380℃の温度で、前記得られたポリイミド樹脂フィルムと12μmの厚さの銅箔に1700Kgfの圧力を加えてラミネーションすることにより、金属積層体を製造した。
【0105】
[実験例]
1.実験例1:軟性金属積層体の断面の観察
前記実施例で得られた銅箔積層板の断面をSEM写真を通して確認した。下記図1に示されているように、前記実施例1で得られたポリイミド樹脂層には0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布することが確認された。
【0106】
2.実験例2:軟性金属積層体の物性の測定
前記実施例および比較例で得られた銅箔積層板に対して誘電定数、CTEおよび吸水率を次のように測定して、その結果を下記表1に記載した。
【0107】
(1)誘電定数の測定方法
実施例および比較例で得られたポリイミド樹脂フィルムを150℃で30分間乾燥し、それぞれのポリイミド樹脂フィルムの誘電率を、SPDR(split post dielectric resonance)方法により、25℃および50%RHの条件で、Agiletn E5071B ENA装置を用いて、Resonatorを用いて測定した。
【0108】
(2)線熱膨張係数(CTE)の測定方法
実施例および比較例で得られたポリイミド樹脂フィルムの線熱膨張係数を、IPC TM−650 2.4.24.3の基準に基づいて、100℃〜200℃の測定条件で、Mettler社のTMA/SDTA840機器を用いて測定した。
【0109】
(3)吸水率の測定方法
実施例および比較例で得られたポリイミド樹脂フィルムの吸水率を、IPC TM−650 2.6.2Cの基準に基づいて、23℃の蒸留水に24時間浸漬して、前記浸漬前後の測定対象物の質量を測定して吸水率を算定した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記表1から確認されるように、実施例1および2で得られた多孔性ポリイミド樹脂層には0.5〜2μmの直径を有する微細気孔が分布しており、前記ポリイミド樹脂層の密度も1.30〜1.40g/cm2であることが確認された。また、実施例1および2で製造される多孔性ポリイミド樹脂層は、2.6以下の低い誘電定数および1.5%以下の低い吸水率を有しながらも、12〜22ppmの線膨脹係数を有することが確認された。
【0112】
これに対し、比較例1および2のポリイミド樹脂層には微細気孔が形成されておらず、比較例1の場合、相対的に高い誘電定数(2.9)、低い線膨脹係数および高い吸水率を示し、比較例2の場合、相対的には高い密度を有し、同一のPTFE含有量を有する実施例2対比、相対的に高い誘電定数を有することが確認された。
図1