特許第6014587号(P6014587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテグリス・インコーポレーテッドの特許一覧 ▶ バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000003
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000004
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000005
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000006
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000007
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000008
  • 特許6014587-高表面抵抗率の静電チャック 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014587
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】高表面抵抗率の静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20161011BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALI20161011BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   B23Q3/15 D
   H02N13/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-512146(P2013-512146)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-533609(P2013-533609A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】US2011037712
(87)【国際公開番号】WO2011149918
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】61/349,504
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クツク,リチヤード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,デール・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,リユドミーラ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク,ジユリアン
(72)【発明者】
【氏名】スローネン,デイビツド
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/043519(WO,A1)
【文献】 特開2008−160009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0284894(US,A1)
【文献】 特表2009−527923(JP,A)
【文献】 特開2003−282688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/15
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックであって、
電極と、
前記電極における電圧によって作動して電荷を形成して、基板を前記静電チャックに静電的にクランプする表面層とを含み、前記表面層が、
(i)誘電体と、
(ii)ポリマーを含み、かつ約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有する電荷制御層とを含み、電荷制御層に含まれるポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含み、前記表面層がさらに、
(iii)複数のポリマー突出部を含み、前記複数のポリマー突出部が、前記複数のポリマー突出部を取り囲む前記電荷制御層の部分を超える高さまで延在して、前記基板の静電的なクランプ中に前記複数のポリマー突出部上で基板を支持する、静電チャック。
【請求項2】
前記電荷制御層が約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有する、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記複数のポリマー突出部を形成するポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記複数のポリマー突出部を形成するポリマーがポリエーテルイミド(PEI)を含み、前記電荷制御層がポリエーテルイミド(PEI)から形成され、前記電荷制御層が約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有する、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
静電チャックの製造方法であって、
前記静電チャックにおける表面層を形成するステップを含み、前記表面層が、
(i)誘電体と、
(ii)ポリマーを含み、かつ約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有する電荷制御層とを含み、電荷制御層に含まれるポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含み、前記表面層がさらに、
(iii)複数のポリマー突出部を含み、前記複数のポリマー突出部が、
前記複数のポリマー突出部を取り囲む前記電荷制御層の部分を超える高さまで延在して、前記基板の静電的なクランプ中に前記複数のポリマー突出部上で基板を支持する、方法。
【請求項6】
前記静電チャックの電源、電極構造、誘電体厚さ、機械的性質、およびクランプ力の少なくとも1つを変更しないことを含む、前記静電チャックの機能を変更することなく、前記静電チャックの使用中のウエハ固着の頻度を低下させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電荷制御層を形成するステップが、すでに作製された表面層の表面抵抗率を変化させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記表面抵抗率を変化させるステップが、反応性イオンエッチング法を用いて、すでに作製された前記表面層を処理するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面抵抗率を変化させるステップが、すでに作製された前記表面層に対してプラズマ処理、化学処理、および再水素化処理の少なくとも1つを行うステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面抵抗率を変化させるステップによって、処理前の表面抵抗率の±25%の表面抵抗率が処理後に得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記電荷制御層を形成するステップの前に、
前記静電チャックの誘電体層を前記静電チャックの絶縁層に接合するステップと、
ケイ素を含有する窒化物、ケイ素を含有する酸化物、ケイ素を含有する炭化物、非化学量論量のケイ素を含有する窒化物、非化学量論量のケイ素を含有する酸化物、非化学量論量のケイ素を含有する炭化物、炭素、および炭素の窒化物化合物の少なくとも1つを含む接着コーティング層を前記静電チャックの前記誘電体層にコーティングするステップと、
電荷制御層ポリマーを含む電荷制御層を前記静電チャックの前記表面に接合するステップであって、前記電荷制御層ポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含む、前記接合するステップと、
前記電荷制御層上にフォトレジストを堆積するステップと、
前記電荷制御層に対して反応性イオンエッチングを行って、前記電荷制御層に形成される複数のポリマー突出部を取り囲む、前記電荷制御層の一部を除去するステップと、
前記静電チャックから前記フォトレジストを除去し、それによって前記電荷制御層と同じ電荷制御層ポリマーから形成される前記複数のポリマー突出部を露出させるステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/349,504号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
静電チャックは、基板を機械的に締め付けることなく、製造プロセス中に基板の保持および支持を行い、基板からの熱の除去をも行う。静電チャックの使用中、半導体ウエハなどの基板の裏側が、静電力によって静電チャックの面にくっつく。基板は、電極を覆う材料の表面層によって静電チャックの面内の1つ以上の電極から間隔を開けて配置される。クーロンチャックにおいては、表面層は電気的に絶縁されるが、ジョンソン・ラーベック型(Johnsen−Rahbek)静電チャックにおいては、表面層は弱導電性である。静電チャックの表面層は平坦であってよいし、覆われた電極から基板の裏側をさらに引き離す1つ以上の突出部、またはその他の表面特徴を有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
静電チャックの設計においては、チャック出力をなくした後でウエハまたは他の基板がチャック表面に静電的に付着する場合に生じる「ウエハ固着」の問題の回避が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によると、静電チャックが提供される。本発明の静電チャックは、電極と、電極中の電圧によって作動して電荷を形成して基板を静電チャックに静電的にクランプする表面層とを含み、表面層は、約1011Ω/□を超える表面抵抗率を有する電荷制御層を含む。
【0005】
さらに、関連する実施形態においては、電荷制御層は、約1012Ω/□を超える、または約1013Ω/□を超える、または約1×1011Ω/□〜約1×1016Ω/□、または約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□、または約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有することができる。電荷制御層は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つなどのポリマーを含むことができる。電荷制御層は、ケイ素を含有する窒化物、ケイ素を含有する酸化物、ケイ素を含有する炭化物、非化学量論量のケイ素を含有する窒化物、非化学量論量のケイ素を含有する酸化物、非化学量論量のケイ素を含有する炭化物、炭素、および炭素の窒化物化合物の少なくとも1つを含むことができ;たとえばSiO、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、およびダイヤモンド状炭素の少なくとも1つを含むことができる。本明細書において使用される場合、「SiO」は、元素水素を含有することができ、水素は無視することができ(たとえば最大約20原子パーセントで存在することができる)、変数xは、たとえば0〜2の範囲であってよく、変数yは、たとえば0〜1.4の範囲であってよく、xおよび/またはyの場合の値0は、酸素および/または窒素が存在しない場合があることを意図している。あるいは、このような範囲内で、1つ以上の酸素および窒素が、少なくともある0でない量で存在しうる。
【0006】
さらなる実施形態においては、表面層は、複数のポリマー突出部を含むことができ、それらは、複数のポリマー突出部を取り囲む電荷制御層の部分を超える高さまで延在し、基板の静電的なクランプ中に複数のポリマー突出部上で基板を支持することができる。複数のポリマー突出部が形成されるポリマーは、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含むことができる。複数のポリマー突出部は、近接するポリマー突出部の組の間の中心間距離で測定して表面層全体に実質的に等間隔で配置することができ;三角形のパターンで配列することができる。
【0007】
本発明による別の一実施形態においては、静電チャックの製造方法が提供される。この方法は、静電チャック中に電荷制御層を形成するステップを含み、電荷制御層は約1011Ω/□を超える表面抵抗率を有する。
【0008】
さらに、関連する実施形態においては、電荷制御層は約1012Ω/□を超える、または約1013Ω/□を超える、または約1×1011Ω/□〜約1×1016Ω/□、または約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□、または約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の表面抵抗率を有することができる。本発明の方法は、静電チャックの機能を変更することなく、たとえば静電チャックの電源、電極構造、誘電体厚さ、機械的性質、およびクランプ力の少なくとも1つを変更することなく、静電チャックの使用中のウエハ固着の頻度を低下させることを含む。本発明の方法は、所望のレベルの表面抵抗率を達成するために、電荷制御表面層中の原子パーセントでのケイ素の他の物質に対する比を制御することを含む。電荷制御層を形成するステップは、すでに形成された表面層の表面抵抗率を変化させるステップを含む。表面抵抗率を変化させるステップは、反応性イオンエッチングを用いて、すでに形成された表面層を処理するステップを含む。表面抵抗率を変化させるステップは、すでに形成された表面層のプラズマ処理、化学処理、および再水素化処理の少なくとも1つを行うステップを含む。表面抵抗率を変化させるステップによって、処理前の表面抵抗率の±25%以内となる表面抵抗率を処理後に有することができる。本発明の方法は、電荷制御層を形成するステップの前に:静電チャックの誘電体層を静電チャックの絶縁層に接合するステップと;静電チャックの誘電体層に、ケイ素を含有する窒化物、ケイ素を含有する酸化物、ケイ素を含有する炭化物、非化学量論量のケイ素を含有する窒化物、非化学量論量のケイ素を含有する酸化物、非化学量論量のケイ素を含有する炭化物、炭素、および炭素の窒化物化合物の少なくとも1つを含む接着コーティング層をコーティングするステップと;電荷制御層ポリマーを含む電荷制御層を静電チャックの表面に接合するステップであって、電荷制御層ポリマーがポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含むステップと;電荷制御層の上にフォトレジストを堆積するステップと;電荷制御層の反応性イオンエッチングを行って、電荷制御層中に形成される複数のポリマー突出部を取り囲む電荷制御層の一部を除去するステップと;静電チャックからフォトレジストを除去し、それによって電荷制御層と同じ電荷制御層ポリマーから形成される複数のポリマー突出部を露出させるステップとを含むことができる。
【0009】
以上のことは、複数の異なる図面にわたって同様の参照文字が同じ部分を意味する添付の図面中に示されるような本発明の例示的実施形態に関する以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに本発明の実施形態の説明において強調が行われている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による静電チャックの上層の断面図である。
図2】本発明の一実施形態による静電チャックのさらなる層を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による静電チャックの表面上の突出部のパターンの図である。
図4】本発明の一実施形態による静電チャックの表面の外観の図である。
図5】厚い酸化物または窒化物の絶縁層を有する基板を従来技術の静電チャックの表面から上昇させるリフトピンを示す図である。
図6】本発明の一実施形態による静電チャックの表面から基板が上昇するときの、厚い酸化物または窒化物の絶縁層を有する基板の図である。
図7】従来技術の静電チャックの表面から基板が上昇するときの、厚い酸化物または窒化物の絶縁層を有する基板の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の例示的実施形態の説明を以下に行う。
【0012】
本発明の一実施形態によると、たとえば約1011Ω/□を超える、たとえば約1012Ω/□を超える、および約1013Ω/□を超えるなどの高い表面抵抗率を有する電荷制御表面層を含む静電チャックが提供される。このような高い表面抵抗率を有する電荷制御表面層を含むことによって、ウエハの静電チャックへの固着は防止されるが、静電チャックと基板との間の静電引力には干渉しないことが分かった。本発明の一実施形態によると、高表面抵抗率の電荷制御表面層は、最初はより低い表面抵抗率を有する表面層の表面抵抗率を、たとえばプラズマ処理、化学処理、および/または、再水素化処理を含む反応性イオンエッチングによって変化させることによって作製することができる。
【0013】
理論によって束縛しようと望むものではないが、本発明の一実施形態による電荷制御表面層の高表面抵抗率によって、静電チャックと基板との間の摩擦電気効果の影響が抑制されやすくなると考えられる。このことは、基板に厚い絶縁コーティングがコーティングされる場合に特に問題となりうる。厚い絶縁体(酸化物または窒化物など)がコーティングされた基板が静電クランプ面に固着しやすくなる場合があり、その結果、ウエハの取り扱いに問題が生じることがあり、さらにはウエハを廃棄する必要が生じる場合もある。このような問題は、静電的および機械的の両方のクランプシステムにおいて発生しうる。本発明の一実施形態によると、約1011Ω/□を超える、または本明細書に記載の他の範囲などの高い表面抵抗率までクランプ面の表面抵抗率を制御することによって、絶縁体がコーティングされた基板をチャックから取り外す際の基板およびクランプの摩擦帯電の影響が最小限になると考えられる。このような高表面抵抗率は、静電的および機械的の両方のクランプシステムで利用することができる。本発明の一実施形態によると、ウエハ固着を防止するための他の技術で行われているような、クランプの機能を変更することなく、たとえば静電チャックの電源、電極構造、誘電体厚さ、機械的性質、および/またはクランプ力を変更することなく、ウエハ固着を防止することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による静電チャックの上層の断面図である。静電チャックは、基板を搭載するための表面上の突出部101を特徴とすることができる。静電チャックは、電荷制御表面層102を特徴とし、これに突出部101が付着することができる。電荷制御層102の目的は、表面電荷を放出させるための導電層を提供することである。電荷制御層102によってウエハ固着の可能性が減少する。たとえば、約1011Ω/□を超える、たとえば1012Ω/□を超える、約1013Ω/□を超える、および/または約1×1011Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲、および/または約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲、および/または約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲などの適切な範囲内の表面抵抗率を有する電荷制御層102によってウエハ固着が減少する。このわずかに導電性の表面層によって電荷が大地(図示せず)に放出されるが、静電チャックと基板との間の静電引力は妨害されない。接着層103は、電荷制御層102の下に存在することができる。あるいは、接着層103は存在しなくてもよい。接着層103の下(または電荷制御層102のすぐ下)において、静電チャックは、上にある層の誘電体層105への接着を促進する接着コーティング104を含むことができる。接着コーティング104は、たとえば、ケイ素を含有する窒化物、酸化物、炭化物、およびこれらの非化学量論量の種類のものを含むことができ、たとえば限定するものではないがSiO、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または炭化ケイ素を含むことができる。接着コーティング層は、炭素または炭素の窒化物化合物を含むこともでき;ダイヤモンド状炭素を含むことができ;および/または上記のいずれかの組み合わせを含むことができる。接着コーティング104の下には、アルミナ誘電体などの誘電体層105が存在する。本明細書において使用される場合、用語「表面層」は、静電チャック中に存在する電荷制御層102と突出部101を含んでいる。
【0015】
本発明による一実施形態においては、突出部101は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマーからできていてよい。電荷制御表面層102は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの突出部101と同じポリマー物質でできていてよい。電荷制御表面層102および突出部101は異なる材料でできていてよい。突出部および電荷制御表面層は、接触冷却を促進するために静電チャックと基板との接触を促進しながら、望ましくないパーティクルの発生の軽減にも役立つ。静電チャックのガスシールリング(図示せず)は、突出部101と同じポリマーなどのポリマーでできていてよい。接着層103は、電荷制御層102とは異なるポリマーを含むことができる。特に、電荷制御層102がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される場合、接着層103はポリエーテルイミド(PEI)を含むことができる。
【0016】
本発明による別の一実施形態においては、チャック中の電荷制御表面層102および/または突出部101は、ポリマーを含む必要はなく、ケイ素を含有する窒化物、酸化物、炭化物、およびこれらの非化学量論量の種類のものを含むことができ、たとえば限定するものではないがSiO、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または炭化ケイ素を含むことができる。電荷制御表面層102中の原子パーセントでのケイ素の他の物質に対する比は、たとえば表面抵抗率を増加させるためにケイ素の他の物質に対する比を増加させることによって、および/または表面抵抗率を低下させるためにケイ素の他の物質に対する比を減少させることによって、所望のレベルの高表面抵抗率を実現するために制御することができる。電荷制御表面層102は、炭素または炭素の窒化物化合物を含むこともでき;ダイヤモンド状炭素を含むことができ;および/または上記のいずれかの組み合わせを含むことができる。所望の範囲内の表面抵抗率を有する他の物質を電荷制御表面層102に使用することができる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による静電チャックのさらなる層を示す断面図である。突出部201、電荷制御層202、接着層203、接着コーティング204、および誘電体層205に加えて、静電チャックは金属電極206を含む。金属電極206は、導電性エポキシ接着剤208によって電極ピン207に接合される。誘電体層205は、セラミック間の接着剤(ceramic to ceramic bond)210によってアルミナ絶縁体などの絶縁層209に接合される。セラミック間の接着剤210は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または変性PTFE(PTFE以外にPFAおよび/またはFEPを含む)などのポリマーから形成されていてよい。さらに、セラミック間の接着剤210は、パーフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマーから形成されていてよい。絶縁体209の下には、熱伝導性接着剤211(たとえばBedford,MA,U.S.A.のTRA−CON,Inc.より販売されるTRA−CON熱伝導性エポキシを使用して形成することができる)および水冷ベース212が存在する。接着コーティング204は、静電チャックの端部の下(ガスシールリングの端部の下を含む)まで延在して金属減少層213を形成することができ、これによって、静電チャックの端部に衝突してアルミニウム粒子が基板に衝突するのが防止される。
【0018】
本発明の一実施形態によると、突出部201、電荷制御層202、または静電チャックの他の構成要素に使用されるポリエーテルイミド(PEI)は、約12ミクロン〜約25ミクロンの間の厚さの充填剤を含有しない非晶質ポリエーテルイミド(PEI)から形成することができる。たとえば、Sabic Innovative Plastics Holdings BVより販売されULTEM 1000の商品名で販売されるPEIを使用することができる。突出部201および/または電荷制御層202またはその他の構成要素がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される場合、それらは約12ミクロン〜約25ミクロンの間の厚さの充填剤を含有しないPEEKから製造することができる。たとえば、West Conshohocken,PA,U.S.AのVictrex U.S.A.,Inc.より販売されVictrex(登録商標)APTIV PEEK(商標)FILM,2000−006(充填剤を含有しない非晶質グレード)の商品名で販売されるPEEKを使用することができる。
【0019】
本発明の一実施形態による静電チャックは、米国特許出願公開第2009/0284894号明細書として公開されている2009年5月15日に出願された米国特許出願第12/454,336号明細書の静電チャックの特徴を含むことができ、これらの教示はそれらの全体が参照により本明細書に援用される。特に、等間隔の突出部、三角形パターンの突出部、および低パーティクル発生に関する特徴を含むことができ、その他の特徴も含むことができる。さらに、本発明の一実施形態による静電チャックは、2010年5月13日に出願され“Electrostatic Chuck With Polymer Protrusions”と題される国際出願PCT/US2010/034667号明細書の静電チャックの特長を含むことができ、これらの教示はそれらの全体が参照により本明細書に援用される。特に、ポリマー突出部および電荷制御層に関する特徴を含むことができ、その他の特徴も含むことができる。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態による静電チャックの表面上の突出部314のパターンの図であり、この突出部パターンは基板と突出部314との間の力を減少させるために使用される。このような力を均等に分散させる突出部パターンを使用することができ、たとえば三角形または全体的に六角形の突出部パターンを使用することができる。本明細書において使用される場合「三角形」パターンは、規則的に繰り返す突出部の正三角形のパターンを意味することを意図しており、それによって突出部が実質的に等間隔で配置されることを理解されたい(このようなパターンは、正六角形の頂点を形成する6つの突出部の配列の中央に中央突出部を有する全体的に六角形の形状であると見ることもできる)。力は、突出部の直径315を増加させることによって、または突出部314の中心間距離316を減少させることによっても減少させることができる。図3の実施形態に見られるように、突出部は、均等な間隔の配列で配置することができ、各突出部は、中心間間距離316で、隣接する突出部と実質的に等間隔で配置される。このような間隔によって、基板の裏側の大部分は突出部の頂部と接触し、ヘリウムまたはその他のガスが裏側を冷却するための間隙が突出部の間に残される。これとは対照的に、このような突出部の間隔が存在しない場合は、突出部の10%以下のわずかな部分のみしか基板と接触することができない。本発明の一実施形態によると、基板は、突出部上部表面積の25%を超える部分と接触することができる。
【0021】
一例では、静電チャックは、300mm構成であってよく、アルミニウムベース、厚さ約0.120インチのアルミナ絶縁体209、厚さ約0.004インチのアルミナ誘電体205を含むことができ、静電チャックに搭載される基板を回転させたり傾斜させたりするよう設計された観点プラテンを有することができる。静電チャックの直径は、たとえば300mm、200mm、または450mmであってよい。突出部314は、たとえば中心間距離316が約6mm〜約8mmである三角形パターンであってよい。突出部の直径315は、たとえば約900ミクロンであってよい。突出部314の高さは、たとえば約3ミクロン〜約12ミクロン、たとえば約6ミクロンであってよい。電荷制御層202がそうなりうるように、突出部314は全体的にポリマーから形成されてよい(図2参照)。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態による静電チャックの表面の外観の図である。静電チャックの表面は、ガス入口417、接地ピン通路418、ガスシールリング419、それ自体のガスシールリング(図4中のリフトピン通路420の外部の薄い色の構造)を含むリフトピン通路420、およびチャックの中央の421における小さなガス入口(図4中では入口は見えない)を含む。接地ピン通路418は、それ自体のガスシールリング(図4中の接地ピン通路418の外側のリング)を含むことができる。詳細図(図4の挿入図422)は突出部414を示している。ガスシールリング419(ならびにリフトピン通路420および接地ピン通路418のガスシールリング)は、幅が約0.1インチであってよく、約3ミクロン〜約12ミクロン、たとえば約6ミクロンなどの突出部414と同じ高さを有してよいが、他の幅および高さも可能である。
【0023】
本発明の一実施形態によると、静電チャックは、最初にセラミック間の接着剤を使用してセラミック組立体を作製する方法によって作製することができる。たとえば、図2の実施形態に関連して前述した接合物質を使用して、誘電体層205を絶縁層209に接合することができる。次に、この得られたセラミック組立体に、図1の実施形態に関連して前述した物質などの接着コーティング204を約1または2ミクロンの厚さでコーティングする。次に、電荷制御層202および突出部201を構成するポリマー物質を接着コーティング204の表面に接合する。次に、(次に塗布される)フォトレジストが付着しやすくなるように、ポリマー物質の表面をプラズマ処理することができる。次に、ポリマー物質上にフォトレジストを堆積し、露光し、現像する。次に、反応性イオンエッチングを用いて、ある厚さのポリマー物質(約3ミクロン〜約12ミクロンの間など、特に約6ミクロン)を除去して、突出部201の間の領域を形成する。エッチングで除去される量(その結果として突出部の高さとなる)は、静電チャックに使用される裏側のガスの圧力に関して最適化することができる。突出部の高さは、好ましくは、裏側の冷却に使用されるガスの平均自由行程にほぼ等しい、または実質的に等しい。エッチング後、次にフォトレジストを除去する。次に、形成された表面層の表面抵抗率を変化させることによって、高表面抵抗率の電荷制御表面層を形成することができる。たとえば、形成された表面層を、プラズマ処理、化学処理、および/または、再水素化処理を含む反応性イオンエッチングを用いて処理することによって、より高い表面抵抗率を有するように表面層を変化させることができる。プラズマ処理は酸素プラズマ処理であってよい。次に、プロセスを、静電チャックの最終組立体まで進行させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、高表面抵抗率の電荷制御表面層は、最初により低い表面抵抗率を有する表面層の表面抵抗率を変化させることによって形成することができる。表面抵抗率の変更によって、処理前の表面抵抗率の±25%以内の表面抵抗率を処理後に有することができる。表面抵抗率の変更は、より低い表面抵抗率の表面層のパターン化を行った後に行うことができる。たとえば、最初の表面抵抗率がより低い表面層は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマーを含むことができる。あるいは、最初の表面抵抗率がより低い表面層は、ケイ素を含有する窒化物、酸化物、炭化物、およびこれらの非化学量論量の種類のものを含むことができ、たとえば限定するものではないがSiO、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または炭化ケイ素を含むことができる。最初の表面抵抗率がより低い表面層は、炭素または炭素の窒化物化合物を含むこともでき;ダイヤモンド状炭素を含むことができ;および/または上記のいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、最初に形成された表面層は、反応性イオンエッチングなどの前述のいずれかの方法によって処理することで、約1011Ω/□を超える、たとえば約1012Ω/□を超える、約1013Ω/□を超える、および/または約1×1011Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲、および/または約1×1012Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲、および/または約1×1013Ω/□〜約1×1016Ω/□の範囲の表面抵抗率を実現することができる。本発明の一実施形態によると、West Conshohocken,PA,U.S.A.のASTM Internationalより発行された“Standard Test Methods for DC Resistance or Conductance of Insulating Materials”と題されるASTM Standard D257−07(この開示全体が参照により本明細書に援用される)に記載の規格に準拠して表面抵抗率を測定することができる。標準的な表面抵抗率プローブ、たとえばMedina,NY,U.S.AのTREK,Inc.より販売されるTREK環状プローブを用いて、基板をクランプする静電チャックの表面上で表面抵抗率を測定することができる。静電チャックの表面が突出部を含む場合、表面抵抗率は、突出部間の表面領域上、または突出部の表面上のいずれかで測定することができる。約1014Ω/□を超える表面抵抗率の場合、物理吸着した水が表面抵抗率の測定に影響する場合があるので、好ましくは乾燥環境または真空中での測定が使用される。
【0026】
本発明の一実施形態によると、最初に表面抵抗率がより低い層を変化させるのではなく、より高い表面抵抗率の層を静電チャックに直接取り付けることもできる。また、反応性イオンエッチング法などのエッチング法を用いて、最初の表面抵抗率がより低い層の少なくとも一部を最初に除去した後で、より高い表面抵抗率の層を取り付けることができる。たとえば、最初の表面抵抗率がより低い表面層がケイ素を含有する窒化物、酸化物、炭化物、およびこれらの非化学量論量の種類のものを含む場合、静電チャックの絶縁層が露出するまで反応性イオンエッチング層によって表面層の一部を除去することができ、次に表面抵抗率がより高いコーティングを塗布することができる。
【0027】
理論によって束縛しようと望むものではないが、ウエハ固着が結果として生じる表面摩擦帯電効果に基づいた起こりうる機構について議論し、これは本発明の一実施形態による高表面抵抗率層によって軽減することができる。静電的なクランプによって、静電チャック表面と基板との間に密接接触界面が形成されて、ファンデルワールス力などの強い分子引力が発生する。図5は、従来技術の静電チャック524の表面からの、厚い酸化物または窒化物の絶縁層を有する基板523の上昇を示す図である。リフトピン525が押し上げられると、基板523と静電チャック524との間の密接接触界面が引き離され、表面摩擦帯電が発生する。基板523は負に帯電し(電子を引き寄せ)、静電チャック524の表面は基板の酸化物表面に電子526を引き渡す。この場合に発生すると考えられる摩擦帯電は、2つの物体が互いに接触し次に離れる結果生じる電子移動の過程である。接頭語“tribo”は「摩擦」を意味する。摩擦帯電過程によって、一方の物体の表面上の電子が増加し、したがって負に帯電するようになり、もう一方の物体は表面から電子が失われ、したがって正に帯電するようになる。
【0028】
図6は、本発明の一実施形態による静電チャック624の表面から基板623が上昇するときの、厚い酸化物または窒化物の絶縁層627を有する基板623の図である。一般に、基板623は静電チャック624の表面から厳密に平行には持ち上げられず、したがって基板623と静電チャック624との間の最終接点628が存在する。従来技術の静電チャックでは、最終接点628がウエハ固着の場所となりうる。しかし、本発明の一実施形態による静電チャック624では、高抵抗率表面629は、移動せずにその表面上に残存する正電荷630を有する。基板の酸化物または窒化物の絶縁層627の負電荷も同様に移動しない。チャック624の表面および基板623の表面は反対の極性で帯電するが、これらの電荷は不規則に配置して分散しており、したがって顕著なウエハ固着が生じるには弱すぎる。したがって、本発明の一実施形態による高抵抗率表面629によって、ウエハ固着の防止が促進される。
【0029】
対照的に、図7は、従来技術の静電チャック724の表面から基板723が上昇するときの、厚い酸化物または窒化物の絶縁層727を有する基板723の図である。この場合、静電チャック724は、表面抵抗率がより低い表面729を有する。基板723の負電荷731と抵抗率のより低い表面729の正電荷730との両方が移動可能であり;電荷の分離732が基板723中で発生し、電荷731および730が最終接点728に向かって移動することで強いコンデンサが形成され、それによって基板723のかどが静電チャック724に固着する。
【0030】
起こりうる故障形態の1つでは、導電ビームが照射される加熱黒鉛ターゲットからヒ素および/またはリンが放出される場合に、使用中に静電チャックの表面抵抗率が実質的に低下しうる。放出されたヒ素および/またはリンは、冷却された静電チャックの表面上に堆積され濃縮されることがあり、それによってその表面抵抗率が低下し、続いて場合によりウエハの固着が生じうる。したがって、本発明の一実施形態による表面抵抗率は、このようなビーム堆積物の作用によって表面抵抗率が望ましくない低レベルまで低下しないように十分高くなるべきである。
【0031】
本発明の一実施形態により、以下の表1に示すように低抵抗率表面および高抵抗率表面を有する静電チャックを使用して、酸化物/窒化物コーティングされたウエハを用いた実験を行った。Medina,NY,U.S.AのTREK,Inc.より販売されるTREK環状プローブを使用して表面抵抗率を測定した。酸化物ウエハは、低表面抵抗率の静電チャックのすべて固着し、通常のウエハサイクルを行うことはできなかった。しかし、酸化物ウエハは、いずれの高表面抵抗率の静電チャックにも固着しなかった。したがって本発明による一実施形態は、ウエハ固着の軽減に成功することが示された。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の一実施形態によると、静電チャックは、約6ミクロンの高さを有し、非常に平滑なウエハ接触面を有する突出部を含むことができる。たとえば、突出部は、ウエハ接触面上の表面粗さが約0.02μm〜約0.05μmとなることができる。同様に、ガスシールリングも同様の平滑面を有することができ、それによって基板が良好にシールされる。本発明の一実施形態によると、静電チャックのガスシールリングは、約8マイクロインチ未満、または約4マイクロインチ未満、または約2マイクロインチ未満、または約1マイクロインチ未満の表面粗さを有することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、静電チャックはクーロンチャックである。その誘電体としては、アルミニウム、たとえばアルミナ、または窒化アルミニウムを挙げることができる。本発明によるさらなる一実施形態においては、静電チャックはジョンソン・ラーベック型静電チャックである。あるいは、静電チャックはジョンソン・ラーベック型静電チャックでなくてもよく、ジョンソン・ラーベック(JR)力または部分ハイブリッド(partial hybrid)ジョンソン・ラーベック力がウエハまたは基板に作用しないように誘電体を選択することができる。
【0035】
本明細書において引用されるすべての特許、公開出願、および参考文献の教示は、それらの全体が参照により援用される。
【0036】
本発明の例示的実施形態を参照しながら本発明を詳細に示し説明してきたが、それらの形態および詳細の種々の変更を、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく行えることは、当業者には理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7