【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書には、ポリイミド樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む多孔性ポリイミド樹脂層を含み、前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する、軟性金属積層体が提供される。
【0011】
本明細書には、ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせて熱硬化する多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階と、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階とを含む、軟性金属積層体の製造方法が提供される。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態に係る軟性金属積層体および軟性金属積層体の製造方法に関してより詳細に説明する。
【0013】
発明の一実施形態によれば、ポリイミド樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む多孔性ポリイミド樹脂層を含み、前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する、軟性金属積層体が提供できる。
【0014】
従来は、軟性金属積層体に適用されるポリイミドなどの高分子樹脂の誘電率を低下させるために、フッ素系高分子樹脂を添加する方法が知られているが、代表的なフッ素系樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、およびパーフルオロアルコキシ(PFA)の熱膨張係数がそれぞれ135ppm、150ppm、および230ppmに達していて、通常のポリイミドが有する熱膨張係数の10〜30ppmに比べて非常に大きく、ポリイミドの誘電率を十分に低下させるために、前記フッ素樹脂を10〜60wt%程度入れなければならないため、全体的な熱膨張係数が大きくなるしかないという限界があった。
【0015】
これに対し、前記一実施形態の軟性金属積層体は、所定の大きさの気孔が多数分布する多孔性ポリイミド樹脂層を含むことにより、誘電率を大きく低下させながらも、高い弾性度を確保することができ、熱膨張係数を軟性金属積層体としての使用に最適化された範囲に容易に調整することができる。
【0016】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程では、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂とを混合し、高温で熱処理される過程を経ることができるが、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂との間の熱膨張係数の差によって、最終製造される結果物が、所定大きさの気孔が多数分布する多孔性ポリイミド樹脂層または多孔性高分子樹脂フィルムになる。
【0017】
具体的には、前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程で、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせることにより、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0018】
より具体的には、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温して、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0019】
前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布することにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、1.2g/cm
2〜1.9g/cm
2、または1.3g/cm
2〜1.5g/cm
2の密度を有することができる。
【0020】
前記多孔性ポリイミド樹脂層中の前記微細気孔は、0.1〜5体積%、または0.2〜1体積%を占めることができる。
【0021】
前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれる前記フッ素系樹脂粒子は、0.05〜9.5μm、または1.0〜5.0μmの平均粒径(D50)を有することができる。前記フッ素系樹脂粒子が前記平均粒径を有することにより、前記熱硬化または化学的硬化過程で合成されるポリイミド樹脂と前記フッ素系樹脂粒子との間の熱膨張程度の差および硬化時の収縮程度の差によって、前記形成されるポリイミド樹脂層は、微細な気孔が均一に分布する多孔性樹脂層に形成可能である。
【0022】
具体的には、前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径(D50)は、レーザ粒度分析器(Laser Particle Size Analyzer)によって測定されたD50値であってよく、前記フッ素系樹脂粒子の粒度分布が正規分布をなすため、粒度分布上において最も大きい値を基準として50%累積大きさ(正規分布グラフの下面積の大きさ)の値のD50を、前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径に設定することができる。
【0023】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂30〜95重量%;および前記ポリイミド樹脂を含む基材層に分散したフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含み、前記ポリイミド樹脂を含む基材層は、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布する多孔性ポリイミド樹脂層であってよい。
【0024】
前記フッ素系樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)からなる群より選択された1種以上を含むフッ素系高分子を含むことができる。
【0025】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれるポリイミド樹脂の具体的な特徴が限定されるのではなく、軟性金属積層体に使用可能と知られたポリイミド樹脂を大きな制限なく使用可能である。
【0026】
例えば、前記ポリイミド樹脂は、1,000〜500,000、または10,000〜300,000の重量平均分子量を有することができる。前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、軟性金属積層体などへの適用時に要求される機械的物性などを十分に確保することができない。また、前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、前記一実施形態のポリイミド樹脂フィルムの弾性度や機械的物性が低下することがある。
【0027】
具体的には、前記ポリイミド樹脂は、下記化学式1の繰り返し単位を含むことができる。
【0028】
【化1】
【0029】
前記化学式1において、Y
1は4価の芳香族有機官能基であり、Xは2価の芳香族有機官能基であり、前記nは1〜300の整数である。
【0030】
前記Y
1は下記化学式21〜27からなる群より選択された4価の官能基を含むことができる。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
前記化学式22において、Y
1は単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0034】
【化4】
【0035】
前記化学式23において、Y
2およびY
3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0036】
【化5】
【0037】
前記化学式24において、Y
4、Y
5およびY
6は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数である。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
前記化学式21〜27において、「*」は結合点(bonding point)を意味する。
【0042】
そして、前記多孔性ポリイミド樹脂層がより低い誘電率および低い水分吸収率を有しながらも、高い弾性度と共に最適化された熱膨張係数を確保するために、前記化学式1のY
1が下記化学式28〜30からなる群より選択された4価の官能基であることが好ましい。前記Y
1は前記化学式1の繰り返し単位それぞれにおいて同一または異なっていてもよい。
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
前記化学式28〜30において、「*」は結合点(bonding point)を意味する。
【0047】
一方、前記化学式1において、前記Xは下記化学式31〜34からなる群より選択された2価の官能基であってよい。
【0048】
【化12】
【0049】
前記化学式31において、R
1は水素、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
2CF
3であってよい。
【0050】
【化13】
【0051】
前記化学式32において、L
1は単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R
1およびR
2は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
2CF
3であってよい。
【0052】
【化14】
【0053】
前記化学式33において、L
2およびL
3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R
1、R
2およびR
3は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
2CF
3であってよい。
【0054】
【化15】
【0055】
前記化学式34において、L
4、L
5およびL
6は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
n1−、−O(CH
2)
n2O−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−、または−OCO(CH
2)
n3OCO−であり、前記n1、n2およびn3はそれぞれ1〜10の整数であり、R
1、R
2、R
3およびR
4は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
2CF
3であってよい。
【0056】
特に、前記化学式1のXが下記化学式35の2価の官能基の場合、前記多孔性ポリイミド樹脂層がより低い誘電率および低い水分吸収率を有することができ、また、高い弾性度と共に最適化された熱膨張係数を確保することができる。前記Xは前記化学式1の繰り返し単位それぞれにおいて同一または異なっていてもよい。
【0057】
【化16】
【0058】
前記化学式35において、R
1およびR
2は互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
2CF
3であってよい。
【0059】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、前記化学式1の繰り返し単位を含むポリイミド樹脂30〜95重量%、または40〜90重量%;および残量のフッ素系樹脂粒子を含むことができる。前記フッ素系樹脂粒子の含有量が小さすぎると、最終製造される多孔性ポリイミド樹脂層が十分に低い誘電率または水分吸収率を確保できないことがある。また、前記フッ素系樹脂粒子の含有量が大きすぎると、前記軟性金属積層体の機械的物性が低下して簡単に破れたりつぶれるなどの問題を有することがあり、前記軟性金属積層体に含まれる多孔性ポリイミド樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。
【0060】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、0.1μm〜100μm、または1μm〜50μmの厚さを有することができる。
【0061】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、5GHzでの乾燥状態において2.7以下の誘電率(Dk)、または2.2〜2.7の誘電率(Dk)、または2.3〜2.6の誘電率(Dk)を示すことができる。通常のポリイミド樹脂は、5GHzでの乾燥状態において3.0以上の誘電率を有することが一般的であったのに対し、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、相対的に低い誘電率を有することができる。
【0062】
前記多孔性ポリイミド樹脂層は、100℃〜200℃で1ppm〜28ppmの熱膨張係数を有することができる。
【0063】
通常、軟性金属積層体に使用される金属箔である銅箔の熱膨張係数が約18ppm前後であるため、前記一実施形態のポリイミド樹脂フィルムの熱膨張係数を上述した範囲にしてはじめて、金属箔との熱膨張係数の差から現れる撓み現象を最小化することができ、印刷回路基板をなすその他資材との伸縮の差が発生する現象を最小化することができる。
【0064】
前記一実施形態の軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムと金属薄膜とを含むことができ、前記金属薄膜は、銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含むことができる。
【0065】
そして、前記金属薄膜は、前記ポリイミド樹脂フィルムの少なくとも一面上に積層されてもよい。
【0066】
具体的には、前記軟性金属積層体は、前記金属薄膜を1つ含んでもよく、前記軟性金属積層体は、互いに対向する前記金属薄膜2つを含んでもよく、この場合、前記ポリイミド樹脂フィルムは、前記互いに対向する金属薄膜2つの間に位置してもよい。
【0067】
前記金属薄膜表面の十点平均粗さ(Rz)が0.5μm〜2.5μmであってよい。前記金属薄膜表面の十点平均粗さが小さすぎると、前記高分子樹脂層との接着力が低下することがあり、前記金属薄膜表面の十点平均粗さが大きすぎると、表面粗さが増加して、高周波領域における伝送損失が大きくなり得る。
【0068】
前記金属薄膜は、0.1μm〜50μmの厚さを有することができる。
【0069】
上述した軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムの少なくとも一面に形成されたポリイミド樹脂層をさらに含むことができる。
【0070】
具体的には、前記軟性金属積層体は、前記ポリイミド樹脂フィルムの両面に結合された第2および第3のポリイミド樹脂フィルムまたはポリイミド樹脂層をさらに含むことができる。前記第2および第3のポリイミド樹脂フィルムは、それぞれ上述したポリイミド樹脂と同一または異なる組成を有することができる。
【0071】
また、前記第2および第3のポリイミド樹脂フィルムは、前記ポリイミド樹脂フィルムと同一または異なる厚さを有することができ、0.1μm〜100μm、または1μm〜50μmの範囲内の厚さを有することができる。
【0072】
一方、発明の他の実施形態によれば、ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせて熱硬化する多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階と、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階とを含む、軟性金属積層体の製造方法が提供できる。
【0073】
前記多孔性ポリイミド樹脂層の製造過程で、ポリイミド樹脂またはその前駆体(例えば、ポリアミック酸など)とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を、280〜320℃の温度範囲の前後で昇温速度を異ならせることにより、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。
【0074】
具体的には、前記ポリイミド樹脂またはその前駆体とフッ素系樹脂粒子とを含む樹脂組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温して、0.05μm〜20μm、または0.1μm〜5μmの直径を有する微細気孔が前記多孔性ポリイミド樹脂層内に形成可能である。つまり、前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記樹脂組成物を、300℃以下の温度範囲で3℃/分〜10℃/分の速度で昇温し、300℃超過の温度範囲では0.2℃/分〜2℃/分の速度で昇温する段階を含むことができる。
【0075】
前記樹脂組成物の熱処理または昇温は、340℃〜370℃、または350℃〜360℃の温度で完了することができる。
【0076】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度以下、または300℃以下での昇温速度が高すぎると、前記多孔性ポリイミド樹脂層内に気泡が発生したり、前記軟性金属積層体に含まれる個別層の間の剥離が発生することがあり、前記多孔性ポリイミド樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。
【0077】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度超過、または300℃超過の温度範囲での昇温速度が低すぎると、前記形成されるポリイミド樹脂層の内部に気孔の形成が容易でなくて十分な多孔度を確保しにくく、前記形成されるポリイミド樹脂層の密度や誘電率が十分に低下しにくいことがある。
【0078】
また、前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物を昇温する過程で、280〜320℃の温度超過、または300℃超過の温度範囲での昇温速度が高すぎると、前記多孔性ポリイミド樹脂層内に気泡が発生したり、前記多孔性ポリイミド樹脂層が軟性金属積層体の他の薄膜または層、例えば、金属薄膜などと強固に結合または接着されにくいことがある。
【0079】
前記多孔性ポリイミド樹脂層には、0.05μm〜20μmの直径を有する微細気孔が分布することにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、1.2g/cm
2〜1.9g/cm
2、または1.3g/cm
2〜1.5g/cm
2の密度を有することができる。
【0080】
前記多孔性ポリイミド樹脂層中の前記微細気孔は、0.1〜5体積%、または0.2〜1体積%を占めることができる。
【0081】
前記多孔性ポリイミド樹脂層に含まれる前記フッ素系樹脂粒子は、0.05〜9.5μm、または1.0〜5.0μmの平均粒径(D50)を有することができる。
【0082】
前記ポリアミック酸樹脂およびフッ素系樹脂粒子に関するより具体的な内容は、前記一実施形態の軟性金属積層体に関して上述した内容を含む。また、前記ポリアミック酸樹脂から製造されるポリイミド樹脂に関する内容も、前記一実施形態の軟性金属積層体に関して上述した内容を含む。
【0083】
前記ポリアミック酸樹脂30〜95重量%;およびフッ素系樹脂粒子5〜70重量%を含む樹脂組成物は、分散剤をさらに含むことができ、前記分散剤の具体例としては、前記分散剤は、ポリエステル系高分子、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、およびポリエステル/ポリアミン重合体からなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0084】
従来は、ポリアミック酸またはポリイミドにフッ素系樹脂を分散させるために、フッ素系分散剤やフッ素系界面活性剤を使用する方法が知られているが、このような従来の方法によれば、製造される高分子樹脂層の誘電率はやや低下させることができるが、前記フッ素系分散剤やフッ素系界面活性剤の使用によって製造される高分子樹脂層の熱膨張係数が大きく増加することがある。これに対し、前記多孔性ポリイミド樹脂層を製造するのに使用される樹脂組成物が分散剤を含むことにより、前記多孔性ポリイミド樹脂層は、低い誘電率を有しながらも、過度に高い熱膨張係数を有することなく、金属積層体または印刷回路基板の製造過程においても、前記ポリイミド樹脂に含まれるフッ素系樹脂が溶けてしまうなどの現象を防止することができる。
【0085】
前記樹脂組成物は、前記フッ素系樹脂粒子全体100重量部対比、前記分散剤0.1重量部〜25重量部、または0.5重量部〜10重量部を含むことができる。
【0086】
一方、前記多孔性ポリイミド樹脂層を形成する段階は、前記熱硬化前に、前記樹脂組成物を基材上に0.1μm〜200μm塗布する段階をさらに含むことができる。
【0087】
また、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に前記金属薄膜を積層する段階は、250℃〜450℃の温度で、500Kgf〜3000Kgfの圧力を加えて、前記多孔性ポリイミド樹脂層の少なくとも一面上に銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上の金属を含む金属薄膜を積層する段階を含むことができる。