(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層と、Ni基合金から構成される第3金属層とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材から構成され、
軸部と、
前記軸部から放射方向に広がる鍔部とを備え、
少なくとも前記軸部の延びる軸方向の一方側において、前記軸部の先端に前記第3金属層を有している、電池用端子。
前記凹部の内側面部において、前記凹部の開口部側の前記第3金属層の厚みは、前記凹部の内底面部側の前記第3金属層の厚みよりも大きい、請求項5〜7のいずれか1項に記載の電池用端子。
前記クラッド材は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置され、前記第1金属層を構成するAl基合金と前記第2金属層を構成するCu基合金とが反応するのを抑制するための反応抑制層をさらに含んでいる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電池用端子。
Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層と、Ni基合金から構成される第3金属層とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材を形成する工程と、
軸部と前記軸部から放射方向に広がる鍔部とを形成するように前記クラッド材をプレス加工する工程と、を備え、
前記プレス加工する工程は、少なくとも前記軸部の延びる軸方向の一方側において、前記軸部の先端に前記第3金属層を有するようにプレス加工する工程を含む、電池用端子の製造方法。
前記プレス加工する工程は、前記鍔部の前記軸方向の一方側の外縁部において、Cu基合金から構成される前記第2金属層が露出するようにプレス加工する工程をさらに含む、請求項12または13に記載の電池用端子の製造方法。
前記クラッド材を形成する工程は、前記第3金属層の厚みが、前記第1金属層の厚みよりも小さく、かつ、前記第2金属層の金属層の厚みよりも小さくなるように、前記クラッド材を形成する工程を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の電池用端子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたコネクタ端子では、かしめにより第1端子部材と第2端子部材とが密着しているとしても、第1端子部材と第2端子部材とが物理的に接触しているだけであるため、第1端子部材と第2端子部材との間(界面)に水などが侵入しやすい。このため、水を介して第1端子部材と第2端子部材との間(界面)に電気が流れ、その結果、イオン化しやすい金属(Al)から構成される端子部材が腐食(消耗)する現象(異種金属接触腐食)が発生しやすいという問題点がある。また、コネクタ端子のCuから構成される端子部材の表面にNiめっき処理が行われたとしても、Niめっき処理を行わない場合と同様に、物理的に接触しているだけの第1端子部材と第2端子部材との間において腐食が発生しやすいと考えられる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、金属層同士の界面において腐食が発生するのを抑制しつつ、電池端子を他の部材に溶接しやすくすることが可能な電池用端子およびその電池用端子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による電池用端子は、Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層と、Ni基合金から構成される第3金属層とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材から構成され、軸部と、軸部から放射方向に広がる鍔部とを備え、少なくとも軸部の延びる軸方向の一方側において、軸部の
先端に第3金属層を有している。なお、「Al基合金」には、純AlとAlを主に含むAl合金とが含まれており、「Cu基合金」には、純CuとCuを主に含むCu合金とが含まれており、「Ni基合金」には、純NiとNiを主に含むNi合金とが含まれている。
【0009】
この発明の第1の局面による電池用端子では、上記のように、Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層と、Ni基合金から構成される第3金属層とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材から構成する。これにより、金属層同士は、物理的に接触して接合されているのではなく、クラッド接合による金属原子の相互拡散によって原子的(化学的)に接合されているので、金属層同士が接合された界面に水などが侵入するのを抑制することができる。これにより、金属層同士が接合された界面において、腐食が発生するのを抑制することができる。また、電池用端子が、少なくとも軸部の延びる軸方向の一方側において、軸部の
先端にNi基合金から構成される第3金属層を有している。これにより、軸部の軸方向の一方側の
先端にCu基合金から構成される第2金属層のみが位置する場合と比べて、レーザ溶接などにより、電池用端子を他の部材に容易に溶接することができる。
【0010】
また、Ni基合金から構成される第3金属層をNiめっき処理により形成する場合には、Al基合金から構成される第1金属層がメッキ液や前処理液などによって腐食するのを抑制するために、Al基合金(第1金属層)が露出する部分にマスクを形成して、Niめっき処理を行う必要がある。このため、電池用端子の一部にのみマスクを形成するためにマスクの形成工程が複雑化し、その結果、電池用端子の製造工程が複雑化してしまう。これに対して、本発明の第1の局面による電池用端子では、上記のように、Ni基合金から構成される第3金属層を含むクラッド材を用いることによって、Niめっき処理の工程が不要になるので、電池用端子の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による電池用端子において、好ましくは、軸部の外側面部に第3金属層を有している。このように構成すれば、Cu基合金と比べて耐食性の高いNi基合金が軸部の外側面部に位置することによって、軸部の外側面部から第2金属層が腐食するのを抑制することができる。また、第3金属層が形成された電池用端子の軸方向の一方側の
先端だけでなく軸部の外側面部においても、レーザ溶接などにより、電池用端子を他の部材に容易に溶接することができる。
【0012】
上記第1の局面による電池用端子において、好ましくは、鍔部の軸方向の一方側の外縁部において、Cu基合金から構成される第2金属層が露出している。このように構成すれば、Cu基合金から構成される第2金属層は、Al基合金やNi基合金と異なり赤色に近い色味を有しているので、鍔部の軸方向の一方側の外縁部に露出する第2金属層に基づいて、電池用端子における軸方向の一方側を容易に確認することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、軸方向の一方側において、鍔部の外縁部に沿って第2金属層が環状に露出している。このように構成すれば、第2金属層が環状に露出することにより、第2金属層が露出する部分が軸部などに隠れて確認できなくなるのを効果的に抑制することができるので、電池用端子における軸方向の一方側を容易、かつ、確実に確認することができる。
【0014】
上記第1の局面による電池用端子において、好ましくは、軸方向の一方側の電池の集電体と接合する側において、軸
部には凹部が形成されており
、凹部の内側面
部に第3金属層を有している。このように構成すれば、凹部の内側面部が外側になるように凹部を折り曲げて他の部材(電池の集電体)にかしめることによって、軸方向の一方側における軸
部において、電池用端子を電池の集電体に容易に固定(仮固定)することができる。また、電池の集電体にかしめられた状態の電池用端子をレーザ溶接などにより電池の集電体に溶接する際に、折り曲げられた状態で電池の集電体に当接する軸部の
先端と、外側に露出する凹部の内側面部との各々に第3金属層が位置しているので、かしめた状態であっても、電池用端子を電池の集電体に容易に溶接することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、軸部の
先端における第3金属層の厚みは、凹部の内側面部における第3金属層の厚みよりも大きい。また、より好ましくは、軸部の
先端における第3金属層の厚みは、凹部の内側面部における第3金属層の厚みの2倍以上である。このように構成すれば、Ni基合金の熱伝導率はCu基合金の熱伝導率よりも小さいので、軸部の
先端においてNi基合金から構成される第3金属層の厚みを大きくすることにより、溶接時に発生した熱が第3金属層から第2金属層に逃げるのを抑制することができる。これにより、軸部の
先端における電池用端子の溶接性を向上させることができる。また、Ni基合金から構成される第3金属層の厚みを小さくすることにより、電池用端子をかしめる際にかしめ治具と接触する凹部の内側面部において、かしめ時に発生するかしめ治具と凹部の内側面部との間の摩擦熱を迅速に第2金属層に逃がすことができる。これにより、摩擦熱に起因してかしめ治具と凹部の内側面部とが焼き付くのを抑制することができる。
【0016】
上記軸
部に凹部が形成された構成において、好ましくは、凹部の内側面部において、凹部の開口部側の第3金属層の厚みは、凹部の内底面部側の第3金属層の厚みよりも大きい。このように構成すれば
、凹部の開口部側の第3金属層の厚みを大きくすることにより、軸部の
先端を溶接する際に発生した熱が、開口部側の第3金属層を介して、第2金属層に逃げるのを効果的に抑制することができる。これにより、電池用端子の溶接性をより向上させることができる。また、凹部の内底面部側の第3金属層の厚みを小さくすることにより、Ni基合金の使用量を減少することができる。
【0017】
上記軸
部に凹部が形成された構成において、好ましくは、凹部の内側面部に加えて、凹部の内底面部にも第3金属層を有しており、凹部の内側面部における第3金属層の厚みは、凹部の内底面部における第3金属層の厚みより小さい。このように構成すれば、かしめ治具と接触する凹部の内側面部において、Ni基合金から構成される第3金属層の厚みを小さくすることができるので、かしめ時に発生するかしめ治具と凹部の内側面部との間の摩擦熱を迅速に第2金属層に逃がすことができる。これにより、摩擦熱に起因してかしめ治具と凹部の内側面部とが焼き付くのを抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による電池用端子において、好ましくは、軸方向の一方側の
先端において、第3金属層の軸方向の厚みは20μm以上である。このように構成すれば、軸方向の一方側の
先端においてNi基合金から構成される第3金属層の厚みを十分に確保することができるので、溶接時に発生した熱が第3金属層から第2金属層に逃げるのを確実に抑制することができる。この結果、軸部の
先端における電池用端子の溶接性をより向上させることができる。
【0019】
上記第1の局面による電池用端子において、好ましくは、クラッド材は、第1金属層と第2金属層との間に配置され、第1金属層を構成するAl基合金と第2金属層を構成するCu基合金とが反応するのを抑制するための反応抑制層をさらに含んでいる。このように構成すれば、反応抑制層により、第1金属層を構成するAl基合金と第2金属層を構成するCu基合金とが反応して金属間化合物として脆弱なAl−Cu合金が形成されるのを抑制することができる。
【0020】
この発明の第2の局面による電池用端子の製造方法は、Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層と、Ni基合金から構成される第3金属層とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材を形成する工程と、軸部と軸部から放射方向に広がる鍔部とを形成するようにクラッド材をプレス加工する工程と、を備え、プレス加工する工程は、少なくとも軸部の延びる軸方向の一方側において、軸部の
先端に第3金属層を有するようにプレス加工する工程を含む。
【0021】
この発明の第2の局面による電池用端子の製造方法では、上記第1の局面による電池用端子の効果に加えて、少なくとも軸部の延びる軸方向の一方側において、軸部の
先端に第3金属層を有するようにプレス加工を行う。これにより、Niめっき工程が不要になるのに加えて、プレス加工を行うだけで、軸部と鍔部とを備え、少なくとも軸部の延びる軸方向の一方側の
先端に第3金属層を有する電池用端子を作成することができるので、電池用端子の製造工程を簡素化することができる。
【0022】
上記第2の局面による電池用端子の製造方法において、好ましくは、プレス加工する工程は、軸方向の一方側の
先端に加えて、軸部の外側面部にも第3金属層を有するようにプレス加工する工程をさらに含む。このように構成すれば、軸部の外側面部から第2金属層が腐食するのを抑制することができるとともに、第3金属層が形成された電池用端子の軸方向の一方側の
先端だけでなく軸部の外側面部においても、レーザ溶接などにより、電池用端子を他の部材に溶接しやすくすることができる。
【0023】
上記第2の局面による電池用端子の製造方法において、好ましくは、プレス加工する工程は、鍔部の軸方向の一方側の外縁部において、Cu基合金から構成される第2金属層が露出するようにプレス加工する工程をさらに含む。このように構成すれば、鍔部の軸方向の一方側の外縁部に露出する第2金属層に基づいて、電池用端子における軸方向の一方側を容易に確認することができる。これにより、電池用端子の製造工程を自動ライン化した場合であっても、画像検査により電池用端子の軸方向の一方側を容易に確認することができる。
【0024】
上記第2の局面による電池用端子の製造方法において、好ましくは、プレス加工する工程は、軸方向の一方側の電池の集電体と接合する側において軸
部に凹部を形成しつつ、軸部の
先端と凹部の内側面部とに第3金属層を有するようにプレス加工する工程をさらに含む。このように構成すれば、軸方向の一方側の軸
部において、電池用端子を他の部材(電池の集電体)に容易に固定(仮固定)することができる。また、かしめた状態であっても、電池用端子を電池の集電体に容易に溶接することができる。
【0025】
上記第2の局面による電池用端子の製造方法において、好ましくは、クラッド材を形成する工程は、第3金属層の厚みが、第1金属層の厚みよりも小さく、かつ、第2金属層の金属層の厚みよりも小さくなるように、クラッド材を形成する工程を含む。このように構成すれば、電気伝導性に優れたCu基合金から構成される第2金属層の割合を大きくして、作成される電池用端子の電気伝導性を向上させることができるとともに、軽量なAl基合金から構成される第1金属層の割合を大きくして、作成される電池用端子を軽量化することができる。また、Cu基合金に比べて電気伝導性の劣るNi基合金から構成される第3金属層の割合を小さくして、作成される電池用端子の電気伝導性が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記のように、金属層同士が接合された界面において腐食が発生するのを抑制しつつ、電池端子を他の部材に溶接しやすくすることが可能な電池用端子およびその電池用端子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
[第1実施形態]
<組電池の構造>
まず、
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態による組電池100の構造について説明する。
【0030】
本発明の第1実施形態による組電池100は、電気自動車(EV、electric vehicle)や、ハイブリッド自動車(HEV、hybrid electric vehicle)、住宅蓄電システムなどに用いられる大型の電池システムである。この組電池100は、
図1に示すように、複数のリチウムイオン電池1が、複数の平板状のバスバー101(点線で図示)によって電気的に接続されることによって構成されている。
【0031】
また、組電池100では、平面的に見てリチウムイオン電池1の狭幅方向(X方向)に沿って並ぶように、複数のリチウムイオン電池1が配置されている。また、組電池100では、狭幅方向と直交する広幅方向(Y方向)の一方側(Y1側)に正極端子10が位置するとともに、Y方向の他方側(Y2側)に負極端子20が位置するリチウムイオン電池1(1a)と、Y2側に正極端子10が位置するとともに、Y1側に負極端子20が位置するリチウムイオン電池1(1b)とが、X方向に沿って交互に配置されている。
【0032】
また、所定のリチウムイオン電池1の正極端子10は、X方向に延びる純Alから構成されるバスバー101のX方向の一方端に抵抗溶接により接合されている。また、その所定のリチウムイオン電池1と隣接するリチウムイオン電池1の負極端子20は、純Alからなるバスバー101のX方向の他方端に抵抗溶接により接合されている。これにより、リチウムイオン電池1の正極端子10は、バスバー101を介して、隣接するリチウムイオン電池1の負極端子20と接続されている。このようにして、複数のリチウムイオン電池1が直列に接続された組電池100が構成されている。
【0033】
なお、純Alからなるバスバー101を用いることによって、純Cuからなるバスバーを用いる場合と比べて、バスバー101を軽量化することができるので、複数のバスバー101を用いる組電池100全体を軽量化することが可能である。ここで、純Alとは、たとえば、JIS規格に規定されたA1000番台のアルミニウムを意味している。また、純Cuとは、たとえば、無酸素銅やタフピッチ銅、りん脱酸銅などの銅を意味している。
【0034】
<リチウム電池の構造>
リチウムイオン電池1は、
図2に示すように、略直方体形状の外観を有している。また、リチウムイオン電池1は、X方向およびY方向と直交する上下方向(Z方向)の一方側(Z1側)に配置される蓋部材2と、他方側(Z2側)に配置される電池ケース本体3とを備えている。この蓋部材2および電池ケース本体3は、共にNiめっき鋼板からなる。
【0035】
蓋部材2は、
図3に示すように、平板状に形成されている。また、蓋部材2には、Z方向に貫通するように、一対の挿入穴2aおよび2bが設けられている。この一対の挿入穴2aおよび2bは、蓋部材2のY方向に所定の間隔を隔てて形成されているとともに、蓋部材2のX方向の略中央に形成されている。また、一対の挿入穴2aおよび2bには、それぞれ、正極端子10および負極端子20が挿入されるように構成されている。
【0036】
また、リチウムイオン電池1は、正極4a、負極4bおよびセパレータ4cがロール状に積層された発電素子4と、図示しない電解液とを備えている。正極4aは、正極活物質が塗布されたAl箔から構成されている。負極4bは、負極活物質が塗布されたCu箔から構成されている。セパレータ4cは、正極4aと負極4bとを絶縁する機能を有している。
【0037】
また、リチウムイオン電池1は、正極端子10と発電素子4の正極4aとを電気的に接続する正極集電体5と、負極端子20と発電素子4の負極4bとを電気的に接続する負極集電体6とを備えている。正極集電体5は、正極端子10に対応するようにY1側に配置されている。また、正極集電体5は、正極端子10が挿入される穴部5dが形成された接続部5aと、Z2側に延びる脚部5bと、脚部5bと複数の正極4aとを接続する接続板5cとを含んでいる。また、正極集電体5は、正極4aと同様に純Alから構成されている。
【0038】
負極集電体6は、負極端子20に対応するようにY2側に配置されている。また、負極集電体6は、負極端子20が挿入される穴部6dが形成された接続部6aと、Z2側に延びる脚部6bと、脚部6bと複数の負極4bとを接続する接続板6cとを含んでいる。また、負極集電体6は、負極4bと同様に純Cuから構成されている。
【0039】
また、蓋部材2の挿入穴2aおよび2bには、それぞれ、絶縁性を有するパッキン7および8が嵌め込まれている。パッキン7には、正極端子10が挿入される穴部7aが形成されている。このパッキン7は、蓋部材2のZ1側の上面および挿入穴2aの内側面と正極端子10とが接触するのを抑制するとともに、蓋部材2のZ2側の下面と正極集電体5とが接触するのを抑制するように配置されている。同様に、パッキン8には、負極端子20が挿入される穴部8aが形成されている。パッキン8は、蓋部材2のZ1側の上面および挿入穴2bの内側面と負極端子20とが接触するのを抑制するとともに、蓋部材2のZ2側の下面と負極集電体6とが接触するのを抑制するように配置されている。
【0040】
正極端子10は、Z方向に延びる円柱状の軸部11と、軸部11のZ1側の端部において、軸部11からZ方向と直交するX−Y平面方向に放射状の広がりを持つように形成された円環状の鍔部12とを有している。
【0041】
また、リベット状の正極端子10は、正極集電体5およびバスバー101と同様に、純Alから構成されている。また、軸部11のZ2側の端部には、かしめるための凹部13が形成されている。また、正極端子10は、蓋部材2の挿入穴2a(パッキン7の穴部7a)および正極集電体5の穴部5dに挿入された状態で、正極集電体5に対してかしめられるとともに、かしめられた状態で、レーザ溶接により正極集電体5に接合されている。なお、正極端子10では、図示しないAl板材に対してプレス加工が行われることによって、軸部11、鍔部12および凹部13が形成されている。
【0042】
(負極端子の構造)
負極端子20は、正極端子10と同様の外形形状を有している。つまり、負極端子20は、
図4および
図5に示すように、Z方向に延びる円柱状の軸部21と、軸部21のZ1側の端部において、軸部21からX−Y平面方向に放射状の広がりを持つように形成された円環状の鍔部22とを有している。この結果、負極端子20は、リベット状に形成されている。また、軸部21は、負極端子20のX方向およびY方向の略中央に位置するように構成されている。なお、負極端子20は、特許請求の範囲の「電池用端子」の一例である。また、Z方向は、本発明の「軸方向」の一例であり、X−Y平面方向は、特許請求の範囲の「放射方向」の一例である。
【0043】
また、軸部21のZ2側の端部21aには、かしめるための凹部23が形成されている。この凹部23は、
図6に示すように、Z2側から平面的に見て円状に形成されており、その結果、凹部23が形成された軸部21のZ2側は、円筒状になるように形成されている。つまり、凹部23は、円筒状の壁部24に外側から囲まれた領域に形成されている。
【0044】
また、負極端子20は、
図4に示すように、蓋部材2の挿入穴2b(パッキン8の穴部8a)および負極集電体6の穴部6dに挿入された状態で、負極集電体6に対してかしめられるとともに、かしめられた状態で、レーザ溶接により環状に接合されている。これにより、リチウムイオン電池1には、軸部21と、負極集電体6の接続部6aとを接合する溶接部W1(細かい斜線の領域)が環状に形成されている。なお、Z2側は、特許請求の範囲の「軸方向の一方側」および「電池の集電体と接合する側」の一例である。
【0045】
ここで、第1実施形態では、
図5に示すように、負極端子20は、純Alから構成されたAl層31と、純Cuから構成されたCu層32と、純Niから構成されたNi層33とがZ1側からこの順に積層された状態で圧延により接合された、3層構造のクラッド材30から構成されている。これにより、クラッド接合されているAl層31とCu層32との接合された界面において、Al層31とCu層32とが原子的(化学的)に接合されているとともに、クラッド接合されているCu層32とNi層33との接合された界面において、Cu層32とNi層33とが原子的に接合されている。この結果、Al層31とCu層32との界面およびCu層32とNi層33との界面に、水などの異物が侵入するのが効果的に抑制されている。なお、純Niとは、JIS規格に規定されたNW2200やNW2201などのニッケルを意味している。また、Al層31、Cu層32およびNi層33は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1金属層」、「第2金属層」および「第3金属層」の一例である。
【0046】
ここで、純Niから構成されたNi層33の熱伝導率は約95(W/K・m)であり、純Cuから構成されたCu層32の熱伝導率(約400(W/K・m))よりも小さい。つまり、Cu層32と比べて、Ni層33には熱が蓄積しやすい。また、純Niから構成されたNi層33は、純Cuから構成されたCu層32よりも、レーザ溶接における基本波長(1064nm)のレーザ光に対する反射率が小さい。つまり、Ni層33は、Cu層32と比べて、レーザ光が照射された際にレーザ光が吸収されやすく、その結果、レーザ溶接時に温度が上昇しやすい。
【0047】
Al層31は、
図5に示すように、軸部21および鍔部22のZ1側に配置されており、軸部21および鍔部22のZ1側の表面および鍔部22の側端部22aのZ1側において露出している。このAl層31は、
図4に示すように、Z1側からバスバー101が配置された状態で、抵抗溶接により、バスバー101に接合されるように構成されている。なお、抵抗溶接により、Al層31の一部とバスバー101とに溶接部W2(細かい斜線の領域)が形成される。
【0048】
Cu層32は、
図5に示すように、軸部21および鍔部22において、Al層31よりもZ2側に配置されている。また、Cu層32は、
図6に示すように、鍔部22のZ2側の表面の外縁部22bにおいて、環状に露出しているとともに、
図5に示すように、鍔部22の側端部22aのZ2側において露出している。
【0049】
Ni層33は、軸部21および鍔部22において、Cu層31よりもZ2側に配置されている。また、Ni層33は、軸部21のZ2側の略円環状の端部21aおよび外側面部21bと、凹部23の周状の内側面部23aおよび略円状の内底面部23bと、鍔部22のZ2側の表面の外縁部22bよりも内側の略円状の領域とにおいて、露出している。また、
図6に示すように、鍔部22のZ2側の外縁部22bと、鍔部22のZ2側の表面における外縁部22b側の露出領域22cとにおいてCu層32が露出している。また、露出領域22cよりも内側の領域において、Ni層33が露出している。なお、Cu層32が露出する露出領域22cは、外縁部22bに沿って環状に形成されている。
【0050】
また、
図5に示すように、凹部23の周状の内側面部23aにおいて、凹部23の開口部23c側におけるNi層33のX−Y平面方向の厚みt1は、凹部23の内底面部23b側におけるNi層33のX−Y平面方向の厚みt2よりもよりも大きい。なお、厚みt1およびt2は、約2μm以上約20μm以下であるのが好ましく、約2μm以上約3.5μm以下であるのがより好ましい。
【0051】
また、第1実施形態では、軸部21のZ2側の端部21aにおけるNi層33のZ方向の厚みt3は、厚みt1およびt2よりも大きい。また、厚みt3は、凹部23の内底面部23bにおけるNi層33のZ方向の厚みt4よりも大きい。さらに、厚みt3は、軸部21の外側面部21bにおけるNi層33のX−Y平面方向の厚みt5、および、鍔部22のZ2側の表面におけるNi層33のZ方向の厚みt6よりも大きい。つまり、軸部21のZ2側の端部21aにおけるNi層33のZ方向の厚みt3は、Ni層33のうち、最も厚みが大きくなるように構成されている。なお、厚みt3は、約20μm以上であるのが好ましく、約25μm以上であるのがより好ましい。また、厚みt3は、厚みt1の約2倍以上であるのが好ましい。
【0052】
また、鍔部22におけるAl層31のZ方向の厚みt7およびCu層33のZ方向の厚みt8は、軸部21のZ2側の端部21aにおけるNi層33のZ方向の厚みt3よりも大きい。なお、厚みt8は、厚みt7と略同じ大きさであるか、または、若干大きな厚みを有している。
【0053】
(負極端子の製造方法)
次に、
図5および
図7〜
図9を参照して、第1実施形態における負極端子20の製造方法について説明する。
【0054】
まず、
図7に示すように、純Alにより構成されるAl板材131、純Cuにより構成されるCu板材132および純Niにより構成されるNi板材133を準備する。そして、Al板材131、Cu板材132およびNi板材133をZ1側からこの順に積層させた状態で、ローラRを用いて所定の圧下率で連続的に圧延を行う。これにより、Al層31とCu層32とNi層33(
図8参照)とがこの順で積層された状態で接合された3層構造のクラッド板材130を作成する。なお、クラッド板材130におけるNi層33のZ方向の厚みt11(
図8参照)は、Al層31のZ方向の厚みt12およびCu層32のZ方向の厚みt13(
図8参照)よりも小さい。
【0055】
そして、クラッド板材130を所定の温度環境下で所定時間保持することによって、拡散焼鈍を行う。これにより、Al層31とCu層32とが接合された界面およびCu層32とNi層33とが接合された界面において、層間の接合強度が高くなる。
【0056】
その後、クラッド板材130を所定の円板形状に打ち抜き加工を行うことにより、クラッド材30を形成する。そして、
図8に示すように、クラッド材30に対してプレス加工を行う。具体的には、まず、プレス加工器102の金型102a内に、打ち抜かれたクラッド材30を配置する。この金型102a内は、軸部21、鍔部22および凹部23(
図9参照)に対応する形状を有している。そして、
図9に示すように、Z1側から圧力を加えることによって、クラッド材30に対してプレス加工を行う。このプレス加工により、Cu層32およびNi層33が軸部21を形成するように、Z2側に移動される。ここで、Cu層32を構成する純Cuが変形しやすいため、鍔部22のZ2側の表面において、Cu層32は、外側(軸部21とは反対側)からNi層33を囲むように移動する。これにより、
図5に示すように、軸部21、鍔部22および凹部23が形成された負極端子20が作成される。この際、軸部21のZ2側(リチウムイオン電池1の負極集電体6と接合する側)の端部21aと、軸部21の外側面部21bと、凹部23の内側面部23aとにNi層33が位置するとともに、鍔部22のZ2側の外縁部22bと鍔部22のZ2側の表面の露出領域22cとにおいて、Cu層32が露出する。
【0057】
(負極端子の溶接工程)
次に、
図4および
図10〜
図13を参照して、第1実施形態における負極端子20の負極集電体6への溶接工程について説明する。
【0058】
まず、
図10に示すように、パッキン8が挿入穴2bに嵌め込まれた蓋部材2を準備する。そして、負極集電体6の接続部6aを蓋部材2のZ2側の面に当接させる。その状態で、負極集電体6のZ2側の面に、かしめ治具103の固定部材103aを当接させて固定する。その状態で、かしめ治具103の棒状部材103bをZ2側から挿入穴2b(パッキン8の穴部8a)に挿入する。そして、挿入された棒状部材103bのZ1側の端部を、負極端子20の凹部23内に嵌め込む。
【0059】
そして、かしめ治具103の押圧部材103cにより、負極端子20をZ1側から押圧する。これにより、棒状部材103bと共に、負極端子20は、Z2側に移動する。そして、
図11に示すように、負極端子20のZ2側の端部21aが挿入穴2bよりもZ2側に位置するまで、負極端子20が移動されると、棒状部材103bの移動が停止する。これにより、押圧部材103cの押圧力により、負極端子20の円筒状の壁部24が棒状部材103bの外周面に沿って変形されながら、負極端子20がZ2方向に移動される。その後、かしめ治具103の固定部材103aに沿って、負極端子20の壁部24が曲げ変形される。これにより、
図12に示すように、断面が半円状になるように壁部24が折り曲げられることによって、負極端子20が、負極集電体6にかしめられる。
【0060】
ここで、かしめられた状態において、Ni層33が位置する負極端子20の軸部21のZ2側の端部21aは、負極集電体6に当接する。また、Ni層33が位置する負極端子20の凹部23の内側面部23aは、外側に露出している。
【0061】
その後、
図13に示すように、かしめられた状態の負極端子20と負極集電体6とをレーザ溶接により溶接する。その際、負極端子20の軸部21の端部21aおよびその周辺の凹部23の内側面部23aに、Ni層33が位置しているため、レーザ光が効率よく吸収されるとともに、レーザ光により発生した熱も拡散しにくい。この結果、軸部21の端部21aおよびその周辺において、効率的にNi層33の純Niが溶融されることによって、効率的にレーザ溶接が行われる。そして、負極端子20のかしめられた部分を周状に溶接して接合することによって、
図4に示すように、負極端子20のリチウムイオン電池1の負極集電体6と接合する側であるZ2側が負極集電体6に接合される。
【0062】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
第1実施形態では、上記のように、負極端子20を、純Alから構成されるAl層31と、純Cuから構成されるCu層32と、純Niから構成されるNi層33とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材30から構成する。これにより、金属層同士は、物理的に接触して接合されているのではなく、クラッド接合による金属原子の相互拡散によって原子的(化学的)に接合されているので、界面に水などが侵入するのを抑制することができる。これにより、金属層同士が接合された界面において腐食が発生するのを抑制することができる。また、負極端子20が、少なくとも軸部21の延びる軸方向(Z方向)の一方側(Z2側)において、軸部21の端部21aに、純Niから構成されるNi層33を有する。これにより、軸部21のZ2側の端部21aに純Cuから構成されるCu層32のみが位置する場合と比べて、レーザ溶接により、負極端子20を負極集電体6に容易に溶接することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、純Niから構成されるNi層33を含むクラッド材30を用いることによって、Niめっき処理の工程が不要になるので、負極端子20の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、負極端子20のZ2側において、軸部21の端部21aにNi層33を有するようにプレス加工する。これにより、Niめっき工程が不要になるのに加えて、プレス加工を行うだけで、軸部21と鍔部22とを備え、Z2側の端部21aにNi層33を有する負極端子20を作成することができるので、負極端子20の製造工程を簡素化することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、負極端子20が、軸部21の外側面部21bにNi層33を有する。これにより、純Cuと比べて耐食性の高い純Niが軸部21の外側面部21bに位置することによって、軸部21の外側面部21bからCu層32が腐食するのを抑制することができる。また、Ni層33が形成された負極端子20のZ2側の端部21aだけでなく軸部21の外側面部21bにおいても、レーザ溶接により、負極端子20を負極集電体6に容易に溶接することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、鍔部22のZ2側の外縁部22bにおいて、Cu層32が露出している。これにより、純Cuから構成されるCu層32は、純Alや純Niと異なり赤色に近い色味を有しているので、鍔部22のZ2側の外縁部22bに露出するCu層32に基づいて、負極端子20におけるZ2側を容易に確認することができる。この結果、負極端子20の製造工程を自動ライン化した場合であっても、画像検査により負極端子20におけるZ2側を容易に確認することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、Z2側において、鍔部22の外縁部22bに沿ってCu層32が環状に露出する露出領域22cを負極端子20に設ける。これにより、Cu層32が環状に露出することにより、Cu層32が露出する部分が軸部21などに隠れて確認できなくなるのを効果的に抑制することができるので、負極端子20におけるZ2側を容易、かつ、確実に確認することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、負極端子20が、軸部21のZ2側(リチウムイオン電池1の負極集電体6と接合する側)の端部21aと凹部23の内側面部23aとにNi層33を有する。これにより、凹部23の内側面部23aが外側になるように凹部23を折り曲げて負極集電体6にかしめることによって、Z2側における軸部21の端部21a側において、負極端子20をかしめて負極集電体6に容易に固定(仮固定)することができる。また、負極集電体6にかしめられた状態の負極端子20をレーザ溶接より負極集電体6に溶接する際に、折り曲げられた状態で負極集電体6に当接する軸部21の端部21aと、外側に露出する凹部23の内側面部23aとの各々にNi層33が位置しているので、かしめた状態であっても、負極端子20を負極集電体6に容易に溶接することができる。
【0070】
また、第1実施形態では、軸部21の端部21aにおけるNi層33の厚みt3を、凹部23の内側面部23aにおけるNi層33の厚みt1およびt2よりも大きくする。また、好ましくは、厚みt3を厚みt1の約2倍以上にする。これにより、純Niの熱伝導率は純Cuの熱伝導率よりも小さいので、軸部21の端部21aにおいて純Niから構成されるNi層33の厚みt3を大きくすることにより、溶接時に発生した熱がNi層33からCu層32に逃げるのを抑制することができる。この結果、軸部21の端部21aにおける負極端子20の溶接性を向上させることができる。また、純Niから構成されるNi層33の厚みt1およびt2を小さくする。これにより、負極端子20をかしめる際にかしめ治具103の固定部材103aおよび棒状部材103bと接触する凹部23の内側面部23aにおいて、かしめ時に発生するかしめ治具103と凹部23の内側面部23aとの間の摩擦熱を迅速にCu層32に逃がすことができる。これにより、摩擦熱に起因してかしめ治具103と凹部23の内側面部23aとが焼き付くのを抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、凹部23の内側面部23aにおいて、凹部23の開口部23c側のNi層33の厚みt1を、凹部23の内底面部23b側のNi層33の厚みt2よりも大きくする。これにより、軸部21の端部21aに近い凹部23の開口部23c側のNi層33の厚みt1を大きくすることにより、軸部21の端部21aを溶接する際に発生した熱が、開口部23c側のNi層33を介して、Cu層32に逃げるのを効果的に抑制することができる。これにより、負極端子20の溶接性をより向上させることができる。また、凹部23の内底面部23b側のNi層33の厚みt2を小さくすることにより、純Niの使用量を減少することができる。
【0072】
また、第1実施形態では、凹部23の内側面部23aにおけるNi層33の厚みt1およびt2を、凹部23の内底面部23bにおけるNi層33の厚みt4より小さくする。これにより、かしめ治具103と接触する凹部23の内側面部23aにおいて、純Niから構成されるNi層33の厚みt1およびt2を確実に小さくすることができるので、かしめ時に発生するかしめ治具103と凹部23の内側面部23aとの間の摩擦熱を迅速にCu層32に逃がすことができる。この結果、摩擦熱に起因してかしめ治具103と凹部23の内側面部23aとが焼き付くのを抑制することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、Z2側の端部21aにおけるNi層33のZ方向の厚みt3を約20μm以上にする。これにより、Z2側の端部21aにおいて、純Niから構成されるNi層33の厚みを十分に確保することができるので、溶接時に発生したNi層33の熱がCu層32に逃げるのを確実に抑制することができる。この結果、Z2側の端部21aにおける負極端子20の溶接性をより向上させることができる。
【0074】
また、第1実施形態では、クラッド材30を作成する工程において、Ni層33のZ方向の厚みt11を、Al層31のZ方向の厚みt12およびCu層32のZ方向の厚みt13よりも小さくする。これにより、電気伝導性に優れた純Cuから構成されるCu層32の割合を大きくして、作成される負極端子20の電気伝導性を向上させることができるとともに、軽量な純Alから構成されるAl層31の割合を大きくして、作成される負極端子20を軽量化することができる。また、純Cuに比べて電気伝導性の劣る純Niから構成されるNi層33の割合を小さくして、作成される負極端子20の電気伝導性が低下するのを抑制することができる。
【0075】
[実施例]
次に、
図7〜
図9、
図14および
図15を参照して、第1実施形態の負極端子20を作成する際のプレス加工の結果と、負極端子20のNi層33の厚みの測定結果とについて説明する。
【0076】
まず、上記第1実施形態の製造方法と同様に、実施例1〜3のプレス前のクラッド材30を作成した。その際、圧延時に60%の圧下率で圧延を行うことによってクラッド板材130(
図7参照)を形成するとともに、圧延後のクラッド板材130を500℃の温度環境下で3分間保持することによって、拡散焼鈍を行った。そして、クラッド板材130を所定の円板形状に打ち抜き加工を行うことにより、実施例1〜3のプレス加工前のクラッド材30を作成した。
【0077】
また、この際、実施例1のプレス加工前のクラッド材30におけるAl層31の厚みt12、Cu層32の厚みt13およびNi層33の厚みt11(
図8参照)を、それぞれ、1.62mm、1.85mmおよび25μmにした。また、実施例2のプレス加工前のクラッド材30におけるAl層31の厚みt12、Cu層32の厚みt13およびNi層33の厚みt11を、それぞれ、1.61mm、1.84mmおよび50μmにした。また、実施例3のプレス加工前のクラッド材30におけるAl層31の厚みt12、Cu層32の厚みt13およびNi層33の厚みt11を、それぞれ、1.59mm、1.81mmおよび100μmにした。なお、実施例1〜3のプレス加工前のクラッド材30の総厚みを、3.5mmにした。
【0078】
そして、
図8および
図9に示すプレス加工器102(
図8および
図9参照)を用いて、上記第1実施形態と同様にプレス加工を行った。これにより、実施例1〜3の負極端子20を作成した。
【0079】
また、比較例として、純Alにより構成される円盤状のAl板材、純Cuにより構成される円盤状のCu板材および純Niにより構成される円盤状のNi板材をこの順に積層させた状態でプレス加工を行うことにより、比較例の電池用端子を作成した。つまり、比較例では、クラッド材を作成せずに、プレス加工を行った。この際、Al板材の厚み、Cu板材の厚み、および、Ni板材の厚みを、それぞれ、1.7mm、2.0mm、および、100μmにした。
【0080】
プレス加工の結果としては、比較例では、Al板材とCu板材とが一体化しなかったことに加えて、板材の一部がプレス加工器102の金型102a(
図8参照)に焼き付いた。一方、実施例1〜3では、Al層31とCu層32が一体化した状態を維持するとともに、負極端子20が金型102aに焼き付くことはなかった。これにより、上記第1実施形態のように、Al層31、Cu層32およびNi層33を積層させた状態で圧延することによってクラッド材30を形成し、形成したクラッド材30に対してプレス加工を行うのがよいことが確認できた。
【0081】
また、
図14に示すように、プレス加工後の実施例1〜3の負極端子20をX−Z平面で切断し、樹脂に埋め込んだ状態で研磨した。そして、マイクロスコープを用いて、1000倍の倍率で実施例1〜3の負極端子20の断面を観察した。この際、実施例1〜3の負極端子20の断面のうち、測定位置1〜7の各測定位置においてNi層33の厚みの測定を行った。具体的には、軸部21のZ2側の端部21a(測定位置1および7)におけるNi層33の厚みt3を測定した。また、凹部23の内側面部23aの開口部23c側(測定位置2および6)におけるNi層33の厚みt1を測定した。また、凹部23の内側面部23aの内底面部23b側(測定位置3および5)におけるNi層33の厚みt2を測定した。また、凹部23の内底面部23b(測定位置4)におけるNi層33の厚みt4を測定した。また、測定位置1〜7の各測定位置において、20μmのピッチで5点観測を行った。そして、5点の平均値を、各々の測定位置1〜7におけるNi層33の厚みとした。なお、比較例の電池用端子における断面の観察は行っていない。
【0082】
また、
図15に示す厚みの測定結果としては、また、実施例1〜3のいずれの負極端子20においても、軸部21のZ2側の端部21a(測定位置1および7)におけるNi層33の厚みt3が、25μmを超えて大きくなった。一方で、凹部23の内側面部23aの開口部23c側(測定位置2および6)、凹部23の内側面部23aの内底面部23b側(測定位置3および5)、および、凹部23の内底面部23b(測定位置4)におけるNi層33の厚みは、25μmよりも小さくなり、その結果、軸部21のZ2側の端部21aにおけるNi層33の厚みよりも小さくなった。
【0083】
また、実施例1〜3のいずれの負極端子20においても、凹部23の内側面部23aの開口部23c側(測定位置2および6)におけるNi層33の厚みt1が、凹部23の内側面部23aの内底面部23b側(測定位置3および5)におけるNi層33の厚みt2よりも大きくなった。
【0084】
また、実施例1〜3のいずれの負極端子20においても、凹部23の内側面部23a(測定位置2、3、5および6)におけるNi層33の厚みt1(t2)は、凹部23の内底面部23b(測定位置4)におけるNi層33の厚みt4よりも小さくなった。
【0085】
[第2実施形態]
次に、
図16および
図17を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の純Alのみから構成した正極端子10とは異なり、正極端子210を3層構造のクラッド材230から構成した例について説明する。なお、正極端子210は、特許請求の範囲の「電池用端子」の一例である。
【0086】
(正極端子の構造)
第2実施形態では、
図16および
図17に示すように、正極端子210は、純Alから構成されたAl層231と、純Cuから構成されたCu層232と、純Niから構成されたNi層233とがZ2側からこの順に積層された状態で圧延により接合された、3層構造のクラッド材230から構成されている。なお、Al層231、Cu層232およびNi層233は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1金属層」、「第2金属層」および「第3金属層」の一例である。
【0087】
Al層231は、
図17に示すように、軸部11のZ2側の表面および外側面部11aと、鍔部12のZ2側の表面および側端部12aのZ2側とにおいて露出している。このAl層231は、
図16に示すように、レーザ溶接により、Z2側から正極集電体5に接合されるように構成されている。なお、このレーザ溶接により、溶接部W3(細かい斜線の領域)が形成される。
【0088】
Cu層232は、
図17に示すように、鍔部12の側端部12aにおいて、Al層231よりもZ1側、および、Ni層233よりもZ2側において露出している。
【0089】
Ni層233は、軸部11のZ1側の表面と、鍔部12のZ1側の表面および側端部12aのZ1側とにおいて露出している。つまり、Ni層233は、正極端子210のZ1側において、軸部11および鍔部12の端部210aに位置している。また、Ni層233は、
図16に示すように、レーザ溶接により、Z1側から純Cuから構成されるバスバー201に接合されるように構成されている。なお、レーザ溶接により、溶接部W4(細かい斜線の領域)が形成される。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0090】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0091】
第2実施形態では、正極端子210を、純Alから構成されるAl層231と、純Cuから構成されるCu層232と、純Niから構成されるNi層233とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材230から構成する。これにより、上記第1実施形態と同様に、金属層同士が接合された界面(Al層231とCu層232との界面およびCu層232とNi層233との界面)において腐食が発生するのを抑制することができる。また、正極端子210が、軸部11の延びる軸方向(Z方向)の一方側(Z1側)の軸部11および鍔部12の端部210aに、純Niから構成されるNi層233を有する。これにより、Ni層233が形成された正極端子210のZ1側の端部210aにおいて、レーザ溶接により、正極端子210をバスバー201に容易に溶接することができる。また、純Niから構成されるNi層233を含むクラッド材230を用いることによって、Niめっき処理の工程が不要になるので、正極端子210の製造工程が複雑化するのを抑制することができる。
【0092】
[第3実施形態]
次に、
図18を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態による負極端子320では、上記第1実施形態に加えて、Al層31とCu層32との間に反応抑制層334が配置される場合について説明する。なお、負極端子320は、特許請求の範囲の「電池用端子」の一例である。
【0093】
本発明の第3実施形態による負極端子320は、
図18に示すように、純Alから構成されたAl層31と、純Niから構成された反応抑制層334と、純Cuから構成されたCu層32と、純Niから構成されたNi層33とがZ1側からこの順に積層された状態で圧延により接合された、4層構造のクラッド材330から構成されている。つまり、反応抑制層334は、Al層31とCu層32との間に配置されている。
【0094】
反応抑制層334は、Al層31を構成する純AlとCu層32を構成する純Cuとが反応することによって、脆弱なAl−Cu合金がAl層31とCu層32との界面に生じるのを抑制する機能を有している。また、反応抑制層334は、Al層31とCu層32との界面の略全体に亘って形成されている。
【0095】
この反応抑制層334は、AlおよびCuと比べて、価格の高いNiから構成されている。したがって、反応抑制層334の厚みt9は、材料コストの観点から小さい方が好ましく、具体的には、鍔部22のZ方向の厚みの約10%以下であるのが好ましい。
【0096】
また、第3実施形態による負極端子320の製造方法としては、Al板材とNi板材とCu板材とNi板材とを所定の圧下率で連続的に圧延することによって、Alから構成されたAl層31と、Niから構成された反応抑制層334と、Cuから構成されたCu層32とNiから構成されたNi層33とがZ1側からこの順で積層された状態で接合されたクラッド板材を形成する点を除いて、上記第1実施形態と同様である。
【0097】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0098】
第3実施形態では、クラッド材330が、Al層31とCu層32との間に配置(接合)され、Al層31を構成する純AlとCu層32を構成する純Cuとが反応するのを抑制するための反応抑制層334を含む。これにより、反応抑制層334により、Al層31を構成するAlとCu層32を構成するCuとが反応して脆弱な金属間化合物(Al−Cu合金)が形成されるのを確実に抑制することができるので、Al層31とCu層32との金属間化合物に起因する接合強度の低下を確実に抑制することができる。また、反応抑制層334により、腐食をより確実に抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0100】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、Al層31(231)を純Alから構成し、Cu層32(232)を純Cuから構成し、Ni層33(233)を純Niから構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、純Al、純Cuおよび純Niの代わりに、それぞれ、Al合金、Cu合金およびNi合金を用いてもよい。なお、Al合金としては、たとえば、JIS規格に規定されたA3000番台のAl−Mn系合金などがある。また、Cu合金としては、たとえば、C194であるCu−Fe系合金などがある。また、Ni合金としては、たとえば、JIS規格に規定されたNW4400番台のNi−Cu系合金などがある。なお、Al基合金、Cu基合金およびNi基合金は、それぞれ、約90質量%以上のAl、約90質量%以上のCuおよび約90質量%以上のNiを含有するのが好ましい。
【0101】
また、上記第1〜第3実施形態では、電池用端子が凹部を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電池用端子は軸部と軸部から放射方向に広がる鍔部とを有していればよく、凹部を有していなくてもよい。その際、電池用端子をかしめる工程が不要になる。なお、この際、電池用端子の軸方向の一方側の端部およびその近傍の外側面部にNi層が位置するため、レーザ溶接により、電池用端子を集電体などの他の部材に容易に溶接することが可能である。また、軸部を鍔部に対して軸方向の一方側と他方側との両方に延びるように、電池用端子を形成してもよい。
【0102】
また、上記第1実施形態では、負極端子20の凹部23を取り囲む壁部24を折り曲げることによって、負極集電体6にかしめるとともに、かしめた状態で、負極端子20と負極集電体6とをレーザ溶接により接合した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、電池用端子の凹部内に突起部を有する集電体の突起部を挿入した状態でレーザ溶接などを行うことによって、電池用端子の凹部の開口部周辺と集電体の突起部とを接合してもよい。
【0103】
また、上記第3実施形態では、反応抑制層334を純Niから構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、反応抑制層をNi合金から構成してもよいし、その他の材料からなるように構成してもよい。
【0104】
また、上記第1および第2実施形態では、3層構造のクラッド材から電池用端子を構成し、上記第3実施形態では、4層構造のクラッド材から負極端子320を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、5層以上のクラッド材により電池用端子を構成してもよい。
【解決手段】この負極端子20(電池用端子)は、Al基合金から構成されるAl層31と、Cu基合金から構成されるCu層32と、Ni基合金から構成されるNi層33とがこの順に積層された状態で接合されたクラッド材30から構成されている。また、負極端子20は、軸部21と、軸部21から放射方向(X−Y平面方向)に広がる鍔部22とを備え、少なくとも軸部21の延びる軸方向(Z方向)の一方側(Z2側)において、軸部21の端部21aにNi層33を有している。