(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の温度と前記第4の温度との差が前記接合層の許容温度を超える場合、前記第1の処理の後、前記第1の温度を、前記第4の温度との温度差が前記接合層の許容温度範囲内となるように前記第3の温度に変更する変更工程と
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
前記ヒーターにより前記静電チャックの温度を上げる場合に、前記変更工程は、前記第2の温度を前記第4の温度に上げられ始める前に、前記第1の温度から前記第3の温度への変更を開始することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の制御方法。
前記ヒーターにより前記静電チャックの温度を下げる場合に、前記変更工程は、前記第2の温度を前記第4の温度に下げられ始められた後に、前記第1の温度から前記第3の温度への変更を開始することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の制御方法。
前記基台の温度を制御するチラーは、低温温調ユニット及び高温温調ユニットからなり、前記基台の温度の制御時において低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒を前記流路に流すことを特徴とする請求項3に記載の制御方法。
前記第1の温度と前記第4の温度との差が前記接合層の許容温度を超える場合、前記第1の処理の後、前記第1の温度を、前記第4の温度との温度差が前記接合層の許容温度範囲内となるように前記第3の温度に変更する変更工程において、基台内の冷媒の循環を停止する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御方法。
前記制御部は、前記第1の温度と前記第4の温度との差が前記接合層の許容温度を超える場合、前記第1の処理の後、前記第1の温度を、前記第4の温度との温度差が前記接合層の許容温度範囲内となるように前記第3の温度に変更することを特徴とする請求項9に記載のプラズマエッチング装置。
前記制御部は、前記ヒーターにより前記静電チャックの温度を上げる場合に、前記第2の温度を前記第4の温度に上げ始める前に、前記第1の温度から前記第3の温度への変更を開始することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
前記制御部は、前記ヒーターにより前記静電チャックの温度を下げる場合に、前記第2の温度を前記第4の温度に下げ始めた後に、前記第1の温度から前記第3の温度への変更を開始することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
前記基台の温度を制御するチラーは、低温温調ユニット及び高温温調ユニットからなり、前記基台の温度の制御時において低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒を前記流路に流すことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
前記制御部は、前記第1の温度と前記第4の温度との差が前記接合層の許容温度を超える場合、前記第1の処理の後、前記第1の温度を、前記第4の温度との温度差が前記接合層の許容温度範囲内となるように前記第3の温度に変更する場合に、基台内の冷媒の循環を停止することを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するプラズマエッチング装置及び制御方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る制御方法は、実施形態の一例において、基台を第1の温度で制御し、基台の載置面に配置されて被処理体が載置されるヒーターが内蔵された静電チャックの温度を第2の温度で制御し、被処理体に対して第1の処理を行う第1の処理工程を含む。また、第1の実施形態に係る制御方法は、実施形態の一例において、基台を第3の温度で制御し、ヒーターにより静電チャックの温度を第4の温度で制御し、被処理体に対して第2の処理を行う第2の処理工程を含む。また、第1の実施形態に係る制御方法は、実施形態の一例において、第1の温度と第2の温度との温度差、及び、第3の温度と第4の温度との温度差が、基台と静電チャックとを接合する接合層の許容温度となる。
【0010】
また、第1の実施形態に係る制御方法は、実施形態の一例において、第1の温度と第4の温度との差が接合層の許容温度を超える場合、第1の処理の後、第1の温度を、第4の温度との温度差が接合層の許容温度となるように第3の温度に変更する変更工程を更に含む。
【0011】
また、第1の実施形態に係る制御方法は、実施形態の一例において、基台は、基台内に設けられた流路をチラーによって冷却媒体が循環させられ、基台の温度は、冷却媒体の温度を制御することで制御される。
【0012】
また、第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置は、実施形態の一例において、基台と、基台の載置面に配置されて被処理体が載置される静電チャックと、基台と静電チャックとを接合する接合層と、静電チャック内に設けられたヒーターと、基台の温度を制御するチラーとを備える。また、第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置は、実施形態の一例において、被処理体に対して第1の処理を行う際に、基台を第1の温度で制御しつつヒーターの温度を第2の温度で制御し、被処理体に対して第2の処理を行う際に、基台を第3の温度で制御しつつヒーターの温度を第4の温度で制御する制御部を備える。また、第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置は、実施形態の一例において、第1の温度と第2の温度との温度差、及び、第3の温度と第4の温度との温度差が、接合層の許容温度である。
【0013】
(第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置の構成)
図1は、第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置の全体像を示す断面図である。
図2は、第1の実施形態における半導体ウエハ、静電チャック、サセプタ、フォーカスリング及びシール部材の位置関係を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、プラズマエッチング装置100は、チャンバー1を有する。チャンバー1は、外壁部に、導電性のアルミニウムで形成される。
図1に示す例では、チャンバー1は、半導体ウエハ2をチャンバー1内に搬入又は搬出するための開口部3と、気密にシールする封止体を介して開閉可能なゲートバルブ4とを有する。封止剤とは、例えば、Oリングである。
【0015】
図1には示されていないが、チャンバー1には、ゲートバルブ4を介して、ロードロック室が連設される。ロードロック室には、搬送装置が設けられる。搬送装置は、半導体ウエハ2をチャンバー1内に搬入又は搬出する。
【0016】
また、チャンバー1は、側壁底部に、開口してチャンバー1内を減圧するための排出口19を有する。排出口19は、例えばバタフライ・バルブなどの開閉弁を介して図示しない真空排気装置に接続される。真空排気装置とは、例えば、ロータリーポンプ又はターボ分子ポンプ等である。
【0017】
また、
図1に示すように、プラズマエッチング装置100は、チャンバー1の内部の底面中央部に、基台支持台5を有する。プラズマエッチング装置100は、基台支持台5の上部に基台10を有する。
図1及び
図2に示すように、プラズマエッチング装置100は、基台10の上部に静電チャック9を有する。また、プラズマエッチング装置100は、基台10の上部に、静電チャック9を取り囲むように設けられるフォーカスリング21を有する。
図1に示す例では、基台支持台5と基台10とを分けて記載したが、基台支持台5と基台10とを併せて基台とも称する。
【0018】
また、
図1及び
図2に示すように、基台10は、静電チャック9が設置される箇所と比較して、箇所の周辺の高さが高い。以下では、静電チャック9が設置される箇所と比較して高さが高い箇所を周辺凸部と称する。また、
図2に示すように、静電チャック9の側面と、基台10の周辺凸部と、サセプタの底辺とのうち、少なくとも2箇所と接触するシール部材22を有する。シール部材22は、例えば、Oリングである。
【0019】
また、プラズマエッチング装置100は、基台10の上方かつチャンバー1の上部には、上部電極50を有する。上部電極50は、電気的に接地される。上部電極50には、ガス供給管51を介して処理ガスが供給され、上部電極50の底壁に複数個穿設された放射状の小孔52より半導体ウエハ2方向に処理ガスが放出する。ここで、高周波電源12をONにされることで、放出された処理ガスによるプラズマが上部電極50と半導体ウエハ2との間に生成される。なお、処理ガスとは、例えば、CHF3、CF4などである。
【0020】
ここで、プラズマエッチング装置100の各部について更に説明する。基台支持台5は、アルミニウム等の導電性部材で円柱形状に形成される。基台支持台5は、冷却媒体を内部に留める冷媒ジャケット6が内部に設けられる。冷媒ジャケット6には、冷却媒体を冷媒ジャケット6に導入するための流路71と、冷却媒体を排出するための流路72とが、チャンバー1の底面に気密に貫通して設けられる。
【0021】
なお、
図1に示す例では、冷媒ジャケット6が基台支持台5の内部に設けられる場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、冷媒ジャケット6が、基台10の内部に設けられても良い。冷媒ジャケット6は、後述するように、チラー70により冷却媒体が循環されることで、基台10や基台支持台5の温度を制御する。
【0022】
基台支持台5の上部に設けられる基台10は、例えば、下部電極としてアルミニウム等の導電性部材(Alの線熱膨張率;略23.5×10−6(cm/cm/度))で形成される。基台10は、図示しないボルトにより基台支持台5に取り付けられる。基台10は、冷媒ジャケット6の冷熱が基台支持台5を介して伝導されることで冷却される。基台10は、ブロッキング・コンデンサ11を介して高周波電源12と接続される。高周波電源12は、例えば、13.56MHz又は40MHz等の高周波電源である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、基台10と静電チャック9とは、接合層20によって接合される。接合層20は、例えば、室温硬化性のシリコンゴムのRTVゴムである。基台10と静電チャック9とは、例えば、常温にて基台10と接合層20の接合面61又は静電チャック9と接合層20の接合面62の少なくとも一方に室温硬化性のシリコンゴムを均一に塗布し、他方の接合面を接触させることで接合される。
【0024】
静電チャック9は、例えば、セラミック製(線熱膨張率;略7.1×10−6(cm/cm/度))で形成される。静電チャック9は、電極板9bとヒーター9aとを内部に有する。セラミック製の静電チャック9と金属製の基台10とは、異なる熱膨張率を示す。静電チャック9は、上面に半導体ウエハ2が載置される。
【0025】
図1に示すように、電極板9bは、導電線25の一端側に接続され、導電線25の他端側が給電棒26に接続される。導電線25は、基台10に内蔵されたテフロン(登録商標)等の絶縁部材により周囲を覆われる。給電棒26は、例えば、銅で形成され、200V〜3KVの高電圧を給電する。また、給電棒26は、チャンバー1の底面に気密かつ絶縁して貫通され、電磁スイッチ28を介して高電圧電源27に接続される。また、電磁スイッチ28は図示しない装置を制御する制御信号によりON又はOFFされる。
【0026】
また、基台10と基台支持台5と接合層20と静電チャック9には、貫通孔16が設けられる。貫通孔16の内部には、電気的に抵抗又はインダクタンスを介して接地されたプッシャーピン15が設けられる。プッシャーピン15は、チャンバー1を気密にするとともに伸縮可能としたべローズ17を介して上下移動手段となるエアーシリンダ18に接続される。また、プッシャーピン15は、ロードロック室の搬送装置より半導体ウエハ2の受渡しを行い、静電チャック9に半導体ウエハ2を接離する際に、エアーシリンダ18により上下移動する。
【0027】
基台10及び静電チャック9には、伝熱媒体を半導体ウエハ2の裏面に均一に供給するための貫通孔13aが複数設けられる。貫通孔13aは、貫通孔13aにかかるHeガスの圧力を均一にするためのガス溜め室13に接続される。ガス溜め室13は、伝熱媒体をチャンバー1の外部より導入するための供給管14に接続される。伝熱媒体とは、例えば、不活性ガスとしてのHeガスである。ただし、これに限定されるものではなく、任意のガスを用いて良い。
【0028】
また、
図1に示すように、プラズマエッチング装置100は、冷媒ジャケット6に冷却媒体を循環させるチラー70を有する。具体的には、チラー70は、冷却媒体を流路71から冷媒ジャケット6に送り込み、冷媒ジャケット6から出てきた冷却媒体を流路72から受け付ける。
【0029】
(チラー)
図3は、第1の実施形態におけるチラーの構造の一例を示す図である。チラー70について説明する。チラー70は、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75から形成される2つの蓄熱する循環回路が設けられている。これらの2つの循環回路は、冷却媒体を貯蔵可能な大型のタンクと循環ポンプを保有し、各タンクへ貯蔵される冷却媒体の量は、常に温度の安定性を担保できる所定量を満たすことができる。このため、チラー70の温度制御能力を維持し、安定した温度制御が可能である。
【0030】
低温温調ユニット74は、低温温調ユニット74に設けられた熱交換部により第1の温度に調温された液体を低温タンクに貯蔵する。高温温調ユニット75は、高温温調ユニット75に設けられた熱交換部により第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を高温タンクに貯蔵する。第1の温度及び第2の温度は、後述するプロセスコントローラ90により制御される。低温温調ユニット74に貯蔵された低温冷却媒体は、低温流路76を介して合流部PAに到達し、冷却媒体を循環させるバイパス流路73と合流する。高温温調ユニット75に貯蔵された高温冷却媒体も同様に、高温流路77を介して合流部PAに到達し、冷却媒体を循環させるバイパス流路73と合流する。合流部PAには、低温流路76、高温流路77及びバイパス流路73をそれぞれ流れる冷却媒体を混合する一時タンク78が設けられていて、これらの流路を流れる冷却媒体を一時的に混合させる。ここで、混合されて流路71に流された冷却媒体が冷媒ジャケット6を循環する冷却媒体となる。流路71は、合流部PAにて、低温流路76、高温流路77及びバイパス流路73と合流し、一時タンク78にて混合された冷却媒体を流す。このようにして、流路71に流す冷却媒体を予めある程度混合された冷却媒体とすることにより、冷媒ジャケット6を流れる冷却媒体の温度を安定させ、温度制御性を高めることができる。
【0031】
ここで、低温温調ユニット74は、例えば、「−10度」の冷却媒体を保持する。高温温調ユニット75は、例えば、高温タンクに「10度」〜「50度」の冷却媒体を保持する。ただし、これに限定されるものではない。具体的には、低温温調ユニット74は、高温温調ユニット75により保持される冷却媒体よりも低温であって任意の温度の冷却媒体を保持して良い。また、高温温調ユニット75は、低温温調ユニット74により保持される冷却媒体よりも高温であって任意の温度の冷却媒体を保持して良い。
【0032】
なお、低温温調ユニット74が、例えば、「−15度」〜「−5度」の冷却媒体であり、好ましくは、「−10度」の冷却媒体である。このように、例えば、「―10度」程度の冷却媒体を保持することで、結露を防止しつつ、冷媒ジャケット6に提供する冷却媒体の温度を迅速に変化させることが可能となる。
【0033】
このように、チラー70は、基台10内に設けられた流路71に冷却媒体を送り、流路72から出てきた冷却媒体を受け付け、冷却媒体の温度を制御した上で流路71に再度送ることで冷媒ジャケット6に冷却媒体を循環させる。基台10は、チラー70によって冷媒ジャケット6に冷却媒体が循環させられることで、温度が制御される。
【0034】
流路71、72は、冷媒ジャケット6に冷却媒体を流した後、分岐部PBにて低温流路80、高温流路81及びバイパス流路73と分岐して冷却媒体を循環させる循環路を形成する。この循環路に循環させる冷却媒体の温度を制御することで、基台10の温度を制御する。
【0035】
このように本実施形態に係るチラー70では、合流部PAにて高温流路77と低温流路76とを流れる冷却媒体は循環ラインに直接的に流入、流出される。
【0036】
バルブユニット79は、合流部PAの上流側に設けられ、可変バルブ79a、79b、79cを含む。可変バルブ79a、79b、79cは、低温流路76、バイパス流路73、高温流路77に取り付けられる。可変バルブ79a、79b、79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを変えることで、各流路から流路を流れる合流流量が調整される。
【0037】
分岐部PBから分岐された低温流路80、高温流路81及びバイパス流路73には、それぞれ逆止弁82,83,84が設けられ、分岐部PBにて分岐して3方向に流れる冷却媒体が分岐部PBに向かって逆流しないようになっている。低温流路80を流れる冷却媒体は低温温調ユニット74に戻り、低温温調ユニット74内で再び調温される。バルブ85は、低温流路80と連結する配管88に設けられ、低温流路80から配管88を経て低温温調ユニット74に戻る冷却媒体の戻り量を調整する。
【0038】
同様に、高温流路81(紙面上の矢印Aで紙面の右側から左側に接続されている)を流れる冷却媒体は高温温調ユニット75に戻り、高温温調ユニット75内で再び調温される。バルブ86は、高温流路81と連結する配管89に設けられ、高温流路81から配管89を経て高温温調ユニット75に戻る冷却媒体の戻り量を調整する。
【0039】
プロセスコントローラ90は、流路72に取り付けられたポンプ87のインバータの回転数を調整して、冷媒ジャケット6へ流入される冷却媒体の流量を制御する。また、プロセスコントローラ90は、バルブユニット79を制御することで、冷却媒体を供給する側の3つの流路76,73,77内の圧力を調圧する。この結果、冷媒ジャケット6を含む循環路内の流量は一定に保たれ、分岐部PBにて分岐した冷却媒体はバイパス流路73を循環するか又は低温温調ユニット74、高温温調ユニット75に戻る。このようにして低温温調ユニット74と高温温調ユニット75の貯蔵量を同じにすることができる。なお、流量調整及び圧力調整には、分岐部PB近傍の配管に取り付けられたフローメータF、圧力計P4、及びバルブユニット79近傍の各配管に取り付けられた圧力計P1、P2,P3が使用される。
【0040】
低温流路80、高温流路81、バイパス流路73にはそれぞれ逆止弁82、83、84が設けられているものの、圧力制御の多少の誤差や、例えば低温温調ユニット74から冷却媒体を供給するようなタイミングに冷却媒体が高温流路の方へ流れてしまう等の理由により、高温温調ユニット75、低温温調ユニット74の液面に差ができてしまう場合がある。
【0041】
このような場合にも、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75の近傍に設けられた、各ユニット内タンク間を連通する液面調整タンク98の作用により、両液面に差が生じないようになっている。すなわち、3つのタンクの液面は全て自然と同じ高さになっている。
【0042】
ここで、基台10の温度を昇温する際には、高温温調ユニット75から流出される冷却媒体の量は、低温温調ユニット74から流出される冷却媒体の量より多くなり、高温温調ユニット75の液面は低温温調ユニット74の液面より低くなる。また、基台10の温度を降温する際には、昇温時とは逆に、低温温調ユニット74の液面は高温温調ユニット75の液面より低くなる。それらの場合、2つのタンクの間で液面が下がった方に液面調整タンク98に貯蔵されている冷却媒体が自然と流れていき、自然と同一液面となる。なお、液面調整タンク98は図示しない液面計を有し、液面調整タンク98の液面を検出することにより異常を検出する。
【0043】
このように、第1の実施形態におけるチラー70では、2系統の冷却媒体が設けられ、低温冷却媒体と高温冷却媒体の温度を管理し、所定の流量比で混合させて冷媒ジャケット6に流す。低温流路と高温流路とは別々の閉じた系ではなく、合流部PAで合流する開かれた系である。低温流路と高温流路とを閉じた系で構成したシステムでは、温度制御中に加熱された冷却媒体の供給量、又は冷却された冷却媒体の供給量が不足し、温度制御性が悪くなる。特に、加熱された後に供給される冷却媒体の量にはある程度上限があるため最初の数秒で高温に加熱された冷却媒体の供給量が枯渇してしまい加熱能力が低下してしまう。
【0044】
これに対して、第1の実施形態におけるチラー70によれば、冷却用及び加熱用に低温温調ユニット74内のタンク及び高温温調ユニット75のタンクを設け、そこから大量の冷却媒体を供給することができるためタンク内の冷却媒体が枯渇することなく連続して供給できる。これにより、高速な温度調整及び安定した温度制御が可能になる。
【0045】
なお、チラー70には、ユニットパージ機能が設けられており、例えば紙面上の矢印Bから配管内にエアーを入れて冷却媒体を各タンクに戻す場合に用いられる。また、チラー70の全部又は一部をプラズマエッチング装置100に内蔵しても良く、チラー70の全部又は一部をプラズマエッチング装置100に外付けとしても良い。例えば、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75は大型であり、プラズマエッチング装置100の周囲に置く必要のある排気装置等の配置スペースを考慮してチャンバー1の遠方に外付けとして配置しても良い。また、例えば、
図3に示す構成の全てをプラズマエッチング装置100の外付けとしても良く、プラズマエッチング装置100に内蔵しても良い。
【0046】
(第1の実施形態における制御装置)
プラズマエッチング装置100の各構成部は、CPUを備えたプロセスコントローラ90に接続されて制御される。プロセスコントローラ90には、工程管理者がプラズマエッチング装置100を管理するためのコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマエッチング装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインタフェース91が接続される。
【0047】
また、プロセスコントローラ90には、プラズマエッチング装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ90の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部92が接続される。
【0048】
また、ユーザインタフェース91からの指示等にて任意のレシピを記憶部92から呼び出され、プロセスコントローラ90が実行することで、プロセスコントローラ90の制御下で、プラズマエッチング装置100での所望の処理が行われても良い。レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。プロセスコントローラ90は、「制御部」とも称する。なお、プロセスコントローラ90の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されても良く、ハードウエアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0049】
例えば、プロセスコントローラ90は、フィードバック制御を行うことで、基台10や基台支持台5の温度を制御する。
【0050】
また、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aとチラー70との温度制御を行うことで、基台10及び静電チャック9の温度を制御する。言い換えると、プロセスコントローラ90は、静電チャック9の内部に設けられたヒーター9aと冷媒ジャケット6における熱冷却により、半導体ウエハ2の温度を調整する。この際、後述するように、プロセスコントローラ90は、被処理体に対して第1の処理を行う際に、基台10を第1の温度で制御しつつヒーター9aにより静電チャック9の温度を第2の温度で制御し、被処理体に対して第2の処理を行う際に、基台10を第3の温度で制御しつつヒーター9aにより静電チャック9の温度を第4の温度で制御する。また、プロセスコントローラ90は、第1の温度と第2の温度との温度差、及び、第3の温度と第4の温度との温度差が、接合層20の許容温度に収まるように制御する。例えば、プロセスコントローラ90は、プラズマエッチング処理を行う際に、静電チャック9の内部に設けられたヒーター9aと冷媒ジャケット6とを制御する。
【0051】
(フィードバック制御)
プロセスコントローラ90によるフィードバック制御の一例について簡単に説明する。プロセスコントローラ90は、温度センサT及び圧力センサP1、P2,P3をモニターしながら、可変バルブ79a、79b、79cの開閉をフィードバック制御する。プロセスコントローラ90は、温度センサTにより検出された温度が基台10に設定される温度に近づくように可変バルブ79a、79b、79cをフィードバック制御する。
【0052】
温度センサTは、基台10から出てきた冷却媒体の温度を測定する。言い換えると、温度センサTは、冷媒ジャケット6の流路の出口から出てきた冷却媒体の温度を測定する。
【0053】
通常、基台10の温度を大きく変化しない場合には、プロセスコントローラ90は、循環路(バイパス流路73→流路71→冷媒ジャケット6→流路72→バイパス流路73)に冷却媒体を流し、各タンク74,75から出入りする冷却媒体の流量を少なくして、エネルギー効率よく冷却媒体を循環させる。一方、加熱させたいときは、プロセスコントローラ90は、高温流路77の可変バルブ79cの弁体の開度Vcを開けて高温冷却媒体を流入させ、流路71に流れる冷却媒体の温度を上げる。冷却させたいときは、プロセスコントローラ90は、低温流路76の可変バルブ79aの弁体の開度Vaを開けて低温冷却媒体を流入させ、流路71に流れる冷却媒体の温度を下げる。
【0054】
昇温時には、プロセスコントローラ90は、高温流路77から流路71に流入される液体を、低温流路76及びバイパス流路73から流路71に流入される液体より多くなるように可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを制御する。また、降温時には、プロセスコントローラ90は、低温流路76から流路71に流入される液体を高温流路77及びバイパス流路73から流路71に流入される液体より少なくなるように可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを制御する。
【0055】
プロセスコントローラ90による温度のフィードバック制御について
図4及び
図5を参照しながら詳述する。
図4は、第1の実施形態におけるプロセスコントローラにより実行されるフィードバック制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5は、第1の実施形態における可変バルブの各操作量の一例を示す図である。
図4の処理は、プロセスコントローラ90により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0056】
処理が開始されると、プロセスコントローラ90は、温度センサTの検出値を基台10の温度の目標値Ttとして取得する。また、プロセスコントローラ90は、温度センサT2の検出値Tdを合流部PAにて合流後の冷却媒体の温度として取得する(ステップS101)。
【0057】
そして、プロセスコントローラ90は、検出値Tdを目標値Ttに近づけるために、検出値Tdに基づき可変バルブ79a,79b,79cの弁開度Va,Vb,Vcをフィードバック制御する。そのために、プロセスコントローラ90は、フィードバック制御のための基本操作量MBを算出する(ステップS102)。
【0058】
基本操作量MBは、検出値Tdの目標値Ttに対する乖離度合いに基づき算出される量である。詳しくは、本実施形態では、検出値Tdと目標値Ttとの差ΔのPID(比例積分微分)演算によって基本操作量MBを算出する。
【0059】
そして、プロセスコントローラ90は、基本操作量MBを、低温側の可変バルブ79a、バイパス流路の可変バルブ79b、及び高温側の可変バルブ79cの各操作量、すなわち各可変バルブ79a,79b,79cの弁開度Va,Vb,Vcに変換する(ステップS103)。ここでは、
図5に示す可変バルブの弁開度Va,Vb,Vcの関係を用いる。
【0060】
ここで、可変バルブ79aの弁開度Vaは、基本操作量MBがゼロ未満である場合には、基本操作量MBの増加に伴い単調減少し、基本操作量MBがゼロ以上である場合には、「0」となる。これは、検出値Tdが目標値Ttよりも高いほど低温流路76の流量を増加させて、かつ検出値Tdが目標値Tt以下の場合には、低温流路76を用いないための設定である。また、可変バルブ79cの弁開度Vcは、基本操作量MBがゼロより大きい場合には、基本操作量MBの増加に伴い単調増加し、基本操作量MBがゼロ以下である場合には、「0」となる。これは、検出値Tdが目標値Ttよりも低いほど高温流路77の流量を増加させてかつ、検出値Tdが目標値Tt以上の場合には、高温流路77を用いないための設定である。更に、可変バルブ79bの弁開度Vbは、基本操作量MBがゼロから離間するに従い単調減少する。なお、
図5において、3つの通路から流出する合計の流量が基本操作量MBの値によって変化しないように各弁開度Va,Vb,Vcを設定することが望ましい。
【0061】
こうした設定によれば、検出値Tdと目標値Ttとの差Δの単一のPID演算によって算出される基本操作量MBに基づき、可変バルブ79a,79b,79cの3つのバルブの操作量を設定する。
【0062】
その後、プロセスコントローラ90は、可変バルブ79a,79b,79cの弁体の開度Va,Vb,Vcを操作し(ステップS104)処理を終了する。
【0063】
このようなフィードバック制御を行う結果、検出値Tdを目標値Ttに高精度に追従させることができる。
【0064】
(第1の実施形態におけるプロセスコントローラによる温度制御処理)
図6は、第1の実施形態におけるプロセスコントローラによる温度制御処理の流れの一例を示すためのフローチャートである。
図6に示す一連の処理は、例えば、エッチングを実行する指示を利用者から受け付けた場合にプロセスコントローラ90によって行われる。
【0065】
以下では、例えば、接合層20の許容温度が「70度」の場合を用いて説明するが、これに限定されるものではなく、任意の温度であって良い。接合層20の許容温度とは、接合層20の上部にある静電チャック9の温度と、接合層20の下部にある基台10の温度との温度差のうち、許容される温度差を示す。一般的に、温度が上昇すると物質は膨張し、温度が低下すると物質は縮小する。ここで、接合層20における許容温度よりも静電チャック9と基台10との間の温度差が許容温度を超えた場合、接合層20が接合面61や62から剥離することがある。
【0066】
図6を用いてプロセスコントローラ90による温度制御処理について説明する際には、プロセスコントローラ90がエッチング処理を行っているものとして説明する。
図7は、第1の実施形態におけるプロセスコントローラによるエッチング処理の一例を示す図である。
【0067】
すなわち、
図7に示すように、プロセスコントローラ90が、半導体ウエハ2をチャンバー1内に入れてプラズマエッチングを行う場合を例に用いて説明する。
図7の(1)に示すように、半導体ウエハ2には、シリコン基板201上にシリコン酸化膜202、反射防止膜203、フォトレジスト204が積層される。
【0068】
図6の説明に戻る。
図6に示すように、プロセスコントローラ90は、基台10を第1の温度で制御し、基台10の載置面に配置されて被処理体が載置される静電チャック9内に設けられたヒーター9aにより静電チャック9の温度を第2の温度で制御し、被処理体に対して第1の処理を行う第1の処理工程を行う(ステップS201)。
【0069】
例えば、プロセスコントローラ90は、半導体ウエハ2の温度を「0度」にする。より詳細な一例をあげて説明すると、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aを加熱することなく、チラー70の冷却媒体による冷却により基台10の温度を「0度」にすることで(第1の温度)、半導体ウエハ2の温度が「0度」になるように制御する。また、プロセスコントローラ90は、チャンバー1の圧力を6.67Paとし、処理ガスとしてCF4ガスを導入し、下部高周波電力40MHz/13.56MHz=1000W/100Wでエッチングを行う。
【0070】
なお、この際、プロセスコントローラ90は、第2の処理工程と比較して半導体ウエハ2の温度を低くした上でエッチングすることで、反射防止膜203の形状を良好に保つことが可能となる。この際、フォトレジスト204もエッチングされる。
図7の(2)は、第1の処理工程を行った後の半導体ウエハ2の一例を示す。
【0071】
そして、プロセスコントローラ90は、基台10の第1の温度とヒーター9aによる静電チャック9の第4の温度との温度差が接合層20の許容温度を超えるか否かを判定する(ステップS202)。言い換えると、第1の処理工程における基台10の温度と、第2の処理工程における静電チャック9の温度との温度差が、接合層20の許容温度よりも大きいかを判定する。例えば、許容温度が「70度」である場合を用いて説明する。
【0072】
ここで、第1の温度と第4の温度との差が接合層20の許容温度を超える場合(ステップS202肯定)、プロセスコントローラ90は、第1の処理の後、第1の温度を、第4の温度との温度差が接合層20の許容温度となるように第3の温度に変更する変更工程を行う(ステップS203)。例えば、ヒーター9aによる静電チャック9の第4の温度が「80度」である場合、基台10の第1の温度が「0度」なのでヒーター9aによる静電チャック9の第4の温度との温度差は「80度」となり、許容温度「70度」を超える。このとき、プロセスコントローラ90は、基台10の温度である第1の温度を「10度」に変更することで、静電チャック9の第4の温度が「80度」であったとしても、温度差を接合層20の許容温度「70度」に収めることができる。
【0073】
より詳細な一例をあげて説明すると、プロセスコントローラ90は、チラー70により供給される冷却媒体の温度を上げることで、基台10の温度を「10度」にまで上げる(第3の温度)。
【0074】
そして、プロセスコントローラ90は、基台10を第3の温度「10度」で制御し、静電チャック9内に設けられたヒーター9aにより静電チャックの温度を第4の温度「80度」で制御し、被処理体に対して第2の処理を行う第2の処理工程を行う(ステップS204)。ここで、第1の温度と第2の温度との温度差、及び、第3の温度と第4の温度との温度差が、基台10と静電チャック9とを接合する接合層20の許容温度「70度」に収まる。
図7の(3)は、第2の処理工程を行った後の半導体ウエハ2の一例を示す。
【0075】
例えば、プロセスコントローラ90は、半導体ウエハ2の温度を「80度」とする。より詳細な一例をあげて説明すると、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aを加熱して静電チャック9の温度を「80度」にすることで、半導体ウエハ2の温度が「80度」になるように制御する。また、プロセスコントローラ90は、チャンバー1の圧力を2.67Paとし、処理ガスとしてC4F6/Ar/O2ガスを導入し、下部高周波電力40MHz/13.56=1600W/800Wでエッチングを行う。
【0076】
なお、上述したステップS202において基台10の第1の温度とヒーター9aによる静電チャックの第4の温度との差が接合層20の許容温度「70度」を超えない場合(ステップS202否定)、プロセスコントローラ90は、基台10の温度を変更することなく第2の処理工程を行っても良く、第4の温度との温度差が接合層20の許容温度「70度」内となる範囲で基台10の温度を変更した上で第2の処理工程を行っても良い。
【0077】
上述したように、第1の実施形態によれば、プラズマエッチング装置100は、基台10を第1の温度で制御し、基台10の載置面に配置されて被処理体が載置される静電チャック9内に設けられたヒーター9aにより静電チャック9の温度を第2の温度で制御し、被処理体に対して第1の処理を行う第1の処理工程を行う。また、プラズマエッチング装置100は、基台10を第3の温度で制御し、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を第4の温度で制御し、被処理体に対して第2の処理を行う第2の処理工程を行う。また、第1の温度と第2の温度との温度差、及び、第3の温度と第4の温度との温度差が、基台10と静電チャック9とを接合する接合層20の許容温度となる。この結果、接合層20の剥離を防止可能となる。
【0078】
例えば、静電チャック9の部分のヒーター9aが加熱を行うと、静電チャック9は膨張する。また、基台10は、チラー70による冷却媒体で冷却される結果、収縮する。ここで、膨張と収縮の間に応力緩和する接合層20を設ける場合がある。
【0079】
近年のエッチングプロセスにおいては、プロセスのステップにおいて温度制御の範囲を広げなければならなくなってきた。
図8は、基台のチラー温度を一定にする場合について示す図である。
図8に示す例では、ウエハ温度を「0度」〜「80度」に変動する場合を用いて説明する。ここで、
図8に示すように、基台10のチラー温度を「−10度」に一定で設定しておき、ヒーターの温度との組み合わせであるプロセスステップの静電チャックの温度(ウエハ温度)を「0度」とし、あるプロセスステップの静電チャックの温度(ウエハ温度)を「80度」で処理したとする。
【0080】
図8に示すように、接合層20の許容温度が「70度」の場合、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を60度より大きくすると、温度差が許容温度「70度」を超える。例えば、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を「80度」にした場合、静電チャック9の側面側の膨張と基台10の収縮の差が大きくなりすぎて接合層20が剥離し、下部電極が壊れることがある。言い換えると、この場合、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を「60度」〜「80度」に加熱してプロセスを行う場合には対応できない。
図8中の温度Δ70度制限は、許容温度「70度」と同じ意味である。
【0081】
図9は、第1の実施形態における効果の一例について示す図である。
図9に示すように第1の実施形態におけるプロセスコントローラ90は、
図8に示す場合とは異なり、チラー70による基台10の温度とヒーター9aによる静電チャック9との温度差が接合層20の許容温度を超えないように、プロセスステップ間の温度を制御する。
【0082】
例えば、
図9に示すように、許容温度が「70度」の場合であって、あるプロセスステップでは「0度」でエッチングし、次のステップでは「80度」でエッチングするような場合を用いて説明する。この場合、チラー温度により基台10を「−10度」で制御し、ヒーター9aにより静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「0度」に設定する。その後、次のステップでは、静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にする。ここで、静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にする際、ヒーター温度だけを調整すると温度差ΔT=70度を超えてしまう。そこで、チラー70による基台10の温度を「+10度」に調整し、ヒーター温度を調整して静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にすることで、温度差が「70度」を超えることなくエッチングすることができる。この結果、接合層20の剥離を防止可能となる。
図9中の温度Δ70度制限は、許容温度「70度」と同じ意味である。
【0083】
また、この際、チラー70は、予め、高温温調ユニット75と低温温調ユニット74とを有し、高温タンクが、低温タンクの冷却媒体と比較して高い温度の冷却媒体を保持し、低温タンクが、高温タンクの冷却媒体と比較して低い温度の冷却媒体を保持する。そして、高温タンクに保持された冷却媒体と低温タンクに保持された冷却媒体とを併せて用いることでチラー70により提供される冷却媒体の温度を高速に変化させることで、次のプロセスを迅速に開始することが可能となる。
【0084】
また、第1の実施形態によれば、プロセスコントローラ90は、第1の温度と第4の温度との温度差が接合層20の許容温度を超える場合、第1の処理の後、第1の温度を、第4の温度との温度差が接合層20の許容温度となるように第3の温度に変更する。この結果、温度差を許容温度内に納めることが可能となる。
【0085】
また、第1の実施形態によれば、基台10は、基台10内に設けられた流路をチラー70によって冷却媒体が循環させられ、基台10の温度は、冷却媒体の温度を制御することで制御される。この結果、チラー70が温度を制御することで、接合層20の剥離を防止可能となる。
【0086】
(その他の実施形態)
以上、第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置及び制御方法について説明したが、これに限定されるものではない。以下では、他の実施形態について説明する。
【0087】
(チラーの温度)
プロセスコントローラ90は、基台10から出てきた冷却媒体の温度を測定する工程を行う。また、プロセスコントローラ90は、変更工程において、流路の出口から出てきた冷却媒体の温度に基づいて、流路の入口に送る冷却媒体の温度を制御する。
【0088】
具体的には、プロセスコントローラ90は、冷却媒体の温度を制御する際、流路72を通っている冷却媒体の温度を測定し、測定した温度に基づいて制御する。言い換えると、チラー70により温度を調整されて送り出された後、基台10を通った後の冷却媒体の温度を測定する。そして、プロセスコントローラ90は、測定した冷却媒体の温度が、基台10の目標温度となるように制御を行う。例えば、基台10の温度を「10度」にする場合には、基台10から出てきた冷却媒体の温度が「10度」になるように制御する。
【0089】
ここで、冷却媒体の温度を測定する箇所は、好ましくは、流路72のうち、基台10の側であることが好ましい。一般的に、チラー70がプラズマエッチング装置100の外付けで実現される場合、流路72が数メートルから十数メートルになることもある。このことを踏まえ、流路72のうち、基台10の側において冷却媒体の温度を測定することで、他の部分にて測定する場合と比較して冷却媒体の温度変化を迅速に測定でき、高精度に冷却媒体の温度を調整可能となる。
【0090】
ただし、冷却媒体の温度を測定する箇所は、流路72のうち基台10の側に限定されるものではなく、基台10から出てきた冷却媒体の温度を測定できる箇所であれば任意の箇所であって良い。例えば、流路72の任意の箇所であっても良く、チラー70の内部において測定しても良い。
【0091】
(温度調整の順番)
また、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を上げる場合に、変更工程において、第2の温度を第4の温度に上げられ始める前に、第1の温度から第3の温度への変更を開始する。
【0092】
上述したように、接合層20は、静電チャック9と基台10との温度差が許容温度を超えると、剥離することがある。ここで、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を上げる場合に、チラー70による基台10の温度上昇の速度が、ヒーター9aによる静電チャック9の温度上昇の速度よりも遅い場合、同じタイミングにおいてヒーター9aとチラー70との温度調整を開始すると、温度差が許容温度を超える可能性がある。このことを踏まえ、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を上げる場合に、まず、チラー70により提供される冷却媒体の温度を上げることで基台10の温度を上昇させ、その後、ヒーター9aによる静電チャック9の加熱を開始する。より詳細な一例をあげて説明すると、プロセスコントローラ90は、まず、チラー70により提供される冷却媒体の温度を上げることで基台10の温度を上昇させ、基台10の温度が目標温度に到達した後に、ヒーター9aによる静電チャック9の加熱を開始する。
【0093】
この結果、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を上げる場合に、基台10と静電チャック9との温度差が許容温度を超える場合を防止することが可能となる。
【0094】
また、同様に、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を下げる場合に、変更工程において、第2の温度を第4の温度に
下げられ始められた後に、第1の温度から第3の温度への変更を開始する。
【0095】
上述したように、接合層20は、静電チャック9と基台10との温度差が許容温度を超えると、剥離することがある。ここで、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を下げる場合に、チラー70による基台10の温度低下の速度が、ヒーター9aによる静電チャック9の温度低下の速度よりも早い場合、同じタイミングにおいてヒーター9aとチラー70との温度調整を開始すると、温度差が許容温度を超える可能性がある。このことを踏まえ、プロセスコントローラ90は、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を下げる場合に、最初に、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を下げた後に、チラー70より提供される冷却媒体の温度を下げることで基台10の温度を低下させる。より詳細な一例をあげて説明すると、プロセスコントローラ90は、まず、ヒーター9aにより静電チャック9の温度が目標温度に到達した後に、チラー70により提供される冷却媒体の温度を下げ始めることで基台10の温度を下げる。この結果、ヒーター9aにより静電チャック9の温度を上げる場合に、温度差が許容温度を超える場合を防止することが可能となる。
【0096】
(チラー)
また、例えば、基台10の温度を制御するチラーは、低温温調ユニット及び高温温調ユニットからなり、基台10の温度の制御時において、低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒のみを流路に流しても良い。すなわち、低温温調ユニットから供給される液体と高温温調ユニットから供給される液体とを混合することで任意の温度の液体を供給するのではなく、低温温調ユニットに貯蔵されている液体と、高温温調ユニットに貯蔵されている液体とのうち、いずれか一方をそのまま供給しても良い。
【0097】
図10は、低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒のみを流路に流すチラーの構造の一例を示す図である。
図10に示す例では、チラー300は、低温温調ユニット301及び高温温調ユニット302を有する。低温温調ユニット301及び高温温調ユニット302は、それぞれ、低温温調ユニット74及び高温温調ユニット75に対応する。低温温調ユニット301は、例えば、−20度以上−10度以下の液体を貯蔵する。また、高温温調ユニット302は、例えば、30度の液体を貯蔵する。ただし、温度は一例であり、任意の温度の液体を貯蔵して良い。また、
図10に示す例では、チラー300は、バルブ311〜バルブ316を有し、配管321〜配管330を有する。
【0098】
図10に示す例において、低温温調ユニット301に貯蔵されている液体をチラー300から供給する場合について説明する。この場合、バルブ311、バルブ313及びバルブ315が閉じられ、バルブ312、バルブ314及びバルブ316が開けられる。この結果、低温温調ユニット301に貯蔵されている液体は、低温温調ユニット301から配管326及び配管325を介して流路71に供給される。また、流路72から出てきた液体は、配管329及び配管328を介して低温温調ユニット301に戻る。このようにして、低温温調ユニット301に貯蔵されている液体が基台10に供給されて循環する。また、この際、高温温調ユニット302に貯蔵されている液体は、配管321、配管322、配管323を循環することになり、基台10には供給されない。
【0099】
図10に示す例において、高温温調ユニット302に貯蔵されている液体をチラー300から供給する場合について説明する。この場合、バルブ312、バルブ314及びバルブ316が閉じられ、バルブ311、バルブ313及びバルブ315が開けられる。この結果、高温温調ユニット302に貯蔵されている液体は、配管323及び配管324を介して流路71に供給される。また、流路72から出てきた液体は、配管330、配管321を介して高温温調ユニット302に戻る。このようにして、高温温調ユニット302に貯蔵されている液体が基台10に供給されて循環する。この際、低温温調ユニット301に貯蔵されている液体は、配管326、配管327、配管328を循環することになり、基台10には供給されない。
【0100】
なお、
図10に示す例では、チラー300の内部にバルブ311〜バルブ316が設けられる場合を例に示したが、これに限定されるものではなく、チラー300の外部にバルブ311〜バルブ316が設けられても良い。
【0101】
図11は、低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒のみを流路に流す場合における効果について示す図である。
図11に示すように、許容温度が「70度」の場合であって、あるプロセスステップでは「0度」でエッチングし、次のステップでは「80度」でエッチングするような場合を用いて説明する。この場合、チラー温度により基台10を「−10度」で制御し、ヒーター9aにより静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「0度」に設定する。その後、次のステップでは、静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にする。ここで、静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にする際、ヒーター温度だけを調整すると温度差ΔT=70度を超えてしまう。そこで、チラー70による基台10の温度を「+30度」に調整し、ヒーター温度を調整して静電チャック9の温度(ウエハ温度)を「80度」にすることで、温度差が「70度」を超えることなくエッチングすることができる。この結果、接合層20の剥離を防止可能となる。
図11中の温度Δ70度制限は、許容温度「70度」と同じ意味である。
【0102】
このように、基台10の温度を制御するチラーは、低温温調ユニット及び高温温調ユニットからなり、基台10の温度の制御時において、低温温調ユニット若しくは高温温調ユニットのいずれか一方からの冷媒のみを流路に流すことで、チラーの構造を簡単にすることができ、省スペースかつ低コストにて実現可能となる。例えば、可変バルブを使用する必要が無いため低コストとなる。
【0103】
(チラーからの液体の循環)
また、例えば、上述の実施形態では、チラーから提供する液体の温度を変える場合を例に示したが、これに限定されるものではない。例えば、チラーにより提供される液体の温度とヒーターの温度との温度差が接合層20の許容範囲外となる場合に、チラーから提供される液体が基台10を循環しないようにしても良い。この場合、チラーによる冷却は行われず、基台10の温度や基台10内に設けられる配管内に残った液体の温度は、ヒーターの熱により上がることになる。この結果、接合層20における温度差が許容範囲外となることを防止可能となる。
【0104】
具体的には、第1の温度と第4の温度との差が接合層20の許容温度を超える場合、第1の処理の後、第1の温度を、第4の温度との温度差が接合層20の許容温度となるように第3の温度に変更する場合に、基台10内の冷媒の循環を停止する工程を実行する。
【0105】
図12は、基台10内の冷媒の循環を停止するチラーの構造の一例を示す図である。
図12に示す例では、チラー400は、三方弁410を有する。ここで、温調ユニット401により提供される液体を提供しても接合層20の温度差が許容範囲内である場合には、三方弁410の向きを矢印430に示される方向に設定する。この場合、チラー400から提供される液体は、配管430、三方弁410を介して流路71に供給され、流路72から出力された液体が配管450を介してチラー400に供給されることで、基台10内を冷媒が循環する。
【0106】
また、温調ユニット401により提供される液体を提供しても接合層20の温度差が許容範囲外となる場合には、三方弁410の向きを矢印440に示される方向に設定する。この場合、チラー400から提供される液体は、配管430、配管420、配管450を循環することになり、基台10内を冷媒は循環しない。
【0107】
なお、
図12に示す例では、三方弁を用いる場合を例に示したが、これに限定されるものではない。また、
図12に示す例では、チラー400が、温調ユニット401を1つ有する場合を例に示したが、これに限定されるものではない。例えば、チラー400が、低温温調ユニットと高温温調ユニットとを有しても良い。この場合、例えば、高温温調ユニットにより提供される液体では接合層20の温度差が許容範囲を超えてしまう場合に、基台10内の冷媒の循環を停止する工程を実行することになる。
【0108】
このように、1の温度と第4の温度との差が接合層20の許容温度を超える場合、第1の処理の後、第1の温度を、第4の温度との温度差が接合層20の許容温度となるように第3の温度に変更する場合に、基台10内の冷媒の循環を停止する工程を実行することで、接合層20の温度差が許容範囲を超えてしまう事態を簡単に回避可能となる。
【0109】
また、基台10内の冷媒の循環を停止する工程を実行する場合、チラーとは別系統の冷却機構を更に設けることで、基台10の放熱能力を高めても良い。例えば、基台10を空冷する機構を更に設けても良く、基台10を囲むように放熱器を設置することで、基台10の放熱能力を高めても良い。